(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577980
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】アピキサバン製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20190909BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20190909BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20190909BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K9/20
A61K9/48
A61P7/02
【請求項の数】28
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-149644(P2017-149644)
(22)【出願日】2017年8月2日
(62)【分割の表示】特願2016-209347(P2016-209347)の分割
【原出願日】2011年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-226679(P2017-226679A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2017年8月22日
(31)【優先権主張番号】61/308,056
(32)【優先日】2010年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514040963
【氏名又は名称】ブリストル−マイヤーズ・スクイブ・ホールディングス・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Bristol−Myers Squibb Holdings Ireland Unlimited Company
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】ジャティン・ペイテル
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・フロスト
(72)【発明者】
【氏名】ジンピン・ジャ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ・ベマ−バラプ
【審査官】
古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0160841(US,A1)
【文献】
特表2010−502762(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/135947(WO,A1)
【文献】
特表2005−507889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.5mg〜5mgのアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む固形医薬組成物であって、
前記アピキサバンが結晶形のアピキサバンを含むことを特徴とし、
USP装置2を75rpmのパドル回転速度で37℃にて900mLの溶解媒体中で用いて測定すると、前記医薬組成物中のアピキサバンの少なくとも77重量%が前記溶解媒体中に30分以内に溶解するものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである、固形医薬組成物。
【請求項2】
前記結晶形のアピキサバンが、アピキサバンの形体N−1を含む、請求項1に記載の医薬組成物であって、前記アピキサバンの形体N−1は、下記の特徴;
表1:
【表1】
に示される単位格子パラメータと等しいもの;または
10.0±0.1、10.6±0.1、12.3±0.1、12.9±0.1、18.5±0.1、および27.1±0.1の2θ値の室温でのX線回折ピーク
を有するものである、医薬組成物。
【請求項3】
前記アピキサバンが、前記固形医薬組成物の製造時に造粒されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アピキサバンが、乾式造粒法によって造粒されるものである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
2.5mgのアピキサバンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
5mgのアピキサバンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
錠剤である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
カプセル剤である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
2.5mg〜5mgのアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む固形医薬組成物であって、
USP装置2を75rpmのパドル回転速度で37℃にて900mLの溶解媒体中で用いて測定すると、前記医薬組成物中のアピキサバンの少なくとも77重量%が前記溶解媒体中に30分以内に溶解するものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである、固形医薬組成物。
【請求項10】
前記アピキサバンが、前記固形医薬組成物の製造時に造粒されるものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記アピキサバンが、乾式造粒法によって造粒されるものである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
2.5mgのアピキサバンを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
5mgのアピキサバンを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
錠剤である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
カプセル剤である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
5mg以下のアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む錠剤であって、
少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する溶解特性を示し、溶解試験は、USP装置2を75rpmのパドル回転速度で用いて、37℃にて900mLの溶解媒体中で行われるものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである、錠剤。
【請求項17】
前記
錠剤が、アピキサバンの形体N−1を含む、請求項16に記載の錠剤であって、前記形体N−1は、下記の特徴;
表1:
【表2】
に示される単位格子パラメータと等しいもの;または
10.0±0.1、10.6±0.1、12.3±0.1、12.9±0.1、18.5±0.1、および27.1±0.1の2θ値の室温でのX線回折ピーク
を有するものである、錠剤。
【請求項18】
前記アピキサバンが、89μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項19】
前記アピキサバンが、85μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項20】
前記アピキサバンが、50μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項21】
前記アピキサバンが、30μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項22】
前記アピキサバンが、25μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項23】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、
(a)2.5〜5mg;または
(b)2.5mgまたは5mg
である、請求項16〜22のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項24】
請求項16〜23のいずれか1項に記載の錠剤である、血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項25】
1日2回経口で投与される、請求項24に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項26】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、2.5〜5mgである、請求項24または25に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項27】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、2.5mgである、請求項24または25に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項28】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、5mgである、請求項24または25に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最大サイズのカットオフ値を有する結晶形アピキサバン粒子を含むアピキサバン医薬製剤、ならびにそれらの使用方法、例えば、血栓塞栓性疾患の治療および/または予防方法に関する
【背景技術】
【0002】
アピキサバンは、構造:
【化1】
を有する公知の化合物である。
【0003】
アピキサバンの化学名は、4,5,6,7−テトラヒドロ−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−6−[4−(2−オキソ−1−ピペリジニル)フェニル]−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミド(CAS名)または1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−6−[4−(2−オキソ−1−ピペリジニル)フェニル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミド(IUPAC名)である。
【0004】
アピキサバンは、出典明示により本明細書に取り込まれる(2002年9月17日に提出の特許文献1に基づく)特許文献2に開示され、因子Xa阻害剤として有用性を有し、抗血栓薬の使用を必要とする様々な状況における経口投与のために開発されている。
【0005】
アピキサバンの水溶解度(全ての生理学的pHで40μg/mL)により、10mg以下のアピキサバンを含む錠剤(用量/溶解度の比率=250mL)は、用量/溶解度の比率が250mL以上の場合にのみ溶解速度の律速が予想されることから、溶解速度で律速された吸収を示さないことが示唆されている。この用量および溶解度の示唆に基づくと、化合物の粒径は、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System)(BCS;非特許文献1)に基づいた予測によると、一貫した血漿プロファイルを達成するために必ずしも不可欠なものではない。しかしながら、湿式造粒法を用いて調製された製剤ならびにアピキサバン原薬の大きな粒子を用いて調製された製剤は、決して最適ではない露出を生じることが結論付けられ、品質管理の課題を提示しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国出願番号第10/245,122号
【特許文献2】米国特許第6,967,208号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Amidon, G.L. et al., Pharmaceutical Research, 12: 413-420 (1995)
【発明の概要】
【0008】
驚くべきで予想外のことに、89ミクロン(μm)以下のD
90(体積の90%)を有するアピキサバン粒子を5mgまで含む錠剤組成物は、(生理学的pHで)ヒトにおいて一貫したインビボ溶解を生じ、それにより一貫した露出および一貫した因子Xa阻害を生じ、治療効果に一貫性をもたらすことが知見された。一貫した露出は、錠剤からのインビボ露出が溶液からのものと類似し、溶解速度の相違により影響を受けないものと定義される。前記組成物は、乾式造粒法を用いて調製された。よって、本発明は、レーザー光散乱法によって測定されるように、約89μmと同等またはそれ以下のD
90を有する結晶形アピキサバン粒子、および医薬的に許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物を提供する。組成物中のアピキサバン粒子は、89μmを超えないD
90を有することが好ましい。記号D
Xは、粒子の体積のX%が特定の直径D以下の直径を有することを意味するものとする。よって、89μmのD
90は、アピキサバン組成物中の粒子の体積の90%が89μm以下の直径を有することを意味する。
【0009】
本発明における使用に好ましい粒径の範囲は、89μm以下のD
90、より好ましくは50μm以下のD
90、さらにより好ましくは30μm以下のD
90、最も好ましくは25μm以下のD
90である。本明細書および特許請求の範囲で規定される粒径は、レーザー光散乱技術を用いて決定された粒径を意味する。
【0010】
本発明は、0.25重量%から2重量%、好ましくは1重量%から2重量%の界面活性剤をさらに含む医薬組成物をさらに提供する。界面活性剤については、一般に、錠剤製剤中の疎水性薬物を湿らせてその薬物の効率的な溶解を確保するために用いられ、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリソルベート80およびポロキサマーであり、好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0011】
本発明は、血栓塞栓性疾患の治療または予防を必要とする患者に、レーザー光散乱法によって測定されるように、約89μmと同等またはそれ以下のD
90を有する結晶形アピキサバン粒子および医薬的に許容される担体を含む組成物の治療上有効量を投与することを特徴とする、血栓塞栓性疾患の治療または予防方法をさらに提供する。
【0012】
本発明はまた、レーザー光散乱法によって測定されるように、約89μmと同等またはそれ以下のD
90を有する結晶形アピキサバン粒子および医薬的に許容される担体を含む組成物を製造するための乾式造粒法を提供する。
【0013】
本発明の製剤は、とりわけ、上記に記載されるように、一貫したヒトのインビボ溶解を生じるため有効である。しかしながら、これに関して、本発明は、薬物が急速に溶解できる適度な水溶解度をアピキサバンが有するにもかかわらず、露出が変化しやすい点で驚くべきである。すなわち、(生物薬剤学分類システムによって定義されるように)高い溶解度を有する薬物の溶解速度が粒径によって律速されることはないと予測されるであろう。しかしながら、驚くべきことに、アピキサバンの吸収速度に影響を与える粒径は、89μmのD
90であることが知見された。よって、アピキサバンは、乾式造粒法を用いて適正な粒径を有する組成物中に製剤化されて、比較的細かい粒子が形成され維持されて、一貫したインビボ溶解が可能となる。
【0014】
様々なアピキサバン製剤を評価した相対的バイオアベイラビリティ実験において、湿式造粒法を用いて調製した製剤は、乾式造粒法を用いて調製した製剤から得られた露出と比較してより低い露出を生じることが調べられた。また、より大きい粒子(89μmのD
90)を用いて調製した錠剤は、同じ方法を用いて調製したが、50μmのD
90の粒径を有する錠剤と比較してより低い露出を示した。乾式造粒法において、製造工程で水を用いることなく、アピキサバンおよび賦形剤を含有する造粒物が生成される。
【0015】
本発明による製剤は、インビトロで溶解性が試験される場合、好ましくは、下記の溶解の基準を示す。すなわち、前記製剤は、そのうちの77%に相当する薬物量が30分以内に溶解するような溶解特性を示す。通常、試験結果は、製剤(例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁液またはその他の剤形)の所定数(通常、6)の平均として定められる。溶解試験は、典型的に、生理学的関連性を維持しつつ、胃腸管で観察されるpH範囲(1〜7.4)で緩衝化され、37℃(±1℃)に制御された水性媒体中で行われる。試験される剤形が錠剤である場合、典型的に、パドル法回転数50〜75rpmを用いて、錠剤の溶解速度を試験するものとする。溶解されたアピキサバン量は、下記に記載されるように、HPLCによる従来技術を用いて調べることができる。溶解(インビトロ)試験は、品質管理ツールとして供するために、より好ましくは、インビボ−インビトロ関連性(IVIVR)が定められる場合、錠剤の生物学的(インビボ)性能を予測するために開発される。
【0016】
用語「粒子」は、粒子が単独で存在し、あるいは凝集しているいずれかの各原薬粒子を意味する。よって、粒子アピキサバンを含む組成物は、本明細書で特定される約89μmのサイズ限度をはるかに超えている凝集物を含有しうる。しかしながら、凝集物を含む主な原薬粒子(すなわち、アピキサバン)の平均サイズがそれぞれ約89μm以下である場合、凝集物自体が本明細書で定義される粒径の制限を満たし、当該組成物が本発明の範囲内であるものと考えられる。
【0017】
所定の直径と同等またはそれ以下の「平均粒径」(本明細書において「体積平均径」に関する「VMD」と相互に交換可能にも用いられる)を有し、または所定の粒径範囲であるアピキサバン粒子という用語は、所定の直径と同等の直径を有する球状粒子について算出される体積と同等またはそれ以下の球形の推定に基づいて、試料中の全アピキサバン粒子の平均が推定体積を有することを意味する。粒径分布は、当業者に公知であり、さらに以下で開示され、説明されるようなレーザー光散乱技術によって測定することができる。
【0018】
本明細書で用いられる「生物学的同等性」は、製剤がクロスオーバー実験(通常、少なくとも10人またはそれ以上のヒト患者群を含む)で試験される場合、各クロスオーバー群についての平均曲線下面積(AUC)および/またはC
maxが、アピキサバンを30から89μmの範囲でD
90を有する好ましい粒径を有することのみが異なる同等の製剤で投与する場合に実測される(相当する)平均AUCおよび/またはC
maxの少なくとも80%であることを意味する。30μmの粒径は、実際に他の異なる製剤と比較できる基準である。AUCは、横軸の時間(X軸)に対する縦軸に沿ったアピキサバンの血清濃度(Y軸)のプロットである。一般に、AUC値は、患者集団における全ての対象から得られた数値を表し、それゆえ全試験集団について平均化された平均値である。C
.sub.maxは、時間(X軸)に対するアピキサバンの血清レベル濃度(Y軸)のプロットで実測された最大値であり、同様に平均値である。
【0019】
AUC、C
maxおよびクロスオーバー実験の使用は、もちろん当該技術分野で特によく理解されている。本発明は、実際、マルヴァーン光散乱法によって測定されるような、約89μmと同等またはそれ以下の平均粒径を有する結晶形アピキサバン粒子および医薬的に許容される担体を含む組成物であって、それと同等(すなわち、用いられる賦形剤とアピキサバン量に関して)の組成物によって示される相当する平均AUCおよび/またはC
max値の少なくとも80%である平均AUCおよび/または平均C
maxを示すが、30μmのアピキサバン平均粒径を有する組成物として別の用語で表現することができる。本発明のための用語「AUC」の使用は、「標準」30μmの粒径組成物を含む試験された全ての組成物についての少なくとも10人の健常な対象群内のクロスオーバー試験を意味する。
【0020】
本発明は、その精神または必要な態様から逸脱することなく他の具体的な形体で実施化されうる。よって、上記実施態様は限定するものとされるべきではない。本発明のいずれかおよび全ての実施態様は、さらなる実施態様を記載する他の実施態様と組み合わされてもよい。実施態様の各々の構成要素は、それ自体独立した実施態様である。さらに、実施態様の構成要素は、さらなる実施態様を示す実施態様からの他の構成要素のいずれかおよび全てと組み合わされるものとされる。また、本発明は、異なる実施態様の組み合わせ、実施態様の一部、定義、説明および本明細書に記載される本発明の実施例を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】溶液(CV185001、CV185006およびCV185007)および錠剤(CV185001およびCV185024)について各用量で標準化したAUC(INF)値の散布図を示す。
【
図2】溶液(CV185001、CV185006およびCV185007)および錠剤(CV185001およびCV185024)について各用量で標準化したCmax値の散布図を示す。
【
図3】異なる粒径の原薬を用いたアピキサバン錠剤の溶解速度を示す。
【
図4】異なる粒径の原薬を用いた5mgアピキサバン錠剤の溶解速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
上記に記載されるように、結晶化するいずれの形態のアピキサバンもまた、本発明で用いることができる。アピキサバンは、出典明示により本明細書に取り込まれる米国特許第6,967,208号および/または米国出願第20060069258A1(2005年9月26日に提出の米国出願番号第11/235,510号に基づく)に記載の合成法により直接取得されうる。
【0023】
アピキサバンの形体N−1(無溶媒)および形体H2−2(水和物)は、表1に示される下記と実質的に同等な単位格子パラメータによって特徴付けられ得る。
表1
【表1】
Z’は、非対称ユニットあたりの分子数である。
T(℃)は、結晶学的データのための温度である。
Vm=V(単位格子)/(ZZ’)
【0024】
NIST適合の標準物質で校正した2θを用いてスピニングキャピラリーを備えた回折計(CuKα)で収集した高質パターンに基づく、室温での特性X線回折ピーク位置(度2θ±0.1)を下記の表2に示す。
表2
【表2】
【0025】
製造方法および造粒法に関する当業者は、アピキサバン固形製剤を生成するために用いることができる多くの公知の方法が存在することを理解している。しかしながら、本発明の特徴は、d90<89μmの溶解部位での主要な粒子を生成する能力を有するアピキサバン製剤を生成する方法である。このような方法の例には、低もしくは高剪断技術による乾式造粒法または湿式造粒法も含まれる。
【0026】
約89μmと同等またはそれ以下の平均粒径を有する結晶形アピキサバン粒子を生成する乾式造粒法は、新規であると考えられ、よって本発明のさらなる特徴として提供される。従って、本発明は、工程:
(1)造粒前に必要とされる原料を混合し;
(2)工程1からの原料を乾式もしくは湿式造粒法を用いて造粒し;
(3)工程2からのサイズ処理した(sized)造粒物を粒外(extragranular)の原料と混合し;
(4)工程3からの混合物を錠剤に圧縮し;次いで
(5)工程4からの錠剤をフィルムコーティングを施すこと
を特徴とする製剤の製造方法を提供する。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、工程:
(1)原料を、制御された粒径のアピキサバンと混合し;
(2)工程(1)からの混合物中に、結合剤、崩壊剤および他の充填剤の粒内(intragranular)部分を含ませ;
(3)工程(2)からの原料を、工程(3a)または(3b)を用いて造粒し:(3a)乾式造粒:粒内の滑沢剤を、適当なふるいまたは粉砕機を用いて粉々にする。前記滑沢剤を、工程(2)からの混合物に加え、混合する。滑沢した混合物を、1.0から1.2g/ccの範囲の密度のリボン状物に圧縮し、圧縮させたリボン状物を、ローラーコンパクターを用いてサイズ処理する;あるいは
(3b)湿式造粒:工程(2)からの組成物を、水を用いて目的エンドポイント(target end point)に湿式造粒し、適宜、ふるい/粉砕機に通すことによって湿式造粒物をサイズ処理してもよい。対流式オーブンまたは流動層乾燥機中で乾燥させることによって、前記造粒物から水を取り除く。乾燥させた造粒物を、ふるい/粉砕機に通すことによってサイズ処理する;
(4)工程(3)からのサイズ処理した造粒物および粒外の崩壊剤を適当な混合機中で混合し;
(5)粒外の滑沢剤を、適当なふるい/粉砕機を用いて粉々にし、工程(4)からの造粒物と混合し;
(6)工程(5)からの混合物を錠剤に圧縮し;
(7)工程(6)からの錠剤にフィルムコーティングを施すこと
を特徴とする製剤の製造方法を提供する。
【0028】
好ましい実施態様において、乾式造粒法が用いられる。
【0029】
好ましい実施態様において、組成物中の界面活性剤(SLS)は、本質的に疎水性であるアピキサバン原薬(水との接触角度=54°)を湿らすために供され、アピキサバン粒径を所望されるサイズまで減らすために用いられるエアジェット粉砕プロセスの一部としてさらに増量された。
【0030】
本発明の組成物を含有する錠剤、カプセル剤または他の製剤に含まれるアピキサバンの量は、通常、2.5から5mgの間であり、通常、1日2回経口投与されるが、この範囲外の量および異なる投与回数もまた、治療に使用するために実施可能である。上記に記載されるように、このような製剤は、とりわけ、米国特許第6,967,208号に開示されるように、血栓塞栓性疾患、例えば、深部静脈血栓症、急性冠症候群、脳卒中および肺塞栓症の予防および/または治療に有用である。
【0031】
上記に記載されるように、平均粒径は、レーザー光散乱技術であるマルヴァーン光散乱法によって決定することができる。下記の実施例において、アピキサバン原薬の粒径は、マルヴァーン粒径解析機を用いて測定した。
【0032】
測定完了後、試料セルを空にし、洗浄し、懸濁化媒体で再充填し、次いで試料の採取工程は、合計3回測定を繰り返した。
【0033】
溶解試験は、75rpmの回転速度でUSP装置2(パドル)法を用いて、37℃で900mLの溶解媒体中で行う。試料は、試験開始から10、20、30、45および60分後に回収し、HPLCにより280nmでアピキサバンについて分析する。0.05% SDS溶液を含有するpH6.8の0.1N HClまたは0.05M リン酸ナトリウムを製剤開発中の溶解媒体として用いた。両者の方法は、(適切な識別能を有する)品質管理試験のために提供するが、IVIVRを定める場合、方法の信頼性の観点から後者の方法が好ましい。後者の溶解媒体中におけるSDS(界面活性剤)の役割は、アピキサバンの溶解性を増加させるためというよりむしろ、錠剤からの疎水性アピキサバンの溶解を容易にするために湿らすものとしてである。両試験からの溶解データが本発明の記録に含まれ、特に示されていない限り、示される結果は6個の錠剤からの平均であった。
【0034】
血液試料は、臨床試験プロトコールで特定されるような薬物投与後の予め定められた時点で採取する。試料濃度は、バリデーション済みの分析方法(タンデム質量分析計を備えた液体クロマトグラフィー)を用いて測定する。各対象の薬物動態パラメータ(例えば、C
max、AUC、T−HALF)は、Kinetica(登録商標)ソフトウェアを用いて、時間−濃度プロファイルから非コンパートメント法により取得する。
【0035】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに例示され、開示される:
【0036】
表3は、生物学的同等性(BE)実験で評価した乾式造粒法を用いて調製したアピキサバン錠剤組成物を示す。
表3
【表3】
【0037】
表4は、BE試験で評価した湿式造粒法を用いて調製したアピキサバン錠剤組成物を示す。
表4
【表4】
【0038】
表5および表5aは、乾式造粒法で調製された錠剤が湿式造粒法で調製されたものと比べてより速く溶解することを示す溶解データを示す。表5に示されるように、乾式造粒法を用いて調製した20mgの錠剤は、30分で79%のアピキサバンが溶解したのに対して、湿式造粒法を用いて調製した20mgの錠剤においては30分で62%のアピキサバンが溶解した。0.1N HCl中の溶解試験においても、湿式造粒法を用いて調製した錠剤(30分で45%)と比較して、乾式造粒法を用いて調製した錠剤(30分で58%)からのより速い溶解の同様の結果が示された。
表5
【表5】
表5a
【表6】
【0039】
表6および表6aは、異なる製造方法(湿式および乾式造粒法)および原薬の異なる粒径で調製した錠剤からの溶解データを提供する。表6に示されるように、30分で77%溶解し、または30分で86%溶解したアピキサバン錠剤は両方とも、30分で89%溶解した錠剤と比較した場合、生物学的同等性の基準を満たすAUC値(80%から125%の間の信頼区間)を示した。溶解速度の同様の順位は、0.1N HCl中で試験された場合のこれらの錠剤(A、BおよびC)についても実測した。
表6
【表7】
相乗平均(Geomean)(CV%)は、C
maxおよびAUC(INF)について表す。
表6a
【表8】
相乗平均(Geomean)(CV%)は、C
maxおよびAUC(INF)について表す。
【0040】
臨床試験の結果により、同様の溶解速度を有する錠剤(0.05% SLSを含有するpH6.8のリン酸緩衝液中で30分で89%および86%)について、コーティングされていない第II相の錠剤(A)と比較して、コーティングされた第III相の錠剤(C)のC
maxおよびAUCは、生物学的同等性の基準を満たすことが示された。異なる溶解速度を有する錠剤(30分で77%および86%)は、同様のAUCを有するが、C
maxについて同様の基準を満たさなかった。相乗平均C
maxの比率の90%信頼区間の下限限界値が0.788であり、これは、C
maxによって定義されるように、より遅延して溶解する錠剤について吸収速度がより低くなったことを示す(30分で77%)。これらの錠剤からの経口バイオアベイラビリティが溶液からのものと同程度であることが示されていることから(下記の
図1および2を参照)、この溶解速度(30分で77%)を、一貫した露出を達成するための閾値として定義する。
【0041】
表3および4は、粒径が溶解性に影響を与える一方、粒径を89μm以下に制御することが一貫したインビボ露出を確実にする溶解速度を生じることを表す溶解データを示す。表3および4に示されるように、一貫した露出は、アピキサバン錠剤が30分で77%以上のアピキサバンが溶解した場合に予想される。89μmを有する錠剤は、30分で77%より多く溶解するため、これらの錠剤はまた、(下記に示す10μm粒子を有する錠剤のような)より小さい粒子で調製した錠剤からの露出と同等の露出を示す。5mgのアピキサバン錠剤について、119μmのアピキサバン粒径での溶解速度が30分で77%よりわずかに高いが(
図4)、本発明の粒径の閾値は89μm以下である。このことは、溶解の結果の典型的な変動(RSD=2から3%)を許容し、錠剤からの経口バイオアベイラビリティは溶液からのものに一貫して適合するものである。