特許第6578154号(P6578154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578154
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】シートの吊り込み構造
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/11 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   A47C31/11 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-162961(P2015-162961)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-202867(P2016-202867A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-89742(P2015-89742)
(32)【優先日】2015年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 勤
(72)【発明者】
【氏名】二川目 友世
(72)【発明者】
【氏名】上村 知行
(72)【発明者】
【氏名】長澤 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 忍
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−254934(JP,A)
【文献】 特開2003−024187(JP,A)
【文献】 実開平02−112198(JP,U)
【文献】 実開昭61−107392(JP,U)
【文献】 実開昭59−029999(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C31/00−31/12
B60N2/60
B68G7/05−7/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーストリムカバーが設けられたシート部材に対して着せ替えカバーを着脱可能に吊り込み支持するシートの吊り込み構造において、
一のファスナー半部および他のファスナー半部からなるファスナー部と、該ファスナー部に沿ってスライドし前記一のファスナー半部および他のファスナー半部を開閉するスライダー部と、を備えるオープンタイプのスライドファスナーによって構成されファスニング部材と、
前記シート部材に形成された吊り込み用の溝部において前記一のファスナー半部を前記シート部材に対して取り外し可能なように、前記一のファスナー半部を前記シート部材に留め付ける留付部材と、を有し、
前記他のファスナー半部と前記着せ替えカバーとが固着部で固着されている
ことを特徴とするシートの吊り込み構造。
【請求項2】
前記留付部材は前記ベーストリムカバーを貫通している、請求項1に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項3】
前記シート部材内部に、前記留付部材を係止させるインサート部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項4】
前記一のファスナー半部のうち少なくとも前記留付部材により前記シート部材に留め付けられる部分が補強部により補強されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項5】
前記補強部は、前記一のファスナー半部に一体成形された樹脂製の補強部材からなることを特徴とする請求項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項6】
前記補強部は、前記一のファスナー半部に取り付けられた補強部材からなることを特徴とする請求項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項7】
前記補強部は、袋状に縫製された前記一のファスナー半部に挿通された補強部材からなることを特徴とする請求項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項8】
前記補強部材または前記一のファスナー半部に、前記留付部材による留め付け位置を示す留め付け位置表示部が設けられていることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のシートの吊り込み構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの吊り込み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートを構成する座あるいは背もたれは、一般に、発泡材料からなるクッション材、該クッション材を覆うトリムカバー等からなる。また、ワディングや、使用者の好みに合わせて替えることができる着脱可能な着せ替えカバーをさらに備えるシートも利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、シートクッション本体に吊り込み用の溝部を形成し、そこに設けたスライドファスナーでカバー体をシートクッション本体に着脱可能とした車両用シートが提案されている。ここでは、スライドファスナーの一方のファスナー片を、シートクッション本体の側周面と着座面に形成されている溝部とに取り付け、他方のファスナー片を、一方のファスナー片と係合可能にカバー体の周縁と内面部とに取り付けている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02−141256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の車両用シートにおいては、ベーストリムカバー(特許文献1では、シートクッション本体を包み込むメインパッドカバー、およびパッドのサイド部を覆うサイドパッドアッパーカバーが相当)に縫合されたスライドファスナーでトリムカバー(カバー体)を着脱可能として着せ替えできるようにした構造を採用していることから、スライドファスナーが破損するとベーストリムカバーごと交換が必要になり、補修コストが嵩んでしまう。
【0006】
本発明は、着せ替えカバーを着脱するためのファスニング部材が破損した場合に、ベーストリムカバーを交換することなく当該ファスニング部材のみの交換を可能として補修コストを抑えるシートの吊り込み構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するべく、本発明は、ベーストリムカバーが設けられたシート部材に対して着せ替えカバーを着脱可能に吊り込み支持するシートの吊り込み構造において、
一のファスナー半部および他のファスナー半部からなるファスナー部と、該ファスナー部に沿ってスライドし前記一のファスナー半部および他のファスナー半部を開閉するスライダー部と、を備えるオープンタイプのスライドファスナーによって構成され、前記ベーストリムカバーとは縫合されていないファスニング部材と、
前記シート部材に形成された吊り込み用の溝部において前記一のファスナー半部を前記シート部材に留め付ける留付部材と、
を有し、
前記他のファスナー半部と前記着せ替えカバーとが固着部で固着されていることを特徴とする。
【0008】
この吊り込み構造においては、ファスニング部材はベーストリムカバーに縫合されていないことから、これらベーストリムカバーとファスニング部材とが互い独立しており、ベーストリムカバーはそのままに、留付部材による留め付けを解除してファスニング部材のみを交換することが可能となっている。このため、ファスニング部材が破損した場合に、ベーストリムカバーを交換することなくファスニング部材のみを交換することができる。
【0009】
前記シート部材内部に、前記留付部材を係止させるインサート部材が設けられていることが好ましい。インサート部材に留付部材の一方を係止させることで、留付部材がより抜けづらい状態となる。
【0010】
前記一のファスナー半部のうち少なくとも前記留付部材により前記シート部材に留め付けられる部分が補強部により補強されていることが好ましい。この場合、吊り込みのテンションを一定に保ちやすくなる。
【0011】
前記補強部は、前記一のファスナー半部に一体成形された樹脂製の補強部材からなるものであってもよい。樹脂一体成形によれば補強部材に要するコストを抑えることができる。
【0012】
前記補強部は、前記一のファスナー半部に取り付けられた補強部材からなるものであってもよい。
【0013】
前記補強部は、袋状に縫製された前記一のファスナー半部に挿通された補強部材からなるものであってもよい。
【0014】
また、前記補強部材または前記一のファスナー半部に、前記留付部材による留め付け位置を示す留め付け位置表示部が設けられていてもよい。この吊り込み構造によれば、当該留め付け位置表示部を目印にして所定の数の留付部材を適度な間隔で留め付けることができる。
【0015】
さらに、本発明は、シート部材に対して着せ替えカバーを着脱可能に吊り込み支持するシートの吊り込み構造において、
一のファスナー半部および他のファスナー半部からなるファスナー部と、該ファスナー部に沿ってスライドし前記一のファスナー半部および他のファスナー半部を開閉するスライダー部と、を備えるオープンタイプのスライドファスナーによって構成されたファスニング部材と、
前記シート部材に形成された吊り込み用の溝部において前記一のファスナー半部を前記シート部材に留め付ける留付部材と、
を有し、
前記他のファスナー半部と前記着せ替えカバーとが固着部で固着されている、というものである。
【0016】
前記シート部材内部に、前記留付部材を係止させるインサート部材が設けられていることが好ましい。インサート部材に留付部材の一方を係止させることで、留付部材がより抜けづらい状態となる。
【0017】
前記一のファスナー半部のうち少なくとも前記留付部材により前記シート部材に留め付けられる部分が補強部により補強されていることが好ましい。この場合、吊り込みのテンションを一定に保ちやすくなる。
【0018】
前記補強部は、前記一のファスナー半部に一体成形された樹脂製の補強部材からなるものであってもよい。樹脂一体成形によれば補強部材に要するコストを抑えることができる。
【0019】
前記補強部は、前記一のファスナー半部に取り付けられた補強部材からなるものであってもよい。
【0020】
前記補強部は、袋状に縫製された前記一のファスナー半部に挿通された補強部材からなるものであってもよい。
【0021】
また、前記補強部材または前記一のファスナー半部に、前記留付部材による留め付け位置を示す留め付け位置表示部が設けられていてもよい。この吊り込み構造によれば、当該留め付け位置表示部を目印にして所定の数の留付部材を適度な間隔で留め付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、着せ替えカバーを着脱するためのファスニング部材が破損した場合に、ベーストリムカバーを交換することなく当該ファスニング部材のみの交換ができることから、その際に要する補修コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るシートの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のII-II線における背もたれ(シート部材)の吊り込み構造を示す断面図である。
図3】補強部の一例とともにファスニング部材等の構成を示す斜視図である。
図4】補強部の別の構成例を示すファスニング部材等の斜視図である。
図5】補強部のさらに別の構成例を示すファスニング部材等の斜視図である。
図6】ベーストリムカバーを、Cリングでファスニング部材を留め付けると同時にクッション材に固定した場合の背もたれ(シート部材)の吊り込み構造を示す断面図である。
図7】本発明の別の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシートの吊り込み構造の好適な実施形態について詳細に説明する(図1図5参照)。
【0025】
シート1は、車両のフロアパネル上で前後に移動可能な座2と、座2に対してリクライニング可能な背もたれ3とを備える。座2および背もたれ3は、それぞれ、シート1を構成するシート部材であり、発泡体からなるクッション材4を備えている。また、座2および背もたれ3には、吊り込み構造10を利用して着せ替えカバー7の着脱が可能となっている。座2と背もたれ3には、吊り込み構造10を構成するライン状の吊り込み溝11が複数設けられている(図1参照)。
【0026】
ここで、背もたれ3を例に挙げて説明する。背もたれ3を構成するクッション材4は、乗員の背中を後方から支持するためのメインクッション部41と、乗員の背中を横から保持するためのサイドクッション部42とを有している(図2参照)。クッション材4の表面には、ベーストリムカバー6が例えば接着あるいは一体発泡成形により被覆されている。
【0027】
着せ替えカバー7は、クッション材4のメインクッション部41上に載置される主面部71と、サイドクッション部42に載置されるサイド面部72と、によって形成されている(図2参照)。着せ替えカバー7の主面部71とサイド面部72は、互いの表面どうしを接触させた状態で縫合部74によって接合されており、表面が着座者の側、裏面がクッション材4側を向いてクッション材4およびベーストリムカバー6に被せられたとき、縫合部74および着せ替えカバー7の該縫合部74から先の部分が表面側に露出しない(図2参照)。
【0028】
また、ファスニング部材5を用いて吊り込み溝11で吊り込み支持された着せ替えカバー7は、その外周部を、外周部着せ替えファスナー8によって背もたれ3あるいは座2に取り付けられる。なお、本明細書および図面では外周部着せ替えファスナー8の配置例のみ図示し(図1参照)、その構造についての説明は省略する。また、特に図示していないが、ベーストリムカバー6と着せ替えカバー7との間にワディングが設けられてもよい。
【0029】
着せ替えカバー7を吊り込み支持する吊り込み構造10は、ファスニング部材5、吊り込み溝11、インサートワイヤー16、Cリング18で構成される(図3等参照)。
【0030】
吊り込み溝11は、メインクッション部41とサイドクッション部42との境界部分に沿って背もたれ2の縦方向に所定の深さに形成された凹部12からなるもので、シート1の外観を形成するとともに、着せ替えカバー7の吊り込みに用いられるファスニング部材5のうちベース側テープ部(一のファスナー半部)511を格納する。通常時、凹部12は、クッション材4の弾力によってメインクッション部41とサイドクッション部42との間で圧迫され塞がった状態となるが、便宜上、図2においては理解しやすいように拡がった状態の凹部12を示している。
【0031】
なお、背もたれ3には、上述した吊り込み溝11の他、横方法(背もたれ3の幅方向)に沿って延びる吊り込み溝11がさらに設けられ、また、座2にも吊り込み溝11が設けられているが(図1参照)、本実施形態では上述したように縦方向に形成された凹部12からなる吊り込み溝11を例に説明を続ける。
【0032】
ファスニング部材5は、クッション材4に形成された吊り込み溝11において着せ替えカバー7を着脱可能とする部材である。本実施形態のファスニング部材5は、ファスナー部51とスライダー部52とを含むスライドファスナー50によって構成されている(図2図3参照)。吊り込み溝11に対し、このファスニング部材5のファスナー部51のカバー側テープ部512(他のファスナー半部)を凹部12の深さ方向Dに差し入れ、ベース側テープ部511と噛合させてファスニング部材5を締結させることで、シート1に着せ替えカバー7を吊り込み固定することができる。
【0033】
スライドファスナー50のファスナー部51は、ベース側テープ部511およびカバー側テープ部512からなる。ベース側テープ部511およびカバー側テープ部512は、互いに噛合するエレメント(務歯)511B,512Bと、蝶棒(図3図5ではカバー側テープ部512の蝶棒512Cのみ図示)とを備えている(図3等参照)。
【0034】
スライドファスナー50のスライダー部52は、エレメント511B,512Bが並ぶ方向(以下、スライド方向と呼び符号Sで表す)に沿ってファスナー部51上をスライドし、ベース側テープ部511のエレメント511Bとカバー側テープ部512のエレメント512Bとを噛合してファスニング部材5を締結状態とし、あるいは、噛合を解除してファスニング部材5の締結を解く。
【0035】
カバー側テープ部512は、縫合部74において着せ替えカバー7の主面部71およびサイド面部72とともに縫合され、着せ替えカバー7に固着されている(図2図3等参照)。なお、ここでは縫合される場合を例示しているが、代わりに溶着等により固着されていても構わない。
【0036】
ベース側テープ部511の縁部(ベース側テープ部511が幅広であって凹部12の深さ方向Dに長く延びる場合にはその途中)には補強部53が形成されている。補強部53は、ベース側テープ部511のうち少なくともCリング18によりクッション材4に留め付けられる部分を補強し、ベース側テープ部511が破れるのを防ぎ、吊り込み時に作用するテンションを一定に保ちやすくする。
【0037】
補強部53の具体的構成は特に限定されないが、一例を挙げると、ベース側テープ部511に一体成形した樹脂製の補強部材53Aで構成したものとすることができる(図3参照)。樹脂一体成形によれば補強部材53Aの形成に要するコストを抑えやすい。
【0038】
別の例を挙げると、帯状の樹脂等のプレート材を縫合、接着等によりベース側テープ部511に取り付けて形成した補強部材53Bで補強部53を構成することもできる(図4参照)。
【0039】
さらに別の例を挙げると、ベース側テープ部511の端部を袋状に縫製してループ511Lを形成し、このループ511Lにワイヤー等の線状の補強部材53Cを挿通することによって補強部53を構成することもできる(図5参照)。
【0040】
また、上述のごとき補強部53に、Cリング18を留め付ける際の留め付け位置を示す留め付け位置表示部54が設けられていれば、当該留め付け位置表示部54を目印にして所定の数のCリング18を所定位置に適度な間隔で留め付けることができる。例えば図4に示すファスニング部材5においては、補強部材53Bの一部を切り欠いて留め付け位置表示部54を形成している(図4参照)。図示はしていないが、上述した補強部材53A(図3参照)にも同様に留め付け位置表示部54を形成することができる。あるいは、上述したループ511L(図5参照)に印を付ける等、ベース側テープ部511に留め付け位置表示部54を形成することもできる。
【0041】
インサートワイヤー16は、背もたれ2のクッション材4の内部であって、凹部12の底から所定量深い部分に埋設されている(図2参照。なお、図2では、凹部12の溝深さ方向を符号Dで表している)。ここでいう所定量は、Cリング18でファスニング部材5のベース側テープ部511とインサートワイヤー16とを留め付ける際、当該Cリング18のサイズ等を考慮して留め付けに適した量である(図2参照)。
【0042】
なお、図ではインサートワイヤー16の具体的形状を示していないが、インサートワイヤー16は、凹部12が形成された方向(本実施形態であれば、メインクッション部41とサイドクッション部42との境界部分に沿った縦方向)に真っ直ぐ延びるワイヤーであってもがよいし、Cリング18が留め付けられる部分が凹部12寄りにクランク状に曲折したワイヤーであってもよい。
【0043】
Cリング18は、吊り込み溝11においてファスニング部材5のベース側テープ部511をシート部材に留め付ける。特に図示しないが、Cリング締結用の専用の工具を使うことによってCリング18を吊り込み溝11内の所定位置に簡単に留め付けることができる。Cリング18は略C字形であり、一端が、ベーストリムカバー6に包まれた状態のベース側テープ部511を当該ベーストリムカバー6ごと突き抜けて引っ掛けられ、他端がクッション材4に突き刺されてインサートワイヤー16に引っ掛けられ、押圧されて変形し、両者を締結する(図2参照)。
【0044】
なお、背もたれ3の他の吊り込み溝11および座2における吊り込み溝11、並びにこれらによって構成される吊り込み構造10は、図2に示した吊り込み溝11および吊り込み構造10と同様の構成になっているため、これらについての説明は省略する。
【0045】
ここまで説明した本実施形態のシート1の吊り込み構造10においては、ファスニング部材5がベーストリムカバー6に縫合されていない(換言すれば、ファスニング部材5(のベース側テープ部511)をクッション材4に留め付けるCリング18がベーストリムカバー6を貫通しているにすぎない)ので、これらベーストリムカバー6とファスニング部材5とは互い独立しており分離可能である。したがって、ファスニング部材5が破損した場合、Cリング18を取り外して留め付けを解除し、ベーストリムカバー6はそのままに、ファスニング部材5だけを取り外して交換することができる。すなわち、ベーストリムカバー6を交換することなくファスニング部材5のみを交換することができるので、当該ファスニング部材5の破損時に必要となる補修コストを抑えることができる。
【0046】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本発明に係るシート1は、自動車用シートのほか、航空機用シート、旅客船用シートなどに利用することができる。
【0047】
また、上述した実施形態のごとく、クッション材4にインサートワイヤー16等のインサート部材が設けられていることが、吊り込み構造10によるクッション材4の局所的変形を緩和し、Cリング18が動きづらくあるいは抜けづらくしうる点で好ましいが、クッション材4のみでもCリング18を堅固に留め付けることが可能であれば、必ずしもインサート部材が設けられていなくてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態におけるCリング18はファスニング部材5(のベース側テープ部511)とインサートワイヤー16とを締結する留付部材の好適な一例にすぎず、この他の形状のリング、あるいはその他種々の留付具を利用することができる。
【0049】
また、上述した実施形態では、クッション材4の表面にベーストリムカバー6が例えば接着あるいは一体発泡成形により被覆されている場合を例示したが(図2参照)、これは好適な一例にすぎない。この他、例えば、ベーストリムカバー6を、Cリング18でファスニング部材5を留め付けると同時にクッション材4に固定することもできる(図6参照)。
【0050】
さらには、ベーストリムカバー6がないシート1の吊り込み構造10に本発明を適用することもできる(図7参照)。このシート1においては、スライドファスナー50が破損したとしても、そもそもベーストリムカバーがないので、ベーストリムカバーごと交換するという作業自体不要であり、上述した実施形態と同様、Cリング18を取り外して留め付けを解除し、ファスニング部材5だけを取り外して交換することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ベーストリムカバー付きのシート部材に対して着せ替えカバーを着脱可能とするシートの吊り込み構造に適用して好適である。
【符号の説明】
【0052】
1…シート
2…座(シート部材)
3…背もたれ(シート部材)
4…クッション材
5…ファスニング部材
6…ベーストリムカバー
7…着せ替えカバー
10…吊り込み構造
11…吊り込み溝(吊り込み用の溝部)
16…インサートワイヤー(インサート部材)
18…Cリング(留付部材)
50…スライドファスナー
51…ファスナー部
52…スライダー部
53…補強部
53A,53B,53C…補強部材
54…留め付け位置表示部
74…縫合部(固着部)
511…ベース側テープ部(一のファスナー半部)
512…カバー側テープ部(他のファスナー半部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7