特許第6577077号(P6577077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6577077回生ブレーキシステムのための制御装置および回生ブレーキシステムを運転するための方法
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  • 特許6577077-回生ブレーキシステムのための制御装置および回生ブレーキシステムを運転するための方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577077
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】回生ブレーキシステムのための制御装置および回生ブレーキシステムを運転するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20190909BHJP
   B60T 8/176 20060101ALI20190909BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60T8/17 C
   B60T8/176 Z
   B60L7/24 D
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-38130(P2018-38130)
(22)【出願日】2018年3月5日
(62)【分割の表示】特願2016-570257(P2016-570257)の分割
【原出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-122854(P2018-122854A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】102014210559.5
(32)【優先日】2014年6月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】エルバン,アンドレアス
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−322803(JP,A)
【文献】 特開2002−104156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60T 7/12−8/1769
8/32−8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生ブレーキシステムのための制御装置であって、
電子制御回路を有しており、該電子制御回路によって、前記回生ブレーキシステムを備えた車両の、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに、前記回生ブレーキシステムの電動機を用いてそれぞれ作用させようとする少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクに関連した少なくとも1つの目標値(Mfinal)が規定可能であり、また、少なくとも1つの規定された前記目標値(Mfinal)に対応する少なくとも1つの制御信号が前記電動機にアウトプット可能である形式のものにおいて、
前記電子制御回路は、
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールにおいてそれぞれ発生する摩擦値に関連した少なくとも1つの提供された第1の値(fr1,fr2)を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールに作用させようとする少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクに関連した少なくとも1つのプリセット値(Mhyd)を規定するために、また、少なくとも1つの規定された前記プリセット値(Mhyd)を少なくとも考慮して、少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定するために設計されており、
ジェネレータ式に制動可能なすべての前記ホイールに等しく作用させようとする前記液圧式の最小ブレーキトルクのための前記プリセット値(Mhyd)が、前記第1の値(fr1,fr2)の最小値(min(fr1,fr2))を考慮して前記電子制御回路によって規定可能である
ことを特徴とする回生ブレーキシステムのための制御装置。
【請求項2】
前記電子制御回路が、
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールのための少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax1)を、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれの前記ホイールに作用させようとする全ブレーキトルク(Mtotal)と、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれの前記ホイールのためのプリセット値(Mhyd)として規定された前記液圧式の最小ブレーキトルク(Mhyd)とから成る差分として規定するために、また、少なくとも1つの規定された前記第1の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax1)を考慮して少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定するために設計されている
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記電子制御回路が、
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールにおいてそれぞれ発生するホイール接地力の最小値(Min(F1,F2))に関連した少なくとも1つの提供された第2の値(F1,F2)および予め設定された特性曲線(k2)を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールのための少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax2)を規定するために、また、少なくとも1つの規定された前記第2の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax2)を追加的に考慮して少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定するために設計されている
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記電子制御回路が、
前記電動機の起動電位に関連した供給された情報を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールのための少なくとも1つの第3の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax3)を規定するために、また、少なくとも1つの規定された前記第3の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax3)を追加的に考慮して少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定するために設計されている
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記電子制御回路が、
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールのために、それぞれの前記第1の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax1)と、それぞれの前記第2の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax2)および/またはそれぞれの前記第3の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax3)とから成る少なくとも1つの最小値(Min)を規定するために、また、少なくとも1つの前記最小値(Min)を考慮して少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定するために設計されている
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記電子制御回路が、
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールの少なくとも1つのホイール速度値(v1,v2)を、予め設定された少なくとも1つの閾値(v0)と比較するために、また、少なくとも1つの前記ホイール速度値(v1,v2)が少なくとも1つの予め設定された前記閾値(v0)を下回っている限り、少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定する際に、少なくとも1つの前記目標ジェネレータブレーキトルクの安定化または低下だけを許容するために設計されている
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
回生ブレーキシステムを運転するための方法であって、
前記回生ブレーキシステムの電動機によって、前記回生ブレーキシステムを備えた車両の少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールに作用させようとする少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクに関連した少なくとも1つの目標値(Mfinal)を規定するステップと、
少なくとも1つの規定された前記目標値(Mfinal)を考慮して、前記電動機を制御するステップと、
を有している方法において、
少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定するために、少なくとも、
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールにおいてそれぞれ発生する摩擦値に関連した少なくとも1つの第1の値(fr1,fr2)を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールに作用させようとする少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクに関連した少なくとも1つのプリセット値(Mhyd)を規定するステップと、
少なくとも1つの規定された前記プリセット値(Mhyd)を考慮して、少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定するステップとを実行し、
ジェネレータ式に制動可能なすべての前記ホイールに等しく作用させようとする前記液圧式の最小ブレーキトルクのための前記プリセット値(Mhyd)を、前記第1の値(fr1,fr2)の最小値(min(fr1,fr2))を考慮して規定する
ことを特徴とする回生ブレーキシステムを運転するための方法
【請求項8】
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールのための少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax1)を、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれの前記ホイールに作用させようとする全ブレーキトルク(Mtotal)と、それぞれのジェネレータ式に制動可能な前記ホイールのためのプリセット値(Mhyd)として規定された前記液圧式の最小ブレーキトルク(Mhyd)とから成る差分として規定し、少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を、少なくとも1つの規定された前記第1の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax1)を考慮して規定する
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
予め設定された特性曲線(k2)および、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールにおいてそれぞれ発生するホイール接地力(F1,F2)に関連した少なくとも1つの提供された第2の値(F1,F2)を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールのための少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax2)を規定し、少なくとも1つの規定された前記第2の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax2)を追加的に考慮して、少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定する
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電動機の起動電位に関連した、提供された情報を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールのための少なくとも1つの第3の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax3)を規定し、少なくとも1つの規定された前記第3の最大ジェネレータブレーキトルク(Mmax3)を追加的に考慮して、少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定する
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つの前記ホイールの少なくとも1つのホイール速度値(v1,v2)を少なくとも1つの予め設定された閾値(v0)と比較し、少なくとも1つの前記ホイール速度値(v1,v2)が少なくとも1つの予め設定された前記閾値(v0)を下回っている限り、少なくとも1つの前記目標値(Mfinal)を規定する際に、少なくとも1つの前記目標ジェネレータブレーキトルクの安定化または低下だけを許容する
請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生ブレーキシステムのための制御装置に関する。また本発明は、回生ブレーキシステムを運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、車両の回生ブレーキシステムを運転するための方法、および車両の回生ブレーキシステムのための制御装置について記載されている。この方法を実施する際に、回生ブレーキシステムのブレーキ回路の少なくとも1つの弁が、回生ブレーキシステムのジェネレータの運転前および/または運転中に、ブレーキ液が少なくとも部分的に開放された少なくとも1つの弁を介して、回生ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダからおよび/または少なくとも1つのブレーキ回路から、少なくとも1つの蓄圧容積部内に押しやられるように、制御される。このような形式で、ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内のブレーキ圧増大が制限可能または阻止可能である。好適な形式で、純粋な回生制動が可能である程度に多量のブレーキ液が少なくとも1つの容積蓄積部内に押しやられる。この場合、ジェネレータによって作用せしめられたジェネレータブレーキトルクは、運転者によって要求された目標全ブレーキトルクに相当するべきであり、これに対して、液圧式のブレーキトルクが少なくとも1つのホイールブレーキシリンダによって所属のホイールに作用せしめられることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102012211278号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する回生ブレーキシステムのための制御装置、および請求項9の特徴を有する回生ブレーキシステムを運転するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、回生ブレーキシステムの電動機によって車両を回生制動するための可能性を提供し、それと同時に、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールにおいて、このホイールに作用させようとする、必要であればABS制御のために使用可能な液圧式の最小ブレーキトルクを規定することができる。従って、高すぎるブレーキスリップ値が発生した場合でも、電動機によって少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールに作用せしめられた実際ジェネレータブレーキトルクを低下させる必要はない。従来形式では、このような状況において(ABSの場合)、電動機によって実施された回生はしばしば中断されるが、本発明によれば、電気式のジェネレータの運転は中断されることなく、調整されて継続される。特に、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールに作用せしめられた実際ジェネレータブレーキトルク(回生トルク)は、ABS制御中においても高いレベルに維持され、これに対して、ABS制御のために標準的な形式の(液圧式の)ホイール制御機能が実施可能である。
【0006】
本発明は、すべての型式のハイブリッド自動車および電気自動車のために適している。本発明の対象は、標準的な(液圧式の)ABS制御法と協働することができる。従って、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールにおける高すぎるブレーキスリップ値を取り除くために、回生ブレーキシステムにおいて実行された液圧式のプロセスを変更する必要はない。
【0007】
本発明は、マスタ/スレーブ機能を可能にし、このマスタ/スレーブ機能において、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクに関連した少なくとも1つの目標値が次のように、つまり、運転者によって要求された全ブレーキトルクを越えることなしに、十分に高い液圧式の最小ブレーキトルクが、場合によっては必要なABS制御のために残存するように、規定可能である。本発明の対象は、公知のABS制御法を有する、モジュール構造のESPシステムのためにも適している。
【0008】
好適な実施例によれば、電子制御回路によって、ジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールのために、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれのホイールにおいて発生する消費された摩擦値に関連したそれぞれの第1の値を考慮して、それぞれのプリセット値をホイール毎に個別に規定可能である。これによって、この制御装置を、個別ホイール駆動装置を備えた車両に使用した場合、ジェネレータ式に制動可能な各ホイールは個別に制御され得る。
【0009】
別の好適な実施例では、ジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールに等しく作用させようとする液圧式の最小ブレーキトルクのためのプリセット値が、第1の値の最小値を考慮して前記電子制御回路によって規定可能である。この場合、最も低い消費された摩擦値でジェネレータ式に制動可能なホイールは、液圧式の最小ブレーキトルクを決定する。これは、特にいわゆる“mue−split Strecke(μスプリット路面)”上で、またはホイール接地力が著しく低下するカーブ走行時におけるカーブ内側において好都合である。
【0010】
例えば、電子制御回路は、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのための少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルクを、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれのホイールに作用させようとする全ブレーキトルクと、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれのホイールのためのプリセット値として規定された液圧式の最小ブレーキトルクとから成る差分として規定するために、また、規定された少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルクを考慮して少なくとも1つの目標値を規定するために設計されている。このような形式で、少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルク(標準的な/液圧式のABS制御のために十分高く規定されている)が維持されているにも拘わらず、運転者によって要求された全ブレーキトルクを上回ることは阻止され得る。
【0011】
好適な実施態様では、電子制御回路は、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールにおいてそれぞれ発生するホイール接地力の最小値に関連した少なくとも1つの提供された第2の値および予め設定された特性曲線を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのための少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルクを規定するために、また、少なくとも1つの前記規定された第2の最大ジェネレータブレーキトルクを追加的に考慮して少なくとも1つの目標値を規定するために、設計されている。これによって、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールに作用せしめられた実際ジェネレータブレーキトルクを少なくとも1つの発生するホイール接地力に追加的に適合させることができる。少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルクの規定は、ホイール毎に個別に行うことができる。同様に、ジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールのために共通の第2の最大ジェネレータブレーキトルクを規定することもできる。
【0012】
別の好適な実施態様では、電子制御回路は、電動機の起動電位に関する提供された情報を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのための少なくとも1つの第3の最大ジェネレータブレーキトルクを規定するために、また、少なくとも1つの前記規定された第3の最大ジェネレータブレーキトルクを追加的に考慮して少なくとも1つの目標値を規定するために、設計されている。例えば、電動機によって充電可能なバッテリの充電状態および/または車両速度が、提供された情報として考慮され得る。従って、予め設定されたジェネレータ使用最低速度を下回る車両速度における、またはバッテリの完全な充電における、電動機のジェネレータ式の運転は防止することができる。
【0013】
好適な形式で、電子制御回路は、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのために、それぞれの第1の最大ジェネレータブレーキトルクと、それぞれの第2の最大ジェネレータブレーキトルクおよび/またはそれぞれの第3の最大ジェネレータブレーキトルクとから成る少なくとも1つの最小値を規定するために、また、少なくとも1つの最小値を考慮して少なくとも1つの目標値を規定するために、設計されている。この場合、少なくとも1つの目標値は、それぞれジェネレータ式に制動可能なホイールに作用せしめられた、電動機の実際ジェネレータブレーキトルクが、それぞれの最小値を上回らないように、規定可能である。これによって、電動機のジェネレータ運転は、多くの環境条件に適合させることができる。
【0014】
別の好適な実施例では、電子制御回路は、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールの少なくとも1つのホイール速度値を、予め設定された少なくとも1つの閾値と比較するために、また、少なくとも1つのホイール速度値が少なくとも1つの予め設定された閾値を下回っている限り、少なくとも1つの目標値を規定する際に、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクの安定化または低下だけを許容するために、設計されている。従って、電動機のジェネレータ式の運転によって、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールに作用せしめられた実際ジェネレータブレーキトルクは、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールのホイールダイナミックスを考慮して最適化することができる。
【0015】
前記利点は、回生ブレーキシステムを運転するための対応する方法を実施する際にも保証されている。この方法は、制御装置の前記実施例に応じてさらに改良可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】回生ブレーキシステムを運転するための方法の実施例を説明するためのブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のその他の特徴および利点を以下に、回生ブレーキシステムを運転するための方法の実施例を説明するためのブロック線図を示す図1を用いて説明する。
【0018】
図1により概略的に示された方法は、車両/自動車の回生ブレーキシステムを運転するために適している。回生ブレーキシステムを備えた車両/自動車は、例えば電気自動車またはハイブリッド自動車であってよい。この方法の実施可能性は、特定の車両型式/自動車型式に限定されないことを指摘しておく。同様に、ジェネレータにより駆動可能な電動機を備えた複数の回生ブレーキシステムを、この方法を実施するために使用することができる。従って、この方法の実施可能性は、特定のブレーキシステム型式にも限定されない。
【0019】
この方法を実施する際に、回生ブレーキシステムの電動機によって、回生ブレーキシステムを備えた車両のジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに作用させようとする少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalに関連した少なくとも1つの目標値Mfinalが規定される。少なくとも1つの目標値Mfinalは、例えばそれぞれジェネレータ式に制動可能なホイールのためにホイール毎に個別に規定された少なくとも1つの目標ジェネレータトルク、またはジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールのために同一に規定された目標ジェネレータブレーキトルクMfinalであってよい。しかしながら、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalを、少なくとも1つの目標値Mfinalによって間接的に規定することも可能であることを指摘しておく。従って、少なくとも1つの目標値Mfinalは、例えば電動機の制御値であってもよい。
【0020】
少なくとも1つの目標値Mfinalを規定するために、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに作用させようとする少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクMhydに関連した少なくとも1つのプリセット値Mhydが規定される。好適な形式で、その都度規定された液圧式の最小ブレーキトルクMhydは、少なくとも1つの対応配設されたホイールブレーキシリンダ(若しくは少なくとも1つの対応配設されたホイールブレーキキャリパ)によって、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに作用させることができる。好適な形式で、少なくとも1つのプリセット値Mhydの規定後に、回生ブレーキシステムの少なくとも1つの液圧式の構成要素、例えば少なくとも1つの弁および/または少なくとも1つのポンプは、それぞれ少なくとも1つのプリセット値Mhydに対応するそれぞれ1つのブレーキ圧が少なくとも1つの対応配設されたホイールブレーキシリンダ内に調節されるように駆動/制御される。従って、少なくとも1つのプリセット値Mhydは、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに作用させようとする液圧式の最小ブレーキトルクMhydおよび/または回生ブレーキシステムの少なくとも1つの液圧構成要素の対応する制御値であってよい。別の値も、少なくとも1つのプリセット値Mhydとして規定され得る。
【0021】
少なくとも1つのプリセット値Mhydの規定は、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールにおいてそれぞれ発生する(消費された)摩擦値fr1およびfr2に関連した少なくとも1つの第1の値fr1およびfr2を考慮して行われる。これによって、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに作用させようとする少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクMhydに関連した少なくとも1つのプリセット値Mhydが、簡単な形式で、ABSの場合にそれぞれ該当するホイールのロックを避ける/解消するために標準的な(液圧式の)ABS制御が実施可能であるように、規定される。少なくとも1つの目標値Mfinalを規定する際に、少なくとも1つの消費された摩擦値fr1またはfr2を(直接的または間接的に)考慮することによって、ホイール面における目標値Mfinalを最適化することができる。
【0022】
好適な形式で、少なくとも1つのプリセット値Mhydは、このプリセット値に関連したそれぞれの液圧式の最小ブレーキトルクMhydが、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのロック可能性に関する少なくとも1つの第1の値fr1および/またはfr2がより臨界に近くなればなる程、高くなるように規定される。例えば、少なくとも1つの第1の値fr1およびfr2を考慮して少なくとも1つのプリセット値Mhydを規定するために、相応の第1の特性曲線k1が使用される。
【0023】
次いで、少なくとも1つのプリセット値Mhyd(若しくは相応の液圧式の最小ブレーキトルクMhyd)を考慮して少なくとも1つの目標値Mfinalが規定される。次いで、少なくとも1つの規定された目標値Mfinalを考慮して電動機が制御される。電動機の制御は、特に、電動機によって少なくとも1つの実際ジェネレータブレーキトルクが、少なくとも1つの目標値Mfinalによって規定された少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalに応じてそれぞれのジェネレータ式に制動可能なホイールに作用させられるように、行われる。(このために使用された電動機は、特に車両/自動車の電気式駆動モータであってよい。)
【0024】
前述のように、少なくとも1つのプリセット値Mhydを少なくとも1つの第1の値fr1およびfr2を考慮して規定することによって、この方法の実施中にいつでも、隣接するホイールブレーキシリンダ内に存在するブレーキ圧の低下によって、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのロックに確実に反応することができる。それと同時に、ここに記載した方法によって(少なくとも1つの目標値Mfinalを好適な形式で規定することによって)、電動機のジェネレータ運転は、少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクMhydに適合させられている。これによって、少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクMhydが維持されているにも拘わらず、運転者および/または自動ブレーキ(例えばACCシステムおよび/または非常ブレーキシステム)によって要求された制動要求を上回らないことが保証される。特にこの方法によって、マスタ/スレーブ関係が得られ、この場合、少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクMhydを確保することによりマスタ状態が得られ、このマスタ状態に関連して、電動機のジェネレータ運転がスレーブ状態において最適化されている。これによって、標準的な(液圧式の)ABS制御法が、電動機のジェネレータ運転を中断または制限することなしに、それぞれ必要な場合に実行可能である。
【0025】
図1の実施例では、ジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールに同時に作用させようとする液圧式の最小ブレーキトルクMhydのためのプリセット値Mhydが、(消費された)摩擦値fr1およびfr2の最小値Min(fr1,fr2)を考慮して規定される。このために、例えばそれぞれ発生する(消費された)摩擦値fr1およびfr2が、最小値形成のためにコンピュータブロック2にアウトプットされ、次いで、プリセット値Mhydが、最小値Min(fr1,fr2)およびプリセットされた第1の特性曲線k1を考慮した液圧式の最小ブレーキトルクMhydとして規定される。しかしながら、それに応じて、ジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールのために、それぞれのプリセット値Mhydを、それぞれジェネレータ式に制動可能なホイールにおいて発生する摩擦値fr1またはfr2に関連したそれぞれ第1の値fr1またはfr2を考慮して、ホイール毎に個別に規定することもできる。
【0026】
図1に示した方法において、少なくとも1つの第1の値fr1またはfr2が、それぞれの(消費された)摩擦値fr1またはfr2として、それぞれのジェネレータ式に制動可能なホイールの曲率半径r1またはr2と、それぞれのジェネレータ式に制動可能なホイール(若しくは少なくとも1つの相応の第2の値)のホイール接地力F1またはF2と、それぞれのジェネレータ式に制動可能なホイールに液圧式におよびジェネレータ式に作用させようとするホイールブレーキトルクM1またはM2とから算出される。少なくとも1つの第1の値fr1またはfr2は、少なくとも1つの測定値から導き出された値であってよい。コンピュータブロック3および4で、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれのホイールのために、それぞれの曲率半径r1またはr2と、それぞれのホイール接地力F1またはF2(若しくは少なくとも1つの相応の第2の値)とから成る積P1およびP2が算出される。(それぞれの(ダイナミックな)ホイール接地力F1およびF2は、車両前後方向加速度および車両横方向加速度のための測定されたまたは見積もられた値から公知の形式で導き出され/算出され得る。)さらに、コンピュータブロック5および6で、ジェネレータ式に制動可能な各ホイールのために、その液圧式のブレーキ圧phyd1またはphyd2、その実際ジェネレータブレーキトルクMgen1またはMgen2、その液圧式およびジェネレータ式に作用させようとするホイールブレーキトルクM1およびM2を規定するための運動量の法則(角運動量の法則)D1またはD2が評価される。それぞれ値0.0を有する、コンピュータブロック5および6の信号S1およびS2の最小値を形成することによって、最小値を形成するためのコンピュータブロック7,8において、ホイールブレーキトルクM1およびM2がゼロと同じかまたはゼロより小さいことが保証される。次いで、それぞれのジェネレータ式に制動可能なホイールのためのコンピュータブロック9および10における(消費された)摩擦値fr1またはfr2がそれぞれ、液圧式およびジェネレータ式に作用させようとするホイールブレーキトルクM1,M2および積P1またはP2の商として決定される。これによって、消費された摩擦値fr1またはfr2は、確実に規定可能であり、ひいては、それぞれのジェネレータ式に制動可能なホイールのための少なくとも1つの液圧式の最小ブレーキトルクMhydの好適な規定が保証される。またこれによって、必要な場合にジェネレータ式に制動可能な各ホイールにおける標準的な(液圧式の)ABS制御の所望の制御品質が保証される。
【0027】
さらに、図1の方法において、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールのための少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1が、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれのホイールに作用させようとする全ブレーキトルクMtotalと、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれのホイールのために規定された液圧式の最小ブレーキトルクMhydとから成る差分として規定される。例えば、全ブレーキトルクMtotalは、ホイールブレーキトルクM1およびM2が最小値形成のためのコンピュータブロック12にアウトプットされることによって規定される。次いで、全ブレーキトルクMtotalから、ジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールのために規定された液圧式の最小ブレーキトルクMhydが、コンピュータブロック14で減算される。コンピュータブロック14の信号S3および値0.0から成る最大値形成によって、(最大値形成のための)コンピュータブロック15で負の信号S3がフィルタアウトされる。最大値形成のためのコンピュータブロック15からアウトプットされた信号S4に、コンピュータブロック16で、ジェネレータ式に制動可能なそれぞれのホイールの数(ここでは値2.0)が乗算される。このような形式で、少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1が得られる。(ここに記載した方法においては、第1の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1のみが規定される。選択的に、複数の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1をホイール毎に規定することもできる。)
【0028】
さらに、好適な実施態様として、図1に示した方法において、所定の第2の特性曲線k2および、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールにおいてその都度発生する少なくとも1つのホイール接地力F1およびF2(若しくは少なくとも1つの対応する第2の値)を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのための少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルクMmax2が規定される。このために、コンピュータブロック18で、ジェネレータ式に制動可能なホイールのホイール接地力F1およびF2から最小値が算出される。次いで、最小値形成のためのコンピュータブロック18の信号S5が2倍にされ、コンピュータブロック20でホイール曲率半径が乗算される。さらに、車両減速度aおよび第2の特性曲線k2から信号S6が得られ、この信号S6に、コンピュータブロック22でコンピュータブロック20の信号S7が乗算される。コンピュータブロック22からアウトプットされた少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルクMmax2がゼロより大きいことを確認するために、コンピュータブロック22の信号S8は、最大値形成のためのコンピュータブロック24で値0.0と比較される。
【0029】
第2の特性曲線k2を好適な形式で消費することによって、例えばアンダステアリング傾向および/またはオーバステアリング傾向等の車両ダイナミックスを特徴付ける値が、少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルクMmax2を規定する際に一緒に考慮され得る。これによって、車両平面の特性値に基づく少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルクMmax2が保証され、これに対して、前記少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1はホイール面の特性値に基づいている。
【0030】
図1の方法において、電動機の起動電位に関する提供された情報も考慮して、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールのための少なくとも1つの第3の最大ジェネレータブレーキトルクMmax3が規定される。提供された情報は、例えばそれぞれの車両の最新の車両速度に関する情報、および/または電動機によって充電可能なバッテリの最新の充電状態に関する情報を含んでいてよい。同様に、最新の運転者制動要求は、少なくとも1つの第3の最大ジェネレータブレーキトルクMmax3を規定する際に考慮されてよい。これによって、電動機の起動電位は、ジェネレータ式の制動のために適した所定の最小速度以下の最新の車両速度において、またはそれぞれのバッテリの完全な充電時に制限されるように、考慮することができる。起動電位若しくは少なくとも1つの第3の最大ジェネレータブレーキトルクMmax3を規定するためのプロセスは公知であるので、このプロセスについて図1には図示されていない。起動電位のための情報は外部に伝送することができ、それによって容易に変更可能である。
【0031】
図1の方法において、少なくとも1つの目標値Mfinalは、少なくとも1つの第1の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1、少なくとも1つの第2の最大ジェネレータブレーキトルクMmax2、および少なくとも1つの第3の最大ジェネレータブレーキトルクMmax3を考慮して規定される。この場合、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのために、それぞれの第1の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1と、それぞれの第2の最大ジェネレータブレーキトルクMmax2と、それぞれの第3の最大ジェネレータブレーキトルクMmax3とから成る少なくとも1つの最小値Minが規定される。例えば、まず、最小値形成のためのコンピュータブロック26で信号S9が、第2の最大ジェネレータブレーキトルクMmax2と第3の最大ジェネレータブレーキトルクMmax3とから成る最小値として算出される。次いで、最小値形成のためのコンピュータブロック28によって、少なくとも1つの最小値Minが、第1の最大ジェネレータブレーキトルクMmax1とコンピュータブロック26の信号S9とから成る最小値として決定される。
【0032】
図1の実施例において、電動機が車両を制動するために使用されるべきかまたはそうでないかを、運転者および/または自動ブレーキが予め設定できる。運転者および/または自動ブレーキによって作動可能な相応のスイッチ信号30が、スイッチ32において、規定された少なくとも1つの最小値Minおよび値0.0と共に生ぜしめられる。スイッチ32はスイッチ信号30によって、電動機のジェネレータ運転が運転者および/または自動ブレーキによって要求されている限りは、少なくとも1つの最小値Minがスイッチ32によって信号S10としてアウトプットされるように、切換え可能である。そうでなければ、少なくとも1つの最小値Minの代わりに、値0.0がスイッチ32によって信号S10としてアウトプットされ得る。
【0033】
好適な実施態様として、図1の方法においてさらに、少なくとも1つのジェネレータ式に制動可能なホイールの少なくとも1つのホイール速度値v1およびv2が、少なくとも1つの予め設定された閾値v0と比較される。このために、まず、最小値形成のためのコンピュータブロック34によって信号S11が少なくとも1つのホイール速度値v1,v2の最小値として算出され、次いでコンピュータブロック34の信号S11がコンピュータブロック36で予め設定された少なくとも1つの閾値v0と比較される。少なくとも1つのホイール速度値v1およびv2が予め設定された少なくとも1つの閾値v0を下回っている限りは、つまり信号S11が予め設定された少なくとも1つの閾値v0よりも小さければ、少なくとも1つの目標値Mfinalを規定する際に、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクを単に維持または減少させることだけが可能である。このことはつまり、少なくとも1つのホイール速度値v1およびv2が予め設定された少なくとも1つの閾値v0を下回っている限りは、少なくとも1つの目標値Mfinalの新たな規定は、新たに規定された目標値Mfinalに相当する目標ジェネレータブレーキトルクMfinalがその(間接的にまたは直接的に)直前に規定された目標ジェネレータブレーキトルクMfinalよりも小さい場合においてのみ可能である、ということである。これに対して、予め設定された少なくとも1つの閾値v0を下回っていないことが、少なくとも1つのホイール速度値v1およびv2によって確認可能である限りは、少なくとも1つの目標ジェネレータトルクMfinalの新たな規定は、新たに規定された目標値Mfinalに相当する目標ジェネレータブレーキトルクMfinalが(直接的または間接的に)直前に規定された目標ジェネレータトルクMfinalよりも大きい場合でも可能である。
【0034】
これによって、図1の方法において、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールのホイール特性を観察することができる。少なくとも1つの閾値v0によって予め設定されたホイールスリップ閾値若しくは速度閾値を下回ると、直前に規定された、その時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalが維持されることによって、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalの瞬間的な増大が中断され得る。従って、予め設定されたホイールスリップ閾値または速度閾値を下回ったときに、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalはそれ以上増大されるのではなく、一定に維持されるだけかまたは減少される。ジェネレータ式に制動可能なすべてのホイールが再び安定したホイール特性を示してから初めて、少なくとも1つの目標値Mfinalを相応に新たに規定することによって、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalの増大が再び可能となる。
【0035】
まず、スイッチ32の信号S10がその時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalと共に、最小値形成のためのコンピュータブロック38にアウトプットされることによって、直前に規定された、その時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalに対する、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalの増大が阻止可能である。次いで、コンピュータブロック38が、算出された最小値を信号S12としてアウトプットする。少なくとも1つのホイール速度値v1およびv2が少なくとも1つの予め設定された閾値v0を下回っているか、若しくは信号S11が少なくとも1つの予め設定された閾値v0よりも小さい限りは、コンピュータブロック36は相応の信号S13を別のスイッチ40にアウトプットし、この別のスイッチ40に信号S10およびS12も供給される。スイッチ40は、信号S11が少なくとも1つの予め設定された閾値v0よりも小さい限り、スイッチ40が信号S10を信号S14としてアウトプットするように、信号S13によって切換え可能である。そうでなければ、スイッチ40は信号S12を信号S14としてアウトプットする。
【0036】
信号S14は、非対称的なフィルタによって処理される。この場合、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalの増大は、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalのゆるやかな上昇が得られるようにフィルタリングされる。これに対して、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalの減少は、直ちに実行される。このために、最小値形成のためのコンピュータブロック42で、信号S14が、その時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalと比較される。信号S14およびその時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalから成る最小値は、最小値形成のためのコンピュータブロック42によって信号S15としてスイッチ44にアウトプットされ、このスイッチ44に、その時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalも供給される。スイッチ44は、前記スイッチ32と同様にスイッチ信号30によって切換え可能である。スイッチ44の信号S16は、コンピュータブロック46によって信号S14から減算される。次いで、コンピュータブロック46の信号S17に、コンピュータブロック48でフィルタ時定数fが乗算される。次いで、コンピュータブロック48の信号S18は、コンピュータブロック50で信号S16に加算される。これによって、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalの所望の左右非対称のフィルタリングが得られる。(追加的に、フィルタ時定数fはフェードアウト運転(トルクの消失)に適合され得る。)さらに、補足的に、最小値形成のためのコンピュータブロック52で、その時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalおよび最新の実際ブレーキトルクMが供給されることによって、その時点で有効な目標ジェネレータブレーキトルクMfinalが最新の実際ブレーキトルクMに調整され得る。次いで、コンピュータブロックは、コンピュータブロック38にアウトプットされた信号Mfinalを(新たに)規定する。
【0037】
図1の方法は、電動機のジェネレータ運転においても常に、液圧式に制動可能な少なくとも1つのホイールの各ホイールシリンダ内に最小ブレーキ圧が維持されることを保証する。従って、ABS制御アルゴリズムによっていつでも最適なホイール減速度が調節可能である。このために、ABS制御アルゴリズムは、電動機を直接制御する必要はない。この課題は、前記方法による少なくとも1つの目標値Mfinalの好適な規定に基づいて省略される。(少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalの低下は、ABSのブレーキ圧低下を介して間接的に生ぜしめられる。)
【0038】
図1の方法は、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinal(つまり回生トルク)の、パイロット制御としてのプリセットを可能にする。図1は、電動機によってジェネレータ式に制動可能(かつ駆動可能)な正確に2つのホイールにおけるアクスルディファレンシャルを備えた車両に関する。例えば、ジェネレータ式に制動可能な2つのホイールとは、回生ブレーキシステムを備えた車両の、前車軸に接続されたホイールであると解釈されてよい。しかしながら、図1の方法は、変更されたバージョンでは、後車軸または電気式に制動可能な2つの車軸に使用するためにも、またはホイール個別の“E−Antrieb” (電気駆動)においても適用可能である、ということを指摘しておく。
【0039】
図1の方法は、外部のABSアルゴリズムと協働することができる。従って、少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinal(つまり回生トルク)は、アクティブなABS制御中にも少なくとも部分的に維持され得る。回生ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダの平均的なブレーキ圧レベルは、相応の(消費された)摩擦値に基づく回生によるABS制動中に、同じ車両減速度での純粋に液圧式の制動時におけるよりも著しく低い。従って、少なくとも1つの車軸におけるホイールブレーキの熱ポテンシャルはしばしば低下せしめられ、これによってブレーキシステムのコスト削減および重量削減が得られる。
【0040】
図1によって示された方法を実施するために必要な入力値は、通常は車両ネットワークに提供されている。しかも、必要な入力値は簡単に測定されるかまたは導き出すことができる。信号到達時間に関して最適化されたコントロールユニット構成は容易に実現可能である。
【0041】
図1の方法は、特に回生ブレーキシステムのための制御装置によって実施可能である。このような形式の制御装置は電子制御回路を有しており、この電子制御回路によって、回生ブレーキシステムの電動機によってジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに作用させようとする少なくとも1つの目標ジェネレータブレーキトルクMfinalに関連した少なくとも1つの目標値Mfinalが規定可能である。さらに、この電子制御回路によって、少なくとも1つの規定された目標値Mfinalに対応する少なくとも1つの制御信号が電動機にアウトプット可能である。既に上述したように、電子制御回路は、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールにおいてそれぞれ発生する摩擦値fr1およびfr2に関連した少なくとも1つの提供された第1の値fr1およびfr2を考慮して、ジェネレータ式に制動可能な少なくとも1つのホイールに作用させようとする液圧式の最小ブレーキトルクMhydに関連した少なくとも1つのプリセット値Mhydを規定するために、また少なくとも1つの規定された液圧式の最小ブレーキトルクMhydを少なくとも考慮して少なくとも1つの目標値Mfinalを規定するために設計されている。また、この制御電子回路は、上記方法ステップを実施するためにさらに改良可能である。
【符号の説明】
【0042】
2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,16,18,20,22,24,26,28,34,36,38,42,46,50,52 コンピュータブロック
30 スイッチ信号
32,40,44 スイッチ
a 車両減速度
D1,D2 運動量の法則
f フィルタ時定数
F1,F2 ホイール接地力
fr1,fr2 摩擦値、第1の値
k1 第1の特性曲線
k2 第2の特性曲線
M1,M2 ホイールブレーキトルク
最新の実際ブレーキトルク
final,Mfinal 目標値、目標ジェネレータブレーキトルク
gen1,Mgen2 ジェネレータブレーキトルク
hyd 最小ブレーキトルク、プリセット値
Mmax1 第1の最大ジェネレータブレーキトルク
Mmax2 第2の最大ジェネレータブレーキトルク
Mmax3 第3の最大ジェネレータブレーキトルク
Min 最小値
total 全ブレーキトルク
P1,P2 積
hyd1,phyd2 液圧式のブレーキ圧
r1,r2 ホイールの曲率半径
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12,S13,S14,S15,S16,S18 信号
v0 閾値
v1,v2 ホイール速度値
図1