特許第6578025号(P6578025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578025
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】電気コンタクト素子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/03 20060101AFI20190909BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20190909BHJP
   H01R 13/04 20060101ALI20190909BHJP
   H01R 43/16 20060101ALN20190909BHJP
【FI】
   H01R13/03 Z
   H01R4/18 A
   H01R13/04 E
   !H01R43/16
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-562974(P2017-562974)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公表番号】特表2018-521463(P2018-521463A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】EP2016062889
(87)【国際公開番号】WO2016198394
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】102015210460.5
(32)【優先日】2015年6月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ザックス,ゼーンケ
(72)【発明者】
【氏名】ザイペル,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】グライナー,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール,クリスティアン
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−164934(JP,A)
【文献】 特開2011−233273(JP,A)
【文献】 特開平06−296920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/03
H01R 13/04
H01R 4/18
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性コンタクト材料(3)から形成された電気コンタクト素子(1)であって、相手コンタクト素子への接続のための少なくとも1つのコンタクト表面(5)を有し、粒子(17)が付着するように配置された少なくとも1つの領域(15)を含み、前記粒子(17)の少なくとも一部は、前記導電性コンタクト材料(3)内へ少なくとも部分的に貫入し、
前記少なくとも1つの領域(15)は、前記粒子(17)を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、かつ、前記少なくとも1つのコンタクト表面(5)に少なくとも部分的に重なっており、
前記粒子は、前記電気コンタクト素子(1)が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して前記相手導体に少なくとも部分的に貫入する、
ことを特徴とする電気コンタクト素子(1)。
【請求項2】
導電性コンタクト材料(3)から形成された電気コンタクト素子(1)であって、粒子(17)が付着するように配置された少なくとも1つの領域(15)を含み、前記粒子(17)の少なくとも一部は、前記導電性コンタクト材料(3)内へ少なくとも部分的に貫入し、
前記少なくとも1つの領域(15)は、前記粒子(17)を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、
前記粒子は、前記電気コンタクト素子(1)が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して前記相手導体に少なくとも部分的に貫入
前記導電性コンタクト材料(3)は、基本表面構造(11)を有し、前記粒子(17)は、前記基本表面構造(11)内へ少なくとも部分的に貫入している、
ことを特徴とする電気コンタクト素子(1)。
【請求項3】
導電性コンタクト材料(3)から形成された電気コンタクト素子(1)であって、粒子(17)が付着するように配置された少なくとも1つの領域(15)を含み、前記粒子(17)の少なくとも一部は、前記導電性コンタクト材料(3)内へ少なくとも部分的に貫入し、
前記少なくとも1つの領域(15)は、前記粒子(17)を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、
前記粒子は、前記電気コンタクト素子(1)が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して前記相手導体に少なくとも部分的に貫入
前記少なくとも1つの領域(15)内で、前記粒子(17)の少なくとも一部は、互いに少なくとも部分的に連結している、
ことを特徴とする電気コンタクト素子(1)。
【請求項4】
導電性コンタクト材料(3)から形成された電気コンタクト素子(1)であって、粒子(17)が付着するように配置された少なくとも1つの領域(15)を含み、前記粒子(17)の少なくとも一部は、前記導電性コンタクト材料(3)内へ少なくとも部分的に貫入し、
前記少なくとも1つの領域(15)は、前記粒子(17)を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、
前記粒子は、前記電気コンタクト素子(1)が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して前記相手導体に少なくとも部分的に貫入
前記少なくとも1つの領域(15)内で、前記粒子(17)の少なくとも一部は、互いに少なくとも部分的に融合している、
ことを特徴とする電気コンタクト素子(1)。
【請求項5】
導電性コンタクト材料(3)から形成された電気コンタクト素子(1)であって、粒子(17)が付着するように配置された少なくとも1つの領域(15)を含み、前記粒子(17)の少なくとも一部は、前記導電性コンタクト材料(3)内へ少なくとも部分的に貫入し、
前記少なくとも1つの領域(15)は、前記粒子(17)を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、
前記粒子は、前記電気コンタクト素子(1)が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して前記相手導体に少なくとも部分的に貫入
前記少なくとも1つの領域(15)内で、前記粒子(17)の少なくとも一部は、前記導電性コンタクト材料(3)上にいくつかの層で配置されている、
ことを特徴とする電気コンタクト素子(1)。
【請求項6】
導電性コンタクト材料(3)から形成された電気コンタクト素子(1)であって、粒子(17)が付着するように配置された少なくとも1つの領域(15)を含み、前記粒子(17)の少なくとも一部は、前記導電性コンタクト材料(3)内へ少なくとも部分的に貫入し、
前記少なくとも1つの領域(15)は、前記粒子(17)を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、
前記粒子は、前記電気コンタクト素子(1)が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して前記相手導体に少なくとも部分的に貫入
前記粒子(17)は、互いの中へ少なくとも部分的に貫入している、
ことを特徴とする電気コンタクト素子(1)。
【請求項7】
前記電気コンタクト素子(1)は、少なくとも1つの圧着部(7)を有し、前記少なくとも1つの圧着部(7)に、前記少なくとも1つの領域(15)が少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気コンタクト素子(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性コンタクト材料から形成された電気コンタクト素子に関する。本発明はさらに、導電性コンタクト材料から製造された電気コンタクト素子の少なくとも1つの領域の機械的特性および/または電気的特性を変える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、コンタクトピン、メスコネクタ、圧着コネクタ、またはケーブルシューなどの電気コンタクト素子の場合、コンタクト素子の大部分が製造されるコンタクト材料の特性とは異なる特性を有する特定の領域を備えることが必要になることが多い。たとえば、さらなるコンタクト素子に接続する働きをすることができるコンタクト素子のコンタクト表面は、別のコンタクト素子への電気接続を改善するために、増大された伝導率、改善された耐腐食性、またはより大きい機械的硬度を備えることが必要になる可能性がある。また、たとえば接続が頻繁に行われる場合、耐久性または寿命を増大させることが必要になることも多い。概して、そのような領域を形成するために、高価で複雑な方法が使用されている。たとえば、電気めっきまたは化学気相成長によって、コンタクト材料上へ少なくとも1つのさらなる材料が堆積される。実際、そのような方法は、所望の結果をもたらすことができるが、概して高価であり、いくつかの作業ステップを必要とし、材料費が高く、概して選択度が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、コンタクト素子の特定の領域にコンタクト材料とは異なる電気的特性および/または機械的特性を提供することを可能し、少ない形成ステップで迅速かつ安価に製造することができる、上述したタイプの電気コンタクト素子および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、上述した電気コンタクト素子によって解決される。コンタクト素子は、粒子が付着するように配置された少なくとも1つの領域を有し、粒子の少なくとも一部が導電性コンタクト材料内へ少なくとも部分的に貫入し、少なくとも1つの領域は、粒子を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有し、粒子は、電気コンタクト素子が電気的に接続される相手導体の表面上の酸化物層を破裂して相手導体に少なくとも部分的に貫入する。上述した方法の場合、コンタクト素子の少なくとも1つの領域上に粒子が高速で堆積し、粒子の少なくとも一部は、コンタクト材料内へ少なくとも部分的に貫入する
【0005】
本発明による解決策は、知られているコンタクト素子および方法と比較すると、著しい利点を提供する。粒子の少なくとも一部は、コンタクト材料内へ貫入している。したがってこれらの粒子は、コンタクト材料内へ突出する。その結果、粒子とコンタクト材料との間で良好な導電性と良好な付着性の両方が得られる。固体の粒子または乾燥した粒子を使用することができ、その結果、湿式化学方法を不要にすることが可能になる。同様に、コンタクト材料上へ堆積させることが意図される材料を最初に液体または気体の凝集状態にすることを不要にすることが可能である。改善された機械的特性および/または電気的特性を有する領域を形成することが意図される材料は、粒子の形で存在することだけが必要であり、これらの粒子をコンタクト素子の方へ加速させければならない。本発明によるコンタクト素子は、接続タイプの要件に準拠して形成することができる。たとえば、相手コンタクト素子への接続のために少なくとも1つのコンタクト表面を有することができる。別法または追加として、少なくとも1つの電気導体への接続のために少なくとも1つの圧着部を有することができる。
【0006】
粒子がコンタクト素子に高速で当たる結果、粒子の少なくとも一部は、コンタクト材料内へ少なくとも部分的に貫入し、その結果、コンタクト材料内に機械的に固定される。さらに、粒子の運動エネルギーが高いため、粒子の少なくとも1つの表面および/またはコンタクト材料の少なくとも1つの表面がわずかに表面融合することが可能であり、それにより粒子がコンタクト材料に堅固に付着する。しかし、粒子および/またはコンタクト材料は概して、それらの溶融温度より高い温度には加熱されず、つまり材料の完全な融合またはこれらの合金の形成は行われない。粒子がコンタクト材料に衝突するとき、コンタクト材料と粒子の両方が変形することができる。たとえば、コンタクト材料は、隆起を形成することができ、粒子は、コンタクト材料上に押しつぶすことができる。
【0007】
粒子の材料は、所望の用途に対して選択することができる。領域の電気的特性および/または機械的特性を粒子により改善するために、たとえば金、銀、スズ、真鍮、青銅、亜鉛、またはそのような金属の合金を使用することができる。しかし、たとえばコンタクト材料の領域内で機械的摩擦のみを増大させるために、または掴んだときにコンタクト素子をより滑りにくくするために、非導電性材料の粒子を使用することもできる。
【0008】
本発明による解決策は、それぞれ個々に有利な様々な構成によってさらに改善することができ、これらの構成は、所望される場合、互いに組み合わせることができる。以下、これらの構成およびそれに関連する利点について説明するものとする。
【0009】
上述した電気コンタクト素子は、本発明による方法の一実施形態によって製造することによってさらに改善することができる。特に好ましくは、粒子は、ガスダイナミックコールドスプレーによってコンタクト材料上に堆積される。コンタクト素子はまた、好ましくは、コンタクト材料との合金を形成しない粒子を有する。
【0010】
コンタクト素子は、相手コンタクト素子への接続のための少なくとも1つのコンタクト表面を有することができ、少なくとも1つの領域は、少なくとも1つのコンタクト表面に少なくとも部分的に重なることができる。その結果、コンタクト表面は、少なくとも部分的に粒子を有することができる。粒子の堆積に続いて、粒子を有する少なくとも1つの領域が加熱されなかった場合、コンタクト素子は、この場合、コンタクト表面のこの領域内に粗い表面を有することができる。これは、相手コンタクト素子に頻繁に接続することが意図されないコンタクト素子にとって有利となり得るが、そのための決定的要因は、相手コンタクト素子への良好な機械的かつ電気的接続である。コンタクト表面上のこれらの粒子は、接続中に相手コンタクト素子のコンタクト表面に傷を付けることができ、それにより存在し得る酸化物層が破裂する。これらの粒子は、同様に、相手コンタクト素子のコンタクト表面内へ少なくとも部分的に貫入することができ、それにより、接続された状態で、2つのコンタクト素子間に良好な導電性を形成することができる。
【0011】
コンタクト素子のコンタクト表面に重なる粒子を有する領域に対する別法または追加として、コンタクト素子は、少なくとも1つの圧着部を有することができ、少なくとも1つの圧着部に、粒子を有する少なくとも1つの領域が少なくとも部分的に重なる。圧着部内、特に圧着フランクの表面上に粒子を有する領域は、たとえば圧着部内に保持された銅またはアルミニウムのワイアなどの電気導体への機械接続と電気接続の両方を改善するのに有利である。特にアルミニウムのワイアについては、アルミニウムの場合に空気中で常に利用可能な酸化物層を破裂させるために、圧着フランクまたは圧着部の表面が粗いことが有利である。同時に、圧着部内の粒子は、圧着部内に保持された電気導体内へ部分的に貫入することができ、それにより圧着された導体の引張り強度を増大させることができる。
【0012】
コンタクト材料は、基本表面構造を少なくとも部分的に有することができ、粒子は、基本表面構造内へ貫入している。たとえば、コンタクト材料は、刻印された構造を有することができる。これらは、たとえばリブ、溝、こぶ、または折曲げ縁によって形成することができる。コンタクト素子は、好ましくは、電気導体に対する受取り方向に直交して、刻印された溝またはリブから形成された基本表面構造を有する圧着部を有する。さらに、これらの溝またはリブ上に粒子を堆積させることができ、したがって特に良好な機械的保持特性を有することができる基本表面構造が形成される。基本表面構造が突起を有し、そのような突起上に粒子が配置された場合、粒子は、圧着部内の電気導体内へよく貫入することが可能であり、したがって上述したように、コンタクト素子と電気導体との間の接続の電気的特性および機械的特性を改善することができる。
【0013】
粒子が配置される少なくとも1つの領域は、粒子を有していない隣接領域内より大きい表面粗さを有する粗さがより大きいことは、上述した電気的特性および/または機械的特性を改善するために有利となり得る。
【0014】
粒子を有する少なくとも1つの領域内で、これらの粒子は、互いに少なくとも部分的に連結することができる。たとえば、互いに隣接する2つの粒子は、それぞれ互いの中へ部分的に貫入するように配置することができる。この結果、コンタクト材料上の粒子の特に良好な安定性を得ることができる。
【0015】
粒子を有する特に均一の被覆を実現し、かつ/またはコンタクト材料および/もしくは互いに対する粒子の付着性をさらに改善するために、これらの粒子は、粒子を有する少なくとも1つの領域内で、互いに少なくとも部分的に融合することができる。
【0016】
コンタクト材料上の均一の連続する被覆は、互いに融合した粒子によって形成することができる。粒子を互いに部分的にのみ融合させた場合、いくつかの粒子間で間隙または孔を開けたままにした層を形成することも可能である。融合度によって、層の厚さと粗さの両方を調整することができる。粒子は、好ましくは、電子ビームなどの高エネルギービームを衝突させることによって、互いに融合させることができる。これには、粒子の材料とコンタクト材料との間に合金が形成されないほど迅速に融合が行われるという利点がある。
【0017】
粒子を有する少なくとも1つの領域内で高い層の厚さを得るために、この領域内の粒子の少なくとも一部を、コンタクト材料上に少なくとも複数の層で配置することができる。
【0018】
これらの粒子は、特に粒子が少なくとも部分的に複数の層内に配置された領域内で、互いの中へ部分的に貫入することができる。
【0019】
本発明による方法は、粒子をガス流を使用して輸送することによってさらに改善することができる。この場合、粒子は、好ましくは、超音速で、たとえば毎秒400メートルを上回る速度で堆積される。粒子は、特に好ましくは、毎秒500〜1000メートルの速度を有する。この速度は、領域内の粒子がコンタクト材料内へどれだけ深く貫入するか、およびこれらの粒子がコンタクト材料にどれだけよく付着するかに関連しうる。たとえば、より高速の場合、粒子は、コンタクト材料内へより深く貫入することができるが、コンタクト素子に衝突するときに生じる力によって、粒子自体もより強く変形する。この速度は、所望の使用分野、選択された材料、および粒子によって形成される被覆の所望の形態に応じて選択することができる。
【0020】
粒子は、特に好ましくは、粒子ビームの形でコンタクト素子上へ放射される。粒子ビームの使用は、空間的に、特に横方向に範囲が制限され、それによりコンタクト素子上への粒子の選択的な付与が可能になるため、特に有利である。粒子は、特に好ましくは、ガスダイナミックコールドスプレーによってコンタクト素子上へ堆積される。
【0021】
粒子の直径および形態は、所望の用途に対して選択することができる。粒子が1〜50μmの直径を有する場合、特に有利である。このサイズの粒子は、一方では、たとえばガス噴射によってよく加速することができ、コンタクト材料上に薄い層を形成するために使用することができる。これらの粒子は球形とすることができる。しかし、粒子はまた、たとえば、断片の形態または立方体などの結晶形の形態など、他の形態を有することもできる。
【0022】
コンタクト材料上へ堆積した粒子は、コンタクト材料上に粗い表面を形成することができる。これは特に、粒子または粒子の集塊が互いから隔置された場合に当てはまる。粗い表面は、たとえばコンタクト素子が相手コンタクト素子または電気導体に接続されたとき、電気接続を改善するように、相手コンタクト素子上または導体上の酸化物層を破裂させるために特に有利である。同様に、コンタクト材料上に堅固に配置された粒子は、別のコンタクト素子または電気導体内へ少なくとも部分的に貫入することができ、やはり導電性を改善することができる。
【0023】
他方では、コンタクト材料上の粒子が均一の表面または平滑な表面を形成することが所望される場合、粒子が堆積した後に、コンタクト素子を少なくとも部分的に加熱することができる。個々の粒子が互いに融合し/またはコンタクト材料と融合することができるように、少なくとも粒子を有する領域を加熱することが所望される場合、少なくともコンタクト素子のうち、粒子を有する少なくとも1つの領域を有する部分を加熱することができる。コンタクト素子を製造するとき、たとえば一部をはんだ付けまたは溶接するためにコンタクト素子のうち粒子を有していない領域を加熱する必要がある場合、粒子の領域内の温度が融点を超過しない限り、これらは部分的な加熱によって損傷されないため、粒子の堆積に続いてこの加熱を行うこともできる。
【0024】
粒子を有する少なくとも1つの領域を加熱するために、この領域が選択的に加熱されることが特に有利である。粒子を有する少なくとも1つの領域は、好ましくは、粒子が堆積した後、高エネルギービームによって、特に好ましくは電子ビームによって、少なくとも部分的に加熱される。別法として、たとえばレーザ、X線、または電子以外の部分から形成された物質の噴射など、他の高エネルギータイプの放射を使用することもできる。
【0025】
コンタクト材料上へ粒子を堆積させるときに高い空間分解能を実現するために、マスクを使用することができ、粒子ビームがマスクによって覆われていない部分のみに到達することを可能にする。このときマスクは、粒子源、たとえばガスダイナミックコールドスプレーデバイスのノズルと、コンタクト素子との間に配置される。
【0026】
改善された機械的特性および/または電気的特性を有する電気コンタクト素子の形成または少なくともその領域の形成は、粒子の付与前後のさらなる被覆方法を除外する。特定の特性が必要とされる場合、コンタクト素子はまた、印刷技法または化学気相成長によって、たとえばガルバーニ電気によって、さらに被覆することができる。
【0027】
以下、本発明について、図面を参照する有利な実施形態を使用して、例としてさらに詳細に説明する。実施形態に例として示す特徴の組合せは、上記による特定の用途に対する追加の特徴によって適宜補足することができる。また、上記によれば、記載した実施形態において、その特徴の影響が特有の用途で重要でない場合、個々の特徴を省略することも可能である。
【0028】
図面では、同じ機能および/または同じ設計を有する要素に対して、同じ参照符号を常に使用する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】開かれた圧着フランクを有する本発明によるコンタクト素子の例示的な実施形態の概略上面図である。
図2】単層の粒子被覆を有するコンタクト表面の領域内の本発明によるコンタクト素子の断面図である。
図3】部分的に多層の粒子被覆を有する、図2と同様の断面図である。
図4】単層の粒子層から形成された加熱プロセス後の被覆を示す図である。
図5】多層の粒子層から形成された加熱プロセス後の被覆を示す図である。
図6】堆積した粒子を有するコンタクト素子の有利な圧着部の断面図である。
図7】粒子が融合した後の図6の圧着部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、導電性コンタクト材料3から形成された本発明による電気コンタクト素子1を単なる例として概略的に示す。コンタクト素子1は、別のコンタクト素子への接続のための少なくとも1つのコンタクト表面5を有する。電気コンタクト素子1は、好ましくは、コンタクト材料3からの打抜きした屈曲部として形成される。しかし別法として、電気コンタクト素子1は、一体部分として形成することもできる。
【0031】
コンタクト素子1は、別の導電性素子への接続のための少なくとも1つのコンタクト表面5を有する。単なる例として、2つの圧着フランク9を有する圧着部7を備えるコンタクト素子1が示されている。図1は、折り返された圧着フランク9を有するコンタクト素子を示し、圧着部7内に電気導体は保持されていない。
【0032】
圧着部7は、圧着部7内に保持するべき電気導体への電気および機械接続を改善することができる基本表面構造11を有することができる。単なる例として、基本表面構造11をコンタクト材料3内に刻印された溝13として示す。基本表面構造11はまた、他の適した形態によって形成することができる。同様に、コンタクト素子1の他の領域も基本表面構造11を有することができる。しかし見やすいように、これらは図示しない。
【0033】
単なる例として、粒子(図1には図示せず)を有する2つの領域15を有する電気コンタクト素子1を示す。この場合、領域15がコンタクト表面5に重なり、さらなる領域15が圧着部7に重なる。コンタクト表面5に重なる領域15の例示的な構成について、図2〜5を参照してより詳細に説明する。圧着部7に重なる領域15の構成については、図6および図7を参照してより詳細に説明する。
【0034】
以下、粒子17を有する領域15の第1の有利な構成について説明する。図2は、図1にA−Aとして示す断面線に沿ったコンタクト表面5の領域内のコンタクト素子1の断面図を概略的に示す。コンタクト材料3上に、堆積した粒子17が存在し、コンタクト素子1の表面19に付着するように配置されている。粒子17は、好ましくは、本発明による方法を使用してコンタクト材料3上へ堆積されている。
【0035】
粒子17の図示の形態は、見やすさという目的のみが意図されたものである。原則的に、粒子17をコンタクト材料3上へ十分に迅速に堆積させることを可能にする任意の形態が可能である。たとえば、粒子17は、球形、滴形とすることができ、または均一でない断片の形態をとることもできる。結晶を形成する材料の場合、粒子17はまた、立方体または他の角のある形状を有することもできる。
【0036】
粒子17の少なくともいくつかは、コンタクト材料3内へ部分的に貫入する。これらの位置では、粒子17によってコンタクト材料3を少なくとも部分的に変位させることができる。同様に、粒子17がコンタクト材料3から跳ね返ることによって、表面19内に起伏または隆起が形成されることも可能である。たとえば、表面19内にクレータ状の構造を形成することができる。コンタクト材料3の部分的な変形は、表面19への粒子17の付着性を改善する働きをすることができる。さらに、表面19の形状の変更はまた、表面粗さを増大させるために有利である。
【0037】
粒子17のいくつかは、粒子の集塊21を形成し、集塊21ではいくつかの粒子17が互いに付着している。集塊21の粒子17は、互いの中へ部分的に貫入することができる。粒子17はまた、領域15内の表面19上に網状の構造(図示せず)を形成することができる。個々の粒子17のいくつかと粒子の集塊21との間に、空の位置23を設けることもでき、空の位置23を通って外側からコンタクト材料3にアクセス可能である。この構造の結果、コンタクト素子1は、領域15内に高度の粗さを有することができる。そのような構造は、たとえば、薄層または単層の粒子17のみを形成することが意図される場合に得ることができる。この場合、粒子は、より低速で、またはより小さい粒子密度で、コンタクト材料3上へ堆積し、つまりコンタクト材料3は完全には被覆されない。
【0038】
図3は、単なる例として、コンタクト表面5の領域内の電気コンタクト素子1の断面図(図1に断面線A−Aによって示す)を示す被覆された領域のさらなる例を示す。
【0039】
領域15内の粒子17は、少なくとも部分的にコンタクト材料3上に多層で配置される。この場合、隣接する粒子17は、好ましくは、少なくとも部分的に互いの中へ貫入する。その結果、コンタクト材料3に直接連結された粒子17の層だけでなく、連続する粒子17の層も確実に保持される。
【0040】
図4は、領域15をたとえば電子ビームによって選択的に加熱した後の、図2に示した領域15を概略的に示す。粒子17は、加熱によって融合されて1つの層25になっている。層25は、領域15内で連続することができ、表面19を均一に覆うことができる。しかし、表面19を完全に覆うのに十分な粒子17が利用可能でなかった場合、または粒子17の層に多くの空の位置23があった場合、均一でない層25を形成することもできる。
【0041】
層25は、好ましくは実質上、粒子17の材料からなる。言い換えれば、粒子17の材料およびコンタクト材料3から構成される合金の形成は行われない。これは、たとえば、電子ビームによる急速な加熱によって実現することができる。別法として、コンタクト素子1は、粒子17の材料がコンタクト材料3と混合し、合金が形成されるように、少なくとも部分的に加熱される。これは、計画された用途に応じて行うことができる。粒子17の溶融の結果、層25の厚さ27は、粒子の直径29(図2に示す)より概して小さくなる。
【0042】
粒子17の衝撃のために場合により生じる表面19内の凹部または起伏は存在し続ける可能性があり、したがって融合した粒子17の材料は、これらの凹部または起伏を充填する(図示せず)。その結果、層25が表面19内の凹部内へ部分的に貫入した場合、これは、コンタクト材料3上の層25の付着性にとって特に有利である。
【0043】
図示の層形成に対する代替として、粒子17はまた、加熱によって部分的にのみ表面融合させることができ、したがってこれらの粒子は互いにより強く連結し、または粒子および/もしくは粒子の集塊21の表面が平滑になる。
【0044】
図5は、加熱処理後の粒子17のいくつかの列を有する図3からの例を示す。図4を参照して説明した実施形態の例と同様に、ここでもまた、粒子の材料からなる層25が形成される。少なくとも部分的に多層の粒子の配置が先に存在したため、図4を参照して説明した例よりも、層の厚さ27がより大きくなっている。したがって、層の厚さ27は、粒子17の数によって加熱後に調整することができる。
【0045】
粒子17または層25の材料が、粒子17の衝突によって先に生成された凹部または起伏を充填することも可能であり、それにより層25の材料は、コンタクト材料3内へ少なくとも部分的に貫入し、その結果、コンタクト材料3内で固定される。
【0046】
同様に、ここでもまた、連続する層25ではなく、いくつかの粒子17の部分的な融合のみを生成することもできる。これはたとえば、より弱い強度で、またはより短い放射期間にわたって、粒子17が加熱されることから、実現することができる。
【0047】
図6は、コンタクト素子1の圧着部7内の基本表面構造11の断面図を概略的に示す。コンタクト素子1の領域15は、好ましくは、圧着部7に重なる。図6は、図1からの断面線B−Bに沿った図を示す。
【0048】
コンタクト材料3内の基本表面構造11は、溝13によって形成される。これらは、コンタクト材料3内の長手方向の凹部を表す。しかし、コンタクト材料3はまた、それぞれの要件にとって所望される任意の他の適した基本表面構造11を有することができる。粒子17を有する領域15は、図2および図3を参照して説明した実施形態と同様に形成することができる。違いは、基本表面構造11内のみにある。粒子17は、表面19上に堆積し、粒子17のいくつかは、コンタクト材料3内へ少なくとも部分的に貫入する。単なる例として、図6は、粒子17を有する連続していない被覆を示す。
【0049】
溝13によって形成される基本表面構造11には、いくつかの利点がある。特に圧着部7内で、基本表面構造11は、電気導体との接続の安定性と伝導率の両方を改善することができるため、非常に有利である。図示の長手方向の溝13の場合、溝13の長手方向に直交して、たとえばワイアなどの電気導体を配置することができる。圧着フランクを閉じると、電気導体は、溝13内へ少なくとも部分的に押し込まれて、表面19から突出している領域31が、導体の材料内へ押し込まれる。その結果、電気導体が圧着部7内で確実に保持される。同時に、特にエッジの形態を有することができる突出領域31が、導体上に存在し得るあらゆる酸化物層を破裂させることができ、導体内へ貫入することによって、導体への電気接続を改善することができる。
【0050】
図6に示すように、このとき粒子17が表面19上に存在する場合、これらの粒子もまた、嵌め込まれたまたは押し込まれた導体内へ貫入することができ、コンタクト材料3から電気導体への機械的付着性と導電性の両方を改善することができる。
【0051】
図7は、粒子17を加熱した後の図6からの例を示す。図4および図5を参照して上述したように、たとえば、電子ビームの放射による加熱は、粒子17を融合させることができ、したがって層25が形成される。層25は、基本表面構造11上に配置することができ、その場合、溝13を含む表面19全体を覆うことができる。上述した例と同様に、ここでもまた、これらが互いに融合または表面融合し、粒子形状を実質上保持する程度にのみ、粒子17を加熱することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 電気コンタクト素子
3 コンタクト材料
5 コンタクト表面
7 圧着部
9 圧着フランク
11 基本表面構造
13 溝
15 粒子を有する領域
17 粒子
19 表面
21 集塊
23 空の位置
25 層
27 層の厚さ
29 粒子の直径
31 突出領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7