特許第6577081号(P6577081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6577081照射装置、金属造形装置、金属造形システム、照射方法、及び金属造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6577081
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】照射装置、金属造形装置、金属造形システム、照射方法、及び金属造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20190909BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190909BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20190909BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190909BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B22F3/105
   B33Y30/00
   B33Y50/02
   B33Y10/00
   B22F3/16
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-69699(P2018-69699)
(22)【出願日】2018年3月30日
【審査請求日】2018年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柏木 正浩
【審査官】 中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−141505(JP,A)
【文献】 特開2017−179517(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/151740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 3/16
B33Y 10/00 − 99/00
B29C 64/268
B29C 67/00
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属造形に用いられる照射装置において、
金属紛体を含むパウダーベッドの第1の領域に第1のレーザ光を照射する第1の照射部と、上記パウダーベッドの第2の領域に第2のレーザ光を照射する第2の照射部と、を備えており、
上記第2の領域の軌跡の少なくとも一部が上記第1の領域の軌跡の少なくとも一部と重なり、
上記第2の照射部は、(1)上記第2の領域に照射される上記第2のレーザ光のエネルギー密度が、上記第1の領域に照射される上記第1のレーザ光のエネルギー密度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射するか、又は、(2)上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射し、
上記第2のレーザ光の波長が上記第1のレーザ光の波長よりも長い、
ことを特徴とする照射装置。
【請求項2】
上記第2の照射部は、上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射後に上記第2のレーザ光を照射する、
ことを特徴とする請求項に記載の照射装置。
【請求項3】
上記第2の照射部は、上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射前に上記第2のレーザ光を照射する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の照射装置。
【請求項4】
上記第1の照射部は、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.8倍よりも高くなるように、上記第1のレーザ光を照射し、
上記第2の照射部は、上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.5倍以上0.8倍以下になるように、上記第2のレーザ光を照射する、
ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1項に記載の照射装置と、
上記第1のレーザ光を導波する第1の光ファイバと、
上記第2のレーザ光を導波する第2の光ファイバと、を備えている、
ことを特徴とする金属造形装置。
【請求項6】
(1)上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射後に上記第2のレーザ光が照射されるように、又は、(2)上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射前に上記第2のレーザ光が照射されるように、上記第1の照射部及び上記第2の照射部を制御する制御部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項に記載の金属造形装置。
【請求項7】
上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.8倍よりも高くなるように、上記第1の照射部を制御すると共に、上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.5倍以上0.8倍以下になるように、上記第2の照射部を制御する制御部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項に記載の金属造形装置。
【請求項8】
上記パウダーベッドの温度を測定する測定部を更に備えており、
上記制御部は、上記測定部によって測定される温度に基づいて、上記第1の照射部及び上記第2の照射部を制御する、
ことを特徴とする請求項に記載の金属造形装置。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか1項に記載の金属造形装置と、上記第1のレーザ光を出力する第1のレーザ装置と、上記第2のレーザ光を出力する第2のレーザ装置と、上記パウダーベッドを保持するための造形テーブルと、を含んでいる、
ことを特徴とする金属造形システム。
【請求項10】
金属紛体を含むパウダーベッドの第1の領域に第1のレーザ光を照射する第1の照射工程と、上記パウダーベッドの第2の領域に第2のレーザ光を照射する第2の照射工程と、を含んでおり、
上記第2の領域の軌跡の少なくとも一部が上記第1の領域の軌跡の少なくとも一部と重なり、
上記第2の照射工程において、(1)上記第2の領域に照射される上記第2のレーザ光のエネルギー密度が、上記第1の領域に照射される上記第1のレーザ光のエネルギー密度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射するか、又は、(2)上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射し、
上記第2のレーザ光の波長が上記第1のレーザ光の波長よりも長い、
ことを特徴とする照射方法。
【請求項11】
金属紛体を含むパウダーベッドの第1の領域に第1のレーザ光を照射する第1の照射工程と、上記パウダーベッドの第2の領域に第2のレーザ光を照射する第2の照射工程と、を含んでおり、
上記第2の領域の軌跡の少なくとも一部が上記第1の領域の軌跡の少なくとも一部と重なり、
上記第2の照射工程において、(1)上記第2の領域に照射される上記第2のレーザ光のエネルギー密度が、上記第1の領域に照射される上記第1のレーザ光のエネルギー密度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射するか、又は、(2)上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射し、
上記第2のレーザ光の波長が上記第1のレーザ光の波長よりも長い、
ことを特徴とする金属造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属造形に用いられる照射装置及び照射方法に関する。また、そのような照射装置を備えた金属造形装置、及び、そのような金属造形装置を備えた金属造形システムに関する。また、そのような照射方法を含む金属造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的な金属造形物を製造するための方法として、パウダーベッドを母材とする積層造形法が知られている。このような積層造形法には、(1)電子ビームを用いてパウダーベッドを溶融・凝固又は焼結させる電子ビーム方式と、(2)レーザビームを用いてパウダーベッドを溶融・凝固又は焼結させるレーザビーム方式と、がある(非特許文献1参照)。
【0003】
電子ビーム方式の積層造形法では、電子ビームの照射による本加熱の前に、パウダーベッドを仮焼結させるための補助加熱(「予備加熱」と呼ばれることもある)を行う必要がある。仮焼結していないパウダーベッドに電子ビームを照射すると、パウダーベッドを構成する金属紛体が煙状に舞い上がるスモーク現象が生じ易く、正常な溶融池を形成することが困難だからである。なお、補助加熱においては、パウダーベッドの温度を金属紛体の融点の0.5倍以上0.8倍以下にすればよいことが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】千葉晶彦著、”電子ビーム積層造形技術による金属組織の特徴”、計測と制御、第54巻、第6号、2015年6月号、p399−400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、電子ビーム方式の積層造形法では、通常、電子ビームの照射による本加熱の前に、パウダーベッドを仮焼結させるための補助加熱が行われる。このため、電子ビーム方式の積層造形法には、以下のデメリットとメリットとがある。デメリットは、本加熱の前に補助加熱を行うため、金属造形物の積層造形に掛かる時間が長くなる点である。一方、メリットは、できあがった金属造形物において生じ得る残留応力が小さい点である。これは、パウダーベッドを補助加熱することの副次的効果であると考えられている。
【0006】
これに対して、レーザビーム方式の積層造形法では、電子ビーム方式の積層造形法とは異なり金属紛体のチャージアップが起こり得ないことから上述したスモーク現象が起こり得ないため、通常、レーザビームの照射による本加熱の前に、パウダーベッドを仮焼結させるための補助加熱が行われない。このため、レーザビーム方式の積層造形法には、以下のメリットとデメリットとがある。メリットは、本加熱の前に補助加熱を行わないため、金属造形物の積層造形に掛かる時間を短く抑えられる点である。一方、デメリットは、できあがった金属造形物において生じ得る残留応力が大きい点である。
【0007】
したがって、レーザビーム方式の積層造形法においては、そのメリットを保ったまま、そのデメリットを低減することが求められる。すなわち、金属造形物の積層造形に掛かる時間を短く抑えながら、できあがった金属造形物において生じ得る残留応力を小さく抑えることが求められる。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属造形物の積層造形に掛かる時間を短く抑えながら、できあがった金属造形物において生じ得る残留応力を小さく抑えることが可能な、レーザビーム方式の積層造形法を用いた照射装置、金属造形装置、金属造形システム、照射方法、又は金属造形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る照射装置は、金属造形に用いられる照射装置であって、金属紛体を含むパウダーベッドの第1の領域に第1のレーザ光を照射する第1の照射部と、上記パウダーベッドの第2の領域に第2のレーザ光を照射する第2の照射部と、を備えており、上記2の領域の軌跡の少なくとも一部が上記第1の領域の軌跡の少なくとも一部と重なり、上記第2の照射部は、(1)上記第2の領域に照射される上記第2のレーザ光のエネルギー密度が、上記第1の領域に照射される上記第1のレーザ光のエネルギー密度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射するか、又は、(2)上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射する。
【0010】
本発明の一態様に係る照射装置において、上記第2のレーザ光の波長は、上記第1のレーザ光の波長よりも長い、ことが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る照射装置において、上記第2の照射部は、上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射後に上記第2のレーザ光を照射する、こと好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る照射装置において、上記第2の照射部は、上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射前に上記第2のレーザ光を照射する、こと好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る照射装置において、上記第1の照射部は、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.8倍よりも高くなるように、上記第1のレーザ光を照射し、上記第2の照射部は、上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.5倍以上0.8倍以下になるように、上記第2のレーザ光を照射する、ことが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る金属造形装置は、本発明の一態様に係る照射装置と、上記第1のレーザ光を導波する第1の光ファイバと、上記第2のレーザ光を導波する第2の光ファイバと、を備えている、ことが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る金属造形装置は、(1)上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射後に上記第2のレーザ光が照射されるように、又は、(2)上記第1の領域の少なくとも一部に、上記第1のレーザ光の照射前に上記第2のレーザ光が照射されるように、上記第1の照射部及び上記第2の照射部を制御する制御部を更に備えている、ことが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る金属造形装置は、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.8倍よりも高くなるように、上記第1の照射部を制御すると共に、上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が上記金属紛体の融点の0.5倍以上0.8倍以下になるように、上記第2の照射部を制御する制御部を更に備えている、ことが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る金属造形装置は、上記パウダーベッドの温度を測定する測定部を更に備えており、上記制御部は、上記測定部によって測定される温度に基づいて、上記第1の照射部及び上記第2の照射部を制御する、ことが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係る金属造形システムは、本発明の一態様に係る金属造形装置と、上記第1のレーザ光を出力する第1のレーザ装置と、上記第2のレーザ光を出力する第2のレーザ装置と、上記パウダーベッドを保持するための造形テーブルと、を含んでいる、ことが好ましい。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る照射方法は、金属紛体を含むパウダーベッドの第1の領域に第1のレーザ光を照射する第1の照射工程と、上記パウダーベッドの第2の領域に第2のレーザ光を照射する第2の照射工程と、を含んでおり、上記2の領域の軌跡の少なくとも一部が上記第1の領域の軌跡の少なくとも一部と重なり、上記第2の照射工程において、(1)上記第2の領域に照射される上記第2のレーザ光のエネルギー密度が、上記第1の領域に照射される上記第1のレーザ光のエネルギー密度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射するか、又は、(2)上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射する。
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る金属造形物の製造方法は、金属紛体を含むパウダーベッドの第1の領域に第1のレーザ光を照射する第1の照射工程と、上記パウダーベッドの第2の領域に第2のレーザ光を照射する第2の照射工程と、を含んでおり、上記2の領域の軌跡の少なくとも一部が上記第1の領域の軌跡の少なくとも一部と重なり、上記第2の照射工程において、(1)上記第2の領域に照射される上記第2のレーザ光のエネルギー密度が、上記第1の領域に照射される上記第1のレーザ光のエネルギー密度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射するか、又は、(2)上記第2の領域における上記パウダーベッドの温度が、上記第1の領域における上記パウダーベッドの温度よりも低くなるように、上記第2のレーザ光を照射する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、レーザビーム方式の積層造形法を採用しながらも、金属造形物において生じ得る残留応力を小さく抑えることが可能な照射装置、金属造形装置、金属造形システム、照射方法、又は金属造形物の製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る金属造形システムの構成を示す構成図である。
図2図1に示す金属造形システムが備える照射部の構成を示す構成図である。
図3図1に示す金属造形システムにおいて用いられるパウダーベッドの平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る金属造形物の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(金属造形システムの構成)
本発明の一実施形態に係る金属造形システム1について、図1図2を参照して説明する。図1は、金属造形システム1の構成を示す構成図である。図2は、後述する第1の照射部13Aの構成例を示す構成図である。
【0024】
金属造形システム1は、立体的な金属造形物MOを積層造形するためのシステムであり、図1に示すように、造形テーブル10と、2つのレーザ装置11A〜11Bと、2つの光ファイバ12A〜12Bと、2つの照射部13A〜13Bを含む照射装置13と、測定部14と、制御部15と、を備えている。照射部13A及び照射部13Bの各々は、それぞれが別個の筐体に収容されていてもよいし、まとめて1つの筐体に収容されていてもよい。なお、本明細書においては、金属造形システム1の要部のことを、「金属造形装置」と呼ぶ。金属造形装置は、少なくとも2つの光ファイバ12A〜12B及び照射装置13を含み、測定部14及び制御部15を含み得る。
【0025】
本節では、造形テーブル10、レーザ装置11A〜11B、光ファイバ12A〜12B、及び照射部13A〜13Bについて説明した後、これらの構成が奏する効果について説明する。なお、測定部14及び制御部15については、次節で説明する。
【0026】
造形テーブル10は、パウダーベッドPBを保持するための構成である。造形テーブル10は、例えば図1に示すように、リコータ10aと、ローラ10bと、ステージ10cと、これらが装備されたテーブル本体10dと、により構成することができる。リコータ10aは、金属紛体を供給するための手段である。ローラ10bは、リコータ10aによって供給される金属紛体を、ステージ10c上に均し広げるための手段である。ステージ10cは、ローラ10bによって均し広げられた金属紛体を載置するための手段であり、昇降可能に構成されている。パウダーベッドPBは、ステージ10c上に均し広げられた金属紛体を含んで構成されている。金属造形物MOは、(1)前述したようにステージ10c上にパウダーベッドPBを形成する工程と、(2)後述するようにレーザ光LL及びクラッド光CLをパウダーベッドPBに照射することによって、金属造形物MOの一断層を造形する工程と、(3)ステージ10cを一断層分降下させる工程と、を繰り返すことによって、所定の厚みを有する断層毎に造形される。
【0027】
なお、造形テーブル10は、パウダーベッドPBを保持する機能を有していればよく、その構成は、前述したものに限定されない。例えば、リコータ10aの代わりに、金属紛体を収容する紛体槽を備え、この紛体槽の底板を上昇させることによって、金属紛体を供給する構成を採用してもよい。
【0028】
第1のレーザ装置11Aは、第1のレーザ光LAを出力するための構成である。第2のレーザ装置11Bは、第2のレーザ光LBを出力するための構成である。本実施形態においては、レーザ装置11A〜11Bとして、ファイバレーザを用いている。ただし、レーザ装置11A〜11Bは、ファイバレーザに限定されない。固体レーザ、液体レーザ、気体レーザなど、任意のレーザ装置を、レーザ装置11A〜11Bとして利用することができる。なお、レーザ装置11として用いるファイバレーザは、MOPA型のファイバレーザであってもよいし、CW型のファイバレーザであってもよい。
【0029】
第1の光ファイバ12Aは、第1のレーザ装置11Aから出力される第1のレーザ光LAを導波するための構成である。第2の光ファイバ12Bは、第2のレーザ装置11Bから出力される第2のレーザ光LBを導波するための構成である。本実施形態においては、光ファイバ12A〜12Bとして、ダブルクラッドファイバを用いている。ただし、光ファイバ12A〜12Bは、ダブルクラッドファイバに限定されない。シングルクラッドファイバ、トリプルクラッドなど、任意の光ファイバを、光ファイバ12A〜12Bとして利用することができる。
【0030】
第1の照射部13Aは、第1の光ファイバ12Aによって導波される第1のレーザ光LAを、パウダーベッドPBに照射するための構成である。第2の照射部13Bは、第2の光ファイバ12Bによって導波される第2のレーザ光LBを、パウダーベッドPBに照射するための構成である。本実施形態においては、照射部13A〜13Bとして、ガルバノ型の照射装置を用いている。本実施形態において、第1の照射部13Aと第2の照射部13Bとは、共通の構成を有している。そこで、第1の照射部13Aの構成について、図2を参照して説明する。ただし、本発明の一態様において、第1の照射部13Aと第2の照射部13Bとは、異なる構成を有していてもよい。
【0031】
第1の照射部13Aは、図2に示すように、第1ガルバノミラー13a1及び第2ガルバノミラー13a2を含むガルバノスキャナ13aと、集光レンズ13bと、を備えている。第1の光ファイバ12Aから出力される第1のレーザ光LA及は、(1)第1ガルバノミラー13a1によって反射され、(2)第2ガルバノミラー13a2によって反射され、(3)集光レンズ13bによって集光された後、パウダーベッドPBに照射される。
【0032】
ここで、第1ガルバノミラー13a1は、パウダーベッドPBの表面に形成される第1のレーザ光LAのビームスポットを、第1の方向(例えば、図示したx軸方向)に移動するための構成である。第2ガルバノミラー13a2は、パウダーベッドPBの表面に形成される第1のレーザ光LAのビームスポットを、第1の方向と交わる(例えば、直交する)第2の方向(例えば、図示したy軸方向)に移動するための構成である。集光レンズ13bは、パウダーベッドPBの表面における第1のレーザ光LAのビームスポット径を小さくするための構成である。
【0033】
なお、パウダーベッドPBの表面におけるレーザ光LAのビームスポット径は、集光レンズ13bによって集光されたレーザ光LAのビームウエスト径に一致していてもよいし、一致していなくてもよい。或いは、パウダーベッドPBの表面におけるレーザ光LAのビームスポット径は、パウダーベッドPBに照射されるレーザ光LAのエネルギー密度が所望の大きさになるように、調整されていてもよい。この場合、パウダーベッドPBの表面におけるレーザ光LAのビームスポット径は、集光レンズ13bによって集光されたレーザ光LAのビームウエスト径よりも大きくなる。
【0034】
第1の照射部13Aから照射される第1のレーザ光LAは、パウダーベッドPBの温度が金属紛体の融点Tmの0.8倍よりも高くなるように、パウダーベッドPBを加熱(以下、「本加熱」と記載)するためのレーザ光である。一方、第2の照射部13Bから照射される第2のレーザ光LBは、パウダーベッドPBの温度Tが金属紛体の融点Tmの0.5倍以上0.8倍以下になるように、パウダーベッドPBを加熱(以下、「補助加熱」と記載)するためのレーザ光である。このため、第1の照射部13Aは、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAが、第2のレーザ光LBが照射される第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBよりも高くなるように、第1のレーザ光LAを照射する。一方、第2の照射部13Bは、第2のレーザ光LBが照射される第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBが、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAよりも低くなるように、第2のレーザ光LBを照射する。また、第1の照射部13Aは、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAの軌跡の少なくとも一部が、第2のレーザ光LBが照射される第2の領域DBの軌跡の少なくとも一部と重なるように、第1のレーザ光LAでパウダーベッドPB上を走査する。一方、第2の照射部13Bは、第2のレーザ光LBが照射される第2の領域DBの軌跡の少なくとも一部が、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAの少なくとも一部と重なるように、第2のレーザ光LBでパウダーベッドPB上を走査する。
【0035】
以上のように、照射装置13によれば、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAの軌跡の少なくとも一部において、パウダーベッドPBの本加熱の前、本加熱の後、及び本加熱時のうち少なくとも何れか1つのタイミングでパウダーベッドPBの補助加熱を実施することができる。したがって、金属造形物MOにおいて生じ得る残留応力を小さく抑えることができる、という効果を奏する。また、第2のレーザ光LBを照射する第2の照射部13Bは、第1のレーザ光を照射する第1の照射部13Aから独立している。したがって、補助加熱用のレーザ光LBの照射自由度が高くなる、という効果を奏する。照射装置13を備えた金属造形装置、及び、金属造形装置を備えた金属造形システム1によっても、同様の効果を奏する。
【0036】
なお、照射装置13において、第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBが、第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAよりも低くなるという条件を満たすことができれば、第1の領域DAに照射される第1のレーザ光LAのエネルギー密度と第2の領域DBに照射される第2のレーザ光LBのエネルギー密度との大小関係は、限定されるものではない。温度TA及び温度TBは、第1の領域DAに照射される第1のレーザ光LAのエネルギー密度及び第2の領域DBに照射される第2のレーザ光LBのエネルギー密度の他に、第1のレーザ光LA及び第2のレーザ光LBの各々の波長や、金属粉体の吸収率の波長依存性など複数の因子に応じて定まる。これらの複数の因子を考慮したうえで、第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBが、第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAよりも低くなるという条件を満たすように、照射装置13は、適宜構成されていればよい。
【0037】
なお、第1の照射部13Aは、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAにおいて、パウダーベッドPBの温度TAが金属紛体の融点Tmの0.8倍よりも高くなるように、第1のレーザ光LAを照射することが好ましい。
【0038】
特に、金属造形物MOの各断層を金属粉体の溶融・凝固によって造形する場合、第1の照射部13Aは、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAにおいて、パウダーベッドPBの温度TAが金属紛体の融点Tmよりも高くなるように、第1のレーザ光LAを照射することが好ましい。この場合、第1のレーザ光LAでパウダーベッドPB上を走査すると、第1の領域DAの軌跡においてパウダーベッドPBが溶融・凝固する。これにより、金属造形物MOの各断層が造形される。
【0039】
一方、金属造形物MOの各断層を金属粉体の焼結によって造形する場合、第1の照射部13Aは、第1のレーザ光LAが照射される第1の領域DAにおいて、パウダーベッドPBの温度TAが金属紛体の融点Tmの0.8倍よりも高く、かつ、金属紛体の融点Tmよりも低くなるように、第1のレーザ光LAを照射することが好ましい。この場合、第1のレーザ光LAでパウダーベッドPB上を走査すると、第1の領域DAの軌跡においてパウダーベッドPBが焼結する。これにより、金属造形物MOの各断層が造形される。
【0040】
また、第2の照射部13Bは、第2のレーザ光LBが照射される第2の領域DBにおいて、パウダーベッドPBの温度TBが金属紛体の融点Tmの0.5倍以上0.8倍以下になるように、第2のレーザ光を照射することが好ましい。この条件を満たすことによって、(1)第1のレーザ光LAを第1の領域DAに照射する前に第2のレーザ光LBを第2の領域DBに照射する場合には、第2のレーザ光LBでパウダーベッドPB上を走査すると、第2の領域DBの軌跡においてパウダーベッドPBが加熱することができ、(2)第1のレーザ光LAを第1の領域DAに照射した後に第2のレーザ光LBを第2の領域DBに照射する場合には、第1のレーザ光LAを照射された後の第1の領域DAとその周辺領域との温度差を小さくすることができる。
【0041】
なお、第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBを第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAよりも低くするための方法としては、例えば、第2の領域DBに照射される第2のレーザ光LBのエネルギー密度を第1の領域DAに照射される第1のレーザ光LAのエネルギー密度よりも低くする方法が挙げられる。第2の領域DBに照射される第2のレーザ光LBのエネルギー密度を第1の領域DAに照射される第1のレーザ光LAのエネルギー密度よりも低くするように第1のレーザ光LA及び第2のレーザ光LBの各々の波長を設定することにより、第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBを第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAよりも低くすることができる。したがって、このような照射装置13を用いれば、金属造形物MOにおいて生じ得る残留応力を小さく抑えることができる、という効果を得ることができる。このような照射装置13を備えた金属造形装置、及び、金属造形装置を備えた金属造形システム1によっても、同様の効果を奏する。
【0042】
なお、第2の領域DBに照射される第2のレーザ光LBのエネルギー密度を第1の領域DAに照射される第1のレーザ光LAのエネルギー密度よりも低くする構成を採用する場合、第2のレーザ光LBの波長が第1のレーザ光LAの波長よりも長ければ、第2のレーザ光LBの波長が第1のレーザ光LAの波長よりも短い場合と比較して、上述した効果を得られやすくなる。したがって、第2の領域DBに照射される第2のレーザ光LBのエネルギー密度を第1の領域DAに照射される第1のレーザ光LAのエネルギー密度よりも低くする構成を採用する場合、第2のレーザ光LBの波長を第1のレーザ光LAの波長よりも長くする構成を併せて採用することが好ましい。ただし、第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBが第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAよりも低い状態は、第2のレーザ光LBの波長が第1のレーザ光LAの波長よりも短い場合であっても、金属紛体の種類(金属紛体の吸収率)などの他の条件を変更することで、実現することができる。
【0043】
なお、第1のレーザ光LA及び第2のレーザ光LBによるパウダーベッドの走査方法としては、少なくとも2つの方法が考えられる。第1の方法は、図3の(a)に示すように、第1の領域DAの少なくとも一部に対して、第1のレーザ光LAの照射前に第2のレーザ光LBを照射する方法である。第2の方法は、図3の(b)に示すように、第1の領域DAの少なくとも一部に対して、第1のレーザ光LAの照射後に第2のレーザ光LBを照射する方法である。いずれの方法を採用した場合であっても、照射装置13によれば、金属造形物MOにおいて生じ得る残留応力を小さく抑えることができる、という効果を奏する。照射装置13を備えた金属造形装置、及び、金属造形装置を備えた金属造形システム1によっても、同様の効果を奏する。
【0044】
なお、前述した第1の方法と第2の方法とを比較すると、第2の方法を採用する場合には、第1の方法を採用するよりも、金属造形物MOに生じ得る残留応力を小さく抑えられることが分かる。これは、補助加熱を行うことによって、本加熱された領域とその周辺の領域との温度差を小さくすることに加えて、本加熱が終了した後の凝固した又は焼結した金属造形物MOの少なくとも一部の断層の温度低下を緩やかにすることが可能になるからである。
【0045】
一方、第1の方法を採用する場合には、第2の方法と比較して以下のメリットが得られ得る。第1のメリットは、金属造形物MOの積層密度が下がり難い点である。すなわち、本加熱の前に補助加熱を行わない場合、本加熱の際にパウダーベッドPBが急加熱される。このため、金属紛体が溶融することにより生じる金属液体が大きな運動量を持ち易く、その結果、金属液体が凝固することにより生じる金属固体の表面の平坦性が損なわれ易い。これにより、金属造形物MOの積層密度が下がり易くなる。これに対して、本加熱の前に補助加熱を実施する場合には、本加熱の際のパウダーベッドPBの温度上昇を緩やかにすることができる。このため、金属紛体が溶融することにより生じる金属液体が大きな運動量を持ち難くなり、その結果、金属液体が凝固することにより生じる金属固体の表面の平坦性が損なわれ難い。これにより、金属造形物MOの積層密度が下がり難くなる。
【0046】
第2のメリットは、本加熱の際に照射するレーザ光のパワーを小さく抑えることができる点である。本加熱の際に照射するレーザ光のパワーを小さく抑えることができるのは、本加熱を実施する際のパウダーベッドPBの温度が補助加熱によって既にある程度高くなっているからである。第3のメリットは、本加熱時のパウダーベッドPBの温度の場所毎のばらつきを小さく抑えることができる点である。例えば、補助加熱を行わずに本加熱によってパウダーベッドPBの温度を20℃から1000℃に上昇させる場合を考える。この場合、本加熱時の温度上昇度が約1000℃になるので、そのばらつきが±10%であるとすると、本加熱時のパウダーベッドPBの温度は、約900℃〜1100℃の範囲内でばらつくことになる。このように、本加熱時のパウダーベッドPBの温度のばらつきが大きいと、ある場所では過剰加熱になり、ある場所では加熱不足になるという問題が生じ易い。一方、補助加熱によってパウダーベッドPBの温度を600℃に上昇させた後、本加熱によってパウダーベッドPBの温度を600℃から1000℃に上昇させる場合を考える。この場合、本加熱時の温度上昇度が約400℃になるので、そのばらつきが±10%であるとすると、本加熱時のパウダーベッドPBの温度は、約960℃〜1040℃の範囲内でばらつくことになる。このように、本加熱時のパウダーベッドPBの温度のばらつきが小さいと、ある場所では過剰加熱になり、ある場所では加熱不足になるという問題が生じ難い。
【0047】
(測定部及び制御部)
前述したように金属造形装置は、測定部14及び制御部15を含み得る。本節では、測定部14及び制御部15について説明する。なお、図1において、測定部14と制御部15とを結ぶ線は、測定部14にて得られた測定結果を表す信号を制御部15に送信するための信号線を表し、互いに電気的または光学的に接続されている。また、図1において、制御部15と照射装置13とを結ぶ線は制御部15にて生成された制御信号を照射装置13に送信するための信号線を表し、互いに電気的または光学的に接続されている。
【0048】
測定部14は、パウダーベッドPBの温度(例えば、表面温度)を測定するための構成である。測定部14としては、例えば、サーモカメラを用いることができる。制御部15は、照射部13を制御するための構成である。制御部15としては、例えば、マイコンを用いることができる。本実施形態において、制御部15は、測定部14によって測定される温度に基づいて、照射部13を制御する。
【0049】
制御部15による制御の内容としては、例えば、(1a)第1の領域DAの少なくとも一部に、第1のレーザ光LAの照射後に第2のレーザ光LBが照射されるように、照射部13を制御することが挙げられる。或いは、(1b)第1の領域DAの少なくとも一部に、第1のレーザ光LAの照射前、照射後、及び照射中のうち少なくとも何れか1つのタイミングで第2のレーザ光LBが照射されるように、照射部13を制御することが挙げられる。また、制御部15による他の制御内容としては、例えば、(2)第1の領域DAにおけるパウダーベッドPBの温度TAが上記金属紛体の融点Tmの0.8倍よりも高くなるように、第1の照射部13Aを制御すると共に、第2の領域DBにおけるパウダーベッドPBの温度TBが金属紛体の融点Tmの0.5倍以上0.8倍以下になるように、第2の照射部13Bを制御することが挙げられる。
【0050】
(金属造形物の製造方法)
金属造形システム1を用いた金属造形物MOの製造方法Sについて、図4を参照して説明する。図4は、製造方法Sの流れを示すフローチャートである。
【0051】
製造方法Sは、図4に示すように、パウダーベッド形成工程S1と、レーザ光照射工程S2(特許請求の範囲における「照射方法」の一例)と、ステージ降下工程S3と、造形物取出工程S4と、を含んでいる。金属造形物MOは、前述したように、断層毎に造形される。パウダーベッド形成工程S1、レーザ光照射工程S2、及びステージ降下工程S3を、断層数分、繰り返し実行される。
【0052】
パウダーベッド形成工程S1は、造形テーブル10のステージ10c上にパウダーベッドPBを形成する工程である。パウダーベッド形成工程S1は、例えば、(1)リコータ10aを用いて金属粉体を供給する工程と、(2)ローラ10bを用いて金属粉体をステージ10c上に均し広げる工程と、により実現することができる。
【0053】
レーザ光照射工程S2は、第1のレーザ光LAを第2のレーザ光LBと共にパウダーベッドPBに照射することによって、金属造形物MOの一断層を造形する工程である。レーザ光照射工程S2においては、第1のレーザ光LAによる本加熱と、第2のレーザ光LBによる補助加熱と、が実施される。なお、パウダーベッドPBの各点に対する補助加熱は、その点に対する本加熱の前に実施されてもよいし、その点に対する本加熱の後に実施されてもよし、その点に対する本加熱時に実施されてもよい。なお、レーザ光照射工程S2において第1のレーザ光LA及び第2のレーザ光LBを照射する領域は、パウダーベッドPBの少なくとも一部の領域であり、金属造形物MOの断層形状に応じて決定される。
【0054】
なお、レーザ光LAによってパウダーベッドPBを加熱する際、パウダーベッドPBの温度Tを何度にするかは、金属造形物MOの各断層を金属粉体の溶融・凝固によって造形するか、金属紛体の焼結によって造形するかに応じて決定すればよい。金属造形物MOの各断層を金属粉体の溶融・凝固によって造形する場合、レーザ光LAによって、パウダーベッドPBの温度Tが金属紛体の融点Tm以上になるように、パウダーベッドPBを本加熱すればよい。一方、金属造形物MOの各断層を金属粉体の焼結によって造形する場合、レーザ光LAによって、パウダーベッドPBの温度Tが金属粉体の融点Tmの0.8倍よりも大きく、かつ、金属粉体の融点Tmよりも小さくなるように、パウダーベッドPBを本加熱すればよい。
【0055】
ステージ降下工程S3は、一段層分、造形テーブル10のステージ10cを降下させる工程である。これにより、ステージ10c上に新たなパウダーベッドPBを形成することが可能になる。パウダーベッド形成工程S1、レーザ光照射工程S2、及びステージ降下工程S3を断層数分繰り返すことによって、金属造形物MOができあがる。
【0056】
造形物取出工程S4は、できあがった金属造形物MOをパウダーベッドPBの中から取り出す工程である。これにより、金属造形物MOが完成する。
【0057】
レーザ光照射工程S2、及び、レーザ光照射工程S2を含む金属造形物の製造方法Sによれば、金属造形物MOの積層造形に掛かる時間を短く抑えながら、金属造形物MOにおいて生じ得る残留応力を小さく抑えることができる、という効果、或いは、補助加熱用のレーザ光LBの照射自由度が高くなる、という効果を奏する。
【0058】
(付記事項)
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 金属造形システム
10 造形テーブル
11A 第1のレーザ装置
11B 第2のレーザ装置
12A 第1の光ファイバ
12B 第2の光ファイバ
13 照射装置
13A 第1の照射部
13B 第2の照射部
13a ガルバノスキャナ(照射部)
13b 集光レンズ
14 測定部
15 制御部
LA 第1のレーザ光
LB 第2のレーザ光
【要約】
【課題】金属造形物において生じ得る残留応力を小さく抑える。
【解決手段】照射装置(13)は、パウダーベッド(PB)の第1の領域に第1のレーザ光(LA)を照射する第1の照射部(13A)と、パウダーベッド(PB)の第2の領域に第2のレーザ光(LB)を照射する第2の照射部(13B)と、を備えている。第2の照射部(13B)は、第2の領域に照射される第2のレーザ光(LB)のエネルギー密度が、第1の領域に照射される第1のレーザ光(LA)のエネルギー密度よりも低くなるように、第2のレーザ光(LB)を照射する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4