【実施例1】
【0010】
まず、従来例について説明する。
図1は、従来例における硬貨識別装置の外観斜視図である。
図1に示すように、従来の硬貨識別装置では、搬送路Tを搬送される硬貨等の媒体を撮像するカメラユニットCと、カメラユニットCを含む硬貨識別装置の上部機構X1と硬貨識別装置の下部機構X2との開閉をロックするロック機構Lと、ロック機構Lの開閉状態を検知するための開閉センサSとを有している。カメラユニットCは、搬送路Tの搬送面上を搬送される上記媒体を撮像するためのレンズ部Pを有している。また、開閉センサSは、例えば、ロック機構Lによる遮光を検知する遮光センサである。
【0011】
上記硬貨識別装置では、搬送路T上に滞留している硬貨や異物等を除去したり、あるいはカメラユニットCのレンズ部Pのガラス面の汚れを除去する場合がある。そのために、
図2に示すように、軸X11を支点としてA方向に上記機構X1を開ける必要がある。このとき、ロック機構Lが引っ掛け部X21から外される。このとき、センサSは、ロック機構Lにより遮光されなくなるため、上部機構X1が買い状態となったことを検知することができる。しかし、上部機構X1の開閉を検知するためだけにセンサSを設けなければならず、設置スペースの確保やコストアップ、部品点数が増えることによる不具合発生率が上昇してしまう。
【0012】
そこで、本実施例では、硬貨識別装置を
図2に示すような構成としている。すなわち、本実施例における硬貨識別装置101は、搬送路Tを搬送される硬貨等の媒体を撮像するカメラユニット103と、カメラユニット103を含む硬貨識別装置101の上部機構1011と硬貨識別装置101の下部機構1012との開閉をロックするロック機構102とを有している。従来例において設けられていた開閉センサSは設けられていない。なお、カメラユニット103は、搬送路Tの搬送面上を搬送される上記媒体を撮像するためのレンズ部1031と、カメラユニット103の動作を制御するICチップである制御部1032とを有している。
図2に示すように、下部機構1012には硬貨を搬送する搬送路Tが設けられる一方、上部機構1011にはカメラユニット103が設けられ、下部機構1012と開閉可能に連結されている。後述するように、制御部1032は、ATM(Automated Teller Machine)等の上位装置から受けた硬貨識別装置の開閉状態を確認する指示にしたがって、カメラユニット103のゲインを上げて画像を撮像し、得られた撮像画像に搬送路Tの搬送路ガイドGが含まれているか否かを判定することにより、硬貨識別装置の開閉状態を判別している。
【0013】
図4は、本実施例における硬貨識別装置101のカメラユニット103が上記媒体を撮像するときの例を示す図である。
図4の左部に示すように、硬貨等の媒体Aをカメラユニット103で撮像した場合には、カメラ撮像範囲Rにある媒体A及び搬送路T、搬送路Tを搬送される上記媒体Aを搬送先に案内する搬送路ガイドGを撮像したことになる。しかし、
図4の右部に示すように、そのときのカメラ撮像画像Iでは、搬送路ガイドGが搬送路Tと区別されずに上記媒体Aのみが撮像される状態となっている。制御部1032は、この画像を使用して媒体Aを識別している。この点については、従来装置においても同様である。
【0014】
従来装置において、硬貨等の媒体Aがない状態で、カメラユニット103で撮像した場合には、
図5の様にカメラ撮像範囲Rにある搬送路T及び搬送路ガイドGを撮像したことになる。しかしが、カメラ撮像画像Iの様に、何も写らない状態となる。すなわち、上記媒体Aが搬送路T上を搬送されていない状態では、カメラ撮像画像には搬送路ガイドGとハンストTとが区別されず、一様に暗いカメラ撮像画像が得られる。
【0015】
このことは、
図6に示す様に、上部機構X1を開状態にしたときのカメラ撮像画像である開時カメラ撮像画像I1及び上部機構X1を閉状態にしたときのカメラ撮像画像である閉時カメラ撮像画像I2のいずれの場合においても同様であり、カメラ撮像画像には、搬送路T、搬送路ガイドGのそれぞれを区別して撮像することができていない。したがって、上部機構X1が開状態であるのか、閉状態であるのかを検知することができない。
【0016】
しかし、本実施例では、上部機構X1の開閉状態を確認する時のみ、制御部1032が、カメラユニットCが有するアナログアンプまたはデジタルアンプの設定値を変更してカメラユニットCのゲインを上げることにより、搬送路Tと搬送路ガイドGとを判別可能なカメラ撮像画像を得ることができるようになっている。具体的には、制御部1032は、ATM等の上位装置から、硬貨識別装置101の開閉状態(例えば、上部機構X1が閉状態となっていること)を確認する処理を実行する指示を受けた場合に、カメラユニットCのゲインを上げて撮像し、得られたカメラ撮像画像に搬送路ガイドGが含まれているか否かを判定することにより、硬貨識別装置が開状態にあるか、または閉状態にあるかを判別する。
【0017】
アナログアンプの場合にはゲインをアナログ値により細やかに上げることができる一方、デジタルアンプの場合にはゲインをデジタル値により粗く上げることができる。硬貨識別装置が設置されている環境(例えば、上位装置であるATMの装置内の明るさ)や硬貨識別装置内の環境(例えば、上部機構を閉じたときの明るさ)に応じて、適宜切り替えるようにしてもよい。
【0018】
上記ゲインを上げる程度については、あらかじめ上部機構X1を閉状態としたときに、搬送路ガイドGが搬送路Tと判別可能となるように定めればよい。搬送路ガイドGと搬送路Tとを判別可能とするためには、例えば、
図7に示すように、カメラ撮像画像上において、搬送路Tと区別可能な程度の搬送路ガイドGのエッジ部である搬送路ガイドエッジEの陰影が得ることができればよい。
【0019】
制御部1032が上記のような制御を行ってカメラ撮像範囲Rにあるが暗くて写らない搬送路T及び搬送路ガイドGを判別可能な程度に写すことで、
図7の左部に示す様に、上部機構X1が閉状態にあるときには、閉時カメラ撮像画像I11には、搬送路Tは灰色に写り、搬送路ガイドGは、搬送路ガイドエッジEが黒く影として撮像される。また、上部機構X1が開状態にあるときには、
図7の右部に示す様に、開時カメラ撮像画像I21の様に、搬送路T及び搬送路ガイドGが区別されずに撮像されるので、何も写っておらずカメラ撮像画像から開閉状態を検知することが可能となる。したがって、従来装置のように、硬貨識別装置に専用の開閉検知センサを搭載することなく、硬貨識別装置の開閉状態を検知することができる。なお、
図7の右部では、上部機構X1に備えられたカメラユニットCの光が搬送路Tの搬送面に届かない程度に上部機構X1が開状態となっている場合を示している。
【0020】
また、上部機構Xが完全に閉状態となっていない場合には、
図8に示す様に、上部機構X1を非完全閉状態にしたときのカメラ撮像画像である非閉時カメラ撮像画像I11’に写る搬送路ガイドG’は、搬送路ガイドエッジE’が、互いに平行ではなく、斜めに黒く影が撮像される為、完全に閉じていないことも検知することができる。
図8に示した例では、図面に向かって左側に設けられた軸X11を支点として上部機構X1が非完全閉状態となっているため、カメラユニットCの光軸が、撮像面である搬送路Tの搬送面に垂直になっておらず、軸X11とは反対側の図面に向かって右側に、2つの搬送路ガイドエッジE’が平行ではなく、やや開いていることがわかる。
図7、8に示したように、制御部1032は、カメラ撮像画像を解析し、2つの搬送路ガイドエッジが平行となっているか否かを判定し、両者が平行になっていると判定した場合には上部機構X1は閉状態にあることを検知する一方、両者が平行になっていないと判定した場合には上部機構X1は非完全閉状態にあることを検知することができる。また、制御部1032は、カメラ撮像画像を解析し、2つの搬送路ガイドエッジの陰影が含まれているか否かを判定し、2つの搬送路ガイドエッジの陰影が含まれていないと判定した場合には上部機構X1は開状態にあることを検知することができる。
【実施例2】
【0021】
本実施例では、硬貨識別装置の開閉状態を確認する時のみ、撮像時にカメラユニットCに設けられた光源の点灯時間を長くすることにより、光量を増やして撮像範囲を明るくすることにより、カメラ撮像範囲Rにあるが暗くて写らない搬送路T及び搬送路ガイドGを写るようにすることで、
図7に示した様に、閉時カメラ撮像画像I11には、搬送路Tは灰色に写り、搬送路ガイドGの搬送路ガイドエッジEが黒く影として撮像される。
同様に、開時カメラ撮像画像I21や、非閉時カメラ撮像画像I11’を得ることができる。
【0022】
このように、実施例1、実施例2では、硬貨識別装置の開閉有無のチェックを、開閉検知又はチルト検知センサを専用に搭載せず、カメラ画像を用いて判定するので、従来に比べて部品点数を多くすることなく、また、不具合発生率を上昇させることなくコストを抑制することができる。具体的には、開閉状態確認を行うときにのみ、カメラユニットに備えられたアナログアンプまたはデジタルアンプの設定値を変更してカメラのゲインをアップし、または撮像時に光源点灯時間を長くして光量を増やすことにより、暗くて写らない媒体搬送路及び媒体搬送路ガイドを写したカメラ撮像画像を得て、その画像を解析し、硬貨識別装置の開閉状態を確認することができる。
【0023】
なお、上記実施例1における効果識別装置および実施例2における硬貨識別装置の一部または全部の構成を適宜組み合わせて実施してもよい。例えば、実施例1における制御部の制御方法(カメラユニットのゲインを上げる制御)と、実施例2における制御部の制御方法(光源の点灯時間を長くする制御)とを、硬貨識別装置が設置されている環境(例えば、上位装置であるATMの装置内の明るさ)や硬貨識別装置内の環境(例えば、上部機構を閉じたときの明るさ)に応じて、適宜切り替えたり、これらを組み合わせてもよい。