(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記互いに対向する第1及び第2の外脚と、前記互いに対向する第3及び第4の外脚との間の距離Aと前記ギャップの長さBとの比であるギャップ長比B/Aが、0.9以下の範囲にある請求項1に記載のリアクトル。
前記第1乃至第4の外脚のいずれか一つの外脚の断面積Cと前記第1又は第2の中脚の断面積Dとの比である断面積比D/Cが、0.1以上である請求項1に記載のリアクトル。
前記互いに対向する第1及び第2の外脚と、前記互いに対向する第3及び第4の外脚とがそれぞれI字形コアを有するものであり、前記第1及び第2の中脚がそれぞれI字形コアから構成され、前記第1及び第2の外脚側から前記環状コアの内側へ前記第1の中脚を構成するI字形コアが延び、前記第3及び第4の外脚側から前記環状コアの内側へ前記第2の中脚を構成するI字形コアが延び、前記第1及び第2の中脚を構成するそれぞれのI字形コアの間に前記ギャップを形成した請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトル。
前記互いに対向する第1及び第2の外脚と、前記互いに対向する第3及び第4の外脚とがそれぞれ複数のコアを外脚の長さ方向に接合して構成され、前記第1及び第2の中脚がそれぞれI字形コアから構成され、前記第1及び第2の外脚を構成する複数のコアの間に前記第1の中脚を構成するI字形コアの基部が挟持され、前記第3及び第4の外脚を構成する複数のコアの間に前記第2の中脚を構成するI字形コアの基部が挟持され、この第1及び第2の中脚を構成するそれぞれのI字形コアの間に前記ギャップを形成した請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトル。
前記第1及び第2の中脚の両側に配置された前記第1及び第3の外脚と、前記第2及び第4の外脚とに、それぞれ巻回された前記第1及び第3のコイルと、前記第2及び第4のコイルとは、それぞれ1本の導体から構成された連結コイルである請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のリアクトル。
前記第1及び第2の中脚の両側に装着された前記第1及び第3のコイルの巻き数と、前記第2及び第4のコイルの巻き数とが等しい請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のリアクトル。
前記連結コイルが、前記第1の外脚と前記第3の外脚で、その巻き数が等しく、前記第2の外脚と前記第4の外脚で、その巻き数が等しい請求項11に記載のリアクトル。
前記第1及び第3のコイルと、前記第2及び第4のコイルとが、互いに反対方向に巻回され、前記第1及び第3のコイルに通電する電流の向きと、前記第2及び第4のコイルに通電する電流の向きとが同一方向に設定されている請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のリアクトル。
前記第1及び第3のコイルと、前記第2及び第4のコイルとが、同一方向に巻回され、前記第1及び第3のコイルに通電する電流の向きと、前記第2及び第4のコイルに通電する電流の向きとが反対方向に設定されている請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のリアクトル。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁束を相殺方向に発生させることでコアが飽和し難くし、且つ、漏れインダクタンスを利用してリップルを抑制することで小型化を可能とした磁気結合型リアクトルが知られている。この種の磁気結合型リアクトルは、
図14(a)に示すように、環状コア1の対向する脚部のそれぞれにコイル3−1,3−2を装着したものである。この磁気結合型リアクトルは、前記のような利点を有する反面、磁束を相殺方向に発生させているため、コア1内を通る磁束の通り道がなくなり、リアクトル外部に磁束が漏出し、周辺機器に影響を与えて誤動作を招いたり、金属製部材を磁束が透過する際に渦電流損を発生させ、その発熱を招く問題があった。
【0003】
そのため、特許文献1や特許文献2では、対向する脚部に装着する2つのコイルとして、2つのコイルが1本の導体を用いて形成された連結コイル3a,3bを使用したリアクトルが提案されている。この連結コイル3a,3bを使用した磁気結合型リアクトルは、
図14(b)に示すように、対向する脚部に2つの連結コイル3a,3bを装着することで、脚部にあたかも4つのコイル3a−1〜3b−2が巻回されているような構成である。この連結コイル3a,3bを使用したリアクトルは、対向する脚部に独立したコイルをそれぞれ巻回した
図14(a)のリアクトルに比較すると、外部への漏れ磁束が低減される利点がある。
【0004】
すなわち、
図14(a)のリアクトルは、
図16(a)のように左右の外脚の部分の外側に漏れ磁束が大きく広がるのに対して、連結コイル3a,3bを使用した
図14(b)のリアクトルは、
図16(b)のように、環状コアの内側に漏れ磁束が広がることから、リアクトル周囲への漏れ磁束が低減する利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記のような連結コイル3a,3bを使用した磁気結合型リアクトルは、コイル3a,3bを漏れ磁束が透過することで大きな渦電流損失が発生し、コイルが異常発熱するおそれがあった。すなわち、
図15(a)は
図14(a)のリアクトルの銅損を示すグラフであり、
図15(b)は
図14(b)のリアクトルの銅損を示すグラフである。このグラフから分かるように、各外脚に2つのコイルを装着した
図14(b)のリアクトルは、漏れ磁束を低減できるものの、その反面、銅損が大きくなる問題があった。
【0007】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、外部への漏れ磁束を低減した磁気結合型リアクトルを提案することにある。
本発明の他の目的は、外部への漏れ磁束を低減すると共に、銅損の増加も抑制した磁気結合型リアクトルを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の磁気結合型リアクトルは、次のような構成を有することを特徴とする。
(a)
互いに対向する
第1の外脚及び第2の外脚と、
互いに対向する第3の外脚及び第4の外脚と、前記
第1の外脚及び前記第3の外脚の端部を接続する
第1のヨーク部と、
前記第2の外脚及び前記第4の外脚の端部を接続する第2のヨーク部と、を備えた環状コア。
(b)
互いに発生する磁束の方向が異なるように、前記
第1の外脚及び前記第2の外脚に
それぞれ装着された
第1のコイル及び第2のコイル
と、互いに発生する磁束の方向が異なるように、前記第3の外脚及び前記第4の外脚にそれぞれ装着された第3のコイル及び第4のコイル。
(c) 互いに対向する前記第1のコイルと前記第2のコイルの間から、前記環状コアの内側へ延びる第1の中脚と、互いに対向する前記第3のコイルと前記第4のコイルの間から、前記環状コアの内側へ延びる第2の中脚とが、ギャップを介して対向している。
このようにすると、
第1のコイルと第2のコイルによって発生する異なる方向の磁束が
第1の中脚に案内され、
第3のコイルと第4のコイルによって発生する異なる方向の磁束が第2の中脚に案内され、リアクトルの内側を通過することになるため、本発明の第1の目的であるリアクトル外部への漏出を大幅に低減することができる。
【0009】
(2)前記
互いに対向する
第1及び第2の外脚
と、前記互いに対向する第3及び第4の外脚との間の距離Aと前記ギャップの長さBとの比であるギャップ長比B/Aが、0.9以下の範囲にあると良い。
(3)前記ギャップ長比B/Aが、0.1以上0.9以下の範囲にあると更に良い。
この(2)とすれば、外部への漏れ磁束を効果的に低減することができことができ、(3)とすれば、漏れ磁束、リップル電流及び銅損を効果的に低減することができ、本発明の第2の目的も達成できる。
【0010】
(4)前記
第1乃至第4の外脚のいずれか一つの外脚の断面積Cと
前記第1又は第2の中脚の断面積Dとの比である断面積比D/Cが、0.1以上であると良い。
(5)前記断面積比D/Cが、0.1以上1.0以下の範囲にあると更に良い。
この(4)とすれば、リップル電流及び銅損を低減することができ、(5)とすれば、漏れ磁束、リップル電流及び銅損を効果的に低減することができ、本発明の第2の目的も達成できる。
【0011】
(6)前記ギャップ長比B/Aが、0.9以下の範囲で、前記断面積比D/Cが、0.1以上であると良い。
(7)前記ギャップ長比B/Aが、0.1以上0.9以下の範囲で、前記断面積比D/Cが、0.1以上1.0以下の範囲にあると更に良い。
この(6)とすれば、ギャップ長比と断面積比の両者を適正な値とすることで、外部への漏れ磁束をより効果的に低減することができ、(7)とすれば、漏れ磁束、リップル電流及び銅損をより効果的に低減することができる。
【0012】
(8)前記
互いに対向する
第1及び第2の外脚
と、前記互いに対向する第3及び第4の外脚とがそれぞれI字形コアを有するものであり、前記
第1及び第2の中脚が
それぞれI字形コアから構成され、前記
第1及び第2の外脚
側から前記環状コアの内側へ前記
第1の中脚を構成するI字形コア
が延び、前記第3及び第4の外脚側から前記環状コアの内側へ前記第2の中脚を構成するI字形コアが延び、
前記第1及び第2の中脚を構成する
それぞれのI字形コア
の間に前記ギャップを形成すると良い。
このようにすると、外脚と中脚を別形状のコアから構成することができ、両者の寸法、形状、断面積などを、要求される磁気結合型リアクトルの性能に合わせて容易に調整することが可能となる。
【0013】
(9)前記
互いに対向する
第1及び第2の外脚
と、前記互いに対向する第3及び第4の外脚とが
それぞれ複数のコアを外脚の長さ方向に接合して構成され、前記
第1及び第2の中脚が
それぞれI字形コアから構成され、前記
第1及び第2の外脚を構成する複数のコアの間に
前記第1の中脚を構成するI字形コアの基部が挟持され、
前記第3及び第4の外脚を構成する複数のコアの間に前記第2の中脚を構成するI字形コアの基部が挟持され、この
第1及び第2の中脚を構成する
それぞれのI字形コア
の間に前記ギャップを形成すると良い。
このようにすると、I字形コアを積層して脚部を構成する際に、中脚も同時に作製できるので、リアクトルの製造工数が削減できる。中脚が脚部を構成するI字形コアによって挟持されるため、環状コア全体の強度も高い。
【0014】
(10)前記ギャップが、エアギャップであると良い。ギャップは、中脚にスペーサを配置することで形成しても良いが、エアギャップであるとスペーサの用意や中脚との貼り合わせが不要であり、リアクトルの製造工数を削減できる。
【0015】
(11)前記
第1及び第2の中脚の両側に配置された
前記第1及び第3の外脚と、前記第2及び第4の外脚
とに
、それぞれ巻回された
前記第1及び第3のコイルと、前記第2及び第4のコイル
とは、
それぞれ1本の導体から構成
された連結コイルであると良い。連結コイルの使用により、漏れ磁束を低減することが可能になる。
【0016】
(12
)前記
第1及び第2の中脚の両側に装着された前記
第1及び第3のコイルの巻き数と、前記第2及び第4のコイルの巻き数
とが等しいと良い。
(13)前記連結コイルが、
前記第1の外脚と
前記第3の外脚で、その巻き数が等し
く、前記第2の外脚と前記第4の外脚で、その巻き数が等しいと良い。
この(12)(13)のように、中脚の両側に配置されたコイルや連結コイルの巻き数や巻き方が同じであると、漏れ磁束や銅損の発生が各脚部で均等になるので、リアクトル外部で発熱する可能性がある金属部品などを対称形に配置することが可能になり、リアクトルの設置が容易になる。一方、金属製品が存在する方向についての漏れ磁束が少なくなるように、コイルの巻き方を積極的に異ならせることで、漏れ磁束量を調整することも可能である。
【0018】
(1
4)前記
第1及び第3のコイル
と、前記第2及び第4のコイルとが、互いに反対方向に巻回され、
前記第1及び第3のコイルに通電する電流の向き
と、前記第2及び第4のコイルに通電する電流の向きとが同一方向に設定されていると良い。このようにすると、各コイルに給電する電気回路が単純になる利点がある。
【0019】
(1
5)前記
第1及び第3のコイル
と、前記第2及び第4のコイルとが、同一方向に巻回され、
前記第1及び第3のコイルに通電する電流の向き
と、前記第2及び第4のコイルに通電する電流の向きとが反対方向に設定されていると良い。このようにすると、巻回方向が異なるコイルを複数種類用意する必要がなく、リアクトルの部品点数の削減に繋がる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、環状コアの内側にギャップを有する中脚を設けることで、相殺方向に発生した磁束が中脚に案内され、リアクトルの内側を通過することになるため、リアクトル外部への磁束の漏出を大幅に低減することができる。
また、断面積比D/Cやギャップ長比B/Aを適切に選定した場合には、外部への漏れ磁束を低減すると共に、銅損の増加も抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1.第1実施形態]
[1.1 構成]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の磁気結合型リアクトルは、2つのU字形コア1a,1bと、2つのI字形コア2a,2bを組み合わせて成るθ形の環状コアと、環状コアの対向する外脚にそれぞれ巻回された2つの連結コイル3a,3bとを備える。
【0023】
(1)環状コア
図2及び
図6に示すとおり、θ形の環状コアは、U字形コア1a,1bの両端部の間にI字形コア2a,2bの基部(I字形コアの一方の端部)が挟持され、I字形コア2a,2bの先端(I字形コアの他方の端部)の間に外脚と略平行にギャップ4が形成されている。これにより、環状コアには、対向する一対のヨーク部と、ヨーク部と平行に設けられた中央の中脚と、中脚の両側にそれぞれ設けられた一対の外脚が形成されている。
【0024】
図8(a)に示すように、環状コアにおいては、対向する外脚間の距離Aとギャップの長さBとの比であるギャップ長比B/Aが、0.1以上0.9以下の範囲に設定されている。
図8(b)に示すように、外脚の断面積Cと中脚の断面積Dとの比である断面積比D/Cが、0.1以上0.9以下の範囲に設定されている。本実施形態において、中脚を構成するI字形コア2a,2bの一部は、
図6の斜視図に示すように、外脚を構成するU字形コア1a,1bの表面よりも突出した形状であり、外脚に挟持された側には磁束が流れにくい部分のコアを除去した面取り部分が設けられている。従って、本実施形態において、中脚の断面積Dとは、この外脚に挟持されていない部分、すなわち、I字形コア2a,2bにおける環状コアの中脚を構成する部分の断面積を言う。
【0025】
本実施形態のU字形コア1a,1b及びI字形コア2a,2bとしてはダストコアを使用するが、その他フェライトコアやケイ素鋼を積層した積層コアを用いることができる。この場合、U字形コア1a,1bとI字形コア2a,2bを同一材料から構成しても良いし、異なる材料から構成しても良い。U字形コア1a,1bの両端部とI字形コア2a,2bの基部との接合面は、両者を直接接着剤で固定しても良いし、スペーサを介して接合しても良い。ギャップ4も、エアギャップでも、スペーサを設けたギャップでも良い。
【0026】
(2)コイル
図1及び
図2に示すように、2つの連結コイル3a,3bは、U字形コア1a,1bの外脚を構成する部分に、中脚を挟んでその両側にそれぞれ装着されている。各連結コイル3a,3bは、
図7に示すように、1本の導体を使用して2つのコイル3a−1,3a−2または3b−1,3b−2を形成したもので、環状コアに装着した状態では、1本の導体が一方の外脚の外周に巻回されて第1のコイル3a−1,3b−1を形成し、同じ導体が反対側の外脚に巻回されて第2のコイル3a−2,3b−2を形成している。そのため、
図1及び
図2に示すように、1つのコイル3a,3bの巻き始めの端部5と巻き終わりの端部6が、中脚の両側に一つずつ設けられている。コイル3a,3bの巻き始めの端部5と巻き終わりの端部6には、それぞれバスバーが溶接され、そのバスバーの端部にリアクトルの外部配線が接続される。2つのコイル3a−1,3a−2または3b−1,3b−2の連結部7は、コイルの巻軸方向と垂直な面において、平角線が同一平面上で連結されている。
【0027】
コイル3a,3bとしては、各種の導体を巻回したものを使用することができるが、本実施形態では、平角線の導体をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルを使用する。各コイル3a,3bの巻き始めと巻き終わりの端部5,6は、コイル3bのように中脚側に設けても良いし、コイル3aのようにヨーク部側に設けても良いものであって、2つのコイル3a,3bの両方を中脚側かヨーク部側のいずれかに設けても良い。
【0028】
2つのコイル3a,3bは、そこから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回されている。2つのコイル3a,3bから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回するため、本実施形態では、コイルに通電する電流の方向を同一とし、コイルの巻回方向を逆にしたが、コイルの巻回方向は同一として、通電する電流の方向を反対にしても良い。各コイル3a,3bは、樹脂成型品に埋設されたU字形コア1a,1bとI字形コア2a,2bをθ形に接着する際に、予め筒状に巻回したコイル3a,3bを外脚に嵌め込むことにより、コアに巻回されている。
【0029】
(3)樹脂成型品
U字形コア1a,1bとI字形コア2a,2bは、それぞれ専用の樹脂成型品10a,10bまたは11内部に埋設されている。各コアは、それぞれの樹脂成型品の金型内にセットされた状態で、金型中に樹脂を注入・固化することにより、樹脂成型品と一体的に形成されている。樹脂成型品は、各コアと連結コイル3a,3bを絶縁する部材であると共に、リアクトルを別途用意したケースや設置箇所に固定するための支持部材を埋設した部材でもある。樹脂成型品の主材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)等を用いることができる。
【0030】
図2及び
図3に示すとおり、U字形コア用の樹脂成型品10a,10bは、U字形コア1a,1bの左右の脚部を覆うコイル装着部12と、U字形コア1a,1bのヨーク部を覆うヨーク被覆部13とを備える。コイル装着部12におけるU字形コア1a,1bとI字形コア2a,2bとの接合面に相当する部分には、U字形コア1a,1bの端面が露出する開口部14が設けられ、この開口部14の周囲にはI字形コア用の樹脂成型品11の端部に設けられたリブ19を挿入するための凹部15が設けられている。
【0031】
ヨーク被覆部13の上部の中央部には、リアクトルをケースその他の部材に固定するための支持金具16の基部が埋設されている。支持金具16の基部は、U字形コア用の樹脂成型品10a,10bの成型加工時に、U字形コア1a,1bと共に金型内にセットされ、モールド成型される。この支持金具16は断面がS字形の板状の部材で、S字形の部分が弾力的に変形することにより、熱膨張などでリアクトルに加わる応力を吸収する。
【0032】
図2及び
図4に示すとおり、I字形コア用の樹脂成型品11は、2つのI字形コア2a,2bの全体を被覆すると共に、2つのI字形コア2a,2bをその間にギャップ4が形成されるように保持するものである。そのため、
図5の断面図のとおり、樹脂成型品11内部には、ギャップ4の寸法に合わせた厚みの隔壁17が形成され、この隔壁17を挟んで2つのI字形コア2a,2bが対向している。この樹脂成型品11におけるU字形コア1a,1b側の端面は、内部のI字形コア2a,2bの端面が露出する開口部18になっている。この開口部18の周囲には、U字形コア用の樹脂成型品10a,10bに設けた凹部15に嵌合するリブ19が形成されている。
【0033】
図2に示すとおり、I字形コア用の樹脂成型品11の中脚と反対側には、リアクトル本体1をケースやその他の部材に固定する際に、固定用のボルトを挿入するカラー20が埋設されている。このカラー20は、U字形コア用の樹脂成型品10a,10bの成型加工時に、U字形コア1a,1bと共に金型内にセットされ、モールド成型される。
【0034】
U字形コア用の樹脂成型品10a,10bとI字形コア用の樹脂成型品11は、各コアの突き合わせ部分を除き各コアの周囲を被覆するものであるが、各コアや支持金具を金型内に位置決めするための治具を使用する必要がある。そのため、
図2及び
図3に示すとおり、樹脂成型品10a,10b,11において、治具に相当する部分には樹脂が存在しない開口部21が形成され、その部分に各コアの表面が露出している。
【0035】
[1.2 製造方法]
前記のような構成を有する本実施形態のリアクトルは次のようにして製造する。
まず、樹脂成型品の金型内にU字形コア1a,1bまたはI字形コア2a,2bと、その支持金具16またはカラー20をセットし、その後、金型内に樹脂を注入し、固化することで、U字形コア用の樹脂成型品10a,10bとI字形コア用の樹脂成型品11を作製する。
【0036】
次いで、
図1に示すように、内部にコアと支持金具が埋設された2つのU字形コア用の樹脂成型品10a,10bの外脚部分をコイル3a,3bの内側に挿入し、次いで、2つのU字形コア用の樹脂成型品10a,10bの間に、I字形コア用の樹脂成型品11を挟持して、各樹脂成型品10a,10b及び11の開口部14,18に露出しているU字型コア1a,1bとI字形コア2a,2bの端面同士を接着して、全体をθ形に接合することより、リアクトルを作製する。その場合、樹脂成型品から露出している各コアの端面を接着剤により固定すると共に、U字形コア用の樹脂成型品10a,10bの端部に設けた凹部15の外周に、I字形コア用の樹脂成型品11の端部に設けたリブ19を嵌め込む。これにより、各樹脂成型品及びコアの正確な位置決めが可能になる。
【0037】
このようにして作製されたリアクトルは、I字形コア用の樹脂成型品11に設けたカラー20内にボルトなどの固定部材を挿入し、別途用意したケースやリアクトル設置箇所の部材に締結することで固定する。この場合、U字形コア用の樹脂成型品10a,10bに設けた弾性部を有する支持金具16をケースなどに締結することで、通電時の発熱などによりリアクトルとケースなどとの間に生じた線膨張差を吸収できる。
【0039】
(1)ギャップ長比B/Aと断面積比D/C
本実施形態の磁気結合型リアクトルを昇圧用コンバータとして使用した場合において、下記の条件でギャップ長比B/Aと漏れ磁束との関係を測定した。漏れ磁束の測定点は、
図9に示す通り、リアクトルの外周面から10mm離れた8箇所のポイントについて、代表値である(1)〜(3)の漏れ磁束と、(1)〜(8)の全周囲の漏れ磁束の合計値を測定した。
なお、本発明は、中脚にギャップ4を設けることを前提としているが、比較のために、ギャップ長比B/A=0.0(中脚にギャップを設けない)の場合の漏れ磁束も測定した。
巻数:40ターン(連結コイル1個当たりの巻回数、各外脚に20ターンずつ)
電流:平均電流95A(各コイルに対して)
電圧:DC250V(入力)⇔DC630V(昇圧後の出力)
周波数:8kHz
U字形コアの断面積:11.14cm2
対向する外脚の間隔:25.9mm
対向するヨーク部の間隔:96.64mm
巻線の肉厚:1.3mm 幅:8.0mm
コアの材質:合金系ダストコア
【0040】
その結果、
図10のグラフに示すように、ギャップ長比B/Aが0.0〜0.9の範囲が漏れ磁束が低減され、0.0〜0.65の範囲がより低減され、0.0〜0.35の範囲で更に低減されていることが確認できた。同様な条件で、断面積比D/Cと漏れ磁束との関係を確認したところ、
図11に示すように、断面積比D/Cが0.1以上の場合に、漏れ磁束が低減されていることが確認できた。特に、断面積比D/Cが、0.1以上が良く、0.7以上が更に良く、1.0以上が最も良いことが確認できた。
【0041】
この
図10と
図11の結果から、本実施形態においては、ギャップ長比B/Aが0.0〜0.9の範囲で、且つ断面積比D/Cが0.1以上の場合に漏れ磁束が低減され、ギャップ長比B/Aが0.0〜0.35の範囲で、断面積比D/Cが1.0以上の範囲で最も低減されることが判明した。特に、本実施形態のリアクトルは対称形に構成されているので、各場所の漏れ磁束は、(1)と(5)は同等、(2)と(4)(6)(8)は同等で、(1)と(5)及び(2)(4)(6)(8)のポイントが漏れ磁束が少ないことが確認された。
【0042】
同様にして、ギャップ長比B/A及び断面積比D/Cと、リップル電流及び銅損の関係について検証した。
図12に示すように、ギャップ長比B/Aが0.1〜0.9の範囲で、リップル電流及び銅損が低減していることが確認できた。特に、ギャップ長比B/Aが0.1〜0.65が良く、0.1〜0.35が更に良いことが確認できた。また、
図13に示すように、断面積比D/Cが0.1.〜1.0の範囲で、リップル電流及び銅損が低減していることが確認できた。特に、0.1〜0.75が更に良く、0.4〜0.75が最も良いことが確認できた。
図12及び
図13において、片側リップルは一方のコイルに流れるリップル電流を、合成リップルとは両方のコイルに流れるリップル電流の合成値を言う。この
図12と
図13の結果から、本実施形態においては、ギャップ長比B/Aが0.1〜0.9の範囲で、且つ断面積比D/Cが0.1〜1.0の場合に、リップル電流と銅損が最も少なくなることが判明した。
【0043】
以上の
図10〜
図13の結果から、本実施形態において、漏れ磁束、リップル電流及び銅損のいずれもが低減するギャップ長比B/Aは0.1〜0.9の範囲であり、漏れ磁束、リップル電流及び銅損のいずれもが低減する断面積比D/Cは0.1〜1.0であることが判明した。その結果、ギャップ長比B/Aと断面積比D/Cとの両方を、前記範囲内とすれば、漏れ磁束、リップル電流及び銅損のいずれをも効果的に低減することのできる磁気結合型リアクトルを得られることが確認できた。
【0044】
(2)コイル
本実施形態では、環状コアの外脚に装着するコイルとして連結コイル3a,3bを使用している。この連結コイル3a,3bが銅損の低減に与える影響について、
図14(a)〜(c)の各リアクトルについて検証した。
図14(a)は、2つのU字形コア1a,1bから成る環状コアの脚部にコイル3−1,3−2を装着したリアクトル。
図14(b)は、2つのU字形コア1a,1bから成る環状コアの脚部に2つの連結コイル3a,3bを装着することにより、環状コアの脚部に4つのコイル3a−1〜3b−2を装着したリアクトル。
図14(c)は、本実施形態のリアクトルであって、2つのU字形コア1a,1bに2つのI字形コア2a,2bを組み合わせることで、中脚を有するθ形の環状コアを形成し、その外脚に連結コイル3a,3bを装着することで、中脚を有する環状コアの脚部に4つのコイル3a−1〜3b−2を装着したものである。
【0045】
これら3つのリアクトルについて、前記(1)と同条件で、測定ポイント(1)における外部への漏れ磁束を計測したところ、
図14(a)のリアクトルは40mT、(b)のリアクトルは18mT、(c)のリアクトルは15mTと、連結コイルの使用が外部への漏れ磁束の低減に効果があることが確認された。また、
図15に示すように、
図14(a)〜(c)のリアクトルについて、コイル1ターン毎の損失を測定したところ、(c)の連結コイル1a,1bと中脚の組み合わせが、ターン数の大小にかかわらず、銅損を低く抑えることができることを確認した。このように、中脚を有するθ形の環状コアを有する磁気結合型リアクトルにおいて、連結コイル3a,3bは漏れ磁束と銅損の低減に効果がある。なお、
図15において、コイルのターン数が20となっているのは、連結コイル3a,3bの片側のコイル3a−1,3b−1のデータのみを示したものである。
【0046】
(3)ギャップの有無
本実施形態では、中脚にギャップ4を設けている。このギャップの存在が、リアクトルの特性に与える影響について説明する。
図17は、前記
図14(c)に示す磁気結合型リアクトルにおいて、各コアの形状やコイルの巻き数などは同一として、対向するI字形コア2a,2bの間にギャップ4を設けた場合と、設けない場合について、その片側リップル電流を計測した結果を示すものである。
図17から分かるように、ギャップがないと結合係数が下がり、コアが飽和しやすくなるため、リップル電流が大きくなるのに対して、本実施形態のようにギャップ4を設けた場合には、リップル電流が低下する。具体的には、ギャップがない場合は82Ap−p(ピーク・ツー・ピーク値)であるのに対して、ギャップがある場合のリップル電流は69Ap−pに低下している。
【0047】
(4)コイルの巻き方
図16は、
図14(a)の対向する外脚にひとつずつコイルを装着したリアクトルと、
図14(b)の対向する外脚のそれぞれに2つずつコイルを装着したリアクトルの漏れ磁束のパターンである。この
図16から明らかなように、各外脚に2つずつコイルを装着すると、磁束が環状コアの内側を通過するため、リアクトル外部に漏出する磁束が減少していることが分かる。
【0048】
(5)中脚の存在
図16(b)に示すように、外脚に2つのコイルを装着した場合、磁束の流れがコイル毎に分割され、環状コアの内側を通過するので、漏れ磁束を低下することが可能になるが、本実施形態では、
図18及び
図19のように2つのコイルに加えて、更に中脚を設けたことにより、発生した磁束が中脚を流れることになり、環状コア外部への漏れ磁束をより効果的に低減することが可能となる。
【0049】
(6)結論
以上述べた通り、本実施形態によれば、環状コアにギャップ4を有する中脚を設け、ギャップ長比B/A及び断面積比D/Cを前記の範囲に設定し、更に連結コイル3a,3bを使用することで、漏れ磁束、銅損及びリップル電流が少ない磁気結合型リアクトルを得ることが可能になる。
【0050】
[2. 他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。以下、その一例を示す。
【0051】
(1)上記実施形態では、I字形コアを備えたθ字状の環状コアを使用したが、コアの形状はこれに限らない。たとえば、2つのJ字形やL字形の分割コアと中脚を構成するI字形コアを組み合わせたθ字状の環状コアや、2つのE字形やF字形の分割コアを備えたθ字状の環状コアにも適用可能である。環状コアの中脚は1本に限らず、2本以上の中脚を有する環状コアについても、適用できる。その場合、各外脚に複数のI字型コアを配置することで、複数の中脚を構成することができる。また、2つの櫛歯状の分割コアを対向させて配置することで、複数の中脚を有する環状コアを形成しても良い。
【0052】
(3)また、U字形コア1aとU字形コア1bとの間に段差が設けられた構成であっても良い。この場合、I字形コア2a、2bの中央部分に段差が設けられていて、I字形コアの上面は横方向から見てクランク形状となり、両端がU字形コア1aとU字形コア1bと接続されている。U字形コア1aを含む平面と、U字形コア1bを含む平面とは、垂直方向にずれた異なる平面である。当該構成であっても、それぞれのコイルにおいて、一方の巻線部の周囲に発生する磁束と、他方の巻線部の周囲に発生する磁束とが互いに打ち消し合うよう作用し、磁気結合型リアクトルとして十分に機能する。
【0053】
(3)
図18は、環状コアの一例を示すもので、
図18(a)は、U字形コアの代わりに、ヨーク部及び外脚をI字形コアによって構成したものである。
図18(b)は、対向する外脚を構成する各I字形コアの内側に、中脚を構成するI字形コアをその先端が対向するようにそれぞれ接合し、中脚を構成する各I字形コアの先端の間に前記ギャップを形成したものである。また、
図18(b)の代わりに、U字形コアとI字形コアを組み合わせて形成した環状コアの内側に、中脚を構成するI字形コアを接合して、θ形の環状コアを構成しても良い。
【0054】
(4)中脚を環状コアの対向するヨークの中央部に設ける代わりに、どちらかのヨーク側に片寄らせて設けることができる。中脚は、ヨーク部と平行に設ける必要はなく、多少傾斜させても、また湾曲させても良い。ギャップ部も中脚の中央部でなく、どちらかの外脚側に片寄らせても良く、ギャップの方向も、図示のような外脚と平行なものでなく、斜めに形成しても良い。中脚は1本でも良く、中脚の一部に孔を開けてギャップを形成しても良い。その場合、孔の形状は、四角や円、楕円など適宜選択することができ、孔の数も一つでも複数でも良い。
【0055】
(5)コアに巻回するコイルの形状も適宜変更可能であり、θ形のコアの左右の脚部にそれぞれコイルを巻回するものや、θ形のコアのヨーク部分にコイルを巻回しても良い。円形あるいは角形のループ状のコアを使用した場合には、左右の脚部のそれぞれにコイルを巻回しても良いし、2つの脚部の一方のみにコイルを巻回し、他方はコイルを装着しなくても良い。また、コイルをコアに装着する方法としては、樹脂成型品に線材を巻回してコイルとしても良いし、予め巻回したコイルを樹脂成型品にはめ込んでも良い。
【0056】
(6)コイルは連結コアに限定されるものではなく、独立した4つのコイルを外脚に装着しても良い。複数のコイルは、必ずしも環状コアに対して対称形に装着するする必要はなく、
図18(c)のように、コイルの数や巻き数を非対称形としても良い。その場合、漏れ磁束のパターンが非対称形になるが、リアクトルの周囲に配置する金属部材などの位置を考慮することで、その発熱を防止することができる。
【0057】
(7)
図19(a)〜(c)に示すように、対向する外脚の一方にのみ複数のコイルを装着することも可能である。この場合も、
図18(a)〜(c)に示した場合と同様に、中脚の両側に装着するコイル3a,3bの巻回数を同一としたり、中脚を構成するコアを外脚の内面に接合したり、コイルの数や巻き数を非対称形としても良い。
【0058】
(8)樹脂成型品としては、内部にコアをインサート成型するものの他に、中空になった筒状あるいは箱状の樹脂成型品のみを予め作製し、その内部にコアを嵌合するものや接着剤で固定するものも使用できる。また、分割コアの接合後において、環状になったコアを樹脂成型品内部にインサート成型したり、組み込むこともできる。
【0059】
(9)本実施形態において、中脚を構成するI字形コア2a,2bは、
図6の斜視図に示すように、磁束が流れにくい部分のコアを除去した面取り部分が設けたが、この面取り部を設けることなく、直方体のI字形コアを使用することも可能である。また、各コアの断面形状も、四角形に限らず、他の多角形や円形であってもよい。
【0060】
(10)本実施形態のリアクトルをアルミニウムなどの金属製や樹脂製のケース内に収納することで、漏れ磁束をより低減すること可能である。