(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部材において、前記第1上板部及び前記第1下板部の板厚寸法が略同一、又は、前記内縦板部と前記中間縦板部の板厚寸法が略同一である、請求項4に記載の鉄道車両の台枠構造。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付して重複する詳細説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両1の台枠構造10の平面図である。
図1に示すように、車体2に設けられる台枠構造10は、台枠5を備える。台枠5は、一対の側梁11と、端梁12と、枕梁13と、一対の中梁14,15とを有している。台枠5を構成する梁11〜15はいずれもアルミニウム合金製であり、特に引張強度の大きい高強度のアルミニウム合金が材料として用いられているが、材質はこれに限られない。また、本実施形態の車体2は、一例として、連結された客車等を牽引するための機関車の車体であり、その動力装置はモータ又はエンジン等である。なお、車体2に搭載される動力装置については特に限定されない。
【0012】
一対の側梁11は、それぞれ車両長手方向に延びている。端梁12は車幅方向に延び、一対の側梁11の車両長手方向一端部同士を連結している。枕梁13は、端梁12よりも車両長手方向内方にて車幅方向に延びている。枕梁13には、台車3に接続される中心ピン4(
図2参照)を固定するボルト7が螺合するネジ座6が設けられている。ネジ座6が後述する締結部材(例えば、ネジ)で台枠5の枕梁13に締結されることによって、鉄道車両1の台枠構造10(以下、台枠構造10と呼ぶ。)が構成される。
【0013】
一対の中梁14,15は、それぞれ端梁12と枕梁13とを車両長手方向に連結している。ここで、中梁14,15の車両長手方向他端部14b,15bは、枕梁13の車幅方向略中央に溶接により接合されている。そして、中梁14,15の車両長手方向他端部14b,15bの側面及び枕梁13の車両長手方向一方側の端面には補強板16が固定されており、当該補強板16によって、中梁14,15と枕梁13との取付強度が向上されている。
【0014】
図2は、
図1のII−II線断面図である。
図2に示すように、枕梁13は、一対の中空部材21,22と、上側連結部材23及び下側連結部材24とを有する。中空部材21,22は互いに車両長手方向に間隔をあけて車幅方向に延びている。中空部材21,22の上端部同士は上側連結部材23を介して連結されており、中空部材21,22の下端部同士は下側連結部材24を介して連結されている。上側連結部材23及び下側連結部材24はいずれも、中空部材21,22と車幅方向寸法が等しい板材である。なお、一対の中空部材21,22は、中心ピン4の軸心Jを基準にして互いに対称な形状であるため、以下では、中空部材21の形状について説明する。
【0015】
本実施形態では、中空部材21は、第1部材31と、当該第1部材31に溶接により接合される第2部材32とからなる。第1部材31及び第2部材32はいずれも、アルミニウム合金を押出成形することによって形成された押出形材である。ここで、第1部材31及び第2部材32を押出成形によって形成するにあたって、その押出方向はいずれも車幅方向である。そして、このように押出成形によって形成された第1部材31と第2部材32とからなる中空部材21には、車幅方向に貫通する内部空間S1,S2が形成されている。即ち、内部空間S1,S2が延びる方向は、押出方向と同じ車幅方向である。
【0016】
第1部材31と第2部材32とからなる中空部材21は、上板部21aと、下板部21bと、内縦板部21cと、外縦板部21dと、中間縦板部21eとを有している。ここで、本実施形態の第1部材31は、第1上板部31aと、第1下板部31bと、内縦板部21cと、中間縦板部21eとを含むことで断面略四角形状を有している。また、第1部材31には、第1上板部31aと第1下板部31bと内縦板部21cと中間縦板部21eとで区画された内部空間S1が形成されている。他方、第2部材32は、第2上板部32aと第2下板部32bと外縦板部21dとを含むことで断面略馬蹄形状を有している。
【0017】
第1部材31の内部空間S1には、ネジ座6が設けられている。具体的には、複数の締結部材(例えば、ネジ)をネジ座6に形成されたネジ挿通孔6a(
図1参照)に下方から挿通することで、当該ネジ座6は第1下板部31bに位置決めされている。以下では、第1部材31に形成された内部空間S1を第1空間と呼ぶ。ネジ座6は鋼製の部材であり、車幅方向に長い略直方体形状を有している。また、中心ピン4を固定するボルト7がネジ座6に形成されたボルト挿通孔6bに対して枕梁13の下方から挿通されることで、ネジ座6はボルト7に螺合する。
【0018】
上板部21aは、第1部材31の第1上板部31aと第2部材32の第2上板部32aとを溶接することによって構成される。また、上板部21aから下方に離間している下板部21bは、第1部材31の第1下板部31bと第2部材32の第2下板部32bとを溶接することによって構成される。第1下板部31bには、ボルト7が挿通される挿通孔31baが形成されている。
【0019】
内縦板部21cは、第1上板部31a及び第1下板部31bの一端部を互いに接続しており、具体的には、第1上板部31aの上側連結部材23側の端部と、第1下板部31bの下側連結部材24側の端部とを互いに接続している。また、外縦板部21dは、第1上板部31a及び第1下板部31bの他端部を互いに接続しており、具体的には、第2上板部32aのうち第1部材31とは反対側の端部と、第2下板部32bのうち第1部材31とは反対側の端部とを互いに接続している。中間縦板部21eは、車両長手方向において内縦板部21cと外縦板部21dとの間に配置されており、第1上板部31a及び第1下板部31bを互いに接続している。
【0020】
中空部材21において、中間縦板部21eよりも外縦板部21d側には、第1部材31と第2部材32との接合部W1が配置されている。具体的に、第1部材31と第2部材32とは、中間縦板部21eと外縦板部21dとの間の位置にて接合されている。このように第2部材32が第1部材31に溶接されると、中空部材21には、第2上板部32aと第2下板部32bと外縦板部21dと中間縦板部21eとで区画される内部空間S2が形成される。以下では、第1部材31の中間縦板部21e及び第2部材32によって形成された内部空間S2を第2空間と呼ぶ。
【0021】
また、中空部材21には、中梁14の車両長手方向他端部14bが溶接により接合されている。中梁14は、上壁部14cと、上壁部14cから下方に離間する下壁部14dと、上壁部14cの車幅方向端部と下壁部14dの車幅方向端部とを接続する1つの縦壁部14eとを有している。上壁部14cと下壁部14dと縦壁部14eとで区画される空間は、車幅方向外方に開放されている。
【0022】
ここで、中梁14の車両長手方向他端部14bの端面には水平面に対して傾斜する傾斜面が形成されており、車両長手方向他端部14bの当該傾斜面は外縦板部21dと開先を構成して溶接されている。即ち、中梁14と枕梁13との接合部W2は、中間縦板部21eよりも車両長手方向外方に離間した位置に設けられている。なお、中梁15は、中梁14と補強板16を挟んで対称となるように、中空部材21の外縦板部21dに溶接されている。
【0023】
図3は、
図2に示す中空部材21の製作手順を説明する図面である。
図3(a)は、第1部材31及び第2部材32を溶接する前の各部材31,32の正面図である。
図3(b)は、第1部材31及び第2部材32を溶接した直後の中空部材21の正面図である。
図3(c)は、第1部材31及び第2部材32を溶接した後に切削加工した中空部材21の正面図である。
【0024】
図3(a)に示すように、第1部材31において、第1上板部31aは、その上面のうち車両長手方向両端から離れた部分から上方に向かって突出する第1突出部31cを有している。第1突出部31cの車両長手方向両端面のうち第2部材32側の端面R10は、その下端を基点として鉛直面に対して第2部材32から離れる向きに傾斜した傾斜面である。そして、第1上板部31aにおいて、第2部材32側の端縁から第1突出部31cが突出するまでの部分の板厚寸法は、第1突出部31cが設けられた部分の板厚寸法よりも小さい。即ち、第1上板部31aにおいて、第2上板部32aと対向する端面R11の近傍では、薄肉となるように上部が切り欠かれている。なお、本実施形態では、第1上板部31aにおいて、上側連結部材23と対向する端面R12の近傍においても、薄肉となるように上部が切り欠かれている。
【0025】
また、第2部材32において、第2上板部32aは、その上面のうち第1部材31側の端部から離れた部分から上方に向かって、第1突出部31cの突出量と略等しく突出する第2突出部32cを有している。第2突出部32cのうち第1部材31側の端面R20は、その下端を基点として鉛直面に対して第1部材31から離れる向きに傾斜した傾斜面である。そして、第2上板部32aにおいて、第1部材31側の端縁から第2突出部32cが突出するまでの部分の板厚寸法は、第2突出部32cが設けられた部分の板厚寸法よりも小さい。即ち、第2上板部32aにおいて、第1上板部31aと対向する端面R21の近傍では、薄肉となるように上部が切り欠かれている。
【0026】
ここで、材料(この例では、アルミニウム合金)を所望の断面形状となるように押出成形によって第1部材31及び第2部材32を成形する場合、各部材31,32を構成する板部のうち対向する板部同士の板厚寸法が異なると、成形時に金型内に流れる溶融金属の流量にばらつきが生じる。その結果、材料を押し出す際にねじれが発生してしまい、成形精度が低下する。そのため、第1部材31において、第1突出部31cが設けられた部分の第1上板部31aと第1下板部31bとは板厚寸法がt1で等しく、内縦板部21cと中間縦板部21eとは板厚寸法がt2で等しい。なお、
図3(a),(b)の状態において、第1部材31では、第1突出部31cが設けられた部分の第1上板部31aと第1下板部31bとの板厚寸法t1は互いに略同一であり、車両長手方向に対向する内縦板部21cと中間縦板部21eとの板厚寸法t2は互いに略同一ある。更に、第2部材32では、第2突出部32cが設けられた部分の第2上板部32aと第2下板部32bとの板厚寸法t3は互いに略同一である。なお、本実施形態では、第2部材32における板厚寸法t3は、第1部材31における板厚寸法t1と等しい。
【0027】
また、第1上板部31aと第2上板部32aの互いに対向する端面R11,R21は、鉛直面に対して傾斜している。第1上板部31aの端面R11及び第2上板部32aの端面R21は、第1上板部31aと第2上板部32aとを溶接するときにV字状の開先を構成する開先面となる。そして、第1下板部31bと第2下板部32bの互いに対向する端面R13,R22も鉛直面に対して傾斜している。第1下板部31bの端面R13及び第2下板部32bの端面R22は、第1下板部31bと第2下板部32bとを溶接するときにV字状の開先を構成する開先面となる。
【0028】
更に、第1上板部31aの端面R12及び第1下板部31bの端面R14も鉛直面に対して傾斜しており、第1部材31と連結部材23,24とを溶接するときにV字状の開先を構成する開先面となる。また、第2部材32は、第2上板部32aの下面のうち第1部材31側の端部から第1部材31に向かって延びる延在部32dと、第2下板部32bの上面のうち第1部材31側の端部から第1部材31に向かって延びる延在部32eとを有している。
【0029】
図3(b)に示すように、第1部材31のうち第2部材32側の端部が延在部32dの上面に当接し、かつ、第1下板部31bのうち第2部材32側の端部が延在部32eの下面に当接したとき、上述の開先面によって車幅方向に延びるV字状の開先が構成される。ここで、上述の通り、第1上板部31a及び第2上板部32aの各開先面(端面)R11,R21の近傍では、薄肉となるように上部が切り欠かれている。言い換えると、V字状の開先と各突出部31c,32cの上面との間に段差部が形成されている。
【0030】
作業者が第1上板部31a及び第2上板部32aを溶接するとき、上記のように開先と各突出部31c,32cの上面との間に形成された段差部によって、開先面R11,R21のうち上側の角部を目印にして溶接を行うことができ、第1部材31と第2部材32との溶接に必要な溶接ビード量を認識することができる。よって、第1上板部31aと第2上板部32aとの接合部W1の上面は、第1突出部31c及び第2突出部32cの上面よりも低い。
【0031】
図3(c)に示すように、第1部材31及び第2部材32を溶接した後、第1突出部31c及び第2突出部32cは切削加工によって切削される。第1突出部31c及び第2突出部32cが切削されると、最終的に第1上板部31aの板厚寸法t11は第1下板部31bの板厚寸法t1よりも小さく、第2上板部32aの板厚寸法t21も第2下板部32bの板厚寸法t3よりも小さくなる。即ち、本実施形態の中空部材21において、上板部21aの板厚寸法は、下板部21bの板厚寸法よりも小さい。なお、第1突出部31c及び第2突出部32cは、切削加工されずに残存していてもよい。
【0032】
図4は、
図1に示すIV−IV線断面図である。
図4に示すように、枕梁13の車幅方向両端にはそれぞれ、図示しない空気バネが接続される空気バネ吸気座19が設けられている。空気バネ吸気座19は略円錐状の部材であり、車体2に設けられた空気タンクから空気バネに対して圧縮空気を供給する機能を有する。
【0033】
また、枕梁13には、上側連結部材23と下側連結部材24とを上下方向に接続する複数の補強部材25が設けられている。補強部材25は、車両長手方向から視て、逆L字状の断面形状を呈しており、枕梁13の強度を補強する機能を有する。本実施形態では、補強部材25は、空気バネ吸気座19の車幅方向両側に設けられた複数の第1補強部材25a,25bと、第1補強部材25aよりも車幅方向内方に設けられた複数の第2補強部材25cと、を有している。ここで、第2補強部材25cは、車両長手方向から視て、ネジ座6よりも車幅方向外方にずれた位置に設けられている。即ち、補強部材25a〜25cはいずれも、車両長手方向から視て、第1空間S1に設けられているネジ座6とは重ならない位置に設けられている。
【0034】
以上のように構成された鉄道車両1の台枠構造10は、以下の効果を奏する。
【0035】
枕梁13の中空部材21が、内縦板部21cと外縦板部21dとの間で、上板部21aと下板部21bとを接続する中間縦板部21eを有しているため、台車3の牽引力又は制動力等(以下、牽引力等と呼ぶ。)の車両長手方向の荷重が作用した場合に当該中空部材21の断面形状が略平行四辺形状に変形することを抑制し、枕梁13の強度を確保することができる。また、中心ピン4を固定するボルト7に螺合するネジ座6が、中空部材21の空間S1,S2のうち、上板部21aと下板部21bと内縦板部21cと中間縦板部21eとで区画される第1空間S1に設けられているため、急な加減速の際に台車からの車両長手方向の荷重が枕梁に作用して中間縦板部21eに大きな応力が発生した場合でも、枕梁13と枕梁13の車幅方向略中央に接合されている中梁14との接合部W2に当該応力が直接及ぶことが防がれ、枕梁13と中梁14との接合部W2の疲労を抑制することができる。したがって、台枠構造10において、枕梁13に大きな応力が発生した場合であっても十分な強度を確保することができる。
【0036】
特に台枠構造10を有する車体2は、動力装置が搭載されている機関車の車体であり、その質量が大きくなるため、中心ピン4を介して車体2に作用する牽引力等が大きくなると共に、当該車体2にも大きな慣性力が働く。その結果、枕梁13に作用する車両長手方向の荷重は大きくなり、枕梁13と枕梁13に接合されている中梁14との接合部W2に及ぶ応力も大きくなる。このような車体2において、当該枕梁13の中空部材21が中間縦板部21eを有することによって、枕梁13の強度を確保しつつ、ネジ座6を第2空間S2ではなく第1空間S1に設け、大きな応力が発生する中間縦板部21eに対して第2部材32を介して中梁14を連結することによって、当該応力が枕梁13と中梁14との接合部W2に直接及ぶことが防がれる。
【0037】
具体的には、中梁14の車両長手方向他端部14bが中空部材21の外縦板部21dに接合されているため、接合部W2、更には中梁14に対して枕梁13に発生した応力が直接及ぶことが防がれ、接合部W2及び中梁14の疲労を抑制することができる。したがって、台枠構造10において、枕梁13の強度を確保しつつ、中梁14の強度要求を緩和することができる。
【0038】
また、第1部材31及び第2部材32の溶接による接合部W1が中間縦板部21eよりも外縦板部21d側に配置されているため、車両長手方向の荷重が枕梁13に作用した場合に大きな応力が発生する中間縦板部21eから離間した位置において第1部材31及び第2部材32を接合することができ、第1部材31と第2部材32との接合部W1に生じる応力を低減することができる。
【0039】
また、中空部材21は、上板部21aと下板部21bと内縦板部21cと外縦板部21dと中間縦板部21eとを有する断面形状を呈している。このような断面形状の中空部材21を高強度のアルミニウム合金の押出成形によって一体に成形する場合、当該アルミニウム合金は流動性が低いため、金型内において溶融金属が十分に行き渡らない箇所(例えば、中間縦板部21eを成形する箇所)が生じてしまう。その結果、成形時の押出性が悪化して、中空部材を所望の断面形状に成形することができず、成形後の中空部材の強度も確保することができない可能性がある。本実施形態では、中空部材21は、別体でそれぞれ押出成形された第1部材31と第2部材32とを接合することで構成されているため、中空部材21を所望の断面形状に成形することができると共に、中空部材21としての強度も確保することができる。
【0040】
また、第1部材31及び第2部材32をそれぞれ、アルミニウム合金を所望の断面形状になるように押出成形することによって加工する場合、当該部材31,32を構成する板部のうち対向する板部同士の板厚を均一にすることにより、押出成型においてアルミニウム合金を押し出す際にねじれが発生して、第1部材31及び第2部材32の成形精度が低下するのを防ぐことができる。
【0041】
ここで、中空部材21の下板部21bには中心ピン4が固定されるため、当該下板部21bに作用する荷重は大きく、その板厚寸法は強度上、できるだけ大きい方が好ましい。他方、上板部21aは下板部21bに比べて作用する荷重が小さい。成形精度を考慮して、第1上板部31aと第1下板部31bとの板厚寸法、第2上板部32aと第2下板部32bとの板厚寸法をそれぞれ等しくした場合、第1上板部31a及び第2上板部32aの各板厚寸法は強度上、必要以上に大きくなる可能性がある。そのため、第1部材31及び第2部材32を溶接した後、第1突出部31c及び第2突出部32cを切削加工により切削することで、下板部21bの強度を確保しつつ、中空部材21の軽量化を図ることができる。
【0042】
また、第1上板部31a及び第2上板部32aの各板厚寸法が大きい場合、第1部材31及び第2部材32を溶接するとき、作業者が第1突出部31c及び第2突出部32cの上面まで溶接することとなり、溶接時間が過大になると共に、溶接ビード量も多くなる。溶接ビード量が多くなるほど、溶接箇所に熱ひずみが発生する可能性があるため、溶接ビード量は必要最小限の量に制限することが望まれる。
【0043】
本実施形態では、第1上板部31a及び第2上板部32aの各開先面R11,R21の近傍では、薄肉となるように上部が切り欠かれているため、第1部材31と第2部材32とを溶接するとき、上下方向において、V字状の開先と各突出部31c,32cの上面との間に段差部が形成されることとなる。よって、作業者は、開先面R11,R21のうち上側の角部を目印にすることで溶接を行うと共に、上記のように開先近傍に形成された段差部を基準として、第1部材31と第2部材32との溶接に必要な溶接ビード量を認識することができる。したがって、開先近傍に段差部が形成されていない構成と比べて、溶接時間を少なくすることができると共に、溶接ビード量も制限することができる。
【0044】
また、枕梁13を車両長手方向から視た場合、連結部材23,24を上下方向に接続する逆L字状の補強部材25がネジ座6(のボルト挿通孔6b)よりも車幅方向外方にずれた位置に配置されている。即ち、補強部材25は、枕梁13を車両長手方向から視て、ネジ座6とは重ならない位置に設けられている。中心ピンが固定される枕梁を車両長手方向から視て、ネジ座と重なる位置に補強部材が設けられている構成の場合、中心ピンを介して枕梁に作用する荷重が当該補強部材に集中し、枕梁のうち補強部材の周辺(特に、補強部材と下側連結部材との接続部分)において大きな応力が発生していることがわかった。
【0045】
そのため、補強部材25をネジ座6と重ならない位置に設けることにより、中心ピン4を介して車両長手方向の荷重が枕梁13に作用しても、ネジ座と重なる位置に補強部材が設けられている構成と比較して、当該荷重を分散させて、枕梁13に発生する応力を低減することができる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る鉄道車両の台枠構造210は、第1実施形態に係る枕梁13の中空部材21を構成する第1部材31及び第2部材32の形状を一部変形したものである。以下では、第2実施形態に係る中空部材221,222を構成する第1部材231及び第2部材232について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0047】
図5は、第2実施形態に係る鉄道車両の台枠構造210の
図2相当の図である。なお、
図5では、中心ピン4及びボルト7の図示を省略している。
図5に示すように、第1部材231は、上板部221aと下板部221bと内縦板部221cと中間縦板部221eとを有する断面形状を呈している。そして、第2部材232は、外縦板部221dのみを有する断面形状を呈している。
【0048】
上板部221aは、その下面のうち第2部材232側の端部に外縦板部221dとの溶接のときにV字状の開先を構成する開先面を有している。また、下板部21bも、その上面のうち第2部材232側の端部に外縦板部221dとの溶接のときにV字状の開先を構成する開先面を有している。また、外縦板部221dの上下方向両端面には、第1部材231との溶接のときにV字状の開先を構成する開先面が形成されている。そして、第1部材231の上板部221aと第2部材232の外縦板部221dとを溶接することによって、中空部材221が構成されている。
【0049】
また、第1部材231の上板部221a及び下板部221bには、中梁14の車両長手方向他端部14bが接合されている。具体的には、中梁14の車両長手方向他端部14bの上面と上板部221aの上面とを溶接すると共に、当該他端部14bの下面と下板部221bの下面とが溶接されている。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0050】
このような第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。具体的には、枕梁213の中空部材221が、内縦板部221cと外縦板部221dとの間で、上板部221aと下板部221bとを接続する中間縦板部221eを有しているため、牽引力等の車両長手方向の荷重が作用した場合に当該中空部材221が略平行四辺形状に変形することを抑制し、枕梁213の強度を確保することができる。また、ネジ座6が、中空部材221の内部空間S1,S2のうち、上板部221aと下板部221bと内縦板部221cと中間縦板部221eとで区画される第1空間S1に設けられているため、枕梁213に車両長手方向の荷重が作用して中間縦板部221eに大きな応力が発生した場合でも、枕梁213と枕梁213の車幅方向略中央に接合されている中梁14との接合部W2に当該応力が直接及ぶことが防がれ、枕梁213と中梁14との接合部W2の疲労を抑制することができる。したがって、台枠構造210において、枕梁13に大きな応力が発生した場合であっても十分な強度を確保することができる。
【0051】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る鉄道車両の台枠構造310は、第1実施形態に係る枕梁13の形状を一部変形したものである。以下では、第3実施形態に係る枕梁313について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0052】
図6は、第3実施形態に係る鉄道車両の台枠構造310の
図2相当の図である。なお、
図6では、中心ピン4及びボルト7の図示を省略している。
図6に示すように、中空部材321は、上板部321aと下板部321bと内縦板部321cと外縦板部321dと中間縦板部321eとを有する断面形状を呈するように、押出成形によって一体に成形されている。このように、第3実施形態に係る中空部材321は、流動性の低い高強度のアルミニウム合金ではなく、流動性の高い別の材料を用いて押出成形された形材である。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0053】
このような第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。具体的には、枕梁313の中空部材321が、内縦板部321cと外縦板部321dとの間で、上板部321aと下板部321bとを接続する中間縦板部321eを有しているため、牽引力等の車両長手方向の荷重が作用した場合に当該中空部材321が略平行四辺形状に変形することを抑制し、枕梁313の強度を確保することができる。また、中心ピン4を固定するボルト7に螺合するネジ座6が、中空部材321の内部空間S1,S2のうち、上板部321aと下板部321bと内縦板部321cと中間縦板部321eとで区画される第1空間S1に設けられているため、枕梁313に車両長手方向の荷重が作用して中間縦板部321eに大きな応力が発生した場合でも、枕梁313と枕梁313の車幅方向略中央に接合されている中梁14との接合部W2に当該応力が直接及ぶことが防がれ、枕梁313と中梁14との接合部W2の疲労も抑制することができる。したがって、台枠構造310において、枕梁13に大きな応力が発生した場合であっても十分な強度を確保することができる。
【0054】
更に、第3実施形態では、中空部材321が押出成形によって一体で成形されることにより、中空部材が第1部材と第2部材とからなる構成と比較して、第1部材と第2部材との溶接作業が不要となるため、作業工数を削減することができる。
【0055】
上記の各実施形態において、特にアルミ合金製の構体を備えた機関車は、牽引力及び制動力等が動力分散型の車両よりも大きいため、車体―台車間に作用する力も大きい。加えて、機関車は、その車両重量も大きく、その結果、枕梁に生じる荷重も大きいが、上記の各実施形態の構成によれば、枕梁13,213,313の強度を確保しつつ、中梁14の強度要求を緩和することができるため、当該機関車(特に、アルミ合金製の構体を備える機関車)の車体に設けられる台枠構造として適用した場合の効果は大きい。
【0056】
なお、各実施形態の構成における鉄道車両1は機関車に限られず、枕梁の強度を確保する必要があるような他の車両に適用してもよい。
【0057】
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。また、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。前述の実施形態では、枕梁13,213,313には車端側の中梁14のみが接合されていたが、この構成に限らず、枕梁13,213,313のうち中空部材22,222,322に車体中央側で車幅方向に延びる中梁が更に接合されてもよい。