【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、上述した電気コンタクト素子によって解決され
る。コンタクト素子は、粒子が付着するように配置された少なくとも1つの領域を有し、粒子の少なくとも一部が導電性コンタクト材料内へ少なくとも部分的に貫入し、少なくとも1つの領域は、粒子を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、粒子は、電気コンタクト素子が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して相手導体に少なくとも部分的に貫入する。上述した方法の場合、コンタクト素子の少なくとも1つの領域上に粒子が高速で堆積し、粒子の少なくとも一部は、コンタクト材料内へ少なくとも部分的に貫入する
。
【0005】
本発明による解決策は、知られているコンタクト素子および方法と比較すると、著しい利点を提供する。粒子の少なくとも一部は、コンタクト材料内へ貫入している。したがってこれらの粒子は、コンタクト材料内へ突出する。その結果、粒子とコンタクト材料との間で良好な導電性と良好な付着性の両方が得られる。固体の粒子または乾燥した粒子を使用することができ、その結果、湿式化学方法を不要にすることが可能になる。同様に、コンタクト材料上へ堆積させることが意図される材料を最初に液体または気体の凝集状態にすることを不要にすることが可能である。改善された機械的特性および/または電気的特性を有する領域を形成することが意図される材料は、粒子の形で存在することだけが必要であり、これらの粒子をコンタクト素子の方へ加速させければならない。本発明によるコンタクト素子は、接続タイプの要件に準拠して形成することができる。たとえば、相手コンタクト素子への接続のために少なくとも1つのコンタクト表面を有することができる。別法または追加として、少なくとも1つの電気導体への接続のために少なくとも1つの圧着部を有することができる。
【0006】
粒子がコンタクト素子に高速で当たる結果、粒子の少なくとも一部は、コンタクト材料内へ少なくとも部分的に貫入し、その結果、コンタクト材料内に機械的に固定される。さらに、粒子の運動エネルギーが高いため、粒子の少なくとも1つの表面および/またはコンタクト材料の少なくとも1つの表面がわずかに表面融合することが可能であり、それにより粒子がコンタクト材料に堅固に付着する。しかし、粒子および/またはコンタクト材料は概して、それらの溶融温度より高い温度には加熱されず、つまり材料の完全な融合またはこれらの合金の形成は行われない。粒子がコンタクト材料に衝突するとき、コンタクト材料と粒子の両方が変形することができる。たとえば、コンタクト材料は、隆起を形成することができ、粒子は、コンタクト材料上に押しつぶすことができる。
【0007】
粒子の材料は、所望の用途に対して選択することができる。領域の電気的特性および/または機械的特性を粒子により改善するために、たとえば金、銀、スズ、真鍮、青銅、亜鉛、またはそのような金属の合金を使用することができる。しかし、たとえばコンタクト材料の領域内で機械的摩擦のみを増大させるために、または掴んだときにコンタクト素子をより滑りにくくするために、非導電性材料の粒子を使用することもできる。
【0008】
本発明による解決策は、それぞれ個々に有利な様々な構成によってさらに改善することができ、これらの構成は、所望される場合、互いに組み合わせることができる。以下、これらの構成およびそれに関連する利点について説明するものとする。
【0009】
上述した電気コンタクト素子は、本発明による方法の一実施形態によって製造することによってさらに改善することができる。特に好ましくは、粒子は、ガスダイナミックコールドスプレーによってコンタクト材料上に堆積される。コンタクト素子はまた、好ましくは、コンタクト材料との合金を形成しない粒子を有する。
【0010】
コンタクト素子は、相手コンタクト素子への接続のための少なくとも1つのコンタクト表面を有することができ、少なくとも1つの領域は、少なくとも1つのコンタクト表面に少なくとも部分的に重なることができる。その結果、コンタクト表面は、少なくとも部分的に粒子を有することができる。粒子の堆積に続いて、粒子を有する少なくとも1つの領域が加熱されなかった場合、コンタクト素子は、この場合、コンタクト表面のこの領域内に粗い表面を有することができる。これは、相手コンタクト素子に頻繁に接続することが意図されないコンタクト素子にとって有利となり得るが、そのための決定的要因は、相手コンタクト素子への良好な機械的かつ電気的接続である。コンタクト表面上のこれらの粒子は、接続中に相手コンタクト素子のコンタクト表面に傷を付けることができ、それにより存在し得る酸化物層が破裂する。これらの粒子は、同様に、相手コンタクト素子のコンタクト表面内へ少なくとも部分的に貫入することができ、それにより、接続された状態で、2つのコンタクト素子間に良好な導電性を形成することができる。
【0011】
コンタクト素子のコンタクト表面に重なる粒子を有する領域に対する別法または追加として、コンタクト素子は、少なくとも1つの圧着部を有することができ、少なくとも1つの圧着部に、粒子を有する少なくとも1つの領域が少なくとも部分的に重なる。圧着部内、特に圧着フランクの表面上に粒子を有する領域は、たとえば圧着部内に保持された銅またはアルミニウムのワイアなどの電気導体への機械接続と電気接続の両方を改善するのに有利である。特にアルミニウムのワイアについては、アルミニウムの場合に空気中で常に利用可能な酸化物層を破裂させるために、圧着フランクまたは圧着部の表面が粗いことが有利である。同時に、圧着部内の粒子は、圧着部内に保持された電気導体内へ部分的に貫入することができ、それにより圧着された導体の引張り強度を増大させることができる。
【0012】
コンタクト材料は、基本表面構造を少なくとも部分的に有することができ、粒子は、基本表面構造内へ貫入している。たとえば、コンタクト材料は、刻印された構造を有することができる。これらは、たとえばリブ、溝、こぶ、または折曲げ縁によって形成することができる。コンタクト素子は、好ましくは、電気導体に対する受取り方向に直交して、刻印された溝またはリブから形成された基本表面構造を有する圧着部を有する。さらに、これらの溝またはリブ上に粒子を堆積させることができ、したがって特に良好な機械的保持特性を有することができる基本表面構造が形成される。基本表面構造が突起を有し、そのような突起上に粒子が配置された場合、粒子は、圧着部内の電気導体内へよく貫入することが可能であり、したがって上述したように、コンタクト素子と電気導体との間の接続の電気的特性および機械的特性を改善することができる。
【0013】
粒子が配置される少なくとも1つの領域は、粒子を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有する
。粗さがより大きいことは、上述した電気的特性および/または機械的特性を改善するために有利となり得る。
【0014】
粒子を有する少なくとも1つの領域内で、これらの粒子は、互いに少なくとも部分的に連結することができる。たとえば、互いに隣接する2つの粒子は、それぞれ互いの中へ部分的に貫入するように配置することができる。この結果、コンタクト材料上の粒子の特に良好な安定性を得ることができる。
【0015】
粒子を有する特に均一の被覆を実現し、かつ/またはコンタクト材料および/もしくは互いに対する粒子の付着性をさらに改善するために、これらの粒子は、粒子を有する少なくとも1つの領域内で、互いに少なくとも部分的に融合することができる。
【0016】
コンタクト材料上の均一の連続する被覆は、互いに融合した粒子によって形成することができる。粒子を互いに部分的にのみ融合させた場合、いくつかの粒子間で間隙または孔を開けたままにした層を形成することも可能である。融合度によって、層の厚さと粗さの両方を調整することができる。粒子は、好ましくは、電子ビームなどの高エネルギービームを衝突させることによって、互いに融合させることができる。これには、粒子の材料とコンタクト材料との間に合金が形成されないほど迅速に融合が行われるという利点がある。
【0017】
粒子を有する少なくとも1つの領域内で高い層の厚さを得るために、この領域内の粒子の少なくとも一部を、コンタクト材料上に少なくとも複数の層で配置することができる。
【0018】
これらの粒子は、特に粒子が少なくとも部分的に複数の層内に配置された領域内で、互いの中へ部分的に貫入することができる。
【0019】
本発明による方法は、粒子をガス流を使用して輸送することによってさらに改善することができる。この場合、粒子は、好ましくは、超音速で、たとえば毎秒400メートルを上回る速度で堆積される。粒子は、特に好ましくは、毎秒500〜1000メートルの速度を有する。この速度は、領域内の粒子がコンタクト材料内へどれだけ深く貫入するか、およびこれらの粒子がコンタクト材料にどれだけよく付着するかに関連しうる。たとえば、より高速の場合、粒子は、コンタクト材料内へより深く貫入することができるが、コンタクト素子に衝突するときに生じる力によって、粒子自体もより強く変形する。この速度は、所望の使用分野、選択された材料、および粒子によって形成される被覆の所望の形態に応じて選択することができる。
【0020】
粒子は、特に好ましくは、粒子ビームの形でコンタクト素子上へ放射される。粒子ビームの使用は、空間的に、特に横方向に範囲が制限され、それによりコンタクト素子上への粒子の選択的な付与が可能になるため、特に有利である。粒子は、特に好ましくは、ガスダイナミックコールドスプレーによってコンタクト素子上へ堆積される。
【0021】
粒子の直径および形態は、所望の用途に対して選択することができる。粒子が1〜50μmの直径を有する場合、特に有利である。このサイズの粒子は、一方では、たとえばガス噴射によってよく加速することができ、コンタクト材料上に薄い層を形成するために使用することができる。これらの粒子は球形とすることができる。しかし、粒子はまた、たとえば、断片の形態または立方体などの結晶形の形態など、他の形態を有することもできる。
【0022】
コンタクト材料上へ堆積した粒子は、コンタクト材料上に粗い表面を形成することができる。これは特に、粒子または粒子の集塊が互いから隔置された場合に当てはまる。粗い表面は、たとえばコンタクト素子が相手コンタクト素子または電気導体に接続されたとき、電気接続を改善するように、相手コンタクト素子上または導体上の酸化物層を破裂させるために特に有利である。同様に、コンタクト材料上に堅固に配置された粒子は、別のコンタクト素子または電気導体内へ少なくとも部分的に貫入することができ、やはり導電性を改善することができる。
【0023】
他方では、コンタクト材料上の粒子が均一の表面または平滑な表面を形成することが所望される場合、粒子が堆積した後に、コンタクト素子を少なくとも部分的に加熱することができる。個々の粒子が互いに融合し/またはコンタクト材料と融合することができるように、少なくとも粒子を有する領域を加熱することが所望される場合、少なくともコンタクト素子のうち、粒子を有する少なくとも1つの領域を有する部分を加熱することができる。コンタクト素子を製造するとき、たとえば一部をはんだ付けまたは溶接するためにコンタクト素子のうち粒子を有していない領域を加熱する必要がある場合、粒子の領域内の温度が融点を超過しない限り、これらは部分的な加熱によって損傷されないため、粒子の堆積に続いてこの加熱を行うこともできる。
【0024】
粒子を有する少なくとも1つの領域を加熱するために、この領域が選択的に加熱されることが特に有利である。粒子を有する少なくとも1つの領域は、好ましくは、粒子が堆積した後、高エネルギービームによって、特に好ましくは電子ビームによって、少なくとも部分的に加熱される。別法として、たとえばレーザ、X線、または電子以外の部分から形成された物質の噴射など、他の高エネルギータイプの放射を使用することもできる。
【0025】
コンタクト材料上へ粒子を堆積させるときに高い空間分解能を実現するために、マスクを使用することができ、粒子ビームがマスクによって覆われていない部分のみに到達することを可能にする。このときマスクは、粒子源、たとえばガスダイナミックコールドスプレーデバイスのノズルと、コンタクト素子との間に配置される。
【0026】
改善された機械的特性および/または電気的特性を有する電気コンタクト素子の形成または少なくともその領域の形成は、粒子の付与前後のさらなる被覆方法を除外する。特定の特性が必要とされる場合、コンタクト素子はまた、印刷技法または化学気相成長によって、たとえばガルバーニ電気によって、さらに被覆することができる。
【0027】
以下、本発明について、図面を参照する有利な実施形態を使用して、例としてさらに詳細に説明する。実施形態に例として示す特徴の組合せは、上記による特定の用途に対する追加の特徴によって適宜補足することができる。また、上記によれば、記載した実施形態において、その特徴の影響が特有の用途で重要でない場合、個々の特徴を省略することも可能である。
【0028】
図面では、同じ機能および/または同じ設計を有する要素に対して、同じ参照符号を常に使用する。