(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照しながら、保守員位置情報管理システムの実施の形態について説明する。
【0012】
(1)本実施の形態による保守員位置情報管理システムの構成
図1は、保守員位置情報管理システム1を示す。保守員位置情報管理システム1は、公衆回線網20を通して位置情報を送信する端末である携帯端末10と、携帯端末10を持つ保守員15を管理し、営業所40と通信し、保守員15が保守作業を行う保守対象である設備50Cが設置された現場50を監視し、位置情報を受信する管理装置である監視センタ30とから構成される。
【0013】
現場50には制御装置50Aによって制御される設備50Cが設置され、設備50Cにはその利用者が利用する画像装置である表示装置50Bが配設されている。遠隔監視装置50Dは、制御装置50Aに異常がないかを、監視センタ30から遠隔で監視するために設けられている。異常があった場合、監視センタ30は現場50から閉じ込め等の通報を受信し、携帯端末10へ閉じ込め現場情報等の通報を送信する。例えば、エレベーターが設置された現場50の場合、設備50Cは乗りかごであり、異常停止時には、監視センタ30は自動で制御装置50Aから閉じ込め等の通報を受信し、携帯端末10へ閉じ込め現場情報等の通報を送信する。なお、乗りかご50C内の乗客が乗りかご50C内に設置された通報ボタンを押すこと等で、監視センタ30へ閉じ込め等の通報が送信されてもよい。
【0014】
監視センタ30の、位置情報の推移を示す画像を形成する形成モジュールである、位置情報管理サーバ31は、位置情報を位置情報受信装置31Aで受信し、受信した位置情報をもとに位置情報表示装置31Bに保守員15の位置情報が表示された地図の画像データを作成する。
【0015】
位置情報表示装置31Bは、保守員15が作業開始前や作業終了後に出勤する営業所40内のパソコン等であるPC41と接続されている。このため、営業所40内の管理者42は、PC41を介して、保守員15の位置を確認できる。
【0016】
監視センタ30の監視サーバ32は、現場50からの閉じ込め等の通報を通信装置であるデータ受信装置32Aで、受信し、設備50Cが画像データを表示装置50Bに表示できる機種かどうかを判定し、表示できる機種であった場合は、画像表示判定装置32Cで上述の位置情報表示装置31Bから画像データを取得し、取得した画像データを通信装置であるデータ送信装置32Bを通して現場50へ送信し、公衆回線網20、通信装置50E、遠隔監視装置50D及び制御装置50Aを経由して表示装置50Bに画像データを表示させる。
【0017】
保守員15は、自分の状況に応じた入力を携帯端末10に行う。この入力は、保守員15がボタンやタッチパネルの操作によって入力してもよいし、現場50や営業所40との距離に応じて自動で入力されてもよい。
【0018】
なお、保守員15の状況である入力の種類は、
図2のステータスデータテーブルT1の入力列T11に示すように、「出発」、「作業中」、「退館」及び「帰着」があり、ステータスデータテーブルT1によって、ステータス列T12に示すように、それぞれ、「移動中」、「作業中」、「移動中」及び「停止」の保守員15の対応状況であるステータスに対応付けられている。なお、対応状況には、上述の、保守員15が保守対象に対して移動中である「移動中」、保守員15が保守対象に対して保守作業を行っている「作業中」、「停止」の他に後述の保守員15が保守対象に対して緊急に保守をすべきである「緊急」がある。ステータスデータテーブルT1は、後述のメモリ12に保存されている。
【0019】
ここで、保守員15が営業所40を出発して、現場A51及び現場B52を保守し、営業所40に戻る場合について説明する。保守員15は、営業所40を出発する際に、携帯端末10を操作し、「出発」を入力する。この入力により、携帯端末10は、この入力の直後に位置情報を送信し、ステータスが「移動中」の場合の送信周期で位置情報の送信を開始する。保守員15は、現場A51に到着すると、携帯端末10を操作し、「入館」を入力する。この入力により、携帯端末10は、この入力の直後に位置情報を送信し、ステータスが「作業中」の場合の送信周期で位置情報の送信を開始する。保守員15は、現場A51での作業が終了すると、携帯端末10を操作し、「退館」を入力する。この入力により、携帯端末10は、この入力の直後に位置情報を送信し、ステータスが「移動中」の場合の送信周期で位置情報の送信を開始する。
【0020】
保守員15は、現場B52に到着すると、携帯端末10を操作し、「入館」を入力する。この入力により、携帯端末10は、この入力の直後に位置情報を送信し、ステータスが「作業中」の場合の送信周期で位置情報の送信を開始する。保守員15は、現場B51での作業が終了すると、携帯端末10を操作し、「退館」を入力する。この入力により、携帯端末10は、この入力の直後に位置情報を送信し、ステータスが「移動中」の場合の送信周期で位置情報の送信を開始する。保守員15は、営業所40に到着すると、携帯端末10を操作し、「帰着」を入力する。この入力により、携帯端末10は、ステータスが「停止」となり、位置情報の送信を停止する。
【0021】
なお、上述の内容は一例であり、携帯端末10が営業所40の一定の距離に近づいた場合は自動的に「帰着」が携帯端末10に入力されてもよいし、携帯端末10が現場50の一定の距離近づいた場合は自動的に「作業中」が携帯端末10に入力されてもよいし、携帯端末10が営業所40及び現場50の一定の距離から離れた場合は自動的に「移動中」が携帯端末10に入力されてもよい。また、上述の内容では、携帯端末10は、「作業中」の場合にも、位置情報を送信しているが、「作業中」の場合は、位置情報を送信しなくてもよいものとする。その他、現場50で保守員15が保守を開始し、通信装置50Eと携帯端末10との通信接続の確立(保守終了時は通信接続の終了)を検知したら、当該検知結果を監視センタ30または携帯端末10に送信することで、「入館」「退館」の入退館情報を判断してもよい。
【0022】
図2の送信周期データテーブルT2によって、ステータス列T21列に示すステータスである「移動中」、「作業中」、「緊急」及び「停止」は、送信周期列T22に示す送信周期である「10」、「60」、「1」、「0」にそれぞれ対応付けられている。送信周期データテーブルT2は、後述のメモリ12に保存されている。なお、各ステータス間における、送信周期の値の関係は、「作業中」の送信周期の値が一番大きく、次に「移動中」の送信周期の値が大きく、「緊急」の送信周期の値は一番小さいものとする。なお、「停止」の送信周期は「0」として、送信周期の値に「0」が設定された場合、携帯端末10は位置情報を送信しない。
【0023】
保守員15が持つ携帯端末10は、携帯端末10全体を制御するCPU(Central
Processing Unit)やMPU(Micro Processor Unit)等のCPU11と、CPU11の処理に必要な各種データやプログラム等を記憶しているDRAM(Dynamic RAM)やRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリ12と、CPU11が携帯端末10の外部の監視センタ30等と通信を行うための通信装置14とを備える。
【0024】
メモリ12は、送信周期データテーブルT2に基づいて送信周期を設定する送信周期設定処理を行う送信周期設定プログラム12Aと、保守員15の作業状態の入力を受け付ける保守員作業状態入力受付処理を行う保守員作業状態入力受付プログラム12Bと、保守員の作業状態を管理する保守員作業状態管理処理を行う保守員作業状態管理プログラム12Cと、位置情報を送信するかを判定する位置情報送信判定処理を行う位置情報送信判定プログラム12Dと、GPSや携帯端末10の基地局を利用して位置を測定する位置情報測定プログラム12Eと、位置情報送信を行う位置情報送信プログラム12Fと、閉じ込め現場情報等の通報を受信する現場情報受信プログラム12Gとを備える。また、メモリ12は、上述のステータスデータテーブルT1及び送信周期データテーブルT2を備える。
【0025】
なお、ここでは送信周期設定プログラム12A、保守員作業状態入力受付プログラム12B及び位置情報送信プログラム12Fはプログラムとしているが、それぞれ、位置情報の発信周期を設定する制御モジュール、入力モジュール及び位置情報を発信する発信モジュールであってもよく、保守員作業状態管理プログラム12C、位置情報送信判定プログラム12D、位置情報測定プログラム12E及び現場情報受信プログラム12Gについてもモジュール等でもよい。
【0026】
(2)携帯端末での処理
図3に携帯端末10での処理のフローチャートを示す。携帯端末10は、保守員15の作業状態の入力を受け付け、保守員15の作業状態を管理する保守員作業状態入力受付処理及び保守員作業状態管理処理(SP10)と、送信周期データテーブルT2に基づいて送信周期を設定する送信周期設定処理(SP20)と、監視サーバ32から閉じ込め現場情報等の緊急通報の有無を判定し、緊急時の送信周期を設定する緊急時対応処理(SP30)と、定期的に位置情報を送信する位置情報送信判定処理(SP40)とを行う。なお、
図3に示した上述のSP10〜SP40の一連の処理は、タイマ割込等の処理により、一定間隔で定期的に(例えば1分周期)処理される。
【0027】
図4に保守員作業状態入力受付処理及び保守員作業状態管理処理(SP10)のフローチャートを示す。まず、保守員作業状態入力受付プログラム12Bによって入力の種類を判定する(SP11)。ここでいう入力は、例えば、保守員15が携帯端末10のタッチパネル等から入力状態を選択することで、その種類が決まる。
【0028】
次に、保守員作業状態管理プログラム12CはステータスデータテーブルT1を参照して判定結果に応じたステータスを設定する(SP12〜SP14)。
【0029】
なお、ステップSP12〜ステップSP14及びステータスデータテーブルT1での説明においては、入力に「緊急」がないが、緊急時対応処理(SP30)の代わりに、保守員15が監視センタ30や管理者42から連絡を受けた場合等に、自分で「緊急」を入力し、ステータスが「緊急」設定されるとしてもよい。
【0030】
図5に送信周期設定処理(SP20)のフローチャートを示す。送信周期設定プログラム12Aはステータスが設定されているかを判定する(SP21)。ステータスが判定されている場合、送信周期設定プログラム12Aは、位置情報測定プログラム12Eによって位置情報を測定し(SP22)、位置情報送信プログラム12Fによって位置情報を送信する(SP23)。その後、送信周期設定プログラム12Aは、位置情報送信判定プログラム12Dが保持する送信カウンタの値を0に設定(リセット)し(SP24)、送信周期データテーブルT2を参照し、ステータスに対応した送信周期を設定する(SP25)。ステータスが設定されていない場合、送信周期設定プログラム12Aは処理を終了する。
【0031】
図6に緊急時対応設定処理(SP30)のフローチャートを示す。位置情報送信判定プログラム12Dは、現場情報受信プログラム12Gによって監視サーバ32から閉じ込め現場情報等の通報の受信をしたか判定する(SP31)。なお位置情報送信判定プログラム12Dは、受信した閉じ込め現場情報等の通報により、当該現場50の位置情報等を取得する。
【0032】
位置情報送信判定プログラム12Dは、ステップSP31の判定が肯定結果の場合、ステータスが「移動中」であるか判定し(SP32)、ステップSP32の判定が肯定結果の場合、閉じ込め現場情報等の通報を送信した現場50の一定範囲内かを、位置情報測定プログラム12Eによって測定した位置情報と、ステップSP31で取得した現場50の位置情報とに基づいて判定し(SP33)、ステップSP33の判定が肯定結果の場合にステータスを「緊急」とし(SP34)、送信周期データテーブルT2を参照し、ステータスに対応した送信周期を設定する(SP35)。位置情報送信判定プログラム12Dは、ステップSP31〜ステップSP33の判定が否定結果の場合は処理を終了する。
【0033】
なお、ステップSP33では、ステップSP22で測定した位置情報を使用するが、ステップSP33で、置情報送信判定プログラム12Dは位置情報測定プログラム12Eによって位置情報を測定してもよい。
【0034】
図7に位置情報送信判定処理(SP40)のフローチャートを示す。位置情報送信判定プログラム12Dは、送信カウンタを1加算(インクリメント)し(SP41)、送信カウンタの値がステップSP25で設定された送信周期の値以上かを判定する(SP42)。送信カウンタの値が上述の送信周期の値以上の場合、位置情報送信判定プログラム12Dは、位置情報測定プログラム12Eによって位置情報を測定し(SP43)、位置情報送信プログラム12Fによって位置情報を送信し(SP44)、送信カウンタの値を0に設定(リセット)する(SP45)。送信カウンタの値が上述の送信周期の値より小さい場合、位置情報送信判定プログラム12Dは処理を終了する。
【0035】
また、
図8に示すように、緊急時対応処理(SP30)の代わりに、ステップSP12の処理後に、ステータスを「緊急」とする一連の処理(SP31、SP33及びSP34)をしてもよい。
【0036】
(3)監視センタでの処理
図9に監視センタ30に設置された監視サーバ32の画像表示判定装置32Cでの処理のフローチャートを示す。画像表示判定装置32Cは、現場50の遠隔監視装置50Dから、閉じ込め等の通報を受信しているかを判定する(SP51)。ステップSP51での判定が肯定結果の場合、画像表示判定装置32Cは当該現場50の一定範囲内に保守員がいるかを位置情報表示装置31Bの当該現場50及び保守員15の位置情報を参照して判定(SP52)する。ステップSP52での判定が肯定結果の場合、画像表示判定装置32Cは、位置情報表示装置31Bから画像データを取得し(SP53)、データ送信装置32Bを介して、現場50に画像データを送信し(SP54)、閉じ込め等が復旧したかを判定する(SP55)。閉じ込め等が復旧したかは、現場50からの復旧の通知を受信して判定する。ステップSP55での判定が否定結果の場合はステップSP52へ戻り、ステップSP51での判定が否定結果の場合及びステップSP55での判定結果が肯定結果の場合には画像表示判定装置32Cは処理を終了する。なお、
図9に示した処理は、タイマ割込等の処理で定期的に実行されているものとし、ステップSP52〜ステップSP55の処理についても、タイマ割り込み等で定期的に実行されてもよいものとする。
【0037】
図10に保守員位置情報管理システム1の通常時と緊急時のシーケンス図を示す(SP60)。
図10に示すように通常時には、携帯端末10から位置情報管理サーバ31へ送信される位置情報は、位置情報送信ステップSP61Aと位置情報送信ステップSP61Bとの間隔であり、通常の間隔(例えば、保守員が移動中であれば10分間隔、作業中であれば60分間隔)で送信される(SP61)。
【0038】
これに対し、緊急時には、遠隔監視装置50Dから、閉じ込め等の通報が、監視サーバ32へ送信さる(SP62)。この閉じ込め等の通報を受信すると、これに基づいて、監視サーバ32は、携帯端末10へ閉じ込め現場情報等の通報を送信する(SP63)。この閉じ込め現場情報等の通報を受信すると、これに基づいて、携帯端末10は、位置情報管理サーバ31へ位置情報の送信を位置情報送信ステップSP64Aと位置情報送信ステップSP64Bとの間隔のような緊急時の間隔で送信する(SP64)。この間隔は例えば1分間とする。さらに、監視サーバ32は、遠隔監視装置50Dが設けられている設備50Cが画像データの表示に対応している機種かを判定し(SP68)、表示に対応している機種であった場合に、位置情報管理サーバ31へ画像データを要求し(SP65)、これに応じて位置情報管理サーバ31は、監視サーバ32へ画像データを送信する(SP66)。監視サーバ32は、受信した画像データ基づいて画像データを遠隔監視装置50Dに送信する(SP67)。
【0039】
図11に設備50Cの表示装置50Bに表示される画像データ60を示す。当該画像データ60は地図が表示される地図領域61と、緊急の対応が必要な現場50の情報が表示される現場情報領域62と、保守員15の情報が表示される保守員情報領域63とから構成される。なおこの画像データは、PC41に表示される画像データと同一でもよいものとする。
【0040】
(4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の保守員位置情報管理システム1では、移動が少ない作業中は携帯端末10における位置情報を監視センタへ送信する周期を長くして、位置情報の送信頻度を低くして、位置情報を送信することで消費する携帯端末10のバッテリの消費を抑える。加えて、緊急時には、監視サーバ32は、設備C50が画像データを表示可能な機種かを判定し、表示可能な機種である場合には、携帯端末10へ閉じ込め現場情報等の通報を送信する。このことで、携帯端末10は位置情報を短い周期で位置情報管理サーバへ送信し、位置情報管理サーバは、保守員15が近づいている様子がわかる間隔で更新される画像データを、監視センタを介して遠隔監視装置50Dに送信し、表示装置50Bに表示することで、設備50Cの利用者の不安を軽減することができる。