特許第6577068号(P6577068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイセルバリューコーティング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6577068-ガスバリア性フィルム及びその製造方法 図000005
  • 特許6577068-ガスバリア性フィルム及びその製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577068
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20190909BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20190909BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190909BHJP
   C09D 127/08 20060101ALI20190909BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20190909BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B32B27/30 C
   B32B9/00 A
   B05D7/24 302K
   B05D7/24 302P
   C09D127/08
   C09D7/63
   B65D65/40 D
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-14080(P2018-14080)
(22)【出願日】2018年1月30日
(65)【公開番号】特開2019-130738(P2019-130738A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】505339058
【氏名又は名称】ダイセルバリューコーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】齋尾 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤本 清紀
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−309913(JP,A)
【文献】 特開2017−212473(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00814114(EP,A1)
【文献】 特開平09−193305(JP,A)
【文献】 特開2017−196849(JP,A)
【文献】 特開昭62−163048(JP,A)
【文献】 特開昭54−021474(JP,A)
【文献】 米国特許第05093194(US,A)
【文献】 荒木峻,益子洋一郎,山本修,鎌田利紘,有機化合物のスペクトルによる同定法,有機化合物のスペクトルによる同定法,日本,株式会社東京化学同人,2000年 4月25日,第6版第2刷,231頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
B65D 65/00− 65/46
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、この基材層の少なくとも一方の面を被覆する無機質層と、この無機質層を被覆し、かつカルボニル基を含む第1のポリ塩化ビニリデン共重合体を含むコーティング層とを含むガスバリア性フィルムであって、前記第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルにおける170〜180ppmのシグナルの積分値が、80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.001〜0.05倍であるガスバリア性フィルム
【請求項2】
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体が、シアノ基をさらに含む請求項1記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
コーティング層が、13C−NMRスペクトルにおける170〜180ppmのシグナルの積分値が、80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.001倍未満である第2のポリ塩化ビニリデン共重合体をさらに含む請求項1又は2記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体と第2のポリ塩化ビニリデン共重合体との重量割合が、前者/後者=99/1〜30/70である請求項記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
コーティング層が、シランカップリング剤をさらに含む請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
無機質層が酸化ケイ素である請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が0.1g/m・day未満である請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項8】
基材層の少なくとも一方の面に無機質層を積層する無機質層積層工程、無機質層の上にコーティング層を積層するコーティング層積層工程を含む請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項9】
コーティング層積層工程において、コーティング層を形成するための液状組成物をコーティングした後、乾燥し、さらにエージングする請求項記載の製造方法。
【請求項10】
湿潤状態でエージングする請求項記載の製造方法。
【請求項11】
コーティング層を形成するための液状組成物中の水の含有割合が0.15重量%以上である請求項10のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、農産物、電子機器、光学機器などの各種分野において、水蒸気などのガスの透過を防止するためのガスバリア性フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、農産物、電子機器、光学機器などの各種分野において、水蒸気や酸素などのガスによる品質の劣化などを抑制するために、水蒸気や酸素などのガスに対してバリア性を有するガスバリア性フィルムが利用されている。また、これらの分野では、内容物の視認性や光学特性などの点から、透明性が要求される用途もある。このような透明ガスバリア性フィルムとしては、各種の透明バリア層を有するフィルムが知られているが、耐熱性や加工性などの各種バランスに優れた透明防湿フィルムとして、基材層の上に、無機材料で形成された無機系バリア層と、ポリ塩化ビニリデン系樹脂で形成された有機系バリア層とを積層した積層フィルムが知られている。
【0003】
特許第3441594号公報(特許文献1)には、基材フィルム層の少なくとも一方の面が、ケイ素酸化物で構成されている無機質薄膜層を介して、シランカップリング剤を含むバリア性樹脂コーティング層で被覆されているバリア性複合フィルムであって、前記バリア性樹脂コーティング層が、塩化ビニリデン系共重合体又はエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むバリア性複合フィルムが開示されている。
【0004】
また、特開2017−114079号公報(特許文献2)には、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分として含み、かつ赤外線吸収スペクトルにおいて、特定の吸収ピーク高さを有するポリ塩化ビニル系樹脂層の少なくとも一方の面に基材フィルム層を有し、さらに前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂層と前記基材フィルム層との間に無機物層を有するバリア性フィルムが開示されている。
【0005】
しかし、これらのガスバリア性フィルムでは、近年の高度な防湿性を要求される用途、例えば、太陽電池や医薬品用途などに対しては、防湿性が十分ではなかった。例えば、医薬包装分野では、液体を封入した場合に、脱湿することで中身の濃度変化が起きるため、高度なハイガスバリアフィルムが必要であるが、液体を封入した場合には、バリア性が劣化し易い。
【0006】
なお、ポリ塩化ビニリデン系樹脂で形成された有機系バリア層と、無機系バリア層とは、層間の密着性を向上させるのが困難であり、有機系バリア層と無機系バリア層との積層構造では、元来、密着性を向上させるのが困難であり、層間の密着性を維持しながら、ガスバリア性を向上させるのは困難であった。特に、有機系バリア層は、通常、溶剤を含む液状組成物のコーティングにより製造されるため、できる限り、残留溶剤を低減させるのが望ましいが、残留溶剤の低減と層間密着性とは、トレードオフの関係にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3441594号公報(請求項1、6及び8)
【特許文献2】特開2017−114079号公報(請求項1〜3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、水蒸気などのガスに対する高いバリア性を有し、無機質層と有機質層との積層構造であっても層間密着性が高いガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、層間密着性が高く、かつ残留溶剤も低減できるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、耐屈曲性などの機械的特性に優れ、長期間に亘って防湿性を維持できるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、透明で内容物を確認できるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、基材層の少なくとも一方の面を、無機質層を介して、カルボニル基を含む第1のポリ塩化ビニリデン共重合体を含むコーティング層で被覆することにより、水蒸気などのガスに対する高いバリア性を向上でき、無機系質層と有機質層との積層構造であっても層間密着性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明のガスバリア性フィルムは、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面を被覆する無機質層と、この無機質層を被覆し、かつカルボニル基を含む第1のポリ塩化ビニリデン共重合体を含むコーティング層とを含む。前記第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルにおける170〜180ppmのシグナルの積分値は、80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.001倍以上であってもよい。前記第1のポリ塩化ビニリデン共重合体は、シアノ基をさらに含んでいてもよい。前記コーティング層は、13C−NMRスペクトルにおける170〜180ppmのシグナルの積分値が、80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.001倍未満である第2のポリ塩化ビニリデン共重合体をさらに含んでいてもよい。前記第1のポリ塩化ビニリデン共重合体と、前記第2のポリ塩化ビニリデン共重合体との重量割合は、前者/後者=99/1〜30/70程度である。前記コーティング層は、シランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。前記無機質層は酸化ケイ素であってもよい。前記ガスバリア性フィルムは、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が0.1g/m・day未満であってもよい。
【0014】
本発明には、基材層の少なくとも一方の面に無機質層を積層する無機質層積層工程、無機質層の上にコーティング層を積層するコーティング層積層工程を含む前記ガスバリア性フィルムの製造方法も含まれる。前記コーティング層積層工程において、コーティング層を形成するための液状組成物をコーティングした後、乾燥し、さらにエージングしてもよい。前記エージングは、湿潤状態でエージングしてもよい。前記コーティング層を形成するための液状組成物中の水の含有割合は0.15重量%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、基材層の少なくとも一方の面を、無機質層を介して、カルボニル基を含む第1のポリ塩化ビニリデン共重合体を含むコーティング層で被覆されているため、水蒸気などのガスに対する高いバリア性を向上でき、無機系バリア層と有機系バリア層との積層構造であっても層間密着性を向上できる。また、溶媒を利用してコーティングによりコーティング層を形成する場合、溶剤(溶媒)の使用量が少なくても密着性を向上できるため、層間密着性を維持しつつ、残留溶剤も低減できる。さらに、耐屈曲性などの機械的特性に優れ、長期間に亘って防湿性を維持できる上に、透明で内容物も確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例で使用した第1のポリ塩化ビニリデン共重合体及び第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルである。
図2図2は、実施例で得られたガスバリア性フィルムと市販のガスバリア性フィルムとのガスバリア性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[ガスバリア性フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムは、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面を被覆する無機質層と、この無機質層を被覆するコーティング層とを含み、このコーティング層が、カルボニル基を含む第1のポリ塩化ビニリデン共重合体を含むため、ガスバリア性と層間密着性とを両立できる。無機質層及びコーティング層は、それぞれ基材層の少なくとも一方の面に形成されていればよく、両面に形成されていてもよいが、通常、基材層の一方の面に形成されている。
【0018】
(基材層)
基材層の材質は、特に限定されないが、透明性や成形性などに優れる点から、ポリマーが好ましい。ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−メチルペンテン−1など)、アクリロニトリル系樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体など)、塩化ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロクロロエチレン、フッ化エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンアリレート;液晶ポリエステル;ポリアリレートなど)、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリアミド(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6/66、ポリアミド66/610などの脂肪族ポリアミド;芳香族ポリアミドなど)、ポリイミド系樹脂(例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリエーテルケトン系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトンなど)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(例えば、ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリフェニレンオキシド系樹脂(例えば、ポリフェニレンオキシドなど)、ポリパラキシレン系樹脂(例えば、ポリパラキシレンなど)、セルロース系樹脂(例えば、セロハンなど)、ゴム類(例えば、塩酸ゴムなど)などが挙げられる。
【0019】
これらのポリマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリマーのうち、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド6などのポリアミドが汎用され、ポリエステル(特にポリアルキレンアリレート系樹脂)が好ましい。
【0020】
ポリアルキレンアリレート系樹脂には、アルキレンアリレート単位を主成分として、例えば、50モル%以上、好ましくは75〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%(特に90〜100モル%)の割合で含むホモ又はコポリエステルが含まれる。コポリエステルを構成する共重合性単量体には、ジカルボン酸成分(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などのC8−20芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4−12アルカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC4−12シクロアルカンジカルボン酸など)、ジオール成分(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリC2−4アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのC4−12シクロアルカンジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオールなど)、ヒドロキシカルボン酸成分(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸など)などが含まれる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリアルキレンアリレート系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2−4アルキレンナフタレート系樹脂などが挙げられる。
【0021】
ポリアルキレンアリレート系樹脂の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算で5000〜1000000程度の範囲から選択でき、例えば10000〜500000、好ましくは12000〜300000、さらに好ましくは15000〜100000程度である。
【0022】
基材層は、ポリマーで形成されている場合、慣用のフィルム成形方法、例えば、インフレーション法やTダイ法などの溶融成形法や溶液を用いたキャスティング法などで形成できる。
【0023】
ポリマーで形成された基材層は、未延伸であってもよく、一軸又は二軸延伸処理されていてもよい。延伸法としては、例えば、ロール延伸、圧延延伸、ベルト延伸、テンター延伸、チューブ延伸や、これらを組み合わせた延伸などの慣用の延伸法が適用できる。
【0024】
延伸倍率は、所望する基材層の特性に応じて適宜設定でき、例えば、少なくとも一方の方向に1.5〜20倍、好ましくは2〜15倍程度であり、二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルムなど)の場合、例えば、フィルム引取方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の延伸倍率は、それぞれ、例えば2〜8倍、好ましくは2〜5倍、さらに好ましくは3〜4倍程度である。延伸倍率が大きすぎると、延伸フィルム自体の製造が困難となる虞があり、小さすぎると、フィルムの腰感が低下する虞がある。
【0025】
基材層の少なくとも一方の面は、無機質層との密着性を向上させるために、表面処理(例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、逆スパッタ処理、火炎処理、クロム酸処理、溶剤処理、粗面化処理、オゾンや紫外線照射処理など)されていてもよく、易接着層を有していてもよい。
【0026】
基材層の平均厚みは、例えば3〜200μm、好ましくは5〜150μm程度、さらに好ましくは10〜100μmである。
【0027】
(無機質層)
無機質層は、通常、金属又は金属化合物を含んでおり、薄膜(特に、透明性薄膜)を形成可能な金属又は金属化合物で構成されているのが好ましい。このような金属には、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル、銅などの遷移元素;亜鉛などの周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなどの周期表3B族元素;珪素、ゲルマニウム、錫などの周期表4B族元素;セレン、テルルなどの周期表6B族元素などが例示できる。また、金属化合物としては、前記金属の酸化物、窒化物、酸化窒化物、ハロゲン化物、又は炭化物などが例示できる。これらの金属又は金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
これらの金属又は金属化合物のうち、ガスバリア性のみならず透明性も向上できる点から、アルミニウムなどの周期表3B族元素、ケイ素などの周期表4B族元素、チタンなどの遷移元素の金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化物などが汎用され、酸化アルミニウム[組成式AlxOy(x,y>0)]、酸化ケイ素[組成式SiOx(0<x≦2)]が好ましい。さらに、酸化ケイ素(ケイ素酸化物)は、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素のいずれであってもよいが、組成式SiOx(1.2≦x≦1.9)である酸化ケイ素が好ましい。
【0029】
無機質層の平均厚みは、成膜方法に応じて適宜選択でき、例えば10〜300nm、好ましくは15〜250nm、さらに好ましくは20〜200nm(特に30〜100nm)程度であってもよい。特に、クラックなどの発生を防止し、均一な膜を形成してガスバリア性を保持する点から、物理的気相法では、無機質層の平均厚みを10〜100nm(特に15〜80nm)程度に調整することが好ましく、化学的気相法では、無機質層の平均厚みを50〜400nm(特に100〜300nm)程度に調整することが好ましい。無機質層の厚みが薄すぎると、ガスバリア性が低下する虞があり、厚すぎると、柔軟性が低下する虞がある。
【0030】
(コーティング層)
コーティング層は、前記無機質層の上に積層され、カルボニル基を含む第1のポリ塩化ビニリデン共重合体を含むことによって、ガスバリア性を向上できる。
【0031】
(A)第1のポリ塩化ビニリデン共重合体
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体は、主単位である塩化ビニリデンの繰り返し単位に加えて、カルボニル基を有していればよいが、本発明では、共重合体中のカルボニル基の含有割合は、13C−NMRスペクトルで評価できる。具体的には、カルボニル基に由来する170〜180ppmのシグナルの積分値は、塩化ビニリデンに由来する80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.001倍以上であってもよく、例えば0.001〜0.1倍、好ましくは0.005〜0.08倍、さらに好ましくは0.01〜0.05倍(特に0.02〜0.03倍)程度である。170〜180ppmのシグナルの積分値が小さすぎると、ガスバリア性が低下する虞がある。
【0032】
本明細書及び特許請求の範囲において、13C−NMRスペクトルは、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0033】
カルボニル基の導入形態は、特に限定されないが、通常、塩化ビニリデン単位に対して、カルボニル基を有する単位を共重合単位(共重合性モノマー単位)として含む形態である。カルボニル基を含む共重合単位を形成するための単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などのエチレン系不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルなど(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸シクロオクチルなどの(メタ)アクリル酸C4−10シクロアルキル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−12アルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルコキシC2−12アルキルエステル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレートなどのポリC2−4オキシアルキレン(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマーなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−12アルキルエステル(特に、(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステル)が好ましい。
【0034】
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体は、カルボニル基に加えて、シアノ基をさらに含んでいてもよい。本発明では、共重合体中のシアノ基の含有割合も、13C−NMRスペクトルで評価できる。具体的には、シアノ基に由来する120〜125ppmシグナルの積分値は、80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.15倍未満であってもよく、例えば0.001〜0.14倍、好ましくは0.01〜0.12倍、さらに好ましくは0.03〜0.1倍(特に0.05〜0.08倍)程度である。120〜125ppmのシグナルの積分値の値が大きすぎると、ガスバリア性が低下する虞がある。
【0035】
シアノ基の導入形態も、特に限定されないが、通常、塩化ビニリデン単位に対して、シアノ基を有する単位を共重合単位として含む形態である。シアノ基を含む共重合単位を形成するための単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系モノマーなど挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0036】
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体は、他の共重合単位をさらに含んでいてもよい。他の共重合単位を形成するための単量体としては、例えば、塩化ビニルなどの塩化ビニリデン以外の塩素含有モノマー;ブタジエン、イソプレンなどのジエン系モノマーなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、塩化ビニル、酢酸ビニルなどが汎用される。他の共重合性単位の割合は、共重合の全モノマー単位体中50モル%以下、例えば0.01〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは1〜10モル%程度である。
【0037】
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体において、主単位である塩化ビニリデン単位の割合は、共重合体の全モノマー単位中30モル%以上(特に50モル%以上)であってもよく、例えば70モル%以上(例えば70〜99モル%)、好ましくは75モル%以上(例えば75〜99モル%)、さらに好ましくは80モル%以上(例えば80〜99モル%)、特に90モル%以上(例えば90〜99モル%)であってもよい。塩化ビニリデン単位の割合が少なすぎると、ガスバリア性が低下する虞がある。
【0038】
第1の塩化ビニリデン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば10,000〜500,000、好ましくは20,000〜250,000、さらに好ましくは25,000〜100,000程度であってもよい。
【0039】
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の製造方法は、前記単量体を適宜組み合わせて、懸濁重合や乳化重合など慣用の方法によって重合させることにより製造できる。
【0040】
(B)第2のポリ塩化ビニリデン共重合体
コーティング層は、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体に加えて、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体よりもカルボニル基含量の少ない第2のポリ塩化ビニリデン共重合体を含み、両共重合体の組み合わせによって層間の密着性を向上できる。
【0041】
第2のポリ塩化ビニリデン共重合体において、カルボニル基に由来する13C−NMRスペクトルにおける170〜180ppmのシグナルの積分値は、塩化ビニリデンに由来する13C−NMRスペクトルにおける80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.001倍未満であってもよく、例えば0.0009倍以下、好ましくは0.0005倍以下、さらに好ましくは0.0001倍以下であり、実質的に0倍であってもよい(カルボニル基を含まなくてもよい)。170〜180ppmのシグナルの積分値は、小さい方が好ましく、大きすぎると、層間密着性が低下する虞がある。
【0042】
カルボニル基を含む場合、カルボニル基の導入形態、カルボニル基を含む共重合単位を形成するための単量体の種類のいずれについても、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体と同様である。
【0043】
第2のポリ塩化ビニリデン共重合体も、シアノ基を含んでいてもよい。本発明では、共重合体中のシアノ基の含有割合も、13C−NMRスペクトルで評価できる。具体的には、120〜125ppmのシグナルの積分値は、80〜85ppmのシグナルの積分値に対して0.15倍以上であってもよく、例えば0.15〜0.5倍、好ましくは0.16〜0.3倍、さらに好ましくは0.17〜0.2倍(特に0.17〜0.19倍)程度である。120〜125ppmのシグナルの積分値の値が小さすぎると、層間密着性が低下する虞がある。
【0044】
シアノ基の導入形態、シアノ基を含む共重合単位を形成するための単量体の種類のいずれについても、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体と同様である。
【0045】
第2のポリ塩化ビニリデン共重合体も、他の共重合単位をさらに含んでいてもよい。他の共重合単位を形成するための単量体の種類及び共重合体中の割合は、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体と同様である。数平均分子量についても、第1の塩化ビニリデン系樹脂の数平均分子量と同一の範囲から選択できる。
【0046】
第2のポリ塩化ビニリデン共重合体において、主単位である塩化ビニリデン単位の割合は、共重合体の全モノマー単位中30モル%以上(特に50モル%以上)であってもよく、例えば70モル%以上(例えば70〜99モル%)、好ましくは75モル%以上(例えば75〜99モル%)、さらに好ましくは80モル%以上(例えば80〜99モル%)、特に90モル%以上(例えば90〜99モル%)であってもよい。塩化ビニリデン単位の割合が少なすぎると、ガスバリア性が低下する虞がある。
【0047】
第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の製造方法は、単量体の種類を適宜選択することにより、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体と同様の方法で製造できる。
【0048】
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体と第2のポリ塩化ビニリデン共重合体との重量割合は、前者/後者=99.9/0.1〜10/90(例えば99.5/0.5〜20/80)程度の範囲から選択でき、例えば99/1〜30/70(例えば98/2〜40/60)、好ましくは97/3〜70/30(例えば95/5〜80/20)、さらに好ましくは93/7〜85/15(特に92/8〜88/12)程度である。第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の割合が少なすぎると、ガスバリア性が低下する虞があり、第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の割合が少なすぎると、層間密着性の向上効果が低減する虞がある。
【0049】
(C)シランカップリング剤
コーティング層は、層間密着性を向上できる点から、ポリ塩化ビニリデン共重合体に加えて、シランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0050】
シランカップリング剤としては、無機質層及び基材層に対する密着性を向上できる種々の化合物、例えば、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選択された少なくとも一種の官能基と、アルコキシ基とを有するケイ素化合物が含まれる。このケイ素化合物において、反応性官能基の数は1〜3(特に1又は2)程度であり、アルコキシ基の数は1〜3(特に2又は3)程度である。
【0051】
好ましいシランカップリング剤は、式:Y−(R)−SiX[式中、Yは、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選択された一種の官能基、Rは、炭化水素残基、Xは、同一又は異なるアルコキシ基を示し、nは0又は1である]で表されるケイ素化合物であってもよい。
【0052】
式中のYにおいて、ハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が含まれ、塩素原子又は臭素原子である場合が多い。エポキシ基は、例えば、炭化水素基の不飽和結合(例えば、シクロペンテニル基、シクロへキセニル基、シクロオクテニル基などのシクロアルケニル基の不飽和二重結合)の酸化により生成するエポキシ環や、グリシジル基のエポキシ環で構成されていてもよい。アミノ基には、1又は2個の低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基などのC1−4アルキル基など)が置換していてもよい。さらに、(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基により構成されていてもよい。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、フロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ基などのC1−4アルコキシ基が含まれる。好ましいアルコキシ基は加水分解性アルコキシ基(特にメトキシ基又はエトキシ基)である。
【0053】
Rで表される炭化水素残基には、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、2,2−ジメチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基など)、シクロアルケン残基(例えば、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテンなどのC4−10シクロアルケン残基など)、シクロアルケン−アルキル残基(例えば、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロペンテンなどのC4−10シクロアルケン−C1−6アルキル基など)などが挙げられる。なお、シクロアルケン残基及びシクロアルケン−アルキル残基は、前記のように二重結合のエポキシ化により生成する残基である場合が多い。好ましい炭化水素残基Rには、C1−4アルキレン残基(特にC2−4アルキレン残基)、C5−8シクロアルケン−C1−4アルキル残基(特にシクロヘキセン−C2−4アルキル残基)が含まれる。さらに、nは0又は1である。Yがビニル基である場合、nは0であり、Yが他の官能基である場合、nは1である場合が多い。
【0054】
これらのシランカップリング剤のうち、層間密着性を高度に向上できる点から、エポキシ基を含むシランカップリング剤(Yがエポキシ基であるシランカップリング剤など)が好ましい。エポキシ基を含むシランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0055】
シランカップリング剤の割合は、ポリ塩化ビニリデン共重合体の合計100重量部に対して、例えば0.05〜10重量部(例えば0.1〜10重量部)、好ましくは0.1〜7重量部(例えば0.2〜7重量部)、さらに好ましくは0.5〜5重量部(特に0.5〜3重量部)程度である。
【0056】
(D)アンチブロッキング剤
コーティング層は、生産性や取り扱い性などの点から、アンチブロッキング剤(ブロッキング防止剤又は粒子状滑剤)を含んでいてもよい。アンチブロッキング剤としては、フィルム成形時の温度より高い融点又は軟化点を有する成分、例えば、無機系微粉末(シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウムなど)、高耐熱性熱可塑性樹脂(エンジニアリングプラスチックなど)、架橋樹脂(架橋アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂、架橋メラミン系樹脂など)、熱硬化性樹脂などが例示できる。これらのうち、無機微粉末(シリカなど)、架橋樹脂(架橋ポリメタクリル酸メチルなどの架橋アクリル系樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などの架橋スチレン系樹脂など)が好ましい。
【0057】
アンチブロッキング剤は、不定形でもよいが、真球状であるのが好ましい。アンチブロッキング剤の平均粒子径は、コーティング層の厚みに応じて選択でき、例えば0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μm、さらに好ましくは0.3〜2μm程度である。
【0058】
アンチブロッキング剤の割合は、第1及び第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の合計100重量部に対して5重量部以下であってもよく、例えば0.001〜5重量部、好ましくは0.003〜1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.5重量部(特に0.01〜0.3重量部)程度である。
【0059】
(E)他の成分
コーティング層は、用途に応じて、他の成分として、他の樹脂成分、反応性接着成分、慣用の添加剤などを含んでいてもよい。
【0060】
他の樹脂成分としては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂など)、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体など)、他の塩素含有樹脂、スチレン系樹脂、石油樹脂、水溶性多糖類(水溶性セルロース誘導体、水溶性澱粉、キトサンなど)などが挙げられる。
【0061】
反応性接着成分としては、例えば、イソシアネート系化合物(トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体など)、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなど)などが挙げられる。
【0062】
慣用の添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、防腐剤、殺菌剤、可塑剤、滑剤、着色剤、粘度調整剤、レベリング剤、界面活性剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0063】
他の成分の割合は、第1及び第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の合計100重量部に対して50重量部以下、好ましくは30重量部以下(例えば0.01〜30重量部)、さらに好ましくは10重量部以下(例えば0.1〜10重量部)程度である。
【0064】
(F)コーティング層の厚み
コーティング層の平均厚みは、例えば0.05〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜5μm(特に0.3〜2μm)程度である。
【0065】
(ガスバリア性フィルムの特性)
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性が高く、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が0.1g/m・day未満であってもよく、例えば0.08g/m・day以下、好ましくは0.05g/m・day以下、さらに好ましくは0.04g/m・day以下(例えば0.01〜0.035g/m・day)、特に0.035g/m・day以下(例えば0.02〜0.035g/m・day)であってもよい。
【0066】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、水蒸気透過度は、JIS K7129に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0067】
本発明のガスバリア性フィルムは、透明性が高く、全光線透過率が30%以上であってもよく、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば80〜99%)程度であってもよい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、JIS K7361に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、NDH−7000)を用いて測定できる。
【0068】
[ガスバリア性フィルムの製造方法]
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、基材層の少なくとも一方の面に無機質層を積層する無機質層積層工程、無機質層の上にコーティング層を積層するコーティング層積層工程を含む。
【0069】
無機質層積層工程では、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な慣用の成膜方法を利用して無機質層を形成できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、真空蒸着法が好ましい。なお、基材層と無機質層との積層体は、市販品であってもよい。
【0070】
コーティング層積層工程では、コーティング層を形成するための液状組成物をコーティングした後、乾燥し、さらにエージングしてもよい。
【0071】
液状組成物は、ポリ塩化ビニリデン共重合体を含む固形分に加えて、溶剤(有機溶媒)を含んでいてもよい。溶剤は、ポリ塩化ビニリデン共重合体を溶解できれば、特に限定されず、極性溶剤(ハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素類)、非極性溶剤のいずれであってもよい。
【0072】
非極性溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどのC5−12脂肪族炭化水素など)、脂環族炭化水素類(シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどのアルキル基を有していてもよいC5−8シクロアルカンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。また、ハロゲン原子を含む炭化水素類としては、例えば、塩化炭化水素類[ハロゲン化C1−6脂肪族炭化水素(クロロホルム、四塩化炭素などの塩化メタン、トリクロロエタンなどの塩化エタンなど)など]、塩素原子及びフッ素原子を有する炭化水素類(ジクロロジフルオロエタン、トリクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなど)、臭化炭化水素類(テトラブロモエタンなど)、ヨウ化炭化水素類(四ヨウ化炭素など)などが挙げられる。
【0073】
極性溶剤としては、例えば、アセトンやメチルエチルケトンなどのジアルキルケトン類、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。
【0074】
これらの溶剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、非極性溶剤と極性溶剤との組み合わせが好ましく、両者の重量割合は、非極性溶剤/極性溶剤=1/99〜50/50(特に10/90〜40/60)程度である。特に、非極性溶剤は、芳香族炭化水素類(トルエンなど)であってもよい。また、極性溶剤は、ジアルキルケトン類(メチルエチルケトンなど)と環状エーテル類(テトラヒドロフランなど)との組み合わせであってもよく、両者の重量割合は、ジアルキルケトン類/環状エーテル類=1/99〜50/50(特に10/90〜30/70)程度である。
【0075】
液状組成物は、前記溶剤に加えて、層間密着性を向上させるために、水をさらに含んでいてもよい。液状組成物中の水の含有割合は0.1重量%以上(特に0.15重量%以上)であってもよく、例えば0.2〜1重量%、好ましくは0.25〜0.8重量%、さらに好ましくは0.3〜0.7重量%(特に0.4〜0.6重量%)程度である。溶剤の割合が少なすぎると、層間密着性の向上効果が低減する虞がある。
【0076】
コーティング方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、ブレードコーター法、バーコーター法、グラビアコーター法などが汎用される。
【0077】
乾燥は、自然乾燥であってもよいが、加熱して乾燥することにより溶媒を蒸発させてもよい。乾燥温度は、例えば160℃以下、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは100〜140℃(特に110〜130℃)程度である。乾燥時間は、例えば10秒以上であってもよく、好ましくは0.5〜5分、さらに好ましくは1〜3分程度である。
【0078】
エージング処理は、層間の密着性を向上させるために、所定の環境(温度及び湿度)で所定時間時間養生すればよい。温度は、室温であってもよいが、加温することが好ましく、好ましくは25〜70℃、さらに好ましくは30〜65℃、さらに好ましくは40〜60℃程度である。湿度も限定されず、乾燥条件であってもよいが、層間の密着性を高度に向上できる点から、湿潤条件が好ましく、例えば30%RH以上、好ましくは50%RH以上、さらに好ましくは80%RH以上(例えば80〜95%RH)であってもよい。エージング時間は、例えば5時間以上(例えば5〜72時間)であってもよいが、本発明では、エージング時間も短くてもよく、例えば10〜48時間、好ましくは12〜36時間、さらに好ましくは18〜30時間程度であってもよい。
【0079】
本発明では、柔軟性に優れた基材層を選択することにより、ガスバリア性フィルムの製造をロール・ツー・ロール方式で行うことができ、生産性を向上できる。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムの特性は、以下の方法で評価した。
【0081】
(ポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトル)
ポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(ブルカーバイオスピン(株)製「AVANCE 600MHz」)を用いて、溶媒:重THF、濃度:ポリ塩化ビニリデン共重合体50mg/0.75mlのTHF−d、測定温度:40℃、積算回数:18000回で測定を行った。
【0082】
(水蒸気バリア性)
実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムの水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(Technolox社製「DELTAPERM」)を用いて測定した。測定条件は、40℃、90%RHで行った。
【0083】
(密着性)
実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムのコート面に接着剤(東洋モートン(株)製「TM―570/CAT−RT37」)を塗布し、無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製「FHK2」、厚み30μm)とドライラミネートした。得られたラミネートフィルムを15mm幅にカットし、ガスバリアフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとの剥離強度を、引張試験機(ORIENTEC社製「RTC−1210」)を用いて180度剥離法にて測定した。
【0084】
(残留溶剤)
実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムから10cm×10cmの試験片を4枚採取し、ガラス瓶に封入した。その後100℃で30分間加熱し、容器内のガス2mlをシリンジで採取し、ガスクロマトグラフ((株)島津製作所製「GC−2014」)を用いて有機溶剤濃度を定量し、ガスバリア性フィルムの残留溶剤濃度を算出した。
【0085】
(液包装用袋のバリア性)
実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムのコート面に接着剤(東洋モートン(株)製「TM―570/CAT−RT37」)を塗布し、無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製「FHK2」、厚み30μm)とドライラミネートした。得られたラミネートフィルム2枚を、無延伸ポリプロピレンフィルム側を内側にしてインパルスシーラー(富士インパルス(株)製)を用いて3辺ヒートシール後、蒸留水50gを充填後に残り1辺をヒートシールして内寸10cm×10cmの袋を作成した。作成した袋を40℃の恒温槽に保管し、重量の経時変化量(脱湿量)を測定した。
【0086】
(第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の製造)
蒸留水100重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部、過硫酸ナトリウム0.8重量部を混合し、50℃に加温した。得られた混合液に塩化ビニリデン:アクリル酸:メタクリロニトリル=91.5:2:6.5(重量比)のモノマー混合物100重量部を徐々に添加し、反応を進行させて塩化ビニリデン共重合体の水分散体を得た。得られた水分散体を60℃の3重量%塩化カルシウム水溶液に滴下し、生成した凝集物を水洗、乾燥して第1のポリ塩化ビニリデン共重合体を得た。得られた第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルを図1に示す。図1から明らかなように、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルにおける80〜85ppmのシグナルの積分値に対する170〜180ppmのシグナルの積分値は、0.03であった。
【0087】
(第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の製造)
蒸留水100重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部、過硫酸ナトリウム0.8重量部を混合し、50℃に加温した。得られた混合液に塩化ビニリデン:メタクリロニトリル=90:10(重量比)のモノマー混合物100重量部を徐々に添加し、反応を進行させて塩化ビニリデン共重合体の水分散体を得た。得られた水分散体を60℃の3%塩化カルシウム水溶液に滴下し、生成した凝集物を水洗、乾燥して第2のポリ塩化ビニリデン共重合体を得た。得られた第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルを図1に示す。図1から明らかなように、第2のポリ塩化ビニリデン共重合体の13C−NMRスペクトルにおいて170〜180ppmのシグナルは検出されなかった。
【0088】
実施例1
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体(第1PVDC)100重量部に対して、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM−403」)5重量部を添加し、トルエン/メチルエチルケトン/テトラヒドロフラン=1/1/2(重量比)の混合溶媒に溶解させ、PVDC濃度15重量%のコーティング層用液状組成物を調製した。シリカ蒸着PETフィルム(三菱ケミカル(株)製「テックバリアLX」)の蒸着層の上に、バーコーターを用いてコーティング層用液状組成物を塗布した後、その塗膜を120℃のオーブン内で1分間乾燥させた。その後、40℃、10%RHの状態で1日間エージング処理することにより、ガスバリア性フィルム(コーティング層の平均乾燥厚み1μm)を製造した。
【0089】
実施例2〜6及び比較例1
第1のポリ塩化ビニリデン共重合体の代わりに、表1に示す割合で、第1のポリ塩化ビニリデン共重合体及び/又は第2のポリ塩化ビニリデン共重合体(第2PVDC)を使用する以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
【0090】
実施例7
乾燥温度を100℃に変更する以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
【0091】
実施例1〜7及び比較例1で得られたガスバリア性フィルムについて、バリア性、密着性、残留溶剤を評価した結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果から明らかなように、実施例のガスバリア性フィルムは、各特性のバランスに優れていた。
【0094】
実施例8
3日間エージング処理する以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
【0095】
実施例9
40℃、90%RHの状態でエージング処理する以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
【0096】
実施例8〜9で得られたガスバリア性フィルムについて、バリア性及び密着性を評価した結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2の結果から明らかなように、湿潤状態でエージングすることにより、密着性が向上した。
【0099】
実施例10
液状組成物中に水を1000ppm(重量基準)含有させる以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
【0100】
実施例11
水の割合を3000ppmに変更する以外は実施例10と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
【0101】
実施例12
水の割合を5000ppmに変更する以外は実施例10と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
【0102】
実施例10〜12で得られたガスバリア性フィルムについて、密着性を評価した結果を表3に示す。なお、実施例1の結果も、比較のため改めて表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3の結果から、ラッカーとして水を添加することにより、層間密着性が向上した。
【0105】
さらに、実施例1で得られたガスバリア性フィルム、市販のガスバリア性フィルム(凸版印刷(株)製「GX−P−F」、水蒸気透過度:0.05g/m/day)について、液包装用袋のバリア性を評価した結果を図2に示す。図2から明らかなように、実施例1のガスバリア性フィルムは、市販のガスバリア性フィルムに比べて、長期間に亘って脱湿防止性が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のガスバリア性フィルムは、食品、医薬品、農産物、電子機器、光学機器などの各種分野において、水蒸気や酸素などのガスに対してバリア性が必要なフィルムとして利用でき、例えば、食品、医薬品、精密電子部品などの包装材料や、電子機器や光学機器などの構成材料(ガスバリア性を要求される機能フィルム)などとして好適に利用できる。特に、長期間に亘って高いガスバリア性を維持できるため、高度な防湿性を要求される用途、例えば、医薬品の包装材料(例えば、液体を封入する医薬包装材料など)や、太陽電池を構成する防湿フィルムとしても好適である。
図1
図2