(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を以下に説明する。本実施形態において正極とは、正極活物質と、バインダーと、必要な場合導電助剤との混合物を金属箔等の正極集電体に塗布または圧延および乾燥して正極活物質層を形成した薄板状あるいはシート状の電池部材である。負極とは、負極活物質と、バインダーと、必要な場合導電助剤との混合物を負極集電体に塗布して負極活物質層を形成した薄板状あるいはシート状の電池部材である。セパレータとは、正極と負極とを隔離して負極・正極間のリチウムイオンの伝導性を確保するための膜状の電池部材である。電解液とは、イオン性物質を溶媒に溶解させた電気伝導性のある溶液のことであり、本実施形態においては特に非水電解液を用いることができる。正極と負極とセパレータと電解液とを含む発電要素とは、電池の主構成部材の一単位であり、通常、正極と負極とがセパレータを介して重ねられて(積層されて)、この積層物が電解液に浸漬されている。
【0011】
実施形態のリチウムイオン二次電池は、外装体の内部に該発電要素が含まれて成り、好ましくは、発電要素は該外装体内部に封止されている。封止されているとは、発電要素が外気に触れないように、外装体材料により包まれていることを意味する。すなわち外装体は、発電要素をその内部に封止することが可能な袋形状をしている。
【0012】
すべての実施形態において用いることができる負極は、負極活物質を含む負極活物質層が負極集電体に配置された負極を含む。好ましくは、負極は、負極活物質、バインダーおよび場合により導電助剤の混合物を銅箔などの金属箔からなる負極集電体に塗布または圧延し、乾燥して得た負極活物質層を有している。各実施形態において、負極活物質が、黒鉛を含むことが好ましい。黒鉛は構造が安定しており、高容量電池の負極材料に適している。負極活物質は黒鉛粒子のほか非晶質炭素を含むこともできる。黒鉛と非晶質炭素とをともに含む混合炭素材を用いると、電池の回生性能が向上する。
【0013】
黒鉛は、六方晶系六角板状結晶の炭素材料であり、石墨、グラファイト等と称されることがある。黒鉛は粒子の形状をしていることが好ましい。また非晶質炭素は、部分的に黒鉛に類似するような構造を有していてもよい、微結晶がランダムにネットワークした構造をとった、全体として非晶質である炭素材料のことを意味する。非晶質炭素として、カーボンブラック、コークス、活性炭、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン等が挙げられる。非晶質炭素は粒子の形状をしていることが好ましい。
【0014】
負極活物質層に場合により用いられる導電助剤として、カーボンナノファイバー等のカーボン繊維、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、メゾポーラスカーボン、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。その他、負極活物質層には増粘剤、分散剤、安定剤等の、電極形成のために一般的に用いられる添加剤を適宜使用することができる。
【0015】
負極活物質層に用いられるバインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリピロール類等の導電性ポリマー、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ブタジエンラバー(BR)、クロロプレンラバー(CR)、イソプレンラバー(IR)、アクリロニトリルブラジエンラバー(NBR)等の合成ゴム、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン等の多糖類を用いることができる。
【0016】
すべての実施形態において用いることができる正極は、正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体に配置された正極を含む。好ましくは、正極は、正極活物質、バインダーおよび場合により導電助剤の混合物をアルミニウム箔などの金属箔からなる正極集電体に塗布または圧延し、乾燥して得た正極活物質層を有している。正極活物質として、リチウム遷移金属酸化物を用いることができ、たとえば、リチウム・ニッケル系酸化物(たとえばLiNiO
2)、リチウムコバルト系酸化物(たとえばLiCoO
2)、リチウムマンガン系酸化物(たとえばLiMn
2O
4)およびこれらの混合物を使用することが好ましい。また正極活物質として、一般式Li
xNi
yCo
zMn
(1−y−z)O
2で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、一般式中のxは1≦x≦1.2であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数であり、yの値が0.5以下である。なお、マンガンの割合が大きくなると単一相の複合酸化物が合成されにくくなるため、1−y−z≦0.4とすることが望ましい。また、コバルトの割合が大きくなると高コストとなり容量も減少するため、z<y、z<1−y−zとすることが望ましい。高容量の電池を得るためには、y>1−y−z、y>zとすることが特に好ましい。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、層状結晶構造を有することが好ましい。
【0017】
正極活物質層に場合により用いられる導電助剤として、カーボンナノファイバー等のカーボン繊維、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、メゾポーラスカーボン、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。その他、正極活物質層には増粘剤、分散剤、安定剤等の、電極形成のために一般的に用いられる添加剤を適宜使用することができる。
【0018】
正極活物質層に用いられるバインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリピロール類等の導電性ポリマー、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ブタジエンラバー(BR)、クロロプレンラバー(CR)、イソプレンラバー(IR)、アクリロニトリルブラジエンラバー(NBR)等の合成ゴム、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン等の多糖類を用いることができる。
【0019】
すべての実施形態において用いることができる電解液は、非水電解液であって、ジメチルカーボネート(以下「DMC」と称する。)、ジエチルカーボネート(以下「DEC」と称する。)、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−t−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジ−イソブチルカーボネート、またはジ−t−ブチルカーボネート等の鎖状カーボネートと、プロピレンカーボネート(以下「PC」と称する。)、エチレンカーボネート(以下「EC」と称する。)等の環状カーボネートとを含む混合物であることが好ましい。電解液は、このようなカーボネート混合物に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)等のリチウム塩を溶解させたものである。
【0020】
電解液は、上記の成分の他、添加剤を含有することができる。電解液に加えることができる添加剤は、電池の充放電の過程で、電気化学的に分解し、電極その他に被膜を形成することができる物質であることが好ましい。とりわけ、負極表面上に負極構造を安定化させることができる添加剤を用いることが特に望ましい。このような添加剤として、環状ジスルホン酸エステル(たとえば、メチレンメタンジスルホン酸エステル、エチレンメタンジスルホン酸エステル、プロピレンメタンジスルホン酸エステル)、環状スルホン酸エステル(たとえば、スルトン)、鎖状スルホン酸エステル(たとえば、メチレンビスベンゼンスルホン酸エステル、メチレンビスフェニルメタンスルホン酸エステル、メチレンビスエタンスルホン酸エステル)等の、分子内に硫黄を含有する化合物を含む添加剤(以下、「含硫黄添加剤」と称する。)を挙げることができる。この他、電池の充放電過程において正極ならびに負極の保護被膜を形成することができる添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、メタクリル酸プロピレンカーボネート、アクリル酸プロピレンカーボネート等を加えることもできる。さらに電池の充放電過程において正極ならびに負極の保護被膜を形成する他の添加剤として、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、トリクロロエチレンカーボネート等を挙げることができる。これらの添加剤は、含硫黄添加剤の、リチウム・ニッケル系複合酸化物を含有する正極活物質への攻撃を防ぐことができる添加剤である。添加剤は、電解液全体の重量に対して、20重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の割合で含まれている。
【0021】
実施形態において、セパレータはオレフィン系樹脂層から構成される。ここでオレフィン系樹脂層は、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、へキセンなどのα−オレフィンを重合または共重合させたポリオレフィンから構成される層である。実施形態では、電池温度上昇時に閉塞される空孔を有する構造、すなわち多孔質あるいは微多孔質のポリオレフィンから構成される層であることが好ましい。オレフィン系樹脂層がこのような構造を有していることにより、万一電池温度が上昇しても、セパレータが閉塞して(シャットダウンして)、イオン流を寸断することができる。シャットダウン効果を発揮するためには、多孔質のポリエチレン膜を用いることが非常に好ましい。
【0022】
オレフィン系樹脂に架橋を施したセパレータを用いることが好ましい。一分子中に複数の重合基を有する多官能性物質(トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等)による化学架橋を施したポリマーや、電離放射線を照射してラジカルを生成することにより重合した電子架橋ポリマー等を用いることができる。
【0023】
各実施形態において、特にセパレータの熱収縮率が13%以下であることが好ましい。ここでセパレータ等を含むフィルム材料の熱収縮率は、フィルム材料に熱をかけたときに、どれだけ寸法が変化する(減少する)かを表す数値であり、たとえばJIS−C−2151、JIS−C−2318、ASTMDD−1204等に準じて測定することができる。本明細書では、熱収縮率の値は、フィルム材料の試験片を熱風循環式恒温槽内に懸垂して、25℃から180℃まで30分間かけて昇温し、次いで室温まで冷却した後に測定した試験片の面積の収縮率を表す。すなわち熱収縮率は、以下の式:
100×[(試験前のフィルム材料の面積)−(試験後のフィルム材料の面積)]/(試験前のフィルム材料の面積)
で計算することができる。熱収縮率が13%を超えるセパレータは、微小短絡で生じる発熱でセパレータの破膜面積が広がり、大電流が流れる可能性がある。
【0024】
セパレータはオレフィン系樹脂層と耐熱性微粒子層とを有していてもよい。耐熱性微粒子層を有しているセパレータは、電池の発熱を防止することができるほか、セパレータの熱収縮を抑制することもできる。耐熱性微粒子として、耐熱温度が150℃以上の耐熱性を有し、電気化学反応に安定な無機微粒子を用いることができる。このような無機微粒子として、シリカ、アルミナ(α−アルミナ、β−アルミナ、θ−アルミナ)、酸化鉄、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、スピネル、マイカ、ムライトなどの鉱物を挙げることができる。このように、オレフィン系樹脂層と耐熱性樹脂層とを有するセパレータを、本明細書では「セラミックセパレータ」と称することがある。
【0025】
オレフィン系樹脂層と耐熱性微粒子層とを有するセラミックセパレータは、オレフィン系樹脂膜の表面上に耐熱性微粒子層を積層した形態を有する。耐熱性微粒子層は、オレフィン系樹脂膜の片面上にのみ設けることができ、両面上に設けることもできる。耐熱性微粒子層全体の厚さの割合は、オレフィン系樹脂層の厚さの1/10から1/2、好ましくは1/8から1/3程度であることが好適である。耐熱性微粒子層の厚さを厚くしすぎると、電解液中に含まれる含硫黄添加剤の分解物が増加する可能性があり、薄くしすぎるとセパレータの耐熱性の向上効果が期待できない。
【0026】
ここで、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の構成例を、図面を用いて説明する。
図1はリチウムイオン二次電池の断面図の一例を表す。リチウムイオン二次電池10は、主な構成要素として、負極集電体11、負極活物質層13、セパレータ17、正極集電体12、正極活物質層15を含む。
図1では、負極集電体11の両面に負極活物質層13が設けられ、正極集電体12の両面に正極活物質層15が設けられているが、各々の集電体の片面上のみに活物質層を形成することもできる。負極集電体11、正極集電体12、負極活物質層13、正極活物質層15、及びセパレータ17が一つの電池の構成単位、すなわち発電要素である(図中、単電池19)。セパレータ17は、耐熱性微粒子層と、オレフィン系樹脂膜とから構成されていてよい(いずれも図示せず)。このような単電池19を、セパレータ17を介して複数積層する。各負極集電体11から延びる延出部を負極リード25上に一括して接合し、各正極集電体12から延びる延出部を正極リード27上に一括して接合してある。なお正極リードとしてアルミニウム板、負極リードとして銅板が好ましく用いられ、場合により他の金属(たとえばニッケル、スズ、はんだ)または高分子材料による部分コーティングを有していてもよい。正極リードおよび負極リードはそれぞれ正極および負極に溶接される。このように複数の単電池を積層してできた電池は、溶接された負極リード25および正極リード27を外側に引き出す形で、外装体29により包装される。外装体29の内部には電解液31が注入されている。外装体29は、2枚の積層体を重ね合わせ、周縁部を熱融着した形状をしている。なお
図1では、負極リード25と正極リード27は、外装体29の対向する辺にそれぞれ設けられている(「両タブ型」という。)が、負極リード25と正極リード27とを外装体29の一の辺に設ける(すなわち負極リード25と正極リード27とを外装体29の一の辺から外側に引き出す。「片タブ型」という。)こともまた可能である。
【0027】
上記のように作製したリチウムイオン二次電池の出力と容量との比(以下、「出力容量比」という。単位:W/Wh)の値が25以上300未満であることが好ましい。ここで電池の出力は、10秒間の平均出力を表している。出力容量比が25以上であると、一般的に電極の電子抵抗が低いので、高い出力が得られる。また出力容量比が25以下であると一般的に、電極の電子抵抗が高いので、高出力電池としての用途にたえない場合がある。
【0028】
すべての実施形態のリチウムイオン二次電池の発熱指数は、80以上であることができる。本明細書において発熱指数とは、充電状態50%、すなわち電池の残容量(以下、「SOC」と称する。)50%の電池を1秒間放電したときの直流抵抗値
と電極総面積との積の逆数を
集電体熱容量で除した値と定義する。発熱指数とは、電池が短時間に放電したときの、電極(特に正極)の熱に対する許容度を表す指数であり、この指数が高い値であるほど電池の耐熱性が高いことを示す。電池の発熱指数を80以上とするためには、導電助剤の量を増やして電池の抵抗を小さくし、集電箔の熱容量を小さくすればよい。発熱指数は、電池の比抵抗と正極熱容量とのバランスから、現実的には150以下程度となる。
【0029】
別の実施形態において、セパレータの引張伸度が2%以上であることが好ましい。本明細書において引張伸度は、特に突き刺し伸度のことを指す。突き刺し伸度とは、JIS Z 1707(1997)に準じて測定した突き刺し強度の測定において、ピン先端がフィルムに接触してから、突き刺し破断が起こるまでの、ピン先端の移動距離を測定し、100×(突き刺し破断時の試料の長さ−試験前の試料の長さ)/試験前の試料の長さで求められる値をいう。好ましくはセパレータの引張伸度は2%以上200%以下である。引張伸度が2%以下であると、電池の発熱にセパレータが耐えられないおそれがあり、200%以上であると、製造時にセパレータが延び過ぎるため、取り扱いにくいことがある。
【実施例】
【0030】
<負極の作製>
負極活物質として、人造黒鉛(比容量320mA/g)と表面被覆天然黒鉛粉末(比容量390mAh/g)とを8:2(重量比)になるように混合し炭素系活物質と、導電助剤としてカーボンブラック粉末(SC65、TIMCAL製)と、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF、クレハW#7200、クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン株式会社)とを、固形分質量比で92:2:6の割合でイオン交換水中に添加して撹拌し、これらの材料を水中に均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、負極集電体となる厚み8μmの銅箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、電極を加熱し、水を蒸発させることにより負極活物質層を形成した。更に、負極活物質層を空孔率35%となるようにプレスして、負極集電体の片面上に負極活物質層を塗布した負極を作製した。
【0031】
<正極の作製>
正極活物質として、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(D50粒子径:6μmNCM433、すなわちニッケル:コバルト:マンガン=4:3:3)と、導電助剤としてカーボンブラック粉末(SC65、TIMCAL製)と、バインダー樹脂としてPVDF(クレハW#7200、クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン株式会社)とを、固形分質量比で89:7:4の割合で、溶媒であるN−メチル−ピロリドン(以下、「NMP」を称する。)に添加した。さらに、この混合物に有機系水分捕捉剤として無水シュウ酸(分子量90)を、上記混合物からNMPを除いた固形分100質量部に対して0.03質量部添加した上で撹拌することで、これらの材料を均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体となるアルミニウム箔上(表1参照)に塗布した。次いで、125℃にて10分間、電極を加熱し、NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成した。さらに、正極活物質層を空孔率30%となるようにプレスして、正極集電体の片面上に正極活物質層を塗布した正極を作製した。
次に混合正極を作製した。BET比表面積0.7m
2/gのニッケル酸リチウムの一部元素をコバルトおよびアルミニウムに置換した複合酸化物(D50粒子径:5μm、ニッケル:コバルト:アルミニウム=80:15:5、以下、「NCA」と称する。)と、LiMnO
2(D50粒子径:10μm、BET比表面積0.4m
2/g、以下、「LMO1」と称する。)とを表に記載した割合で混合し、導電助剤としてカーボンブラック粉末(SC65、TIMCAL製)と、バインダー樹脂としてPVDF(クレハW#7200、クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン株式会社)とを、固形分質量比で混合正極活物質:導電助剤:バインダー=89:7:4の割合で、溶媒であるNMPに添加した。さらに、この混合物に有機系水分捕捉剤として無水シュウ酸(分子量90)を、上記混合物からNMPを除いた固形分100質量部に対して0.03質量部添加した上で撹拌することで、これらの材料を均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体となる厚み15μmのアルミニウム箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、電極を加熱し、NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成した。さらに、正極活物質層を空孔率30%となるようにプレスして、正極集電体の片面上に目付(表1参照)の正極活物質層を塗布した正極を作製した。
上記とは別の混合正極を作製した。BET比表面積0.7m
2/gのニッケル酸リチウムの一部元素をコバルトおよびアルミニウムに置換した複合酸化物(ニッケル:コバルト:アルミニウム=80:15:5、「NCA」と称する。)と、LiMnO
2(D50粒子径:6μm、BET比表面積0.7m
2/g、以下、「LMO2」と称する。)とを表に記載した割合で混合し、導電助剤としてカーボンブラック粉末(SC65、TIMCAL製)と、バインダー樹脂としてPVDF(クレハW#7200、クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン株式会社)とを、固形分質量比で混合正極活物質:導電助剤:バインダー=89:7:4の割合で、溶媒であるNMPに添加した。さらに、この混合物に有機系水分捕捉剤として無水シュウ酸(分子量90)を、上記混合物からNMPを除いた固形分100質量部に対して0.03質量部添加した上で撹拌することで、これらの材料を均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体となる厚み15μmのアルミニウム箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、電極を加熱し、NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成した。さらに、正極活物質層を空孔率30%となるようにプレスして、正極集電体の片面上に目付(表1参照)の正極活物質層を塗布した正極を作製した。
【0032】
<セパレータ>
以下の5種類のセパレータを用意した:
PP01:ポリプロピレン、厚み25μm、熱収縮率40%、突き刺し伸度50%
CL01:ポリプロピレン(電子架橋あり)、厚み25μm、熱収縮率12%、突き刺し伸度2%
CL02:ポリプロピレン(電子架橋あり)、厚み25μm、熱収縮率13%、突き刺し伸度1%
CL03:ポリプロピレン(電子架橋あり)、厚み25μm、熱収縮率17%、突き刺し伸度5%
CC01:ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン積層体(酸化アルミニウムコーティングあり)、厚み20μm、熱収縮率13%、突き刺し伸度30%
なお、セパレータの熱収縮率と突き刺し伸度の測定法については後述する。
【0033】
<電解液>
エチレンカーボネート(以下、「EC」と称する。)とプロピレンカーボネート(以下、「PC」と称する。)とジエチルカーボネート(以下、「DEC」と称する。)とを、EC:PC:DEC=25:5:70(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を濃度が0.9mol/Lとなるように溶解させたものに対して、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を濃度が1重量%となるように溶解させたものを用いた。
【0034】
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記のように作製した各負極板と正極板を、各々所定サイズ(面積:253mm
2)の矩形に切り出した。このうち、端子を接続するための未塗布部にアルミニウム製の正極リード端子を超音波溶接した。同様に、正極リード端子と同サイズのニッケル製の負極リード端子を負極板における未塗布部に超音波溶接した。セパレータの両面に上記負極板と正極板とを両活物質層がセパレータを隔てて重なるようにした。この時、正極板13枚、負極板14枚を、最外層が負極板となるように積層し、これらを正極リードと負極リードがともに一辺側に揃うように配置して、電極板積層体を得た。2枚のアルミニウムラミネートフィルムの長辺の一方を除いて三辺を熱融着により接着して袋状のラミネート外装体を作製した。ラミネート外装体に上記電極積層体を挿入した。電解液を注液して真空含浸させた後、減圧下にて開口部を熱融着により封止することによって、いわゆる片タブ型の積層型リチウムイオン電池を得た。この積層型リチウムイオン電池について初期充放電を行った後、高温エージングを行い、電池容量5Ahの積層型リチウムイオン電池を得た。
【0035】
<初期充放電>
電池の残容量(以下、「SOC」と称する。)0%から100%まで、雰囲気温度55℃で、初期充放電を行った。充放電の条件は、以下の通りである:0.1C電流で4.1Vまで定電流充電(CC充電)、その後4.1Vで定電圧充電(CV充電)し、次いで0.1C電流での定電流放電(CC放電)を、2.5Vまで行う。
【0036】
<SOC−OCV(残容量−開放電圧)の測定>
電池電圧3Vの状態からSOCが50%となるまで0.2CC電流でCC充電した。この状態で1時間放置した後の電池電圧を、50%SOC−OCV(単位:V)、すなわち残容量50%の電池の開放電圧の値とした。
【0037】
<電池容量>
上記の50%SOC−OCVの値(単位:V)と、0.2c電流での充電による電池容量の値(単位:Ah)との積を、電池容量(単位:Wh)とした。
【0038】
<出力の測定>
上記の50%SOC−OCVの状態から25℃で10秒間で下限電圧(3V)に達するための最大電流値を測定した。このとき50%SOC−OCVの値と、最大電流値(単位:A)との積を、電池出力(単位:W)とした。
【0039】
<直流抵抗の測定>
電池をSOC50%となるように、0.2C電流でCC−CV充電した。この電池をそれぞれ1C電流、2C電流、および3C電流で1秒間放電し、そのまま10分間放置した。放置後の電圧を測定し、電圧降下量と印加電流とから、オームの法則に従って各放電レートにおける直流抵抗値(単位:mΩ)を算出した。これらの平均値を各電池の1秒値直流抵抗値(以下、「DCR」と称する。)とした。
【0040】
<比抵抗>
上記のDCRの値と電極総面積との積を比抵抗(単位:Ωcm
2)とした。
【0041】
<集電箔の熱容量>
電極積層体の1層あたりに使用されている集電箔
(電極集電体)の熱容量をいう(単位:mクーロン)。
【0042】
<発熱指数>
上記の比抵抗の逆数を、上記の集電箔熱容量
(電極集電体熱容量)で除したものを発熱指数とした。
【0043】
<熱収縮率>
セパレータを熱風循環式恒温槽内に懸垂して、25℃から180℃まで30分間かけて昇温し、次いで室温まで冷却した後に測定した試験片の面積を測定した。熱収縮率は、100×[(試験前のセパレータの面積)−(試験後のセパレータの面積)]/(試験前のセパレータの面積)で計算した。
【0044】
<突き刺し強度>
試料であるセパレータを固定し、試料面に直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±0.5mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定した。
【0045】
<突き刺し伸度>
JIS Z 1707(1997)に準じて測定した突き刺し強度の測定において、ピン先端がセパレータ試料に接触してから、突き刺し破断が起こるまでの、ピン先端の移動距離を測定し、100×(突き刺し破断時の試料の長さ−試験前の試料の長さ)/試験前の試料の長さで求められる値を突き刺し伸度とした。
【0046】
<引張伸度>
JIS−C−2151、ASTM−D−882に準ずる。引張試験機を用いて、速度200mm/minで引張、試料が切断(破断)したときの強度(引張荷重値を試験片の断面積で除した値)、および伸びを求めた。引張伸びは次の式によって算出した。
【0047】
[数1]
引張伸び(%)=100×(L−Lo)/Lo
(Lo:試験前の試料長さ L:破断時の試料長さ)
【0048】
<釘刺し試験>
電池を0.2C電流でSOC100%(4.2V)に達するまでCC−CV充電した。この充電した電池にSUS303(φ3mm)の先端角度20度の釘を10mm/秒の速度で突き刺した。発火が起こった場合「発火」、発煙が起こった場合「発煙」、発煙および発火とも起こらなかった場合「変化なし」と評価した。
【0049】
【表1-1】
【0050】
【表1-2】
【0051】
電池の発熱指数が大きい電池は、集電体の放熱能力よりも発熱が上回ることを意味し、電池の発熱が起こりやすい状態であることを表す。高出力電池の開発にあたっては、電池の比抵抗を低下させ放電電流を大きくする為、電流による発熱量が大きくなり発熱指数は大きくなりやすい。発熱指数が80以上である電池は、セパレータの熱収縮率が13%を超える場合釘刺し試験において発煙(たとえば比較例1〜比較例5)が観察された。ところが、発熱指数が80以上である電池であっても、熱収縮率が13%以下のセパレータを用いれば、釘刺し試験において発煙が観察されなくなることがわかった(実施例1〜6)。
【0052】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例は本発明の実施形態の一例を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を特定の実施形態あるいは具体的構成に限定する趣旨ではない。