特許第6577091号(P6577091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6577091
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】粘性体成形装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/26 20060101AFI20190909BHJP
   B28B 3/20 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B28B3/26 Z
   B28B3/20 F
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-99662(P2018-99662)
(22)【出願日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】595120655
【氏名又は名称】株式会社石川時鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 知司
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5280466(JP,B2)
【文献】 特開昭57−087902(JP,A)
【文献】 特開平09−254116(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第03718347(DE,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0079226(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口金の押出通路を通して粘性体を押出すことにより口金の押出形状に応じた断面形状の粘性体成形品を形成する粘性体成形装置であって、
前記口金の押出に対応する開口部を形成された台金と、
該台金前記開口部の両側端部にそれぞれ嵌合して保持され、該開口部を流れる前記粘性体の流動抵抗を調整する出足調整部品と、
前記粘性体の流動方向で前記各出足調整部品の下流側にサイドダイとして固定され、前記口金の押出通路の一部を構成すると共に、前記開口部から押し出される前記粘性体の両側端部を切り落とす切刃と、
前記開口部の上下端部に対応する位置で前記切刃を挟んだ状態で前記台金に固定され、前記切刃と共に前記口金の押出通路を形成するトップダイと、
前記出足調整部品において前記粘性体の流路を形成する壁面に設けられ、前記粘性体の流動方向に交差する方向に前記壁面から突出し、その突出量を調整可能とされた調整部材とを備える粘性体成形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記調整部材は、雄ねじ体であり、前記出足調整部品の壁面に複数個ねじ込んで固定されている粘性体成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口金を通して粘性体を押出すことにより口金の押出形状に応じた断面形状の粘性体成形品を形成する粘性体成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平板状で内部に中空孔を備える粘性体成形品を、追加の加工なしで一度の押出成形にて形成する粘性体成形装置が開示されている。この場合の成形品は、成形品の両側端部に複雑形状の係合形状部を備えるため、係合形状部は押出成形の出口で切刃によって端部を切り落とすことにより形成可能としている。押出成形に際し、押出部位毎の粘性体の流動抵抗を調整して、押出各部の押出速度がばらつくことを防止し、成形品にひずみ、ひび割れ等の不具合が生じないようにしている。そのため、特許文献1の発明では、押出経路中の各部に出足調整部品を設けている。出足調整部品としては、口金の押出流路となる台金の開口部に挿入して、切刃の上流側の流動抵抗を調整するものも開示されている。
【0003】
一方、図36、37のように、特許文献2には、平板状の成形品を押出成形する際に、成形品押出孔Fの両側端部に設けた捨土用押出孔Aから捨土を押し出す押出成形装置が開示されている。この押出成形装置では、捨土用押出孔Aの上流側に流動抵抗調整用の調整部材Bを設けている。具体的には、調整部材Bとしてボルトを用いており、このボルトを、口金Dを構成する際のベースとなる台金Cに固定し、ボルトの位置を調整可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5280466号公報
【特許文献2】特開2018−24185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図38〜40のように、一般的に、押出装置の台金Cには、台金Cを溜め箱Eに固定するためのボルトG、H及び口金Dの構成部品を台金Cに固定するためのボルトI、Jが多数設けられ、調整部材Bとしてのボルトを台金Cに固定することは現実には困難である。具体的には、図38に示す台金Cの側部のボルトHがあるため、調整部材Bとしてのボルトを台金Cに固定することはできない。
【0006】
台金Cには、押出成形のため粘性体に高い圧力が加えられ、台金Cは溜め箱Eに対し、また、口金Dを構成する部品は台金Cに対し、それぞれ強固に固定する必要がある。調整部材Bを台金Cに固定するために、溜め箱Eに対する台金Cの固定、及び台金Cに対する口金Dを構成する部品の固定を犠牲にすると、台金C及び口金Dを構成する部品が高い圧力に耐えられなくなる恐れがある。
【0007】
このような問題に鑑み、本発明の課題は、粘性体成形品を押出成形にて形成する粘性体成形装置において、押出口を構成する部品とは独立して出足調整部品及び調整部材を設けることにより、押出成形の基本性能を犠牲にすることなく、出足調整部品及び調整部材を設けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1発明は、口金を通して粘性体を押出すことにより口金の押出形状に応じた断面形状の粘性体成形品を形成する粘性体成形装置であって、前記口金の押出流路を形成する台金の開口部の両側端部にそれぞれ嵌合して保持され、該開口部を流れる前記粘性体の流動抵抗を調整する出足調整部品と、前記粘性体の流動方向で前記各出足調整部品の下流側に固定され、且つ前記台金に固定されており、前記開口部から押し出される前記粘性体の両側端部を切り落とす切刃と、前記出足調整部品において前記粘性体の流路を形成する壁面に設けられ、前記粘性体の流動方向に交差する方向に前記壁面から突出し、その突出量を調整可能とされた調整部材とを備える。
【0009】
第1発明によれば、調整部材を備えた出足調整部品は、台金の開口部に嵌合して保持され、台金に固定された切刃に固定されている。そのため、出足調整部品及び調整部材を台金に対して固定する必要はなく、押出成形の基本性能を犠牲にせずに、出足調整部品及び調整部材を設けることができる。
【0010】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記調整部材は、雄ねじ体であり、前記出足調整部品の壁面に複数個ねじ込んで固定されている。
【0011】
第2発明によれば、複数の雄ねじ体の突出量を調整することにより、開口部を流れる粘性体の流動抵抗を細かく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る粘性体成形装置の第1実施形態の口金を含む主要部を示す正面図である。
図2図1と同様の主要部の平面図である。
図3図1と同様の主要部の側面図である。
図4】第1実施形態の周辺部を示す部分断面正面図である。
図5】第1実施形態における受入部及び脱気部の部分断面平面図である。
図6】第1実施形態における左側のサイドダイを示す正面図である。
図7図6と同様の左側のサイドダイの底面図である。
図8】第1実施形態における右側のサイドダイを示す正面図である。
図9図8と同様の右側のサイドダイの底面図である。
図10】第1実施形態における中玉を示す正面図である。
図11図10と同様の中玉の平面図である。
図12図10と同様の中玉の側面図である。
図13】第1実施形態における出足調整部品を示す正面図である。
図14図13と同様の出足調整部品の平面図である。
図15図13と同様の出足調整部品の側面図である。
図16図13とは別の出足調整部品を示す平面図である。
図17図16と同様の出足調整部品の正面図である。
図18図16と同様の出足調整部品の側面図である。
図19図13とは更に別の出足調整部品を示す平面図である。
図20図19と同様の出足調整部品の正面図である。
図21図19と同様の出足調整部品の側面図である。
図22】第1実施形態におけるサイドダイ及び出足調整部品の正面図である。
図23図22と同様のサイドダイ及び出足調整部品の平面図である。
図24図22と同様のサイドダイ及び出足調整部品の斜視図である。
図25図22と同様のサイドダイ及び出足調整部品が台金に組み付けられた状態の斜視図である。
図26】台金の開口に嵌合された出足調整部品を示す説明図である。
図27図26と同様の出足調整部品の平面図である。
図28】第1実施形態により成形品が押し出されている状態を示す斜視図である。
図29図22と同様の斜視図であり、別角度から見た斜視図である。
図30図22、23と同様の斜視図であり、より広範囲に見た斜視図である。
図31】第1実施形態により成形された成形品を示す斜視図である。
図32】本発明の第2実施形態におけるサイドダイ及び出足調整部品の正面図である。
図33図32と同様のサイドダイ及び出足調整部品の平面図である。
図34】本発明の第3実施形態におけるサイドダイ及び出足調整部品の正面図である。
図35図34と同様のサイドダイ及び出足調整部品の平面図である。
図36】本発明の従来例を示す説明図である。
図37図36と同様の従来例の分解斜視図である。
図38】本発明の台金の別の従来例を示す正面図である。
図39図38の台金に固定される口金の平面図である。
図40図39と同様の口金の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態として、住宅の外壁材の成形に本発明を適用した場合について図面に基づいて説明する。この実施形態において粘性体としては一般的に屋根瓦を生産するのに用いられる粘土を使用している。
【0014】
図31に、この実施形態によって成形された外壁材(本発明における粘性体成形品に相当する)を示している。外壁材としての成形品71には、外壁材として使用される際に上端縁となる端部71bと下端縁となる端部71aとが複雑形状の係合形状部として形成され、成形品71本体には軽量化や断熱性能向上のため多数の中空孔71cが形成されている。
【0015】
図4、5には、上記成形品71を成形するための成形装置の全体が示されている。成形装置50は、粘土を受け入れて次工程へ送り出すための受入部51と、受け入れた粘土から空気を除去する脱気部55と、空気を除去された粘土を口金10に向けて押出す押出部58と、押出された粘土を口金10へと導く土溜部59と、本発明の主要部である口金10とから成る。
【0016】
受入部51は、外部から粘土を受け入れるためのホッパー51aと、受け入れた粘土を脱気部55へ向けて送る羽根53と、下方の羽根53に向けて受け入れた上部の粘土を押込む一対の押込羽根52を備える。なお、羽根53及び押込羽根52を回転させるため各軸端にはモータ(不図示)が接続されている。
【0017】
脱気部55は、真空ポンプ(不図示)が接続された気密室55aを備え、受入部51から送られた粘土は気密室55aの入口54で粘土の壁を形成するように構成されている。また、脱気部55の下方には、受入部51の羽根53と同軸でスクリュー57を備え、スクリュー57の上部には受入部51におけると同様一対の押込羽根56を備える。脱気部55は、以上の構成により口金10に向けて押出される粘土中に空気が混入しないようにしている。
【0018】
脱気部55からの粘土は押出部58で圧力を加えられて土溜部59を介して口金10から押出される。
【0019】
図1〜3には、口金10の詳細を示している。口金10は、土溜部59の出口に結合される台金11と、台金11に固定され、粘土の押出通路を形成する上下のトップダイ12、13及び左右のサイドダイ14、15とを備える。台金11には、その押出通路に対応して開口部11aが形成されており、この開口部11aの開口は押出通路の開口を含み、それより大きい開口面積とされている。また、台金11には、左右両側に粘土の押出方向で見て上流側である後方に、それぞれ支柱18、19が固定されており、支柱18、19には、出足調整部品30と中玉40が支持されている。更に、台金11には、トップダイ12、13及びサイドダイ14、15によって形成されている粘土の押出通路を囲むように複数の出足調整部品21〜28が固定されている。出足調整部品30及び21〜28は、粘土が押出通路を通る際の流動抵抗が全体として均一となるように、それぞれの固定位置や形状を調整される。
【0020】
なお、台金11の後方に固定される各部品は、土溜部59内に位置している。
【0021】
上下のトップダイ12、13は、両者間の隙間が成形品71の厚さとなるように台金11にボルト(不図示)にて固定され、左右のサイドダイ14、15は、両者間の隙間が成形品71の幅となるように上下のトップダイ12、13間に挟み込まれ、トップダイ12を上下に貫通するボルト(不図示)によって前後方向の位置決めがされている。上下のトップダイ12、13間は左右両側に固定板16、17をボルト締めすることにより固定されている。固定板16、17は、トップダイ12、13の前方側に固定されても良い。
【0022】
図6〜9は、左右のサイドダイ14、15の基本構成を示す。左右のサイドダイ14、15は、それぞれ先端部に切刃14a、15aを備え、切刃14a、15aの形状は、それぞれ外壁材としての成形品71の下端縁となる端部71aと上端縁となる端部71bの形状を出すように形成されている。各サイドダイ14、15には、各切刃14a、15aを含む環状部が形成され、それぞれに粘土が押出される小通路14c、15cが形成されている。図7及び9に良く示されるように、各切刃14a、15aを含む環状部は、その前後方向(粘土の押出方向)の寸法が各サイドダイ本体14b、15bのそれの約4分の1程度とされ、サイドダイ本体14b、15bの前側(粘土の押出側)に形成されている。なお、各サイドダイ本体14b、15bの前後方向寸法は、各トップダイ12、13のそれと等しくされている。これは、環状部によって形成される小通路14c、15cを通過する粘土の流動抵抗がサイドダイ14、15から離間した中央部のそれより大きくなり易いため、環状部の前後方向寸法を、口金を成すトップダイ12、13の前後方向寸法より小さくして流動抵抗が全体として等しくなるようにしている。
【0023】
切刃14a、15aは、口金10を形成する一部品であるサイドダイ14、15の一部に形成されているため、押出形状が複雑でも簡単に、しかも低コストで構成できる。また、サイドダイ14、15を交換することにより種々の形状の成形品を形成できる。
【0024】
各サイドダイ本体14b、15bの上下方向には貫通孔14d、15dが形成され、サイドダイ14、15の前後方向の位置決めのためトップダイ12を貫通するボルト(不図示)が貫通するようになっている。ここでは、貫通孔14d、15dの孔形状は円形とされているが、これを左右方向に長い長円形状としても良い。長円形状とした場合は、サイドダイ14、15の位置を左右方向で調整可能とすることができる。
【0025】
図10〜12は、中玉40の詳細を示している。中玉40は、両端部43、44において支柱18、19が挿入されることによって台金11の後方に支持される板状体41と、該板状体41の前方側に多数突出して形成された棒状体42とを備える。板状体41は、粘土の流動抵抗を抑えるように後方側(粘土の押出方向上流側)に向けて先細に形成されている。
【0026】
各棒状体42は、左右方向寸法が、板状体41に近い側42a(粘土の押出方向上流側)より先端側42b(粘土の押出方向下流側)が大きくされ、上下方向寸法が、先端側42bより板状体41に近い側42aが大きくされている。このような寸法関係とすることにより、棒状体42同士間の隙間が粘土の上流側で大きく下流側で小さくなるため、上流側の隙間に多めに入った粘土が下流側に行くに従って小さな隙間に押し込められ、棒状体42によって形成される成形品71の中空孔71c同士間の粘土の密度が粗くなるのを防止できる。しかも、棒状体42の板状体41に近い側42a(上流側)が左右方向寸法で小さくされていても上下方向寸法では大きくされているため、板状体41に近い側42aで必要な棒状体42の強度を確保することができる。また、棒状体42は、その先端(粘土の押出方向下流端)が図2に良く示されているように口金10の出口まで伸びている。
【0027】
なお、粘土は板状体41の部分を通過することにより上下に切り離されるが、板状体41を通過した後は再び上下に分離されたものが接触することにより一体化される。これは粘土内に空気が混入していないため、切り離された部分に分離層が形成されないことによる。この結果、中玉40により成形品71には多数の中空孔71cが形成されることになる。
【0028】
成形品71の中空孔71cは、中玉40の棒状体42の断面形状や板状体41への取付位置を変更することにより種々の形状を選択することができる。勿論、同一成形品の中にある複数の中空の形状や位置を相互に異ならせることもできる。
【0029】
図13〜15は、出足調整部品30の詳細を示す。出足調整部品30は左右方向に幅広で、幅方向の中央部が上下に僅かに拡げられた通路体31を成し、左右両端部32、33が支柱18、19に貫通されて固定されることによって台金11の後方に支持されている。通路体31の左右端には、そこを流れる粘土の流動抵抗を調整するための抵抗体34〜39が通路体31と一体に形成されている。これらの抵抗体34〜39は、流動抵抗調整のため、いろいろな形状や大きさのものとされる。なお、両端部32、33の支柱18、19が貫通する孔部32a、33aには、上方からネジ(不図示)が螺合される雌ネジ32b、33bが形成されている。これにより支柱18、19上での出足調整部品30の位置を任意に調整可能としている。
【0030】
図16〜18は、出足調整部品21の詳細を示す。出足調整部品21は、直角に屈曲されたブラケット部21aを一体に形成した板状の本体21bと、本体21bに対してブラケット部21aを挟んで反対側に延びる板状の補助体21cとを備える。本体21bには、複数個(ここでは、7個)のボルト21dが分散してねじ込まれている。ボルト21dは、ブラケット部21aが屈曲されているのとは反対側(図17において左側)に突出されている。一方、ブラケット部21aは、ボルト(不図示)を一対のスリット21fにそれぞれ貫通させた状態で、台金11の側面(粘土の流動方向に関して上流側)に固定されている。従って、各ボルト21dは、台金11よりも粘土の流動方向に関して上流側で台金11の開口部11aの内側に対応して、粘土の流動方向に交差して突出されている(図1、2参照)。
【0031】
補助体21cにも、本体21bと同様に、複数個(ここでは、9個)のボルト21eが分散してねじ込まれている。各ボルト21eは、台金11の開口部11aの内側で粘土の流動方向に交差して突出されている(図1、2参照)。
【0032】
各ボルト21d、21eの突出量を調整することにより、開口部11aを流れる粘土の流動抵抗を細かく調整することができる。
【0033】
図19〜21は、出足調整部品23の詳細を示す。出足調整部品23は、出足調整部品21に対して、概ね大きさが違うのみで、基本的な構成及び機能は、出足調整部品21と同一である。従って、ここでは、出足調整部品23に関する詳細な説明は省略する。なお、図19〜21においては、図16〜18に対して、対応する部分間で対応する符号が付されており、図16〜18における「21」の符号が図19〜21においては「23」に変更されている。
【0034】
図22〜25は、右側のサイドダイ15に出足調整部品29が一体に結合された状態を示す。ここでは、右側のサイドダイ15及び出足調整部品29の状態を示すが、左側のサイドダイ14及び出足調整部品についても、右側のサイドダイ15及び出足調整部品29に対して左右対称形状に構成されている。出足調整部品29は上述の出足調整部品23、25と同様の機能を有する。
【0035】
出足調整部品29は、正面視でコ字状を成し、コ字状の外側が台金11の開口部11aの側端部に嵌合され(図25参照)、コ字状の内側の壁面29bが粘土の流路を成すように台金11に組み付けられている。出足調整部品29は、その上下寸法が台金11の開口部11aの上下寸法内に嵌る大きさとされている。図26、27のように、開口部11aから粘土の流動方向下流側に突出したサイドダイ15は、トップダイ12、13に上下から挟まれた状態でトップダイ12、13に固定されている。
【0036】
サイドダイ15と出足調整部品29とは、両者のねじ穴15e、29aにねじ込まれるボルト29cによって一体化されている(図24参照)。両者が一体化された状態では、出足調整部品29の粘土の通路を成す部分、つまりコ字状の内側の壁面29bの粘土の流れの下流側にサイドダイ15の切刃15aが対応するようにされている。出足調整部品29はコ字状の内側の壁面29bを通る粘土の流動抵抗を調整するためにコ字状の内側の壁面29bの大きさを変えた複数のものから適宜選択して使用するようにされている。図24、25に図示された出足調整部品29は、図22、23に図示された出足調整部品29よりコ字状の内側の壁面29bの上下幅の大きいものが選択されている。
【0037】
出足調整部品29のコ字状の上下の壁面29bには複数個(ここでは、4個)のボルト(本発明における調整部材、雄ねじ体に相当)29dが分散してねじ込まれている。また、出足調整部品29のコ字状の奥底の壁面29bにも複数個(ここでは、2個)のボルト(本発明における調整部材、雄ねじ体に相当)29eが分散してねじ込まれている。各ボルト29d、29eは、コ字状の内側の壁面29bを通る粘土の流動方向に交差して突出されている。そのため、各ボルト29d、29eは、その突出量を調整することにより、コ字状の内側の壁面29bを流れる粘土の流動抵抗を細かく調整することができる。
【0038】
図23に仮想線で示すように、コ字状の出足調整部品29の粘土の流動方向の上流側には、追加の出足調整部品29fが固定可能とされている。出足調整部品29fを追加することにより、出足調整部品29だけの場合に比べて、コ字状の内側の壁面29bを流れる粘土の流動抵抗の調整幅を、大きい側に拡大することができる。
【0039】
上述の成形装置50を作動させて、粘土を口金10から押出すと、3列の粘土の帯が押出される。一列は中央のもので、これは外壁材とされる成形品71であり、左右端の2列はそれぞれ各サイドダイ14、15の小通路14c、15cから押出される除去物72、73である。除去物72、73は粘土として再度受入部51へ戻されて再利用される(図4参照)。出足調整部品30及び21〜29により粘土が押出通路を通る際の流動抵抗が全体として均一とされ、しかも切刃14a、15aの部分の前後方向寸法を口金の対応する部分の寸法より短くして流動抵抗を成形品全体として均一としているため、複雑形状の係合形状部を含めて成形品71は全体として同じ速度で押出され、成形品表面のひび割れやささくれを防止できる。しかも一度の成形工程で後加工なしで成形品の形成ができる。
【0040】
切刃14a、15aを備えた左右のサイドダイ14、15の上流側の粘土の流動抵抗の調整を、サイドダイ14、15と一体に固定された出足調整部品29によって行い、出足調整部品29の壁面29bにねじ込まれたボルト29d、29eにより微調整可能としている。そのため、出足調整部品29及びボルト29d、29eは、台金11に対して直接固定する必要はなく、押出成形の基本性能を犠牲にせずに、出足調整部品29及びボルト29d、29eを台金11の開口部11aに嵌合して保持することができる。
【0041】
また、左右端の2列の除去物72、73は、図28及び29に示すように中央の成形品71から分離して成形品71に触れないようにしている。これにより成形品71と除去物72、73との間で押出速度に微妙な差が生じても、速度差のある除去物72、73が成形品71に触れることで生じる成形品表面のひび割れやささくれを防止できる。
【0042】
図28及び30に示すように成形品71は、口金10の押出出口部に設けられたローラ列61により送られ、ローラ列61脇の一対のガイドバー63、64によってスライド自在に支持されたスライダ62に沿ってカッター(不図示)を移動させることにより所定の長さに成形品71を切ることができる。
【0043】
図32、33は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態は、第1実施形態に対して、ボルト29dの個数が増加(4個から6個に増加)され、且つボルト29eの個数が増加(2個から4個に増加)されている点が相違し、その他は両者同一である。
【0044】
図34、35は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態は、第1実施形態に対して、出足調整部品29の粘土の流動方向での寸法が大きくされており、しかもボルト29dの個数が増加(4個から14個に増加)され、且つボルト29eの個数が増加(2個から4個に増加)されている点が相違する。その他は両者同一である。
【0045】
第2、3実施形態によれば、第1実施形態に比べてボルト29d、29eの個数が増加されているため、出足調整部品29による粘土の流動抵抗の調整幅を、大きい側に拡大することができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.本発明の粘性体成形方法は、外壁材以外にもセラミックス製歯車の成形にも適用できる。これは断面が歯車形状の棒体を口金から押出し、その棒体を任意の長さに切断することにより形成できる。
2.粘性体としては磁器製品を造るための粘土でも良い。
【符号の説明】
【0047】
10 口金
12、13 トップダイ
14、15 サイドダイ
14a、15a 切刃
40 中玉
50 成形装置
29 出足調整部品
29b 出足調整部品の壁面
29d、29e ボルト(調整部材、雄ねじ体)
【要約】
【課題】粘性体成形品を押出成形にて形成する粘性体成形装置において、押出口を構成する部品とは独立して出足調整部品及び調整部材を設けることにより、押出成形の基本性能を犠牲にすることなく、出足調整部品及び調整部材を設ける。
【解決手段】口金の押出流路を形成する台金11の開口部11aに嵌合して保持され、開口部11aを流れる粘土の流動抵抗を調整する出足調整部品29と、粘土の流動方向で出足調整部品29の下流側に固定され、且つ台金11に固定されており、開口部11aから押し出される粘土の端部を切り落とす切刃15aと、出足調整部品29において粘土の流路を形成する壁面29bに設けられ、粘土の流動方向に交差する方向に壁面29bから突出し、その突出量を調整可能とされたボルト29dとを備える。
【選択図】図25
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