【実施例】
【0035】
(実施例1:アニオン性改質剤を使用する表面改質)
【0036】
処理される顔料を、エタノール中に約25(重量)%で分散させ、希塩酸を添加して、確実に溶液が顔料の等電点よりも十分低くなるようにした。3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(SPMK)(顔料の各グラムごとに約50〜100mg)を水中に溶解し、顔料分散体に添加した。溶液を数時間混合させ、次いで遠心分離し、固体残留物をエタノールで2回洗浄した。得られた顔料を乾燥させてもよく(これは必須ではない)、次いで実質的に、前述の米国特許第6,822,782号の実施例28に記載されるように重合を行うためにトルエン中に分散させてもよい。
【0037】
(実施例2:カチオン性改質剤を使用する表面改質)
【0038】
処理される顔料を、エタノール中に約25(重量)%で分散させ、アンモニア水を添加して、確実に溶液が顔料の等電点よりも十分高くなるようにした。[3−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(MAETAC)(顔料の各グラムごとに約50〜100mg)を水中に溶解し、顔料分散体に添加した。溶液を数時間混合させ、次いで遠心分離し、固体残留物をエタノールで2回洗浄した。得られた顔料を乾燥させてもよく(これは必須ではない)、次いで実質的に、前述の米国特許第6,822,782号の実施例28に記載されるように重合を行うためにトルエン中に分散させてもよい。顔料を乾燥させない場合、溶媒切換え手順は、トルエン中の顔料分散体が得られるように行うことができる。
【0039】
(実施例3:吸収プロセスによって生成された様々な顔料の分析)
【0040】
様々な顔料を、上記実施例1および2に記載されたSPMKまたはMAETACのいずれかで本発明の吸収プロセスにより処理し、次いで洗浄し、トルエン、および実質的に前述の米国特許第6,822,782号の実施例28に記載されるようにポリ(メタクリル酸ラウリル)のコーティング中に分散させた。得られたポリマーコーティング付き顔料を、熱重量分析によって試験し、Isopar E(商用炭化水素溶媒)中に懸濁し、Solsperse 17K(電荷制御剤)を、顔料1グラム当たり25mg添加し、それらのゼータ電位を測定した。未処理の顔料、官能化顔料、およびポリマーコーティング付き顔料のTGA値を、以下の表1に示す。
【表1】
【0041】
前述の内容から、本発明の吸収プロセスによる顔料の官能化は、満足のいく量のポリマーおよび良好な正のゼータ電位を有する最終顔料を生成したことがわかる。
【0042】
前述の内容から、本発明の吸収プロセスは、乾燥ステップを除外することで、従来技術のシラン官能化プロセスを単純化することができることがわかる。プロセスは、重合段階での官能化顔料の分散体の平均粒度に関し、より良好な再現性をもたらしてもよい。両方の効果は、潜在的なコスト節約手段であり、前者はプロセスの単純化を通して、後者は潜在的な収量の増加によるものである。
【0043】
(パートB:本発明の求核プロセス)
【0044】
既に述べたように、本発明の求核プロセスは、重合性または重合開始基を有しかつ少なくとも1つの求電子基も含む試薬で顔料粒子を処理することによって、それらの表面上に求核基を保持する顔料粒子(有機または無機の顔料粒子であってよい)を処理するためのプロセスを提供する。試薬上の求電子基は、粒子表面上の求核基と反応し、したがって重合性または重合開始基を粒子表面に結合させる。
【0045】
本発明の求核プロセスは、典型的には電気泳動媒体で使用される、炭化水素流体中に容易に分散される有機顔料粒子を生成することができる。プロセスは、使用される電荷制御剤とは実質的に無関係の、ゼータ電位を有する有機および無機顔料を生成することもでき、この一定のゼータ電位は、電気泳動ディスプレイの改善された光学状態に寄与し得る。
【0046】
次に下記の実施例を、単なる例示としてではあるが、本発明の求核プロセスで使用される特に好ましい試薬、条件、および技法の詳細を示すために提示する。
【0047】
(実施例4:ジメチルキナクリドンを使用する求核プロセス)
【0048】
ジメチルキナクリドン(Ink Jet Magenta E 02、15g)およびトルエン(135g)を混合し、高性能分散機に1分間供した。得られた分散体を、磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに移し、フラスコを、予熱した42℃のシリコーン油浴内に配置し、窒素雰囲気中に置いた。トリエチルアミン(12mL、86mmol)を添加し
;1時間後、塩化4−ビニルベンジル(VBC、5.0mL、36mmol)を、シリンジによって単独添加した。次いで反応混合物を、窒素雰囲気中で一晩、42℃で撹拌させた。
【0049】
反応混合物を、プラスチック遠心分離ボトル内に注ぎ、トルエンで希釈し、遠心分離した。上澄みをデカンテーションし、顔料をトルエンで洗浄し、混合物を再び遠心分離した。洗浄手順を繰り返し、次いで上澄みをデカンテーションし、処理した顔料を70℃の真空炉内で一晩乾燥した。
【0050】
(実施例5:求核プロセスによって生成された顔料のポリマーコーティング)
【0051】
上記実施例4からの乾燥した顔料を、乳鉢および乳棒で粉砕した。試料をTGA用に取り出し、残りの顔料を、超音波処理および転動によってトルエン中に分散させた(10重量%顔料分散体)。得られた顔料分散体を、磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに移し、フラスコを、予熱した65℃のシリコーン油浴内に配置した。メタクリル酸ラウリル(20g)を反応混合物に添加し、Vigreux蒸留カラムを空冷コンデンサーとして取着し、フラスコを窒素で少なくとも1時間パージした。2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)のトルエン中溶液(5mLのトルエン中0.20gのAIBN)を、反応フラスコ内に一気に注入し、反応混合物を65℃で一晩、激しく撹拌した。
【0052】
次いで反応混合物を遠心分離ボトル内に注ぎ、トルエンで希釈し、30分間遠心分離し;上澄みをデカンテーションし、GPC分析にかけた。顔料をトルエンで1回洗浄し、30分間遠心分離し、次いで上澄みをデカンテーションし、顔料を70℃の真空炉内で一晩乾燥した。
【0053】
(実施例6:ポリマーコーティング付き顔料の試験)
【0054】
上記実施例5で生成されたポリマーコーティング付き顔料を、乳鉢および乳棒で粉砕し、Isopar E中に20重量%分散体が形成されるように分散させた。この分散体を、少なくとも24時間超音波処理および転動させ、次いで布製メッシュを通して濾過することにより、大きい粒子を全て除去した。分散体の試料を取り出し、その固体パーセントを測定し、その測定から得た乾燥顔料を、TGAに供しおよび比重瓶による密度を得た。処理された顔料に関するTGA値は3.5%であり、それに対して未処理の顔料は2.1%のTGA値を有していた。残りの分散体を使用して、ゼータ電位測定用に、0.5gのSolsperse 17000/gコーティング付き顔料を含む、5%の顔料分散体を25g作製した。
【0055】
このように調製された分散体の試料を、非常に酸性の高い電荷制御剤であるBontron E88として市販されているアルミニウムトリス[3,5−ジ−tert−ブチルサリチレート]の様々な量と混合し、顔料のゼータ電位を測定した。対照を得るために、未処理の顔料の試料(VBCによる処理および後続の重合はなし)を同様に調製した。結果を、添付図面の
図1に示す。
図1のデータから、未処理の顔料は、酸性電荷制御剤の濃度と共にゼータ電位の急峻な上昇を示し、それに対して本発明の求核プロセスにより生成された顔料のゼロ電位は、電荷制御剤の濃度に対して実質的に無感応であることがわかる。興味深いことに、OLOA 371(非常に塩基性の高い電荷制御剤)中の本発明の顔料のゼータ電位は、両方の電荷制御剤が0.5g/g顔料の量で存在する場合、Solsperseの場合と本質的に同一であり;即ち、本発明の顔料のゼータ電位は、塩基性(OLOA)または酸性(Solsperse 17k/Bontron)のいずれかの電荷制御剤の存在下で本質的に同じである。比較のため、OLOAを用いて分散された白色チタニア顔料(実質的に、前述の米国特許第6,822,782号の実施例28に記載さ
れたように調製された)は、Solsperse 17kの存在下、類似の条件下にあるよりもさらに負であったが、少量のBontron E88の添加は、この白色顔料のゼータ電位に対して劇的な効果を有し、より正の方向に移動させた。
【0056】
(実施例7:本発明の求核プロセスによって生成された追加の顔料)
【0057】
Ink Jet Magenta E 02およびその他の顔料の追加の試料を官能化し、ポリマーコーティングし、上記実施例4〜6と同じ手法で試験をした。結果を、未処理の顔料に関するデータも含む以下の表2に示す。
【表2】
【0058】
前述の内容から、本発明の求核プロセスは、広く様々な顔料を官能化して、その上にポリマーコーティングを形成することが可能なプロセスを提供することがわかり;このプロセスは、多くの無機顔料に一般的でありおよびシランと反応する可能性のあるシリカまたは金属酸化物表面に乏しい有機顔料に、ポリマーシェルを結合するのに特に有用である。プロセスは非常に単純であり、平衡によって連関状態が強力に促され、したがって求核反応の収量が本質的に定量的である十分に確立された化学的性質に依拠する。使用される試薬は、顔料粒子上のさらに弱い求核基とも容易に反応する、非常に反応性の高い種になるように選択することができる。顔料粒子上の求核基は、顔料の実際の結晶構造の部分とすることができるか、または添加剤から生ずることができるかのいずれかである。
【0059】
ポリマーコーティング付き顔料のゼータ電位を、帯電剤の選択とは本質的に無関係にす
る(上記実施例で実証されたように)という本発明の求核プロセスの能力によって、新しい電気泳動内相に関する開発の自由度が高くなり、典型的な駆動電圧およびパルス長を利用し易い光学状態に関して潜在的な利点になることが示された。
【0060】
(パートC:本発明の不動態化プロセス)
【0061】
既に述べたように、本発明の不動態化プロセスは、顔料粒子の表面上に求核基を保持する顔料粒子を、求電子基を有するが重合性または重合開始基を保持しない試薬で処理し、それによって試薬の残留物を顔料粒子に化学結合させるようなプロセスを提供する。試薬は、この試薬による顔料粒子の処理が、顔料粒子のゼータ電位に影響を及ぼすように選択される。好ましい試薬は、典型的にはアルキルハロゲン化物(本明細書では、アラルキルハロゲン化物を含むように使用される用語)、特に塩化ベンジルである。
【0062】
上述のシラン/重合処理に供された従来技術のポリマーコーティング付き電気泳動顔料粒子において、最終的な顔料粒子では、顔料粒子表面上のシラン基は、顔料の表面電荷およびゼータ電位を発生させるための主要な部分であることが見出された。したがって顔料粒子の帯電の改質は、顔料の固有の電荷発生特性を変化させる、官能性シランの組込みを通してかつ/またはポリマーシェルへの官能性モノマーの組込みによって、行うことができる。しかし、これら2つの方法によって顔料粒子の帯電を変化させることも、非極性溶媒中の分散性、ポリマーグラフト化密度、および顔料分散体粘度などのその他の重要な顔料特性に影響を及ぼす。これらの高度に相互依存する特性は、その他の重要な特性に影響を及ぼすことなく顔料のゼータ電位を変えるのを難しくする。したがって、互いに無関係に様々な顔料特性を最適化させるには、ゼータ電位、したがって電気泳動移動度を制御するために、本発明の不動態化プロセスに従って、適切なシランおよびポリマーシェルを持つ顔料を合成しおよび顔料表面の後重合改質を使用することが望ましい。
【0063】
既に述べたように、本発明の不動態化プロセスで使用するのに好ましい試薬は、添付図面の
図2に示されるように、好ましくはトリエチルアミンの存在下にある、アルキルハロゲン化物、特に塩化ベンジルである。典型的には、塩化ベンジルは、顔料表面の平方ナノメートル当たり約30分子の量で使用されるべきであり、この量は、典型的な金属酸化物顔料表面上で利用可能な求核ヒドロキシル基に対して約5倍過剰と推定されるものであり;ベンジル化の程度は、顔料の最大ゼータ電位のシフトを通して推測される。顔料のゼータ電位は、電荷制御剤Solsperse 17000を含むIsopar E中で典型的には決定され;ゼータ電位シフトは、アルキル化反応に対する反応性の増大と共に増大し、そのような増大した反応性は、反応の温度または時間、溶媒の極性、および非求核塩基の強度または障害を増大させることによって実現することができる。典型的な正のゼータシフトの大きさは、正味+10から+60mVに及ぶ。塩化ベンジルとの反応に推奨されるアルキル化条件は、約66℃で、非求核有機塩基(トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン)の存在下、わずかに極性を持つ有機溶媒(トルエンまたはテトラヒドロフラン)である。反応は、未処理の顔料をシランで処理した後またはポリマーコーティング後すぐに行うことができる。
【0064】
例えば、ある一連の実験において、未処理のシリカ/アルミナコーティング付きチタニア顔料(du Pontから販売されるR794)は、TGA中に1.08%の重量損失があることがわかった。トリエチルアミンの存在下、ビニルベンジルクロリド(VBC、塩化ベンジルに類似した求電子剤)で処理した後、重量損失は1.23%に増大したが、これは顔料表面の平方ナノメートル当たり1.03アルキル基の添加に相当するものである。VBCで処理した顔料の、メタクリル酸ラウリルとの後続の重合は、重量損失を3.90%に増大させた。この後続の、VBCで処理したチタニアへのポリマーのグラフト化は、金属酸化物の共有表面官能化を立証する。
【0065】
本発明の不動態化プロセスは、顔料表面へのアルキル(またはその他の)基の共有結合による顔料のゼータ電位の変化を通して作用する。変化前に、本質的に負のゼータ電位値を持つ白色チタニア顔料の表面へのベンジル基の結合は、ゼータ電位がより正の値にシフトするように働く。求電子性アルキル基に結合した官能基は、ゼータ電位の変化の符号および絶対値を決定するように働くことになる。4−フルオロベンジルクロリドまたは4−ニトロベンジルクロリドの使用は、フッ素化および酸性の表面官能化を通して、より負のゼータ電位を誘発する傾向になる。逆に、4−(クロロメチル)ピリジンまたは4−(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリドのような塩基性アルキル基によるアルキル化は、ゼータ電位をより強い正の値に変化させる。最後に、tert−ブチルベンジルクロリドまたは1−ブロモオクタンのような長鎖アルキルハロゲン化物の組込みは、追加の立体障害を提供して顔料表面への分子の拡散を排除するのに役立てることができる。
【0066】
次に下記の実施例は、単なる例示としてではあるが、本発明の不動態化プロセスで使用するのに特に好ましい試薬、条件、および技法の詳細を示すために提示する。
【0067】
(実施例8:スピネル系黒色顔料に利用される本発明の不動態化プロセス)
【0068】
この実施例は、スピネル系ポリマーコーティング付き黒色顔料を塩化ベンジルおよび臭化ベンジルで処理することにより、仮説、すなわち顔料中に存在するアミン基を4級化することができ、したがって永続的に正に帯電することができ、そのため帯電剤の選択に無感応である顔料が生成されるという仮説を試験する、予備実験の結果を報告する。
【0069】
Shepherd BK444をベースにし、実質的に米国特許第8,270,064号の実施例1に記載されたように生成された、ポリマーコーティング付き黒色顔料を、反応をIsopar E中で実行したこと以外は上記実施例4と実質的に同じ手法で、塩化ベンジルで処理した。ポリマーコーティング付き黒色顔料(24g)、塩化ベンジル(4g)、トリエチルアミン(4.7g)、およびIsopar Eを、室温で24時間混合した。得られた改質顔料を、繰り返し遠心分離し、Isopar Eで洗浄した。顔料の分散体を、Bontron E88と、様々な量のOLOA 371とで作製し、それらのゼータ電位を測定した。対照を得るために、未処理のポリマーコーティング付き黒色顔料の類似の分散体を調製し、それらのゼータ電位を測定した。結果を
図3に示す。
【0070】
図3から、アルキル化顔料は、非アルキル化顔料よりもOLOAの存在に対してはるかに感応性がなく、ほぼ一定の表面電荷をもたらすことがわかる。
【0071】
(実施例9:チタニア系白色顔料に利用される本発明の不動態化プロセス)
【0072】
いくつかのチタニア系白色顔料を、シラン官能化後または顔料上でのポリマー形成後のいずれかに、塩化ベンジルで処理した。未処理および処理済みの顔料の両方をTGAで試験し、それらの最大ゼータ電位をIsopar−E中で測定した。結果を以下の表3に示す。
【0073】
白色顔料上にポリマー層を形成後、塩化ベンジルで処理するのに使用される手順は、下記の通りであった。顔料(300g)を1Lのプラスチックボトルに添加し、そこにテトラヒドロフラン(THF−500mL)も添加した。プラスチックボトルをロールミル上で転動させ、次いで超音波処理した。得られた分散体を、オーバーヘッド機械式撹拌子、窒素ガス入口でキャップされたコンデンサー、温度計または熱電対、およびセプタムを備える、4つ口反応器上部を備えたジャケット付き反応器内に置いた。分散体を、少量のTHFで反応器内に濯ぎ、加熱還流し、激しく撹拌した。反応器のヘッドスペースを窒素で
パージし、反応の残りの段階を、窒素の正圧下で保持した。トリエチルアミンを、シリンジにより反応器に添加し、得られた混合物を30分間撹拌し、次いで塩化ベンジルをシリンジにより反応器に添加し、得られた反応混合物を一晩還流撹拌した。生成物を単離するために、反応器から2つの1Lの遠心分離ボトル内に排出し、分散体を希釈して合計1000gの溶媒にし、次いで遠心分離した。上澄みをデカンテーションし、顔料を、合計1000gのTHFを用いて90分間ロールミル上で転動させることにより再分散させ、その後、顔料分散体を再び遠心分離し、上澄みをデカンテーションした。次いで湿潤顔料パックを、70℃で一晩、真空炉内で乾燥した。
【表3】
【0074】
様々な表面改質の後、顔料6および7を、米国特許第8,582,196号、実施例2に記載されたように、そこに記載されたものと同じスピネル系黒色顔料を使用して実験用単一画素ディスプレイに変換し、得られた実験用ディスプレイを、この特許の実施例3に記載されたように電気光学試験に供した。結果を、下記の表4に示す。電気光学試験の前に、単一画素ディスプレイをそれらの極限の黒色および白色の状態に繰り返し切り換え、次いで最終的に黒色または白色に切り換えて、過渡効果を消散させるために最終駆動パルスの終わりから3秒後にL
*値を測定した。画像安定性の数値は、ディスプレイを黒色または白色の極限状態に、停止時間10秒の間そのままに保持し、その反対の光学状態に駆動させ、この状態のL
*値を、駆動パルスの終わりの直後(20ミリ秒)および30秒後に測定し、その差を得ることによって測定した。DSD(休止状態依存性)値は、ディスプレイを黒色または白色の極限状態に、停止時間20秒の間そのまま保持し、その反対の光学状態に駆動させ、この状態のL
*値を、駆動パルスの終わりの直後および30秒後に測定し、その差を得ることによって同様に測定した。
【表4】
【0075】
表4のデータから、塩化ベンジル表面処理は、ディスプレイの白色状態に著しい影響を及ぼさず(塩化ベンジル処理後の変化は、1〜2L
*以下である)、暗状態のL
*値の実質的な低下(約5L
*)をもたらしたことがわかる;したがって塩化ベンジル処理は、ディスプレイの動的範囲の有用な増大(約3〜4L
*)をもたらした。統計分析は、未処理のおよびベンジル処理した顔料の間で、画像安定性およびDSDデータに有意な変化がないことを示す。
【0076】
前述の内容から、本発明の不動態化プロセスは、顔料表面へのアルキル基の共有結合を通して、顔料粒子の表面官能化を可能にし、その結果、顔料のゼータ電位を変化させることがわかる。特に、変化前の、もともと負のゼータ電位値を有する白色顔料の表面へのベンジル基結合は、それらのゼータ電位をより正の値にシフトさせるように働く。これはチタニア系白色顔料に関して上記にて実証されたが、求核金属酸化物表面を持つ任意の無機顔料に利用されることが、合理的に想定され得る。ゼータ電位の変化の符号および絶対値は、求電子性アルキル基と共に結合された官能基によって制御されてもよい。例えば、塩化4−フルオロベンジルおよび塩化4−ニトロベンジルは、フッ素化および酸性の表面官能化が非極性液体中のコロイドのゼータ電位を変化させることが実証されているので、より負のゼータ電位を誘発すべきである。逆に、4−(クロロメチル)ピリジンまたは4−(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリドなどの塩基性アルキル基によるアルキル化は、ゼータ電位をより正の値に変化させるように働く。最後に、tert−ブチルベンジルクロリドまたは長鎖アルキルハロゲン化物、例えば1−ブロモオクタンによる処理は、顔料表面への分子の拡散を排除するための追加の立体障害を提供するのに有用であり得る。