特許第6577894号(P6577894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577894
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】車両用空調装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   B60H1/00 103L
   B60H1/00 102H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-64067(P2016-64067)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-177872(P2017-177872A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐太
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−6896(JP,A)
【文献】 特開2015−16784(JP,A)
【文献】 特開2008−1352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有した空調ケースと、該空調ケース内において上流側に配置され空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記空調ケース内において前記冷却用熱交換器よりも下流側に配置され前記空気を加熱する加熱用熱交換器と、前記加熱用熱交換器によって加熱される温風と該加熱用熱交換器をバイパスする冷風との混合割合を調整し、車室内への前記空気の送風温度を調整する温度調整手段と、前記温度調整手段により温度調整された前記空気を乗員の顔側へと送風するベント送風口と、前記温度調整手段により温度調整された前記空気を前記乗員の足元側へと送風するフット送風口とを備える車両用空調装置において、
前記温度調整手段は、前記空調ケースに回動自在に設けられ、前記加熱用熱交換器をバイパスする冷風通路の開度を調整する冷風側エアミックスダンパと、
前記空調ケースに回動自在に設けられ、前記加熱用熱交換器を通過する温風通路の開度を調整する温風側エアミックスダンパと、
を備え、
前記冷風側エアミックスダンパが全開状態から回動し、前記温風側エアミックスダンパが全閉状態から回動し、前記冷風側エアミックスダンパの開度と同一開度になった後、前記温風側エアミックスダンパの開度が最大となり、且つ、前記冷風側エアミックスダンパの開度を下回らない範囲内で前記開度を最小とすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記冷風側エアミックスダンパ及び温風側エアミックスダンパは、前記空調ケースに軸支される回転軸と、該回転軸を中心として互いに離間する方向に延在した一組のドア部とを有したバタフライ式であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記温風側エアミックスダンパの回動可能範囲が、前記冷風側エアミックスダンパの回動可能範囲よりも小さく設定されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
流路を有した空調ケースと、該空調ケース内において上流側に配置され空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記空調ケース内において前記冷却用熱交換器よりも下流側に配置され前記空気を加熱する加熱用熱交換器と、前記加熱用熱交換器によって加熱される温風と該加熱用熱交換器をバイパスする冷風との混合割合を調整して、車室内への前記空気の送風温度を調整する温度調整手段と、前記温度調整手段により温度調整された前記空気を乗員の顔側へと送風するベント送風口と、前記温度調整手段により温度調整された前記空気を前記乗員の足元側へと送風するフット送風口とを備えた車両用空調装置の制御方法において、
前記温度調整手段を構成し前記加熱用熱交換器をバイパスする冷風通路の開度を調整する冷風側エアミックスダンパを全開状態から全閉に向けて回動させると同時に、前記加熱用熱交換器を通過する温風通路の開度を調整する温風側エアミックスダンパを全閉状態から全開に向けて回動させる工程と、
前記温風側エアミックスダンパの開度と前記冷風側エアミックスダンパの開度とが同一となった後、前記温風側エアミックスダンパを最大開度として維持する工程と、
前記温風側エアミックスダンパの開度を、前記冷風側エアミックスダンパの開度を下回らない範囲内で最小として維持する工程と、
前記温風側エアミックスダンパの開度を全開に向けて回動させる工程と、
を有することを特徴とする車両用空調装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置は、例えば、送風機の駆動作用下に空気を空調ケース内へと取り込み、冷却手段であるエバポレータにより冷却された空気と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された空気とをエアミックスダンパを駆動させることで所望の混合比率で混合した後、例えば、前記空調ケースに設けられた複数の送風口から車室内へと送風している。
【0003】
このような車両用空調装置では、例えば、特許文献1に開示されるように、エアミックスドアがエバポレータとヒータコアとの間に配置され、ヒータコアの下流側となる温風通路と該ヒータコアをバイパスするバイパス通路に亘ってスライド自在に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−88629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような車両用空調装置では、車室内における乗員の顔及び足元近傍に送風を行うバイレベルモードが選択された場合、ベント送風口から冷風を送風することで乗員の顔近傍を冷やしつつ、フット送風口から温風を送風することで乗員の足元近傍を温めることが行われているが、乗員の快適性を高める目的で冷風と温風の温度差を拡大させたいという要請がある。
【0006】
そこで、特許文献1に係る車両用空調装置において、例えば、空調ケース内に整流リブを追加し冷風と温風とを強制的に分流させることで、それぞれベント送風口及びフット送風口へと導くことが考えられるが、その場合、整流リブによって空調ケース内の流路構造が複雑となる上に、前記整流リブの分だけ重量が増加してしまうという問題がある。さらに、整流リブを設けることで通風抵抗が増加し風量の低下や騒音の増加等の他の性能へ影響を及ぼす可能性が高く、これらの影響を考慮すると冷風と温風との温度差の拡大を図ることが難しい。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、簡素な構成で冷風と温風との温度差を拡大させることで車室内の快適性を高めることが可能な車両用空調装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、流路を有した空調ケースと、空調ケース内において上流側に配置され空気を冷却する冷却用熱交換器と、空調ケース内において冷却用熱交換器よりも下流側に配置され空気を加熱する加熱用熱交換器と、加熱用熱交換器によって加熱される温風と加熱用熱交換器をバイパスする冷風との混合割合を調整し、車室内への空気の送風温度を調整する温度調整手段と、温度調整手段により温度調整された空気を乗員の顔側へと送風するベント送風口と、温度調整手段により温度調整された空気を乗員の足元側へと送風するフット送風口とを備える車両用空調装置において、
温度調整手段は、空調ケースに回動自在に設けられ、加熱用熱交換器をバイパスする冷風通路の開度を調整する冷風側エアミックスダンパと、
空調ケースに回動自在に設けられ、加熱用熱交換器を通過する温風通路の開度を調整する温風側エアミックスダンパと、
を備え、
冷風側エアミックスダンパが全開状態から回動し、温風側エアミックスダンパが全閉状態から回動し、冷風側エアミックスダンパの開度と同一開度になった後、温風側エアミックスダンパの開度が最大となり、且つ、冷風側エアミックスダンパの開度を下回らない範囲内で開度を最小とすることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、車両用空調装置において加熱用熱交換器によって加熱される温風と加熱用熱交換器をバイパスする冷風との混合割合を調整して、車室内への空気の送風温度を調整する温度調整手段が設けられ、この温度調整手段が、加熱用熱交換器をバイパスする冷風通路の開度を調整する冷風側エアミックスダンパと、加熱用熱交換器を通過する温風通路の開度を調整する温風側エアミックスダンパとから構成される。
【0010】
そして、冷風側エアミックスダンパを全開状態から回動させ、温風側エアミックスダンパを全閉状態から回動させ、冷風側エアミックスダンパの開度と同一開度になった後、温風側エアミックスダンパの開度を最大とし、且つ、冷風側エアミックスダンパの開度を下回らない範囲内で開度を最小とする。
【0011】
これにより、冷風と温風との温度差を拡大させたい領域において、温風側エアミックスダンパを最大開度として維持することで、整流リブを設けた場合に懸念される流路の複雑化や重量増加を招くことなく、簡素な構成でベント送風口から送風される冷風とフット送風口から送風される温風との温度差を拡大させることが可能となり、冷風と温風とを同時に車室内へと送風する際における車室内の快適性を高めることができる。
【0012】
また、冷風側エアミックスダンパ及び温風側エアミックスダンパを、空調ケースに軸支される回転軸と、該回転軸を中心として互いに離間する方向に延在した一組のドア部とを有したバタフライ式とすることにより、温風側エアミックスダンパの開度が全閉から全開までの間となる回動可能範囲が大きくなった場合でも、例えば、ドア部の端部に軸部を有した片持ち式のダンパ等と比較し、全開付近の開度差による風量への影響が少ないので、冷風と温風とを混合させ温度調整を行う際の温度コントロール性への影響が抑制される。
【0013】
さらに、温風側エアミックスダンパの回動可能範囲を、冷風側エアミックスダンパの回動可能範囲よりも小さく設定することにより、両者の開度差が大きな場合であっても、該開度差による風量への影響が抑制され、温度コントロール性の向上を図ることができる。
【0014】
さらにまた、本発明は、流路を有した空調ケースと、空調ケース内において上流側に配置され空気を冷却する冷却用熱交換器と、空調ケース内において冷却用熱交換器よりも下流側に配置され空気を加熱する加熱用熱交換器と、加熱用熱交換器によって加熱される温風と加熱用熱交換器をバイパスする冷風との混合割合を調整し、車室内への空気の送風温度を調整する温度調整手段と、温度調整手段により温度調整された空気を乗員の顔側へと送風するベント送風口と、温度調整手段により温度調整された空気を乗員の足元側へと送風するフット送風口とを備えた車両用空調装置の制御方法において、
温度調整手段を構成し加熱用熱交換器をバイパスする冷風通路の開度を調整する冷風側エアミックスダンパを全開状態から全閉に向けて回動させると同時に、加熱用熱交換器を通過する温風通路の開度を調整する温風側エアミックスダンパを全閉状態から全開に向けて回動させる工程と、
温風側エアミックスダンパの開度と冷風側エアミックスダンパの開度とが同一になった後、温風側エアミックスダンパを最大開度として維持する工程と、
温風側エアミックスダンパの開度を、冷風側エアミックスダンパの開度を下回らない範囲内で最小として維持する工程と、
温風側エアミックスダンパの開度を全開に向けて回動させる工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0016】
すなわち、車両用空調装置において冷風と温風との混合割合を調整する温度調整手段が、加熱用熱交換器をバイパスする冷風通路の開度を調整する冷風側エアミックスダンパと、加熱用熱交換器を通過する温風通路の開度を調整する温風側エアミックスダンパとからなり、冷風側エアミックスダンパを全開状態から回動させ、温風側エアミックスダンパを全閉状態から回動させ、冷風側エアミックスダンパの開度と同一開度になった後、温風側エアミックスダンパの開度を最大とし、且つ、冷風側エアミックスダンパの開度を下回らない範囲内で開度を最小とする。
【0017】
その結果、冷風と温風との温度差を拡大させたい領域において、温風側エアミックスダンパを最大開度として維持することで、整流リブを設けた場合に懸念される流路の複雑化や重量増加を招くことなく、簡素な構成でベント送風口から送風される冷風とフット送風口から送風される温風との温度差を拡大させることができ、冷風と温風とが同時に送風されるバイレベルモード時における車室内の快適性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の全体断面図である。
図2図1の車両用空調装置の運転時における第1及び第2エアミックスダンパの開度と冷風及び温風の混合割合との関係を示す特性曲線図である。
図3図2の特性曲線に対応し、冷風及び温風の混合割合とベント送風口及びフット送風口からの冷風温度及び温風温度との関係を示す特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る車両用空調装置及びその制御方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。なお、以下の説明では、図1に示される車両用空調装置10の左側(矢印A方向)を車両の前方側とし、右側(矢印B方向)を該車両の後方側として説明する。
【0020】
この車両用空調装置は、図1に示されるように、空気の各通路を構成する空調ケース12と、該空調ケース12の内部に配設される送風機14と、前記空気を冷却するエバポレータ(冷却用熱交換器)16と、該空気を加熱するヒータコア(加熱用熱交換器)18と、前記各通路内を流通する空気の流れを切り替えるダンパ機構20とを含む。
【0021】
空調ケース12は、例えば、略対称形状の第1及び第2分割ケース22、24から構成され、前記第1及び第2分割ケース22、24は車両の前後方向(矢印A、B方向)と直交する幅方向に分割可能に設けられる。
【0022】
また、空調ケース12の上方(矢印C1方向)には、乗員の顔近傍に送風を行うベント送風口26と、該ベント送風口26と隣接して車両のフロントウィンドウ近傍に送風を行うデフロスタ送風口28とが開口している。なお、ベント送風口26が車両後方側(矢印B方向)、デフロスタ送風口28が車両前方側(矢印A方向)となるように隣接して形成される。
【0023】
一方、空調ケース12の内部には、上方となる位置に送風機14が収納され、該送風機14の軸方向が空調ケース12の幅方向と略平行となるように配置される。この送風機14は、例えば、モータ等の通電作用下に回転するファン30を有している。
【0024】
そして、空調ケース12には、送風機14の外周側を取り巻くように螺旋状の送風通路32が形成され、該送風通路32は第1分割ケース22側から見て前記送風機14の下方(矢印C2方向)から時計回りに形成され、通路断面積が徐々に大きくなりながら車両前方側から車両後方側(矢印B方向)に向かって延在している。この送風通路32の下方(矢印C2方向)に開口した端部にはノーズ部34が形成され、前記ノーズ部34は送風通路32の外周面から下方へと突出して空調ケース12の車両後方側(矢印B方向)に形成された第1通路36と連通している。
【0025】
エバポレータ16は、例えば、送風機14の下方(矢印C2方向)に直立するように設けられ、図示しない複数のチューブを通じて冷媒が循環されている。そして、エバポレータ16には、チューブの間に設けられたフィン(図示せず)に上流側(第1通路36側)からの空気が通過することで、該空気と前記冷媒との熱交換がなされ、冷却された空気(冷風)がエバポレータ16の下流側へと供給される。
【0026】
空調ケース12におけるエバポレータ16の下流側には、ヒータコア18側に向かって延在する第2通路38が設けられ、該第2通路38にはダンパ機構20を構成する第1エアミックスダンパ(温風側エアミックスダンパ)46が設けられると共に、車両前方側(矢印A方向)となる第2通路38の下流側にはヒータコア18が設けられる。
【0027】
また、エバポレータ16の下流側において、第2通路38の上方(矢印C1方向)には、ベント送風口26及びデフロスタ送風口28まで湾曲しながら延在する第3通路40が形成される。すなわち、第2通路38は、その約半分がヒータコア18に臨み、残りの半分が第3通路40と連通するように形成されており、前記第2通路38とヒータコア18又は第3通路40との連通状態を第1エアミックスダンパ46によって切り替えている。
【0028】
ヒータコア18は、第2通路38を挟んでエバポレータ16と略平行に設けられ、図示しない複数のチューブを通じて温水が循環されており、前記チューブの間に設けられたフィンに空気が通過することで、該空気と前記温水との熱交換がなされ、加熱された空気(温風)がヒータコア18の下流側に形成された第4通路42へと流通する。
【0029】
この第4通路42は、ヒータコア18の下流側において上方(矢印C1方向)に向かって延在し、空調ケース12の側面に開口したフット送風口44と連通可能に形成されると共に、第3通路40との合流部にはダンパ機構20を構成する第2エアミックスダンパ(冷風側エアミックスダンパ)48が設けられる。
【0030】
ダンパ機構20は、エバポレータ16とヒータコア18との間の第2通路38に回動自在に設けられる第1エアミックスダンパ46と、ヒータコア18の下流側となる第4通路42と第3通路40との合流部に設けられる第2エアミックスダンパ48と、ベント送風口26及びデフロスタ送風口28の送風状態を切り替える第1切替ダンパ50と、第4通路42からフット送風口44への送風状態を調整する第2切替ダンパ52とを有する。
【0031】
第1エアミックスダンパ46は、例えば、略長方形で板状に形成された一組のドア部54a、54bと、一方のドア部54aと他方のドア部54bとの間に設けられる回転軸56とを有したバタフライ構造であり、前記回転軸56の両端部が第1及び第2分割ケース22、24の側壁に軸支されることで第1エアミックスダンパ46が回転自在に支持される。
【0032】
そして、第1エアミックスダンパ46は、第2通路38に形成された壁部12aに当接した全閉状態から回転軸56を中心として時計回りに所定角度だけ回動自在に設けられ、前記全閉状態では第2通路38を通じた冷風のヒータコア18側への流通を遮断し、該全閉状態から開方向(時計回り)へと回動することで前記冷風が前記ヒータコア18側へと供給される。
【0033】
第2エアミックスダンパ48は、第1エアミックスダンパ46と同様に、例えば、略長方形で板状に形成された一組のドア部58a、58bと、一方のドア部58aと他方のドア部58bとの間に設けられる回転軸60とを有したバタフライ構造であり、前記回転軸60の両端部が第1及び第2分割ケース22、24の側壁に軸支されることで回転自在に支持される。
【0034】
そして、第2エアミックスダンパ48は、第3及び第4通路40、42にそれぞれ形成された壁部12bに当接した全閉状態から回転軸60を中心として時計回りに所定角度だけ回動自在に設けられ、前記全閉状態では第2通路38から第3通路40への冷風の流通を遮断し、且つ、ヒータコア18を通過した温風を第4通路42へ流通させる。一方、上述した全閉状態から開方向(時計回り)へと回動することで第2通路38と第3通路40とが連通し、冷風が第3通路40を通じてベント送風口26側へと供給される。
【0035】
また、第1エアミックスダンパ46の回動可能範囲(角度)θ1は、第2エアミックスダンパ48の回動可能範囲(角度)θ2よりも小さくなるように設定されている(θ1<θ2)。
【0036】
第1及び第2切替ダンパ50、52は、空調ケース12に軸支される軸部62a、62bと、該軸部62a、62bに対して外周方向へ延在したドア部64a、64bとからなる片持ち構造であり、前記第1切替ダンパ50は、ベント送風口26とデフロスタ送風口28との間に軸部62aが軸支され、図示しないアクチュエータの駆動作用下に軸部62aを中心として所定角度だけ回動することで、ベント送風口26及びデフロスタ送風口28のいずれか一方を選択的に閉塞する。また、第2切替ダンパ52は、フット送風口44の上方に軸部62bが軸支され、その回動作用下に前記フット送風口44と第4通路42との連通状態を切り替えている。
【0037】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0038】
先ず、車室内の室温を低下させる冷房運転を行う場合について説明する。図示しない乗員が車室内において操作レバーを操作して冷房運転を選択することで、該操作レバーの操作に応じて図示しないアクチュエータが駆動し、図1に示されるように、第1エアミックスダンパ46が壁部12aに当接した全閉状態となると共に、第2エアミックスダンパ48が全開状態となる。これにより、空調ケース12内において第2通路38と第3通路40とが連通し、前記第2通路38とヒータコア18との連通が遮断された状態となる。
【0039】
また、同時に、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、送風機14のファン30が回転することにより、空調ケース12内へと吸い込まれた空気が送風通路32に沿って旋回するように下方へと流通した後、第1通路36を経てエバポレータ16を通過することで熱交換され所定温度に冷却される。
【0040】
そして、冷却された空気は、第2通路38から第3通路40へと上方(矢印C1方向)に向かって流通した後、第1切替ダンパ50の切替作用下に開口しているベント送風口26を通じて車室内へと供給される。
【0041】
次に、ベント送風口26から乗員の顏近傍へ冷風を送風すると同時に、フット送風口44から前記乗員の足元近傍へと温風を送風するバイレベルモードで運転する場合について図1図3を参照しながら説明する。なお、図2の特性曲線図は、第1及び第2エアミックスダンパ46、48の開度と冷風及び温風の混合割合とを示すものであり、第1エアミックスダンパ46の開度をL1(太い実線)、第2エアミックスダンパ48の開度をL2(細い実線)とすると共に、最も左側が温風の全く混合されていない冷風のみの状態を混合割合0%とし、冷風が全く混合されていない温風のみの状態を混合割合100%としている。
【0042】
すなわち、図2の特性曲線図では、その左端から右側に向かって第1エアミックスダンパ46及び第2エアミックスダンパ48のそれぞれの開度範囲に対する開度割合及び閉度割合を変化させることで徐々に温風の混合割合が増加していく。
【0043】
先ず、第1エアミックスダンパ46を全閉状態から徐々に時計回りに回動させていくことで徐々に開き始めると同時に、第2エアミックスダンパ48を全開状態から徐々に反時計回りに回動させていくことで閉じ始める。
【0044】
すなわち、図2から諒解されるように、第1エアミックスダンパ46の開度L1が徐々に大きくなり始め、反対に、第2エアミックスダンパ48の開度L2が徐々に小さくなっていく。
【0045】
そして、図2に示されるように、第1エアミックスダンパ46と第2エアミックスダンパ48の開度L1、L2が略同一となった時点から、前記第2エアミックスダンパ48を継続的に閉方向となる反時計回りに回動させていく一方、前記第1エアミックスダンパ46を開方向へと所定角度だけ回動させた後、その回動動作を停止させ開度L1を略一定で維持する。
【0046】
また、第1エアミックスダンパ46の開度L1は略一定で維持された後に、若干だけ小さくなるように閉方向へと回動動作させ、再び略一定の開度L1で維持する。なお、この間にも第2エアミックスダンパ48は、略一定の割合で閉動作し続けている。
【0047】
これにより、第2エアミックスダンパ48が連続的に閉じていく一方、第1エアミックスダンパ46の開度L1が回動可能範囲(θ1)の略中央近傍で維持することで、第2通路38内の冷風を第3通路40側とヒータコア18側へと好適に分流させることができる。その結果、図3から諒解されるように、第2通路38からヒータコア18を通過して第4通路42からフット送風口44へ送風される温風の温風温度T2を、上述した第1エアミックスダンパ46の制御を行わずに連続的に開動作させた場合の温風温度T2´(図3中、破線参照)と比較してより高くすることができるため、それに伴って、第2通路38から第3通路40を通じてベント送風口26へと送風される冷風の冷風温度T1と温度差(T2−T1)が好適に拡大される。
【0048】
また、この際、車両用空調装置10の冷風温度T1に対して、さらに温度を下げた冷風温度T1´(図3中、破線参照)とすることで、温風温度T2との温度差をさらに拡大することが可能となる。
【0049】
最後に、車室内における乗員の足元近傍へ温風を送風する暖房運転を行う場合には、図示しない操作レバーの操作に伴って第1エアミックスダンパ46が全開状態となり、第2通路38とヒータコア18とが連通した状態となると共に、第2エアミックスダンパ48が反時計回りに回動して壁部12bに当接することで、第2通路38と第3通路40との連通が遮断された全閉状態となる。
【0050】
そして、送風機14から送風されエバポレータ16を通過することで冷却された空気は、第2通路38からヒータコア18を通過することで所定温度に加熱され、第4通路42を通じて第2切替ダンパ52によって開放されたフット送風口44から車室内へと供給される。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、車両用空調装置10を構成する空調ケース12の内部において、エバポレータ16とヒータコア18との間となる第2通路38に第1エアミックスダンパ46を設け、前記ヒータコア18の下流側となる第4通路42と該ヒータコア18をバイパスする第3通路40との合流部に第2エアミックスダンパ48を設け、冷風の冷風温度T1と温風の温風温度T2との温度差を拡大させたい領域(冷風と温風とが同時に供給されるバイレベルモード)において、第1エアミックスダンパ46が最大開度とした後、前記第2エアミックスダンパ48の開度を下回らない範囲で最小開度となるように制御する。
【0052】
これにより、空調ケース12内に冷風と温風とを整流するための整流リブを設けた場合に懸念される流路の複雑化や重量増加を招くことなく、簡素な構成でベント送風口26から送風される冷風とフット送風口44から送風される温風との温度差を拡大させることが可能となり、冷風と温風とが同時に送風されるバイレベルモード時における車室内の快適性を高めることができる。
【0053】
また、第1及び第2エアミックスダンパ46、48を、中央に回転軸56、60を有したバタフライ式のダンパとすることで、前記第1エアミックスダンパ46の開度L1が全閉から全開までの間となる回動可能範囲θ1が大きくなった場合でも、例えば、ドア部の端部に軸部を有した片持ち式のダンパ等と比較し、全開付近の開度差による風量への影響が少ないので、冷風と温風とを混合させ温度調整を行う際の温度コントロール性への影響が抑制される。
【0054】
さらに、第1エアミックスダンパ46の回動可能範囲θ1が、第2エアミックスダンパ48の回動可能範囲θ2よりも小さく設定されているため、両者の開度差が大きな場合であっても、該開度差による風量への影響が抑制され、温度コントロール性の向上を図ることができる。
【0055】
なお、本発明に係る車両用空調装置及びその制御方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0056】
10…車両用空調装置 12…空調ケース
14…送風機 16…エバポレータ
18…ヒータコア 20…ダンパ機構
26…ベント送風口 28…デフロスタ送風口
44…フット送風口 46…第1エアミックスダンパ
48…第2エアミックスダンパ 50…第1切替ダンパ
52…第2切替ダンパ
図1
図2
図3