(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578061
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】モーター制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20190909BHJP
【FI】
H02P29/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-521836(P2018-521836)
(86)(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公表番号】特表2018-537936(P2018-537936A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】KR2016011120
(87)【国際公開番号】WO2017104952
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0182153
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン,ホチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,チャン−ホイ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ヨン−チル
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ジョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ビョン−ソン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジェクウォン
【審査官】
大島 等志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−249585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの入力軸に設けられた低解像度の入力軸絶対位置検出器と、
前記モーターの出力軸に設けられた減速器と、
前記減速器の出力軸に設けられ、解像度が前記減速器の減速比と同じかそれより大きい低解像度の出力軸絶対位置検出器と、
前記入力軸絶対位置、出力軸絶対位置及び減速器の減速比に基づいてモーターの高解像度の出力軸絶対位置を導出するモーター制御部とを含み、
前記モーター制御部は、
出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、
モーターの駆動の際に出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、前記定義されたオフセットを前記初期オフセット、入力軸絶対位置検出器の解像度、減速比及び出力軸絶対位置に基づいて導出し、導出されたオフセット、入力軸絶対位置及び減速比に基づいて入力軸演算値を導出し、
前記出力軸絶対位置に基づいて出力軸演算値を導出し、
導出された入力軸演算値と出力軸演算値に基づいて高解像度の出力軸絶対位置を導出するように備えられることを特徴とする、モーター制御装置。
【請求項2】
モーターの入力軸に設けられた低解像度の入力軸絶対位置検出器と、
前記モーターの出力軸に設けられた減速器と、
前記減速器の出力軸に設けられ、解像度が前記減速器の減速比と同じかそれより大きい低解像度の出力軸絶対位置検出器と、
前記入力軸絶対位置、出力軸絶対位置及び減速器の減速比に基づいてモーターの高解像度の出力軸絶対位置を導出するモーター制御部とを含み、
前記モーター制御部は、
出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、
モーターの駆動の際に出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、予め設定された関係式に基づいてオフセットを演算するオフセット演算モジュールと、
前記演算されたオフセット、入力軸絶対位置及び減速比に基づいて予め設定された関係式から入力軸演算値を導出する入力軸演算モジュールと、
出力軸絶対位置検出器の出力軸絶対位置に基づいて出力軸演算値を導出する出力軸演算モジュールと、
導出された入力軸演算値と出力軸演算値とを加算して高解像度の出力軸絶対位置を導出する高解像度出力軸絶対位置導出モジュールとを含むことを特徴とする、モーター制御装置。
【請求項3】
前記入力軸絶対位置検出器は入力軸増分型位置検出器であり、前記出力軸絶対位置検出器は低解像度の出力軸絶対位置検出器であり、
前記初期オフセットは0に設定されることを特徴とする、請求項1に記載のモーター制御装置。
【請求項4】
出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定する段階と、
モーターの駆動の際に出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、予め設定された関係式に基づいて前記定義されたオフセットを演算するオフセット演算段階と、
設定されたオフセット、入力軸絶対位置及び減速比に基づいて予め設定された関係式から入力軸演算値を導出する入力軸演算段階と、
出力軸絶対位置検出器の出力軸絶対位置を角度に変換して出力軸演算値を導出する出力軸演算段階と、
演算された入力軸演算値と出力軸演算値とを加算して高解像度の出力軸絶対位置を導出する高解像度出力軸絶対位置導出段階とを含んでなることを特徴とする、モーター制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター制御システム及び方法に係り、より具体的には、低解像度の出力軸の絶対位置を用いて高解像度の出力軸の絶対位置を導出することができるようにした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットからヒューマノイドロボットに至るまで様々な分野で使用されるロボットには、関節の回転力を増大するために減速機能を有するアクチュエータを使用している。
特に、最近急激に発展しているロボット工学技術は、産業用にのみ活用されていたロボット工学メカニズムが他の事業分野まで組み合わせられて技術の融複合が進んでいるが、例えば、家庭用掃除ロボット、プログラミング教育用ロボット、玩具用ロボット、エンターテインメント用ロボットなどの開発及び生産を挙げることができる。
【0003】
このような回転軸トルクを増大するために減速器をモーターに取り付けて使用する多くのロボットでは、モーターの回転角度を検出するためのエンコーダやレゾルバなどの回転角度検出器を使用する。
【0004】
このようなロボットの関節に絶対位置を提供するエンコーダを付加するか、或いは絶対位置を取得することができる手段を使用すると、関節、すなわち減速器の出力軸の絶対位置制御が可能となる。
【0005】
このような出力軸の絶対位置測定は、モーターの入力軸に相対位置検出器を設けて駆動を開始するたびにホーミング過程を行うか、或いは入力軸に状態検出器を設けて絶対位置を保存するか、或いは入力軸に多回転絶対位置検出器を設けて使用するか、或いは入力軸と出力軸に相対位置検出器を設けて二つの検出器の位置値を比較して絶対位置を検出するか、或いは出力軸に絶対位置検出器を設けて出力軸の絶対位置を導出するなどの様々な方法が用いられる。
【0006】
しかし、入力軸に相対位置検出器を設けて使用する場合、駆動開始の際にホーミング過程を実行しなければならない煩わしさが存在し、ホーミング過程の実行中に安全上の問題が発生するおそれがある場合、ホーミング過程を直ちに行うことができない。
【0007】
また、多回転絶対位置検出器を設けて使用する場合、高価の部品でコストアップがもたらされ、減速比が絶対位置検出器の可能回転数よりも大きい場合、多回転絶対位置検出器を使用することができず、バッテリーを用いて絶対位置を保存する場合、バッテリー交換の際に初期絶対位置値の設定及び絶対位置値の補正を行わなければならなかった。
【0008】
一方、入力軸と出力軸それぞれに相対位置検出器を設けて絶対位置値を導出する場合、入力軸及び出力軸それぞれの相対位置検出器がZ相出力を発生させることができなければならず、減速比が整数であり、減速比と出力軸の位置検出器の解像度とが互いに素でなければならず、入力軸相対位置検出器の解像度が出力軸相対位置検出器の解像度よりも高くなければならないという条件を満たしてこそ、絶対位置の導出が可能である。
【0009】
そして、出力軸に高解像度の絶対位置検出器を設けて使用する場合には、高価の部品でコストアップがもたらされるだけでなく、サイズが大きくなるという欠点があり、このような欠点を補完するために、出力軸に低解像度の絶対位置検出器を設けて使用する場合には、モーターの初期位置の精度が出力軸位置検出器の解像度分だけ低下するという欠点があった。
【0010】
そこで、本発明では、入力軸と出力軸それぞれに低解像度の絶対位置検出器を設け、検出された各絶対位置値、所定のオフセット及び減速比に基づいて定められた関係式から高解像度の出力軸絶対位置値を導出することができる方案を提案しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、かかる欠点を解決するためになされたもので、その目的は、モーターの入力軸に低解像度の絶対位置検出器を設け、出力軸に解像度が減速比と同じかそれより大きい低解像度の絶対位置検出器を設けることにより、アクチュエータの製作の際に出力軸の絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターが駆動されて出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、定義されたオフセットをモーターの駆動なしで前記初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比に基づいて予め定められた関係式から導出し、その後、所定の時間周期で受信される入力軸絶対位置、導出されたオフセット、出力軸絶対位置及び減速比によって設定された関係式から高解像度の出力軸絶対位置を導出することにより、アクチュエータの修正及び追加なしで低価の絶対位置検出器を用いて高解像度の出力軸絶対位置を容易に検出することができるモーター制御装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係るモーター制御装置は、
モーターの入力軸に設けられた低解像度の入力軸絶対位置検出器と、
前記モーターの出力軸に設けられた減速器と、
前記減速器の出力軸に設けられ、解像度が前記減速器の減速比と同じかそれより大きい低解像度の出力軸絶対位置検出器と、
前記入力軸絶対位置、前記出力軸絶対位置及び前記減速器の減速比に基づいてモーターの高解像度の出力軸絶対位置を導出するモーター制御部とを含むことを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記モーター制御部は、
出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターの駆動の際に出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、定義されたオフセットを前記初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比で定められた関係式によって演算するオフセット演算モジュールと、
前記演算されたオフセット、入力軸絶対位置及び減速比に基づいて設定された関係式から入力軸演算値を導出する入力軸演算モジュールと、
出力軸絶対位置検出器の出力軸絶対位置に基づいて出力軸演算値を導出する出力軸演算モジュールと、
導出された入力軸演算値と出力軸演算値とを加算して高解像度の出力軸絶対位置を導出する高解像度出力軸絶対位置導出モジュールとを含むことができる。
【0014】
好ましくは、前記入力軸絶対位置検出器は入力軸増分型位置検出器であり、出力軸絶対位置検出器は低解像度の出力軸絶対位置検出器であり、初期オフセットは0に設定できる。
【0015】
一方、前述した装置をベースとする本発明のモーター制御方法は、
出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターの駆動の際に出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、前記定義されたオフセットを前記初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比に対する関係式から
演算するオフセット演算段階と、
演算されたオフセット、入力軸絶対位置及び減速比に基づいて予め設定された関係式から入力軸演算値を導出する入力軸演算段階と、
出力軸絶対位置検出器の出力軸絶対位置を角度に変換して出力軸演算値を導出する出力軸演算段階と、
導出された入力軸演算値と出力軸演算値とを加算して高解像度の出力軸絶対位置を導出する高解像度出力軸絶対位置導出段階とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明に係るモーター制御装置及び方法によれば、モーターの入力軸に低解像度の絶対位置検出器を設け、出力軸に解像度が減速比と同じかそれより大きい低解像度の絶対位置検出器を設けることにより、出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターが駆動されて出力軸絶対位置が変動する時点で受信される入力軸絶対位置を基準オフセットとして定義して、モーターの駆動なしで定義されたオフセットを初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比に対する関係式から導出し、その後、所定の時間周期で受信される入力軸絶対位置、オフセット、出力軸絶対位置及び減速比によって設定された関係式から高解像度の出力軸絶対位置を導出することにより、モーターの駆動なしで導出されたオフセットで出力軸絶対位置を導出することができ、モーターを駆動するためのアクチュエータの製作コストを節減することができ、アクチュエータの変更及び追加なしで容易に高解像度の出力軸絶対位置を得ることができるので、導出された出力軸絶対位置に対する信頼性を向上させることができるという効果を得る。
【0017】
本明細書で添付される次の図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものなので、本発明は、そのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るモーター制御装置が適用されるアクチュエータの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るモーター制御装置のモーター制御部の詳細構成を示す図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係るモーター制御過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明、本発明の動作上の利点、及び本発明の実施によって達成される目的を十分に理解するためには、本発明の好適な実施形態を例示する添付図面及び図面に記載された内容を参照しなければならない。
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明することにより、本発明を詳細に説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。
【0021】
本発明の実施形態で提示される特定の構造ないし機能的説明は単に本発明の概念による実施形態を説明するための目的で例示されたもので、本発明の概念による実施形態は様々な形態で実施できる。また、本明細書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならず、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更物、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0022】
本明細書において、「第1」及び/または「第2」等の用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の概念による権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名でき、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名できる。
【0023】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる或いは「接続されて」いると言及された場合には、該他の構成要素に直接連結または接続されていることも意味するが、それらの間に別の構成要素が介在する場合も含むと理解されるべきである。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる或いは「直接接続されて」いると言及された場合には、それらの間に別の構成要素が介在しないと理解されるべきである。構成要素間の関係を説明するための他の表現、すなわち「〜間に」と「すぐに〜間に」または「〜に隣り合う」と「〜に直接隣り合う」等も同様に解釈されるべきである。
【0024】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施態様を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0025】
図1は本発明の実施形態に係るモーター制御装置が適用されるアクチュエータの構成を示すブロック図、
図2は本発明の実施形態に係るモーター制御装置のモーター制御部の詳細構成を示す図である。
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施形態に係るモーター制御装置は、モーターの入力軸に低解像度の絶対位置検出器を設け、出力軸に解像度が減速比と同じかそれより大きい低解像度の絶対位置検出器を設けることにより、出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターが駆動されて出力軸絶対位置が変動する時点で受信される入力軸絶対位置をオフセットとして定義し、定義されたオフセットをモーターの駆動なしで初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比に対する関係式から導出し、その後、所定の時間周期で受信される入力軸絶対位置、オフセット、出力軸絶対位置及び減速比によって設定された関係式から高解像度の出力軸絶対位置を導出するように備えられ、このようなモーター制御装置が適用されるアクチュエータSは、モーター10、減速器20、入力軸絶対位置検出器30、出力軸絶対位置検出器40、及びモーター制御部50を含む。
【0026】
アクチュエータSは、モーター10と、モーター10の駆動軸に連結され、整数の減速比を有する減速器20とを含み、前記モーター10の入力軸に連結される入力軸絶対位置検出器30と、減速器20の出力軸に連結される出力軸絶対位置検出器40とをさらに含むこともでき、それぞれの入力軸絶対位置検出器30及び出力軸絶対位置検出器40は低価の低解像度で備えられる。
【0027】
ここで、入力軸絶対位置検出器30としては、モーター10のA相、B相及びZ相を有する増分型位置検出器が備えられてもよい。
【0028】
アクチュエータSは、モーター10、前記入力軸絶対位置検出器30及び出力軸絶対位置検出器40と電気的に連結されるモーター制御部50をさらに含む。
【0029】
モーター制御部50は、出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置に設定される初期オフセット、モーター10を駆動して出力軸絶対位置値が変動する時点で受信される入力軸絶対位置をオフセットとして定義し、モーターの駆動なしで定義されたオフセットを初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比に基づいて定められた関係式からオフセットを導出し、導出されたオフセット、入力軸絶対位置検出器30及び出力軸絶対位置検出器40から供給されるそれぞれの絶対位置値及び減速器20の減速比に基づいて設定された関係式から出力軸絶対位置値を導出するように備えられ得る。
【0030】
これにより、モーター制御部50は、図
2に示すように、モーター10の駆動により出力軸絶対位置値が変動する時点の入力軸絶対位置値を基準オフセットとして定義し、初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比で定められた関係式によって定義されたオフセットを導出するオフセット演算モジュール51と、入力軸絶対位置検出器30の入力軸絶対位置値pos_iからオフセットを減算した後、角度に変換して減算値((pos_i−オフセット*360/Ni)を導出し、導出された減算値を減速比Rで割った入力軸演算値(((pos_i−オフセット)*360/Ni)/R)を導出する入力軸演算モジュール52と、出力軸絶対位置値pos_oを角度に変換して出力軸演算値((pos_o)*360/No)を導出する出力軸演算モジュール53と、入力軸演算モジュール52の入力軸演算値と出力軸演算モジュール53の出力軸演算値とを加算して高解像度の出力軸絶対位置Hoを導出する高解像度出力軸絶対位置導出モジュール54とを含むことができる。
すなわち、前記高解像度の出力軸絶対位置Hoは、次の[式1]で表わす。
Ho=pos_o*360/No+((pos_i−オフセット)*360/Ni)/R・・・[式1]
もしpos_i−オフセット<0であれば、[式1]を次の[式2]で表す。
Ho=pos_o*360/No+((pos_i−オフセット+Ni)*360/Ni)/R・・・[式2]
【0031】
ここで、Ni、Noは、モーター10の入力軸と出力軸の回転当たりに対する入力軸絶対位置検出器30と出力軸絶対位置検出器40から出力される信号を整数化した値であり、本発明における解像度のことをいう。すなわち、入力軸絶対位置検出器30または出力軸絶対位置検出器40それぞれで整数化した解像度Ni、Noが、予め定められた判断基準値以下である場合、低解像度と判定する。このような解像度に応じて、モーター10に対する精密制御が可能である。
【0032】
ここで、モーター10の入力軸に絶対位置検出器30が設けられた場合、出力軸絶対位置が0である時点での初期オフセットOff_0から変動する出力軸絶対位置でのオフセットOffは、次の[式3]を満足する。
Off=[(Off_0)+Ni*(1−R)*pos_o]
/Ni・・・[式3]
【0033】
ここで、[x]はxを超えない最大整数を示す。[式
2]からの出力軸絶対位置検出器40の出力軸絶対位置値は、解像度Noと減速比Rとが同一である場合に変動し、出力軸絶対位置でのオフセットOffは、出力軸絶対位置が0である時点でのオフセットOff_0であって一定である。
【0034】
一方、モーター10の入力軸に増分型位置検出器を設け、出力軸に低解像度の絶対位置検出器を設ける場合、出力軸絶対位置が0である時点での初期オフセットOff_0は0に設定し、出力軸の絶対位置検出器が変わる時点までモーター10を駆動して得られた出力軸絶対位置pos_oと前記[式3]を用いてオフセットOffを定め、同一の値に入力軸増分型位置検出器の位置値を定めると、定められたオフセットOffに基づき、前記[式1]を用いて高解像度の出力軸絶対位置Hoが導出される。
【0035】
これにより、モーターの入力軸と出力軸それぞれに低解像度の絶対位置検出器を設けることにより、出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターが駆動されて出力軸絶対位置が変動する時点で受信される入力軸絶対位置をオフセットとして設定し、その後、所定の時間周期で受信される入力軸絶対位置、オフセット、出力軸絶対位置及び減速比によって設定された関係式から、高解像度の出力軸絶対位置を導出することにより、モーターを駆動するためのアクチュエータの製作コストを節減することができ、アクチュエータの変更及び追加なしで容易に高解像度の出力軸絶対位置を得ることができるので、導出された出力軸絶対位置に対する信頼性を向上させることができる。
【0036】
次に、モーターの入力軸と出力軸それぞれに低解像度の絶対位置検出器を設け、それぞれの絶対位置値、減速比及び予め定められたオフセットに基づいて設定された関係式から高解像度の出力軸絶対位置を導出するための一連の過程を、
図3を参照して説明する。
【0037】
図3は
図1に示されたモーター制御部50の動作過程を示すフローチャートである。次に、
図3を参照して、本発明の実施形態に係るモーター制御過程を説明する。
【0038】
まず、モーター制御部50は、出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーター10が駆動されて低解像度の出力軸絶対位置検出器が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、定義されたオフセットを前記初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比で定義された関係式から導出し、その後、入力軸絶対位置からオフセットを減算した後、角度に変換する(段階101、103、105、107)。
【0039】
モーター制御部50は、角度に変換された減算値を減速器の減速比で割って入力軸演算値を導出する(段階109)。
【0040】
一方、モーター制御部50は、出力軸絶対位置検出器の出力軸絶対位置を角度に変換して出力軸演算値を導出する(段階111)。
【0041】
次いで、入力軸演算値と出力軸演算値とはモーター制御部50によって加算され、加算された絶対位置は高解像度の出力軸絶対位置として導出される(段階113)。
【0042】
これにより、本発明の実施形態によれば、モーターの入力軸に低解像度の絶対位置検出器を設け、出力軸には解像度が減速比と同じかそれより大きい低解像度の絶対位置検出器を設けることにより、アクチュエータの製作の際に出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターが駆動されて出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、定義されたオフセットをモーターの駆動なしで前記初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比で定められた関係式から導出し、その後、所定の時間周期で受信される入力軸絶対位置、導出されたオフセット、出力軸絶対位置及び減速比によって設定された関係式から高解像度の出力軸絶対位置を導出することにより、アクチュエータの修正及び追加なしで低価の絶対位置検出器を用いて高解像度の出力軸絶対位置を容易に検出することができる。
【0043】
以上、本発明を好適な実施形態を参照して詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも様々な変形または修正が可能な範囲まで本発明の技術思想に属すると理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
モーターの入力軸に低解像度の絶対位置検出器を設け、出力軸には解像度が減速比と同じかそれより大きい低解像度の絶対位置検出器を設けることにより、アクチュエータの製作の際に出力軸絶対位置が0になる時点の入力軸の絶対位置を初期オフセットとして設定し、モーターが駆動されて出力軸絶対位置が変動する時点での入力軸絶対位置をオフセットとして定義して、定義されたオフセットをモーターの駆動なしで前記初期オフセット、入力軸絶対位置及び減速比で定められた関係式から導出し、その後、所定の時間周期で受信される入力軸絶対位置、導出されたオフセット、出力軸絶対位置及び減速比によって設定された関係式から高解像度の出力軸絶対位置を導出することにより、アクチュエータの修正及び追加なしで低価の絶対位置検出器を用いて高解像度の出力軸絶対位置を容易に検出することができるモーター制御装置及び方法に対する運用の正確性及び信頼度だけでなく、性能効率の面でも非常に大きい進歩をもたらすことができ、アクチュエータ及びモーターの市販または営業の可能性が十分であるうえ、現実的に明白に実施することができる程度なので、産業上の利用可能性がある発明である。