(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の漏出検出センサは、一対の発光素子および受光素子が並んで配置されているため、発光素子による光の照射範囲と受光素子による受光範囲とが一致しない。そのため、センサヘッドを被験者に固定したときのセンサヘッドの向きによっては、同じ部位から薬液が漏出した場合であっても、漏出した部位は受光範囲内であるが漏出した部位に発光素子からの光が照射されなかったり、その逆に、漏出した部位に光が照射されるが漏出した部位が受光範囲から外れていたりして漏出を検出できないことがあった。また、センサヘッドの固定が十分でない場合に薬液の注入中に被験者が動くなどすると、センサヘッドの密着面の一部が被験者から浮き上がってしまうことがある。受光素子に近い側でセンサヘッドが浮き上がると、受光素子は外光を受光してしまい、この外光の影響により漏出の正常な検出結果が得られなくなることがあった。
【0007】
さらに、従来の漏出検出センサでは、被験者への密着面に光の入出射のための開口部が形成されている。そのため、開口部による凹部が密着面に存在しており、この凹部は以下に述べるような幾つかの問題点を招いていた。
【0008】
センサヘッドは、繰り返し使用され、また、注入する薬液が付着することもあるため、衛生上の観点から使用のたびに清掃する必要がある。しかし、開口部による凹部に薬液が入り込んだ場合は、それを除去するのは容易ではない。さらに、薬液が凹部に残った状態でセンサヘッドが使用された場合は、薬液によって光が散乱されることがあり、検出感度が低下してしまう。
【0009】
本発明の目的の一つは、センサヘッドの固定される向きに依存することなく薬液の漏出を検出することのできる漏出検出センサを提供することである。また本発明の他の目的は、センサヘッドが浮き上がった場合であっても外光の影響を受けにくく安定して薬液の漏出を検出することのできる漏出検出センサを提供することである。本発明のさらに他の目的は、センサヘッドの被験者との密着面の構造に関わる様々な不具合を解消し得る漏出検出センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の漏出検出センサは、被験者の血管内に注入されるべき薬液が血管外に漏出したことを検出する漏出検出センサであって、
被験者に照射する光を出射する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子から出射して前記被験者で反射した光を受光する1つの受光素子と、
を有し、
前記複数の発光素子は、前記1つの受光素子を取り囲んで配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の薬液注入システムは、本発明の漏出検出センサと、
前記漏出検出センサが漏出の検出対象とする薬液を注入する薬液注入装置と、
を有し、
前記薬液注入装置は、前記薬液の注入動作および前記漏出検出センサの動作を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明において、漏出検出センサは、発光素子および受光素子を内部に保持する筐体をさらに有し、筐体は、発光素子および受光素子と対向する位置に、光を通過させるための複数の開口部が形成され、使用時に被験者の体表面に密着される密着面を有することができる。この場合、受光素子と対向する開口部は、密着面の中央に形成されていることが、外光の影響をより受けにくくなるため好ましい。さらに、筐体の密着面と反対側の面である上面をドーム状に形成すれば、粘着シートにより筐体を覆って被験者に筐体を固定する場合に、筐体がより強固に固定される。また、発光素子が出射する光を透過する透光部材が開口部に嵌め込まれており、これによって密着面が、透光部材の下面も含めて平坦とされるように構成することで、開口部によって密着面に形成される凹部に起因する様々な不具合が解消される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の発光素子および1つの受光素子が上記のように配置されることで、センサを被験者に固定する向きにかかわらず、薬液の漏出を良好に検出でき、センサを被験者に固定する際の自由度が向上する。さらに、複数の発光素子が受光素子を取り囲んで配置されることにより、受光素子は外光の影響を受けにくくなるため、より安定した検出が可能となる。
【0014】
また、漏出検出センサが、発光素子および受光素子を内部に保持する筐体を有している場合、筐体の被験者との密着面に形成される開口部に透光部材を嵌め込み、透光部材の下面も含めて密着面を平坦とすることにより、密着面に異物や薬液が溜りにくくなるので、異物や薬液による検出感度の低下を防止することができる。仮に、異物や薬液が密着面に付着した場合であっても、付着した異物や薬液を容易に除去することができる。さらに、開口部に透光部材を嵌め込んだ構成によれば、開口部が形成された部分では透光部材が被験者に密着し、筐体と被験者との間で一定の密着状況を得ることができるので、より安定した検出結果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、センサヘッド10、センサ制御部20および漏出判断部30を有する本発明の一実施形態による漏出検出センサ1のブロック図が示される。
【0017】
センサヘッド10は、薬液注入の際、被験者に密着させた状態で固定されて使用され、複数の発光素子11および1つの受光素子12を有している。発光素子11は、電圧が印加されることによって所定の波長の光を出射する素子であり、発光素子11としては、例えば、赤外線を出射する発光ダイオードを用いることができる。受光素子12は、少なくとも発光素子11が出射する波長の光を受光することによって、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子であり、変換された電気エネルギーにより電気的出力が得られる。受光素子12としては、例えばフォトトランジスタを用いることができる。
【0018】
センサ制御部20は、発光素子11および受光素子12の動作の制御回路として構成され、予め設定された手順に従ってどの発光素子11をどのタイミングで駆動するかを制御する。漏出判断部30は、受光素子12から出力された電気的出力値の変化に基づいて薬液の漏出を判断し、漏出が生じたと判断した場合に、電気信号である漏出検出信号を出力する電気回路である。
【0019】
図2および
図3に示すように、センサヘッド10は、例えば樹脂等により形成され、使用時に被験者に密着される密着面17が略円形かつ平坦とされ、その反対側の面である上面が略ドーム状とされた形状を有することができる。筐体15は、閉じたケースとして構成されており、複数の発光素子11および1つの受光素子12が内部に保持されている。筐体15の上面中央部には2つの直線状の溝15aが、互いに直交して十字溝となるように形成されている。
【0020】
さらに
図4を参照すると、本実施形態では、4つの発光素子11および1つの受光素子12を有している。これら発光素子11および受光素子12は、基板13に実装されて筐体15内に固定されている。受光素子12は、筐体15の密着面17の中心に相当する位置に実装され、4つの発光素子11は、受光素子12を、受光素子12から等距離でかつ等角度間隔で取り囲んだ位置に実装されている。発光素子11および受光素子12のこのような配置により、すべての発光素子11による発光領域の中心と、受光素子12による受光領域の中心が一致する。本実施形態では4つの発光素子11を有するので、これら発光素子11が、受光素子12を中心に90度間隔で配置される。
【0021】
上記のように1つの受光素子12および4つの発光素子11が配置された基板13は、密着面17側から見たときに、例えば、受光素子12が2つの溝15a(
図2参照)の交点上に位置し、かつ、4つの発光素子11が2つの溝15aのそれぞれに対して線対称に配置されるように筐体15に固定される。
【0022】
筐体15の密着面17には、中央の開口部17a、およびその周囲の4つの開口部17bが形成されている。
【0023】
開口部17aは、筐体15の内部に配置された受光素子12と対向するように密着面17の中心に位置しており、受光素子12は、この開口部17aを通って筐体15の内部に入射した光を受光する。このようにして、受光素子12には、開口部17aを通過して筐体15の内部に入射した光を作用させる。よって、筐体15は、それ自身が外光を透過させないように構成されることが好ましい。そのためには、例えば、筐体15を、外光を透過しない材料で形成するか、筐体15の内面を塗装などによって黒色とするか、またはこれらを組み合わせて構成することができる。
【0024】
4つの開口部17bは、それぞれが各発光素子11と対向するように開口部17aを中心に等角度間隔で形成されており、各発光素子11からの光はそれぞれ対向する開口部17bを通って筐体15の外部へ出射される。
【0025】
発光素子11による光の照射範囲および受光素子12による受光範囲は、それぞれ開口部17bおよび17aの形状の影響を受ける。よって、発光素子11から出射した光の効率的な利用という観点からは、開口部17a、17bの形状は円形であることが好ましい。
【0026】
図5に、中央の開口部17aが形成された部分でのセンサヘッド10の要部縦断面図を示す。
図5に示すように、開口部17aには、発光素子11(
図5では不図示)が出射する光を透過する透光部材18が、筐体15の内側から嵌め込まれている。透光部材18は、開口部17aの内周面との間に隙間が生じないように、開口部17aの開口形状と等しいサイズおよび形状の横断面を有している。
【0027】
透光部材18の厚み方向一端にはフランジ部18aが形成されている。透光部材18は、フランジ部18aを筐体15の内側に位置させて取り付けられており、このフランジ部18aを筐体15の内面に接着することによって、開口部17aから外れないように筐体15の内面に保持されている。フランジ部18aの接着には接着剤を用いることもできるし、接着テープを用いることもできる。また、透光部材18がフランジ部18aを有することにより、異物や薬液が筐体15の内部に浸入し難い構造となっている。透光部材18のフランジ部18aを除いた部分の厚さは筐体15の下壁の厚さと等しく、これにより、筐体15の下面と透光部材18の下面とは同一平面上に位置している。
【0028】
図5では、受光素子12に対向する開口部17aに関連する構造について説明したが、発光素子11に対向する開口部17bもこれと同様に構成され、各開口部17bにそれぞれ透光部材18が筐体15の内側から嵌め込まれて保持されている。各開口部17a、17bに透光部材18が嵌め込まれることにより、筐体15の下面全体は、透光部材18の下面も含めて平坦な密着面17を形成する。
【0029】
また、
図5では透光部材18が接着によって筐体15の内面に保持されていることを示したが、
図6に示すように、筐体15の下壁5aと基板13との間に位置するように筐体15に形成された押さえ部材19により透光部材18のフランジ部18aを筐体15の内側から下壁5aに押さえ付けられることで、透光部材18を筐体15の内面に保持することもできる。
【0030】
このように、透光部材18がフランジ部18aを有することで、このフランジ部18aを利用して透光部材18を様々な方法で筐体15に保持させることができる。フランジ部18aを利用して透光部材18を保持させることで、透光部材18を透過する光に何ら影響を与えることなく、透光部材18を筐体15に確実に保持することができる。
【0031】
さらに、
図5に示したように、筐体15の内部には、開口部17a(各開口部17b)およびそれと対向する受光素子12(各発光素子11)を全周にわたって取り囲む隔壁5bが、筐体15の下壁5aから基板13に向かって延びて形成されている。これにより、各発光素子11から開口部17bを通過して筐体15の外部へ出射する光の経路、および筐体15の外部から開口部17aを通過して受光素子12に到達する光の経路をそれぞれ独立させ、その結果として漏出の検出精度を向上させることができる。
図6に示した透光部材18の保持構造においても、
図5に示した隔壁5bと同様の効果を押さえ部材19によって達成できるようにするために、押さえ部材19を、開口部17a(開口部17b)および受光素子12(発光素子11)を全周にわたって取り囲むように形成することができる。
【0032】
再び
図2および
図3を参照すると、筐体15からは、電気信号を伝送するケーブル16が延びており、
図1に示したブロック図においては、センサ制御部20および漏出判断部30が、このケーブル16を介してセンサヘッド10と電気的に接続される。センサ制御部20および漏出判断部30は、これらを一つにまとめた独立のユニットとしてセンサヘッド10とは別に構成されてもよいし、センサヘッド10に組み込まれてもよいし、この漏出検出センサ1とともに使用されて、漏出検出センサ1が漏出の検出対象とする薬液を被験者に注入する薬液注入装置の機能の一つとして構成されてもよい。センサ制御部20および漏出判断部30がセンサヘッド10に組み込まれる場合、ケーブル16は、例えば電力供給用のケーブルとして使用される。さらには、センサ制御部20と漏出判断部30とが別々のユニットで構成されていてもよく、それらの何れかを、センサヘッド10に組み込んだり、薬液注入装置の機能の一つとして構成したり、センサヘッド10および薬液注入装置とは別に構成したりすることもできる。本発明においては、漏出検出センサ1と薬液注入装置との組み合わせを薬液注入システムと呼ぶ。
【0033】
センサ制御部20および漏出判断部30が独立のユニットとして構成される場合、漏出判断部30による判断結果を操作者に知らせるために、漏出検出センサ1は、表示装置および/または音声出力装置をさらに含むことができる。
【0034】
一方、センサ制御部20および漏出判断部30が薬液注入装置の機能の一つとして構成される場合、これらセンサ制御部20および漏出判断部30は薬液注入装置の内部に組み込まれるため、センサヘッド10はケーブル16を介して薬液注入装置と接続されることになる。ケーブル16は、適宜のコネクタ(不図示)によって薬液注入装置に対して着脱自在に接続されてもよい。
【0035】
漏出検出センサ1には電源装置(不図示)が接続され、漏出検出センサ1は、この電源装置から供給される電力で作動する。電源装置としては、商用電源より交流電力を入力して所定の直流電力を出力する直流電源や、乾電池、二次電池、燃料電池などのバッテリーを使用することができる。
【0036】
通常、漏出検出センサ1を作動させるために専用の電源装置が用意されるが、センサ制御部20が薬液注入装置に組み込まれている場合は、薬液注入装置に電力を供給する電源装置を薬液注入装置と共用し、薬液注入装置用の電源装置からセンサ制御部20へ電力を供給することができる。
【0037】
漏出判断部30は、薬液注入装置の制御部に接続され、漏出判断部30から出力された漏出検出信号が薬液注入装置の制御部に入力されるようにすることが好ましい。こうすることによって、薬液注入装置の制御部は、入力された漏出検出信号に基づいて薬液の注入動作を停止させ、漏出を最小限に抑えることができる。
【0038】
以上のように漏出検出センサは、全ての機能がセンサヘッド10に内蔵されたり、一部の機能がセンサヘッド10とは別ユニットで構成されたり、一部の機能が薬液注入装置に組み込まれて構成されたり、あるいは、一部の機能がセンサヘッド10と別ユニットで構成され、かつ、残りの機能の一部が薬液注入装置に組み込まれて構成されたりすることができる。センサヘッド10と、センサヘッド10とは別に構成されたユニット(薬液注入装置に組み込まれたユニットも含む)との接続は、前述したケーブル16等を介した有線接続によってもよいし、無線接続によってもよい。
【0039】
薬液注入装置について、
図7および
図8を参照して説明する。
【0040】
薬液注入装置100は、例えば
図7に示すように、スタンド111の上部に旋回可能に取り付けられた注入ヘッド110と、ケーブル102で注入ヘッド110と電気的に接続された注入制御ユニット101とを有している。注入制御ユニット101は、メイン操作パネル103、表示手段と入力手段を兼ねたタッチパネル104を有している。注入制御ユニット101は、不図示のケーブルで注入制御ユニット101の本体に電気的に接続された、補助的な入力手段であるハンドユニット(不図示)等をさらに備えていてもよい。
【0041】
注入制御ユニット101は、この薬液注入装置の動作全般を制御するための制御部として機能する、CPU、RAMおよびROMを含む1つのコンピュータユニットを含んでいる。漏出検出センサ1のセンサ制御部20および漏出判断部30(
図1参照)が薬液注入装置100の機能の一つとして構成される場合は、センサ制御部20および漏出判断部30は、このコンピュータユニットの中に構成することができる。また、漏出判断部30による判断結果は、タッチパネル104に表示させることができる。
【0042】
注入ヘッド110は、
図8に示すように、2つのシリンジ200C、200Pを並列に着脱自在に装着する。シリンジ200C、200Pは、末端にシリンダフランジ221aが形成されるとともに先端にノズル部221bが形成されたシリンダ221と、シリンダ221内に進退移動可能に挿入されたピストン222とを有している。
【0043】
ピストン222がシリンダ221の先端へ向けて前進することで、充填されている薬液が、ノズル部221bを介してシリンジ200C、200Pから押し出される。各シリンジ200C、200Pのノズル部221bには、先端に注入針が接続されて中間で二股に分岐した延長チューブ230の2つの末端部が連結され、これらシリンジ200C、200Pおよび延長チューブ230などでシリンジユニットが構成される。注入針を被験者の血管に穿刺して、シリンジ200C、200Pに充填されている薬液を被験者に注入することができる。シリンジ200C、200Pに充填される薬液としては、造影剤および生理食塩水などが挙げられ、例えば、一方のシリンジ200Cに造影剤を充填し、もう一方のシリンジ200Pに生理食塩水を充填することができる。
【0044】
注入ヘッド110の上面先端部には、2つのシリンジ200C、200Pが載せられるシリンジ受け120が備えられている。シリンジ受け120は、シリンダ221の外周面を受け入れるように形成された2つの凹部120aを有する。また、シリンジ受け120には、シリンジ200C、200Pのシリンダフランジ221aを保持するシリンジアダプタ121、122が着脱自在に装着される。
【0045】
シリンジ受け120に載せられたシリンジ200C、200Pは、ノズル部221bを先端側に向けた状態でシリンダ221を凹部121内に位置させ、シリンダフランジ221aが保持されることで、注入ヘッド110に固定された状態で装着される。ただし、シリンジ200C、200Pには種々のサイズおよび/形状のものが存在し、それら全ての種類のシリンジ200C、200Pのシリンダフランジ221aを共通の保持構造で保持するのは困難である。そこで、本形態では、装着されるシリンジ200C、200Pの形状ごとに、それぞれシリンダフランジ221aを保持するのに適した保持構造を有してシリンジ受け120に着脱自在に装着される複数種類のシリンジアダプタ121、122を用意し、使用するシリンジアダプタ121、122をシリンジ200C、200Pの種類に応じて交換することで、種々のサイズおよび/またはシリンジ200C、200Pを注入ヘッド110に装着できるようにしている。
【0046】
注入ヘッド110には、装着されたシリンジ200C、200Pのピストン222を別々にまたは同時に前進/後退させるために互いに独立して駆動される2つのピストン駆動機構130が、各シリンジ200C、200Pが装着される位置に対応して設けられている。
【0047】
ピストン駆動機構130は、駆動モータ(不図示)、駆動モータの回転出力を直線運動に変換する運動変換機構(不図示)、およびピストン222を前進および後退させるために、運動変換機構に連結されてピストン222の末端部を係脱自在に保持するピストン保持機構(不図示)とを有する。このようなピストン駆動機構130としては、薬液注入装置で一般に用いられる公知の機構を用いることができるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0048】
薬液注入装置100による薬液の注入に際して、注入ヘッド110は、被験者が待機している処置室に設置されるが、注入制御ユニット101は、処置室とは別の操作室に設置されることが多い。よって、漏出検出装置1のセンサ制御部20および漏出判断部30が薬液注入装置100の機能の一つとして構成される場合、被験者に固定されるセンサヘッド10は、注入制御ユニット101にではなく、被験者の近くに配置される注入ヘッド110に接続されるようにすることが好ましい。
【0049】
次に、本実施形態の漏出検出センサ1の動作について説明する。
【0050】
センサヘッド10を被験者に固定するのに先立って、注入針が被験者の血管に穿刺される。通常は、被験者の腕の血管に注入針が穿刺される。注入針を穿刺した後、センサヘッド10は、その密着面17の中心(センサヘッド10の中心)が、穿刺された注入針の先端のほぼ真上に位置するように、好ましくは注入針の先端が密着面17の中心(センサヘッド10の中心)より手前になるように、粘着シートを用いて被験者に固定される。
【0051】
この際、前述したように筐体15の上面に溝15aが形成されていれば、注入針の先端のほぼ真上、好ましくは注入針の先端よりも先の位置に溝15aの交点を位置させることによって、注入針とセンサヘッド10との位置合わせを容易に行なうことができる。また、注入針は血管に沿って穿刺されるので、筐体15に形成された何れかの溝15aの長手方向が注入針の穿刺方向と一致するように筐体15を固定すれば、発光素子11が血管に対して線対称に配置されることになり、造影剤の血管外漏出をより良好に検出することができるようになる。
【0052】
なお、本実施形態において筐体15の上面に形成した溝15aは、センサヘッド10(筐体15)を被験者に固定する際のおおよその位置および/または向きの目安を示す目印として機能する。この機能を果たす限り、溝15aは十字状に限定されず任意の形状であってよい。また、筐体15の上面に形成される目印は、目視できるものであれば任意の形態とすることができ、溝15aの代わりに、凸状部として形成したり、印刷によって形成したりしたものであってよい。
【0053】
センサヘッド10を被験者に固定するための粘着シートとしては、両面粘着シートあるいは片面粘着シートを使用することができる。粘着シートとして両面粘着シートを用いれば、両面粘着シートを被験者の体表面に貼付し、さらにその上にセンサヘッド10の密着面17を押し付けることによってセンサヘッド10を被験者に固定することができる。あるいは、粘着シートとして比較的大面積の片面粘着シートを用いることもでき、その場合は、センサヘッド10を覆うようにして、センサヘッド10と一緒に片面粘着シートを被験者に貼付することによってセンサヘッド10を被験者に固定することができる。さらには、これらの両方を併用することもできる。
【0054】
前述したように、センサヘッド10の筐体15はドーム状に形成されている。このことにより、センサヘッド10を粘着シートで覆って固定する場合、センサヘッド10の上面が平面である場合と比較して、粘着シートと筐体15との接着面積がより大きくなるため、センサヘッド10を被験者に対してより安定して固定することができる。
【0055】
センサヘッド10が被験者に固定された後、操作者による所定の操作により、漏出検出センサ1による漏出検出動作が開始される。
【0056】
漏出検出動作では、発光素子11がパルス駆動され、発光素子11から光が出射される。出射された光は、開口部17bを通って被験者を照射する。被験者に照射された光は、被験者の体表面および体内において一部が反射し、反射した光の一部が、開口部17aを通って筐体15内に入射し、受光素子12によって受光される。受光素子12は、受光した光の強度に応じた電気的な出力値(例えば電圧値または電流値)を漏出判断部30に出力する。
【0057】
ここで、薬液の血管外漏出が生じていなければ、受光素子12からの出力値は変化しない。ところが、薬液の血管外漏出が生じると、被験者の体内に入射した光の一部が血管外の周辺組織に漏出した薬液によって吸収され、結果的に反射光の強度が減少するので、受光素子12の受光強度が低下する。そのことによって、受光素子12からの出力値が変化し、漏出判断部30は、受光素子12からの出力値の変化の大きさが、所定の大きさ以上となった場合に、血管外漏出が生じたと判断する。
【0058】
漏出判断部30による判断結果は、従来と同様に扱われ、例えば薬液注入装置の制御部に出力される。薬液注入装置の制御部は、漏出判断部30からの出力を受けて、血管外漏出が発生したことを表示デバイスに表示させたり、薬液の注入動作を停止させたりする。
【0059】
以上説明した本実施形態の漏出検出センサ1によれば、1つの受光素子12の周囲に4つの発光素子11が配置されていることにより、全ての発光素子11からの光の照射範囲を合成した総照射範囲の中心と受光素子12による受光範囲の中心とがほぼ一致する。その結果、センサヘッド10をどのような向きで被験者に固定したとしても、センサヘッド10の向きに依存することなく薬液の漏出を検出することができ、センサヘッド10を被験者に固定する際の自由度が向上する。
【0060】
また、4つの発光素子11が1つの受光素子12を取り囲むように配置されていることにより、4つの発光素子11は、受光素子12の外側全周において光を被験者に照射する。そのことにより、仮にセンサヘッド10が剥がれて密着面17の一部が被験者から浮き上がった場合でも、受光素子12は外光の影響を殆ど受けることがないので、安定した検出結果を得ることができる。
【0061】
ここで、後述するように一部の発光素子11のみを駆動した場合に、駆動していない発光素子11側でセンサヘッド10の浮き上がりが生じると、外光が密着面17と被験者の体表面との間で反射を繰り返しながら進行し、最終的には開口部17aを介して受光素子12まで達してしまう場合が考えられる。これを防止するために、本実施形態では密着面17の少なくとも開口部17aの周囲を含む領域を黒色とし、外光が密着面17で吸収されやすいようにしている。これによって、外光の影響がより排除され、より安定した検出結果を得ることができる。
【0062】
センサヘッド10の剥がれについては、例えば以下のようにして検出することができる。
【0063】
センサヘッド10が剥がれると、受光素子12は、外乱光を検出し、受光強度が高くな
るので、外乱光を検出しない場合と比べて出力値が高くなる。従って、発光素子11から
の光を検出するタイミングでの受光素子12からの出力値が、薬液の血管外漏出がない場
合の出力値よりも高ければ、受光素子12は発光素子11からの光以外の光、すなわち外
乱光を受光したということであり、漏出判断部30は、センサヘッド10に剥がれが生じ
たと判断することができる。また、発光素子11からの光を検出するタイミングではない
タイミングで受光素子12から所定の値以上の出力値が得られた場合、本来は受光素子1
2が光を受光しない状態で光を受光したということであるので、この場合も、漏出判断部
30は、センサヘッド10に剥がれが生じたと判断することができる。
【0064】
4つの発光素子11は、全てを同時に駆動してもよいし、発光タイミングをずらして駆動してもよいし、またはこれらを組み合わせ、全ての発光素子11の同時駆動と発光タイミングをずらした駆動とを交互に繰り返してもよい。全ての発光素子11を同時に駆動することによって、大光量が得られるので、体表面からより深い部位での漏出も検出することができる。一方、各発光素子11の発光タイミングをずらして駆動する場合、全ての発光素子11がバランスよく駆動されれば、駆動する発光素子11の数および駆動する順番は任意であってよく、例えば、時計回りまたは反時計回りに順番に一つずつ所定のタイミングで発光素子11を駆動することができる。あるいは、全ての発光素子11を、向かい合う2個を1つのグループとする2つのグループに分け、各グループを交互に発光タイミングをずらして所定のタイミングで駆動したりすることができる。駆動する発光素子11および発光素子11の駆動タイミングは、センサ制御部20によって制御される。このように、複数の発光素子11のうち一部の発光素子11のみが発光するように発光タイミングをずらして駆動することによって、薬液の漏出が検出されたとき、どの発光素子11を駆動したタイミングで漏出が検出されたかにより、漏出が発生したおおよその部位を予測することができる。
【0065】
さらに、本実施形態の漏出検出センサ1は、光を通過させるために筐体15に形成された開口部17a、17bに透光部材18を嵌め込み、密着面17を凹凸のない平坦面としている。その結果、密着面17に異物や薬液が溜りにくくなるので、これら異物や薬液による検出感度の低下を防止することができる。仮に異物や薬液が密着面17に付着した場合であっても、密着面17が平坦であるので、その除去は極めて容易である。
【0066】
ところで、従来の一般的なセンサヘッドでは、
図9に示すように、平板状の透光部材1018が筐体の内側から開口部1017aを塞ぐように保持されているので、密着面1017を被験者に密着させても、開口部1017aの部分において、被験者の体表面と透光部材1018との間に、被験者と密着しない空気層が形成される。発光素子1011により被験者に照射される光、および被験者の体内で反射して受光素子1012に入射する光は、この空気層を通過する。しかし、空気層は、被験者へのセンサヘッドの押圧力の違いおよび被験者の体の弾性の違いなどにより、厚みや被験者の体表面との境界面形状が変化し、様々なレンズとして作用するので、それが不安定な検出結果を招く要因となっていた。
【0067】
これに対して本形態のセンサヘッド10では、開口部17a、17bに透光部材18が嵌め込まれることにより、開口部17a、17bが形成された部分では透光部材18が被験者に密着される。そのため、発光素子11から出射した光は、従来のように空気層を通過することなく、被験者の体内で反射して受光素子12に入射する。つまり、開口部17a、17bが形成された部位では透光部材18が被験者に密着するようにすることで、密着面17と被験者との間で一定の密着状況を得ることができ、結果的に、センサヘッド10の被験者への押圧力や被験者の体の弾性などに依存しない、安定した検出結果を得ることができる。
【0068】
なお、受光素子12からの出力値は被験者によるばらつきが生じるため、通常は、漏出検出に先だって、薬液が注入されていない状態においてキャリブレーションを実施し、キャリブレーションによって得られた出力値を基準値とする。
【0069】
以上、本発明を代表的な実施形態によって説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0070】
例えば、発光素子11の数は、上記実施形態では4個の場合で説明したが、受光素子12を取り囲んで配置さえされていれば、2個としたり、3個としたり、あるいは5個以上とすることができる。発光素子11の数が4個以外の場合であっても、発光素子11の駆動については、前述したように、各発光素子11を1つずつ発光タイミングをずらして駆動したり、発光素子11をそれぞれ複数の発光素子11からなる複数のグループに分けて各グループ毎に発光タイミングをずらして駆動したりすることができる。一般的には、発光素子11の数が少なくなるほど、前述したような、センサヘッド10の向きの依存性を排除する効果、および安定した検出性能が低下する傾向があり、また、発光素子11の数が多くなるほど、センサヘッド10は構造が複雑になるとともに大型化してしまう。よって、発光素子11の数は、これらのバランスを考慮して決定され、具体的には4〜6個程度とすることが好ましい。
【0071】
また、上述した実施形態では、筐体15がドーム状に形成されたセンサヘッド10を示したが、筐体の形状は、被験者への密着面が平坦であれば任意の形状であってよい。例えば、
図10〜
図12に示すように、センサヘッド50は、密着面57を一端面とする扁平な円柱状の形状を有している筐体55を有することができる。この筐体55の内部に、上述した実施形態と同様、複数の発光素子(不図示)および1つの受光素子(不図示)が配置される。
【0072】
被験者への密着面57には、受光素子に対応する1つの開口部57aおよび発光素子に対応する複数の開口部57bが形成される。筐体55の上面には、センサヘッド50を被験者に固定する際のセンサヘッド50と注入針との位置合わせに利用される複数の凸状部55aが十字状に形成されている。筐体55の内部に配置された発光素子および受光素子は、ケーブル56を介して薬液注入装置と接続することができる。