【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)還元粘度(ηsp/c)
還元粘度(ηsp/c)は、以下のとおり計測する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)の場合は以下のようになる。
・1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)0.25デシリットルにポリエチレンテレフタレート(PET)試料0.35gを室温で溶解して希釈溶液を調整する。溶媒や溶媒量については、ポリマーの種類に応じて変更することができる。
・ウベローデ粘度管(管径:0.03)を用いて希釈溶液とHFIP溶媒の落下秒数を25℃で計測し比粘度(ηsp)を求める。
・比粘度(ηsp)をポリマー濃度C(g/dl)で除して還元粘度ηsp/cを算出する。
【0071】
(2)総繊度・単糸繊度
総繊度(dtex)は、繊維束を1周1mのかせに50回転巻き取り、その糸条の重量を計測し、それを200倍した値である。単糸繊度(dtex)は、前記方法で求めた総繊度を単糸数で除した値である。
【0072】
(3)織縮み率
JIS L−1096(2010) 8.7 B法記載の方法で測定した。
たて方向及びよこ方向にそれぞれ3か所で200mmの距離に印を付け、この印内のたて糸及びよこ糸をそれぞれほどき、初荷重の下で真っすぐに張った長さ(mm)を測り、織縮みを算出した。
【0073】
(4)分解糸総繊度・単糸繊度(織物からの評価)
JIS L−1096(2010)8.9.1.1 A法に基づき測定した。
200mm×200mmの試験片を3枚採取する。1枚につき、たて糸及びよこ糸それぞれ25本の糸をほどいてその質量(mg)を量り、繊度を算出した単糸繊度は、前記方法で求めた総繊度を単糸数で除した値である。
【0074】
(5)分解糸撚り数(織物からの評価)
JIS L−1096(2010) 附属書Iに基づき測定した。検撚器を用い、生地から取り出した分解糸を20cmのつかみ幅で計測し、1mあたりの撚り数に換算した。
【0075】
(6)分解糸撚係数A
分解糸撚係数Aは、(4)の分解糸総繊度と(5)の分解糸撚り数を用いて、次式により算出した。
分解糸撚係数A=(分解糸撚り数)×(分解糸総繊度)
1/2【0076】
(7)経糸張力
糸の張力測定装置を用い、織機稼動中に経糸ビームとバックローラーの中央部分において、経糸一本当たりに加わる張力を測定した。製織稼動時間10分間の最大値5点と最小値5点を抽出し平均を取ることで経糸一本当たりの張力とし繊度で割り返した値を用いた。
【0077】
(8)経糸・緯糸の織密度
JIS L−1096(2010)8.6.1に基づき測定した。試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、異なる5か所について2.54cmの区間の経糸及び緯糸の本数を数え、それぞれの平均値を算出した。
【0078】
(9)経糸又は緯糸のカバーファクター
カバーファクターは(7)の織密度を用いて次式により算出した。
経糸カバーファクター=(経糸総繊度:dtex)
1/2×(経糸織密度:本/2.54cm)
緯糸カバーファクター=(緯糸総繊度:dtex)
1/2×(緯糸織密度:本/2.54cm)
経糸又は緯糸は、(4)の織物から評価された分解糸総繊度を用いた。
【0079】
(10)経糸重なり度(TT)、緯糸重なり度(WW)
図2に、織物の経方向の断面状態を示す。試料を通常の方法でSEM試料台にセットする。この時、垂直に乱れなく糸断面を切出すために、定規を用いて経糸の間を経糸に沿って刃を入れるように切出した。これによって任意の経糸形状と直行する緯糸断面の状態を観察できる。同様に経糸重なり度(TT)を測定する場合は、経糸断面を撮影する必要があり、緯糸の間を緯糸に沿って刃を入れる。その後、SEMにて一視野に4から6本程度のマルチフィラメントが見やすく収まる程度の倍率(倍率200倍)で断面写真を撮影した。
経糸重なり度(TT)、緯糸重なり度(WW)は、織物の経、緯方向の撮影した断面画像からX1、X2、Yの値を計測し、次式により算出した。
糸重なり度=(X1+X2)/Y
{式中、X1:任意の糸断面の幅、X2:X1に隣接する糸断面の幅、Y:X1とX2間の幅}。
経糸重なり度(TT)を測定する場合は、経糸断面画像から上記の計算式を用いて算出する。また、緯糸重なり度(WW)を測定する場合は、緯糸断面画像から上記の計算式を用いて算出する。
【0080】
(11)経糸又は緯糸断面の垂直水平方向の比
織物断面画像を(10)のように撮影し、織物断面画像から
図3のように任意の経糸及び緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)を計測し、垂直水平方向の比Dh/Dvを算出した。
【0081】
(12)経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)の経緯糸単糸繊度比は、経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)を(2)のように測定し、Dw/Dfを算出した。
【0082】
(13)糸内単糸繊度比率S
SEMにて緯糸又は経糸のマルチフィラメントが見やすく収まる程度の倍率
(倍率200倍)で糸断面写真を撮影した。観察した断面形状を印刷し、切り抜き重量法により最大と最小の重量比率を求めることにより算出した。尚、複数の糸種からなる糸条の場合には、各単糸を構成する物質の密度を考慮した。
糸内単糸繊度比率S=単糸最大重量/単糸最小重量
【0083】
(14)経糸クリンプ角度
織物断面画像を(10)に記載したように撮影し、織物断面画像から
図4のように任意の隣接する緯糸間に水平線を引き、経糸の傾きの線と交接する部分の角度θを計測した。
【0084】
(15)織物の厚み
布帛の膜厚シックネスゲージを用いて、荷重1Nの加圧下で、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さをn=5で測定し、平均値を算出した。
【0085】
(16)引裂強力
布帛の引き裂強力をJIS L−1096 6.15.1(シングルタング法)に従い、測定した。経糸方向及び緯糸方向のいずれも測定し、低い方の値をその布帛の引裂強力とした。
【0086】
(17)織物の針刺し前後の透水率
ジャガード式開口装置のシャトル織機で作製したサンプルの透水率を次の方法で測定した。ANSI/AAMI/ISO 7198:1998/2001に準拠して織物の針刺し前後の透水率測定を行う。ここで針刺し後の透水率試験は、テーパー形状の3/8ニードル針を用い、任意で1cm
2当り10回数針を通した後に測定される値である。針刺し前後ともに測定をn=5で行い、その針刺し前後の透水率W(cc/cm
2/min)の平均値を算出した。
【0087】
(18)分岐部の筒状織物の透水率(境界部を含めた透水率(l/min)
ANSI/AAMI/ISO 7198:1998/2001を参考にして透水率測定を行う。分岐部を有した筒状の医療用織物について、全長100mmで、太径部は50mm、分岐部は50mmの長さのものを準備する。この織物の太径部を、周囲をゴム被覆した金属管にかぶせ、その周状を金属バンドでしっかり固定して液漏れの無いように締める。このとき、金属バンド先端と境界部(太径部と分岐部の境界)までの長さを30mmとする。ただし、金属管は水が通るに十分な中空構造となっている。
同様に、分岐部の先端も周囲をゴム被覆した金属管にかぶせ、その周状を金属バンドでしっかり固定して液漏れの無いように締める。金属バンド先端と境界部までの長さを30mmとする。測定はn=5で行い、その平均値をとる。
【0088】
(19)引張強度・引張伸度
引張強度及び引張伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
【0089】
(20)織物の破裂強度
ANSI/AAMI/ISO 7198:1998/2001に準拠して織物の破裂強度試験をn=5で実施し、n5の測定値中の最低値を示した。
【0090】
(21)クリンプ率
織物から抜き出した経糸及び緯糸について、JIS L1096 8.7b法に準じて実施した。20本の糸について測定し、その平均値で示した。
【0091】
(22)空隙率
織物をTechnovit(Kulzer Co.Germany)等の樹脂で包埋しガラスナイフで3μmの厚みの切片を作製し、400倍の光学顕微鏡で写真を撮影する。写真上で繊維部分と繊維間隙部分の面積測定から下記式にて空隙率を算出する。
空隙率(%)=(測定布帛全体面積−個々の極細繊維束の占有する面積)/(測定布帛全体面積)×100
尚、画像面積測定は、一般的な画像処理コンピューターソフト、例えばNIH image等を用いる。
【0092】
(23)カテーテル挿入性
ステントを縫合した織物を適切に折り畳み、円筒内径が6mmのカテーテルに挿入できるか否かを評価した。無理なく挿入できる場合を〇とし、手こずる場合を△、不可能な場合を×とした。各々5本ずつ作製して評価する。
【0093】
[実施例1]
<極細繊維>
原料にポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、65dtexの未延伸糸を巻き取るべく溶融紡糸を行った。
ゲルマニウム触媒で重合された原料PETの性状は下記とおりであった。
還元粘度(ηsp/c):1.162dl/g
チタン含有量:2ppm
ジエチレングリコール含有量:0.8重量%
オリゴマー含有量:1.2重量%
用いた紡口は、孔径0.08mmφが穿孔された5重配列紡口であり、最内配列の吐出ノズル間距離が1.7mm、全配列間距離は8mmであった。糸条の冷却は、基本的に仰角37°の吹出し口を有する冷却風吹出し装置を用いた。その他は、紡糸条件(紡口表面温度303℃、紡口表面温度分布3℃、ホットゾーン長さ36mm、冷却風温度13℃、冷却風速度1m/s、速度バラツキ0.07、集束位置26.5cm)にて紡糸を行い、2000m/minで未延伸糸を巻き取った。(ホットゾーン:雰囲気温度が150℃以上に制御されている領域(紡口表面中心部から垂直方向の距離)、冷却風温度:冷却風吹出装置から吹出される冷却風の温度(冷却風の温度調整はサーモヒータを用いる)、速度バラツキ:冷風吹出し面から吹出される冷風速度のバラツキを標準偏差で表した値、集束位置:吐出された繊維束を集束する位置の事を示す)巻き取られた未延伸糸を公知の熱ロールを有する延伸機により、第1ロール温度75℃、第2ロール温度130℃で引張強度4.5cN/dtex、引張伸度30%の繊維物性となるように延伸熱処理を行い、所定の交絡ノズルを用いて交絡処理(10個/m)を行い、極細繊維を得た。
極細繊維以外のレギュラー繊維も引張強度4.5cN/dtex、引張伸度30%の繊維物性となるように延伸熱処理を行い、公知の交絡ノズルを用いて交絡処理(10個/m)を行い、レギュラー繊維を得た。
【0094】
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
経糸に用いる総繊度39.4dtex/24フィラメントは、適した紡口を選択し、溶融紡糸を行い、さらに延伸倍率を設定して作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800以上となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を0.9cN/dtex、織機回転数は80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0095】
[実施例2]
<極細繊維>
原料にポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、140dtexの未延伸糸を巻き取るべく溶融紡糸を行った。実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度72.4dtex/450フィラメントを作製した。
経糸に用いる総繊度34.1dtex/24フィラメントは、適した紡口を選択し、溶融紡糸を行い、さらに延伸倍率を設定して作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0096】
[実施例3]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度20.1dtex/155フィラメントを作製した。実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0097】
[実施例4]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
緯糸として総繊度10.2dtex/70フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0098】
[実施例5]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度20.1dtex/155フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は1000回/m(S方向撚)、緯糸は400回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。撚数が高い経糸は70℃で30分間の真空スチームセットを行い、撚り止めのセットを実施した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0099】
[
参考例6]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度20.1dtex/155フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は200回/m(S方向撚)、緯糸は300回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1に示す。
【0100】
[実施例7]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。 経糸に用いる総繊度30.3dtex/150フィラメントは、適した紡口を選択し、溶融紡糸を行い、さらに延伸倍率を設定して作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1に示す。
【0101】
[実施例8]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度50.2dtex/126フィラメントを作製した。
経糸に用いる総繊度39.4dtex/24フィラメントは、実施例1と同様の条件で作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1に示す。
【0102】
[実施例9]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
経糸に用いる総繊度39.4dtex/24フィラメントは、実施例1と同様の条件で作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は900回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800以上となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を0.1cN/dtex、織機回転数は80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0103】
[実施例10]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度20.1dtex/155フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は700回/m(S方向撚)、緯糸は50回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例9と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0104】
[実施例11]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度20.1dtex/155フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は350回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0105】
[比較例1]
<経糸、緯糸>
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸、緯糸ともに総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を0.1cN/dtex、織機回転数は80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0106】
[比較例2]
<経糸、緯糸>
経糸に用いる総繊度76.1dtex/30フィラメント、緯糸に用いる総繊度39.4dtex/24フィラメントは、適した紡口を選択し、溶融紡糸を行い、さらに延伸倍率を設定して作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0107】
[比較例3]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度20.1dtex/155フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は撚りをかけずに使用した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0108】
[比較例4]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
緯糸として総繊度10.2dtex/60フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は撚りをかけずに使用した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0109】
[比較例5]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は1000回/m(S方向撚)、緯糸は500回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0110】
[比較例6]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は500回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0111】
[比較例7]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて、経糸、緯糸ともに2000回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0112】
[比較例8]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800以上となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を3.0cN/dtex、織機回転数は80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。その結果、比較例8では、織加工過程で糸切れが多発し、布帛を得ることができなかった。これは経糸張力が1.5cN/dtex以上あり、経糸が引張荷重に耐えられず、糸切れが多発したものと考えられる。
【0113】
[比較例9]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度19.7dtex/12フィラメントと総繊度19.7dtexのモノフィラメントを公知の合撚機を用いて50回/m(S方向撚)の条件で合撚し、作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m(S方向撚)、緯糸は100回/m(S方向撚)の撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精練、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1と2に示す。
【0114】
実施例1〜
5、7〜11では、糸切れも毛羽もなく織加工の工程性も良好で得られた布帛も目標物性(厚み90μm以下、針刺し前後の透水率300cc/cm
2/min以下)を満足できた。さらにどの布帛も厚みバラツキZが全て±15%以内であった。
比較例1〜9では、針刺し前後の透水率を満足することができなかった。
比較例1、2では、これは経糸と緯糸のどちらとも単糸繊維度が太く、製織時の経糸張力が0.5cN/dtex未満で、経糸のクリンプ角度が20度以上、緯糸のカバーファクターが800未満になり、緯糸、経糸重なり度が0.9未満になったので、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が大きくなり、その結果、透水率が大きくなったと考えられる。また比較例2は経糸の総繊度が特に太いため、布帛厚みが90μm以上となった。
比較例3、4では、製織時の経糸張力が0.5cN/dtex未満で、緯糸のカバーファクターが800未満になり、緯糸、経糸重なり度が0.9未満になったので、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が大きくなり、その結果、透水率が大きくなったと考えられる。さらに比較例3では、緯糸撚係数が0であるため、実施例3に比べ、引裂強力が悪く、3N以下となっている。比較例4でも、緯糸撚係数が0であるため、実施例4に比べ、引裂強力が悪く、3N以下となっている。
比較例5では、緯糸撚係数が2000以上であったため、隣接する緯糸−緯糸間の隙間が大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。
比較例6では経糸張力が0.5cN/dtex未満で、経緯撚係数比Bが1.5以下であったため、隣接する緯糸−緯糸間の隙間が大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。
比較例7では、撚数が緯糸、経糸ともに撚数が1000回/mを超えていたため、針刺し前後の透水率を満足することができなかった。これは1000回/m以上の撚数とすることで、織物断面の経糸及び緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)の比Dh/Dvが1.5未満となり、経糸、緯糸は扁平になっておらず、糸重なり度も0.9未満になったため、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。
比較例8では、織加工過程で糸切れが多発し、布帛を得ることができなかった。これは経糸張力が1.5cN/dtex以上あり、経糸が引張荷重に耐えられず、糸切れが多発したものと考えられる。
比較例9では、モノフィラメントを経糸に混合しているため、経糸の糸内単糸繊度比率Sが2を超えたため、単糸間に隙間が発生し、透水率が大きくなったと考えられる。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
[実施例12〜14]
経糸として、織物から抜き出した糸が総繊度36dtex/単糸繊度1.5dtex、撚数500T/mとなるポリエステル繊維を用い、緯糸として、織物から抜き出した糸が総繊度26dtex/単糸繊度0.17dtex、撚数100T/mとなる極細ポリエステル繊維を用い、電子式ジャガード方式の開口装置を備えたシャトル織機において、3つのシャトルを用いて分岐型の筒状のシームレス織物を作製した。経糸本数は670本、経糸の筬への通し幅は50.0mm、筬密度16.8羽/cm、8本/羽として太径部を製織した。次いで、分岐部については経糸を中央で分けて各々335本を左側と右側の分岐部用として、境界部の織物組織は
図6に従い、分岐の前後において一重組織が形成されるようにし、一重組織に供する経糸本数は24本として製織した(実施例12)。同様に、分岐部の織物組織を
図7として、太径部のみで一重組織が形成されるようにし、一重組織に供する経糸本数は20本として製織をおこない(実施例13)、また、分岐部のみで一重組織を形成する
図8の織物組織でも製織をおこなった(実施例14)。なお、端数の経糸は適当な本数で筬入れして製織している(以下も同様)。
【0118】
[実施例15〜18]
織物から抜き出した糸が総繊度36dtex/単糸繊度1.5dtex、撚数500T/mとなるポリエステル繊維を用い、緯糸として、織物から抜き出した糸が総繊度36dtex/単糸繊度1.5dtex、撚数100T/mとなる極細ポリエステル繊維を用い、実施例1〜3と同様に、電子式ジャガード方式の開口装置を備えたシャトル織機において、3つのシャトルを用いて分岐型の筒状のシームレス織物を作製した。経糸本数は562本、経糸の筬への通し幅は49.2mm、筬密度19.1羽/cm、6本/羽として太径部を製織した。次いで、分岐部については経糸を中央で分けて各々281本を左側と右側の分岐部用として、境界部の織物組織は
図6に従い、一重組織に供する経糸本数は24本とし、分岐の前後において一重組織が形成されるようにして製織した(実施例16)。同様に、太径部と分岐部の織物組織は一重組織を成さない
図9に従い製織した(実施例15)。さらに、一重組織に供する経糸本数は4本(実施例17)と44本(実施例18)として、一重組織は
図6を縮小及び拡大させた織物組織を一重組織として製織をおこなった。
【0119】
[実施例19]
実施例1において、緯糸として、織物から抜き出した糸の総繊度が48tex/単糸繊度0.46dtex、撚数100T/mとなるポリエステル繊維として製織した。
【0120】
[実施例20]
経糸として、織物から抜き出した糸が総繊度27dtex/単糸繊度0.18dtex、500T/mとなる極細ポリエステル繊維を用い、緯糸として織物から抜き出した糸が総繊度30dtex/単糸繊度0.2dtex、100T/mとなる極細ポリエステル繊維を用い、実施例12と同様に電子式ジャガード方式の開口装置を備えたシャトル織機において、3つのシャトルを用いて分岐型の筒状のシームレス織物を作製した。経糸本数は650本、経糸の筬への通し幅は49.7mm、筬密度32.8羽/cm、4本/羽として太径部を製織した。次いで、分岐部については経糸を中央で分けて各々325本を左側と右側の分岐部用として、境界部の織物組織は
図6に従い、一重組織に供する経糸本数は24本とし、分岐の前後において一重組織が形成されるようにして製織した。
【0121】
これら製織した織物は下記の処理条件で、精練、熱セットを施し、分岐型の筒状の織物を作製した。尚、太径部と2つの分岐部にはそれぞれのシャトルを使って製織するため、境界部では太径部の緯糸を織っていたシャトルから、各々の分岐部を織る緯糸のシャトルに切り替わることになり、境界部では緯糸は連続ではなくなる。
熱セット時に型固定用として太径部の筒状織物内に挿入するステンレス棒は直径25mmの円柱状を有し、その先端は少し扁平になっており、分岐部は直径12mmの円柱状となった構造である。熱セットでは、
図9に示すような形状のステンレス棒を用いたが、境界部の織組織の形状や目的の密度に応じて、適宜太径部や分岐部の先端の形状や太さをかえることがシワのない筒状の織物をつくる上で好ましい。特に、分岐部では一重組織等によって、筒状の織物の径が小さくなることを考慮したステンレス棒の作製が必要である。
【0122】
処理を終えた仕上げ反(実施例12〜16)の諸特性は以下の表3と4に示す通りであり、これらの実施例においては、厚み、破裂強度、通常基布部の透水率、分岐部における透水率において優れていることが判る。尚、分岐部前後での織物組織に一重組織がないもの(
図5)では、分岐部で目開きが生じたため分岐部を含めた透水率が高かった。
【0123】
(精練条件)
・90℃の炭酸ナトリウム水溶液(濃度:5g/l)中で1時間撹拌洗浄。
・90℃の超純水で30分の撹拌洗浄を3回繰り返す。
・室温で2軸方向に定長乾燥する。
(熱セット条件)
・予め恒温槽内で180℃に加温しておいたφ50mm×200mm長のステンレス製の芯棒に精練、乾燥後の織物を通し、200mm長さの織物の両端を、ホースバンドを用いて皺にならないよう、かつ、弛みの無いようにセット固定する。
・織物を固定したステンレス製芯棒を180℃の恒温槽に投入し、恒温槽内の温度が180℃にコントロールされた時点から20分間熱セットを行う。
(滅菌処理条件)
・185℃の恒温槽内で30分間熱処理する。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】