(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の摺動部品の摺動面の相対摺動により動圧を発生する機構が設けられた摺動部品において、一方側の摺動面には、高圧流体側に面して動圧発生用の複数のランド部及び低圧流体側に面して密封面が設けられ、前記複数のランド部と前記密封面とは径方向に離間されて配設され、前記摺動面の前記複数のランド部及び前記密封面を除く部分はこれらの面より低く形成されて流体連通路として構成されており、前記複数のランド部は、径方向の長さが異なる複数種類のランド部から構成され、前記ランド部の輪郭が略U字形をなし、かつ、略U字形の上方が高圧流体側に面するように配設されることを特徴とする摺動部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術におけるグルーブ(溝)52は、高圧流体側(被密封流体側)に連通され、低圧流体側とはランド部Rにより非連通とされ、各グルーブ(溝)52は周方向においてランド部Rにより隔離されている。このように、グルーブ(溝)52は袋小路の構造をしているため、各グルーブ(溝)52内に進入した流体の循環が乏しく、流体中に不純物が混入している場合、袋小路の下流端部53に不純物の堆積54が起こり、ひいては、堆積物が摺動面51上を周回し、摺動面51の損傷を起こす原因となったり、堆積の進行で一対の摺動環の摺動面間が押し広げられ、被密封流体の漏れの原因となるという問題があった。
【0005】
本発明は、摺動面に形成された動圧発生用の溝(以下、「動圧発生溝」という。)に進入した流体の循環を図ることにより、流体に含まれる不純物による摺動面の損傷を防止すると共に、一対の摺動環の摺動面間が不純物の堆積により押し広げられることを防止し、寿命及びシール機能を向上させた摺動部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔原理〕
本発明は、高圧流体側に面する動圧発生用のランド部及び低圧流体側に面する密封面を除く部分を一段低く形成し、この低い面を流体連通路として構成することにより、動圧発生用の溝の行き止まりを無くし、流体の循環を図り、流体に含まれる不純物による摺動面の損傷を防止すると共に、一対の摺動環の摺動面間が不純物の堆積により押し広げられることを防止することにある。
【0007】
〔手段〕
上記目的を達成するため本発明の摺動部品は、第1に、一対の摺動部品の摺動面の相対摺動により動圧を発生する機構が設けられた摺動部品において、一方側の摺動面には、高圧流体側に面して動圧発生用のランド部及び低圧流体側に面して密封面が設けられ、前記ランド部と前記密封面とは径方向に離間されて配設され、前記摺動面の前記ランド部及び前記密封面を除く部分はこれらの面より低く形成されて流体連通路として構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、高圧流体側から径方向の流体連通路に進入した流体は、ランド部の動圧発生作用により昇圧され、正圧を発生するので、摺動面の間隔が広げられ、摺動面の潤滑性を向上する。その際、流体に含まれる不純物は、流体連通路を周回し、最終的には遠心力で高圧流体側に排出されるため、摺動面を損傷することがないので摺動部品の寿命を著しく向上させることができる。また、不純物が摺動面に堆積して摺動面の間隔を広げることもないので、シール機能を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の摺動部品は、第2に、第1の特徴において、前記ランド部は、周方向に等配で複数設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、必要とされる動圧が周方向において均一に発生されるので摺動面全体の潤滑性が向上されると共に、流体に含まれる不純物の排出を確実に行うことができる。
【0009】
また、本発明の摺動部品は、第3に、第1または第2の特徴において、前記ランド部の輪郭が略U字形をなし、かつ、略U字形の上方が高圧流体側に面するように配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、動圧発生部が径方向に長く存在するため、潤滑性が向上され、低摩擦となる。また、径方向の流体連通路と周方向の流体連通路とが円弧状に滑らかに連通されるため、流体に含まれる不純物は途中で停滞することなく排出され、不純物の堆積を防止できる。この結果、摺動面が損傷されることもないので、摺動面の腐食を防止できる。
【0010】
また、本発明の摺動部品は、第4に、第1または第2の特徴において、前記ランド部の輪郭が四辺形をなし、かつ、四辺形の1つの角部が高圧流体側に面するように配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、流体連通路は、高圧流体側に面する入口部分が広く、この入口から低圧流体側に向かって、一端、狭ばめられた後、周方向の流体連通路に近づくにつれ、再度、広げられるので、流体に含まれる不純物を、より一層、排出することができる。
【0011】
また、本発明の摺動部品は、第5に、第1または第2の特徴において、前記ランド部の輪郭が円を径方向に複数配列された形状をなしていることを特徴としている。
この特徴によれば、スラスト軸受に適したシール構造を提供することができ、また、流体に含まれる不純物を効率よく高圧流体側に排出することができる。
【0012】
また、本発明の摺動部品は、第6に、第1ないし第5のいずれかの特徴において、前記流体連通路には、流体排出用のスパイラル溝が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、流体連通路に進入した流体は、流体排出用のスパイラル溝により高圧流体側へ付勢されるため、流体に含まれる不純物は遠心力とスパイラル溝による付勢力により、より一層、高圧流体側に排出される。
【0013】
また、本発明の摺動部品は、第7に、第1ないし第6のいずれかの特徴において、前記低圧流体側に面して設けられる密封面の高圧流体側に、負圧発生機構が設けられることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第8に、第7の特徴において、前記負圧発生機構が逆レイリーステップ機構であることを特徴としている。
これらの特徴によれば、摺動面及び流体連通路から低圧流体側に漏洩しようとする流体は負圧発生機構に流入し、流体連通路を介して高圧流体側に排出されるので、流体の漏洩を、一層低減することができる。
【0014】
また、本発明の摺動部品は、第9に、第1ないし第6のいずれかの特徴において、前記低圧流体側に面して設けられる密封面の高圧流体側に、流体排出用のスパイラル溝が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、摺動面及び流体連通路から低圧流体側に漏洩しようとする流体はスパイラル溝により高圧流体側に排出されるので、流体の漏洩を、一層低減することができる。
【0015】
また、本発明の摺動部品は、第10に、第1ないし第9のいずれかの特徴において、他方側の摺動面には、高圧流体側に連通すると共に、低圧流体側とは前記密封面により隔離された流体排出用のスパイラル溝が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、高圧流体側から低圧流体側に漏れようとする流体を一層低減できる。また、スパイラル溝は低圧流体側とは密封面により隔離されているので、静止時において流体が漏洩するのを防止できる。
【0016】
また、本発明の摺動部品は、第11に、第1ないし第5のいずれかの特徴において、前記一方側の摺動面には、全周にわたって動圧発生の補助となるディンプルが設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、ディンプルは動圧補助溝として機能し、摺動面の流体潤滑遷移点の低速化を実現することができ、回転数の全域において低トルクを図ることができる。
【0017】
また、本発明の摺動部品は、第12に、第1ないし第5のいずれかの特徴において、前記密封面には、周方向の少なくとも1個所において前記ランド部に接続される径方向の張出部が設けられ、前記密封面の前記低圧流体側から径方向に離間した位置にポンピング溝が設けられ、前記ポンピング溝は周方向に延び、その端部は前記張出部と前記ランド部との接続部近傍に位置されることを特徴としている。
この特徴によれば、回転数の大きい領域においてもトルクの増大を抑えることができる。
【0018】
また、本発明の摺動部品は、第13に、第1ないし第5のいずれかの特徴において、ランド部の径方向の長さが異なることを特徴としている。
この特徴によれば、漏れ量の低減及びトルクの低減を図ることができる。
【0019】
また、本発明の摺動部品は、第14に、第1ないし第13のいずれかの特徴において、前記一方側の摺動面には親水化処理が施されることを特徴としている。
この特徴によれば、摺動面の低トルク化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)高圧流体側から径方向の流体連通路に進入した流体は、ランド部の動圧発生作用により昇圧され、正圧を発生するので、摺動面の間隔が広げられ、摺動面の潤滑性を向上する。その際、流体に含まれる不純物は、流体連通路を周回し、最終的には遠心力で高圧流体側に排出されるため、摺動面を損傷することがないので摺動部品の寿命を著しく向上させることができる。また、不純物が摺動面に堆積して摺動面の間隔を広げることもないので、シール機能を向上させることができる。
【0021】
(2)ランド部は、周方向に等配で複数設けられることにより、必要とされる動圧が周方向において均一に発生されるので摺動面全体の潤滑性が向上されると共に、流体に含まれる不純物の排出を確実に行うことができる。
【0022】
(3)ランド部の輪郭が略U字形をなし、かつ、略U字形の上方が高圧流体側に面するように配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、動圧発生部が径方向に長く存在するため、潤滑性が向上され、低摩擦となる。また、径方向の流体連通路と周方向の流体連通路とが円弧状に滑らかに連通されるため、流体に含まれる不純物は途中で停滞することなく排出され、不純物の堆積を防止できる。この結果、摺動面が損傷されることもないので、摺動面の腐食を防止できる。
(4)ランド部の輪郭が四辺形をなし、かつ、四辺形の1つの角部が高圧流体側に面するように配設されることにより、流体連通路は、高圧流体側に面する入口部分が広く、この入口から低圧流体側に向かって、一端、狭ばめられた後、周方向の流体連通路に近づくにつれ、再度、広げられるので、流体に含まれる不純物を、より一層、排出することができる。
(5)ランド部の輪郭が円を径方向に複数配列された形状をなしていることにより、スラスト軸受に適したシール構造を提供することができ、また、流体に含まれる不純物を効率よく高圧流体側に排出することができる。
【0023】
(6)流体連通路には、流体排出用のスパイラル溝が設けられることにより、流体連通路に進入した流体は、流体排出用のスパイラル溝により高圧流体側へ付勢されるため、流体に含まれる不純物は遠心力とスパイラル溝による付勢力により、より一層、高圧流体側に排出される。
【0024】
(7)低圧流体側に面して設けられる密封面の高圧流体側に、負圧発生機構が設けられることにより、摺動面及び流体連通路から低圧流体側に漏洩しようとする流体は負圧発生機構に流入し、流体連通路を介して高圧流体側に排出されるので、流体の漏洩を、一層低減することができる。
【0025】
(8)低圧流体側に面して設けられる密封面の高圧流体側に、流体排出用のスパイラル溝が設けられることにより、摺動面及び流体連通路から低圧流体側に漏洩しようとする流体はスパイラル溝により高圧流体側に排出されるので、流体の漏洩を、一層低減することができる。
【0026】
(9)他方側の摺動面には、高圧流体側に連通すると共に、低圧流体側とは前記密封面により隔離された流体排出用のスパイラル溝が設けられることにより、高圧流体側から低圧流体側に漏れようとする流体を一層低減できる。また、スパイラル溝は低圧流体側とは密封面により隔離されているので、静止時において流体が漏洩するのを防止できる。
【0027】
(10)一方側の摺動面には、全周にわたって動圧発生の補助となるディンプルが設けられることにより、ディンプルは動圧補助溝として機能し、摺動面の流体潤滑遷移点の低速化を実現することができ、回転数の全域において低トルクを図ることができる。
【0028】
(11)密封面には、周方向の少なくとも1個所において前記ランド部に接続される径方向の張出部が設けられ、密封面の低圧流体側から径方向に離間した位置にポンピング溝が設けられ、ポンピング溝は周方向に延び、その端部は張出部とランド部との接続部近傍に位置されることにより、回転数の大きい領域においてもトルクの増大を抑えることができる。
【0029】
(12)ランド部の径方向の長さが異なることにより、漏れ量の低減及びトルクの低減を図ることができる。
【0030】
(13)一方側の摺動面には親水化処理が施されることにより、摺動面の低トルク化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特に明示的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0033】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施例1に係る摺動部品について説明する。
なお、本実施例においては、摺動部品の一例であるメカニカルシールを例にして説明する。また、メカニカルシールを構成する摺動部品の外周側を高圧流体側(被密封流体側)、内周側を低圧流体側(大気側)として説明するが、本発明はこれに限定されることなく、高圧流体側と低圧流体側とが逆の場合も適用可能である。
【0034】
図1は、メカニカルシールの一例を示す縦断面図であって、摺動面の外周から内周方向に向かって漏れようとする高圧流体側の被密封流体を密封する形式のインサイド形式のものであり、高圧流体側のポンプインペラ(図示省略)を駆動させる回転軸1側にスリーブ2を介してこの回転軸1と一体的に回転可能な状態に設けられた一方の摺動部品である円環状の回転環3と、ポンプのハウジング4に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた他方の摺動部品である円環状の固定環5とが設けられ、固定環5を軸方向に付勢するコイルドウェーブスプリング6及びベローズ7によって、ラッピング等によって鏡面仕上げされた摺動面S同士で密接摺動するようになっている。すなわち、このメカニカルシールは、回転環3と固定環5との互いの摺動面Sにおいて、被密封流体が回転軸1の外周から大気側へ流出するのを防止するものである。
【0035】
図2は、本発明の実施例1に係る摺動部品の摺動面を示したもので、ここでは、
図1の固定環5の摺動面にポンピング溝が形成された場合を例にして説明する。
なお、回転環3の摺動面にポンピング溝が形成される場合も同様である。
【0036】
図2において、固定環5の摺動面の外周側が高圧流体側(被密封流体側)であり、また、内周側が低圧流体側、例えば大気側であり、相手摺動面は反時計方向に回転するものとする。
固定環5の摺動面には、高圧流体側に面して動圧発生用のランド部10及び低圧流体側に面して密封面11が設けられている。密封面11は、摺動面の平滑部により構成され密封作用を行う部分である。ランド部10と密封面11とは径方向に離間されて配設される。また、摺動面のランド部10及び密封面11を除く部分はこれらの面より低く形成されており、この低い部分でもって流体連通路12が構成される。
【0037】
図2において、ランド部10は、周方向に等配に複数設けられ、各ランド部10は離間されて独立している。そして、隣接するランド部10と10との間には径方向の流体連通路12aが高圧流体側に面して複数形成される。また、ランド部10と密封面11との間には周方向の流体連通路12bが形成され、複数の径方向の流体連通路12aは周方向の流体連通路12bを介して連通される。各ランド部10の周方向の幅、径方向の流体連通路12a及び周方向の流体連通路12bの幅、並びに、これら流体連通路12a、12bの深さは、摺動面の相対速度や、被密封流体の粘度等に基づいて最適な値に設定される。一例を挙げると、各ランド部10の周方向の幅はミリメートルのオーダーであり、流体連通路12a、12bの幅はランド部10の周方向の幅と同等か小さい。各ランド部10の面は密封面11と略同じ高さである。また、径方向の流体連通路12a及び周方向の流体連通路12bは、密封面11から、例えば、10nm〜1μm低く設定される。流体連通路12bの深さが1μm以上では、高速回転時に高い動圧が発生し、摺動面の間隔が広げらされ過ぎるため、漏れの原因となるので、1μm以下が好ましい。
【0038】
今、回転環3が回転し、回転環3と固定環5との摺動面Sが相対摺動すると、高圧流体側から径方向の流体連通路12aに進入した流体は、ランド部10の動圧発生作用により昇圧され、正圧を発生するので、回転環3と固定環5との摺動面Sの間隔が広げられ、摺動面Sの潤滑性が向上される。その際、流体に含まれる不純物は、周方向の流体連通路12bを周回し、最終的には遠心力で高圧流体側に排出されるため、摺動面を損傷することはない。また、不純物が摺動面に堆積して摺動面の間隔を広げることもないので、摺動部品の寿命を著しく向上させることができる。
【0039】
図2の場合、ランド部10の輪郭はU字形をしており、かつ、U字形の上方が高圧流体側に面するように配設されている。
このように、ランド部10の輪郭がU字形の場合、動圧発生部が径方向に長く存在するため、潤滑性が向上され、低摩擦となる。また、径方向の流体連通路12aと周方向の流体連通路12bとが円弧状に滑らかに連通されるため、流体に含まれる不純物は途中で停滞することなく排出され、不純物の堆積を防止できる。この結果、摺動面が損傷されることもないので、摺動面の腐食を防止できる。
【実施例2】
【0040】
図3を参照して、本発明の実施例2に係る摺動部品について説明する。
実施例2においては、ランド部の輪郭が実施例1と相違するが、基本的構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
図3において、ランド部15の輪郭は、U字の変形型をしている。すなわち、ランド部15の輪郭は、U字の上部は通常の形であるが、底部(低圧流体側に近い部分)が相手摺動面の摺動方向と反対方向を向くように、約15〜60°傾斜されている。このため、流体連通路16の径方向の流体連通路16aは上流側に向かって「くの字」に曲げられる。
【0042】
径方向の流体連通路16aが上流側に向かう「くの字」であるため、高圧流体側から径方向の流体連通路16aに進入した流体による動圧の発生が、一層、向上される。そして、この場合でも、径方向の流体連通路16aと周方向の流体連通路16bとが円弧状に滑らかに連通されるため、流体に含まれる不純物は途中で停滞することなく排出される。
なお、本発明においては、U字形及びU字の変形型を含めて略U字形と呼ぶ。
【実施例3】
【0043】
図4を参照して、本発明の実施例3に係る摺動部品について説明する。
実施例3においては、ランド部の輪郭が実施例1と相違するが、基本的構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
図4において、ランド部20の輪郭は四辺形をなし、かつ、四辺形の1つの角部20aが高圧流体側に面するように配設される。また、高圧流体側に面する角部20aの対角20bは低圧流体側を向いている。さらに、角部20aと対角20bを結ぶ対角線20cは、他の対角を結ぶ対角線よりも長く、低圧流体側から高圧流体側に向けて相手側摺動面の回転方向に傾斜されている。流体連通路21の径方向の流体連通路21aは、高圧流体側に面する入口部分が広く、この入口から低圧流体側に向かって、一端、狭ばめられた後、周方向の流体連通路21bに近づくにつれ、再度、広げられる。
【0045】
実施例3の摺動部品においては、径方向の流体連通路21aが低圧流体側に向かって、一端、狭ばめられた後、周方向の流体連通路21bに近づくにつれ、再度、広げられるので、流体に含まれる不純物が周方向の流体連通路21bに流れやすく、より一層、不純物を排出することができる。
【実施例4】
【0046】
図5を参照して、本発明の実施例4に係る摺動部品について説明する。
実施例4においては、ランド部の輪郭が実施例1と相違するが、基本的構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
図5において、ランド部25の輪郭は円を径方向に複数配列した形状をしている。
高圧流体側の円25aは、摺動面の外周面の近くに配設される。また、低圧流体側の円25bは、密封面11との間に隙間を有するように配設される。
【0048】
実施例4の摺動部品は、スラスト軸受に適したシール構造であり、径方向の流体連通路26aに進入した流体に含まれる不純物は周方向の流体連通路26bを介して周方向に周回し、遠心力で高圧流体側に排出される。
【実施例5】
【0049】
図6を参照して、本発明の実施例5に係る摺動部品について説明する。
実施例5においては、流体連通路には、流体排出用のスパイラル溝が付加的に設けられる点で実施例1と相違するが、その他の構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
図6において、流体連通路12には流体排出用のスパイラル溝13が設けられる。このスパイラル溝13は、流体連通路12の面にスパイラル状の溝を設けることにより形成されるもので、
図6では、スパイラル溝13は低圧流体側(内周側)から高圧流体側(外周側)に向かって相手摺動面の回転方向に傾斜している。
【0051】
実施例5の摺動部品においては、流体連通路12に流体排出用のスパイラル溝13が設けられているので、流体連通路12の径方向の流体連通路12aから周方向の流体連通路12bに進入した流体は、流体排出用のスパイラル溝13により高圧流体側へ付勢される。このため、流体に含まれる不純物は遠心力とスパイラル溝13による付勢力により、より一層、高圧流体側に排出されやすくなる。
【実施例6】
【0052】
図7を参照して、本発明の実施例6に係る摺動部品について説明する。
実施例6においては、密封面の高圧流体側に負圧発生機構または流体排出用のスパイラル溝が設けられる点で実施例1と相違するが、その他の構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
図7(a)において、低圧流体側に設けられる密封面11の高圧流体側に負圧発生機構30が設けられている。
図7の場合、負圧発生機構30は逆レイリーステップ機構から構成される。この逆レイリーステップ機構は、密封面11に形成されたグルーブ(溝)30aとグルーブ(溝)30aの上流側の逆レイリーステップ30bと備え、グルーブ(溝)30aの下流側は周方向の流体連通路12bに連通されている。グルーブ(溝)30aの深さは、周方向の流体連通路12bの深さと同じか、やや浅く形成されるのが望ましい。逆レイリーステップ機構30は周方向に等配に複数設けられる。
【0054】
実施例6の摺動部品においては、低圧流体側に設けられる密封面11の高圧流体側に負圧発生機構30が設けられているので、摺動面及び流体連通路12から低圧流体側に漏洩しようとする流体は負圧発生機構30に流入し、流体連通路12を介して高圧流体側に排出されるので、流体の漏洩を低減できる。
【0055】
図7(a)では、低圧流体側に設けられる密封面11の高圧流体側に負圧発生機構30が設けられる場合について示しているが、
図7(b)に示すように、負圧発生機構に代えて、流体排出用のスパイラル溝13を設けてもよい。
【実施例7】
【0056】
図8を参照して、本発明の実施例7に係る摺動部品について説明する。
実施例7においては、他方側の摺動面に流体排出用のスパイラル溝が設けられる点で実施例1と相違するが、一方側の摺動面の構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0057】
図8において、
図8(a)は固定環5の摺動面を、
図8(b)は回転環3の摺動面を示している。
図8(b)に示すように、 回転環3の摺動面には、高圧流体側に連通すると共に、低圧流体側とは密封面11により隔離された流体排出用のスパイラル溝14が全面に設けられる。
【0058】
実施例7の摺動部品においては、他方側の摺動面である回転環3の摺動面に流体排出用のスパイラル溝が設けられているので、高圧流体側から低圧流体側に漏れようとする流体を一層低減できる。また、スパイラル溝14は低圧流体側とは密封面11により隔離されているので、静止時において流体が漏洩するのを防止できる。
【実施例8】
【0059】
図9を参照して、本発明の実施例8に係る摺動部品について説明する。
実施例8においては、一方側の摺動面には、全周にわたって動圧発生の補助となるディンプルが設けられる点で実施例1と相違するが、その他の構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0060】
図9(a)において、動圧発生用のU字形のランド部10、密封面11及び流体連通路12が設けられた一方側の摺動面である固定環5の摺動面には、全周にわたって動圧発生の補助となるディンプル30が設けられている。
ディンプル30は、例えば、気孔率(面積率)が約5%になる程度設けられるが、それ以上あるいは以下であってもよい。また、ディンプル30の深さは、例えば、100nm程度の極浅いものであるが、特段限定されるものではない。
なお、
図9(a)では、ディンプル30が摺動面の全周にわたって全面に設けられているが、ランド部10及び密封面11より低い部分である流体連通路12(12a、12b)には必ずしも設けられる必要はない。
【0061】
動圧発生用のU字形等のランド部10の設けられた形状は、摺動面のうねりやダレといった現象により、摺動部品のトルク特性に影響を及ぼすものであり、特に、摺動面の半径方向の内周側から外周側にかけてのダレは、動圧効果を抑制してしまい、摺動面の流体潤滑遷移点が高速側になる。ところが、多数の極浅いディンプル30が摺動面の少なくともランド部10及び密封面11の全周にわたって設けられると、これらのディンプル30は動圧補助溝として機能し、摺動面の流体潤滑遷移点の低速化を図ることができる。
【0062】
図9(b)は摺動面にディンプルを設けた実施例8の摺動部品とディンプルを設けない摺動部品とのトルク試験結果を示したものであり、回転数が0→1000→0rpmの試験において、摺動面にディンプルを設けた実施例8の摺動部品の場合、回転数のほぼ全域においてトルクが一定して低いのに比べ、ディンプルを設けない摺動部品の場合、回転数が0から600rpmを超える範囲までトルクが高いことがわかる。
すなわち、摺動面にディンプルを設けた実施例8の摺動部品においては、流体潤滑遷移点の低速化を実現することができ、回転数の全域において低トルク化を図ることができる。
【実施例9】
【0063】
図10を参照して、本発明の実施例9に係る摺動部品について説明する。
実施例9においては、一方側の摺動面には、密封面の低圧流体側から径方向に離間した位置にポンピング溝が周方向に延びて設けられる点で実施例1と相違するが、その他の構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図10を参照すると、動圧発生用のU字形のランド部10、密封面11及び流体連通路12が設けられた一方側の摺動面である固定環5の摺動面において、密封面11は、周方向の4等配においてランド部10に接続される径方向の張出部11aを備え、密封面11の低圧流体側から径方向に離間した位置にポンピング溝32が4等配で設けられている。ポンピング溝32は周方向に延び、その両端部32a、32aは外径方向に曲折され、張出部11aとランド部10との接続部近傍に位置されている。
なお、
図10では、密封面11の張出部11a及びポンピング溝32は周方向に4等配で配設されているが、これに限定されることなく、少なくと1つあればよい。また、
図10では、ポンピング溝32が左右対称形状であるため、摺動部品の両回転において使用できる。
【0065】
図10(a)のA−A断面を示した
図10(b)を参照すると、ポンピング溝32は、例えば、断面が略矩形状であり、溝深さは流体連通路12より浅く設定されている。
固定環5の摺動面が相手摺動面と相対摺動されると、ポンピング溝32内においてキャビテーションが発生され、このキャビテーションにより低圧流体側(内周側)の密封面11上の流体もポンピング溝32内に吸い込まれる。ポンピング溝32内に吸い込まれた流体は外周側で動圧を発生する。
このように、ポンピング溝32の形成により、低圧流体側へと漏れようとする流体は高圧流体側(外周側)に運ばれ、漏れ量が低減されると共に、キャビテーションによるせん断抵抗の減少からトルクの低減にもつながる。
なお、
図10の例では、ポンピング溝32の溝深さは流体連通路12より浅く設定されているが、これに限らず、流体連通路12より深く設定されてもよい。
【0066】
図11(a)は、摺動面にポンピング溝が設けられた実施例9に係る摺動部品とポンピング溝が設けられない摺動部品とのトルク試験結果を示したものであり、回転数が0→1000→0rpmの試験において、回転数のほぼ全域においてポンピング溝が設けられない摺動部品のトルクが大きくなっており、特に、回転数が約500回転以上の領域においてポンピング溝が設けられた実施例9に係る摺動部品のトルクと比べて大きいことが分かる。
すなわち、摺動面にポンピング溝が設けられた実施例9に係る摺動部品においては回転数が大きい領域においてもトルクの増大を抑えることができる。
【0067】
図11(b)は、摺動面にポンピング溝が設けられた実施例9に係る摺動部品とポンピング溝が設けられない摺動部品との漏れ確認試験結果を示したものであり、回転数が8000rpm、圧力が015MPaGの条件において、摺動面にポンピング溝が設けられていない摺動部品においては試験開始から漏れ量が増大していくのに対し、摺動面にポンピング溝が設けられた実施例9に係る摺動部品においては70時間経過しても漏れ量は3mlに過ぎない。
すなわち、摺動面にポンピング溝が設けられた実施例9に係る摺動部品においては時間が経過しても漏れ量は増大していないことがわかる。
【実施例10】
【0068】
図12を参照して、本発明の実施例10に係る摺動部品について説明する。
実施例10においては、周方向に設けられる動圧発生用の複数のランド部の径方向の長さが異なる点で実施例1と相違するが、その他の構成は実施例1と同じであり、実施例1と同じ部材には実施例1の符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
図12を参照すると、周方向に設けられる動圧発生用の複数のU字形のランド部10において、径方向の長さが異なる複数のランド部10が周期的に等配に配列されている。
詳述すると、複数のランド部10は、径方向の長さが異なる5種類のランド部から構成され、例えば、径方向に一番長いランド部10−1を起点として相手摺動面の回転方向に沿って、径方向に一番短いランド部10−5まで徐々に短くなる順に整列され、次に、当該径方向に一番短いランド部10−5を起点として相手摺動面の回転方向に沿って、径方向に一番長いランド部10−1までが徐々に長くなる順に整列されるといった具合に、周方向に繰り返し設けられている。
図12の場合、複数のランド部10は径方向の長さが異なる5種類のランド部から構成されているが、5種類に限定されることなく、例えば、2種類以上であればよい。また、
図12の場合、左右対称形状に構成されているので両回転で使用することができる。
【0070】
固定環5の摺動面が相手摺動面と相対摺動されると、
図12の拡大図にハッチングで示すように、径方向の長さが長いランド部の下流からキャビテーションが発生し、径方向の長さが短いランド部の内周部においてもキャビテーションが発生する。径方向の長さが異なるランド部10が周方向に配列された場合(以下、長短U字形という場合がある。)、径方向の長さが一定のランド部が周方向に同数配列された場合(以下、単一長さU字形という場合がある。)に比べて、キャビテーションの発生エリアが広範囲となり、漏れ量の低減及びトルクの低減を図ることができる。
【0071】
図13(a)は、長短U字形である実施例10に係る摺動部品と単一長さU字形の摺動部品とのトルク試験結果を示したものであり、回転数が0→1000→0rpmの試験において、回転数のほぼ全域において単一長さU字形の摺動部品のトルクが大きくなっており、特に、回転数が約500回転以上の領域において長短U字形である実施例10に係る摺動部品のトルクと比べて大きいことが分かる。
すなわち、長短U字形である実施例10に係る摺動部品においては回転数が大きい領域においてもトルクの増大を抑えることができる。
【0072】
図13(b)は、長短U字形である実施例10に係る摺動部品と単一長さU字形の摺動部品との漏れ確認試験結果を示したものであり、回転数が8000rpm、圧力が015MPaGの条件において、単一長さU字形の摺動部品においては試験開始から漏れ量が増大していくのに対し、長短U字形である実施例10に係る摺動部品においては70時間経過しても漏れ量は3mlに過ぎない。
すなわち、長短U字形である実施例10に係る摺動部品においては時間が経過しても漏れ量は増大していないことがわかる。
【実施例11】
【0073】
図14を参照して、本発明の実施例11に係る摺動部品について説明する。
実施例11においては、摺動面に親水化処理が施される点で実施例1と相違するが、その他の構成は実施例1と同じである。
【0074】
本出願の発明者の研究によれば、
図2に示す実施例1の摺動部品を気孔などがない供試体で製作した場合、高温・高速の条件下では摺動面に液膜を保持することができずトルクが増大する傾向を示すが、摺動面を親水化させた供試体で製作した場合、高温・高速の条件下でも摺動面に液膜を保持することができ、流体潤滑性を示すことが判明した。
【0075】
摺動面の親水化の処理方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、摺動面にプラズマを照射する方法が挙げられる。また、プラズマ照射にもいくつかの種類があるが、例えば、酸素プラズマ照射が挙げられる。
【0076】
図14(a)(b)は、実施例11に係る摺動部品のトルク試験結果を示したものである。
回転数が0→1000→0rpmの試験において、液温が60℃である場合の
図14(a)を参照すると、摺動面に親水化処理が施されていない「未処理」においては、摺動面に親水化処理が施された「親水化」に比べて、回転数が6000rpm以上においてトルクが大きくなっている。
また、液温が120℃である場合の
図14(b)を参照すると、摺動面に親水化処理が施されていない「未処理」においては、摺動面に親水化処理が施された「親水化」に比べて、回転数のほぼ全域においてトルクが大きくなっており、特に、回転数が約3000rpm以上においてトルクが増大している。
【0077】
図14(c)は、フラットな摺動面に親水化処理を施した場合と施さない場合とのトルク試験結果の比較を示したものである。
図14(a)(b)に示すように、摺動面に実施例1のような動圧発生用のU字形のランド部10、密封面11及び流体連通路12が設けられたものを親水化した場合は低トルクの効果を示している。
しかしながら、実施例1のような摺動面に動圧発生用のU字形のランド部10などが設けられていないフラットな摺動面に親水化処理を施した場合、
図14(c)に示すように、低トルクの効果は表れなかった。
以上の試験結果によれば、摺動面に実施例1のような動圧発生用のU字形のランド部10、密封面11及び流体連通路12が設けられたものを親水化した場合に特有の顕著な効果が奏されることがわかる。
【0078】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0079】
例えば、前記実施例では、主に、摺動部品をメカニカルシール装置における一対の回転用密封環及び固定用密封環のいずれかに用いる例について説明したが、円筒状摺動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸と摺動する軸受の摺動部品として利用することも可能である。
【0080】
また、例えば、前記実施例では、外周側に高圧の被密封流体が存在する、いわゆる、インサイド形について説明したが、内周側が高圧流体が存在する、いわゆる、アウトサイド形の場合にも適用できることはもちろんである。この場合、動圧発生用のランド部及び密封面の径方向の配置は逆になる。
【0081】
また、例えば、前記実施例では、固定環の摺動面に動圧発生用のランド部、流体連通路及び密封面を設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転環の摺動面に動圧発生用のランド部、流体連通路及び密封面を設けてもよい。