特許第6577306号(P6577306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577306
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】モータ駆動装置およびモータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20190909BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H02P6/16
   H02P27/06
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-174848(P2015-174848)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-51060(P2017-51060A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】398061810
【氏名又は名称】日本電産テクノモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−077609(JP,A)
【文献】 特開2007−068287(JP,A)
【文献】 特開2012−217301(JP,A)
【文献】 特開2013−158219(JP,A)
【文献】 特開2009−77609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/16
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出素子を用いてモータの回転子の位置を検知し、モータを駆動させるモータ駆動装置であって、
前記位置検出素子に駆動電力を供給する位置検出用電源と、
前記位置検出用電源から前記位置検出素子への通電ライン上に設けられ、前記位置検出素子への通電をON−OFFする間欠駆動部と、
前記モータの駆動制御を行う駆動制御部と、
を有し、
前記駆動制御部は、
前記位置検出素子から位置検出信号が入力され、前記位置検出信号に基づいて前記回転子の位置を示す回転位置信号を出力する位置検出部と、
外部から入力される速度指令信号と、前記回転位置信号とに基づいて、スイッチング信号を生成する駆動信号生成部と、
前記スイッチング信号に応じて、前記モータの各相に対してモータ駆動電流を供給するインバータ部と、
を有し、
前記位置検出素子から出力される前記位置検出信号は、前記回転子の磁極の切り替わりに従って正負が切り替わる電圧信号であり、
前記間欠駆動部は、
前記駆動制御部から入力されるモータ駆動情報に基づいて、
所定の周波数で前記位置検出素子への通電をON−OFFする間欠ON−OFF期間と、
前記間欠ON−OFF期間の一つあたりのON期間よりも長く、連続して前記位置検出素子への通電をONとする連続ON期間と、
の切り替えを行い、
前記位置検出信号の正負の切り替わり時点が前記連続ON期間に含まれるように、前記連続ON期間と前記間欠ON−OFF期間との切り替えを行う、モータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動装置であって、
前記間欠駆動部は、前記回転子の磁極の切り替わり時点を含む期間に、前記位置検出素子への通電をONにする、モータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータ駆動装置であって、
前記駆動信号生成部は、
一定の周波数でキャリア波を出力するキャリア波発振回路と、
前記速度指令信号に基づく電圧信号と、前記キャリア波とを比較し、比較信号を出力する、比較器と、
を有し、
前記モータ駆動情報は、前記キャリア波発振回路から出力される前記キャリア波を含み、
前記間欠駆動部は、前記キャリア波発振回路から入力される前記キャリア波の周波数を基本周波数として、前記位置検出素子への通電をON−OFFする、モータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のモータ駆動装置であって、
前記位置検出部は、
通電ON期間において、前記位置検出信号の値を出力し、通電OFF期間において、直前の通電ON期間における前記位置検出信号の最新の値を保持して出力する、信号保持部を有する、モータ駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のモータ駆動装置であって、
前記駆動制御部は、
前記位置検出部から前記回転位置信号および前記回転子の回転数の少なくとも一方が含まれる回転情報が入力される駆動調節部
をさらに有し、
前記駆動調節部は、前記回転情報に基づいて、前記連続ON期間と前記間欠ON−OFF期間との切替タイミングを決定し、前記間欠駆動部に切替指令信号を出力し、
前記間欠駆動部は、前記切替指令信号に基づいて、前記連続ON期間と前記間欠ON−OFF期間との切り替えを行う、モータ駆動装置。
【請求項6】
請求項に記載のモータ駆動装置であって、
前記駆動調節部は、前記回転子の前記回転数に応じた前記間欠ON−OFF期間の長さが記されたデータテーブルを参照しつつ、前記回転情報に基づいて、前記間欠ON−OFF期間の長さを決定する、モータ駆動装置。
【請求項7】
請求項または請求項に記載のモータ駆動装置であって、
前記駆動調節部は、前記回転子の磁極が切り替わったと判断すると、前記間欠駆動部に対して前記連続ON期間から前記間欠ON−OFF期間へ切り替える前記切替指令信号を出力する、モータ駆動装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載のモータ駆動装置であって、
前記インバータ部は、複数のスイッチング素子を有し、
前記スイッチング素子は、前記スイッチング信号の電圧値のHigh−Lowの切り替わりに従ってON−OFFし、
前記間欠駆動部は、前記スイッチング素子の切替時に、前記位置検出素子への通電をOFFとする、モータ駆動装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項のいずれかのモータ駆動装置であって、
前記位置検出用電源と、前記間欠駆動部と、前記駆動制御部とは、1つのパッケージIC内に備えられ、
前記パッケージICには、前記パッケージICの各部を駆動させるための制御電圧が入力され、
前記位置検出用電源は、前記制御電圧を降圧させるDC/DCコンバータである、モータ駆動装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載のモータ駆動装置と、
前記モータと、
を有するモータユニットであって、
前記モータは、
前記モータ駆動電流の供給に従って磁界を発生させる電機子と、
前記電機子の生じる磁界により回転する前記回転子と、
前記回転子の位置を検出し、前記位置検出信号を出力する前記位置検出素子と、
を有する、モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置およびモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位置検出素子を用いてモータの回転子の位置を検出し、検出した回転子の位置に基づいてモータの駆動制御を行うモータ駆動装置が知られている。位置検出素子としては、例えば、ホール素子やホールIC等が用いられる。回転子の位置検出時には、位置検出素子に対して駆動電力が供給される。
【0003】
実開平03−109417号公報には、自動車のドアの開閉状態を検出するためのホール素子への駆動電力の供給を、発信器の出力に伴って一定周期で間欠的に行う技術が記載されている。このように、ホール素子への電力供給を間欠的に行えば、ホール素子において消費される電力消費量を低減できる。
【特許文献1】実開平03−109417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実開平03−109417号公報のように、単にホール素子への駆動電力の供給を一定周期で間欠的に行うと、回転子の位置検出に遅延が生じる虞がある。例えば、回転子の磁極が切り替わる瞬間にホール素子への電力供給が停止していると、磁極の切り替わりを検知するタイミングが遅れる。このため、モータの駆動状況によっては、モータ特性が低下する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、回転子の位置検出用の電力を抑制しつつ、モータ特性の低下を抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、位置検出素子を用いてモータの回転子の位置を検知し、モータを駆動させるモータ駆動装置であって、前記位置検出素子に駆動電力を供給する位置検出用電源と、前記位置検出用電源から前記位置検出素子への通電ライン上に設けられ、前記位置検出素子への通電をON−OFFする間欠駆動部と、前記モータの駆動制御を行う駆動制御部と、を有し、前記駆動制御部は、前記位置検出素子から位置検出信号が入力され、前記位置検出信号に基づいて前記回転子の位置を示す回転位置信号を出力する位置検出部と、外部から入力される速度指令信号と、前記回転位置信号とに基づいて、スイッチング信号を生成する駆動信号生成部と、前記スイッチング信号に応じて、前記モータの各相に対してモータ駆動電流を供給するインバータ部と、を有し、前記位置検出素子から出力される前記位置検出信号は、前記回転子の磁極の切り替わりに従って正負が切り替わる電圧信号であり、前記間欠駆動部は、前記駆動制御部から入力されるモータ駆動情報に基づいて、所定の周波数で前記位置検出素子への通電をON−OFFする間欠ON−OFF期間と、前記間欠ON−OFF期間の一つあたりのON期間よりも長く、連続して前記位置検出素子への通電をONとする連続ON期間と、の切り替えを行い、前記位置検出信号の正負の切り替わり時点が前記連続ON期間に含まれるように、前記連続ON期間と前記間欠ON−OFF期間との切り替えを行う。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、モータ駆動情報に基づいてON−OFFタイミングを決定することにより、モータの駆動状況に合わせて位置検出信号を取得できる。これにより、位置検出用の電力を抑制しつつ、モータ特性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るモータ駆動装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係るモータ駆動装置における各信号の波形の例を示す図である。
図3図3は、第2実施形態に係るモータユニットの構成を示すブロック図である。
図4図4は、第2実施形態に係るモータ駆動装置における各信号の波形の例を示す図である。
図5図5は、第2実施形態に係るモータ駆動装置における各信号の波形の例を示す図である。
図6図6は、第2実施形態に係るモータ駆動装置における各信号の波形の例を示す図である。
図7図7は、第2実施形態に係るモータ駆動装置における各信号の波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
<1.第1実施形態>
まず、第1実施形態に係るモータ駆動装置10Aについて、図1および図2を参照しつつ説明する。図1は、モータ駆動装置10Aの構成を示すブロック図である。図2は、モータ駆動装置10Aにおける各信号の波形の例を示す図である。
【0011】
図2中において、(p)は位置検出素子93Aへの通電波形、(q)は通電が連続して行われたと仮定した場合における位置検出素子93Aからの出力信号波形、(r)は位置検出素子93Aからの位置検出信号S93Aの波形を示している。
【0012】
このモータ駆動装置10Aは、位置検出素子93Aを用いてモータ9Aの回転子の位置を検知し、モータ9Aを駆動させる。図1に示すように、モータ駆動装置10Aは、駆動制御部11Aと、位置検出用電源12Aと、間欠駆動部13Aとを有する。
【0013】
駆動制御部11Aは、モータ9Aの駆動制御を行う。駆動制御部11Aは、駆動信号生成部20Aと、インバータ部30Aと、位置検出部40Aとを有する。
【0014】
駆動信号生成部20Aは、外部から入力される速度指令信号と、後述する回転位置信号S42Aとに基づいて、スイッチング信号S20Aを生成する。インバータ部30Aは、スイッチング信号S20Aに応じて、モータ9Aの各相に対してモータ駆動電流S10Aを供給する。位置検出部40Aには、位置検出素子93Aから位置検出信号S93Aが入力される。位置検出部40Aは、位置検出信号S93Aに基づいて回転子の位置を示す回転位置信号S42Aを出力する。
【0015】
位置検出用電源12Aは、位置検出素子93Aに駆動電力S12Aを供給する。
【0016】
間欠駆動部13Aは、位置検出用電源12Aから位置検出素子93Aへの通電ライン上に設けられる。間欠駆動部13Aは、位置検出素子93Aへの通電をON−OFFする。間欠駆動部13Aは、駆動制御部11Aから入力されるモータ駆動情報S11Aに基づいて、位置検出素子93Aへの通電のON−OFFのタイミングを決定する。
【0017】
モータの駆動状況を考慮せず、単に位置検出素子への駆動電力の供給を間欠的に行うと、モータの駆動状況によっては、モータ特性が低下する虞がある。しかしながら、このモータ駆動装置10Aのように、モータ駆動情報S11Aに基づいて位置検出素子93Aへの通電のON−OFFのタイミングを決定することにより、モータ9Aの駆動状況に合わせて位置検出信号S93Aを取得できる。これにより、位置検出用の電力を抑制しつつ、モータ特性の低下を抑制できる。
【0018】
本実施形態では、間欠駆動部13Aは、回転子の磁極の切り替わり時点を含む期間に、位置検出素子93Aへの通電をONとする。したがって、図2に示すように、本実施形態の位置検出素子93Aは、回転子の磁極の切り替わりに従って正負が切り替わる電圧信号である位置検出信号S93Aを出力する。そして、図2(p)に示す位置検出素子93Aへの通電がONとなる通電ON期間が、図2(q)に示す波形の正負の切り替わり時点と重なるように設定されている。これにより、図2(r)に示すように、位置検出素子93Aが出力する位置検出信号S93Aは、波形の正負の切り替わり時点を含む。
【0019】
このように、回転子の磁極の切替時点付近で位置検出素子93Aへの通電をONとすることにより、モータ9Aの回転状況を遅延なく検出できる。したがって、モータ特性の低下をより抑制できる。
【0020】
<2.第2実施形態>
<2−1.モータユニットの構成>
続いて、第2実施形態に係るモータユニット1の構成について、図3を参照しつつ、説明する。図3は、モータユニット1の構成を示すブロック図である。図4は、モータ駆動装置10における各信号の波形の一例を示す図である。図4中において、(a)は三角波S21、(b)は速度指令電圧Vsp、(c)はPWM信号S23を示している。
【0021】
図3に示すように、本実施形態のモータユニット1は、モータ9と、モータ駆動装置10とを有する。このモータ9は、後述するモータ駆動電流S10の供給に従って駆動する。本実施形態のモータ9は、3相ブラシレスDCモータである。
【0022】
モータ9は、電機子91と、回転子92と、位置検出素子93とを有する。電機子91は、駆動電力の供給に従って磁界を発生させる。回転子92は、電機子91から生じる磁界により回転する。位置検出素子93は、回転子92の位置を検出し、位置検出信号S93を出力する。本実施形態の位置検出素子93は、ホール素子であるが、ホールIC等の他の素子を用いてもよい。また、本実施形態では、モータ9が位置検出素子93を有するが、モータ駆動装置10が位置検出素子93を有していてもよいし、位置検出素子93がモータ9およびモータ駆動装置10のいずれにも属していなくてもよい。
【0023】
モータ駆動装置10は、モータ9にモータ駆動電流S10を供給することにより、モータ9の駆動制御を行う装置である。図1に示すように、モータ駆動装置10は、駆動制御部11と、位置検出用電源12と、間欠駆動部13とを有する。
【0024】
このモータ駆動装置10は、パッケージICにより構成される。すなわち、駆動制御部11と、位置検出用電源12と、間欠駆動部13とは、1つのパッケージIC内に備えられる。このパッケージICには、パッケージIC内の各部を駆動させるための制御電圧Vccが入力される。
【0025】
駆動制御部11は、駆動信号生成部20と、インバータ部30と、位置検出部40と、駆動調節部50とを有する。駆動信号生成部20は、外部から入力される速度指令信号に基づく速度指令電圧Vspに基づいて、スイッチング信号S20を生成する。インバータ部30は、スイッチング信号S20に応じて、モータ9の電機子91の各相に対してモータ駆動電流S10を供給する。位置検出部40には、位置検出素子93から位置検出信号S93が入力される。位置検出部40は、位置検出信号S93に基づいて回転子92の位置を示す回転位置信号S42を出力する。
【0026】
駆動信号生成部20は、キャリア波発振回路21と、コンパレータ22と、PWM信号生成部23と、タイミング制御部24と、スイッチング信号生成部25とを有する。本実施形態の駆動信号生成部20は、速度指令電圧Vspと位置検出部40から入力される回転位置信号S42とに基づいて、回転子92の磁極の切り替わり時点を考慮してスイッチング信号S20を生成する。
【0027】
キャリア波発振回路21は、図4の(a)に示すような一定の周波数でキャリア波である三角波S21を出力する発振回路である。すなわち、キャリア波発振回路21は、一定の周波数でキャリア波を出力するキャリア波発振回路である。なお、キャリア波発振回路21に代えて、鋸波等の他のキャリア波を出力するキャリア波発振回路を用いてもよい。
【0028】
コンパレータ22は、各相の速度指令電圧Vspと三角波S21とを比較し、比較信号S22を出力する比較器である。図4の(b)には、速度指令電圧Vspが実線で、三角波S21が破線で示されている。本実施形態のコンパレータ22の出力する比較信号S22は、速度指令電圧Vspが三角波S21の電圧値を超える場合に、ON信号となり、その他の場合にOFF信号となる。
【0029】
PWM信号生成部23は、比較信号S22に基づいてPWM信号S23を生成する。各相に対応するPWM信号S23は、図4(c)に示すように、比較信号S22がON信号となる期間、すなわち、速度指令電圧Vspが三角波S21の電圧値を超える期間にONとなり、速度指令電圧Vspが三角波S21の電圧値以下となる期間にOFFとなる2値信号である。PWM信号S23は、速度指令電圧Vspが大きいほどそのデューティが大きくなり、速度指令信号Vspが小さいほどそのデューティが小さくなる。
【0030】
タイミング制御部24は、PWM信号S23に基づいて、モータの各相に対する相指令電圧S24を算出する。相指令電圧S24は、モータ9に供給する駆動電流S10の振幅および周期を示す電圧信号である。なお、本実施形態ではタイミング制御部24は、A/D変換部42から入力される回転位置信号S42と、PWM信号S23とに基づいて、相指令電圧S24を算出する。
【0031】
スイッチング信号生成部25は、相指令電圧S24に基づいて、スイッチング信号S20を生成する。スイッチング信号S20は、ON信号とOFF信号からなる2値信号である。
【0032】
インバータ部30は、図3に示すように、6個のスイッチング素子31を有する。このインバータ部30は、いわゆる3相電圧型インバータである。6個のスイッチング素子31は、3相各相に対応する3対のスイッチング素子31からなる。スイッチング素子31は、それぞれ、トランジスタおよびダイオードにより構成されている。スイッチング素子31には、例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が用いられる。なお、スイッチング素子31には、MOSFET(電界効果トランジスタ)などの他の種類のスイッチング素子が用いられてもよい。
【0033】
モータ9の駆動時には、3対のスイッチング素子31に対し、それぞれ3相に対応する3対のスイッチング信号S20が入力される。これにより、各スイッチング素子31の駆動タイミングが切り替わり、3相に対応するモータ駆動電流S10がモータ9の各相へと出力される。
【0034】
位置検出部40は、信号保持部41およびA/D変換部42を有する。信号保持部41には、位置検出素子93から位置検出信号S93が入力される。本実施形態の位置検出素子93は、アナログのホール素子である。このため、回転子92が一定速度で回転している場合、位置検出信号S93は正弦波状の電圧信号となる。
【0035】
また、位置検出部40は、駆動調節部50に位置検出信号S93に基づく回転位置信号S42を出力する。本実施形態では、位置検出部40の出力する位置検出信号S93は、回転子92の磁極の切り替わりに従って正負が切り替わる電圧信号である。また、本実施形態では、回転位置信号S42が、位置検出部40から駆動調節部50に出力される回転情報S40となる。
【0036】
なお、位置検出部40が回転位置信号S42に基づいて回転子92の回転数を算出する回転数算出部をさらに有していてもよい。その場合、位置検出部40は、回転情報S40として、当該回転数を駆動調節部50へと出力してもよい。すなわち、回転情報S40には、回転位置信号S42および回転子92の回転数の少なくとも一方が含まれていればよい。位置検出部40の各部の動作については、後述する。
【0037】
駆動調節部50は、位置検出部40から入力された回転情報S40に基づいて、間欠駆動部13に切替指令信号S50を出力する。本実施形態では、モータ駆動情報S11は、この切替指令信号S50を含む。
【0038】
位置検出用電源12は、位置検出素子93に駆動電力S12を供給するための電源である。本実施形態の位置検出用電源12は、パッケージICに入力された制御電圧Vccを降圧させるDC/DCコンバータである。
【0039】
間欠駆動部13は、位置検出用電源12から位置検出素子93への通電ライン上に設けられ、位置検出素子93への通電をON−OFFする。間欠駆動部13は、駆動制御部11から入力されるモータ駆動情報S11に基づいて、位置検出素子93への通電のON−OFFのタイミングを決定する。間欠駆動部13における当該タイミングの決定方法については、後述する。
【0040】
モータ9側の状態を考慮せずに、単に位置検出素子93への通電をON−OFFすると、位置検出素子93による回転子92の磁極の切り替わりの検出が遅延し、モータ特性が低下する虞がある。本実施形態では、このように、モータ駆動情報S11に基づいてON−OFFのタイミングを決定することにより、モータ9の駆動状況に合わせて位置検出信号S93を取得できる。したがって、位置検出用の電力を抑制しつつ、モータ特性の低下を抑制できる。
【0041】
この間欠駆動部13には、キャリア波発振回路21から三角波S21が入力される。図4の(e)には、後述する間欠ON−OFF期間において基準となる基本間欠通電波形の一例が示されている。図4(e)に示すように、間欠駆動部13は、間欠ON−OFF期間において、三角波S21の周波数を基本周波数として、位置検出素子93への通電をON−OFFする。このように、間欠駆動部13が間欠駆動を行うタイミングをとるために駆動制御部11の有するキャリア波発振回路21を用いることにより、別途クロック回路を設けなくてよい。
【0042】
<2−2.位置検出素子への通電について>
続いて、モータ駆動装置10の位置検出素子93への通電動作について図5および図6を参照しつつ説明する。図5および図6は、モータ駆動装置10における各信号の波形の一例を示す図である。
【0043】
図5および図6中において、(d)は間欠ON−OFF期間における基本間欠通電波形、(e)は位置検出素子93への通電波形、(f)は通電が連続して行われたと仮定した場合における位置検出素子93からの出力信号波形、(g)は位置検出素子93からの位置検出信号S93の波形、(h)は後述する補正位置検出信号S41の波形を示している。
【0044】
なお、図5図6では、モータ9の回転子92の回転速度および回転数が異なる。そのため、(f)〜(h)に示す、回転子92の動作を示す信号の波形の周期が異なる。以下では、図5を用いて位置検出素子93への通電に関連する動作ついて説明する。
【0045】
本実施形態の間欠駆動部13は、モータ駆動情報S11に基づいて、連続ON期間P1と、間欠ON−OFF期間P2との切り替えを行う。本実施形態において、モータ駆動情報S11は、キャリア波発振回路21から出力される三角波S21と、駆動調節部50から出力される切替指令信号S50を含む。図5(e)に示すように、連続ON期間P1においては、間欠駆動部13は、連続して位置検出素子93への通電をONとする。一方、間欠ON−OFF期間P2においては、所定の周波数で位置検出素子93への通電をON−OFFする。
【0046】
上記の通り、間欠駆動部13には、キャリア波発振回路21から三角波S21が入力される。ここでは、間欠駆動部13は、三角波S21に基づいて、間欠ON−OFF期間P2において、図5(d)に示すタイミングで位置検出用電源12から位置検出素子93への通電をON−OFFするものとして説明する。
【0047】
図5(d),(e)に示すように、連続ON期間P1は、通電ON期間Ponのみから構成される。一方、間欠ON−OFF期間P2においては、通電ON期間Ponと通電OFF期間Poffとが所定の周期で交互に現れる。
【0048】
図5(g)に示すように、位置検出素子93から出力される位置検出信号S93は、回転子92の磁極の切り替わりに従って正負が切り替わる電圧信号である。位置検出素子93への通電が図5(e)に示すように行われると、位置検出素子93から出力される位置検出信号S93は、図5(g)に示すような波形となる。すなわち、位置検出信号S93は、通電ON期間Ponにおいては、回転子92の極性を示す波形となり、通電OFF期間Poffにおいては、無検出となる。
【0049】
位置検出部40の信号保持部41は、この位置検出信号S93に対し、信号値保持処理を行い、補正位置検出信号S41として出力する。信号値保持処理において、信号保持部41は、通電ON期間Ponにおいては、位置検出信号S93の値をそのまま出力する。一方、信号値保持処理において、信号保持部41は、通電OFF期間Poffにおいては、直前の通電ON期間Ponにおける位置検出信号S93の最新の値を保持して出力する。
【0050】
これにより、補正位置検出信号S41は、図5(h)に示す様な波形となる。図5(h)に示すように、信号値保持処理により、補正位置検出信号S41は、通電OFF期間Poffにおいて、図5(g)に示す連続通電時の位置検出信号S93と近似した波形となる。
【0051】
そして、A/D変換部42は、補正位置検出信号S41をアナログ/デジタル変換したものを、回転位置信号S42として駆動信号生成部20および駆動調節部50へと出力する。A/D変換部42は、補正位置検出信号S41が正の電圧値である場合にHigh信号となり、負の電圧値である場合にLow信号となる2値信号である。
【0052】
駆動信号生成部20では、回転位置信号S42の正負の切り替わり時点を回転子92の磁極の切り替わり時点として検出する。このため、位置検出信号S93を単にアナログ/デジタル変換した信号では、回転子92の位置を連続的に把握できない。そこで、本実施形態発明では、位置検出部40が信号保持部41を有することにより、回転位置信号S42が通電OFF期間Poffにおいて検出不能となる細切れの信号でなく、連続して認識可能な信号となる。
【0053】
駆動調節部50は、回転情報S40である回転位置信号S42に基づいて、連続ON期間P1と間欠ON−OFF期間P2との切替タイミングを決定し、間欠駆動部13に切替指令信号S50を出力する。具体的には、駆動調節部50は、回転位置信号S42に基づいて、回転子92の回転数を算出する。そして、駆動調節部50は、回転子92の回転数に応じた間欠ON−OFF期間P2の長さが記されたデータテーブル(図示省略)を参照しつつ、間欠ON−OFF期間P2の長さを決定する。
【0054】
図6には、図5と比べて回転子92の回転数が小さい、すなわち、回転周期が長い場合の各信号が示されている。図5および図6に示すように、回転子92の回転数が大きいほど、すなわち、回転周期が短いほど、間欠ON−OFF期間P2の期間が短い。また、回転子92の回転数が小さいほど、すなわち、回転周期が長いほど、間欠ON−OFF期間P2の期間が長い。
【0055】
駆動調節部50は、回転位置信号S42の正負が切り替わった、すなわち回転子92の磁極が切り替わったと判断すると、間欠駆動部13に対して連続ON期間P1から間欠ON−OFF期間P2へ切り替える切替指令信号S50を出力する。すなわち、連続ON期間P1の終了時点を、回転位置信号S42の正負の切り替わりを基準に決定する。これにより、回転位置信号S42の正負の切り替わり後まもなく、データテーブルに基づいて決定した期間、間欠ON−OFF期間P2となる。
【0056】
当該期間の終了後、駆動調節部50は、間欠駆動部13に対して間欠ON−OFF期間P2から連続ON期間P1へ切り替える切替指令信号S50を出力する。
【0057】
このように、駆動調節部50は、回転子92の磁極の周期の長さに応じた間欠ON−OFF期間P2の長さを設定している。これにより、回転位置信号S42の次の正負の切り替わりが生じる時点を予測し、次の切り替わりの時点よりも前に連続ON期間P1を開始できる。すなわち、間欠駆動部13は、位置検出信号S92の正負の切り替わり時点が連続ON期間P1に含まれるように、連続ON期間P1と間欠ON−OFF期間P2との切替を行う。
【0058】
このため、間欠駆動部13は、回転子92の磁極の切り替わり時点を含む期間に、位置検出素子93への通電をONとできる。したがって、回転子92の磁極の切り替わりを遅延なく検出できる。その結果、モータ9の回転状況を遅延なく把握でき、モータ特性の低下を抑制できる。
【0059】
続いて、インバータ部30のスイッチング素子31の切替タイミングと、位置検出素子93への通電タイミングとの関係について説明する。図7は、モータ駆動装置10における信号の波形の一例を示す図である。図7中において、(i)はスイッチング信号S20、(j)は通電が連続して行われたと仮定した場合における位置検出素子93からの出力信号波形、(k)は間欠ON−OFF期間における基本間欠通電は系を示している。
【0060】
図4(d)に示すように、スイッチング信号S20のON/OFFの切替時、すなわち、スイッチング素子31の切替時には、位置検出素子93から出力される位置検出信号S93には、スイッチングノイズが生じる。このため、通電ON期間Ponを、スイッチングノイズが付加されない期間に設けることが好ましい。
【0061】
図4の例では、通電ON期間Ponの長さは、ON−OFFの周期の約5分の1の長さである。また、通電ON期間Ponをスイッチング信号S20のパルスの中心と重なるように設定している。これにより、スイッチング信号S20のON期間が通電ON期間Ponよりも長い場合、通電ON期間Ponとスイッチングノイズが生じるタイミングとが重なりにくい。
【0062】
このように、図7の例では、間欠駆動部13は、スイッチング素子31の切替時に、位置検出素子93への通電をOFFとするように、間欠ON−OFF期間P2における通電ON期間Ponを設定している。これにより、取得される回転位置信号S42が、スイッチングノイズの影響を受けにくい。その結果、回転子92の位置情報をより正確に把握し、モータ特性の低下をより抑制できる。
【0063】
なお、図7の例であっても、スイッチング信号S20のON期間が通電ON期間Ponと略同一、または、通電ON期間Ponよりも短い場合、通電ON期間Ponとスイッチングノイズが生じるタイミングとが重なってしまう。当該問題を解決するために、スイッチング信号生成部25が、スイッチング信号S20のONタイミングをずらしたり、間欠駆動部13が通電ON期間Ponのタイミングをずらしたりしてもよい。このようにすれば、回転位置信号S42が、スイッチングノイズの影響をさらに受けにくい。したがって、回転子92の位置情報をさらに正確に把握し、モータ特性の低下をさらに抑制できる。
【0064】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0065】
上記の実施形態では、間欠駆動部13は、PWM信号の生成のために用いるキャリア波である三角波S21の周波数を基本周波数として、位置検出素子93への通電をON−OFFしたが、本発明はこの限りではない。間欠駆動部は、駆動信号生成部の有する他の用途のキャリア波発振回路から出力されるキャリア波の周波数を基本周波数として、位置検出素子への通電をON−OFFするものであってもよい。
【0066】
例えば、スイッチング信号生成部が、キャリア波発振回路から出力されるキャリア波と、速度指令信号Vspに基づいて生成される相指令電圧等の電圧信号とを比較器により比較することにより、スイッチング信号を生成するものであってもよい。この場合に、間欠駆動部スイッチング信号の生成に用いられるキャリア波の周波数を基本周波数として、位置検出素子への通電をON−OFFしてもよい。
【0067】
モータ駆動装置の各部を実現するための具体的な構成については、上記の実施形態に示された構成と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、モータ駆動装置およびモータユニットに利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 モータユニット
9,9A モータ
10,10A モータ駆動装置
11,11A 駆動制御部
12,12A 位置検出用電源
13,13A 間欠駆動部
20,20A 駆動信号生成部
21 キャリア波発振回路
25 スイッチング信号生成部25
30,30A インバータ部
31 スイッチング素子
40,40A 位置検出部
41 信号保持部
50 駆動調節部
92 回転子
93,93A 位置検出素子
S10 モータ駆動電流
S11,S11A モータ駆動情報
S12,S12A 駆動電力
S21 三角波
S40 回転情報
S42,S42A 回転位置信号
S50 切替指令信号
S93,S93A 位置検出信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7