(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物が、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する第一の電子供与性化合物であり、さらに前記オレフィン類重合用固体触媒成分が、電子供与性化合物として、フタル酸エステル構造およびジエーテル構造を有さず、エステル基、エーテル基、カーボネート基、アミノ基から選ばれる電子供与性基を二個以上有する、第二の電子供与性化合物を含む請求項1に記載のオレフィン類重合触媒の製造方法。
前記フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物が、フタル酸エステル構造を有さず1,3−ジエーテル構造を有する第一の電子供与性化合物であり、さらに前記オレフィン類重合用固体触媒成分が、電子供与性化合物として、フタル酸エステル構造およびジエーテル構造を有さず、エステル基、エーテル基、カーボネート基、アミノ基から選ばれる電子供与性基を二個以上有する、第二の電子供与性化合物を含む請求項1に記載のオレフィン類重合触媒の製造方法。
前記第一の電子供与性化合物が、2,2−ジアルキル−1,3−ジアルコキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる1種以上である請求項2に記載のオレフィン類重合触媒の製造方法。
前記第一の電子供与性化合物が、2,2−ジアルキル−1,3−ジアルコキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる1種以上である請求項3に記載のオレフィン類重合触媒の製造方法。
前記オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物を、不活性有機溶媒中で、0.1g/L以上の触媒濃度条件下、50℃以下の温度雰囲気で1分間以上接触させる請求項1に記載のオレフィン類重合触媒の製造方法。
前記ビニルシラン化合物の使用量が、前記固体触媒成分中に含まれるチタンハロゲン化合物のチタン原子換算したモル量に対し、0.1〜15倍のモル量である請求項1に記載のオレフィン類重合触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法は、不活性ガス雰囲気下、マグネシウム化合物およびチタンハロゲン化合物を含むとともに、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物を含むオレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物、および有機アルミニウム化合物を、下記一般式(I)
CH
2=CH−R
1 (I)
(ただし、R
1は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素残基である)で表される化合物の不存在下、不活性有機溶媒中で接触させる工程を有し、
前記ビニルシラン化合物を反応系内に加えた後、洗浄処理を施さない
ことを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分を構成するマグネシウム化合物としては、特に制限されず、公知の物を用いることができる。
例えば、マグネシウム化合物としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0017】
これらマグネシウム化合物の中、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的にはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。
また、上記ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲン含有有機金属等の存在下にアルコールと反応させて得たものであってもよい。
【0018】
さらに、上記ジアルコキシマグネシウムとしては、顆粒状または粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものであってもよい。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ易く、重合操作時の生成重合体粉末の取り扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する重合体の分離装置におけるフィルターの閉塞等の問題を容易に解決することができる。
【0019】
また、球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものであってもよい。具体的には、粒子形状が、長軸径Lと短軸径Wとの比(L/W)が3以下であるものが好ましく、1〜2であるものがより好ましく、1〜1.5であるものがさらに好ましい。
【0020】
さらに、上記ジアルコキシマグネシウムは、平均粒径が1〜200μmのものが好ましく、5〜150μmのものがより好ましい。
上記ジアルコキシマグネシウムが球状のものである場合、その平均粒径は1〜100μmが好ましく、5〜80μmがより好ましく、10〜60μmがさらに好ましい。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの粒度は、微粉及び粗粉が少なく、かつ粒度分布の狭いものが好ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であるものが好ましく、5μm以下の粒子が10%以下であるものがより好ましい。一方、100μm以上の粒子が10%以下であるものが好ましく、100μm以上の粒子が5%以下であるものがより好ましい。
更にその粒度分布をD90/D10(ここで、D90は体積積算粒度で90%における粒径、D10は体積積算粒度で10%における粒度である。)で表すと3以下であるものが好ましく、2以下であるものがより好ましい。
【0021】
なお、上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムを製造する方法は、例えば、特開昭58−4132号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報等に例示されている。
なお、上記ジアルコキシマグネシウムは、単独で、あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0022】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分を構成するチタンハロゲン化合物としては、特に制限されず、公知の物を用いることができる。
例えば、チタンハロゲン化合物としては、特に制限されないが、一般式Ti(OR
2)
iX
4−i(式中、R
2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、iは0以上4以下の整数である。)で表されるチタンテトラハライドおよびアルコキシチタンハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
チタンハライドとしては、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが例示され、アルコキシチタンハライドとしては、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。
上記のうち、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
【0023】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物としては、特に制限されない。
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物としては、以下に示すフタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する第一の電子供与性化合物(以下、適宜、成分(D1)と称する)を挙げることができる。
【0024】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する第一の電子供与性化合物(成分(D1))としては、ジエーテル、ジオールジエステル、ジオールジカーボネート、ジオールエーテル化合物が挙げられ、1,3−ジエーテル(1,3−ジエーテル構造を有する化合物)、酸素間の炭素数が2〜4のジオールジエステル、酸素間の炭素数が2〜4のジオールジカーボネート、酸素間の炭素数が2〜4のジオールエステルエーテル、酸素間の炭素数が2〜4のジオールエーテルカーボネートが、より好ましい。
【0025】
上記1,3−ジエーテルとしては、フルオレン構造を有するか、あるいは炭素数3〜7のアルキル基もしくはシクロアルキル基を二個有する構造が好ましく、具体的には、2,2−ジアルキル-1,3−ジアルコキシプロパン、2,2−ジシクロアルキル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロアルキルメチル) −1,3−ジメトキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれるいずれか一種以上を挙げることができ、上記の中でも、2-イソプロピル-2-イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上が好ましく、2,2−ジアルキル−1,3−ジアルコキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる1種以上であることがより好ましい。
上記酸素間の炭素数が2〜4のジオールジエステル、酸素間の炭素数が2〜4のジオールジカーボネート、酸素間の炭素数が2〜4のジオールエステルエーテル、酸素間の炭素数が2〜4のジオールエーテルカーボネートとして、具体的には、2,4−ペンタンジオールジベンゾエート、3−メチル−2,4−ペンタンジオール ジベンゾエート、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾエート、3,5−ジイソプロピル−1,2−フェニレンジベンゾエート、1,8−ナフチルジアリロエート、5−t−ブチル−1,2−フェニレンジフェニルジカーボネート、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−フェニレンジエチルカーボネート、2−エトキシエチルメチルカーボネート、2−エトキシエチルエチルカーボネート、2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネートから選ばれる一種以上が好ましく用いられる。
【0026】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、オレフィン類重合用固体触媒成分が、上記第一の電子供与性化合物(成分(D1))とともに、電子供与性化合物として、フタル酸エステル構造およびジエーテル構造を有さず、エステル基、エーテル基、カーボネート基、アミノ基から選ばれる電子供与性基を二個以上有する、第二の電子供与性化合物(以下、適宜、成分(D2)と称する)を含むものであることが好ましい。
成分(D2)は、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有するものであってもよく、この場合は、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物として、成分(D1)と併用してもよいし、成分(D1)に代えてオレフィン類重合用固体触媒成分を構成する電子供与性化合物として使用することができる。
【0027】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、フタル酸エステル構造およびジエーテル構造を有さず、エステル基、エーテル基、カーボネート基、アミノ基から選ばれる電子供与性基を二個以上有する第二の電子供与性化合物(成分(D2))としては、エステル基、エーテル基、カーボネート基、アミノ基から選ばれる電子供与性基を二個以上有し、第一の電子供与性化合物とは異なる構造を有するものが挙げられる。
【0028】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、成分(D2)がエステル基を有するものである場合、成分(D2)としては、1〜3個のエステル基を有する電子供与性化合物が好ましく、エステル基を2つ有するジカルボン酸ジエステル、エステル基を3つ以上有するポリカルボン酸ポリエステル、エステル基とアルコキシ基を其々一個ずつ有するエーテル−カルボン酸エステル、ポリオールエステルおよび、置換フェニレン芳香族ジエステル等から選ばれる一種以上であることがより好ましい。
【0029】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、成分(D2)がエステル基を有するものである場合、より具体的には、フタル酸エステル構造を有さない化合物のうち、ジカルボン酸ジエステル、エーテル−カルボン酸エステルおよびジオールエステルから選ばれる一種以上が好ましく、マレイン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、3−エトキシ−2−イソプロピルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ペンチルプロピオン酸エチル、2,4−ペンタンジオールジベンゾエート、3−メチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾエート、3,5−ジイソプロピル−1,2−フェニレンジベンゾエートから選ばれる一種以上がより好ましい。
【0030】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、成分(D2)がエーテル基を有するものである場合、ジエーテル構造を有さないものから適宜選定することができる。
【0031】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、成分(D2)がカーボネート基を有するものである場合、成分(D2)としては、1〜3個のカーボネート基を有する化合物が好ましく、カーボネート基とアルコキシ基を其々一個ずつ有するカーボネート−エーテル、カーボネート基とエステル基を其々一個ずつ有するカーボネート−エステル、またはカーボネート基とカルボキシル基を其々一個ずつ有する化合物、カーボネート基を二個有するジカーボネート、カーボネート基を3個以上有するポリカーボネート等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記カーボネート基を有する化合物の中でも、カーボネート−エーテル、カーボネート−エステルおよびジカーボネートが好ましく、2−エトキシエチルメチルカーボネート、2−エトキシエチルエチルカーボネート、2−プロポキシエチルメチルカーボネート、2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネート、5−t−ブチル−1,2−フェニレンジフェニルジカーボネートから選ばれる一種以上が挙げられる。
【0032】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物が、上記第一の電子供与性化合物(成分(D1))や、第二の電子供与性化合物(成分(D2))と共に、さらに、チタンハロゲン化合物と、後述するビニルシラン化合物、有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物とを接触させることにより、オレフィン類重合触媒として、重合時の触媒活性に優れるとともに、立体規則性、嵩密度に優れ、微粗粉の少ない重合体を製造し得るものを容易に製造することができる。
【0033】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分は、上記各成分の他、さらにポリシロキサンを含むものであってもよい。
ポリシロキサンを接触させることにより、得られるポリマーの立体規則性あるいは結晶性を容易に向上させることができ、さらには得られるポリマーの微粉を容易に低減することができる。
ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm
2/s(2〜1000センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘ちょう状の鎖状ポリシロキサン、部分水素化ポリシロキサン、環状ポリシロキサンあるいは変性ポリシロキサンを意味する。
【0034】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルキクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0035】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム化合物、チタンハロゲン化合物、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する第一の電子供与性化合物や、第二の電子供与性化合物および必要に応じて添加されるポリシロキサン等の成分を、不活性有機溶媒の存在下に接触させることによって調製してなるものであることが好ましい。
【0036】
上記不活性有機溶媒としては、チタンハロゲン化合物を溶解しかつマグネシウム化合物は溶解しないものが好ましく、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2‐ジエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン、ミネラルオイル等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等から選ばれる一種以上であることが好ましい。
また、上記不活性有機溶媒としては、沸点が50〜200℃程度の、常温で液状の飽和炭化水素化合物あるいは芳香族炭化水素化合物、具体的にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチルシクロヘキサン、ミネラルオイル、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれる一種以上であることがより好ましい。
【0037】
オレフィン類重合用固体触媒成分を調製する方法としては、例えば、マグネシウム化合物、第一の電子供与性化合物(成分(D1))および第二の電子供与性化合物(成分(D2))を、沸点50〜200℃の芳香族炭化水素化合物等からなる不活性有機溶媒に懸濁させて懸濁液を形成し、チタンハロゲン化合物および芳香族炭化水素化合物等からなる不活性有機溶媒から形成した混合溶液を上記懸濁液に接触させ、反応させる方法を挙げることができる。
【0038】
また、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製する方法としては、例えば、マグネシウム化合物を、チタンハロゲン化合物または芳香族炭化水素化合物等からなる不活性有機溶媒に懸濁させ、次いで第一の電子供与性化合物(成分(D1))および第二の電子供与性化合物(成分(D2))と、更に必要に応じてチタンハロゲン化合物を接触させ、反応させる調製方法を挙げることができる。
本調製方法においては、マグネシウム化合物として、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープなオレフィン類重合用固体触媒成分を容易に得ることができる。また、球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープなオレフィン類重合用固体触媒成分を得ることができる。
【0039】
マグネシウム化合物、チタンハロゲン化合物、第一の電子供与性化合物(成分(D1))および第二の電子供与性化合物(成分(D2))を接触させて固体触媒成分を調製する場合、各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
具体的には、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、攪拌機を具備した容器中で、各成分を攪拌しながら接触させることができる。
各成分を接触する温度は、単に接触させて攪拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましく、この場合、接触後に同温度で保持して反応させることが好ましい。
上記温度が40℃未満の場合は十分に反応が進行せず、結果として得られる固体触媒成分が十分な性能を発揮し難くなり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。
反応時間は1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間以上がさらに好ましい。
【0040】
オレフィン類重合用固体触媒成分を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため、適宜決定すればよい。
例えば、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製する際、マグネシウム化合物1モルあたり、チタンハロゲン化合物を、0.5〜100モル接触させることが好ましく、0.5〜10モル接触させることがより好ましく、1〜5モル接触させることがさらに好ましい。
また、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製する際、マグネシウム化合物1モルあたり、フタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する電子供与性化合物を0.01〜10モル接触させることが好ましく、0.01〜1モル接触させることがより好ましく、0.02〜0.6モル接触させることがさらに好ましい。
【0041】
また、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製する際、芳香族炭化水素化合物等の不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物1モルあたり、0.001〜500モルであることが好ましく、0.001〜70モルであることがより好ましく、0.005〜50モルであることがさらに好ましい。
【0042】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、オレフィン類重合用固体触媒成分と、ビニルシラン化合物と、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物と、有機アルミニウム化合物とを接触させる。
【0043】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、ビニルシラン化合物としては、下記一般式(II)
(CH
2=CH−)SiR
2R
3R
4 (II)
(ただし、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10の飽和炭化水素化合物、炭素数1〜10のハロゲン含有飽和炭化水素化合物、炭素数6〜20の芳香族炭化水素化合物、炭素数6〜20のハロゲン芳香族炭化水素化合物から選ばれる基であって、R
2、R
3およびR
4は互いに同一であっても異なっていてもよい)で表わされる化合物等を挙げることができる。
【0044】
上記一般式(II)で表される化合物において、R
2、R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10の飽和炭化水素化合物、炭素数1〜10のハロゲン含有飽和炭化水素化合物、炭素数6〜20の芳香族炭化水素化合物、炭素数6〜20のハロゲン芳香族炭化水素化合物から選ばれる基である。
【0045】
上記一般式(II)で表される化合物において、R
2、R
3およびR
4が、炭素数1〜10の飽和炭化水素化合物である場合、炭素数1〜5の飽和炭化水素化合物であることが好ましく、炭素数1〜2の飽和炭化水素化合物であることがより好ましい。
【0046】
上記一般式(II)で表される化合物において、R
2、R
3およびR
4が、炭素数1〜10のハロゲン含有飽和炭化水素化合物である場合、炭素数1〜5のハロゲン含有飽和炭化水素化合物であることが好ましく、炭素数1〜2のハロゲン含有飽和炭化水素化合物であることがより好ましい。
【0047】
上記一般式(II)で表される化合物において、R
2、R
3およびR
4が、炭素数6〜20の芳香族炭化水素化合物である場合、炭素数6〜10の芳香族炭化水素化合物であることが好ましく、炭素数6〜7の芳香族炭化水素化合物であることがより好ましい。
【0048】
上記一般式(II)で表される化合物において、R
2、R
3およびR
4が、炭素数6〜20のハロゲン芳香族炭化水素化合物である場合、炭素数6〜10のハロゲン芳香族炭化水素化合物であることが好ましく、炭素数6〜7のハロゲン芳香族炭化水素化合物であることがより好ましい。
【0049】
上記一般式(II)で表される化合物において、R
2、R
3およびR
4は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
このようなビニルシラン化合物として、具体的には、ビニルシラン、ビニルメチルシラン、ビニルジメチルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルクロロシラン、ビニルジエチルクロロシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルジエチルメチルシラン、ビニルジメチルフェニルシラン、ビニルベンジルジメチルシラン、ビニルジメチルクロロシラン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記の中でも好ましいものは、ビニルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ジビニルジメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジエチルシラン、トリビニルメチルシランビニルトリクロロシランであり、
ビニルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシランおよびビニルトリクロロシランが特に好ましい。
【0051】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、ビニルシラン化合物の使用量(接触量)は、上記オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるチタンハロゲン化合物のチタン原子換算したモル量に対し、0.1〜40倍のモル量であることが好ましく、0.5〜20倍のモル量であることがより好ましく、1〜15倍のモル量であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、ビニルシラン化合物の添加量が上記範囲内であることにより、オレフィン類重合用固体触媒成分がフタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含むものであるにも拘わらず、得られる重合触媒が、上記電子供与性化合物としてフタル酸エステルを使用した場合と同様に、立体規則性を高度に維持した重合物を高活性下に容易に作製することができる。
【0053】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、ビニルシラン化合物の存在下、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物をオレフィン類重合用固体触媒成分と接触させることにより、オレフィン類重合用固体触媒成分の表面又は内部への活性点形成を促し、ビニルシラン化合物のビニル基とTi活性点とが電子的な作用によって効果的に重合活性を向上させることができるとともに、上記ビニルシラン化合物のビニル基が上記固体触媒成分のTi活性点を保護し、有機アルミニウムによる過剰な反応を抑制することにより重合体粒子の凝集を抑制し、得られる重合体の立体規則性や嵩密度を高度に維持しながら上記重合体粒子の凝集物がほぐれる際に派生する重合体微粉化物の発生や重合体粉末の重合反応器への付着を効果的に低減することができる。
【0054】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物としても、特に制限されない。
ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(III)
R
5rSi(NR
6R
7)
s(OR
8)
4−(r+s) (III)
(式中、rは0または1〜2の整数、sは0または1〜2の整数、r+sは0または1〜4の整数、R
5、R
6又はR
7は水素原子または炭素数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、アリル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有していてもよく、互いに同一であっても異なっていてもよい。R
6とR
7は結合して環形状を形成していてもよく、R
5、R
6およびR
7は、同一であっても異なっていてもよい。また、R
8は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有してもよい。)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
一般式(III)で表される化合物において、R
5は、水素原子または炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、アリル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有していてもよい。
R
5としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましい。
【0056】
一般式(III)で表される化合物において、R
6またはR
7は、水素原子または炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、アリル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有していてもよい。
R
6またはR
7としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましい。
また、R
6とR
7が結合して環形状を形成していてもよく、この場合、環形状を形成する(NR
6R
7)は、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基が好ましい。
【0057】
一般式(III)で表される化合物において、R
5、R
6およびR
7は、同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
一般式(III)で表される化合物において、R
8は、炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有してもよい。
R
8としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0059】
このような有機ケイ素化合物として、具体的には、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)シラン、アルキルアミノシラン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0060】
一般式(III)におけるsが0の有機ケイ素化合物として、特に好ましくは、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランから選ばれる一種以上である。
【0061】
一般式(III)におけるsが1または2の有機ケイ素化合物としては、ジ(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、(アルキルアミノ)(シクロアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、(アルキルアミノ)(アルキル)ジアルコキシシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ビニル(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、アリル(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、(アルコキシアミノ)トリアルコキシシラン、(アルキルアミノ)トリアルコキシシラン、(シクロアルキルアミノ)トリアルコキシシラン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、特に好ましくは、エチル(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(t-ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等が挙げられ、中でも、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、またはジエチルアミノトリエトキシシランである。
【0062】
なお、上記有機ケイ素化合物は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる基を少なくとも一個有する有機ケイ素化合物の使用量(添加量)は、後述する有機アルミニウム化合物1モル当たり、0.002〜10モルであることが好ましく、0.01〜2モルであることがより好ましく、0.1〜0.5モルであることがさらに好ましい。
【0064】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、有機アルミニウム化合物としては、特に制限されず、例えば、下記一般式(IV);
R
9pAlQ
3−t (IV)
(式中、R
9は、炭素数1〜6のヒドロカルビル基を示し、R
9が複数存在する場合、各R
9は同一であっても異なっていてもよく、Qは水素原子、炭素数1〜6のヒドロカルビルオキシ基、あるいはハロゲン原子を示し、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよく、tは0<p≦3の実数である。)で表される化合物を挙げることができる。
【0065】
上記一般式(IV)で表される化合物において、R
9としては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、tは、2または3が好ましく、特に3が好ましい。
このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0066】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、有機アルミニウム化合物の接触量は、オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モルであることが好ましく、50〜1000モルであることがより好ましい。
【0067】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、不活性ガス雰囲気下、オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物、および有機アルミニウム化合物を、一般式CH
2=CH−R
1 (I)(ただし、R
1は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素残基である)で表される化合物の不存在下、不活性有機溶媒中で接触させる。
【0068】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、雰囲気ガスである上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、メタン、エタンおよびプロパン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、窒素またはアルゴンであることが好ましい。
【0069】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、不活性有機溶媒は、各成分を反応させる媒体として使用されるものであって、鎖式飽和炭化水素および脂環式炭化水素から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2‐ジエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン、ミネラルオイル等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記不活性有機溶媒としては、沸点が50〜200℃程度の、常温で液状の芳香族炭化水素化合物、具体的にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0070】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、下記一般式(I)
CH
2=CH−R
1 (I)
(ただし、R
1は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素残基である)で表される化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、スチレン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0071】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、不活性ガス雰囲気下、オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物、および有機アルミニウム化合物を、一般式CH
2=CH−R
1 (I)(ただし、R
1は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素残基である)で表される化合物の不存在下、不活性有機溶媒中で接触させる。
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、各成分の接触順序は任意であるが、反応系内に有機アルミニウム化合物、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物、ビニルシラン化合物の順で装入し、その後オレフィン類重合用固体触媒成分を接触させることが好ましい。
各成分を接触させる際の濃度や、接触時の温度や時間等も特に制限はなく、適宜選択すればよい。
【0072】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、上記オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物を、不活性有機溶媒中で、固体触媒成分換算で0.01g/L以上の触媒濃度条件下で接触させることが適当であり、0.1〜500g/Lの触媒濃度で接触させることがより適当であり、1〜300g/Lの触媒濃度で接触させることがさらに適当である。
なお、本出願書類において、触媒濃度とは、不活性有機溶媒1リットル中に含まれるオレフィン重合用固体触媒成分の重量(g)を意味する。
【0073】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、上記オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物を、不活性有機溶媒中、50℃以下の温度雰囲気で接触させることが好ましく、−10〜40℃の温度雰囲気下で接触させることがより好ましく、0〜35℃の温度雰囲気下で接触させることがさらに好ましい。
【0074】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、上記オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物を、不活性有機溶媒中、1分間以上接触させることが好ましく、1〜120分間接触させることがより好ましく、1〜60分間接触させることがさらに好ましい。
【0075】
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法においては、不活性ガス雰囲気下、オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物、および有機アルミニウム化合物を、不活性有機溶媒中で接触させるにあたり、反応系内にビニルシラン化合物を加えた後、洗浄処理を施さない。
【0076】
本発明のオレフィン類重合触媒の製造方法においては、オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物を不活性有機溶媒中で接触させ、反応させるにあたり、反応系内にビニルシラン化合物を加えた後に洗浄処理を施さないものであることにより、可溶成分であるビニルシラン化合物の離脱(溶出)を抑制し、さらには洗浄処理後の減圧乾燥を不要とすることにより洗浄処理後のビニルシラン化合物の揮散や消失を抑制して、効果的に重合活性を向上させることができるとともに、重合体粒子の凝集を抑制し、得られる重合体の立体規則性や嵩密度を高度に維持しながら上記重合体粒子の凝集物がほぐれる際に派生する重合体の微粉化物の発生や、重合体粉末の重合反応器への付着を効果的に低減することができる。
【0077】
このように、本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を用いた場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示すとともに、立体規則性および嵩密度に優れ、微粗粉の含有量が低減された粒度分布に優れたオレフィン類重合体を製造し得るオレフィン類重合触媒を製造する方法を提供することができる。
【0078】
次に、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合触媒を、下記一般式(I)
CH
2=CH−R
1 (I)
(ただし、R
1は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素残基である)で表される化合物から選ばれる一種以上と接触させることを特徴とするものである。
【0079】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、オレフィン類の単独重合であってもよいし共重合であってもよく、ランダム共重合であってもよいしブロック共重合であってもよい。
【0080】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、オレフィン類として、下記一般式(I)
CH
2=CH−R
1 (I)
(ただし、R
1は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素残基である)で表される化合物から選ばれる一種以上を重合対象とする。
【0081】
上記一般式(I)で表わされるオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、スチレン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、特にプロピレンが好適である。
【0082】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は共重合であってもよく、例えば、プロピレンと他のオレフィン類を共重合する場合、共重合されるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、スチレン等から選ばれる一種以上であることが好ましく、とりわけ、エチレン、1−ブテンが好適である。
【0083】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、プロピレンと他のオレフィン類とを共重合させる場合、プロピレンと少量のエチレンをコモノマーとして1段で重合するランダム共重合と、第一段階(第一重合槽)でプロピレンの単独重合を行い、第二段階(第二重合槽)あるいはそれ以上の多段階(多段重合槽)でプロピレンとエチレンの共重合を行う、所謂プロピレン−エチレンブロック共重合を挙げることができる。
【0084】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、特にプロピレンの単独重合からブロック共重合に移行する際に、最終製品中のジェル生成を防止するために、アルコール類を重合系に添加してもよい。
アルコール類の具体例としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等から選ばれる一種以上を挙げることができ、その使用量は、オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モルに対し0.01〜10モルであることが好ましく、0.1〜2モルであることがより好ましい。
【0085】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、オレフィン類重合用固体触媒成分、ビニルシラン化合物、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも一個の基を有する有機ケイ素化合物、および有機アルミニウム化合物を、上記一般式(I)で表される化合物の不存在下、不活性有機溶媒中で接触させてオレフィン類重合触媒を製造するにあたり、反応系内にビニルシラン化合物を加えた後、洗浄処理を施さずにオレフィン類重合触媒を調製し、得られたオレフィン類重合触媒を上記一般式(I)で表される化合物から選ばれる一種以上と接触させることによりオレフィン類重合体を製造する。
【0086】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、不活性有機溶媒の存在下でも不存在下でもオレフィン類の重合反応を行うことができるが、不活性有機溶媒の存在下にオレフィン類の重合反応を行う場合には、本発明に係るオレフィン類重合触媒を調製した後、オレフィン類重合触媒を単離することなくそのままオレフィン類重合体を調製できることができることから、不活性有機溶媒の存在下にオレフィン類の重合反応を行うことが好ましい。
不活性有機溶媒としては、本発明に係るオレフィン類重合触媒の調製に用いたものと同様のものを挙げることができる。
【0087】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、プロピレン等のオレフィン類は、気体および液体のいずれの状態でも重合に供することができる。
【0088】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合温度は、室温以上200℃以下であることが好ましく、室温以上100℃以下であることがより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合圧力は、10MPa以下であることが好ましく、6MPa以下であることがより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類は、連続重合法で重合してもよいし、バッチ式重合法で重合してもよい。さらに、重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上の多段で行ってもよい。
【0089】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合触媒を使用するものであり、オレフィン類重合触媒を構成するオレフィン類重合用固体触媒成分がフタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含むであっても、有機ケイ素化合物とビニルシラン化合物とを併用することによって、このビニルシラン化合物のビニル基とTi活性点とが電子的な作用によって効果的に重合活性を向上させることができるとともに、上記ビニルシラン化合物のビニル基が上記固体触媒成分のTi活性点を保護し、有機アルミニウムによる過剰な反応を抑制することにより重合体粒子の凝集を抑制し、得られる重合体の立体規則性や嵩密度を高度に維持しながら上記重合体粒子の凝集物がほぐれる際に派生する重合体の微粉化物の発生や、重合体粉末の重合反応器への付着を効果的に低減することができる。
このため、本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を用いた場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示すとともに、立体規則性および嵩密度に優れ、微粗粉の含有量が低減された粒度分布に優れたオレフィン類重合体を簡便かつ低コストに製造する方法を提供することができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例および比較例と対比しつつ具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、触媒中または固体触媒成分中のチタン含有量は、JIS 8311−1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味する。
【0091】
(実施例1)
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム20g及びトルエン60mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに予め装填されたトルエン50ml及び四塩化チタン40mlの溶液中に添加し懸濁液とした。次いで、該懸濁液を−6℃で1時間反応させた後、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル3.6mlと2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン0.9mlを添加し、さらに100℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理を行った。反応終了後、上澄みを抜き出し四塩化チタンを40ml追加し、さらに100℃で2時間反応させ、得られた反応生成物を100℃のトルエン150mlで4回洗浄し、さらに40℃のn−ヘプタン150mlで6回洗浄して固体触媒成分(A1)を得た。
固液分離後、得られた固体触媒成分(A1)中のチタン含有量を測定したところ2.4質量%であった。
【0092】
<重合触媒の形成および重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、n−ヘプタン7ml、トリエチルアルミニウム1.32mmol、ジイソプロピルジメトキシシラン(DIPDMS)0.13mmol、ビニルトリメチルシラン0.013mmolおよび上記固体触媒成分(A1)をチタン原子として0.0026mmol装入し、窒素雰囲気下、20℃で10分間接触させた後、洗浄処理を施すことなく重合触媒を形成した。この時、固体触媒成分中に含まれるチタン原子に対するビニルトリメチルシランの使用モル比(ビニルトリメチルシランの量/固体触媒成分中に含まれるチタン原子の量)は5であった。
その後、上記のとおり生成した重合触媒を含む含有液に対し、水素ガス1.5リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、75℃で1時間重合反応を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成した重合体の嵩密度(BD)、生成した重合体のメルトフローレイトの値(MFR)、生成した重合体中のp−キシレン可溶分(XS)の割合、生成した重合体の粒径分布、平均粒径(D50)、微粉量(75μm以下)、粗粉量(1180μm以上)を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0093】
<固体触媒成分1g当たりの重合活性>
固体触媒成分1g当たりの重合活性については、下記式により求めた。
重合活性(g−pp/g−触媒)=得られた重合体の質量(g)/固体触媒成分の質量(g)
【0094】
<重合体の嵩密度(BD)>
重合体の嵩密度(BD)は、JIS K6721に従って測定した。
【0095】
<重合体の溶融流れ性(MFR)>
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)は、ASTM D238、JIS K 7210に準じて測定した。
【0096】
<重合体のキシレン可溶分(XS)>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp-キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物をキシレン可溶分(XS)とし、その質量を重合体(ポリプロピレン)に対する相対値(質量%)で求めた。
【0097】
<生成した重合体の粒径分布、平均粒径(D50)、微粉量(75μm以下)および粗粉量(1180μm以上)>
デジタル画像解析式粒子径分布測定装置(カムサイザー、(株)堀場製作所製)を用い、下記の測定条件において重合体の体積基準積算粒度分布の自動測定を行なうことで、粒径75μm以下の微粉量(質量(wt)%)、粒径1180μm以上の粗粉量(質量(wt)%)および体積基準積算粒度で50%の平均粒径(D50)を求めた。
(測定条件)
ファネル位置 :6mm
カメラのカバーエリア :ベーシックカメラ3%未満、ズームカメラ10%未満
目標カバーエリア :0.5%
フィーダ幅 :40mm
フィーダコントロールレベル:57、40秒
測定開始レベル :47
最大コントロールレベル :80
コントロールの基準 :20
画像レート :50%(1:2)
粒子径定義 :粒子1粒ごとにn回測定したマーチン径の最小値
SPHT(球形性)フィッティング:1
クラス上限値 :対数目盛とし、32μm〜4000μmの範囲で50点を選択
【0098】
(比較例1)
<固体触媒成分の調製>
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン0.9mlを用いず、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピルのみを合計7ml用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(A2)を調製した。得られた固体触媒成分(A2)中のチタン含有量を測定したところ2.9質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A2)を用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成及び重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成した重合体の嵩密度(BD)、生成した重合体のメルトフローレイトの値(MFR)、生成した重合体中のp−キシレン可溶分(XS)の割合、生成した重合体の粒径分布、平均粒径(D50)、微粉量(75μm以下)、粗粉量(1180μm以上)を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例2)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル7mlに代えて同モル量の2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンを用いた以外は、比較例1と同様に固体触媒成分(A3)を調製した。得られた固体触媒成分(A3)中のチタン含有量を測定したところ2.5質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A3)を用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(比較例2)
ビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例2と同様の条件で、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例3)
ビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例1と同様の条件で、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例4)
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム20g及びトルエン60mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに予め装填されたトルエン50ml及び四塩化チタン40mlの溶液中に添加して懸濁液とし、該懸濁液を5℃で1時間反応させた。その後、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル3.6mlと2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン0.9mlを添加し、100℃まで昇温した後、攪拌しながら2時間反応処理した。反応終了後に上澄みを抜き出し、生成物を80℃のトルエン150mlで4回中間洗浄した後、新たにトルエン80ml及び四塩化チタン5mlを加え、攪拌しながら110℃で2時間の反応処理を行った。更に上澄みを抜き出し、新たにトルエン80ml及び四塩化チタン5mlを加え、攪拌しながら110℃で2時間の反応処理を行った後に上澄みを抜き出し、生成物を40℃のヘプタン150mlで6回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.2重量%であった。
<重合触媒の形成及び重合>
上記で得られた固体触媒成分10gをヘプタン100mlに懸濁させ、この懸濁液中にビニルトリメチルシラン23mmolを添加し、30℃で2時間攪拌しながら接触させた。
このとき、ビニルトリメチルシランの添加量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子量に対するビニルトリメチルシランモル量の比(ビニルトリメチルシラン量/固体触媒成分中に含まれるチタン原子量)で5であった。
次いで、生成物を40℃のヘプタン100mlで2回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の触媒成分(A4)を得た。この触媒成分を分析したところ、チタンが2.1重量%、マグネシウム原子が18.6重量%、塩素原子が60.9重量%であった。
得られた触媒成分(A4)を用い、またビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(実施例3)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル3.6mlに代えて同モル量の5−t−ブチル−1,2−フェニレンジエチルカーボネートを用いた以外は、実施例1と同様に固体触媒成分(A5)を調製した。得られた固体触媒成分(A5)中のチタン含有量を測定したところ2.6質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A5)を用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(実施例4)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル7mlに代えて同モル量の5−t−ブチル−1,2−フェニレンジエチルカーボネートを用いた以外は、比較例1と同様に固体触媒成分(A6)を調製した。得られた固体触媒成分(A6)中のチタン含有量を測定したところ2.8質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A6)を用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(実施例5)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピルに代えて同モル量の3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルを用いた以外は、実施例1と同様に固体触媒成分(A7)を調製した。得られた固体触媒成分(A7)中のチタン含有量を測定したところ1.9質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A7)を用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例5)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピルに代えて同モル量の3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルを用いた以外は、比較例1と同様に固体触媒成分(A8)を調製した。得られた固体触媒成分(A8)中のチタン含有量を測定したところ2.7質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A8)を用い、ビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例6)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル3.6mlに代えて同モル量の2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルを用いた以外は、実施例1と同様に固体触媒成分(A9)を調製した。得られた固体触媒成分(A9)中のチタン含有量を測定したところ3.1質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A9)を用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(比較例6)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル7mlに代えて同モル量の2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルを用いた以外は、比較例1と同様に固体触媒成分(A10)を調製した。得られた固体触媒成分(A10)中のチタン含有量を測定したところ3.2質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A10)を用い、ビニルトリメチルシランを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例7)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル3.6mlに代えて同モル量の2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネートを用いた以外は、実施例1と同様に固体触媒成分(A11)を調製した。得られた固体触媒成分(A11)中のチタン含有量を測定したところ3.0質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A11)を用いた以外は実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
(実施例8)
ビニルトリメチルシランの添加量を、固体触媒成分中に含まれるチタン原子量に対するビニルトリメチルシラン量のモル比(ビニルトリメチルシラン量/固体触媒成分中に含まれるチタン原子量)が1になるように変更した以外は、実施例7と同様にして、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例9)
ビニルトリメチルシランの添加量を、固体触媒成分中に含まれるチタン原子量に対するビニルトリメチルシラン量のモル比(ビニルトリメチルシラン量/固体触媒成分中に含まれるチタン原子量)が2になるように変更した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
(実施例10)
ビニルトリメチルシランの添加量を、固体触媒成分中に含まれるチタン原子量に対するビニルトリメチルシラン量のモル比(ビニルトリメチルシラン量/固体触媒成分中に含まれるチタン原子量)が15になるように変更した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例11)
<固体触媒成分の調製>
実施例1<固体触媒成分の調製>と同様の操作を行い、固体触媒成分(A12)を得た。
<重合触媒の形成および重合>
固体触媒成分(A1)に代えて固体触媒成分(A12)を用い、かつ、n−ヘプタン7mlに代えてミネラルオイル(島貿易(株)製、ハイドロブライト380)7mlを使用したこと以外は実施例1と同様にして、重合触媒の形成、重合および、得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
(比較例7)
<固体触媒成分の調製>
1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル7mlに代えて同モル量の2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネートを用いた以外は、比較例1と同様に固体触媒成分(A13)を調製した。得られた固体触媒成分(A13)中のチタン含有量を測定したところ2.8質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A13)を用い、ビニルトリメチルシランを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例12)
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム20g及びトルエン60mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに予め装填されたトルエン50ml及び四塩化チタン40mlの溶液中に添加し懸濁液とした。次いで、該懸濁液を−6℃で1時間反応させた後、2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート2.3mlと2−イソプロピル2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン0.9mlを添加し、さらに100℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理を行った。反応終了後、上澄みを抜き出し、90℃のトルエン150mlで4回洗浄した。得られた反応生成物に四塩化チタン20mlおよびトルエン100mlを加えて、100℃まで昇温し、15分反応させる処理を4回行った後、40℃のn−ヘプタン150mlで6回洗浄して固体触媒成分(A14)を得た。
固液分離後、得られた固体触媒成分(A14)中のチタン含有量を測定したところ2.7質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A14)を用い、ジイソプロピルジメトキシシランに代えて、同モル量のシクロヘキシルメチルジメトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0116】
(実施例13)
ビニルトリメチルシランの添加量を、固体触媒成分中に含まれるチタン原子量に対するビニルトリメチルシラン量のモル比(ビニルシラン量/固体触媒成分中に含まれるチタン原子量)が10になるように変更した以外は、実施例12と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0117】
(実施例14)
<固体触媒成分の調製>
2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート2.3mlに代えて同モル量の2−エトキシエチル−1−エチルカーボネートを用いた以外は、実施例12と同様に固体触媒成分(A15)を調製した。得られた固体触媒成分(A15)中のチタン含有量を測定したところ2.6質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A15)を用いた以外は、実施例12と同様にして、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0118】
(実施例15)
<固体触媒成分の調製>
2−イソプロピル2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン0.9mlに代えて同モル量の9,9−ビスメトキシメチルフルオレンを用いた以外は、実施例12と同様に固体触媒成分(A16)を調製した。得られた固体触媒成分(A15)中のチタン含有量を測定したところ2.4質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A16)を用いた以外は、実施例12と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
(比較例8)
ビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例12と同様の条件で、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0120】
(実施例16)
ビニルトリメチルシランに代えて同モル量のジクロロジビニルシランを用いた以外は、実施例12と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
(実施例17)
ビニルトリメチルシランに代えて同モル量のメチルトリビニルシランを用いた以外は、実施例12と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
(実施例18)
<固体触媒成分の調製>
2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート2.3mlに代えて同モル量のマレイン酸ジエチルを用いた以外は、実施例12と同様に固体触媒成分(A17)を調製した。得られた固体触媒成分(A17)中のチタン含有量を測定したところ3.5質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A17)を用いた以外は、実施例12と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
(実施例19)
<固体触媒成分の調製>
2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート2.3mlに代えて同モル量のベンジリデンマロン酸ジエチルを用いた以外は、実施例12と同様に固体触媒成分(A18)を調製した。得られた固体触媒成分(A18)中のチタン含有量を測定したところ2.0質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A18)を用いた以外は、実施例12と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
(実施例20)
<触媒成分の調製>
2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート2.3mlに代えて同モル量の2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルを用いた以外は、実施例12と同様にして固体触媒成分(A19)を調製した。得られた固体触媒成分(A19)中のチタン含有量を測定したところ3.0質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A19)を用いた以外は、実施例12と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
(実施例21)
<触媒成分の調製>
2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート2.3mlに代えて同モル量の2,4−ペンタンジオールジベンゾエートを用いた以外は、実施例12と同様にして固体触媒成分(A20)を調製した。得られた固体触媒成分(A20)中のチタン含有量を測定したところ2.9質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A20)を用いた以外は、実施例12と同様にして重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例22)
<固体触媒成分の調製>
実施例12の<固体触媒成分の調製>と同様の操作を行い、固体触媒成分(A21)を得た。
<重合触媒の形成および重合>
n−ヘプタン7mlに代えてミネラルオイル(島貿易(株)製、ハイドロブライト380)7mlを使用したこと以外は実施例12と同様にして重合触媒の形成、重合および、得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
(実施例23)
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム20g及びトルエン60mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに予め装填されたトルエン50ml及び四塩化チタン40mlの溶液中に添加し懸濁液とした。次いで、該懸濁液を−6℃で1時間反応させた後、2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート2.3mlと2−イソプロピル2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン0.9mlを添加し、さらに100℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理を行った。反応終了後、上澄みを抜き出し、90℃のトルエン150mlで4回洗浄した。得られた反応生成物に四塩化チタン20mlおよびトルエン100mlを加えて、100℃まで昇温し、15分反応させる処理を4回行った後、40℃のn−ヘプタン150mlで6回洗浄した。次いで、ミネラルオイル(島貿易(株)製、ハイドロブライト380)中に反応生成物を混合し、スラリー化した固体触媒成分(A22)を得た。
得られた固体触媒成分(A22)中のチタン含有量を測定したところ2.7質量%であった。
【0128】
<重合触媒の形成および重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、ミネラルオイル(島貿易(株)製、ハイドロブライト380)7ml、トリエチルアルミニウム1.32mmolおよびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13mmolを装入した。次いで、ビニルトリメチルシラン0.013mmolを添加した上記スラリー化した固体触媒成分(A22)をチタン原子として0.0026mmol装入し、窒素雰囲気下、20℃で10分間接触させた後、洗浄処理を施すことなく重合触媒を形成した。この時、固体触媒成分中に含まれるチタン原子に対するビニルトリメチルシランの使用モル比(ビニルトリメチルシランの量/固体触媒成分中に含まれるチタン原子の量)は5であった。
重合及び得られた重合体の評価は、実施例1と同様にして行った。結果を表2に示す。
【0129】
(比較例9)
ビニルトリメチルシランに代えて同モル量のジアリルジメチルシランを用いた以外は、実施例12と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
(比較例10)
ビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例20と同様の条件で、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0131】
(比較例11)
ビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例21と同様の条件で、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0132】
(実施例24)
<固体触媒成分の調製>
無水塩化マグネシウム75g、デカン375mlおよび2―エチルヘキシルアルコール300gを135℃で4時間加熱して均一溶液とした後、この溶液中に2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート16.7mlを添加した。このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、この均一溶液のうち113mlを−20℃に保持した四塩化チタン300ml中に45分間にわたって滴下装入した。滴下後、液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところで2−イソプロピル2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン1.6mlおよび2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート0.9mlを添加した。さらに2時間上記の温度で攪拌した後、濾過し、固体部をデカンで洗浄することにより、固体触媒成分(A23)を得た。この固体触媒成分(A23)中のチタン含有量は、1.8質量%であった。
<重合触媒の形成および重合>
得られた固体触媒成分(A23)を用いた以外は、実施例12と同様にして、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表3に示す。
【0133】
(比較例12)
重合触媒の調製時にビニルトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例24と同様の条件で、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成、重合及び得られた重合体の評価を行った。結果を表3に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
表1〜表3より、実施例1〜実施例24で得られたオレフィン類重合触媒は、マグネシウム化合物、チタンハロゲン化合物および電子供与性化合物としてフタル酸エステル構造を有さずジオール骨格を有する第一の電子供与性化合物を含む固体触媒成分、ビニルシラン化合物、ビニル基を有さずアルコキシ基およびアミノ基から選ばれる基を少なくとも一個有する有機ケイ素化合物、および有機アルミニウム化合物を、下記オレフィン類の不存在下、不活性有機溶媒中で接触させるあたり、反応系内にビニルシラン化合物を加えた後、洗浄処理を施さずに調製されたものであることにより、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含み、さらに有機ケイ素化合物を含む場合であっても、重合処理時に電子供与性化合物としてフタル酸エステルを用いた場合と同様の優れた触媒活性を示すとともに、立体規則性および嵩密度に優れ、微粗粉の含有量が低減された粒度分布に優れたオレフィン類重合体を簡便かつ低コストに製造し得るオレフィン類重合触媒を製造する方法を提供することができることが分かる。
【0138】
一方、表1〜表3より、比較例1〜比較例12で得られたオレフィン類重合触媒は、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、ビニルシラン化合物を用いることなく重合触媒を形成させて得られたものである等、特定の成分を用いることなく調製されたものであるか、反応系内にビニルシラン化合物を加えた後に洗浄処理を施してなり、配位性の弱いビニルシラン化合物が除去され重合活性点の保護作用が失なわれたものであるので、プロピレン等のオレフィンと接触させた際、重合反応が急激に開始され、粒子の崩壊や活性点の失活がおこり、著しい重合活性の低下や、微粗粉の増加が引き起こされることが分かる。