特許第6577428号(P6577428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6577428-モータの製造装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577428
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】モータの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   H02K15/04 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-166221(P2016-166221)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-33286(P2018-33286A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴憲
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−171260(JP,A)
【文献】 特開2001−238386(JP,A)
【文献】 特開2015−104249(JP,A)
【文献】 特開2014−107876(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0216398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプを用いてコイル同士を把持し、前記把持された前記コイル同士を溶接するモータの製造装置であって、
前記クランプは、一方向に延びた形状を有するクランプ部材を備え、
前記クランプ部材は、冷却フィンを備え、
前記クランプを用いて前記コイル同士を把持したとき、前記クランプ部材の長手方向が前記モータのステータの径方向に沿うように配置され、
前記冷却フィンは、前記クランプ部材における前記モータの前記ステータ内径側に設けられている、
モータの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のセグメントコイル同士を順次TIG溶接することによって接合する工程を備えるモータの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−125563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなモータの製造方法では、セグメントコイルを被覆するエナメル皮膜が、溶接により発生する熱を受けて、損傷するおそれがある。そのため、発明者等は、溶接による熱をセグメントコイルからクランプへ迅速かつ大量に伝導させるため、クランプを大型化させることを想起した。しかし、クランプが大型化すると、クランプを製造するための材料がさらに必要となるため、好ましくない。
【0005】
また、上記したモータの製造方法では、クランプをステータの外径側からコイルへ接近して把持させるため、クランプ体積は、ステータの外径側に偏る傾向にある。そのため、ステータの内径側の温度が、その外径側の温度と比較して高く、テータにおける外径側及び中心側との温度差が生じる。これによって、溶接時の溶融玉の大きさに偏りが生じることがあった。
【0006】
本発明に係るモータの製造装置は、クランプの大型化を抑制しつつ、溶接時の溶接玉の大きさの偏りを抑制するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモータの製造装置は、
クランプを用いてコイル同士を把持し、前記把持された前記コイル同士を溶接するモータの製造装置であって、
前記クランプは、一方向に延びた形状を有するクランプ部材を備え、
前記クランプ部材は、冷却フィンを備え、
前記クランプを用いて前記コイル同士を把持したとき、前記クランプ部材の長手方向が、前記モータのステータの径方向に沿うように配置され、
前記冷却フィンは、前記クランプ部材における前記モータの前記ステータ内径側に設けられている。
このような構成によれば、冷却フィンは、クランプ体積当たりの空気との接触面積を増大させるため、クランプ体積の増大を抑制しつつ放熱性を高めることができる。また、冷却フィンは、クランプにおいてモータのステータ中心側に位置するため、ステータにおける外径側及び中心側との温度差を抑制させるため、溶接するときの溶接玉発生の偏りが小さくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るモータの製造装置は、クランプの大型化を抑制しつつ、溶接時の溶接玉の大きさの偏りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るモータの製造装置を示す概略図である。
図2】実施の形態1に係るモータの製造装置の使用方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、図1及び図2を参照して実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1に係るモータの製造装置を示す概略図である。図2は、実施の形態1に係るモータの製造装置の使用方法を示す概略図である。
【0011】
図1に示すように、クランプ10は、第1のクランプ部材1aと、第2のクランプ部材2aとを備える。
【0012】
第1のクランプ部材1aは、コイル把持部1bと、冷却フィン1cとを備える。第1のクランプ部材1aは、一方向に延びた形状を有し、図1に示す第1のクランプ部材1aの一例は、略四角柱状体である。冷却フィン1cは、第1のクランプ部材1aにおける他の部位よりも、外部へ放熱すればよく、体積当たりの表面積の大きい形状を有する。図1に示す冷却フィン1cの一例は、複数枚の板状部である。
【0013】
第2のクランプ部材2aは、コイル把持部2bと、冷却フィン2cとを備える。第2のクランプ部材2aは、一方向に延びる形状を有し、図1に示す第2のクランプ部材2aの一例は、略四角柱状体である。冷却フィン2cは、第2のクランプ部材2aにおける他の部位よりも、外部へ放熱すればよく、体積当たりの表面積の大きい形状を有する。図1に示す冷却フィン2cの一例は、複数枚の板状部である。
【0014】
コイルをコイル把持部1bとコイル把持部2bとの間に配置し、第1のクランプ部材1aと、第2のクランプ部材2aとを突き合わせることによって、コイル把持部1bとコイル把持部2bとが互いに押し合う。これによって、コイルをコイル把持部1bとコイル把持部2bとが互いに押し合うため、把持することができる。第1のクランプ部材1aと、第2のクランプ部材2aとは、いずれも溶接装置の電極及びクランプとして必要な機械的性質及び電気的な性質を有する。
【0015】
クランプ10は、溶接電極(図示略)に電気的に接続されることによって、溶接装置を構成することができる。溶接電極の一例として、タングステン電極が挙げられる。当該製造装置は、クランプ10を用いてコイル同士を把持し、溶接電極をクランプ10と所定の距離に配置した状態において、溶接電極からアークを発生させる等して、コイル同士を溶接することができる。これにより、モータを製造することができる。当該溶接装置は、必要に応じて、雰囲気ガスを発生させる装置を備えてもよい。
【0016】
(使用方法)
次に、クランプ10を用いて、図2に示すモータの固定子であるステータ20においてそのコイル22同士を溶接するモータのステータの製造方法について説明する。
【0017】
図2に示すように、モータ(図示略)の固定子であるステータ20は、ステータコア21と複数のコイル22とを有する。ステータコア21は、環状の電磁鋼板がステータ20の軸X1方向に積層されたものであり、全体として略円筒形状を有している。ステータコア21の内周面には、内周側に突出すると共にステータ20の軸方向に延設された複数のティース21aと、隣接するティース21a間に形成された溝部であるスロット21bと、が設けられている。ステータコア21には、コイル22が巻かれている。図2に示すステータコア21の一例では、コイル22の巻き方は集中巻である。具体的には、各ティース21aにはコイル22が巻き回されており、ティース21aに巻き回されたコイル22が各スロット21bに装着されている。
コイル22は、断面矩形状の電線すなわち平角線である。通常、コイル22は、純銅製であるが、アルミニウム、銅やアルミニウムを主成分とする合金等の高導電率を有する金属材料から構成してもよい。
コイル22の端部22a(コイルエンド)同士が、ステータコア21の上端面から突出しており、隣接している。このようなコイル22の端部22a同士の複数が、ステータコア21の周方向に円環状に所定の間隔を空けて配置されている。コイル22のステータコア21の外周側に延びた端部22bは、動力線として機能を有し、電源などに接続されて、モータが動作するために必要な電流をコイル22へ導く。
【0018】
まず、第1のクランプ部材1aの長手方向及び第2のクランプ部材2aの長手方向がステータ20の径方向に沿うように、第1のクランプ部材1a及び第2のクランプ部材2aを配置する。さらに、冷却フィン1c、2cが第1のクランプ部材1aにおけるモータのステータ20内径側に位置するように、第1のクランプ部材1a及び第2のクランプ部材2aを配置する(クランプ配置ステップST1)。
【0019】
続いて、第1のクランプ部材1aのコイル把持部1bと第2のクランプ部材2aのコイル把持部2bとにコイル22の端部22a同士を挟ませて、コイル22の端部22a同士を把持する(コイル把持ステップST2)。
【0020】
最後に、溶接電極(図示略)をコイル22の端部22a同士から所定の距離離れて位置させ、電流を流し、溶接電極とのコイル22の端部22a同士との間にアークを発生させて、コイル22の端部22a同士を溶接する(溶接ステップST3)。これによって、コイル22の端部22a同士は接合される。冷却フィン1cは、第1のクランプ部材1aの他の部位よりも体積当たりの表面積が大きく、また、冷却フィン2cは、第2のクランプ部材2aの他の部位よりも体積当たりの表面積が大きい。そのため、冷却フィン1c、2cは、クランプ10の体積の増大を抑制しつつ放熱性を高めることができる。また、冷却フィン1c、2cは、第1のクランプ部材1a、第2のクランプ部材2aにおけるモータのステータ20内径側に設けられている。そのため、ステータ20における外径側及び中心側との温度差を抑制させるため、溶接するときの溶接玉発生の偏りが小さくなる。
【0021】
上記したクランプ配置ステップST1から溶接ステップST3までの各ステップを、ステータ20におけるコイル22の端部22a同士全てについて適用することによって、モータのステータを製造することができる。
【0022】
以上、実施の形態1に係るモータの製造装置によれば、クランプの大型化を抑制しつつ、溶接時の溶接玉の大きさの偏りを抑制することができる。
【0023】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 クランプ
1a、2a クランプ部材 1c、2c 冷却フィン
20 ステータ 22 コイル
図1
図2