特許第6577078号(P6577078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6577078風力発電装置および風力発電装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577078
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】風力発電装置および風力発電装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   H02P9/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-49401(P2018-49401)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-161982(P2019-161982A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(74)【代理人】
【識別番号】100206782
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】山根 敏則
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−090281(JP,A)
【文献】 特開2003−284393(JP,A)
【文献】 特開平05−276686(JP,A)
【文献】 特開2011−066983(JP,A)
【文献】 特開2017−046371(JP,A)
【文献】 特表2003−502543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力により回転する回転部に結合されて回転する励磁用のロータコイル部、前記ロータコイル部と近接して配置され前記ロータコイル部の磁界の変化により発電する発電用のステータコイル部、および前記ステータコイル部からの交流の発電電力を直流電力に変換する整流部、を有する電磁石発電機と、
前記整流部の直流電力により充電される蓄電部と、
前記蓄電部を電源として前記ロータコイル部に励磁電力を供給する励磁制御部と、
前記電磁石発電機の回転数を検出する回転検出部と、
前記整流部の高電圧側とグランドの間に接続されて電流を流して前記電磁石発電機に電磁ブレーキをかけると共に、電流を制御するためのスイッチングを行う電磁ブレーキ制御素子を有する電磁ブレーキと、
前記回転検出部から得られる前記電磁石発電機の回転数が、予め定められた設定回転数まで上昇すると、前記設定回転数を保持するように、前記電磁石発電機の回転数の変化率を求めて、前記電磁ブレーキの前記電磁ブレーキ制御素子前記変化率に応じたONdutyでPWM制御によるONとOFFの繰り返しスイッチングを行わせて、出力される電力を制御して発電を持続させる発電制御部と、
を備えた、風力発電装置。
【請求項2】
前記電磁ブレーキの前記電磁ブレーキ制御素子をPWM制御する制御周波数が、20kHz以上である、請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記電磁ブレーキ制御素子のための温度センサを設け、前記発電制御部は、前記温度センサの検出結果から前記電磁ブレーキ制御素子が過熱状態であると判定すると、発電を中止させる、請求項1または2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記電磁ブレーキ制御素子を複数、並列接続して設けた、請求項1から3までのいずれか1項に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記電磁石発電機の回転数が前記設定回転数を超えている間、前記発電制御部が点灯させる発光素子を備えた、請求項1から4までのいずれか1項に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記発電制御部は、各部の状態を記憶するメモリを含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の風力発電装置。
【請求項7】
前記風力発電装置の周囲の騒音を検出する騒音センサを備え、前記発電制御部は、前記騒音センサで検出された騒音レベルに従って異なる回転数の前記設定回転数を設定する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の風力発電装置。
【請求項8】
電磁石発電機により、風力により回転する回転部に結合されて回転する励磁用のロータコイル部の発生する磁界の変化により発電用のステータコイル部で交流発電を行い、整流部で直流電力に変換して出力して蓄電部を充電し、
励磁制御部により、前記ロータコイル部に前記蓄電部を電源として励磁電力を供給し、
前記蓄電部の高電圧側とグランドの間に接続された電磁ブレーキにより、電流を流して前記電磁石発電機に電磁ブレーキをかけると共に、電磁ブレーキ制御素子により電流を制御するためのON/OFFのスイッチングを行い、
発電制御部により、回転検出部から得られる前記電磁石発電機の回転数が、予め定められた設定回転数まで上昇すると、前記設定回転数を保持するように、前記電磁石発電機の回転数の変化率を求めて、前記電磁ブレーキの前記電磁ブレーキ制御素子前記変化率に応じたONdutyでPWM制御によるONとOFFの繰り返しスイッチングを行わせて、出力される電力を制御して発電を持続させる
風力発電装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自然エネルギーを利用したに風力発電装置および風力発電装置の制御方法、特にブレーキ制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の風力発電装置のブレーキ制御は、発電機の回転数が上がっていき、設定された閾値に達すると、発電手段の出力側を短絡して発電を止めてしまい、その後、風速が下がるまでは発電を行わないものが一般的である。
【0003】
また、従来の風力発電機は、永久磁石を使ったものが一般的である。永久磁石式の発電機の場合、多数の永久磁石を使用し、さらにネオジム磁石等の強力な磁力の磁石を使用するとコスト高である。また磁石同士が強力に引き合うため、製造には注意が必要である。
【0004】
このような風力発電機を開示したものとして、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4639616号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の風力発電装置のブレーキ制御は、発電機の回転数が上がっていき、ある閾値に達すると、過回転と判断し、発電を止めてしまい、その後、風速が下がるまでは発電を行わないものが一般的であった。従って、従来の風力発電装置は、発電効率が悪いという課題があった。
【0007】
また、永久磁石式の発電機の場合、強力な磁力を得るために高価な永久磁石を多数使用するため、コストの問題があった。また、磁力の強い永久磁石は強力に引き合うため、製造時を含めて注意が必要であった。
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、発電機の回転数が設定された回転数まで上昇しても、発電機の回転数を調整しながら発電を続け、また安価かつ安全な風力発電装置および風力発電装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、風力により回転する回転部に結合されて回転する励磁用のロータコイル部、前記ロータコイル部と近接して配置され前記ロータコイル部の磁界の変化により発電する発電用のステータコイル部、および前記ステータコイル部からの交流の発電電力を直流電力に変換する整流部、を有する電磁石発電機と、前記整流部の直流電力により充電される蓄電部と、前記蓄電部を電源として前記ロータコイル部に励磁電力を供給する励磁制御部と、前記電磁石発電機の回転数を検出する回転検出部と、前記整流部の高電圧側とグランドの間に接続されて電流を流して前記電磁石発電機に電磁ブレーキをかけると共に、電流を制御するためのスイッチングを行う電磁ブレーキ制御素子を有する電磁ブレーキと、前記回転検出部から得られる前記電磁石発電機の回転数が、予め定められた設定回転数まで上昇すると、前記設定回転数を保持するように、前記電磁石発電機の回転数の変化率を求めて、前記電磁ブレーキの前記電磁ブレーキ制御素子前記変化率に応じたONdutyでPWM制御によるONとOFFの繰り返しスイッチングを行わせて、出力される電力を制御して発電を持続させる発電制御部と、を備えた風力発電装置等にある。
【発明の効果】
【0010】
この発明では、発電機として電磁石発電機を使用し、電磁石発電機の回転数が設定された回転数まで上昇すると電磁石発電機にブレーキをかけて回転数を調整しながら発電を続けるようにしたので、発電の効率がよく、また安価で安全な風力発電装置および風力発電装置の制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態1に係る風力発電装置の全体構成を示す構成図である。
図2図1の風力発電装置の発電に関連する部分構成の一例を示す構成図である。
図3】この発明の実施例1による動作の概略的動作フローチャートである。
図4】この発明の実施例2による動作の概略的動作フローチャートである。
図5】この発明の実施例3による動作の概略的動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明による風力発電装置および風力発電装置の制御方法を実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る風力発電装置の全体構成を示す構成図である。また図2は、図1の風力発電装置の発電に関連する部分構成の一例を示す構成図である。図1において、風が吹くと回転する回転部であるプロペラ1の金属製の回転軸2に、軸治具4により電磁石発電機3のロータ側が結合されている。電磁石発電機3は例えば電磁石式の車載用オルタネータ等からなる。電磁石発電機3は、図2に記載のように、回転軸2に結合されて回転するロータ側の励磁用のロータコイル部3a、ロータコイル部3aと近接して配置されロータコイル部の磁界の変化により発電するステータ側の発電用のステータコイル部3b、およびステータコイル部3bからの交流の発電電力を直流電力に変換する整流部3cを有する。
【0014】
各種制御部を備えた制御コントローラ5は、電磁石発電機3と共に保護カバー16内に設けられている。これにより電磁石発電機3と制御コントローラ5を別体に設けるに比べて、個別の筐体や配線が不要で、コストが安く、配線長も短くてすみノイズの影響も懸念されないような構造にされている。制御コントローラ5と電磁石発電機3は配線6で接続されている。
【0015】
保護カバー16の下部には、後述する電磁ブレーキ13をかける必要のある予め定められた設定回転数まで電磁石発電機3の回転数が上昇した時に点灯させる発光素子17が取り付けられており、電磁石発電機3の回転数の状態が外部から分かるようにされている。保護カバー16の下部にはさらに、風力発電装置の周囲の騒音を測定する騒音センサ19が取り付けられている。この騒音センサ19は騒音レベルから風力発電装置の周囲の環境を判断して、電磁ブレーキをかける電磁石発電機3の設定回転数を決めるのに使用される。制御コントローラ5と発光素子17は配線27で接続されている。また、制御コントローラ5と騒音センサ19は配線18で接続されている。
【0016】
プロペラ1、電磁石発電機3、制御コントローラ5等からなる部分は、支柱20の頂部に、回転しながら導通を保つ回転コネクタ、いわゆるスリップリング21により、支柱20の軸回りに回転可能に取り付けられている。スリップリング21は一般的に金属性であり、強い強度を有する。支柱20の下部のバッテリボックス23内には蓄電部であるバッテリ11が設けられている。バッテリ11は充電可能な二次電池からなる。バッテリ11は制御コントローラ5と、スリップリング21、支柱20内を延びる配線22で接続されている。
【0017】
電磁石発電機3および制御コントローラ5からなる部分は、スリップリング21の上部に、金属製で強い強度を有する取付治具24により取付けられている。
【0018】
保護カバー16としては、軽量でコストが安い樹脂材が使用される。防水パッキン25は、保護カバー16内を防水構造にするために、スリップリング21の周囲の保護カバー16との隙間をふさいでいる。保護カバー16は、軸治具4、電磁石発電機3、制御コントローラ5、取付治具24の全体と、回転軸2、スリップリング21、防水パッキン25を部分的に覆っている。
【0019】
図2において、制御コントローラ5と電磁石発電機3は、配線6で接続されている。電磁石発電機3は上述のように、ロータコイル部3a、ステータコイル部3b、整流部3cを有する。端子Pは電磁石発電機3の回転数を検出するための端子である。端子Bは整流部3cの高圧側に接続された端子である。端子B’と端子Fは、ロータコイル部3aの両端にそれぞれ接続された端子である。端子Eはグランド端子である。
【0020】
制御コントローラ5において、回転検出部7は、電磁石発電機3の回転数を検出する。バッテリ充電制御部10は、電磁石発電機3の整流部3cの高圧側となる端子Bに接続されて、バッテリ11のバッテリ充電制御を行う。バッテリ電圧監視部12は、バッテリ11の電圧を検出する。電磁ブレーキ13は、電磁石発電機3の端子Bとグランドの間に接続されて電流を流し、電磁石発電機3に電磁ブレーキをかけると共に、電流を制御するためのスイッチングを行う電磁ブレーキ制御素子13aとブレーキ制御部13bを有する。尚、電磁ブレーキの原理は、電磁石発電機3が電磁ブレーキ制御素子13aにより短絡されると、電磁石発電機3が回転中に発生している誘導起電力が短絡され、ステータコイル部3bに電流が流れる。このときの電流方向は、回転中の方向とは逆方向となるので、ブレーキ力が発生することになる。電磁ブレーキ13はさらに、電磁ブレーキ制御素子13aのための温度センサ14を有する。
【0021】
励磁制御部9は、バッテリ11と、端子B’、端子Fの間に接続されて、ロータコイル部3aの励磁制御を行う。
【0022】
発電制御部8は、回転検出部7からの電磁石発電機3の回転数、電磁ブレーキ13の温度センサ14からの電磁ブレーキ制御素子13aの温度、バッテリ電圧監視部12からのバッテリ11の電圧、等の検出結果を入力する。そして発電制御部8は、バッテリ充電制御部10、励磁制御部9、電磁ブレーキ13へ制御指令を出力して、電磁石発電機3の発電制御を行う。例えば発電制御部8は、電磁石発電機3の回転数を回転検出部7の検出結果からモニタし、電磁石発電機3の回転数が所望の回転数になるように、バッテリ充電制御部10および励磁制御部9に制御指令を与える。
【0023】
なお、発電制御部8は、例えばプロセッサとメモリ15からなるコンピュータ、マイクロコンピュータ、で構成される。
【0024】
端子Pは、電磁石発電機3の回転検出端子である。回転検出部7は、端子Pから電磁石発電機3の回転数を検出し、検出結果を発電制御部8に送る。電磁石発電機3の回転数とはロータ側の回転数がある。発電制御部8は、電磁石発電機3のロータ側の回転数が発電可能な回転数を超えると、励磁制御部9に励磁制御信号を送り、励磁制御部9によりバッテリ11を電源として励磁電力を電磁石発電機3の端子B’、端子Fに送り、励磁制御を開始する。端子Pには、電磁石発電機3のロータに回転数に比例した周波数の矩形波相当の波形が出力されることにより、回転数が検出できる。また電磁石発電機3の出力側は、3相で構成されたステータコイル部3bで発生した交流電流を、整流部3cでダイオードにより全波整流する。整流された直流電力は端子Bからバッテリ充電制御部10を経由してバッテリ11に蓄えられる。発電制御部8は、バッテリ11の電圧をバッテリ電圧監視部12でモニタしながらバッテリ充電制御部10を制御して充電電力を調整する充電制御等も行う。
【0025】
制御コントローラ5に実装されるトランジスタ等の半導体スイッチング素子である電磁ブレーキ制御素子13aには、温度監視可能な温度センサ14が取り付けられている。発電制御部8は、電磁ブレーキ制御素子13aの温度を常に監視し、過熱による故障を防止する。発電制御部8は、温度センサ14からの検出温度が、電磁ブレーキ制御素子13aが過熱状態と判定する予め定められた閾値まで上昇した場合には、電磁石発電機3の発電、回転数の制御を中止する。そして発電制御部8は、電磁ブレーキ13の電磁ブレーキ制御素子13aを常時ON状態にして、電磁石発電機3の回転を停止させる。なおこの場合、電磁石発電機3の回転を停止させるために図示を省略した非常ブレーキを設けてもよい。この非常ブレーキは、例えば回転軸2にシューを押し付けて摩擦で停止させる方式の非常ブレーキであってもよい。電磁ブレーキ制御素子13aを常時ON状態とすることで、電磁ブレーキ制御素子13aのスイッチング損失による温度上昇をなくす。
【0026】
発電制御部8は、電磁ブレーキ制御素子13aの過熱フェイル情報を発電制御部8に内蔵のメモリ15に記憶する。メモリ15の内容は、図示を省略した専用ツールで読み出せば、過去の過熱フェイル情報等の履歴が確認できる。メモリ15に記憶させる情報は過熱フェイル情報に限るものでなく、発電制御部8の制御での所望なデータを履歴として記憶させておく。
【0027】
また、電磁ブレーキ制御素子13aは複数の電磁ブレーキ制御素子を並列に接続させて設けておくようにしてもよい。これにより、過熱フェイルを発生した電磁ブレーキ制御素子に変わって、別の正常な電磁ブレーキ制御素子でブレーキ制御を行うようにすればブレーキ制御を継続して行え、電磁石発電機3の発電、回転数の制御を続けることができる。
【0028】
発電制御部8は、電磁石発電機3の回転数が、例えば発電に適した回転数領域の上限値である予め定められた設定回転数まで上昇すると、設定回転数を保持するように、電磁ブレーキ13の電磁ブレーキ制御素子13aをパルス幅変調(PWM)制御するようにブレーキ制御部13bにduty比指令信号を与えてONとOFFの繰り返しスイッチングを行い、出力される電力を制御させて、発電を持続する。また、電磁石発電機3の回転数が設定回転数まで上昇すると、発電制御部8は、発光素子17を点灯させる。
【0029】
また、騒音センサ19に関し、風力発電装置の周囲の環境として市街地、海、山、等、があり、発電制御部8は、騒音センサ19の検出結果から周囲の環境を判定して、電磁ブレーキをかける設定回転数を決めることができる。一般的に、風力発電装置は回転数が高くなるほど騒音も大きくなる傾向にある。そこで例えば、市街地等、騒音を気にしなくてはならないところでは、低めの設定回転数で電磁ブレーキをかけ、また、海や山など、比較的騒音を気にしなくてもよいところでは、高めの設定回転数で電磁ブレーキをかける設定が可能である。
【0030】
次に発電制御部8による、電磁ブレーキ13を使用した電磁石発電機3の回転数制御について具体的に例を挙げて説明する。また以下に記載する回転数等は一例であり、これに限定されるものではない。例えば発電に適した回転数領域の上限値である予め定められた設定回転数を1500rpmとする。
【0031】
実施例1.
図3に実施例1の動作の概略的動作フローチャートを示す。
a)1500rpmになったとき
1) 1500rpm時(定回転制御中)
発電制御部8は、回転数が1500rpmまで上昇した時点で、過回転ワーニングを検出する(ステップS1)。発電制御部8は、発光素子17を点灯させ、電磁ブレーキ13にて電磁ブレーキをかけ、PWM制御することにより定回転制御しながら発電を持続する。発電制御部8は、電磁ブレーキ13のブレーキ制御部13bにduty比指令信号を入力し、ブレーキ制御部13bがduty比指令信号に従って電磁ブレーキ制御素子13aをONとOFFの繰り返しスイッチングを行い、出力される電力を制御する。その詳細について説明すると、最初に、電磁ブレーキをかける際には、設定された一定期間、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間をduty50%に保持する。このとき、設定された一定の間隔で回転検出部7からの回転数信号をモニタしておく。
【0032】
2) 1500rpmよりも高くなっている場合(定回転制御中)
回転数が1500rpmよりも高くなっている場合には、回転数を下げるために、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間をduty50%から徐々に大きくしていく。このとき、設定された一定の間隔で回転検出部7からの回転数信号をモニタしておく。
【0033】
3) 1500rpmよりも低くなっている場合(定回転制御中)
回転数が1500rpmよりも低くなっている場合には、回転数を上げるために、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間をduty50%から徐々に小さくしていく。このとき、設定された一定の間隔で回転検出部7からの回転数信号をモニタしておく。
上記のように制御することにより、電磁ブレーキ制御素子13aのOFF時に発電しながら、目標回転数である設定回転数、すなわち1500rpmに近付けるよう電磁石発電機3を定回転制御できる。
また、過回転ワーニング情報を発電制御部8に内蔵されたメモリ15に記憶する(ステップS2,S3,S4)。
【0034】
b)上記a)の後、1500rpm未満になったとき
発電制御部8は、1400rpmまでは過回転ワーニングを検出し続け、発光素子17を点灯させたまま、100%励磁にて発電を持続する。風が弱まって電磁石発電機3の回転数が、1400rpm未満になったときには、過回転ワーニングを解除し、発光素子17を消灯させる(ステップS5−S8)。
【0035】
実施例2.
図4に実施例2の動作の概略的動作フローチャートを示す。
a)1500rpmになったとき
1) 1500rpm時(定回転制御中)
発電制御部8は、回転数が1500rpmまで上昇した時点で、過回転ワーニングを検出する(ステップS1)。発電制御部8は、発光素子17を点灯させ、電磁ブレーキ13にて電磁ブレーキをかけ、PWM制御することにより定回転制御しながら発電を持続する。その詳細について説明すると、最初に、電磁ブレーキをかける際には、設定された一定期間、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間をduty10%から順に10%ずつ設定された一定の間隔でduty50%まで上げていく。このとき、設定された一定の間隔で回転検出部7からの回転数信号をモニタしておく。
【0036】
2) 1500rpmよりも高くなっている場合(定回転制御中)
回転数が1500rpmよりも高くなっている場合には、回転数を下げるため、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間をduty50%から徐々に大きくしていく。このとき、設定された一定の間隔で回転検出部7からの回転数信号をモニタしておく。
【0037】
3) 1500rpmよりも低くなっている場合(定回転制御中)
回転数が1500rpmよりも低くなっている場合には、回転数を上げるため、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間をduty50%から徐々に小さくしていく。このとき、設定された一定の間隔で回転検出部7からの回転数信号をモニタしておく。
上記のように制御することにより、電磁ブレーキ制御素子13aのOFF時に発電しながら、目標回転数である設定回転数、すなわち1500rpmに近付けるよう電磁石発電機3を定回転制御できる。
また、過回転ワーニング情報を発電制御部8に内蔵されたメモリ15に記憶する(ステップS2a,S3,S4)。
【0038】
b)上記a)の後、1500rpm未満になったとき
発電制御部8は、1400rpmまでは過回転ワーニングを検出し続け、発光素子17を点灯させたまま、100%励磁にて発電を持続する。風が弱まって電磁石発電機3の回転数が、1400rpm未満になったときには、過回転ワーニングを解除し、発光素子17を消灯させる(ステップS5−S8)。
【0039】
実施例3.
図5に実施例3の動作の概略的動作フローチャートを示す。
a)1500rpmになったとき
発電制御部8は、回転数が1500rpmまで上昇した時点で、過回転ワーニングを検出する(ステップS1)。発電制御部8は、発光素子17を点灯させ、電磁ブレーキ13にて電磁ブレーキをかけ、PWM制御することにより定回転制御しながら発電を持続する。その詳細について説明すると、回転数の傾きを求めるため、1500rpmになった時点で最初の1点目のデータ(時間t1、回転数N1)を発電制御部8に取り込み、次のタイミングになった時点で2点目のデータ(時間t2、回転数N2)を発電制御部8に取り込む(ステップS22,S23)。
【0040】
次に、発電制御部8は、回転数の傾きa=(N2−N1)/(t2−t1)を演算する(ステップS24)。
そして、発電制御部8にて回転数の傾きに応じた電磁ブレーキ制御素子13aのON時間のdutyを演算し(ステップS25)、回転数の傾きが大きければ、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間dutyを大きくして、電磁ブレーキ13のブレーキ力を強くする。また、回転数の傾きが小さければ、電磁ブレーキ制御素子13aのON時間のdutyを小さくして、電磁ブレーキ13のブレーキ力を弱くする。このとき、設定された一定の間隔で回転検出部7からの回転数信号をモニタしておく。立ち下がり時も同様の制御を行うことにより、一定の回転数を保持できる。
【0041】
上記のように制御することにより、電磁ブレーキ制御素子13aのOFF時に発電しながら、目標回転数である設定回転数、すなわち1500rpmに近付けるよう電磁石発電機3を定回転制御できる。
また、過回転ワーニング情報を発電制御部8に内蔵されたメモリ15に記憶する(ステップS21−S25,S3,S4)。
【0042】
b)上記a)の後、1500rpm未満になったとき
発電制御部8は、1400rpmまでは過回転ワーニングを検出し続け、発光素子17を点灯させたまま、100%励磁にて発電を持続する。風が弱まって電磁石発電機3の回転数が、1400rpm未満になったときには、過回転ワーニングを解除し、発光素子17を消灯させる(ステップS5−S8)。
【0043】
各実施例1−3において、電磁ブレーキ13による制御は、電磁ブレーキ制御を開始する例えば1500rpmの開始設定回転数で開始され、開始設定回転数より小さい例えば1400rpmの終了設定回転数で終了する。
【0044】
この発明の風力発電装置によれば、車載用のオルタネータ等からなる電磁石発電機を使い、制御コントローラにて、予め定められた設定回転数に到達すると、電磁ブレーキをかけ、設定された一定の回転数を保持するよう、電磁ブレーキをPWM制御することにより発電を持続するため、発電効率が向上する。また、PWM制御の制御周波数を20kHz以上とし、可聴域を外すことで、耳障りな騒音もせず、かつ高い周波数でPWM制御しているので、滑らかな制御が可能である。
【0045】
また、電磁石発電機を使用することで、ネオジム磁石などのコストの高い永久磁石を使う必要がなくなり、低コスト化が可能である。また、永久磁石は磁石自体が強力に引き合うため、安全面に十分注意して製造する必要があるが、その必要もない。また、制御コントローラを風力発電装置の本体に内蔵することにより、筐体を別箇所に設ける必要がなく、小型、軽量化、低コスト化が可能である。
【0046】
また、電磁ブレーキ制御素子には温度監視可能な温度センサを取り付けており、電磁ブレーキ制御素子の過熱による故障を防止できる。また、制御コントローラおよび電磁石発電機を収納した保護カバーの下部に、電磁ブレーキをかける、設定回転数で点灯する発光素子を取り付けることで、風力発電装置が過回転であることが容易に分かる。また、制御コントローラには、電磁ブレーキをかける、設定回転数で点灯する発光素子の点灯回数を記憶できるメモリが実装されており、専用ツールにてメモリの状態を読み出せば、過去の履歴が確認できる。
【0047】
また、保護カバーの下部には、騒音センサが取り付けられており、市街地、海、山、等の風力発電装置の周囲環境を検出でき、周囲環境に応じて電磁ブレーキをかける回転数を決めることができる。
【符号の説明】
【0048】
1プロペラ、2 回転軸、3 電磁石発電機、3a ロータコイル部、3b ステータコイル部、3c 整流部、4 軸治具、5 制御コントローラ、6,18,22,27 配線、7 回転検出部、8 発電制御部、9 励磁制御部、10 バッテリ充電制御部、11 バッテリ、12 バッテリ電圧監視部、13 電磁ブレーキ、13a 電磁ブレーキ制御素子、13b ブレーキ制御部、14 温度センサ、15 メモリ、16 保護カバー、17 発光素子、19 騒音センサ、20 支柱、21 スリップリング、23 バッテリボックス、24 取付治具、25 防水パッキン。
図1
図2
図3
図4
図5