特許第6578069号(P6578069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578069
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】プロピレン系重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20190909BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20190909BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C08L23/14
   C08L23/16
   C08F210/06
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-545686(P2018-545686)
(86)(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公表番号】特表2018-536084(P2018-536084A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016078417
(87)【国際公開番号】WO2017097579
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年5月23日
(31)【優先権主張番号】15199651.9
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】16193190.2
(32)【優先日】2016年10月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・コベッツィ
(72)【発明者】
【氏名】パオラ・マッサリ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・カヴァリエリ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルタ・マルゾッラ
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−189474(JP,A)
【文献】 特開2015−193831(JP,A)
【文献】 特開2007−119746(JP,A)
【文献】 特開平10−152530(JP,A)
【文献】 特開2012−020471(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0147646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08F 6/00−246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)3.5〜12.0g/10分の溶融流量(MFR、 ASTM D 1238、230℃/2.16kgに従い、すなわち2.16kgの荷重で230℃で測定する)を有する5.5重量%〜9.0重量%の1−ヘキセン誘導単位を含有する40重量%〜80重量%のプロピレン1−ヘキセン共重合体;
b)3.5〜12.0g/10分の溶融流量(MFR、 ASTM D 1238、230℃/2.16kgに従い、すなわち2.16kgの荷重で230℃で測定する)を有する1.5重量%〜6.5重量%のエチレン誘導単位を含有する20重量%〜60重量%のプロピレンエチレン共重合体を含み、
a)とb)の量の合計が100であるプロピレン重合体組成物。
【請求項2】
成分a)でDSCで測定したより高い溶融温度が141.0℃〜151.0℃の範囲である、請求項1に記載のプロピレン重合体組成物。
【請求項3】
成分a)で2つのピークの溶融温度の差が5℃〜20℃の範囲である、請求項1に記載のプロピレン重合体組成物。
【請求項4】
プロピレン重合体組成物を含む、請求項1に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、特に低いシール開始温度(SIT)、高い透明性および印刷性を有する2軸配向ポリプロピレンフィルム(BOPP)およびキャストフィルムの製造に特に適したプロピレンと1−ヘキセンとの共重合体およびプロピレンとエチレンの共重合体を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンと1−ヘキセンとの共重合体は、当業界において既に知られており、例えば、WO2006/002778号は、0.2重量%〜5重量%の1−ヘキセン誘導単位を有するプロピレンと1−ヘキセンとの共重合体に関する。この共重合体は、モノモーダルタイプの分子量分布を有し、パイプシステムに使用されている。
【0003】
WO2009/077287号は、ヘキセン−1から誘導された単位の5重量%〜9重量%の反復単位を有するプロピレンとヘキセン−1との共重合体であって、125℃〜140℃の溶融温度および0.1〜3g/10分の溶融流量(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有する共重合体に関する。
【0004】
WO2015/062787号は、工業用シートの製造に特に適した0.6重量%〜3.0重量%範囲の1−ヘキセン誘導単位の含量を有するプロピレンおよび1−ヘキセンのマルチモーダル共重合体に関する。
【0005】
本出願人はプロピレン1−ヘキセン共重合体およびプロピレンエチレン共重合体を含む組成物を使用することによって低いヘイズ値、低いシール開始温度(SIT)および良好なダイン保持力を有するBOPPおよびキャストフィルムを製造することができることを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はプロピレン重合体組成物であって:
【0007】
a)3.5〜12.0g/10分の溶融流量(MFR、 ASTM D 1238、230℃/2.16kgに従い、すなわち2.16kgの荷重で230℃で測定する)を有する5.5重量%〜9.0重量%の1−ヘキセン誘導単位を含有する40重量%〜80重量%のプロピレン1−ヘキセン共重合体;
【0008】
b)3.5〜12.0g/10分の溶融流量(MFR、 ASTM D 1238、230℃/2.16kgに従い、すなわち2.16kgの荷重で230℃で測定する)を有する1.5重量%〜6.5重量%のエチレン誘導単位を含有する20重量%〜60重量%のプロピレンエチレン共重合体を含み;
【0009】
a)とb)の量の合計が100であるプロピレン重合体組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はプロピレン重合体組成物であって:
【0011】
a)3.5〜12.0g/10分;好ましくは3.8〜7.5g/10分;より好ましくは4.0〜6.0g/10分の溶融流量(MFR、 ASTM D 1238、230℃/2.16kgに従い、すなわち2.16kgの荷重で230℃で測定する)を有する5.5重量%〜9.0重量%;好ましくは6.0重量%〜8.5重量%;より好ましくは6.5重量%〜8.0重量%の1−ヘキセン誘導単位を含有する40重量%〜80重量%;好ましくは45重量%〜74重量%;より好ましくは48重量%〜63重量%のプロピレン1−ヘキセン共重合体;
【0012】
b)3.5〜12.0g/10分;好ましくは3.8〜7.5g/10分;より好ましくは4.0〜6.0g/10分の溶融流量(MFR、 ASTM D 1238、230℃/2.16kgに従い、すなわち2.16kgの荷重で230℃で測定する)を有する1.5重量%〜6.5重量%;好ましくは2.0重量%〜6.1重量%;より好ましくは3.5重量%〜5.1重量%のエチレン誘導単位を含有する20重量%〜60重量%;好ましくは26重量%〜55重量%;より好ましくは37重量%〜52重量%のプロピレンエチレン共重合体を含み;
【0013】
a)とb)の量の合計が100であるプロピレン重合体組成物を提供する。
【0014】
【0015】
好ましくは上記のプロピレン1−ヘキセン共重合体の成分a)は1つ以上の下記特徴を付与する:
【0016】
i)DSCプロットは0〜5mW;好ましくは0〜3mW範囲の高さの差を有する少なくとも2つのピークを示す;
【0017】
ii)DSCで測定した、141.0℃〜151.0℃;好ましくは142.0℃〜149.0℃;より好ましくは142.5℃〜145.0℃範囲のより高い溶融温度。
【0018】
2つのピークの溶融温度の差が好ましくは5℃〜20℃;より好ましくは7℃〜15℃;さらに好ましくは8℃〜12℃の範囲である。
【0019】
本開示のプロピレン1−ヘキセン共重合体は、プロピレンおよび1−ヘキセン誘導単位のみを含有する。上記の共重合体は最大1.0重量%のエチレン誘導単位をさらに含有することができる。本開示のプロピレンエチレン共重合体は、プロピレンおよびエチレン誘導単位のみを含有する。上記の共重合体は最大1.0重量%の1−ヘキセン誘導単位をさらに含有することができる。
【0020】
DSC曲線におけるピーク(融解温度/融解熱(mW))は、温度Aに対する±5℃の範囲の融解熱の値(mW)に対して温度Aで最も高い融解熱値を有するDSC曲線上の点(融解温度/融解熱)として定義される。
【0021】
溶融温度値はISO 11357−3に従い、示差走査熱量計によって20℃/分の加熱速度で決定される。
【0022】
本開示の組成物は、極めて低いヘイズおよび低いシール開始温度(SIT)が付与され、従ってこの材料はフィルム、特にキャストまたはBOPPフィルムの製造に有利に使用することができる。
【0023】
特に、成分a)およびb)単独のヘイズより低い結果となる組成物のヘイズに相乗効果がある。
【0024】
プロピレン重合体組成物の成分a)およびb)は、ジハロゲン化マグネシウムに担持された立体特異的チーグラー・ナッタ触媒の存在下で行われる重合工程で得られることができる。分子量調節剤(好ましくは水素)を適切に投与することによって。
【0025】
連続式または配置式(batch)であり得る重合工程は、公知された技術に従って、気相で、または液相で不活性希釈剤の存在下または不存在下で、または混合された液体−気体技術によって行われる。2つの反応器において気相で重合を行うことが好ましい。
【0026】
重合反応時間、圧力および温度は重要ではないが、温度が20〜100℃であるのが最もよい。圧力は、大気圧以上であり得る。
【0027】
上述したように、分子量の調節は、公知された調節剤、特に水素を使用して行われる。
【0028】
上記の立体特異的な重合触媒は、下記反応の生成物を含む:
【0029】
1)ジハロゲン化マグネシウム(好ましくは塩化物)に担持されたチタン化合物および電子−供与体化合物(内部供与体)を含有する、固体成分;
【0030】
2)アルミニウムアルキル化合物(助触媒);および選択的に、
【0031】
3)電子−供与体化合物(外部供与体)。
【0032】
上記の触媒は、好ましくは、イソタクチック指数が90%超過(室温でキシレンに不溶性である画分の重量として測定される)であるプロピレンの同種重合体を製造することができる。
【0033】
固体触媒成分(1)は、一般的にエーテル、ケトン、ラクトン、N、Pおよび/またはS原子を含む化合物、ならびにびモノーおよびジカルボン酸エステルの中から選択された化合物を電子−供与体として含有する。
【0034】
上述した特性を有する触媒は、特許文献においてよく知られている;米国特許第4,399,054号およびヨーロッパ特許第45977号に記載された触媒が特に有利である。
【0035】
上記の電子−供与体化合物の中で特に適したものは、フタル酸エステルおよびコハク酸エステルである。
【0036】
適したコハク酸は、以下の式(I)に示す:
【0037】
【化1】
【0038】
上記式において、ラジカルRおよびRは、互いに等しいか異なっており、選択的にヘテロ原子を含有する、C1−C20線状または分岐状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり;ラジカルR〜Rは、互いに等しいか異なっており、選択的にヘテロ原子を含有する、水素または、C1−C20線状または分岐状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり、同一の炭素原子に結合されているラジカルR〜Rは、一緒に連結されて環を形成することができる。
【0039】
およびRは、好ましくはC1−C8アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基である。RおよびRが第1のアルキルおよび特に分岐状第1のアルキルから選択される化合物が特に好ましい。適したRおよびR基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチルおよびネオペンチルが特に好ましい。
【0040】
式(I)によって記載された好ましい化合物群の中の1つは、R〜Rが水素であり、Rが3〜10個の炭素原子を有する分岐状アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールラジカルであるものである。式(I)の基の中で他の好ましい基は、R〜Rの少なくとも2つのラジカルが水素と異なっており、選択的にヘテロ原子を含有する、C1−C20線状または分岐状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選択されるものである。水素と異なる2つのラジカルが同一の炭素原子に連結されている化合物が特に好ましい。また、水素と異なる少なくとも2つのラジカルが異なる炭素原子、すなわちRおよびR、またはRおよびRに連結されている化合物が特に好ましい。
【0041】
公開されたヨーロッパ特許出願EP−A−361 493号および728769号に例示されているように、特に適した他の電子−供与体は、1,3−ジエーテルである。
【0042】
助触媒(2)として、好ましくは、Al−トリエチル、Al−トリイソブチルおよびAl−トリ−n−ブチルのようなトリアルキルアルミニウム化合物を使用する。
【0043】
外部電子−供与体(Al−アルキル化合物に添加される)として使用され得る電子−供与体化合物(3)は、芳香族酸エステル(例えば、安息香酸アルキル)、複素環式化合物(例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび2,6−ジイソプロピルピペリジン)、および特に少なくとも1つのSi−OR結合(ここで、Rは炭化水素ラジカルである)を含有するケイ素化合物を含む。上記ケイ素化合物の例は、化学式RSi(ORの化合物であり、ここで、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、およびRは、選択的にヘテロ原子を含有する、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。
【0044】
テキシルトリメトキシシラン(2,3−ジメチル−2−トリメトキシシリル−ブタン)が特に好ましい。
【0045】
上述した1,3−ジエーテルは、また外部供与体として使用するのに適している。内部供与体が上記1,3−ジエーテルの中の1つである場合、外部供与体は省略されることができる。
【0046】
触媒は、少量のオレフイン(予備重合)と予備接触され、上記触媒を炭化水素溶媒中に触媒を懸濁液で維持させ、室温〜60℃の温度で重合させて、上記触媒の重量の0.5〜3倍の量の重合体を生成させることができる。
【0047】
上述した工程で製造された成分a)およびb)は当業界に公知された工程を使用してブレンディングされる。
【0048】
本発明による組成物はまた、2つ以上の反応器で順次的な重合によって製造されることができ、ここで第1反応器で成分a)が製造された後、成分a)の存在下に後続反応器で成分b)が製造されるか、またはその逆で製造される。使用されできる重合工程は上述されたものである。
【0049】
本開示の組成物はまた、オレフイン重合体に通常的に使用される添加剤、例えば、核形成剤および清澄剤、ならびに加工助剤を含有することができる。
【0050】
本開示のプロピレン重合体組成物はフィルムの製造に有利に使用されることができる。好ましくは少なくとも1つの層が本発明の組成物を含むキャストまたはBOPPフィルム単層、あるいは多層フィルム。
【0051】
本開示のプロピレン重合体組成物を用いて得られるフィルムは、良好なダイン保持性を特徴とし、これは、例えば、プラズマ処理またはコロナ処理が適用された長時間後にもフィルムを印刷するのに適している。
【0052】
本開示のプロピレン重合体組成物で得られた多層フィルムは、上記のプロピレン組成物を含む少なくとも1つのスキン層を有することを特徴としており、残りの層は多層フィルムまたはフィルムコーティング製品に使用するために当業界に公知された任意の材料で形成されることができる。従って、例えば、各々の層はポリプロピレン同種重合体または共重合体、あるいはEVA、EVOHのような他の種類の重合体で形成することができる。
【0053】
多層構造の層の組み合わせおよび数は特に制限されない。少なくとも一つのスキン層Aが本開示のプロピレン重合体組成物を含む場合、その数は通常3〜11層、好ましくは3〜9層、より好ましくは3〜7層、およびさらに好ましくは3〜5層であり、A/B/A、A/B/C、A/B/C/B/A、A/B/C/D/C/B/Aを含む組み合わせが可能である。
【0054】
本開示の多層フィルムの好ましい層は3または5であり、ここで少なくとも1つのスキン層は本開示のプロピレン/エチレン共重合体を含む。好ましい構造はA/B/AまたはA/B/Cであり、ここでAは本開示のプロピレン重合体組成物である。
【0055】
本開示の目的のために、スキン層は多層フィルムの上部層および/または下部層である。
【0056】
好ましくは、本開示の多層フィルムにおいてフィルムの上部層および下部層は、本開示のプロピレン/エチレン共重合体を含む。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、限定する目的でなく本発明を例示するために提供される。
【0058】
実施例の重合体材料およびフィルムに関するデータは、以下に報告された方法によって決定される。
【0059】
溶融温度(ISO 11357−3)
示差走査熱量計(DSC)によって決定される。6±1mgを秤量したサンプルを20℃/分の速度で200±1℃まで加熱し、窒素ストリーム中で2分間200±1℃で維持した後、20℃/分の速度で40±2℃まで冷却し、これによって、2分間サンプルを結晶化させるためにこの温度で維持する。次に、サンプルを20℃/分の昇温速度で最大200℃±1℃で再び融解する。溶融スキャンを記録し、サーモグラムを得て(℃ vs. mW)、これからピークに対応する温度を読み取る。第2融解の間に記録された最も強い溶融ピークに対応する温度が溶融温度で取られる。
【0060】
溶融流量(MFR)
ASTM D1238に従って2.16kgの荷重で230℃で測定する。
【0061】
25℃でキシレンの溶解度
2.5gの重合体と250mlのキシレンを冷凍装置とマグネチックスターラーを備えたガラスフラスコに導入する。温度は30分後で溶媒の沸点まで上昇する。次いで、このように得られた透明な溶液を還流下に維持させ、さらに30分間撹拌する。次いで、密閉されたフラスコを氷と水のバスに30分間維持させ、恒温水槽において同様に25℃で30分間維持させる。このように形成された固体を迅速な濾過紙で濾過する。予め秤量したアルミニウム容器に100mlの濾過された液体を注いだ後、窒素気流下に加熱板で上記容器を加熱し蒸発させて溶媒を除去する。次いで、上記容器を一定重量に得られるまで真空下で80℃でオーブンに維持させる。次いで、室温でキシレンに溶解可能な重合体の重量百分率を計算する。
【0062】
固有粘度(IV)
135℃でテトラヒドロナフタレンの中で決定する。
【0063】
NMRによる1−ヘキセン含量の決定
13C NMRスペクトルを、120℃で、フーリエ変換モードで、150.91MHzで作動するAV−600分光計上で取得する。プロピレンCHのピークは、28.83で内部基準として使用した。13C NMRスペクトルを、以下のパラメータを使用して取得する:
【0064】
[表]
【0065】
モル%としての1−ヘキセンの総量は、以下の関係式を使用してダイアド(diad)から計算する:
【0066】
[P]=PP+0.5PH
【0067】
[H]=HH+0.5PH
【0068】
プロピレン/1−ヘキセン共重合体の13C NMRスペクトルの割り当ては、以下の表に従って計算した。
【0069】
[表]
【0070】
プロピレン/エチレン共重合体の13C NMR
冷凍フローブを備えたBruker AV−600スペクトロメーターを120℃でフーリエ変換モードで160.91MHzで作動させ、13C NMRスペクトルを得た。
【0071】
ββ炭素(文献[“Monomer Sequence Distribution in Ethylene−Propylene Rubber Measured by 13C NMR.3.Use of Reaction Probability Mode”、C.J.Carman、R.A.Harrington and C.E.Wilkes、Macromolecules、1977、10、536]による命名法)のピークを29.9ppmで内部基準として用いた。サンプルを120℃の温度で8重量%/vの濃度で1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2で溶解した。90°パルス、パルス間15秒の遅延の条件下で各スペクトルを得て、CPDで1H−13Cカップリングを除去した。9000Hzのスペクトルウィンドウを使用して32Kデータポイントに約512個の過渡信号を格納した。
【0072】
スペクトルの割り当て、トライアド(triad)分布および組成物の評価は、カクゴ(文献[“Carbon−13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene−propylene copolymers prepared with δ−titanium trichloride−diethylaluminum chloride”、M.Kakugo、Y.Naito、K.Mizunuma and T.Miyatake、Macromolecules、1982、15、1150]によって下記の式を用いて行った。
【0073】
【数1】
【0074】
エチレン含量のモルパーセントは次の式を使用して評価した:
【0075】
Eモル%=100*[PEP+PEE+EEE]。エチレン含量の重量%は次の式を使用して評価した:
【0076】
【数2】
【0077】
ここで、Pモル%はプロピレン含量のモル%であり、一方、MWおよびMWは各々エチレンおよびプロピレンの分子量である。
【0078】
反応性比rの積(product)をカーマン(文献[C.J.Carman、R.A.Harrington and C.E.Wilkes、Macromolecules、1977;10、536])によって計算した:
【0079】
【数3】
【0080】
プロピレンシーケンスの立体規則性はPPP mmTββ(28.90−29.65ppm)および全体Tββ(29.80−28.37ppm)の比からmm含量として計算した。
【0081】
シール開始温度(SIT)
フィルム試片の製造
単一スクリューコリン押出機(スクリューの長さ/直径比1:25)で7m/分のフィルム引き上げ速度および210〜250℃の溶融温度で各々の試験組成物を押し出すことにより、厚さが50μmである一部のフィルムを製造する。各々の結果的なフィルムは、97重量%のキシレン不溶性画分および2g/10分のMFR Lを有するプロピレン同種重合体の1000μm厚さのフィルム上に重ね合わせる。重ね合わされたフィルムは、5分間維持される9000kg荷重の下に200℃で、Carverプレスで互いに結合させる。結果的なラミネートを150℃でTOM Longフィルム延伸機を使用して長手方向および横方向、すなわち2軸方向に6倍延伸して、20μm厚さのフィルム(18μm同種重合体+2μm試験)を得る。2×5cmの試片をフィルムから切り取る。
【0082】
SIT.の決定
各々の試験に対して、上記試片のうちの2つを整列して重ね合わせ、隣接した層は、特定の試験組成物の層である。重ね合わせた試片を、Brugger Feinmechanik Sealer社のHSG−ETK745モデルで2cm側面のうちの1つに沿って密封する。密封時間は、0.1N/mmの圧力で5秒である。シール温度は、試験組成物の溶融温度よりも約10℃低い温度から開始して、各密封について2℃増加する。密封されたサンプルは冷却した状態に維持し、次に、密封されていない端部はインストロン機械に取り付けられて50mm/分の牽引速度で試験する。
【0083】
SIT.は、上記試験条件において少なくとも2Nの荷重を加える場合、密封が壊れない最小シール温度である。
【0084】
ヘイズの決定
SIT測定に対して上述したように製造された50μmフィルム試片を使用した。ヘイズメータータイプUX−10に接続されたガードナー測光ユニット、またはフィルター“C”を備えたG.E.1209光源を有する同等な器具を使用してヘイズ値を測定する。器具を較正するために公知されたヘイズの参照サンプルを使用する。
【0085】
1−ヘキセンとポリプロピレンの共重合体の製造
共重合体を、以下のように製造する。
【0086】
重合に使用される固体触媒成分は、触媒成分Aの製造に対して、WO03/054035号に記載された方法と同様に製造される、内部供与体として約2.2重量%のチタンおよびフタル酸ジイソブチルを含有する、塩化マグネシウムに担持された高度に立体特異的なチーグラー・ナッタ触媒成分である。
【0087】
触媒システムおよび予備重合処理
これを重合反応器に導入する前に、上述した固体触媒成分をアルミニウムトリエチル(TEAL)およびテキシルトリメトキシシラン(2,3−ジメチル2−トリメトキシシリル−ブタン)と15℃で約6分間接触させ、TEAL/テキシルトリメトキシシランの重量比は、約7と同一し、TEAL/固体触媒成分の重量比は約6と同一な量である。
【0088】
次いで、触媒システムは、重合反応器に導入する前に、20℃で約20分間液体プロピレンに懸濁液に維持させることによって予備重合を経る。
【0089】
重合
気体状態で予備重合された触媒システム、水素(分子量調節剤として使用される)、プロピレンおよび1−ヘキセンを連続的且つ一定の流れで供給することによって2つの気相重合反応器で重合を行う。
【0090】
主な重合条件は、表1に報告されている。
【0091】
【表1】
【0092】
反応器からぬける重合体粒子を蒸気処理して、反応性単量体および揮発性物質を除去した後に乾燥を経る。
【0093】
実施例1で得られた共重合体の特性は、表2に報告されている。
【0094】
【表2】
【0095】
プロピレンエチレン共重合体
Lyondellbasellによって市販される2つの商業用プロピレンエチレン共重合体を使用して組成物を製造した。プロピレン共重合体の特徴は表3に報告されている。
【0096】
【表3】
【0097】
実施例1−5
成分a)は多様な量の成分b1)およびb2)とブレンディングした。得られた組成物の特徴は表4に報告されている。
【0098】
【表4】
【0099】
表4から、得られる組成物は本来の成分に対してSITの良好な値を維持し、特に結果的なヘイズは本来の成分のヘイズより低いことを明らかにもたらす。従って、結果的なキャストフィルムは低いシール開始温度を保持する透明性が改善される。
【0100】
多層フィルム
実施例1、3および4の重合体はA層が実施例の重合体であり、B層がLyondellbasellによって市販されるプロピレン同種重合体MOPLEN HP515MであるA/B/A多層フィルムを製造するのに使用された。フィルムは50ミクロンの厚さであり、層Aが全体厚さの20%であり、層Bが全体厚さの60%であり、処理パラメータは表5に報告されている。
【0101】
【表5】
【0102】
得られたフィルムのサンプルはコロナ処理を経た後、1週および1月後に表面張力を測定した。結果は表6に報告されている。
【0103】
【表6】
【0104】
表6から、本開示のフィルムは150日後にも高い表面張力を維持することを明らかにもたらす。これは長時間後にもより良好な印刷性を許容し、従って、フィルムはコロナ処理後に長い貯蔵寿命を有する。