(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、以下で図面を用いて詳細に説明する。
(薬剤払出装置の構成)
本実施形態の薬剤払出装置は、
図1から
図3に示すように、本体ケース1と、その前面を覆う前扉2と、カセット装着口3(
図2参照)と、薬剤収納カセット4と、薬剤を搬送するためのトレイ5を保管する保管部6,7と、取出ヘッド8(
図3参照)と、を備えている。そして、本薬剤払出装置は、
図2に示すように、前扉2を開放すると、複数のカセット装着口3が外部に露出するように設けられている。カセット装着口3には、それぞれ薬剤収納カセット4が装着される。
【0011】
また、本薬剤払出装置では、本体ケース1の左側に、薬剤を払い出すための空のトレイ5(
図3参照)を保管する保管部6、本体ケース1の右側に、払い出された薬剤が収納されたトレイ5を保管する保管部7がそれぞれ設けられている。
つまり、保管部6に保管されていたトレイ5は、
図3に示すように、カセット装着口3の下部に移送され、ここで薬剤収納カセット4に収納されていた薬剤が投入された後、
図2に示すように、保管部7にて収納される。
【0012】
具体的には、トレイ5は、カセット装着口3の下部に移送された状態で、一旦、待機する。この状態において、取出ヘッド8が、処方箋によって指示された薬剤を収納している薬剤収納カセット4の背面側に移動して、薬剤収納カセット4の取出レバー9を操作する。そして、取出ヘッド8によって取出レバー9が下方へ押し下げられると、薬剤収納カセット4から取り出された薬剤が、転動しながらトレイ5に投入される。
【0013】
図4は、取出ヘッド8による薬剤の取り出し動作を説明するための図面である。なお、この動作については、よく知られた構成であるので、説明の煩雑化をさけるため、ここでは簡単に説明する。
つまり、取出ヘッド8の操作部12によって薬剤収納カセット4の取出レバー9が操作されると、薬剤10は、薬剤収納カセット4から取り出され、自重によって転動しながら収納ポケット11内に保管される。
【0014】
そして、収納ポケット11内に保管された薬剤10は、
図3に示すように、トレイ5が薬剤払出装置の所定の位置へと移動した後、収納ポケット11からトレイ5内に投入される。
また、本実施形態の薬剤収納カセット4は、
図2に示すように、薬剤払出装置のカセット装着口3に対して、挿入されたり引き出されたりすることができる。
【0015】
図5は、薬剤収納カセット4に薬剤10を補充するために、カセット装着口3から、薬剤収納カセット4の長手方向における8割程度の部分が引き出され、開閉蓋14aが開放された状態を示している。
【0016】
(薬剤収納カセット4)
本実施形態の薬剤収納カセット4は、
図6〜
図13に示すように、取出レバー9と、引出操作部13と、カセット本体14と、付勢体15(
図7参照)と、ばね機構17(
図8参照)と、付勢規制部23(
図11参照)と、薬剤残量確認部30(
図13参照)と、速度抑制機構31(
図12参照)と、を備えている。
本実施形態の薬剤収納カセット4は、さらに伝達方向規制機構32(
図12参照)を備えている。
(取出レバー9)
取出レバー9は、上述した薬剤払出装置の取出ヘッド8によって操作されると下方へ回動して排出空間を形成することで、カセット本体14内に収納された薬剤10を1本ずつ排出する。
【0017】
(引出操作部13)
引出操作部13は、カセット本体14における第2端側の端面に取り付けられた取っ手状の部材であって、薬剤払出装置のカセット装着口3から薬剤収納カセット4を引き出す際、カセット装着口3へ薬剤収納カセット4を装着する際に使用される。
【0018】
(カセット本体14)
カセット本体14は、上面が開口した長方形状の箱型の部材であって、上面の開口部分を覆う開閉蓋14a(
図6参照)を有している。そして、カセット本体14は、長手方向における第1端側に薬剤排出機構を構成する取出レバー9、その反対の第2端側に引出操作部13が、それぞれ設けられている。
つまり、カセット本体14は、少なくとも1つの薬剤10を収納可能、かつ内部で薬剤10を所定の方向に移送可能な構成を有している。薬剤払出機構は、カセット本体14の薬剤10の移送方向において、カセット本体14の第1端側に設けられ、薬剤10をカセット本体14から払い出す。
開閉蓋14aは、カセット本体14の短手方向における端部に設けられた回転軸(図示せず)を介して軸支されており、薬剤収納カセット4へ薬剤10を追加する際に開閉されることで、カセット本体14の上面を開放する。
取出レバー9は、上述したように、薬剤払出装置の取出ヘッド8によって操作されることで、薬剤収納カセット4内の薬剤を1本ずつ排出する。
【0019】
(付勢体15)
付勢体15は、
図7に示すように、薬剤収納カセット4内において薬剤10を排出方向へ移動させる樹脂製の部材であって、カセット本体14の長手方向に沿って配置されたレール20(
図8参照)に沿って移動可能な状態で設けられている。そして、付勢体15は、カセット本体14内に収納された薬剤10の引出操作部13側に当接する当接体15aを有している。
【0020】
当接体15aは、
図7に示すように、カセット本体14内に収納された薬剤10を、薬剤10よりも引出操作部13側からカセット本体14の排出側(薬剤払出機構側(取出レバー9側))に向かって付勢する。
【0021】
つまり、付勢体15は、カセット本体14内に薬剤10が収納された状態において、カセット本体14の第1端側に対して反対側の第2端側から第1端側に向けて移動することで、薬剤10を薬剤払出機構側へ付勢する。
また、付勢体15は、
図9および
図10に示すように、後述する巻取リール18と一体化して成形されている。なお、巻取リール18については、後段にて詳述する。
【0022】
(ばね機構17)
ばね機構17は、
図8に示すように、付勢体15(当接体15a)を薬剤払出機構側(取出レバー9側)に付勢するためにカセット本体14の側壁に沿って設けられており、巻取リール18と、帯状ばね19と、レール20と、を有している。
巻取リール18は、帯状ばね19を巻き取るために、カセット本体14内の長手方向において移動する付勢体15に一体化した状態で設けられている。つまり、巻取リール18は、付勢体15に結合されている。これにより、巻取リール18は、帯状ばね19を巻き取ることで、カセット本体14内において付勢体15とともに長手方向に移動する。
帯状ばね19は、ステンレス製の非伸縮のベルト状部材であって、その第1端が巻取リール18に固定されており、その反対側の第2端がカセット本体14内の側壁に沿って伸ばされて、取出レバー9近傍に固定されている。このため、帯状ばね19には、巻取リール18に常時巻き取られる方向の力が働く。
【0023】
これにより、付勢体15は、レール20に沿って、カセット本体14の薬剤払出機構側(取出レバー9側)へと付勢される。
レール20は、カセット本体14内における短手方向における端部に固定されているステンレス製の板状部材であって、上述したように、薬剤払出機構側(取出レバー9側)の端部には、帯状ばね19の第2端が固定されている。
【0024】
これにより、樹脂製のレールを用いた場合と比較して、付勢体15の直進性を確保することができる。
また、レール20は、カセット本体14内における薬剤10の搬送面の一部を形成しており、帯状ばね19の上端を覆うように設けられている。
【0025】
(付勢規制部23)
付勢規制部23(
図11〜
図17および
図20参照)は、カセット装着口3に装着された薬剤収納カセット4を引出操作部13側に引き出す動作に連動して、付勢体15による薬剤10への付勢を規制する。そして、付勢規制部23は、ラチェット歯車21と、ラチェット爪23a(
図20参照)と、当接部23b(
図20参照)と、本体部23c(
図20参照)と、回動軸23d(
図20参照)と、を有している。
ラチェット歯車21(巻取部の一例)は、ラチェット爪23a(
図12および
図13参照)と噛み合うことで、動作方向を一方向に制限するための機構であって、レール20の引出操作部13側における端部に、回転可能な状態で配置されている。
そして、ラチェット歯車21には、
図10〜
図13に示すように、帯状ばね22の第1端が固定されている。帯状ばね22の反対側の第2端は、付勢体15に固定されている。
【0026】
つまり、帯状ばね22は、第1端が付勢体15に結合され、その反対側の第2端はラチェット歯車21に結合されている。
さらに、ラチェット歯車21は、外周面から径方向外側へ向かって突出するように均等に配置された複数の歯を有している。
これにより、帯状ばね22は、ラチェット歯車21に巻き取られる方向へ付勢力を受けるが、帯状ばね22の付勢力は、帯状ばね19の付勢力よりもはるかに小さい。つまり、帯状ばね22は、付勢体15とラチェット歯車21とを連結するため、および後述する薬剤残量確認部30を構成するために設けられている。よって、ラチェット歯車21がフリーな状態では、付勢体15は、帯状ばね19の付勢力によって薬剤払出機構側(取出レバー9側)へと付勢される。
【0027】
なお、帯状ばね22は、帯状ばね19と同様の材質によって形成された非伸縮のベルト状の部材であって、上述したように、帯状ばね19よりも付勢力が小さくなるように設計されている。また、帯状ばね22は、後述する薬剤残量確認部30(
図13参照)として機能するために、ベルト状の表面に、数字や色分け等の表示が付されている。
ラチェット爪23aは、
図11〜
図13に示すように、ラチェット歯車21に向かって下向きに突出した爪状の部分であって、カセット本体14内の引出操作部13側に、上下方向に回動可能な状態で設けられている。
【0028】
具体的には、カセット本体14内におけるラチェット歯車21の上方に、ラチェット爪23aが近接配置されている。
このため、ラチェット爪23aが、
図16に示すように、上方へ持ち上げられてラチェット歯車21に噛み合っていない状態では、ラチェット歯車21は、フリーに回転することができる。よって、この状態では、帯状ばね22は帯状ばね19の付勢力に負けて引き伸ばされる。そして、付勢体15は、帯状ばね19の付勢力によって、薬剤払出機構側(取出レバー9側)へと付勢される。
【0029】
このような非噛合状態は、
図17に示すように、カセット本体14が、カセット装着口3内へと挿入された状態で実現される。このとき、薬剤10は、付勢体15によって薬剤払出機構側(取出レバー9側)へと付勢されており、薬剤10を取り出すことが可能な状態となっている。
これに対して、
図13は、カセット本体14がカセット装着口3からその一部が引き出された状態(例えば、
図15に示す状態)におけるラチェット歯車21とラチェット爪23aとの噛合状態を示している。
【0030】
このような噛合状態では、付勢体15は、付勢規制部23によって、薬剤10を排出側へと移動させる付勢力の付与が規制された状態となっている。
当接部23bは、ラチェット歯車21の外周方向において、ラチェット歯車21より更に下方に延伸するように形成されており、より具体的には、
図14に示すように、カセット本体14の底面を貫通し、底面側に露出した状態となっている。
【0031】
ここで、薬剤払出装置の本体ケース1のカセット装着口3の出入口付近には、
図19に示すように、カセット本体14を装着方向に案内するガイドレール25が平行に2本ずつ設けられている。
よって、当接部23bは、薬剤払出装置のカセット装着口3へ薬剤収納カセット4を完全に装着した状態とすると、ガイドレール25に接触し、回動軸23dを中心にして上方へと回動する。このとき、付勢規制部23は、ラチェット爪23aおよび本体部23cとともに、回動軸23dを中心に上方へと回動する。このため、ラチェット爪23aは、ラチェット歯車21との噛合状態(
図13参照)から非噛合状態(
図16参照)へと移行する。
【0032】
この結果、薬剤払出装置のカセット装着口3に、完全に薬剤収納カセット4が装着された状態においては、ラチェット歯車21とラチェット爪23aとが噛み合わない付勢力非規制状態とすることができる。よって、この状態では、付勢体15に対してばね機構17の付勢力が付与されるため、薬剤収納カセット4の排出側から薬剤10が排出可能な状態となる。
【0033】
一方、薬剤払出装置のカセット装着口3から薬剤収納カセット4が一部引き出された状態においては、ラチェット歯車21とラチェット爪23aとが噛み合った付勢力規制状態となる。よって、この状態では、付勢体15に対してばね機構17の付勢力が付与されないため、薬剤収納カセット4の排出側を誤って操作してしまった場合でも、薬剤10が意図せずに排出されることを回避することができる。
【0034】
(薬剤残量確認部30)
さらに、本実施形態の薬剤収納カセット4では、カセット本体14がカセット装着口3に完全に押し込まれた状態において、薬剤残量確認部30によって、カセット本体14内に残存する薬剤10の量を容易に確認することができる。
具体的には、薬剤残量確認部30は、
図13に示すように、確認窓26と、帯状ばね22と、を有している。
【0035】
確認窓26は、カセット本体14の引出操作部13側における端面を貫通するように形成されており、カセット本体14内におけるラチェット歯車21の帯状ばね22に対向する位置に設けられている。
帯状ばね22は、ラチェット歯車21の回転軸周りに巻回されており、その表面には、カセット本体14内に薬剤10がどの程度残存しているかを示すための表示が施されている。
【0036】
ここで、帯状ばね22に施された表示としては、数字や色分け部が付された表示等が含まれる。
これにより、カセット本体14内の薬剤10が少なくなると、カセット本体14内において当接体15aも薬剤払出機構側(取出レバー9側)へと移動するため、帯状ばね22も長く引き出された状態となる。このとき、帯状ばね22が長く引き出された状態になると、確認窓26から見える位置に、数字や色分け等の表示を確認することができる。この結果、薬剤10の残量が少なくなった場合には、薬剤収納カセット4をカセット装着口3から引き出して開閉蓋14aを開けなくても、確認窓26からの表示を確認するだけで容易に残量を認識することができる。
【0037】
(速度抑制機構31)
速度抑制機構31は、
図18に示すように、例えば、ロータリダンパなどであって、本実施形態では、ロータリダンパが巻取リール18に取り付けられている。
ロータリダンパは、例えば、固定側33と回転側34に分割されており、固定側33に対して回転側34が回転する構成を有している。そして、固定側33と回転側34との間に充填された粘性流体31aなどによって、固定側33に対する回転側34の回転速度を抑制する。
【0038】
つまり、ロータリダンパにおいて回転側34が固定側33に対して回転する際には、粘性流体31aがその回転抵抗となる。よって、粘性流体31aの粘度が高ければ、回転側34の回転速度は大きく減速され、粘性流体の粘度が低ければ、回転側34の回転速度は小さく減速される。
ロータリダンパの回転側34には、回転側34と回転中心が略同一の結合用軸35が形成されている。
【0039】
そして、巻取リール18に回転中心が略同一に設けられた円筒状の孔18aに、ロータリダンパの結合用軸35が、後述する伝達方向規制機構32を介して結合している。これにより、ロータリダンパが巻取リール18に取り付けられる。
つまり、ロータリダンパが巻取リール18に取り付けられていることで、巻取リール18が帯状ばね19を巻き取る際の回転抵抗となる。
【0040】
この構成により、速度抑制機構31は、付勢体15が移動する速度に応じて、付勢体15の移動方向と反対方向に作用する負荷を付勢体15に加えることで、付勢体15の移動速度が抑制される。
【0041】
(伝達方向規制機構32)
伝達方向規制機構32は、例えば、ワンウェイクラッチなどであって、本実施形態では、ロータリダンパの結合用軸35と巻取リール18の孔18aの間に設けられている。
ワンウェイクラッチは、一方の方向のみに回転力を伝達するクラッチ機構であって、本実施形態では、ロータリダンパの結合用軸35に結合される第1部材36(結合部の一例)と、巻取リール18の孔18aに結合される第2部材37と、を備えている。
つまり、ワンウェイクラッチは、第1部材36を介してロータリダンパに結合されている。
【0042】
そして、第1部材36と第2部材37は、ラチェット機構などを介して組み合わされており、第1部材36に対する第2部材37の回転方向が1方向に規制される。
この構成により、ワンウェイクラッチは、第1部材36を介して付勢体15が前述したカセット本体14の第1端側に対して反対側の第2端側から第1端側に向かって移動する方向のみにロータリダンパが作用する。
【0043】
<速度抑制機構31による動作>
ここでは、速度抑制機構31の動作について、以下で詳しく説明する。
図19においては、上下方向に2個の薬剤収納カセット4が装着されるカセット装着口3を示している。
図19に示す上方のカセット装着口3には、カセット本体14が装着されている。一方、
図19に示す下方のカセット装着口3には、カセット本体14が抜きとられて空間が形成されている。
【0044】
なお、薬剤払出装置のそれぞれのカセット装着口3には、開口部から奥に向かって延びるように配置された2本のガイドレール25が設けられている。
ガイドレール25は、カセット装着口3において、薬剤収納カセット4(カセット本体14)を挿入したり引き出したりする際にスムーズに前後に案内する。また、本実施形態では、ガイドレール25は、薬剤収納カセット4をカセット装着口3へ装着した状態において、
図20に示す付勢規制部23の当接部23bに接触して押し上げる被当接部として機能する。
【0045】
特に、本実施形態では、
図5に示すように、ガイドレール25の手前側端部がカセット装着口3の開口から所定の距離だけ内部に入った位置に配置されている。一方、ガイドレール25に接触する付勢規制部23(当接部23b)は、
図15に示すように、薬剤収納カセット4のカセット本体14における最も引出操作部13側に配置されている。
このため、ガイドレール25は、薬剤収納カセット4をカセット装着口3内に最後まで押し込んだ状態まで移行して、初めて付勢規制部23(当接部23b)に対して接触する。
【0046】
これにより、薬剤収納カセット4をカセット装着口3内へ完全に装着された状態となるまで押し込まれるまでの間は、付勢規制部23による規制を機能させることができる。
つまり、薬剤収納カセット4がカセット装着口3から少しでも引き出された状態では、
図14および
図15に示すように、付勢規制部23が回動軸23d(
図20参照)を中心にして自重で下方へ回動し、当接部23bがカセット本体14の底面から下方へ突出した状態となる。
【0047】
このとき、薬剤収納カセット4はカセット装着口3から引き出されているため、カセット本体14の底面より下方の空間には、ガイドレール25は存在しない。この結果、付勢規制部23のラチェット爪23aは、
図13に示すように、付勢規制部23の本体部23c(
図20参照)とともに下方へ回動し、ラチェット歯車21に対して係合する。
以上のように、薬剤収納カセット4がカセット装着口3から引き出された状態では、ラチェット歯車21とラチェット爪23aとが噛み合って付勢規制部23による規制が機能する。
【0048】
これにより、ラチェット歯車21はラチェット爪23aによってその回転が停止されるため、薬剤払出機構側(取出レバー9側)へと引き出されていた帯状ばね22は、その付勢力が停止された状態となる。この結果、付勢体15は、薬剤払出機構側(取出レバー9側)へ薬剤10を付勢することができない状態となる。
つまり、本実施形態においては、薬剤収納カセット4に薬剤10を補充する際には、まず、
図5に示すように、カセット装着口3からカセット本体14を途中まで引き出した状態とし、薬剤収納空間の上面を覆う開閉蓋14aを開放する。その後、
図7に示すように、付勢体15が引出操作部13側へと手動で引き戻されると、付勢体15は、
図7の状態で保持される。このとき、帯状ばね19は伸びた状態、帯状ばね22は巻き取られた状態となる。
【0049】
ここで、本実施形態では、上述したように薬剤収納カセット4は、伝達方向規制機構32を備えてもよい。つまり、ワンウェイクラッチを備えてもよい。
ワンウェイクラッチは、上述したように第1部材36を介してロータリダンパに結合され、第1部材36を介して付勢体15が前述したカセット本体14の第1端側に対して反対側の第2端側から第1端側に向かって移動する方向のみにロータリダンパが作用するようにしている。
【0050】
したがって、付勢体15が前述したカセット本体14の第1端側から第2端側に向かって移動する方向にはロータリダンパが作用しないので、
図7に示すように、付勢体15を引出操作部13側へと手動で引き戻す場合、ロータリダンパの回転抵抗を受けることなく、付勢体15を引き戻すことができる。
その結果、付勢体15を引き戻す作業を容易に行うことができ、極めて使い勝手の良いものとなる。
【0051】
次に、カセット本体14内に薬剤10を補充した後、
図6に示すように、開閉蓋14aを閉めて、再び、薬剤収納カセット4をカセット装着口3内へと押し込む。
ここで、薬剤収納カセット4がカセット装着口3内へ最後まで押し込まれることにより、薬剤収納カセット4がカセット装着口3内へ完全に装着された状態となる。その状態では、カセット装着口3の内に設けられたガイドレール25と、付勢規制部23の当接部23bとが接触し、当接部23bが回動軸23dを中心に回動して上方へと持ち上げられる。その結果、
図16に示すように、ラチェット歯車21とラチェット爪23aとの係合が解除され、ラチェット歯車21の回転規制が解除される。
【0052】
これにより、ラチェット歯車21は、フリーに回転できる状態となるため、帯状ばね22は、帯状ばね19の付勢力に負けて引っ張られて伸ばされる。つまり、付勢体15による薬剤10の薬剤払出機構側(取出レバー9側)への付勢が再開され、付勢体15は、保持される位置(
図7参照)から薬剤収納カセット4に装填されている薬剤10に当接するまで移動する。
【0053】
このとき、上述したように、帯状ばね19を巻き取るために、カセット本体14内の長手方向において移動する巻取リール18が付勢体15に一体化した状態で設けられている。このため、巻取リール18は、帯状ばね19が巻き取られると、カセット本体14内において付勢体15とともに移動する。
ここで、本実施形態では、上述したようにロータリダンパが巻取リール18に取り付けられており、巻取リール18が帯状ばね19を巻き取る場合に、回転抵抗となる。
【0054】
したがって、ロータリダンパによって巻取リール18が帯状ばね19を巻き取る速さが抑制され、巻取リール18の移動速度が低減される。
その結果、巻取リール18と一体化されている付勢体15がカセット本体14内の長手方向において移動する速度も、巻取リール18の移動速度が低減されるのと同様に低減される。
【0055】
この構成により、付勢体15が移動する速度を抑制して、付勢体15が薬剤10に当接するときの衝撃を抑えることができる。この結果、付勢体15によって薬剤10が破損されることを防止することができる。
そして、取出ヘッド8による取出レバー9の操作が加わることにより、所望の薬剤10が1つずつ払い出される。
【0056】
なお、上記実施形態では、付勢体15は、例えば、
図8において、下方に伸びるガイド軸(図示せず)を有している。このガイド軸は、カセット本体14の底部に設けたスリット状のガイド溝(図示せず)に係合している。つまり、付勢体15は、カセット本体14のガイド溝に沿って、カセット本体14の引出操作部13側から、薬剤払出機構側(取出レバー9側)に移動する。そして、このとき、帯状ばね19による付勢力が加えられる。
【0057】
以上のように、本実施形態の薬剤収納カセット4は、速度抑制機構31を備えている。そして、速度抑制機構31によって、付勢体15が移動する速度を抑制し、付勢体15が薬剤10に当接するときの衝撃を抑えることができる。この結果、付勢体15によって薬剤10が破損されることを防止することができる。
つまり、薬剤収納カセット4のカセット本体14の内部において、付勢体15によって薬剤10を薬剤払出機構側へ確実に付勢することができる。
【0058】
その結果、薬剤収納カセット4の信頼性を向上させ、薬局などの調剤業務効率化を促進させることができる。よって、極めて使い勝手の良い薬剤収納カセット4を提供することができる。
また、本実施形態の薬剤収納カセット4では、伝達方向規制機構32を備えている。伝達方向規制機構32は、速度抑制機構31が付勢体15に負荷を作用する方向を規制する。
【0059】
つまり、付勢体15がカセット本体14の第1端側から第2端側に向かって移動する方向には、速度抑制機構31が作用しないように、伝達方向規制機構32が速度抑制機構31によって付勢体に負荷がかかる方向を規制する。
これにより、薬剤収納カセット4のカセット本体14の内部において付勢体15をカセット本体14の第1端側から第2端側に向かって手動で引き戻す際に、速度抑制機構31の回転抵抗を受けることなく、付勢体15を引き戻すことができる。
【0060】
その結果、付勢体15を引き戻す作業を容易に行うことができ、薬局などの調剤業務効率化を促進できる。よって、極めて使い勝手の良い薬剤収納カセット4を提供することができる。
また、本実施形態の薬剤収納カセット4では、引出操作部13を持って手前側に引き出される動作に連動して、付勢体15による薬剤10の薬剤払出機構側(取出レバー9側)への付勢を規制したり解除したりする付勢規制部23、を備えている。
【0061】
これにより、薬剤収納カセット4を引出操作部13側に引き出すだけで、付勢規制部23によって、付勢体15による薬剤10に対する薬剤払出機構側(取出レバー9側)への付勢を規制することができる。
つまり、本実施形態においては、薬剤収納カセット4を薬剤払出装置のカセット装着口3に完全に装着された状態以外では、カセット装着口3からその一部が引き出された状態でも、完全に全体が引き出された状態でも、付勢体15による薬剤10に対する薬剤払出機構側(取出レバー9側)への付勢を規制することができる。
この結果、カセット装着口3から薬剤収納カセット4の一部あるいは全部が引き出された状態において、薬剤排出機構側を誤って操作してしまった場合でも、意図せずに薬剤10が排出されるのを防止することができる。
【0062】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
(A)
上記実施形態では、速度抑制機構31を巻取リール18に取り付けた構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、速度抑制機構31がラチェット歯車21に取り付けられた構成であってもよい。この場合でも、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0064】
具体的には、
図21に示すように、速度抑制機構31は、例えば、ロータリダンパなどであって、本実施形態では、ロータリダンパがラチェット歯車21に取り付けられている。
ロータリダンパについては、上述した実施形態1と同様であって、煩雑化を避けるため詳細の説明は省略する。
【0065】
図22に示すように、ロータリダンパの回転側34には、回転側34と回転中心が略同一の結合用軸35が形成されている。
そして、ロータリダンパの結合用軸35が、ラチェット歯車21における回転中心が略同一に設けられた円筒状の孔21aに、伝達方向規制機構32を介して結合することで、ロータリダンパがラチェット歯車21に取り付けられている。
【0066】
つまり、ロータリダンパは、ラチェット歯車21に取り付けられており、ラチェット歯車21から帯状ばね22が引き出される場合に、回転抵抗となる。
また、上述した実施形態1と同様に付勢体15は帯状ばね22と結合されている。
この構成により、速度抑制機構31は、付勢体15が移動する速度に応じて、付勢体15の移動方向と反対方向に作用する負荷を付勢体15に加えることで、付勢体15の移動速度を抑制する。
【0067】
つまり、付勢体15が、前述したカセット本体14の第1端側に対して反対側の第2端側から第1端側に向かって移動する際には、ラチェット歯車21から帯状ばね22が引き出されてロータリダンパが回転抵抗となる。
なお、伝達方向規制機構32は、例えば、ワンウェイクラッチなどであって、上述した実施形態1と同様であるので、煩雑化を避けるため詳細の説明は省略するが、一方の方向のみに回転力を伝達するクラッチ機構である。
【0068】
つまり、
図22に示すように、ワンウェイクラッチは、ロータリダンパの結合用軸35に結合される第1部材36と、ラチェット歯車21の孔21aに結合される第2部材37と、を有している。
そして、ワンウェイクラッチは、第1部材36を介してロータリダンパに結合され、第1部材36に対する第2部材37の回転方向を1方向に規制する。
【0069】
この構成により、ワンウェイクラッチは、第1部材36を介して付勢体15が前述したカセット本体14の第1端側に対して反対側の第2端側から第1端側に向かって移動する方向のみにロータリダンパを作用させる。
したがって、薬剤収納カセット4のカセット本体14の内部において付勢体15をカセット本体14の第1端側から第2端側に向かって手動で引き戻す際に、速度抑制機構31の回転抵抗を受けることなく、ラチェット歯車21が帯状ばね22を巻き取ることができる。
【0070】
これにより、カセット本体14の第1端側から第2端側に向かって付勢体15を手動で引き戻す際に、付勢体15を速く引き戻した場合でも、帯状ばね22の巻き取りが間に合わずに帯状ばね22が引き戻す動作に対して抵抗となったり、また、帯状ばね22が変形等によって損傷してしまったりすることを防止することができる。
その結果、付勢体15を引き戻す作業を容易に行うことができ、薬局などの調剤業務効率化を促進することができる。よって、極めて使い勝手の良い薬剤収納カセットを提供することができる。
【0071】
(B)
上記実施形態では、速度抑制機構31として、粘性流体31aを利用したロータリダンパを用いた例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、カセット本体14内を付勢体15が移動する場合に、付勢体15の移動方向と反対方向に作用する負荷を付勢体15に加えるための機構であれば、他の機構を採用してもよい。
【0072】
(C)
上記実施形態では、伝達方向規制機構32として、ラチェット機構を利用したワンウェイクラッチを用いた例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、速度抑制機構31に結合される結合部である第1部材36に対する第2部材37の回転方向を1方向に規制するものであって、第1部材36を介して付勢体15が前述したカセット本体14の第1端側に対して反対側の第2端側から第1端側に向かって移動する方向のみに速度抑制機構31が作用するための機構であれば、他の機構を採用してもよい。
【0073】
(D)
上記実施形態では、薬剤収納カセット4がカセット装着口3から引き出されたことを検出する引出検出部として、付勢規制部23と一体化するように形成された当接部23bを例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、薬剤収納カセット4が引き出されたことを電気的に検出するセンサや、薬剤収納カセット4の位置を検出する各種センサ等を引出検出部として用いてもよい。
この場合でも、引出検出部における検出結果に基づいて、付勢規制部を電気的あるいは機械的に機能させることで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(E)
上記実施形態では、付勢体15による薬剤10への付勢を規制する付勢規制部として、ラチェット歯車21,ラチェット爪23aの組合せを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
例えば、付勢体による薬剤への付勢を規制するための機構であれば、他の機構を採用してもよい。