(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578104
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】銀ナノワイヤパターンを有する部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/04 20060101AFI20190909BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20190909BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20190909BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
H05K3/04
H05K1/09 C
H05K1/09 A
H01L21/28 301R
H01L21/288 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-29259(P2015-29259)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-152320(P2016-152320A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 惟
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/082429(WO,A1)
【文献】
特表2011−512644(JP,A)
【文献】
特開2010−205836(JP,A)
【文献】
特開平08−037376(JP,A)
【文献】
特開2006−332553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 3/04
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、硬化後に前記基材から物理的に引き剥がし可能なレジスト膜を形成するレジスト形成工程と、
前記レジスト膜に開口部を形成するパターニング工程と、
前記開口部を含む領域に銀ナノワイヤ膜を形成するパターン形成工程と、
前記レジスト膜を引き剥がして除去することにより、前記開口部に対応する領域に銀ナノワイヤパターンを形成するピーリング工程と、を有し、
前記パターン形成工程と前記ピーリング工程の間において、
前記開口部内の前記銀ナノワイヤ膜上に透明膜を形成する工程を有することを特徴とする銀ナノワイヤパターンの形成方法。
【請求項2】
前記パターン形成工程では、銀ナノワイヤがバインダ中に分散したインクを用い、
前記インクを前記開口部に落とし込むようにしてスキージで塗布することを特徴とする請求項1に記載の銀ナノワイヤパターンの形成方法。
【請求項3】
前記透明膜が透明導電性高分子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銀ナノワイヤパターンの形成方法。
【請求項4】
基材と、
バインダに銀ナノワイヤが分散された構造を有する銀ナノワイヤ膜が前記基材上にパターン形成されてなる銀ナノワイヤーパターンと、
前記銀ナノワイヤパターンの前記銀ナノワイヤ膜上に形成された透明膜と、を有し、
前記透明膜は透明導電性高分子の皮膜であり、
前記銀ナノワイヤ膜および前記透明膜は、前記銀ナノワイヤパターンに対応して、前記基材上に間隔を開けて配置されていることを特徴とする銀ナノワイヤパターンを有する部材。
【請求項5】
前記透明導電性高分子は、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合体を含むことを特徴とする請求項4に記載の銀ナノワイヤパターンを有する部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性パターンの形成方法に関し、特に、銀ナノワイヤパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、酸化インジウムスズ(ITO、tin-doped indium oxide)等の金属酸化物膜が、透明導電性の電極として、液晶ディスプレイ、タッチパネル、エレクトロルミネッセントデバイス及び太陽電池等に広く用いられているのは良く知られている。しかしながら、この金属酸化物膜は、真空蒸着法等の真空プロセスで作製するため、大がかりな装置を用いる上に、作製工程に時間がかかるという課題があった。しかも金属酸化物膜は、その皮膜が可撓性に劣り、割れやすく脆弱であり、変形等が伴う製品に適用しづらいというい課題もあった。
【0003】
そこで、細い繊維状の金属ナノワイヤ(特に銀ナノワイヤ)が透光性の合成樹脂中に分散された透明導電性膜が注目されてきた。この金属ナノワイヤが含まれた透明導電性膜は、比較的に可撓性を有し、望ましい導電性と透光性を兼ね備えている。そして、この透明導電性膜を透明導電性の電極として用いるために、様々なパターンの形成方法が提案されている。
図5は、従来例のパターンの形成方法を説明する図であって、
図5(a)は、従来例1における透明導電体に酸性エッチング液が印刷された状態を示し、
図5(b)は、従来例2における導電体805を示し、
図5(c)は、従来例3における塗膜溶液がインクジェット噴射された状態を示している。
【0004】
先ず、特許文献1の従来例1では、ウェットエッチング法を用いた金属ナノワイヤを有する透明導電体のパターン形成方法が提案されている。従来例1のパターン形成方法は、先ず、金属ナノワイヤを含む透明導電体を基板719に成膜し、
図5(a)に示すように、硝酸等を含む酸性エッチング液をパターン状(
図5(a)に示す740)にスクリーン印刷する。そして、酸性エッチング液により透明導電体中の金属ナノワイヤが溶解され、非導電領域(
図5(a)に示す740)とエッチングされない導電領域(
図5(a)に示す750)とが分かれたパターンが形成される。
【0005】
また、特許文献2の従来例2では、スクリーン印刷法を用いた導電体805のパターン形成方法が提案されている。従来例2のパターン形成方法は、先ず、金属のナノワイヤ(
図5(b)に示す820)がバインダである増粘剤(
図5(b)に示す830)中に分散された塗膜溶液(インク)を用い、基板にパターン状にスクリーン印刷する。そして、印刷された塗膜溶液を乾燥、硬化することにより、導電体805のパターンが形成される。
【0006】
また、特許文献3の従来例3では、インクジェット印刷法を用いた導電体のパターン形成方法が提案されている。従来例3のパターン形成方法は、先ず、金属のナノワイヤが溶剤に分散された塗膜溶液(インク)を用い、
図5(c)の(C1)に示すように、基板に分注液滴952を複数個、インクジェット噴射する。その後、
図5(c)の(C2)に示すように、若干大きな直径の分注液滴954が形成され、分注線956まで形成される。そして、形成された分注液滴954及び分注線956は、基板上で十分かつ急速に溶剤が乾燥し、基板上に導電体950のパターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2013−525946号公報
【特許文献2】特表2011−515510号公報
【特許文献3】特表2013−513534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来例1の方法では、金属ナノワイヤのエッチングにウェットプロセスを用いているので、作製工程がより複雑になってしまうという課題があった。しかも酸化性の酸性エッチング液を用いているので、基板719や下地層等に耐酸化性の材料を用いなければいけないという制約があった。また、従来例2の方法では、細い繊維状の金属ナノワイヤがバインダ(増粘剤830)中に分散されたインク(塗膜溶液)を用いているので、スクリーン印刷で十分に微細なパターンを形成できないという課題があった。また、従来例3の方法においても、細い繊維状の金属ナノワイヤが溶媒中の分散されたインク(塗膜溶液)を用いているので、インクジェット印刷で十分に微細なパターンを形成できないという課題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するもので、作製工程が簡素で微細パターンが形成できる銀ナノワイヤパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明の銀ナノワイヤパターンの形成方法は、基材上に、硬化後に前記基材から物理的に引き剥がし可能なレジスト膜を形成するレジスト形成工程と、前記レジスト膜に開口部を形成するパターニング工程と、前記開口部を含む領域に銀ナノワイヤ膜を形成するパターン形成工程と、前記レジスト膜を引き剥がして除去することにより、前記開口部に対応する領域に銀ナノワイヤパターンを形成するピーリング工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
これによれば、本発明の銀ナノワイヤパターンの形成方法は、従来例2及び従来例3と比較して、レジスト膜のパターニング精度に基づく微細パターンを形成することができる。また、ウェットプロセスを用いる従来例1と比較して、容易に銀ナノワイヤパターンを形成することができる。しかもエッチング液で銀ナノワイヤ膜のエッチングを行わないため耐酸性や耐酸化性ではない基板や下地層等を用いることができる。更に、レジスト膜を引き剥がして除去するため、剥離液によるレジスト膜の除去の必要がなく、剥離液による銀ナノワイヤ膜へのダメージも抑えることができる。従って、工程が簡素で微細パターンが形成できる銀ナノワイヤパターンの形成方法を提供することができる。
【0012】
また、本発明の銀ナノワイヤパターンの形成方法は、前記パターン形成工程では、銀ナノワイヤがバインダ中に分散したインクを用い、前記インクを前記開口部に落とし込むようにしてスキージで塗布することを特徴としている。
【0013】
これによれば、インクを開口部内に優先して充填することができる。このため、高価な銀ナノワイヤを無駄にすることなく、しかも開口部に充分に銀ナノワイヤを供給することができる。このことにより、銀ナノワイヤ膜が強固なものとなり、ピーリング工程でのレジスト膜の引き剥がしを安定して行うことができる。
【0014】
また、本発明の銀ナノワイヤパターンの形成方法は、前記パターン形成工程と前記ピーリング工程の間において、前記開口部内の前記銀ナノワイヤ膜上に透明膜を形成する透明層形成工程を有することを特徴としている。
【0015】
これによれば、透明膜を積層する際に、銀ナノワイヤが開口部の開口端に沿ってシャープに切断されりようになる。このため、ピーリング工程でのレジスト膜の引き剥がしの際に、銀ナノワイヤ膜が引き剥がされるレジスト膜R1に影響され難く、基材から剥がされ難くなっている。このことにより、ピーリング工程をより安定して行うことができる。
【0016】
また、本発明の銀ナノワイヤパターンの形成方法は、前記透明膜が透明導電性高分子であることを特徴としている。
【0017】
これによれば、銀ナノワイヤパターンに更に導電性の皮膜を付与することとなる。このことにより、微細長尺配線における抵抗値の安定化(例えば断線が防げる等)が図れるとともに、更なる銀ナノワイヤパターンの低抵抗値化が図れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の銀ナノワイヤパターンの形成方法は、従来例2及び従来例3と比較して、レジスト膜のパターニング精度に基づく微細パターンを形成することができる。また、ウェットプロセスを用いる従来例1と比較して、容易に銀ナノワイヤパターンを形成することができる。しかもエッチング液でエッチングを行わないため耐酸性や耐酸化性ではない基板や下地層等を用いることができる。更に、レジスト膜を引き剥がして除去するため、剥離液によるレジスト膜の除去の必要がなく、剥離液による銀ナノワイヤ膜へのダメージも抑えることができる。従って、工程が簡素で微細パターンが形成できる銀ナノワイヤパターンの形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係わる銀ナノワイヤパターンの製造方法を説明する断面構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係わる銀ナノワイヤパターンの製造方法におけるパターン形成工程を説明する断面構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係わる銀ナノワイヤパターンの製造方法におけるパターン形成工程中の実例を示した電子顕微鏡写真である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係わる銀ナノワイヤパターンの製造方法における変形例1を示した断面模式図である。
【
図5】従来例のパターンの形成方法を説明する図であって、
図5(a)は、従来例1における透明導電体に酸性エッチング液が印刷された状態を示し、
図5(b)は、従来例2における導電体を示し、
図5(c)は、従来例3における塗膜溶液がインクジェット噴射された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係わる銀ナノワイヤパターンの製造方法を説明する断面構成図であり、
図1(a)は、レジスト形成工程P1後を示す図であり、
図1(b)は、パターニング工程P2後を示す図であり、
図1(c)は、パターン形成工程P3後を示す図であり、
図1(d)は、透明層形成工程P4後を示す図であり、
図1(e)は、ピーリング工程P5後を示す図である。
図2は、パターン形成工程P3を説明する断面構成図であり、
図2(a)は、レジスト膜R1及び開口部1kにインクNKが塗布された状態を示し、
図2(b)は、スキージSKでインクNKを開口部1kに掻き落とす途中の状態を示し、
図2(c)は、パターン形成工程P3後の状態を示している。
図3は、パターン形成工程P3中の実例を示した電子顕微鏡写真であり、
図3(a)は、パターニング工程P2後のレジスト膜R1及び開口部1kにインクNKが塗布された状態を示し、
図3(b)は、
図3(a)に示すT部分を拡大したものである。なお、
図3(a)に示すレジスト膜R1及び開口部1kの基材19の表面は、インクNKに全て覆われている。
【0022】
本発明の第1実施形態に係わる銀ナノワイヤパターンの形成方法は、
図1に示すように、基材19上にレジスト膜R1を形成するレジスト形成工程P1と、レジスト膜R1に開口部1kを形成するパターニング工程P2と、銀ナノワイヤ膜12を形成するパターン形成工程P3と、銀ナノワイヤ膜12上に透明膜13を形成する透明層形成工程P4と、レジスト膜R1を引き剥がすピーリング工程P5と、を有して構成されている。
【0023】
先ず、銀ナノワイヤパターンの製造方法は、ポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethylene terephthalate)等の透明樹脂フィルムからなる基材19を準備し、
図1(a)に示すように、基材19上にレジスト膜R1を形成するレジスト形成工程P1を行う。このレジスト形成工程P1は、先ず、紫外線硬化型のペースト(例えば、JELCON RIP−2A、十条ケミカル(株)製)を用い、基材19上にコータ等でベタパターン状にペーストを塗布する。その後、紫外線を照射してペーストを硬化させて皮膜とすることで、レジスト膜R1を作製する。このレジスト膜R1は、硬化後に基材19から物理的に引き剥がし可能な皮膜となっている。なお、銀ナノワイヤパターンの透明導電性と柔軟性を利用するためには、基材19として透明樹脂フィルムを用いることが好ましいが、硬質の透明材料や有色の透明材質を基材19として用いることもできる。
【0024】
次に、
図1(b)に示すように、レジスト膜R1に開口部1kを形成するパターニング工程P2を行う。このパターニング工程P2は、先ず、炭酸ガスレーザ等のレーザ光を用い、所望の銀ナノワイヤパターンとなる部分に、レーザ光を照射する。そして、このレーザ光が照射された部分のレジスト膜R1が除去されることにより、レジスト膜R1の開口部1kが形成される。次に、この開口部1kの部分を洗浄して、次の工程に送る。
【0025】
次に、
図1(c)及び
図2に示すように、銀ナノワイヤ膜12を形成するパターン形成工程P3を行う。このパターン形成工程P3は、先ず、
図2(a)に示すように、銀ナノワイヤAG2がバインダB2中に分散されたインクNK(例えば星光PMC(株)製)を準備し、コータ等を利用して、このインクNKを所望のパターン(レジストパターン)が形成された基材19上の全面に塗布する(
図3を参照)。このインクNKは、銀ナノワイヤAG2、水溶性のバインダB2及び水溶液から構成されている。この銀ナノワイヤAG2は、容易に入手が可能であり、また、銀ナノワイヤAG2を用いて形成した銀ナノワイヤ膜12は、高い導電性を有し不可視性に優れている。
【0026】
次に、
図2(b)に示すように、スキージSKを用い、レジスト膜R1上のインクNKを掻き落とし込むようにして、レジスト膜R1の開口部1kにインクNKを塗布する。そして、乾燥を行い、溶媒である水溶液を蒸発させて、
図2(c)に示すように、バインダB2に銀ナノワイヤAG2が分散された銀ナノワイヤ膜12が開口部1kを含む領域に形成される。
【0027】
これにより、従来例2及び従来例3と比較して、レジスト膜R1のパターニング精度に基づく銀ナノワイヤ膜12の微細パターンを形成することができる。また、パターン形成工程P3を有しているので、インクNKを開口部1k内に優先して充填することができる。このため、高価な銀ナノワイヤAG2を無駄にすることなく、しかも開口部1kに充分に銀ナノワイヤAG2を供給することができる。これにより、銀ナノワイヤ膜12が強固なものとなる。
【0028】
次に、
図1(d)に示すように、銀ナノワイヤ膜12上に透明膜13を形成する透明層形成工程P4を行う。透明層形成工程P4は、先ず、透明導電性高分子である、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合体(以下、PEDOT:PSSと表記する)を水に分散し、コータ等を利用して、この分散液をレジスト膜R1及び銀ナノワイヤ膜12上に塗布する。このPEDOT:PSSは、透明であり、しかも充分な透明性を確保しつつ所望の導電性を得ることができる材料である。
【0029】
次に、パターン形成工程P3と同様に、レジスト膜R1上の分散液をスキージSKで掻き落とし込むようにして、レジスト膜R1の開口部1kに分散液を塗布する。これにより、銀ナノワイヤAG2が開口部1kの開口端に沿ってシャープに切断されるようになる。
【0030】
その後、乾燥、硬化を行い、分散液中の水を蒸発させることにより、
図1(d)に示すように、透明導電性高分子の皮膜である透明膜13が、開口部1k内に形成された銀ナノワイヤ膜12上に積層される。これにより、銀ナノワイヤパターンに更に導電性の皮膜を付与することとなる。このことにより、微細長尺配線における抵抗値の安定化(例えば断線が防げる等)が図れるとともに、更なる銀ナノワイヤパターンの低抵抗値化が図れる。
【0031】
最後に、
図1(e)に示すように、レジスト膜R1を引き剥がすピーリング工程P5を行う。ピーリング工程P5は、基材19の端部のレジスト膜R1を掴んで、基材19上に形成されたレジスト膜R1を引き剥がすことを行う。このことにより、レジスト膜R1とレジスト膜R1に付着していた銀ナノワイヤ膜12及び透明膜13とが除去され、レジスト膜R1の開口部1kに対応する領域に銀ナノワイヤ膜12及び透明膜13が残存し、銀ナノワイヤパターンが形成される。この際には、前述したように、銀ナノワイヤ膜12が強固なものとなっているので、ピーリング工程P5でのレジスト膜R1の引き剥がしを安定して行うことができる。更に、銀ナノワイヤAG2が開口部1kの開口端に沿ってシャープに切断されているので、銀ナノワイヤ膜12が引き剥がされるレジスト膜R1に影響され難く、銀ナノワイヤ膜12が基材19から剥がされ難くなっている。このことにより、ピーリング工程P5をより安定して行うことができる。
【0032】
以上のような工程を行うことで、ウェットプロセスを用いる従来例1と比較して、容易に銀ナノワイヤパターンを形成することができる。しかもエッチング液で銀ナノワイヤ膜12のエッチングを行わないため、耐酸性や耐酸化性ではない基板や下地層等を用いることができる。更に、レジスト膜R1を引き剥がして除去するため、剥離液によるレジスト膜R1の除去の必要がなく、剥離液による銀ナノワイヤ膜12へのダメージも抑えることができる。
【0033】
また、基材19全体の面積に対するパターンの面積の割合が小さい場合には、銀ナノワイヤ膜12の一部を除去して銀ナノワイヤパターン形成する、所謂サブトラクティブ法を用いると、高価な銀ナノワイヤAG2を無駄にして効率が悪いものとなる。本発明の第1実施形態の銀ナノワイヤパターンの形成方法では、この課題を解決する効果も奏している。
【0034】
以上のように構成された本発明の第1実施形態の銀ナノワイヤパターンの形成方法における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0035】
本発明の第1実施形態の銀ナノワイヤパターンの形成方法は、レジスト膜R1に開口部1kを形成するパターニング工程P2を有しているので、従来例2及び従来例3と比較して、レジスト膜R1のパターニング精度に基づく銀ナノワイヤ膜12の微細パターンを形成することができる。また、銀ナノワイヤ膜12を形成するパターン形成工程P3とレジスト膜R1を引き剥がして除去するピーリング工程P5を有しているので、ウェットプロセスを用いる従来例1と比較して、容易に銀ナノワイヤパターンを形成することができる。しかもエッチング液でエッチングを行わないため耐酸性や耐酸化性ではない基板や下地層等を用いることができる。更に、レジスト膜R1を引き剥がして除去するため、剥離液によるレジスト膜R1の除去の必要がなく、剥離液による銀ナノワイヤ膜12へのダメージも抑えることができる。従って、工程が簡素で微細パターンが形成できる銀ナノワイヤパターンの形成方法を提供することができる。
【0036】
銀ナノワイヤAG2がバインダB2中に分散したインクNKを開口部1kに落とし込むようにしてスキージSKで塗布するので、インクNKを開口部1k内に優先して充填することができる。このため、高価な銀ナノワイヤAG2を無駄にすることなく、しかも開口部1kに充分に銀ナノワイヤAG2を供給することができる。このことにより、銀ナノワイヤ膜12が強固なものとなり、ピーリング工程P5でのレジスト膜R1の引き剥がしを安定して行うことができる。
【0037】
また、開口部1k内の銀ナノワイヤ膜12上に透明膜13を形成する透明層形成工程P4を有するので、透明膜13を積層する際に、銀ナノワイヤAG2が開口部1kの開口端に沿ってシャープに切断されるようになる。このため、ピーリング工程P5でのレジスト膜R1の引き剥がしの際に、銀ナノワイヤ膜12が引き剥がされるレジスト膜R1に影響され難いので、基材19から剥がされ難くなっている。このことにより、ピーリング工程P5をより安定して行うことができる。
【0038】
銀ナノワイヤ膜12上に積層する透明膜13が透明導電性高分子なので、銀ナノワイヤパターンに更に導電性の皮膜を付与することとなる。このことにより、微細長尺配線における抵抗値の安定化(例えば断線が防げる等)が図れるとともに、更なる銀ナノワイヤパターンの低抵抗値化が図れる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0040】
<変形例1>
図4は、本発明の第1実施形態に係わる銀ナノワイヤパターンの製造方法における変形例1を示した断面模式図である。上記第1実施形態のパターニング工程P2では、レーザ光を用いてレジスト膜R1に開口部1kを形成したが、これに限るものではない。例えば、フォトリソグラフィー法を用いて、
図4に示すように、開口部C1kを有したレジスト膜CR1を形成しても良い。この場合、レジスト形成工程P1とパターニング工程P2が同時に行われることになる。また、この際には、レジスト膜CR1の断面形状が逆テーパー形状であるのが好ましい。これにより、
図4に示すように、レジスト膜CR1の断面形状に沿ってインクNKが塗布されておらず、レジスト膜CR1のエッジ部C1eにおける銀ナノワイヤAG2(図示していない)の切断が容易に行われる。
【0041】
<変形例2>
上記第1実施形態の透明層形成工程P4では、透明膜13として、好適に透明導電性高分子を用いたが、これに限るものではなく、例えば透明な絶縁膜でも良い。
【0042】
<変形例3>
上記第1実施形態では、パターン形成工程P3とピーリング工程P5との間に、透明層形成工程P4を好適に行ったが、この透明層形成工程P4を省略しても、充分な効果を奏する。
【0043】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
R1、CR1 レジスト膜
1k、C1k 開口部
12 銀ナノワイヤ膜
AG2 銀ナノワイヤ
B2 バインダ
13 透明膜
19 基材
NK インク
SK スキージ
P1 レジスト形成工程
P2 パターニング工程
P3 パターン形成工程
P4 透明層形成工程
P5 ピーリング工程