【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、停止しているコンバインドサイクルプラントを早期に起動し、電力を供給したいという要望がある。ここで、ガスタービン単独では、比較的高い負荷上昇率で負荷を上昇させることができるが、蒸気タービンは、熱応力の制限から、ガスタービンに比べて低い負荷上昇率で負荷を上昇させる必要がある。つまり、コンバインドサイクルプラントにおいて、ガスタービンの待機負荷までは比較的素早く負荷を上昇させることができるが、蒸気タービンへの蒸気の供給を開始してからは、ガスタービンと蒸気タービンは共にゆっくりとした速度で負荷を上昇させる必要があり、ガスタービン単独の時と比べて、負荷上昇に時間がかかる。よって、ガスタービンの待機負荷が小さい程、ガスタービンと蒸気タービンとを同時に負荷上昇させる負荷帯が増加し、コンバインドプラント全体の負荷上昇時間がより長くなることになる。
【0007】
一方、上述した従来のコンバインドサイクルプラントでは、起動時、各起動モードにおいて、蒸気タービンのメタル温度範囲に対するガスタービンの待機負荷が固定されている。そのため、蒸気タービンのメタル温度範囲を境とし、ガスタービンの待機負荷が変化する。例えば、蒸気タービンのメタル温度が195℃であるときはコールド起動となり、ガスタービンの待機負荷が10%に設定され、蒸気タービンのメタル温度が205℃であるときはウォーム起動となり、ガスタービンの待機負荷が20%に設定される。このとき、蒸気タービンのメタル温度の差が10℃と微小であるにも拘らず、蒸気タービンのメタル温度が195℃であると、ガスタービンの待機負荷が10%に設定される。よって、僅かな蒸気タービンのメタル温度の差で、ガスタービンの待機負荷が大きく変化し、コンバインドサイクルプラントの起動時間が長くなってしてしまうという問題がある。
【0008】
また、上述した従来のコンバインドサイクルプランでは、起動時、各起動モードにおいて、蒸気タービンの起動時における昇負荷レートが固定されている。 そのため、蒸気タービンのメタル温度範囲を境とし、蒸気タービンの昇負荷レートが変化する。例えば、蒸気タービンのメタル温度が195℃であるときはコールド起動となり、昇負荷レートは相対的に低く設定され、蒸気タービンのメタル温度が205℃であるときはウォーム起動となり、昇負荷レートは相対的に高く設定される。このとき、蒸気タービンのメタル温度の差が10℃と微小であるにも拘らず、蒸気タービンのメタル温度が195℃であると、蒸気タービンの昇負荷レートが低い側に設定される。よって、僅かな蒸気タービンのメタル温度の差で、蒸気タービンの昇負荷レートが大きく変化し、コンバインドサイクルプラントの起動時間が長くなって時間を要してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、コンバインドサイクルプラントの起動時間の短縮を可能とするコンバインドサイクルプラント、コンバインドサイクルプラントの制御装置、コンバインドサイクルプラントの起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明のコンバインドサイクルプラントは、圧縮機と燃焼器とタービンを有するガスタービンと、前記ガスタービンからの排気ガスの排熱により蒸気を生成する排熱回収ボイラと、前記排熱回収ボイラにより生成された蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンのメタル温度の変化に応じて前記ガスタービンの起動時における待機負荷が連続して変化するように設定する制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
従って、ガスタービンの起動時における待機負荷が蒸気タービンのメタル温度に対して最適値に設定されることとなり、ガスタービンが適正負荷により運転されることで、ガスタービンと蒸気タービンとを同時に負荷上昇させる負荷帯を可能な限り減少させることができ、コンバインドサイクルプラント全体の起動時間を短縮することができる。
【0012】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記待機負荷は、前記メタル温度の関数であり、前記メタル温度の上昇に伴って増加することを特徴としている。
【0013】
従って、待機負荷がメタル温度の上昇に伴って増加する関数であるため、蒸気タービンの温度が高いほどガスタービンの待機負荷が高くなり、ガスタービンを適正負荷で起動してガスタービンと蒸気タービンとを同時に負荷上昇させる負荷帯を減少させることができる。
【0014】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記待機負荷は、前記メタル温度に対する低温領域と高温領域とを含む関数であり、前記低温領域及び前記高温領域における前記メタル温度に対する前記待機負荷の変化率を異ならせていることを特徴としている。
【0015】
従って、低温領域における待機負荷の変化率と高温領域における待機負荷の変化率とが相違することとなり、プラント性能に応じた設計を可能とすることができる。
【0016】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記高温領域における前記待機負荷の変化率は、前記低温領域における前記待機負荷の変化率より大きく設定されることを特徴としている。
【0017】
従って、高温領域における待機負荷の変化率が低温領域における待機負荷の変化率より大きいため、高温領域では、蒸気タービンのメタル温度の変化に対して待機負荷を大きく変更することとなり、ガスタービンと蒸気タービンとを同時に負荷上昇させる負荷帯をより減少させることができる。
【0018】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記待機負荷は、前記メタル温度が予め設定された下限温度以下の領域で、一定値に設定されることを特徴としている。
【0019】
従って、メタル温度が下限温度以下の領域で待機負荷を一定値に設定することで、ガスタービンの起動制御を簡素化することができる。
【0020】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記待機負荷は、前記メタル温度が予め設定された上限温度以上の領域で、一定値に設定されることを特徴としている。
【0021】
従って、メタル温度が上限温度以上の領域で待機負荷を一定値に設定することで、ガスタービンにおける熱応力の発生を抑制することができる。
【0022】
また、本発明のコンバインドサイクルプラントは、圧縮機と燃焼器とタービンを有するガスタービンと、前記ガスタービンからの排気ガスの排熱により蒸気を生成する排熱回収ボイラと、前記排熱回収ボイラにより生成された蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンのメタル温度の変化に応じて前記蒸気タービンの起動時における昇負荷レートが連続して変化するように設定する制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0023】
従って、蒸気タービンの起動時における昇負荷レートが、蒸気タービンのメタル温度に対して最適値に設定されることとなり、蒸気タービンによる発電を開始してから、この蒸気タービンが早期に発電量を増加することができ、コンバインドサイクルプラントの起動時間を短縮することができる。
【0024】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記昇負荷レートは、前記メタル温度の関数であり、前記メタル温度の上昇に伴って増加することを特徴としている。
【0025】
従って、昇負荷レートがメタル温度の上昇に伴って増加する関数であるため、蒸気タービンの温度が高いほど蒸気タービンの昇負荷レートが高くなり、蒸気タービンによる発電量を早期に増加することができる。
【0026】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記昇負荷レートは、前記メタル温度に対する低温領域と高温領域とを含む関数であり、前記低温領域及び前記高温領域における前記メタル温度に対する前記昇負荷レートの変化率を異ならせていることを特徴としている。
【0027】
従って、低温領域における昇負荷レートの変化率と高温領域における昇負荷レートの変化率とが相違することとなり、プラント性能に応じた設計を可能とすることができる。
【0028】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記高温領域における前記昇負荷レートの変化率は、前記低温領域における前記昇負荷レートの変化率より大きく設定されることを特徴としている。
【0029】
従って、高温領域における昇負荷レートの変化率が低温領域における昇負荷レートの変化率より大きいため、高温領域では、蒸気タービンのメタル温度の変化に対して昇負荷レートを大きく変更することとなり、蒸気タービンにより早期に発電量を増加することができる。
【0030】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記昇負荷レートは、前記メタル温度が予め設定された下限温度以下の領域で、一定値に設定されることを特徴としている。
【0031】
従って、メタル温度が下限温度以下の領域で昇負荷レートを一定値に設定することで、コンバインドサイクルプラントの運転制御を簡素化することができる。
【0032】
本発明のコンバインドサイクルプラントでは、前記昇負荷レートは、前記メタル温度が予め設定された上限温度以上の領域で、一定値に設定されることを特徴としている。
【0033】
従って、メタル温度が上限温度以上の領域で昇負荷レートを一定値に設定することで、蒸気温度とメタル温度との温度差による蒸気タービンにおける熱応力の発生を抑制することができる。
【0034】
また、本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置は、ガスタービンと排熱回収ボイラと蒸気タービンとを備えるコンバインドサイクルプラントにおいて、前記蒸気タービンのメタル温度の変化に応じて前記ガスタービンの起動時における待機負荷が連続して変化するように設定する、ことを特徴とするものである。
【0035】
従って、ガスタービンの起動時における待機負荷が蒸気タービンのメタル温度に対して最適値に設定されることとなり、コンバインドサイクルプラントの起動時間を短縮することができる。
【0036】
本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置は、ガスタービンと排熱回収ボイラと蒸気タービンとを備えるコンバインドサイクルプラントにおいて、前記蒸気タービンのメタル温度の変化に応じて前記蒸気タービンの起動時における昇負荷レートが連続して変化するように設定する、ことを特徴とするものである。
【0037】
従って、蒸気タービンの起動時における昇負荷レートが、蒸気タービンのメタル温度に対して最適値に設定されることとなり、コンバインドサイクルプラントの起動時間を短縮することができる。
【0038】
また、本発明のコンバインドサイクルプラントの起動方法は、ガスタービンと排熱回収ボイラと蒸気タービンとを備えるコンバインドサイクルプラントにおいて、起動時、前記蒸気タービンのメタル温度の変化に応じて前記ガスタービンの待機負荷が連続して変化するように設定する、ことを特徴とするものである。
【0039】
従って、ガスタービンの起動時における待機負荷が蒸気タービンのメタル温度に対して最適値に設定されることとなり、ガスタービンが適正負荷により運転されることで、ガスタービンと蒸気タービンとを同時に負荷上昇させる負荷帯を可能な限り減少させることができ、コンバインドサイクルプラントの起動時間を短縮することができる。
【0040】
本発明のコンバインドサイクルプラントの起動方法は、ガスタービンと排熱回収ボイラと蒸気タービンとを備えるコンバインドサイクルプラントにおいて、起動時、前記蒸気タービンのメタル温度の変化に応じて前記蒸気タービンの昇負荷レートが連続して変化するように設定する、ことを特徴とするものである。
【0041】
従って、蒸気タービンの起動時における昇負荷レートが、蒸気タービンのメタル温度に対して最適値に設定されることとなり、蒸気タービンによる発電を開始してから、この蒸気タービンが早期に発電量を増加することができ、コンバインドサイクルプラントの起動時間を短縮することができる。