(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率の高い固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCと略称する)が次世代のエネルギー供給システムとして注目を集めている。SOFCは、電解質膜にイオン伝導性固体電解質を使用し、その電解質膜の一方の面に多孔質焼結体からなる燃料極(アノード)を、他方の面に空気極(カソード)を接合して構成される。SOFCでは、燃料極に燃料(水素)を供給し、空気極に空気(酸素)を供給し、電気化学反応によって電気エネルギーを取り出している。
【0003】
そして、この種のSOFCの研究開発に伴い、燃料電池の性能を評価するためのSOFCの単セル評価装置としては、例えば引用文献1に示す装置、非特許文献1や非特許文献2に開示される三重管構造の高温電気化学セル評価用ホルダ等が公知となっている。
【0004】
ところで、一般的な電気化学セル評価用ホルダは、SOFCの作動温度(約800℃)と同程度の雰囲気温度によるセルの評価試験を実施可能とするため、耐熱性を有し、さらにその加工性や安価な製造コスト等を実現するために装置筐体の材料としてステンレス等の金属が用いられている。
【0005】
しかしながら、SOFCの作動温度による評価実験では、作動温度が高温であるため、筐体を構成する金属中の成分(例えば、Cr)が蒸発して酸化した酸化物(例えば、Cr
2 O
3 )がセル表面に付着して汚染され、SOFCの評価試験に悪影響を及ぼす虞があった。
【0006】
また、上記各文献に開示される装置を含む一般的な電気化学セル評価用ホルダは、セルを両極側からガス導入管で挟持する縦型の三重管構造を採用している。このため、縦型の三重管構造に対応する電気炉にしか使用することができず、またホルダ自体が大型であり、電気炉への設置時の取り扱いが不便であるという問題があった。
【0007】
さらに、この種の電気化学セル評価用ホルダでは、セル部を挟んで一対のガラスO−リングを設置し、電気炉内の熱によって溶融させることでセル部の両極側のシールを行い、燃料ガス及び空気ガスのガス漏れを防止する気密構造を実現している。しかし、O−リングがガラス製であるため、次の評価試験を行う際に、それまで使用したガラスO−リングの除去や清掃作業が必要となり、その作業が面倒であった。
【0008】
そこで、出願人は、上述した問題を解決するため、下記特許文献2に開示される電気化学セル評価用ホルダを出願している。
【0009】
この特許文献2に開示される電気化学セル評価用ホルダでは、挟持部品である燃料ガス拡散板、燃料極用集電体、セル部、一対のセラミックス製のガスケット、空気極用集電体、空気ガス拡散板を積層し、燃料極側収容凹部と空気極側収容凹部とが対向するようにアルミナ製の燃料極側筐体及び空気極側筐体とを突き合わせた状態で挟持させる。そして、各筐体間で挟持部品を挟持した状態で、空気極側挿通孔にセラミックバネを挿入し、燃料極側挿通孔から挿入したボルトをナットで締結固定して組み立てる。
【0010】
これにより、性能評価時におけるセルへの悪影響が無く、且つ装置の小型化による電気炉への設置容易性と組立容易性に優れた電気化学セル評価用ホルダを実現している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、SOFCは、水素だけでなく、都市ガスやプロパンガス、バイオガス、石炭ガス化ガスなどの炭化水素を含むガスを改質したガスを燃料ガスとして使用することができる。このため、近年では、食品廃棄物及び家畜排泄物のメタン発酵処理時に発生する低品位バイオガス(CH
4 とCO
2 の混合ガス)や、バイオディーゼル燃料(BDF(登録商標)、C
18H
34.8O
2 )等の高級炭化水素を含むガスが燃料電池用燃料ガスの候補として期待されている。そして、SOFCは、炭化水素改質触媒と同等の材料からなる多孔質焼結体を燃料極に使用し、改質反応が起こる高温で運転されるため、原理的に炭化水素系燃料の直接供給による内部改質運転が可能である。
【0014】
しかしながら、水蒸気あるいは二酸化炭素と混合された炭化水素系燃料を燃料極側に直接供給すると、強い吸熱反応である水蒸気改質反応やドライリフォーミング反応が燃料極内で生じるが、燃料極を構成する多孔質焼結体が構造に自由度がないため、熱衝撃(サーマルショック)により短時間内にセルの破壊に至るという問題がある。
【0015】
ところで、特許文献2の開示される電気化学セル評価用ホルダなどを用いてSOFCの単セルの評価試験を行う場合、セル部を収容した電気化学セル評価用ホルダを電気炉に設置し、一定高温下(例えば、700〜1000℃)において、測定条件(例えば、電気炉内の雰囲気温度やセル部への電流値)を色々と変えながら試験が繰り返し行われる。
【0016】
そして、単セルをスタック化して実際の運用に見合ったセルの性能を得るためには、セル部の温度分布をリアルタイムで測定し、その測定結果に基づいて温度分布が均一になるような流路を設計し、セルの性能向上につなげることが重要である。その際、セル部の機械的損傷(クラック)が生じる過程の把握や発生メカニズムなどの監視を行うことも必要となる。これらは、単セルをスタック化して設計する際に、電池運転条件の高効率化、ガス流路の設計に有用な知見を得るために必要不可欠であった。
【0017】
しかしながら、特許文献2の電気化学セル評価用ホルダを含む従来の構成では、ホルダ内に収容されたセル部の状態を外部から可視的に捉えることができなかった。このため、発電時におけるセル部の温度分布をリアルタイムで把握することができず、測定条件毎の温度分布が均一になる流路を有する集電体を見つけ出すのが困難であった。しかも、上述した熱衝撃によりセル部に機械的損傷(クラック)が発生した場合には、その発生条件や発生箇所などを即座に知ることができなかった。
【0018】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、発電時のセル部の状態を外部から可視的に捉えることができ
るセル評価システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するため、請求項1記載の電気化学セル評価用ホルダは、燃料ガスを供給する燃料ガス導入管と、供給された燃料ガスを排出する燃料ガス排出管とを有するアルミナ製の燃料極側筐体と、
空気ガスを供給する空気ガス導入管と、供給された空気ガスを排出する空気ガス排出管とを有するアルミナ製の空気極側筐体と、
燃料極と空気極との間に電解質を挟んで構成される固体酸化物形燃料電池からなるセル部と、
前記セル部を挟むように設けられる一対の集電体と
、
前記燃料極側筐体又は前記空気極側筐体の少なくとも一方で前記セル部と対向する部分に設けられ、前記セル部の作動温度の赤外線及び可視光線を透過する透過部とを備え、
前記セル部を中心に前記燃料極側筐体と前記空気極側筐体とを突き合わせた状態で固定された電気化学セル評価用ホルダ
を用いたセル評価システムにおいて、
前記電気化学セル評価用ホルダが収容される測定空間を有する筐体に対し、前記電気化学セル評価用ホルダの透過部と対向する位置に撮像用穴が貫通して形成された電気炉と、
前記撮像用穴に対して所定角度傾斜させて前記透過部を臨むように前記電気炉の外側に配置され、前記撮像用穴から前記透過部を介して前記セル部の状態を撮像する撮像装置と、
前記測定空間の雰囲気温度及び前記セル部に流す電流値を制御しながら前記撮像装置が撮像した画像データを記憶保存する管理装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電気化学セル評価用ホルダによれば、セル部を中心とする燃料極側筐体と空気極側筐体の少なくとも対向する部分が赤外線及び可視光線を透過する透過部からなり、セル部の燃料極側及び空気極側を可視化した構成なので、発電時におけるセル部の状態を外部から直接確認することができる。これにより、電気化学セル評価ホルダ内に収容されたセル部の状態を外部から可視的に捉えることができ、セル部の発電状態を直接目視により確認することができる。
【0022】
本発明に係るセル評価システムによれば、発電時におけるセル部の燃料極及び空気極の温度分布を監視し、その画像データを管理装置に逐次記憶保存するので、逐次記憶保存される画像データを元に測定条件毎の温度分布が均一になる流路を有する集電体の組合せを見つけ出し、実際の運用に見合った性能が得られる最適な集電体の設計に役立てることができる。しかも、発電時のセル部に機械的損傷(クラック)が発生した場合には、その発生条件(雰囲気温度、電流値など)や発生箇所を熱画像から即座に確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
[電気化学セル評価用ホルダの構成]
図1や
図2(a),(b)に示すように、電気化学セル評価用ホルダ(以下、評価用ホルダと略称する)1は、燃料極側筐体2(図中下方)と空気極側筐体3(図中上方)との間に挟持部品4(後述するセル部21を含む)を挟持し、燃料極側筐体2と空気極側筐体3とを固定部材5で締結固定して組み立てる構成を基本構造としている。そして、発電時のセルの状態が可視できるように、挟持部材4を中心とする燃料極側筐体2と空気極側筐体3の少なくとも対向部分を赤外線及び可視光線が透過可能な構成としている。
【0026】
燃料極側筐体2は、評価試験時の高温に耐え、且つ後述するセル部21の汚染を防止する効果を備えたアルミナからなる。燃料極側筐体2は、
図2(b)に示すように、中央部分が矩形状に貫通した貫通部6を有する枠状をなしている。空気極側筐体3と対面する貫通部6の表面側には枠状の段差部6aが形成されており、段差部6aには透過性を有する窓状の燃料極側透過部7が固設されている。燃料極側透過部7は、高温時(後述するセル部21の作動温度:800℃前後)の赤外線や可視光線を透過し、セル部21の発電時の雰囲気(酸化、還元)に対して安定性があり、熱膨張係数が燃料極側筐体2と近く、セラミックシールなどの高温ガラス材による接合が可能で気密性が維持できる材料(例えば、サファイア、透光性アルミナ、石英などを主成分とする材料)からなる。
【0027】
図1や
図2(a),(b)に示すように、燃料極側筐体2の一側面(図中では左側面)には、燃料ガス導入管8と燃料ガス排出管9とが並設されている。燃料ガス導入管8は、外部から燃料ガスを取り込むガス導入口8aを有し、ガス導入口8aから取り込んだ燃料ガスを燃料極側筐体2に形成された不図示の流路を介して後述するセル部21に供給している。燃料ガス排出管9は、燃料ガスを排出するガス排出口9aを有し、後述するセル部21に供給された未反応の燃料ガスを燃料極側筐体2に形成された不図示の流路を介してガス排出口9aから排出している。
【0028】
図1に示すように、燃料極側筐体2には、固定部材5により空気極側筐体3との締結固定を行うための複数の燃料極側挿通孔10が形成されている。
図1の例では、燃料極側筐体2の枠状部分の各辺の中央4箇所に貫通して燃料極側挿通孔10が形成され、使用する固定部材5に応じて孔径が適宜決定される。
【0029】
空気極側筐体3は、燃料極側筐体2と同様に、評価試験時の高温に耐え、且つ後述するセル部21の汚染を防止する効果を備えたアルミナからなる。空気極側筐体3は、燃料極側筐体2と略同一形状であり、
図2(b)に示すように、中央部分が矩形状に貫通した貫通部11を有する枠状をなしている。燃料極側筐体2と対面する貫通部11の底部側には枠状の段差部11aが形成されており、段差部11aには透過性を有する窓状の空気極側透過部12が固設されている。空気極側透過部12は、燃料極側透過部7と同様に、高温時(後述するセル部21の作動温度:800℃前後)の赤外線や可視光線を透過し、セル部21の発電時の雰囲気(酸化、還元)に対して安定性があり、熱膨張係数が空気極側筐体3と近く、セラミックシールなどの高温ガラス材による接合が可能で気密性が維持できる材料(例えば、サファイア、透光性アルミナ、石英などを主成分とする材料)からなる。
【0030】
図1や
図2(a),(b)に示すように、空気極側筐体3の一側面(図中では左側面)には、空気ガス導入管13と空気ガス排出管14とが並設されている。空気ガス導入管13は、外部から空気ガスを取り込むガス導入口13aを有し、ガス導入口13aから取り込んだ空気ガスを空気極側筐体3に形成された不図示の流路を介して後述するセル部21に供給している。空気ガス排出管14は、空気ガスを排出するガス排出口14aを有し、後述するセル部21に供給された未反応の空気ガスを空気極側筐体3に形成された不図示の流路を介してガス排出口14aから排出している。
【0031】
図1に示すように、空気極側筐体3には、固定部材5により燃料極側筐体2との締結固定を行うための複数の空気極側挿通孔15が形成されている。
図1の例では、空気極側筐体3の枠状部分の各辺の中央4箇所に貫通して空気極側挿通孔15が形成され、使用する固定部材5に応じて孔径が適宜決定される。
【0032】
なお、
図1に示すように、燃料極側挿通孔10及び空気極側挿通孔15は、燃料極側透過部7と空気極側透過部12を対向させて燃料極側筐体2と空気極側筐体3とを突き合わせたときに、固定部材5の後述するボルト51が挿入可能なように各孔の個数が同数であり、且つ対向する孔同士が一直線上となる位置にそれぞれ形成されている。
【0033】
図1や
図2(b)に示すように、挟持部品4は、セル部21、燃料極用集電体22、空気極用集電体23、一対のガスケット24(24a,24b)から構成される。
【0034】
図1や
図2(b)に示すように、挟持部品4は、燃料極側筐体2を下方、空気極側筐体3を上方として配置した場合に、ガスケット24a、燃料極用集電体22、セル部21、空気極用集電体23、ガスケット24bの順に積層した状態で燃料極側透過部7と空気極側透過部12との間に挟持される。その際、一方のガスケット24aは、セル部21の外周縁部と燃料極側透過部7の外縁部分との間に介在され、他方のガスケット24bは、セル部21の外周縁部と空気極側透過部12の外縁部分との間に介在される。
【0035】
セル部21は、例えばYSZ/Niサーメットなどの燃料極と、例えば(La,Sr)MnO
3 などの空気極との間に、例えばYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)などの電解質を一体化して構成される。
【0036】
燃料極用集電体22は、還元雰囲気で安定であるNi網などで構成される。また、空気極用集電体23は、高温で酸化しにくい貴金属である例えば金(Au)や白金(Pt)製の網などで構成される。
【0037】
図3(a)〜(f)に示すように、燃料極用集電体22や空気極用集電体23は、開口の形状によってガスの流れの異なるものが複数種類用意されている。
図3(a),(b)では、図中、縦方向に所定間隔おきに複数形成される直線状の溝によって流路22a,23aを形成している。
図3(c),(d)では、図中、左上から右下に向かって蛇行した1本の溝によって流路22a,23aを形成している。
図3(e),(f)では、図中、左下から右上に向かって蛇行した1本の溝によって流路22a,23aを形成している。燃料極用集電体22や空気極用集電体23は、発電時のセル部21の性能評価を行う際に適宜組み合わせて用いられる。
【0038】
そして、予め用意した燃料極用集電体22と空気極用集電体23を組み合わせて発電時のセル部21の性能評価を行った結果、最も均一な温度分布が得られる流路22a,23aが形成された燃料極用集電体22と空気極用集電体23の組合せがセル部21の性能を一番引き出すことができる集電体であり、これらの結果から、実際の運用に見合った性能が得られる最適な集電体の設計に役立てることができる。
【0039】
一対のガスケット24(24a,24b)は、ガス漏洩防止用としてセル部21の外周縁部を挟んで対向配置される弾力性を有するセラミックス(例えば、バーミキュライト、マイカ、アルミナファイバー等)からなる。
【0040】
図4に示すように、燃料ガス導入管8及び空気ガス導入管13のガス導入口には、セル部21で発電した電流を燃料極用集電体22又は空気極用集電体23から取り出す電流取出用リード線31と、セル部21の各電極の電圧測定を行う電圧測定用リード線32と、セル部21近傍の温度測定を行う温度センサ33とを導入するためのハーメチック端子41(燃料極側ハーメチック端子41a、空気極側ハーメチック端子41b)がそれぞれ設置されている。
【0041】
図4に示すように、ハーメチック端子41(41a,41b)は、燃料ガス導入管8、燃料ガス排出管9、空気ガス導入管13、空気ガス排出管14に装着され、燃料ガス(又は空気ガス)を案内するガス案内路42aが設けられた端子本体42と、各ガス導入管8,13やガス排出管9,14に挿入された状態で端子本体42とO−リング43を介して螺合してガス漏れを防止する第1係合部材44と、端子導入部材45とO−リング46とを介在した状態で端子本体42と螺合してガス漏れを防止する第2係合部材47とで構成され、電流取出用リード線31、電圧測定用リード線32、温度センサ33をガス漏れさせずに外部から導入して評価用ホルダ1内の所定箇所に配置するための気密端子である。
【0042】
図1や
図4に示すように、固定部材5は、アルミナ製のボルト51と、ボルト51の軸部に挿入される座金52と、ボルト51と螺合するアルミナ製のナット53と、燃料極側挿通孔10又は空気極側挿通孔15の何れか一方側に挿入されるセラミックバネ54とで構成されている。図示の例では、燃料極側透過部7と空気極側透過部12とが対向するように燃料極側筐体2と空気極側筐体3とを突き合わせた状態で、挟持部品4(一方のガスケット24a、燃料極用集電体22、セル部21、空気極用集電体23、他方のガスケット24bの順で積層)を挟持する。その後、セル部21の性能評価試験中の雰囲気温度による熱膨張等の影響を吸収するため、空気極側挿通孔15にセラミックバネ54を挿入して、燃料極側挿通孔10からボルト51を挿通し、ボルト51の頭部とセラミックバネ54との間に座金52が挿通された状態でボルト51をナット53で締付固定している。
【0043】
次に、上記のように構成される評価用ホルダ1の組み立て手順について説明する。
まず、挟持部品4を構成する一方のガスケット24a、燃料極用集電体22、セル部21、空気極用集電体23、他方のガスケット24bを、燃料極側筐体2と空気極側筐体3の挟持方向に従って順に積層する。そして、燃料極側透過部7と空気極側透過部12とが対向するように燃料極側筐体2と空気極側筐体3とを突き合わせ、燃料極側透過部7と空気極側透過部12との間に挟持部品4を挟持させる。
【0044】
そして、燃料極側透過部7と空気極側透過部12との間に挟持部品4を挟持させた状態で空気極側挿通孔15にセラミックバネ54を挿入し、燃料極側挿通孔10から挿入したボルト51をナット53で締め付け、燃料極側筐体2と空気極側筐体3とを固定する。これにより、評価用ホルダ1の組み立て作業が終了する。
【0045】
このように、上記構成による評価用ホルダ1は、一方のガスケット24a、燃料極用集電体22、セル部21、空気極用集電体23、他方のガスケット24bの順に積層して挟持部材4を構成し、燃料極側透過部7と空気極側透過部12とが対向するようにアルミナ製の燃料極側筐体2と空気極側筐体3を突き合わせた状態で挟持部材4を挟持させる。そして、各筐体2,3間で挟持部品4を挟持した状態で、空気極側挿通孔15にセラミックバネ54を挿入し、燃料極側挿通孔10から挿入したボルト51をナット53で締結固定して組み立てる。
【0046】
そして、上記構成の評価用ホルダ1によれば、セル部21を中心とする燃料極側筐体2と空気極側筐体3の対向する部分が赤外線及び可視光線を透過する透過部(燃料極側透過部7、空気極側透過部12)からなり、セル部21の燃料極側及び空気極側を可視化した構成なので、発電時におけるセル部21の状態を外部から可視的に捉えることができ、セル部21の発電状態を目視により確認することができる。しかも、燃料極側筐体2及び空気極側筐体3の材質がアルミナ製であるため、評価試験時の炉内温度により筐体の材質が蒸発することによるセル部21への悪影響の心配がなく、信頼性の高いセル部21の評価試験を行うことができる。
【0047】
さらに、セル部21と各筐体2,3間に介在される一対のガスケット24a,24bが弾力性を有するセラミックス製であるため、従来のようなガラスO−リングによる取り替え時の清掃等の煩雑さが解消され、よりスムーズに評価試験を行うことができる。
【0048】
[セル評価システムの構成]
図5に示すように、セル評価システム100は、電気炉101、撮像装置102、管理装置103を備えて概略構成され、上述した評価用ホルダ1に装着された挟持部材4のセル部21の発電時の評価試験を行う際に用いられる。
【0049】
なお、
図5では、管理装置103に接続される燃料ガス排出管9から電流取出用リード線31、電圧測定用リード線32、温度センサ33の信号線についてのみ示している。実際には、燃料ガス導入管8、空気ガス導入管13、空気ガス排出管14についても同様に、電流取出用リード線31、電圧測定用リード線32、温度センサ33の信号線が管理装置103と接続される。
【0050】
電気炉101は、一定温度(例えば700〜1000℃であり、セル部21の作動温度:800℃前後)に制御される測定空間101aが形成された断熱材101bの外側を矩形状の金属製のケース101cで覆った構成である。測定空間101aに面する断熱材102bの内壁周面には、測定空間101a内を一定高温に保持するように加熱制御される不図示のヒータが設置される。また、ケース101cの対向する両側面には、断熱材101bを介して測定空間101aを臨むように一対の撮像用穴101d,101dが貫通して形成される。さらに、測定空間101aには、セル部21を収容した評価用ホルダ1が監視対象として設置される。その際、評価用ホルダ1は、燃料極側透過部7と空気極側透過部12が一対の撮像用穴101d,101dと対向するように測定空間101aに設置される。
【0051】
撮像装置102(102a,102b)は、評価用ホルダ1に収容されたセル部21の発電時の状態を撮像する熱画像カメラで構成される。一方の撮像装置102aは、測定空間101a内に設置された評価用ホルダ1の燃料極側透過部7に対し、一方の撮像用穴101dを介して対向するように電気炉101の外側に設置される。撮像装置102aは、撮像用穴101dから燃料極側透過部7を介して発電時のセル部21の燃料極側の状態を撮像し、撮像した熱画像を管理装置103に逐次入力している。他方の撮像装置102bは、測定用空間101a内に設置された評価用ホルダ1の空気極側透過部12に対し、他方の監視用孔101dを介して対向するように電気炉101の外側に設置される。撮像装置102bは、撮像用穴101dから空気極側透過部12を介して発電時のセル部21の空気極側の状態を撮像し、撮像した熱画像を管理装置103に逐次入力している。
【0052】
なお、撮像装置102(102a,102b)は、熱画像に代えて写真画像(カラー、モノクロ)を管理装置に入力するようにしてもよい。また、撮像装置102は、評価用ホルダ1の透過部に合わせて少なくとも一方に設けられる構成であってもよい。すなわち、評価用ホルダ1に燃料極側透過部7のみが形成される場合は撮像装置102aのみを設置し、評価用ホルダ1に空気極側透過部12のみが形成される場合は撮像装置102bのみを設置する。さらに、撮像装置102は、撮像用穴101dを介して評価用ホルダ1や測定空間101aからの反射の影響を低減するため、撮像用穴101dに対し、所定角度傾斜させて透過部(燃料極側透過部7、空気極側透過部12)を臨むように設置するのが好ましい。
【0053】
管理装置103は、電気炉101の測定空間101aの雰囲気温度を一定の高温状態に保持するように不図示のヒータを加熱制御している。また、管理装置103は、評価用ホルダ1に収容されたセル部21の発電時に、電気炉101内の雰囲気温度やセル部21に流す電流値を制御して測定条件を変えながら撮像装置102a,102bから入力される熱画像(画像データ)を測定条件(雰囲気温度、電流値など)とともに逐次記憶保存している。
【0054】
上記構成によるセル評価システム100では、電気炉101の測定空間101aにセル部21を収容した評価用ホルダ1を設置し、一定高温下において、測定条件を変えながらセル部21の発電状態を2台の撮像装置102a,102bによって逐次撮像している。撮像装置102の撮像によって得られる熱画像(画像データ)は、測定条件(雰囲気温度や電流値など)とともに管理装置103に逐次記憶保存される。保存された熱画像は、管理装置103の表示画面上に都度表示させり、後から選択的に画面上に表示させて確認する。そして、流路の異なる集電体(燃料極用集電体22、空気極用集電体23)を色々と組み合わせてセル部21の評価試験を行う。
【0055】
このように、上述したセル評価システム100では、セル部21の燃料極側及び空気極側が可視化した構成の評価用ホルダ1を用い、発電時におけるセル部21の燃料極及び空気極の温度分布を監視し、その熱画像を逐次記憶保存している。これにより、管理装置103に逐次記憶保存される熱画像を元に測定条件毎の温度分布が均一になる流路を有する集電体の組合せを見つけ出し、実際の運用に見合った性能が得られる最適な集電体の設計に役立てることができる。また、発電時のセル部に機械的損傷(クラック)が発生した場合には、その発生条件(雰囲気温度、電流値など)や発生箇所を熱画像から即座に確認することができる。
【0056】
ところで、上述した実施の形態では、発電時におけるセル部21の燃料極側及び空気極側の状態がそれぞれ可視できるように、挟持部品4を中心として燃料極側筐体2と空気極側筐体3の対向位置に設けられる燃料極側透過部7と空気極側透過部12を窓状に形成しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、燃料極側透過部7や空気極側透過部12と同一材料で燃料極側筐体2と空気極側筐体3を形成することもできる。これにより、燃料極側筐体2と空気極側筐体3が燃料極側透過部7と空気極側透過部12の機能を兼ねるので、構成部品として貫通部6,11、燃料極側透過部7、空気極側透過部12が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。また、評価用ホルダ1には、燃料極側透過部7又は空気極側透過部12の一方のみを形成してもよい。
【0057】
以上、本発明に係る評価用ホルダ及びそれを用いたセル評価システムの最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。