(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー部の収縮時の軸方向に延在する折り返し部の少なくとも一部が、前記カバー部の拡張時の前記重なり部に変形可能な請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療デバイス。
前記シース内に収容されて前記シャフト部が貫通する管体であり、前記シース内の拡張部およびカバー部が通り抜け不能な内径で形成されて前記拡張部およびカバー部を前記シースから押し出す押圧シャフトをさらに有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
本発明の実施形態に係る医療デバイス10は、血管内の血栓やプラークなどの物体を吸引除去するために、血管内の流れを抑制するために用いられる。なお、本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。また、除去する物体は、必ずしも血栓やプラークに限定されず、生体管腔内に存在し得る物体は、全て該当し得る。
【0012】
本発明の実施形態に係る医療デバイス10は、
図1、2に示すように、血管内の血液の流れを規制する規制器具20と、規制器具20を収納可能なシース30と、規制器具20をシース30から押し出すために使用される押圧シャフト40とを備えている。
【0013】
規制器具20は、
図3、4に示すように、複数の間隙21Aを備える弾性的に変形可能な網状の管体である拡張部22と、拡張部22の外周を囲むカバー部70と、拡張部22およびカバー部70を貫通する長尺なシャフト部23とを備えている。
【0014】
シャフト部23は、
図1〜6に示すように、長尺なワイヤ部24と、ワイヤ部24の遠位部に固定されてガイドワイヤルーメン26が内部に形成されるガイドワイヤ用管体25とを備えている。ガイドワイヤ用管体25は、拡張部22の遠位部に設けられる内管54の内周面57、または拡張部22の近位部に設けられる内管64の内周面67のいずれか(本実施形態では内周面67)が固定される。ガイドワイヤ用管体25は、ワイヤ部24が挿入されて固定されるワイヤ用貫通孔27が、ガイドワイヤルーメン26と平行に形成されている。なお、ワイヤ部24の先端24aが、拡張部22の近位部の内管64の内周面67に固定されてもよい。このとき、シャフト部23のワイヤ部24とガイドワイヤ用管体25は別体である。
【0015】
シャフト部23を構成するワイヤ部24の構成材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、形状記憶合金などが好適に使用できる。シャフト部23を構成するガイドワイヤ用管体25の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料やステンレス鋼、形状記憶合金などが好適に使用できる。
【0016】
拡張部22は、
図4に示すように、隙間を有する管体を構成するように網状に編組される柔軟に変形可能な複数の線材21と、シャフト部23のガイドワイヤ用管体25に接続される遠位側接続部50および近位側接続部60を備えている。遠位側接続部50または近位側接続部60の内管54、64の内周面57、67のいずれか一方(本実施形態では内周面67)で、シャフト部23のガイドワイヤ用管体25の外周面が固定される。内周面57、67の他方(本実施形態では内周面57)は、ガイドワイヤ用管体25の外周面が固定されておらず、摺動可能に設置されている。拡張部22は、複数の線材21を編組することによって線材21同士の間に間隙21Aを有するように管状に形成される。
【0017】
拡張部22は、
図4(A)に示すように、外力が作用しない自然状態において、線材21の自己の弾性力(復元力)により拡径した拡張状態と、
図4(B)に示すように、弾性的に変形して外径が小さくなる収縮状態とに変形可能である。拡張部22は、拡張部近位部から遠位側に向かって内外径がテーパ状に大きくなる拡張部22の近位側テーパ部22Aと、拡張部22の近位側テーパ部22Aの遠位側に位置して外径が略一定の拡張部中央部22Bと、拡張部中央部22Bから遠位側に向かって内外径がテーパ状に減少する拡張部22の遠位側テーパ部22Cとを備えている。拡張部中央部22Bは、拡張することでカバー部70を血管内壁に押し付ける部位である。なお、拡張することでカバー部70を血管内壁に押し付ける拡張部中央部は、軸方向に複数に分かれて設けられてもよい。カバー部70に覆われる前における拡張部22の自己拡張力により拡張した際の最大外径は、カバー部70の最大外径よりも大きい。
【0018】
近位側接続部60は、
図3〜5に示すように、線材21の内側に位置する内管64と、線材21の外側に位置する外管65と、内管64および外管65を端部にて結合する結合部66とを備え、内管64および外管65の間に、線材21が挟まれて固定されている。近位側接続部60は、内管64がガイドワイヤ用管体25に固着されている。なお、線材21を固定できるのであれば、結合部66は設けられなくてもよい。
【0019】
遠位側接続部50は、線材21の内側に位置する内管54と、線材21の外側に位置する外管55と、内管54および外管55を端部にて結合する結合部56とを備え、内管54および外管55の間に、線材21が挟まれて固定されている。遠位側接続部50は、内管54の内側にガイドワイヤ用管体25が摺動可能に挿入されることで、内管54とガイドワイヤ用管体25の間に隙間を有し、ガイドワイヤ用管体25に対して相対的に軸方向へ移動可能となっている。なお、線材21を固定できるのであれば、結合部56は設けられなくてもよい。内管54とガイドワイヤ用管体25の間の隙間は、0.01〜1.0mmであることが好ましい。
【0020】
遠位側接続部50は、拡張部22が拡張状態となることで、ガイドワイヤ用管体25に対して近位側へ摺動して近位側接続部60に近づき(
図3(A)、
図4(A)を参照)、拡張部22が収縮状態となることで、ガイドワイヤ用管体25に対して遠位側へ摺動して近位側接続部60から離れる(
図3(B)、
図4(B)を参照)。遠位側接続部50が近位側接続部60に対して近接または離間可能であることで、編組された拡張部22の外径を大きく変化させることが可能となっている。
【0021】
線材21の数は、特に限定されないが、例えば4〜72本である。また、線材21の編組の条件は、特に限定されない。
【0022】
線材21の外径は、線材21の材料や拡張部22の用途により適宜選択可能であるが、例えば20〜300μmである。
【0023】
線材21は、異なる外径の線材21Bおよび線材21Cを備えることが好ましい。線材21Bは、線材21Cよりも外径が大きい。線材21Bの外径は、例えば200μmであり、線材21Cの外径は、例えば120μmである。本実施形態では、2本の線材21Bと1本の線材21Cが交互に配置され、16本の線材21Bと、8本の線材21Cが用いられている。拡張部22に外径の異なる線材21B、21Cを用いることで、拡張部22を収縮させてシース30に収容する際に、細い線材21Cがカバー部70を介してシース30の内壁面に接触し難くなり、したがって網目の交点の位置がずれ難くなり、拡張部22の形状が安定する。太い線材21Bが細い線材21Cよりも多い場合、拡張部22の拡張力を大きく保つことができ、形状が安定する。なお、太い線材の数は、細い線材より少なくても、細い線材と同数であってもよい。太い線材が細い線材よりも少ない場合、拡張部が柔軟となって、生体管腔の形状に追従させやすくなる。
【0024】
線材21の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、白銀(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。複数の材料を組み合わせた構造としては、例えば、造影性を付与するためにPtからなる芯線にNi−Ti合金を被覆した構造や、Ni−Ti合金からなる芯線に金メッキを施した構造が挙げられる。
【0025】
外管55、65の外径は、特に限定されないが、例えば0.3〜3.0mmである。内管54、64の内径は、特に限定されないが、例えば0.1〜2.0mmである。
【0026】
内管54、64および外管55、65の構成材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、形状記憶合金などが好適に使用できる。
【0027】
拡張部22の最大外径は、適用する血管の内径に応じて適宜選択可能であるが、例えば、1〜40mmである。拡張部22の収縮状態における外径は、適用する血管の内径に応じて適宜選択可能であるが、例えば、0.3〜4.0mmである。拡張部22の収縮状態における軸方向への長さは、適用する血管に応じて適宜選択可能であるが、例えば、20〜150mmである。
【0028】
カバー部70は、
図3に示すように、拡張部22の全体の外周を覆うように薄いフィルムにより管状に形成された部材である。
【0029】
カバー部70は、近位側接続部60の外周面に固着されるカバー近位部71と、遠位側接続部50の外周面に固着されるカバー遠位部75とを備えている。カバー部70は、さらに、カバー近位部71から遠位側に向かって内外径がテーパ状に大きくなる近位側テーパ部72と、近位側テーパ部72の遠位側に位置して外径が略一定のカバー中央部73と、カバー中央部73から遠位側に向かって内外径がテーパ状に減少する遠位側テーパ部74とを備えている。カバー部70はカバー近位部71およびカバー遠位部75でのみ拡張部22に固着され、近位側テーパ部72、カバー中央部73および遠位側テーパ部74は、拡張部22に固着されず、拡張部22を覆うのみである。したがって、カバー部70は、両端部を除き、拡張部22から独立して変形可能であり、接触しないよう拡張部22からに離間することもできる。このため、拡張部22とカバー部70は、拡張時および収縮時で、互いに接触する位置が異なる。また、カバー部70が拡張部22から独立して変形可能であるため、拡張部22を構成する線材21の交差角度がカバー部70により阻害されずに変化でき、拡張部22が柔軟に変形可能となっている。また、拡張部22は、線材21の交差角度が変化しつつ外径が変化するため、拡径すると軸方向の長さが短くなるのに対し、カバー部70は、薄くても破損しないように強度の高い材料で成形され、軸方向の長さは拡張部22ほど変化しない。
【0030】
カバー部70は、
図3(B)に示すように、収縮する際には、重なるように折り返される折り返し部77が生じるように縮径し、皺状に形成される折り返し部77の縁部が、軸方向に延在する。折り返し部77は、周方向に複数形成されるとともに、カバー部70の軸方向の全長にわたって形成されるのではなく、カバー部70の軸方向の全長よりも短く断続的に形成されて、軸方向に複数形成されることが好ましい。なお、各々の折り返し部77は、カバー部70の軸方向の全長にわたって形成されてもよい。カバー部70は、軸方向の長さの変化が拡張部22よりも小さいため、拡張部22の軸方向の長さが長くなる収縮状態において、軸方向長さが、拡張部22と同じまたはわずかに長く設定される。この状態において、カバー部70に、軸方向に折り返すように重なる重なり部78(
図3(A)を参照)は形成されない。
【0031】
また、カバー部70は、
図3(A)に示すように、拡張する際には、折り返し部77が延ばされて、折り重なる部位が減少するように拡径する。すなわち、カバー部70は、内周面同士が接するように周方向に折り重なる折り返し部77が形成され、または折り返し部77が延ばされることで、外径が変化する構造となっている。なお、カバー部70は、拡張時に、折り返し部77が完全に延ばされずに、折り重なる部位が部分的に残ってもよい。そして、拡張状態において、拡張部22の軸方向の長さが短くなるため、カバー部70は、拡張状態における軸方向の余分な長さを利用して、軸方向に折り重なる少なくとも1つの重なり部78を形成することができる。また、血管径が拡張部22の自然状態における最大径よりも小さいとき、重なり部78が形成され、折り返された重なり部78の一方の面は血管内壁と接触し、重なり部78のもう一方の面はカバー部70の外表面と接触としてもよい。カバー部70は、重なり部78が形成されやすいように、重なり部78を形成したい位置に、折り重ねた状態で加熱して予め形状付けされた予備形状部79を有してもよい。
【0032】
カバー部70の遠位側テーパ部74には、少なくとも1つの孔部76が形成される。孔部76は、カバー部70が拡張して内部の体積が増加する際に、血液を内部に流入させ、カバー部70が収縮して内部の体積が減少する際に、血液を外部へ放出する役割を果たす。孔部76が、遠位側テーパ部74に形成されることで、カバー中央部73が血管の内壁面と接触しても、孔部76が塞がれず、血液を良好に流通させることができる。孔部76の径は、特に限定されないが、例えば0.1〜2mmである。
【0033】
カバー部70は、血管内の血栓を後述する除去デバイス100により効果的に吸引して除去できるように、血流を規制する役割を果たす。したがって、カバー部70は近位側に孔部が設けられず、血液をカバー部70の近位側から遠位側へ通過させないことが好ましい。
【0034】
カバー部70の最大内径は、拡張部22がカバー部70に覆われない状態で拡張した状態における最大外径よりも小さい。すなわち、カバー部70は、拡張部22を囲むことで、拡張部22の拡径を強制的に抑えている。このため、カバー部70が拡張した状態であっても、拡張部22による拡張力を効果的に発揮させることができる。カバー部70のカバー中央部73の拡張状態における最大外径は、適用する血管の内壁面に接触できるように、適用する血管の内径よりも大きい。
【0035】
また、カバー部70は、
図6に示すように、シース30へ挿入する前に、軸方向に対して折り返し部77に角度をつけ、軸方向に対して斜めの折り返し部77を円周方向に複数設けてもよい。これにより、カバー部70は、シース30へ挿入する際またはシース30から放出する際に、ねじりながら挿入および放出しやすくなり、カバー部70の挿入および放出の際の抵抗を小さくすることができる。なお、カバー部70は、伸縮性の高い材料により形成されて、折り返し部を生じすることなしに、拡径および縮径可能であってもよい。
【0036】
カバー部70のカバー中央部73の拡張状態における最大外径は、適用する血管の内径よりも大きく、適用する血管に応じて適宜選択可能であるが、例えば、1〜40mmである。カバー部70の収縮状態における最大外径は、適用する血管の内径よりも小さく、適用する血管に応じて適宜選択可能であるが、例えば、0.3〜4.0mmである。拡張部22の収縮状態における軸方向への長さは、適用する血管に応じて適宜選択可能であるが、例えば、20〜150mmである。
【0037】
なお、カバー部70の外径が大きすぎると、カバー部70をシース30に収容した際に、シース30内の収容スペースが不十分となり、カバー部70をシース30に収容する際の抵抗およびシース30から放出する際の抵抗が大きくなる。このため、カバー部70の外径は、必要最小限であることが好ましい。
【0038】
また、カバー部70が軸方向に長すぎると、カバー部70をシース30に収容した際に、シース30内の収容スペースが不十分となり、カバー部70をシース30に収容する際の抵抗およびシース30から放出する際の抵抗が大きくなる。このため、カバー部70の長さは、必要最小限であることが好ましい。
【0039】
カバー部70の構成材料は、薄く、変形させても破損しないように強度があり、かつシース30内で摺動できるように摩擦抵抗が小さいことが好ましく、例えばポリエチレン等を適用できる。カバー部70の厚さは、特に限定されないが、例えば5〜30μmである。カバー部70は、拡張状態における軸方向の長さにおいて、拡張部22を完全に覆っている。なお、カバー部は、拡張部22を完全に覆わず、拡張部22の一部のみを覆ってもよい。
【0040】
カバー部70は、フィルム状の部材でなくてもよく、例えば、メッシュ状の膜体や、線材が編組された編組体であってもよい。
【0041】
カバー部70の内側面には、滑り性を向上させるために、シリコーン樹脂やテフロン(登録商標)などのフッ素系樹脂、親水性ポリマー等を被覆してもよい。親水性ポリマーは、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等である。カバー部70の内側面の滑り性を向上させることで、カバー部70を血管内で拡張させた後、シース30内に引き込むこと(リトラクト)が容易となる。なお、滑り性を向上させる処置は、カバー部70の内周面のみならず、血管壁に対する接触力が必要となるカバー中央部73を除く範囲のカバー部70の外周面に施されてもよい。これにより、カバー部70を血管内で拡張させた後、シース30内に引き込むことがより容易となる。
【0042】
シース30は、
図1、2に示すように、シース管体31と、ハブ32と、耐キンクプロテクタ33とを備えている。シース管体31は、規制器具20を収容可能なルーメン34を備えており、遠位側端部に形成される管体開口部36において開口している。ハブ32は、シース管体31の近位側端部に固定されており、ルーメン34と連通するハブ開口部35を備えている。耐キンクプロテクタ33は、シース管体31およびハブ32の連結部位を覆う柔軟な部材であり、シース管体31のキンクを抑制する。
【0043】
シース管体31の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。シース管体31は、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
【0044】
押圧シャフト40は、シース30のルーメン34内に収容可能な管体であり、内部に規制器具20のワイヤ部24を挿入可能な押し出し用ルーメン41が形成されている。押し出し用ルーメン41の内径は、規制器具20の近位側接続部60の外径よりも小さい。このため、押し出し用ルーメン41内に近位側接続部60が入り込めず、したがって、押圧シャフト40により、近位側接続部60を遠位方向へ押圧することができる。
【0045】
次に、血管内に挿入して血栓を除去するための除去デバイス100について説明する。
【0046】
除去デバイス100は、
図8〜10に示すように、長尺に形成されるシャフト本体110と、シャフト本体110を納めると共に、シャフト本体110に対して軸方向に摺動自在な最外シース体120と、第2ガイドワイヤルーメン171が形成されるガイドワイヤ用管体170とを備えている。除去デバイス100は、さらに、シャフト本体110を回転させることが可能な回転駆動部130と、シャフト本体110の近位側端部に設けられるハブ140と、ハブ140の近位側に接続されるシリンジ150とを有している。
【0047】
シャフト本体110は、それぞれ長尺中空状に形成されたシャフト外管111とシャフト内管112によって形成されている。シャフト外管111とシャフト内管112は、各々内部に内腔を有している。シャフト外管111の内径はシャフト内管112の外径よりも大きく、シャフト内管112はシャフト外管111の中空内部に納められている。また、シャフト内管112は、シャフト外管111に対して、軸方向に移動可能となっている。
【0048】
シャフト外管111は、遠位側端部がシャフト本体110の遠位部を形成し、近位側端部が回転駆動部130に位置している。シャフト内管112は、近位側端部がシャフト外管111の近位側端部よりもさらに近位側まで伸びており、ハブ140に接続されている。ハブ140に接続されたシリンジ150によって、シャフト内管112の中空内部を吸引し、負圧状態とすることができる。
【0049】
ガイドワイヤ用管体170は、シャフト外管111に沿ってシャフト外管111に固着されて配置される。ガイドワイヤ用管体170には、ガイドワイヤを挿入可能な第2ガイドワイヤルーメン171が形成されている。
【0050】
シャフト外管111は、柔軟で、かつ近位側から作用する回転の動力を遠位側に伝達可能な特性を持つ材料、シャフト内管112は、柔軟で、かつ近位側から作用する前後の往復運動の動力を遠位側に伝達可能な特性を持つ材料によって形成される。例えば、シャフト外管111およびシャフト内管112の構成材料は、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、またはこれらの組み合わせに線材などの補強部材が埋設されたものが用いられる。
【0051】
また、最外シース体120の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
【0052】
シャフト外管111の遠位部には撹拌部113が設けられている。撹拌部113は、シャフト外管111の周面に対して固定される基部113Aを近位側と遠位側に2箇所有し、これら基部113A間に複数の螺旋部113Bが渡されている。各螺旋部113Bは、軸方向においていずれも同じ方向に向かう捻りを施されており、基部113Aに対する固定位置が周方向に異なると共に、湾曲する軸方向位置がそれぞれ異なることにより、撹拌部113は、全体としては周方向に均一な膨らみを有する形状となるように形成されている。シャフト外管111が回転すると、それに伴い撹拌部113も回転し、血管内の血栓を破砕したり、あるいは破砕した血栓を撹拌したりすることができる。
【0053】
撹拌部113を構成する螺旋部113Bは、可撓性を有する金属製の細線によって形成されている。シャフト本体110を目的部位に挿入するまでは、撹拌部113は最外シース体120の内部に納められた状態となっている。シャフト本体110を目的部位まで挿入した後、最外シース体120を近位側に摺動させることで、撹拌部113が最外シース体120の外部に露出し、拡張して
図8に示すような形状となる。このため、螺旋部113Bは、形状記憶性を有した材料で形成されることが望ましい。螺旋部113Bとして、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。
【0054】
回転駆動部130は、駆動モータ131と、駆動モータ131をシャフト本体110のシャフト外管111と連係させるギア部132とを有しており、駆動モータ131を回転させることで、シャフト外管111を周方向に回転させることができる。本実施形態では、シャフト外管111は周方向の正負二方向に向かって交互に回転するように、駆動モータ131によって駆動される。正負二方向に向かって交互に回転することで、血流が交互に反対方向を向くことができる。
【0055】
シャフト外管111の遠位部近傍には、軸方向に沿って長孔状の開口部160が形成されており、シャフト外管111の内外が連通している。シャフト外管111の遠位部には、中空内部を塞ぐような円筒状の当接部161が設けられていて、これによってシャフト外管111の遠位部は閉塞されている。当接部161の近位面は、シャフト内管112の遠位面と対向する当接面161Aとなっている。当接面161Aは、シャフト外管111の開口部160の遠位側端部よりも遠位側に位置している。当接部161はステンレス等によって形成される。
【0056】
シャフト内管112は、シャフト外管111の開口部160の近位側端部の位置またはそれよりも近位側の位置に、遠位側端面が位置している。シャフト内管112の遠位側端部には、中空内部に切断部162が設けられている。切断部162は、金属製の薄板によって形成され、シャフト内管112の直径に相当する幅を有し、遠位には鋭利な刃部162Aが形成されている。
【0057】
図9に示すように、刃部162Aの遠位側端面とシャフト内管112の遠位側端面とは、段差がないように配置されている。このため、シャフト内管112の遠位面が当接部161の当接面161Aに対して当接すると、刃部162Aも当接面161Aに対して当接する。シャフト内管112は、シャフト外管111に対し、少なくとも
図10に示す位置から当接部161の当接面161Aに対して当接する位置までを、軸方向に沿って往復動可能とされている。シャフト内管112の遠位部は、シャフト内管112の遠位部以外の厚さ(内管外径から内管内径を引いた厚さ)より薄く、切断部162の刃部162Aと同等の薄さを有してもよい。
【0058】
シャフト外管111とシャフト内管112は、同軸状に配置されており、シャフト外管111は回転駆動部130によって周方向に沿って往復動可能とされている。ただし、シャフト外管111は往復動するものに限られず、一方向に回転するものであってもよい。切断部162は、シャフト内管112の中空部分の断面形状を二分するように配置されている。
【0059】
次に、本実施形態に係る医療デバイス10および除去デバイス100の使用方法を、血管内の血栓を吸引して除去する場合を例として説明する。
【0060】
まず、血管の血栓300よりも上流側(近位側)において血管内へ経皮的にイントロデューサシース(図示せず)を挿入し、このイントロデューサシースを介して、ガイドワイヤ80を血管内へ挿入する。次に、ガイドワイヤ80を押し進め、血栓300の遠位側まで到達させる。
【0061】
次に、
図2に示すように、規制器具20および押圧シャフト40をシース30内に収容した医療デバイス10を準備する。拡張部22は、シース30のシース管体31の遠位側端部に近い位置に配置され、収縮状態で形状が拘束されている。シャフト部23は、ハブ32のハブ開口部35から近位側に突出している。
【0062】
次に、体外に位置するガイドワイヤ80の近位側端部を、医療デバイス10のガイドワイヤルーメン26に挿入し、
図11(A)に示すように、ガイドワイヤ80に沿って、医療デバイス10を血栓300の遠位側まで到達させる。なお、ガイドワイヤ80を血栓300の遠位側へ到達させるために、別途準備されるサポートカテーテルを使用することもできる。
【0063】
次に、押圧シャフト40の移動を手で規制しつつ、シース30を近位側へ移動させる。このとき、押圧シャフト40の遠位側端部が、近位側接続部60またはガイドワイヤ用管体25の近位側端部に接触し、拡張部22およびカバー部70の移動が規制されるため、血管内における拡張部22およびカバー部70の近位部の位置を、任意に調整できる。そして、押圧シャフト40に対してシース30が近位側に移動することで、拡張部22およびカバー部70が、シース管体31から徐々に放出される。これにより、
図11(B)に示すように、遠位側接続部50が近位側接続部60に近づくように移動しつつ、拡張部22が自己の復元力により最適な大きさに拡張し、カバー部70の遠位部が血管の内壁面に押し付けられて位置決めされる。拡張部22は、メッシュ状に形成されているため、血管の内壁面に対してカバー部70を食い込ませつつ、強固に固定させることができる。カバー部70は、血管の内径および形状に応じて、拡張部22により折り返し部77が延ばされつつ押し広げられ、拡張部22により血管の内壁面に押し付けられて接触する。なお、カバー部70は、血管の内壁面に接触した状態において、
図13に示すように、折り返された折り返し部77が残っていても、拡張部22により血管の内壁面に押し付けられるため、血管との間に隙間は生じない。そして、カバー部70に設けられる複数の折り返し部77は、軸方向へ断続的に短く形成されているため、折り返し部77と血管の内壁面との間に生じる微小な隙間も、軸方向に断続的に形成されて、カバー部70の軸方向に連続して形成されない。このため、カバー部70によって血液の流れを効果的に抑制できる。
【0064】
そして、拡張部22は、カバー部70により拡径を強制的に抑えられつつカバー部70内に収容されているため、拡張した際の外径が小さい場合のみならず、大きい場合であっても、血管の内壁面に対して十分な拡張力を発揮して強固に固定でき、適用可能な血管の内径の範囲が広い。
【0065】
次に、押圧シャフト40を押し込み、
図12(A)に示すように、カバー部70のシース30から放出された部位の近位側の部位を、遠位側のカバー部70の内側に押し込む。このとき、シース30を、押圧シャフト40に対して移動させずに、押圧シャフト40と一体的に押し込んでもよく、または、押圧シャフト40に対して近位側へ移動させてもよい。シース30を、押圧シャフト40と一体的に押し込む場合、シース管体31に収容されているカバー部70および拡張部22を外部へ押し出さずに、既にシース管体31の外部に位置するカバー部70および拡張部22を遠位側へ押し込むことになる。また、シース30を、押圧シャフト40に対して近位側へ移動させつつ押圧シャフト40を押し込む場合、シース管体31に収容されているカバー部70および拡張部22をシース管体31から新たに遠位側へ押し出しつつ、カバー部70および拡張部22を遠位側へ押し込むことになる。
【0066】
次に、押圧シャフト40の押し込みを停止し、押圧シャフト40の移動を手で規制しつつ、シース30を押圧シャフト40に対して近位側へ移動させる。これにより、拡張部22およびカバー部70がシース管体31から徐々に放出され、
図12(B)、14に示すように、外周面にて近位側に突出する重なり部78が形成される。重なり部78の軸方向長さは、押圧シャフト40の押し込み長さによって任意に設定可能である。
【0067】
ある程度の拡張部22およびカバー部70をシース管体31から押し出した後、再び押圧シャフト40を押し込み、そして押し込みを停止して拡張部22およびカバー部70をシース管体31から放出することで、重なり部78を再び任意の位置に形成することができる。重なり部78は、1つのみ形成してもよいが、複数形成してもよい。本実施形態では、3つの重なり部78が形成され、近位側の重なり部78ほど、軸方向に長い。このため、重なり部78による血流抑制効果が、血管の上流側で大きくなり、効果的に血流を抑制できる。重なり部78は、近位側に偏って配置されることが好ましいが、遠位側に偏って配置されてもよく、または偏って配置されなくてもよい。本実施形態では、重なり部78は、近位側に偏って配置されるため、重なり部78による血流抑制効果が、血管の上流側で大きくなり、効果的に血流を抑制できる。
【0068】
所望の数の重なり部78を形成した後、押圧シャフト40の移動を手で規制しつつ、シース30を押圧シャフト40に対して近位側へ移動させ、拡張部22およびカバー部70をシース管体31から完全に放出させる。使用される拡張部22の拡張可能な最大径は、挿入される血管径よりも大きいため、拡張部22は、血管内で完全には拡張しない状態となり、拡張力を発生させてカバー部70を血管壁に効果的に密着させることができる。これにより、
図15(A)に示すように、カバー部70が拡張部22により血管の内壁面に押し付けられて血管内に固定される。この後、
図15(B)に示すように、規制器具20を残して、シース30および押圧シャフト40を体外へ抜去する。
【0069】
血管の内壁面に拡張部22およびカバー部70が密着すると、血管内の血流が遮断または低減され、血液が滞留する。そして、カバー部70は、複数の重なり部78が形成されており、重なり部78が形成される部位は、肉厚が増加して径方向に突出する。このため、重なり部78によって、血管とカバー部70の間を流れようとする血流の抑制効果を高めることができる。また、重なり部78は、カバー部70の外周面にて近位側に突出するように形成されているため、重なり部78による血流の抑制効果をより高めることができる。さらに、カバー部70の近位側の重なり部78の軸方向の長さが、遠位側の重なり部78よりも大きく、かつ近位側に偏って配置されているため、血管の上流側で血流を抑制する効果を高めることができ、血流を効果的に抑制しつつ、重なり部78を設け過ぎることによりカバー部70が必要以上に長くなることを抑制できる。
【0070】
次に、撹拌部113を含むシャフト本体110の遠位部が、最外シース体120に納められた状態の除去デバイス100を準備し、除去デバイス100の第2ガイドワイヤルーメン171に、ワイヤ部24の近位側端部を挿入する。この後、
図16(A)に示すように、ワイヤ部24をガイドとして、除去デバイス100を血栓300に近位側へ挿入する。この後、最外シース体120を近位側へ移動させると、
図16(B)に示すように、撹拌部113が血管内で広がる。
【0071】
次に、最外シース体120、シャフト内管112または第2ガイドワイヤルーメン171(
図9を参照)を利用して、血管内の血栓300の近傍に、血栓溶解剤を注入する。このとき、血栓が形成されている領域の血流が規制(遮断または低減)されているため、血栓溶解剤が高い濃度で保たれ、血栓溶解剤が高い効果を発揮する。なお、血栓溶解剤は、使用しなくてもよい。
【0072】
次に、撹拌部113が血栓300の近傍まで進入した状態で、回転駆動部130によりシャフト外管111を回転させると、撹拌部113もそれに伴って回転し、血管内で固着した状態となっていた血栓300が、破砕される。
【0073】
撹拌部113の回転を継続すると、血液の流れが医療デバイス10により規制されているため、
図17に示すように、血管内で固着していた血栓300全体が破砕されて、破砕された血栓301は、滞留している血管内で沈殿等することなく、浮遊した状態となる。
【0074】
次に、シリンジ150(
図8を参照)の押し子を引いてシャフト内管112の中空内部を負圧状態とする。シャフト内管112の遠位側端部はシャフト外管111の中空内部と連通し、さらにシャフト外管111は開口部160を通じてシャフト本体110の外部と連通しているので、開口部160はシャフト本体110の外部に対して吸引力を生じ、血管内を浮遊する破砕された血栓301を引き寄せる。
図18に示すように、開口部160に引き寄せられた血栓301は、一部がシャフト外管111の中空内部に侵入する。
【0075】
シリンジ150の押し子を引いた後、シャフト内管112をシャフト外管111に対し軸方向に移動させる。シャフト内管112が開口部160よりも近位側にある状態から、シャフト内管112をシャフト外管111の遠位側、すなわち当接部161に近づく側に向かって移動させると、
図19に示すように、開口部160からシャフト外管111の中空内部に侵入した血栓301の一部分は、シャフト内管112の遠位面によって圧縮されながら切り取られていく。
【0076】
シャフト内管112の遠位面が当接部161の当接面161Aに当接するまで、シャフト内管112を移動させると、
図20に示すように、切り取られた血栓302は、シャフト内管112の中空内部に納まる。この時、シャフト内管112の遠位部に設けられた切断部162の刃部162Aによって、血栓302は2つに切断される。シャフト内管112が当接部161の当接面161Aに当接することで、刃部162Aも当接面161Aに当接し、シャフト外管111の中空内部で切り取られた血栓302は、当接部161に押し当てられながら刃部162Aによって切断される。このため、切り取られた血栓302を確実に切断し、シャフト内管112の内径よりも小さい大きさとすることができる。これによって、切り取られた血栓302がシャフト内管112の中空内部で詰まることを抑制できる。
【0077】
シャフト内管112の中空内部は、シリンジ150によって引き続き負圧状態となっているので、
図21に示すように、切り取られた血栓302は、シャフト内管112の中空内部を近位側に向かって移動していく。また、シャフト内管112を当接部161から離れて近位側に移動させることにより、再び開口部160が開放され、血栓301が吸引されてシャフト外管111の中空内部に侵入してくる。したがって、シャフト内管112の軸方向への往復動を繰り返すことにより、血栓301を細かく切断しながら継続的に吸引することができる。
【0078】
破砕された血栓301をシャフト本体110で吸引している間、シャフト外管111の回動動作は継続していることが望ましい。シャフト外管111が回転していることで、血管内の血液に渦流が発生し、血栓301が回転中心付近、すなわち血管の径方向における中心付近に集まりやすくなるので、血栓301を開口部160から吸引しやすくなる。また、開口部160付近に生じた渦流は、シャフト内管112の中空内部の流れにも影響し、シャフト内管112の内部においても渦の旋回流が生じる。これによって、シャフト内管112の内部で、軸方向に対する流動抵抗が低減し、切断された血栓302を円滑に吸引することができる。
【0079】
本実施形態では、血栓301の吸引中に、シャフト外管111は回転動し、シャフト内管112はシャフト外管111に対して軸方向に往復動するものとしたが、これ以外の動作を加えてもよい。例えば、シャフト内管112がシャフト外管111に対して相対的に異なる回転動する動作(回転方向が逆方向、または回転方向は同一だが回転速度が異なる)を加えることで、開口部160に吸引された血栓301をより確実に切り取って、シャフト外管111の中空内部に導くことができる。また、シャフト外管111の往復動を加えることによって、より広い範囲の血栓300を破砕、撹拌することができる。
【0080】
本実施形態では、血液の流れを医療デバイス10により規制しているために、滞留する血液に破砕された血栓301が浮遊し、血栓301を別の個所へ流すことなく、開口部160から血栓301を効率よく吸引し、血管内から取り除くことができる。また、血液が流れていると、強い吸引力が必要となるが、本実施形態では、血流が抑制されるため、吸引力を作用させやすくなり、より効果的に血栓301を吸引できる。
【0081】
また、
図22(A)に示すように、血栓301の吸引時に、除去デバイス100をカバー部70に押し付け、例えばカバー部70の近位部を窪ませつつ、カバー部70に付着した血栓301を開口部160から吸引することもできる。
【0082】
血栓301の吸引が完了した後、シャフト外管111とシャフト内管112の往復動や回転動を停止し、
図22(B)に示すように、最外シース体120を軸方向に移動させて撹拌部113を収容する。この後、
図23(A)に示すように、規制器具20を残して除去デバイス100を血管から抜去する。
【0083】
次に、ワイヤ部24の近位側端部をシース30に挿入し、シース30をワイヤ部24に沿って血管内に挿入して、拡張部22およびカバー部70の近傍へ到達させる。次に、
図23(B)に示すように、ワイヤ部24の近位端部を把持して軸方向の移動を抑制しつつ、シース30を押し込み、シース30の内部に、拡張部22およびカバー部70を縮径させながら収容する。カバー部70が縮径する際には、孔部76からカバー部70の内部の血液が、外部へ放出される。カバー部70をシース30の内部に収容する際には、カバー部70に付着した血栓301も、シース30内に収容することができる。また、血管の内壁面に接触したカバー部70を近位方向へ移動させて、血管に付着した血栓300をカバー部70により擦り取った後、血栓300をカバー部70とともにシース30内へ収容することもできる。この後、規制器具20をシース30とともに血管から抜去し、処置を完了させる。
【0084】
以上のように、実施形態に係る医療デバイス10は、生体管腔内に挿入されて当該生体管腔内の流れを規制するための医療デバイス10であって、長尺なシャフト部23と、複数の間隙21Aを備えて弾性的に変形可能な管体であり、外力の作用しない自然状態において管体の両側の端部よりも中央部の外径が大きくなり、かつ管体の両側の端部の少なくとも一方にシャフト部23が連結された拡張部22と、拡張部22の外周を囲みつつ拡張部22から独立して柔軟に変形可能であるとともに筒形状を呈し、当該筒形状の両端部が拡張部22の両端部に連結され、拡張部22が拡張する際に筒形状の内面同士が接触するように軸方向に折り返されて重なる重なり部78を形成可能であるカバー部70と、縮径させた拡張部22およびカバー部70を収容可能なシース30と、を有する。このように構成された医療デバイス10は、拡張部22およびカバー部70をシース30から放出することで、拡張部22が自己の弾性力により生体管腔の形状に合わせて拡張し、重なることで径方向に突出する重なり部78がカバー部70に全周的に形成されつつ、カバー部70が拡張部22により生体管腔に押し付けられる。このため、自己の弾性力により拡張する拡張部22により、適用可能な生体管腔の内径の範囲が広くなるとともに、重なり部78が形成されるカバー部70により生体管腔内の流れを効果的に規制して、生体管腔内から血栓300(物質)を効果的に吸引可能となる。
【0085】
また、医療デバイス10は、拡張部22が、弾性的に変形可能な複数の線材21により管状に編組されて形成される。これにより、拡張部22を自己の弾性力により外径を大きく拡張可能としつつ、拡張部22が編組されているために拡張時に軸方向に短くなるため、重なり部78となる軸方向長さをカバー部70に容易に確保することができる。
【0086】
また、医療デバイス10は、カバー部70に、少なくとも遠位側のみに少なくとも1つの孔部76が形成される。これにより、孔部76を介してカバー部70内への血液(流体)の流入およびカバー部70から外部への排出が可能となり、カバー部70の体積変化を容易に生じさせることが可能となる。
【0087】
また、医療デバイス10は、カバー部70に、内面同士が接触するように周方向に折り返されて重なる折り返し部77を形成可能である。これにより、カバー部70が生体管腔に接触した際に接触面積が増加し、接触力が高まり、血液の流れを効果的に抑制できる。また、カバー部70に重なり部78および折り返し部77の両方が形成されることで、カバー部70の外表面が略格子状に区画されつつ拡張部22によって生体管腔に押し付けられるため、各区画間での血液の移動が抑制され、血液の流れを効果的に抑制できる。なお、折り返し部77および重なり部78では、カバー部70の素材が折り返されることで形成されるが、折り返し部77および重なり部78は拡張部22から離れることができるため、折り返し部77および重なり部78に接する拡張部22は折り返されていない。
【0088】
また、医療デバイス10は、カバー部70が、収縮時に拡張部22と接触する位置と、拡張時に拡張部22と接触する位置とが異なる。これにより、カバー部70は、拡張部22から独立して変形して、折り返し部77や重なり部78を形成可能であるとともに、拡張部22を構成する線材21の交差角度がカバー部70により阻害されずに変化でき、拡張部22が柔軟に変形可能である。
【0089】
また、医療デバイス10は、カバー部70の収縮時の軸方向に延在する折り返し部77の少なくとも一部が、カバー部70の拡張時の重なり部78に変形可能である。これにより、カバー部70の収縮時に形成されている折り返し部77が、カバー部70の拡張によって減少しつつ、折り返し部77の少なくとも一部が重なり部78となるため、カバー部70を状況に応じて変形させて、カバー部70を効率よく利用することができる。
【0090】
また、医療デバイス10は、拡張部22が、外径の異なる複数の線材21B、21Cにより編組されて形成される。これにより、拡張部22を収縮させてシース30に収容した際に、細い線材21Cがカバー部70を介してシース30の内壁面に接触し難くなり、網目の交点の位置がずれ難くなり、拡張部22の形状が安定して、血液の流れを効果的に抑制できる。
【0091】
また、カバー部70は、重なり部78の形成を促すために予め形状付けされた予備形状部79を有してもよい。これにより、重なり部78を生体管腔内で容易に形成可能となる。
【0092】
また、医療デバイス10は、シース30内に収容されてシャフト部23が貫通する管体であって、シース30内の拡張部22およびカバー部70が通り抜け不能な内径で形成されて拡張部22およびカバー部70をシース30から押し出す押圧シャフト40を有している。これにより、押圧シャフト40を利用することで、シース30内から拡張部22およびカバー部70を容易に押し出すことが可能となる。
【0093】
また、本発明は、前述の医療デバイスを使用して生体管腔内の病変部に生じた物体を吸引除去するための処置方法をも提供する。当該方法は、生体管腔内の病変部よりも下流側に拡張部22およびカバー部70をシース30から徐々に押し出し、拡張部22を自己の弾性力により拡張させてカバー部70を遠位側から生体管腔へ接触させるステップと、前記拡張部22およびカバー部70を遠位方向へ押し込んだ後にさらに拡張部22およびカバー部70を前記シース30から押し出すことで、カバー部70を軸方向に折り返して重なり部78を形成するステップと、生体管腔内の病変部に生じた物体を破砕または溶解させるステップと、生体管腔内に吸引可能な吸引口を備えるデバイスを挿入して破砕または溶解された物体を吸引するステップと、拡張部22およびカバー部70を収縮させるステップと、医療デバイス10を生体管腔内から抜去するステップと、を有する。このように構成された処置方法は、拡張部22およびカバー部70を遠位方向へ押し込みつつ重なり部78を形成するため、重なり部78を、任意の軸方向の長さで自在に形成することが可能である。このため、重なることで肉厚が増して径方向に突出する重なり部78を望ましい軸方向長さでカバー部70に全周的に形成することができ、重なり部78が形成されるカバー部70により生体管腔内の流れを効果的に規制して、生体管腔内から物質を効果的に吸引可能となる。
【0094】
また、重なり部78を形成するステップにおいて、拡張部22とカバー部70に対して相対的にシース30を近位方向へ移動させ、カバー部70の遠位側を生体管腔の内壁に接触させた後、押圧シャフト40で拡張部22とカバー部70を遠位方向へ押し出すことで、カバー部70を軸方向に折り返すことができる。これにより、手元側での操作によって、カバー部70に折り返し部78を容易に形成することができる。
【0095】
また、重なり部78を形成するステップにおいて、重なり部78がカバー部70の外周面にて近位側に突出するようにカバー部70を折り返すことが可能である。これにより、重なり部78によって生体管腔内の流れを効果的に規制して、生体管腔内から物質を効果的に吸引可能となる。なお、重なり部は、カバー部70の外周面にて遠位側に突出するように形成されてもよい。このような構成とすれば、カバー部70を血管内で拡張させた後、シース30内に引き込むこと(リトラクト)が容易となる。
【0096】
また、重なり部78を形成するステップにおいて、重なり部78を軸方向に複数形成し、近位側に位置する重なり部78の軸方向の長さを、遠位側に位置する重なり部78の軸方向の長さよりも長く形成することができる。これにより、重なり部78による血流抑制効果が、血管の上流側で大きくなり、血流を効果的に抑制できる。
【0097】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、本実施形態は、医療デバイス10を、患部の上流側からアクセスさせる構造となっているが、患部の下流側からアクセスさせる構造としてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、撹拌部113を備える除去デバイス100により、血栓300を破砕しているが、血栓300を破砕するためではなく、血栓溶解剤により血栓を効果的に溶解させるために、医療デバイス10を用いてもよい。医療デバイス10を用いて血流を規制することで、血栓溶解剤を血栓の周りに留めることが可能となり、血栓を効果的に溶解させることができる。
【0099】
また、医療デバイス10が挿入される生体管腔は、血管に限定されず、例えば、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等であってもよい。また、除去デバイスは、上述した構成に限定されない。
【0100】
また、本実施形態では、拡張部22およびカバー部70は、軸方向の端部がテーパ状に形成されているが、
図24に示すように、両端部にカバー部70の内側に向かって窪んだ窪み部70Aが形成されてもよい。このような構成とすることで、拡張部22およびカバー部70の軸方向長さを極力短くすることが可能となり、目的の位置へコンパクトに配置することができる。これにより、撹拌部113による切削範囲を広く確保できる。また、近位側では、窪み部70Aにより血栓302を良好に保持することが可能となる。なお、窪み部は、カバー部の一端側にのみ形成されもよい。
【0101】
また、遠位側接続部50、近位側接続部60、線材21の少なくとも一部は、材料中にX線造影性材料が含まれて形成されていてもよい。例えば、複数の線材21の一部が、材料中にX線造影性材料が含まれて形成されてもよい。これにより、X線造影下で位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適である。