(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2部材の外側にある前記第1部材の外周面の摩擦係数は、前記第2部材における前記第1部材との接触面の摩擦係数より小さい、請求項1から7のいずれかに記載のプロペラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示すプロペラでは、プロペラが回転したときに、プロペラの回転にともなって生じる遠心力によって、安全リングが外方へ引っ張られる。したがって、安全リングのうち、ブレードの遠位端部に取り付けられていない箇所は、外方へ膨らむように変形してしまう。これによって、プロペラの回転速度を上げると、空気抵抗の増大や振動等が生じ、プロペラを本来のように回転させることが困難になる。
それゆえにこの発明の主たる目的は、プロペラの回転時にガードの変形を抑制できる、プロペラおよびそれによって推進される輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の或る見地によれば、ハブと、ハブから放射状に延びる複数のブレードと、複数のブレードのそれぞれの外端部に接続されるガードとを備え、ガードは、ブレードと同一の材料からなる第1部材と、ブレードとは異なる材料からなる第2部材とを含み、第1部材は、複数のブレードのそれぞれと一体に形成され、複数のブレードのそれぞれの外端部から隣りのブレードの外端部へ向かって外側に凸の円弧状に延び、第2部材は、第1部材の内周面に形成されかつ第1部材よりも曲げ弾性率が高い、プロペラが提供される。
【0006】
この発明では、第1部材は、複数のブレードのそれぞれ(すべてのブレード)と一体に形成されるので、第1部材はいずれのブレードからも分離しない。したがって、プロペラが回転したときにガードに遠心力が加わっても、第1部材のうち各ブレードとの接続箇所が外方に変位することが抑制される。また、ガードが、第1部材よりも曲げ弾性率が高い第2部材を含むことによって、ガードが第1部材のみからなる場合よりもガードの剛性を大きくできる。しかも、第2部材は第1部材の内周面に形成される。したがって、プロペラが回転したとき、発生する遠心力によって、第2部材は外方にすなわち第1部材に押し付けられるように力を受けるので、第2部材が第1部材から分離してしまうことを防止でき、ガードの高剛性を確実に維持できる。その結果、プロペラが回転したときに、ガードが遠心力によって外方に膨らむように変形することを確実に抑制できる。このように、第1部材が複数のブレードのそれぞれと一体に形成されるとともに、第1部材の内周面に曲げ弾性率が高い第2部材が形成されることによって、プロペラが回転したときに、確実にガードの変形を抑制でき、プロペラが受ける空気抵抗の増大およびプロペラの振動を抑制することができる。
【0007】
ここで、「曲げ弾性率」とは、曲げ変形のしにくさを表す物性値をいう。
【0008】
好ましくは、第1部材はリング状に形成される。この場合、複数のブレードのそれぞれと一体に形成された第1部材によって、すべてのブレードの外端部同士をつないでいるので、ブレードの外端部が揺動してピッチ角(ブレードの回転軸に垂直な面に対するブレードの角度)が増減することを抑制できる。これによって、プロペラの回転によって得られる推進力または送風量の制御が複雑になることを防止できる。
【0009】
また好ましくは、第2部材はリング状に形成される。この場合、ブレードに対してガードの剛性をさらに高めることができる。これによって、プロペラが回転したときに、ガードが遠心力によって変形してしまうことをさらに抑制できる。
【0010】
さらに好ましくは、第1部材は、複数のブレードのそれぞれと一体に形成される複数の第1部材片を含み、複数の第1部材片は不連続に形成される。この場合、第1部材がリング状に形成される場合よりも、第1部材の総全長を小さくできる。したがって、プロペラを軽くでき、回転慣性モーメントを小さくできる。これによって、プロペラが回転したときに発生する遠心力が小さくなり、ガードの変形を抑制することができる。また、第1部材の使用量を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0011】
好ましくは、第2部材は、第1部材の内周面において周方向に不連続に形成される複数の第2部材片を含む。この場合、第2部材がリング状に形成される場合よりも、第2部材の総全長を小さくできる。したがって、プロペラを軽くでき、回転慣性モーメントを小さくできる。これによって、プロペラが回転したときに発生する遠心力が小さくなり、ガードの変形を抑制することができる。また、第2部材の使用量を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0012】
また好ましくは、第1部材は第2部材の内周面にも形成される。この場合、第1部材によって第2部材の内周面と外周面とを挟んでいるので、ガードの外方から力を受けた場合でも、第2部材が第1部材から分離してしまうことを防止できる。これによって、プロペラが回転したときに、さらに確実にガードの変形を抑制することができる。
【0013】
さらに好ましくは、第2部材は第1部材の内部に形成される。この場合、第2部材が外部に露出しないので、ガードがどの方向に力を受けた場合でも、第2部材が第1部材から分離してしまうことを防止できる。これによって、プロペラが回転したときに、さらに確実にガードの変形を抑制することができる。
【0014】
好ましくは、第2部材の外側にある第1部材の外周面の摩擦係数は、第2部材における第1部材との接触面の摩擦係数より小さい。プロペラの回転中に第2部材の外側にある第1部材の外周面(ガードの外周面)に物体が接触したときに、プロペラの回転数低下を抑制するためには、当該第1部材の外周面の摩擦係数は小さい方が好ましい。また、第2部材が第1部材から分離してしまうことを抑制するためには、第2部材における第1部材との接触面の摩擦係数は大きい方が好ましい。したがって、第2部材の外側にある第1部材の外周面の摩擦係数を、第2部材における第1部材との接触面の摩擦係数よりも小さくすることで、第2部材の外側にある第1部材の外周面(ガードの外周面)に物体が接触してもプロペラを元の回転数に素早く戻すことができる。
【0015】
プロペラによって推進されるヘリコプタやボートなどの輸送機器は、プロペラを回転させることで推進力を得ているが、プロペラにガードを取り付けてプロペラを高速回転させると、ガードが変形しやすくなる。したがって、この発明に係るプロペラは、プロペラによって推進されるヘリコプタやボートなどの輸送機器に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、プロペラの回転時にガードの変形を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1に、この発明の一実施形態であるプロペラ16を、輸送機器の一例である無人ヘリコプタ(以下、ヘリコプタという)10のメインロータとして用いた場合を示す。
【0020】
図1を参照して、ヘリコプタ10は、メインボディ12、マスト14、プロペラ16、テールボディ18およびテールロータ20を含む。
【0021】
メインボディ12は、フレーム22、ボディカバー24、脚部26,28、一対のスキッド30(
図1では左側のスキッド30のみ図示)、およびアンダーカバー32を含む。
【0022】
テールボディ18およびボディカバー24は、フレーム22に支持される。
【0023】
脚部26および28はそれぞれ、正面視逆U字状に形成され、フレーム22に支持される。
【0024】
一対のスキッド30は、左右に並ぶように脚部26および28に取り付けられる。具体的には、一方側(左側)のスキッド30は、脚部26,28の一方側(左側)の部分に取り付けられ、他方側(右側)のスキッド30(図示せず)は、脚部26,28の他方側(右側)の部分に取り付けられる。
【0025】
アンダーカバー32は、テールボディ18およびメインフレーム22に取り付けられる。
【0026】
マスト14は、ボディカバー24から上方に突出するようにかつ回転可能に設けられる。マスト14の上端部に、プロペラ16が固定される。これにより、マスト14とプロペラ16とが一体的に回転する。テールボディ18は略円筒形状を有し、メインボディ12よりも後方に延びる。テールボディ18の前端部は、ボディカバー24内においてフレーム22の後端部に支持される。テールロータ20は、テールボディ18の後端部に回転可能に設けられる。
【0027】
ヘリコプタ10はさらに、駆動源34、トランスミッション36、ドライブシャフト38および制御装置40を含む。駆動源34およびトランスミッション36は、ボディカバー24に収容される。
【0028】
駆動源34は、プロペラ16の下方においてフレーム22の前端部に支持される。駆動源34としては、たとえばエンジンやモータが用いられる。
【0029】
トランスミッション36は、駆動源34の後方においてフレーム22に支持される。トランスミッション36は、駆動源34に連結される。トランスミッション36にマスト14の下端部が連結される。プロペラ16は、駆動源34からトランスミッション36およびマスト14を介して伝達される駆動力に基づいて回転する。プロペラ16を回転させることによって、ヘリコプタ10を推進させることができる。
【0030】
トランスミッション36から後方に延びるようにドライブシャフト38が設けられる。ドライブシャフト38は、メインボディ12内およびテールボディ18内を前後方向に延びる。テールロータ20は、ドライブシャフト38の後端部に連結される。テールロータ20は、駆動源34からトランスミッション36およびドライブシャフト38を介して伝達される駆動力に基づいて回転する。
【0031】
制御装置40は、フレーム22に設けられ、ヘリコプタ10に搭載される種々の装置を制御する。
【0032】
以下、プロペラ16について詳細に説明する。
【0033】
図2および
図3を参照して、プロペラ16は、円盤状のハブ42と、複数(この実施形態では、5つ)のブレード44と、ガード46とを含む。
【0034】
ハブ42は、回転軸であるマスト14に連結される。
【0035】
複数のブレード44は、ハブ42の周方向に等間隔に配置され、各ブレード44は、略短冊状に形成され、ハブ42の外側面からハブ42の径方向(放射状)に延び、ガード46に接続される。各ブレード44は、正のピッチ角を有するように形成され、矢印Xで示す時計廻り方向に回転する。
【0036】
図4をも参照して、各ブレード44は、正圧面48と負圧面50とを含む。ブレード44が回転する際に、正圧面48は正圧を受け、負圧面50は負圧を受ける。正圧面48は、ブレード44の一方主面(
図2,
図3では、下面)であり、負圧面50は、ブレード44の他方主面(
図2,
図3では、上面)である。負圧面50は、回転方向前側の前縁部52から回転方向後側の後縁部54に向かって、凸状に湾曲される。また、負圧面50は、前縁部52と後縁部54との間における中央よりも前縁部52寄りに凸状の頂点が位置するように湾曲する。
【0037】
このような各ブレード44において、ハブ42の外側面に接続される内端部56およびガード46側の外端部58は、ともに正のピッチ角を有し(後縁部54から前縁部52に向けて斜め上方に延び)、かつ内端部56側のピッチ角は外端部58側のピッチ角より大きい。すなわち、ハブ42の軸方向に垂直な面に対する傾きが、ブレード44の内端部56より外端部58の方が小さくなるように、各ブレード44は捩じれた形状を有する。
【0038】
図2、
図3および
図5を参照して、ガード46は、ブレード44と同一の材料からなる第1部材60と、ブレード44とは異なる材料からなる第2部材62とを含み、複数のブレード44のそれぞれの外端部58に接続される。なお、ハブ42、第1部材60および第2部材62は、同心円状に形成される。第2部材62の外周面は、第1部材60の内周面と接している。第2部材62は、第1部材60よりも曲げ弾性率が高く、したがって第1部材60よりも曲げ変形しにくい。また、第1部材60の外周面(すなわち、ガード46の外周面)の摩擦係数は、第2部材62における第1部材60との接触面の摩擦係数よりも小さい。たとえば、ブレード44および第1部材60として樹脂を、第2部材62としてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を、それぞれ用いることができる。
【0039】
第1部材60は、複数のブレード44のそれぞれの外端部58から隣りのブレード44の外端部58へ向かって外側に凸の円弧状(ハブ42の周方向)に延び、この実施形態では、リング状かつ縦断面短冊状に形成される。複数のブレード44のそれぞれの外端部58は、第1部材60の内周面に設けられ、第1部材60は、複数のブレード44のそれぞれ(すべてのブレード44)と一体に形成される。このとき、第1部材60の軸方向において、各ブレード44の外端部58は、第1部材60からはみ出ることなく設けられる。
【0040】
第2部材62は、リング状かつ縦断面短冊状に形成され、第1部材60の内周面に接するように形成される。第2部材62の軸方向において、第2部材62の高さH2は、第1部材60の高さH1よりも小さく、第2部材62の一端部と第1部材60の一端部との間隔C1と、第2部材62の他端部と第1部材60の他端部との間隔C2とは、略等しくされる。したがって、第2部材62の軸方向において、第2部材62は、第1部材60からはみ出ることなく形成される。また、第2部材62は、第1部材60の内周面のうち、各ブレード44の外端部58と接続されている箇所には形成されない。なお、第2部材62の軸方向において、各ブレード44の外端部58は、第2部材62からはみ出ることなく形成される。すなわち、各ブレード44は、第2部材62を貫通している。
【0041】
このようなプロペラ16によって推進されるヘリコプタ10によれば、第1部材60は、複数のブレード44のそれぞれ(すべてのブレード44)と一体に形成されるので、第1部材60はいずれのブレード44からも分離しない。したがって、プロペラ16が回転したときにガード46に遠心力が加わっても、第1部材60のうち各ブレード44との接続箇所が外方に変位することが抑制される。また、ガード46が、第1部材60よりも曲げ弾性率が高い第2部材62を含むことによって、ガード46が第1部材60のみからなる場合よりもガード46の剛性を大きくできる。しかも、第2部材62は第1部材60の内周面に接するように形成される。したがって、プロペラ16が回転したとき、発生する遠心力によって、第2部材62は外方にすなわち第1部材60に押し付けられるように力を受けるので、第2部材62が第1部材60から分離してしまうことを防止でき、ガード46の高剛性を確実に維持できる。その結果、プロペラ16が回転したときに、ガード46(第1部材60)が遠心力によって外方に膨らむように変形することを確実に抑制できる。このように、第1部材60が複数のブレード44のそれぞれと一体に形成されるとともに、第1部材60の内周面に曲げ弾性率が高い第2部材62が形成されることによって、プロペラ16が回転したときに、確実にガード46の変形を抑制でき、プロペラ16が受ける空気抵抗の増大およびプロペラ16の振動を抑制することができる。
【0042】
複数のブレード44のそれぞれと一体に形成された第1部材60によって、すべてのブレード44の外端部58同士をつないでいるので、ブレード44の外端部58が揺動してピッチ角が増減することを抑制できる。これによって、プロペラ16の回転によって得られる推進力の制御が複雑になることを防止できる。
【0043】
第2部材62はリング状に形成されるので、ブレード44に対してガード46の剛性をさらに高めることができる。これによって、プロペラ16が回転したときに、ガード46が遠心力によって変形してしまうことをさらに抑制できる。ガード46では、第1部材60および第2部材62がともにリング状(全周)に形成されており、ガード46の剛性を大きく高めることができるので、この効果が顕著となる。
【0044】
第2部材62の外側にある第1部材60の外周面(ガード46の外周面)の摩擦係数を、第2部材62における第1部材60との接触面の摩擦係数よりも小さくすることで、第2部材62の外側にある第1部材60の外周面(ガード46の外周面)に物体が接触しても、プロペラ16の回転数低下を抑制できるので、プロペラ16を元の回転数に素早く戻すことができる。
【0045】
プロペラによって推進されるヘリコプタは、プロペラを回転させることで推進力を得ているが、プロペラにガードを取り付けてプロペラを高速回転させると、ガードが変形しやすくなる。したがって、この発明に係るプロペラ16は、プロペラによって推進されるヘリコプタ10に好適に用いることができる。
【0046】
ついで、
図6を参照して、この発明の他の実施形態のプロペラ16aについて説明する。
【0047】
プロペラ16aは、ガード46の代わりにガード46aを用いる点で、
図2に示すプロペラ16と異なり、ガード46aは、リング状に形成された第2部材62の代わりに、分割構造を有する第2部材62aを用いる点で、ガード46と異なる。
【0048】
ガード46aの第2部材62aは、ブレード44とは異なる材料からなり、すべての隣り合うブレード44間においてハブ42の周方向に延びる複数(この実施形態では、5つ)の第2部材片64aを含む。各第2部材片64aは、薄い短冊状に形成され、各ブレード44の外端部58と第1部材60との接続箇所近傍を除いて、円弧状に湾曲しかつ第1部材60の内周面に接するように形成される。このように複数の第2部材片64aは、第1部材60の内周面において周方向に不連続に形成される。すなわち、第2部材62aは、すべてのブレード44の外端部58と第1部材60との接続箇所近傍の複数(この実施形態では、5つ)の箇所Gで分断されている。言い換えれば、第2部材62aは、リング状に形成された第2部材62を、各ブレード44の外端部58と第1部材60との接続箇所近傍で分断したものに相当する。プロペラ16aの他の構成については、プロペラ16と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0049】
このようなプロペラ16aによれば、第2部材62aは、第2部材62よりも総全長を小さくできる。したがって、プロペラ16aをプロペラ16よりも軽くでき、回転慣性モーメントを小さくできる。これによって、プロペラ16aが回転したときに発生する遠心力が小さくなり、ガード46aの変形を抑制することができる。また、第2部材62aの使用量を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0050】
プロペラ16aが回転したときのガード46aの変形を抑制するために必要な最小限の箇所にのみ第2部材62aを装着することによって、プロペラ16aをより軽くでき、コストをさらに削減できる。
【0051】
第2部材62aは、第1部材60と一体的に形成されてもよく、また、第1部材60の成形後に第1部材60に接着等によって取り付けられてもよい。
【0052】
つぎに、
図7を参照して、この発明のその他の実施形態のプロペラ16bについて説明する。
【0053】
プロペラ16bは、リング状に形成されたガード46の代わりに、分割構造のガード46bを用いる点で、
図2に示すプロペラ16と異なる。
【0054】
ガード46bは、ブレード44と同一の材料からなる分割構造の第1部材60bと、ブレード44とは異なる材料からなる分割構造の第2部材62bとを含み、複数のブレード44のそれぞれの外端部58に接続される。
【0055】
第1部材60bは、複数のブレード44のそれぞれの外端部58から隣のブレード44の外端部58へ向かって外側に凸の円弧状(ハブ42の周方向)に延びる複数(この実施形態では、5つ)の第1部材片66bを含む。各第1部材片66bは、薄い短冊状に形成され、円弧状に湾曲し、対応するブレード44に一体に形成される。この実施形態では、各第1部材片66bと対応するブレード44とは、第1部材片66bの一端側にブレード44の外端部58を位置させて、略L字状を呈するように一体に形成される。このような第1部材片66bと隣の第1部材片66bとの間には隙間があり、隣り合う第1部材片66b同士は接続されず、複数の第1部材片66bは不連続に形成される。すなわち、第1部材60bは、すべてのブレード44の外端部58と第1部材60bとの接続箇所近傍の複数(この実施形態では、5つ)の箇所G1で分断されている。言い換えれば、第1部材60bは、リング状に形成された第1部材60を、各ブレード44の外端部58と第1部材60との接続箇所近傍で分断したものに相当する。
【0056】
第2部材62bは、すべての隣り合うブレード44間においてハブ42の周方向に延びる複数(この実施形態では、5つ)の第2部材片64bを含む。各第2部材片64bは、薄い短冊状に形成され、対応する第1部材片66bとブレード44の外端部58との接続箇所近傍を除いて、円弧状に湾曲しかつ対応する第1部材片66bの内周面に接するように形成される。このように複数の第2部材片64bは、第1部材60bの内周面において周方向に不連続に形成される。すなわち、第2部材62bは、すべてのブレード44の外端部58と第1部材60bとの接続箇所近傍の複数(この実施形態では、5つ)の箇所G2で分断されている。言い換えれば、第2部材62bは、リング状に形成された第2部材62を、各ブレード44の外端部58と第1部材60との接続箇所近傍で分断したものに相当する。
【0057】
プロペラ16bの他の構成については、プロペラ16と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0058】
このようなプロペラ16bによれば、第1部材60bおよび第2部材62bはそれぞれ、第1部材60および第2部材62よりも総全長を小さくできる。したがって、プロペラ16bをプロペラ16よりもさらに軽くでき、回転慣性モーメントを小さくできる。これによって、プロペラ16bが回転したときに発生する遠心力がさらに小さくなり、ガード46bの変形を抑制することができる。また、第1部材60bおよび第2部材62bの使用量を減らすことができ、コストをさらに削減することができる。
【0059】
ブレード44と第1部材片66bと第2部材片64bとを含むユニットごとの成形が可能となる。当該ユニットを必要数(この実施形態では、5つ)用意し、ハブ42の軸方向に対して開閉可能にハブ42に取り付けることによって、折りたたみ構造とすることもできる。
【0060】
つぎに、
図8を参照して、この発明のさらにその他の実施形態のプロペラ16cについて説明する。
【0061】
プロペラ16cは、リング状に形成されたガード46の代わりに、分割構造のガード46cを用いる点で、
図2に示すプロペラ16と異なる。
【0062】
ガード46cは、ブレード44と同一の材料からなる分割構造の第1部材60cと、ブレード44とは異なる材料からなる分割構造の第2部材62cとを含み、複数のブレード44のぞれぞれの外端部58に接続される。
【0063】
第1部材60cは、複数のブレード44のそれぞれの外端部58から両隣のブレード44の外端部58へ向かって外側に凸の円弧状(ハブ42の周方向)に延びる複数(この実施形態では、5つ)の第1部材片66cを含む。各第1部材片66cは、薄い短冊状に形成され、円弧状に湾曲し、対応するブレード44に一体に形成される。この実施形態では、各第1部材片66cと対応するブレード44とは、第1部材片66cの中央部にブレード44の外端部58を位置させて、略T字状を呈するように一体に形成される。このような第1部材片66cと隣の第1部材片66cとの間には隙間があり、隣り合う第1部材片66c同士は接続されず、複数の第1部材片66cは不連続に形成される。すなわち、第1部材60cは、すべての隣り合うブレード44間の複数(この実施形態では、5つ)の箇所G3で分断されている。言い換えれば、第1部材60cは、リング状に形成された第1部材60を、すべての隣り合うブレード44間で分断したものに相当する。
【0064】
第2部材62cは、ハブ42の周方向に延びる複数(この実施形態では、5つ)の第2部材片64cを含む。各第2部材片64cは、薄い短冊状に形成され、対応する第1部材片66cとブレード44の外端部58との接続箇所を除いて、円弧状に湾曲しかつ対応する第1部材片66cの内周面に接するように形成される。このようにして複数の第2部材片64cは、第1部材60cの内周面において周方向に不連続に形成される。すなわち、第2部材62cは、すべての隣り合うブレード44間の複数(この実施形態では、5つ)の箇所G3で分断されている。言い換えれば、第2部材62cは、リング状に形成された第2部材62を、すべての隣り合うブレード44間で分断したものに相当する。
【0065】
プロペラ16cの他の構成については、プロペラ16と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0066】
このようなプロペラ16cによれば、第1部材60cおよび第2部材62cはそれぞれ、第1部材60および第2部材62よりも総全長を小さくできる。したがって、プロペラ16cをプロペラ16よりもさらに軽くでき、回転慣性モーメントを小さくできる。これによって、プロペラ16cが回転したときに発生する遠心力がさらに小さくなり、ガード46cの変形を抑制することができる。また、第1部材60cおよび第2部材62cの使用量を減らすことができ、コストをさらに削減することができる。
【0067】
ブレード44と第1部材片66cと第2部材片64cとを含むユニットごとの成形が可能となる。当該ユニットを必要数(この実施形態では、5つ)用意し、ハブ42の軸方向に対して開閉可能にハブ42に取り付けることによって、折りたたみ構造とすることもできる。
【0068】
上述の実施形態では、ガードは、第1部材と第2部材とを有する2層構造であったが、これに限定されない。
【0069】
上述の各実施形態において、
図9に示すような3層構造のガード46dが用いられてもよい。
図9は、隣り合うブレード44間におけるガード46dの断面を示している。ガード46dでは、第1部材60d1の内周面に接するように第2部材62dが形成され、さらに第2部材62dの内周面にも接するように第1部材60d2が形成される。すなわち、第1部材60d1が第2部材62dの外周面を覆うように形成され、第1部材60d2が第2部材62dの内周面を覆うように形成される。
図9では図示されていないが、第1部材60d1と第1部材60d2とは少なくとも一部で相互に接続される。たとえば、第1部材60d2とブレード44との接続箇所近傍において、第1部材60d1と第1部材60d2とは、第2部材62dを貫通するように相互に接続される。
【0070】
ガード46dによれば、相互に接続された第1部材60d1,60d2によって、第2部材62dの内周面と外周面とを挟んでいるので、ガード46dの外方から力を受けても、第2部材62dが第1部材60d1,60d2から分離してしまうことを防止できる。これによって、プロペラが回転したときに、さらに確実にガード46dの変形を抑制することができる。なお、ガード46dでは、良好な回転バランスを維持するため、第1部材60d1と第1部材60d2との接続箇所は周方向に対称に形成されることが好ましく、当該接続箇所は2箇所以上であることが好ましい。
【0071】
また、上述の各実施形態において、
図10に示すような3層構造のガード46eが用いられてもよい。
図10は、隣り合うブレード44間におけるガード46eの断面を示している。ガード46eでは、第1部材60eが、第2部材62eの外周面、内周面および上端部に接するように形成される。すなわち、ガード46eでは、第1部材60eが、第2部材62eの外周面、内周面および上端部を覆うように形成される。
【0072】
ガード46eによれば、ガード46eが上下方向から力を受けても、第2部材62eが第1部材60eから分離してしまうことを防止できる。
【0073】
さらに、上述の各実施形態において、
図11に示すような3層構造のガード46fが用いられてもよい。
図11は、隣り合うブレード44間におけるガード46fの断面を示している。ガード46fでは、第2部材62fの周囲が第1部材60fに接するように形成される。すなわち、ガード46fでは、第2部材62fが第1部材60fの内部に形成される。たとえば、第1部材60fの一部を予め成形しておくことで、第2部材62fを外部に露出することなく第1部材60fの内部に形成できる。
【0074】
ガード46fによれば、第2部材62fは外部に露出しないので、ガード46fがどの方向に力を受けても、第2部材62fが第1部材60fから分離してしまうことを防止できる。
【0075】
また、上述の各実施形態において、
図12に示すようなガード46gが用いられてもよい。
図12は、隣り合うブレード44間におけるガード46gの断面を示している。ガード46gでは、繊維状の第2部材62gが、第1部材60gの内部において周方向に延びるように形成される。
【0076】
ガード46gによれば、第2部材62gは外部に露出しないので、ガード46gがどの方向に力を受けても、第2部材62gが第1部材60gから分離してしまうことを防止できる。この場合、第2部材62gとして、炭素繊維を用いてもよい。
【0077】
上述の各実施形態において、
図13に示すようなガード46hが用いられてもよい。
図13は、隣り合うブレード44間におけるガード46hの断面を示している。ガード46hでは、第1部材60hは、その上端部および下端部に形成される突部61a,61bを有し、突部61a,61bは、第2部材62hの上端面と下端面とを覆うように形成される。さらに、ガード46hでは、第1部材60hが、第2部材62hの外周面、上端部および下端部に接するように形成される。
【0078】
ガード46hによれば、第1部材60hの突部61a,61bによって、第2部材62hの上端面と下端面とを挟んでいるので、ガード46hの外方から力を受けても、第2部材62hが第1部材60hから分離してしまうことを防止できる。これによって、プロペラが回転したときに、さらに確実にガード46hの変形を抑制することができる。
【0079】
さらに、上述の各実施形態において、ブレードおよびガードは、あらかじめ形成された第2部材を金型に装填しておいてブレードおよび第1部材を一体成形するインサート成形によって、形成されてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、この発明に係るプロペラが無人ヘリコプタのメインロータとして用いられる場合について説明したが、これに限定されない。この発明に係るプロペラは、無人ヘリコプタのテールロータとして用いられてもよく、また、有人ヘリコプタのメインロータやテールロータとして用いられてもよい。さらに、この発明に係るプロペラは、マルチコプタのロータとして用いられてもよい。
【0081】
また、
図14に、プロペラ16によって推進されるボート10aを示す。プロペラによって推進されるボートは、プロペラを回転させることで推進力を得ているが、プロペラにガードを取り付けてプロペラを高速回転させると、ガードが変形しやすくなる。したがって、この発明に係るプロペラ16は、プロペラによって推進されるボート10aに好適に用いることができる。なお、
図6〜
図8に示すプロペラ16a〜16cや、
図9〜
図13に示すガード46d〜46hが、
図14に示すボート10aに適用されてもよい。
【0082】
この発明に係るプロペラは、ヘリコプタやボートの他、プロペラによって推進される任意の輸送機器に適用できる。
【0083】
上述の実施形態では、ブレードは正のピッチ角を有するように形成され、プロペラは矢印Xで示す時計廻り方向に回転する場合について説明したが、これに限定されない。この発明は、ブレードが負のピッチ角を有するように形成され、プロペラが反時計廻り方向に回転する場合にも適用できる。
【0084】
図7に示す実施形態では、隣り合う第1部材片66b同士は接続されず、複数の第1部材片66bは不連続に形成され、
図8に示す実施形態では、隣り合う第1部材片66c同士は接続されず、複数の第1部材片66cは不連続に形成されているが、これに限定されない。この発明では、少なくとも1つの不連続な箇所がある(第1部材が少なくとも1箇所で分断される)ように、1または複数の第1部材片が形成されてもよい。
【0085】
また、
図7に示す実施形態において、少なくともプロペラ16bの回転時には、隣り合う第1部材片66b同士が繋がって第1部材60bがリング状に形成されてもよい。
図8に示す実施形態においても同様である。
【0086】
以上、この発明の好ましい実施形態について説明されたが、この発明の範囲および精神を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能であることは明らかである。この発明の範囲は、添付された請求の範囲のみによって限定される。