(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年はフォーカルプレーンシャッタを用いる撮像装置、光学機器及び電子機器などの小型化が要求されている。また、撮像装置、光学機器及び電子機器などでは、更なる性能を担保することが要求された場合、様々な機能を有する部品を更に備える等を要求されることがある。この際に内蔵部品(フォーカルプレーンシャッタ等)の大きさが制限され該部品についてより小型化、薄型化を要求されることがある。このような要求に伴いフォーカルプレーンシャッタ自体の厚さについても薄くすることが要求されている。フォーカルプレーンシャッタを薄くするには、フォーカルプレーンシャッタを構成する部材を薄くすることが考えられる。
【0006】
また一方で、フォーカルプレーンシャッタのシャッタ幕速度の高速化が求められている。シャッタ幕速度を高速化すると、フォーカルプレーンシャッタの部材にかかる負荷応力も増大する。そのため、それに耐えられるように部材の強度を確保する必要がある。
【0007】
しかし前述のように、フォーカルプレーンシャッタを薄型化するためにフォーカルプレーンシャッタの部材を薄くすると、部材の強度が低下することとなる。即ち、フォーカルプレーンシャッタを薄くすることと、フォーカルプレーンシャッタの幕速度を高速化しながら部材の必要強度を保つこととは基本的に相反する要求である。
【0008】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、厚さを薄くしたフォーカルプレーンシャッタ並びにそれを利用した撮像装置、光学機器及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するため、本発明に係るフォーカルプレーンシャッタは、
複数の羽根が連結されたアームを備えるシャッタ幕と、
前記アームに係合する駆動ピンを支持する金属製の基板を備え、駆動ばねの駆動力を前記アームに伝える駆動レバーと、を備える。
【0010】
(2)例えば、前記駆動レバーは、前記基板に垂直な方向の高さよりも、前記基板と平行な方向の幅のほうが大きい鉄片を備えてもよい。
【0011】
(3)例えば、前記基板は、前記駆動ばねを外嵌めするばね軸受と、前記基板から部分的に陥凹した段差部と、を備え、前記段差部から前記ばね軸受が前記段差部に垂直な方向に延在していてもよい。
【0012】
(4)例えば、前記駆動レバーは、鉄片を保持する樹脂製の鉄片ホルダを備えてもよい。
【0013】
(5)上記目的を達成するため、本発明に係る撮像装置は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のフォーカルプレーンシャッタを備える。
【0014】
(6)上記目的を達成するため、本発明に係る光学機器又は電子機器は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のフォーカルプレーンシャッタを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厚さを薄くしたフォーカルプレーンシャッタ並びにそれを利用した撮像装置、光学機器及び電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係るフォーカルプレーンシャッタ1の全体の構造について図面を参照しつつ説明する。なお、説明において「上(方)」、「下(方)」、「左(方)」、「右(方)」ということがある。これは特記しない場合は、単に図面における紙面上の方向を意味するものであって、発明を限定するものではない。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1に係るフォーカルプレーンシャッタ1は、例えば
図9に示すように撮像素子を有する撮像装置400に用いられる、いわゆるノーマリークローズタイプのシャッタである。
【0019】
フォーカルプレーンシャッタ1は、地板5の裏側(図の背面側)に配置された
図2に示す先幕(シャッタ幕)10と、同じく地板5の裏側に配置された
図1に示す後幕(シャッタ幕)20と、
図1〜
図4に示すセットレバー40と先幕駆動レバー50と後幕駆動レバー100と、を備える。セットレバー40と先幕駆動レバー50と後幕駆動レバー100は、先幕10と後幕20を駆動する駆動機構を構成する。
【0020】
図1に示す後幕20の4枚の後羽根20a、20b、20c、20dは、それぞれが後幕第1アーム21と後幕第2アーム22に連結されている。後幕第1アーム21の一端は、後幕20の駆動レバー支持軸104に回転可能に結合され、後幕第2アーム22の一端は図示しない後幕第2アーム支持軸に回転可能に結合されている。4枚の後羽根20a、20b、20c、20dは、後幕第1アーム21と後幕第2アーム22とに平行リンク機構を構成するように結合されている。
【0021】
図2に示す先幕10の4枚の先羽根10a、10b、10c、10dは、それぞれが図示しない先幕第1アームと図示しない先幕第2アームに連結されている。先幕第1アームの一端は、先幕10の駆動レバー支持軸55に回転可能に結合され、先幕第2アームの一端は図示しない先幕第2アーム支持軸に回転可能に結合されている。4枚の先羽根10a、10b、10c、10dは、先幕第1アームと先幕第2アームとに平行リンク機構を構成するように結合されている。
【0022】
図1に戻って、地板5には、先幕長孔部31と後幕長孔部32とが設けられている。先幕長孔部31は、先幕10の駆動レバー支持軸55を中心とする円弧状に形成されている。後幕長孔部32は、後幕20の駆動レバー支持軸104を中心とする円弧状に形成されている。
【0023】
後幕長孔部32には、後幕駆動レバー100の図示しない駆動ピンが挿入され、その駆動ピンは地板5の裏側で後幕第1アーム21と係合している。後幕駆動レバー100の駆動ピンは、駆動レバー支持軸104を中心にして後幕長孔部32に沿って
図1の上下方向に旋回(走行)可能である。
【0024】
後幕駆動レバー100の駆動ピンが駆動レバー支持軸104を中心にして後幕長孔部32に沿って
図1の上下方向に旋回すると、駆動ピンに係合した後幕第1アーム21が駆動レバー支持軸104を中心に旋回する。これに伴って後幕第1アーム21と後幕第2アーム22にリンク機構で結合された
図1に示す後羽根20a、20b、20c、20dが上下に移動して開口6を開閉する。
【0025】
先幕長孔部31には、先幕駆動レバー50の図示しない駆動ピンが挿入され、その駆動ピンは地板5の裏側で先幕第1アームと係合している。先幕駆動レバー50の駆動ピンは、駆動レバー支持軸55を中心にして先幕長孔部31に沿って
図1の上下方向に旋回可能である。
【0026】
先幕駆動レバー50の駆動ピンが駆動レバー支持軸55を中心にして先幕長孔部31に沿って
図2の上下方向に旋回すると、駆動ピンに係合した先幕第1アームが駆動レバー支持軸55を中心に旋回する。これに伴って先幕第1アームと先幕第2アームにリンク機構で結合された
図2に示す先羽根10a、10b、10c、10dが上下に移動して開口6を開閉する。
【0027】
図1に戻って、先幕駆動レバー50は、鉄片52を備える。鉄片52は、先幕駆動レバー50が先幕長孔部31の下端部に移動したときに、通電励磁された先幕電磁石35に吸着され、先幕駆動レバー50をその位置に保つ役割を有する。
【0028】
図1に示すように、後幕駆動レバー100は、鉄片120を備える。鉄片120は、後幕駆動レバー100が後幕長孔部32の下端部に移動したときに、通電励磁された後幕電磁石36に吸着され、後幕駆動レバー100をその位置に保つ役割を有する。
【0029】
なお、先幕駆動レバー50と後幕駆動レバー100は、フォーカルプレーンシャッタ1を薄くするために一部が金属で形成されている。この構造の詳細については後述する。
【0030】
図1に示す状態から、セットレバー40を回転させることにより、先幕駆動レバー50と後幕駆動レバー100とが
図2に示す状態(セット状態)にセットされる。
【0031】
具体的には、
図1に示す露光動作直後の状態から、図示しない駆動モータにより
図1に示すセットレバー40を右回り(時計方向)に回転させる。これにより、セットレバー40の係合部41が先幕駆動レバー50の係合部54と当接する。さらにセットレバー40を回転させると、係合部41が係合部54を押しのけるように進み、そのため先幕駆動レバー50は、駆動レバー支持軸55を中心に左回り(反時計方向)に回転する。
【0032】
先幕駆動レバー50には図示しない駆動ばねが係止されており、先幕駆動レバー50が左回りに回転すると、駆動ばねがねじられて、先幕駆動レバー50を反対方向に押し戻す付勢力が生じる。つまり、先幕駆動レバー50は、この駆動ばねの付勢力によって、
図1に示す初期位置で保持されている。
【0033】
先幕駆動レバー50がこの付勢力に抗して先幕長孔部31の下端部まで移動すると、
図2に示すように鉄片52は先幕電磁石35に当接するとともに、図示しない制御部からの制御信号により先幕電磁石35が通電励磁され、鉄片52が先幕電磁石35に吸着保持されて
図2に示す状態を維持する。
【0034】
上述の先幕駆動レバー50の回転に伴って、先幕駆動レバー50の駆動ピンが先幕長孔部31に沿って
図1の右上から左下方向に移動する。この動きに伴って、先幕駆動レバー50の駆動ピンに係合された先幕第1アームが旋回し、先幕第1アームに連結された先羽根10a、10b、10c、10dが
図2に示すように開口6の上部から下方に移動して開口6を閉じる。
【0035】
一方、上述のセットレバー40の回転に伴って、後幕駆動レバー100がセットレバー40の図示しない係合部と係合し、さらに後幕駆動レバー100は駆動レバー支持軸104を中心に左回りに回転する。
【0036】
後幕駆動レバー100には後述する駆動ばね115(
図5(a)参照)が係止されており、後幕駆動レバー100が左回りに回転すると、駆動ばね115がねじられて、後幕駆動レバー100を反対方向に押し戻す付勢力が生じる。つまり、後幕駆動レバー100は、この駆動ばね115の付勢力によって、
図1に示す初期位置で保持されている。
【0037】
後幕駆動レバー100がこの付勢力に抗して後幕長孔部32の下端部まで移動すると、
図2に示すように鉄片120は後幕電磁石36に当接するとともに、図示しない制御部からの制御信号により後幕電磁石36が通電励磁され、鉄片120が吸着保持されて
図2に示す状態を維持する。
【0038】
後幕駆動レバー100の回転に伴って、後幕駆動レバー100の駆動ピンが後幕長孔部32に沿って
図2の左上から右下方向に移動する。この動きに伴って、後幕駆動レバー100の駆動ピンに係合された後幕第1アーム21が旋回し、後幕第1アーム21に連結された後羽根20a、20b、20c、20dが
図1に示す状態から開口6の下方(地板5の裏側)に引き込まれて、
図2では見えなくなっている。
【0039】
このように
図2に示すセット状態とは、先幕駆動レバー50と後幕駆動レバー100がそれぞれの駆動ばねの付勢力(駆動力)に抗した状態で保持されている状態である。
【0040】
図2に示す状態からユーザがレリーズボタンを押すと、図示しない制御部からの制御信号により先幕電磁石35への通電が停止され、先幕駆動レバー50の鉄片52は先幕電磁石35から解放される。そのため、先幕駆動レバー50は駆動ばねの駆動力によって、駆動レバー支持軸55を中心に右回りに回転する。これに伴い先幕駆動レバー50の駆動ピンは、
図3に示すように先幕長孔部31に沿って先幕長孔部31の右上端部まで走行する。この動きに伴って、先羽根10a、10b、10c、10dは、開口6の上部(地板5の裏側)に引き込まれ、
図3に示すように開口6を全開にする。
【0041】
先幕10が開き始めた後、露光時間に対応した時間が経過すると、図示しない制御部からの制御信号により後幕電磁石36への通電が停止され、後幕駆動レバー100の鉄片120は後幕電磁石36から解放される。そのため、後幕駆動レバー100は駆動ばね115の駆動力によって、
図4に示すように駆動レバー支持軸104を中心に右回りに回転する。これに伴って後幕駆動レバー100の駆動ピンは、後幕長孔部32に沿って走行する。この動きに伴って、後幕第1アーム21と後幕第2アーム22に結合された後羽根20a、20b、20c、20dが開口6を閉じるように上方に移動する。後羽根20c、20dが開口6を半分ほど閉じた状態を
図4に示す。
【0042】
後幕駆動レバー100は、駆動ピン105が後幕長孔部32の左上端部に到達するまで回転し、停止する。このとき後羽根20a、20b、20c、20dはすべて上方向に移動し、
図1に示すように開口6を完全に閉じた状態となる。
【0043】
以上、フォーカルプレーンシャッタ1の全体構造と露光動作について説明した。次に、フォーカルプレーンシャッタ1を薄くするための後幕駆動レバー100の構造について、図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
後幕駆動レバー100は、
図5(a)、
図5(b)に示すように、基板101と、基板101の下面に垂直に立設された駆動ピン105と、基板101の上面に垂直に立設された円筒状のばね軸受110と、鉄片120とを備える。鉄片120は、基板101に固定された鉄片ホルダ121に遊びを持って保持されている。遊びを持っているとは、鉄片120は鉄片ホルダ121の窪みの中で上下左右前後にわずかに移動可能であるということである。これは鉄片120が後幕電磁石36に吸着されやすくするためである。
【0045】
ばね軸受110の周囲には、駆動ばね(ねじりばねまたはコイルばね)115が隙間を持って外嵌めされている。駆動ばね115の下端はばね軸受110の図示しない係止部に係止されており、上端は
図1に示す調整ラチェット103に係止されている。ばね軸受110の中空の支持孔112には、
図1に示す駆動レバー支持軸104が挿入されている。これにより後幕駆動レバー100は、駆動レバー支持軸104を中心に旋回可能である。なお基板101は、地板5と平行になるように配置される。
【0046】
後幕駆動レバー100がセット状態、即ち
図2に示す状態のとき、駆動ばね115はねじられてねじりトルクを有した状態で保持されている。鉄片120が後幕電磁石36から解放されると、このねじりトルクの駆動力によって後幕駆動レバー100が旋回する。これにより、駆動ピン105を介して後羽根20a、20b、20c、20dが開口6を閉じる方向に駆動される。
【0047】
後幕駆動レバー100の基板101は、合成樹脂よりも材料強度の大きいチタンで形成されている。またばね軸受110、駆動ピン105、鉄片ホルダ121は合成樹脂(ポリカーボネート)製である。そのため、ばね軸受110、鉄片ホルダ121、駆動ピン105は、それぞればね軸受支持部111、鉄片ホルダ支持部122、駆動ピン支持部106により基板101に固定されている。
【0048】
具体的には、
図6(b)に示すように、ばね軸受110はインサート成形により、基板101に設けた孔をはさんで基板101の上面側と下面側に形成したばね軸受支持部111とともに一体成形されている。また鉄片ホルダ121はインサート成形により、基板101に設けた孔をはさんで基板101の上面側と下面側に形成した鉄片ホルダ支持部122とともに一体成形されている。図示しないが、駆動ピン支持部106も同様の構造である。ばね軸受110、駆動ピン105はそれぞれ基板101に垂直な方向に延在するように形成されている。このように、後幕駆動レバー100は金属と樹脂とを組み合わせて構成されているため、本実施例の後幕駆動レバー100は、ハイブリッド駆動レバーと言われることもある。
【0049】
先幕駆動レバー50の構造は基本的に後幕駆動レバー100と同様であるので説明は省略する。
【0050】
従来技術である後幕駆動レバー500は、
図10(a)、
図10(b)に示すように、基板501に駆動ピン505、ばね軸受510、鉄片520を保持する鉄片ホルダ521を備えている。後幕駆動レバー500の基板501、駆動ピン505、ばね軸受510、鉄片ホルダ521はいずれも合成樹脂製である。フォーカルプレーンシャッタのシャッタ動作に伴い、後幕駆動レバー500には大きな負荷応力がかかる。そのため、基板501はシャッタ動作時の負荷応力に耐えるように肉厚に成形されている。
【0051】
図5(b)に示すように、後幕駆動レバー100のチタン製の基板101の厚さh1は、
図10(b)に示す従来技術の後幕駆動レバー500の合成樹脂製の基板501の厚さh2に比べて、必要強度を保ちつつ薄くすることができる。これにより、後幕駆動レバー100の基板101の上面から駆動ピン105下端までの長さH1は、後幕駆動レバー500の基板501の上面から駆動ピン505下端までの長さH2よりも小さい。なお、ばね軸受110の基板101の上面からの高さ(長さ)H3と、鉄片ホルダ121の基板101の上面からの高さH4は、後幕駆動レバー500でのそれぞれに対応する高さH3、H4と同じである。このように、実施形態1に係る後幕駆動レバー100の厚さ(基板101に垂直な方向の長さ、H1+H4)を、必要強度を保ちつつ従来技術に係る後幕駆動レバー500の厚さ(H2+H4)よりも小さくすることができ、フォーカルプレーンシャッタ1の厚さを従来技術のフォーカルプレーンシャッタの厚さに比べて薄くすることができる。
【0052】
(実施形態2)
実施形態2のフォーカルプレーンシャッタ2の全体的な構造は実施形態1と同じである。実施形態1と異なる部分は、後幕駆動レバー200の構造であるので、以下、実施形態2に係る後幕駆動レバー200の構造について説明する。
【0053】
後幕駆動レバー200は、
図7に示すように、チタン製の基板201、合成樹脂製のばね軸受210、図示しない駆動ピン(駆動ピン105と同じ構造)、合成樹脂製の鉄片ホルダ221に保持された鉄片220を備える。ばね軸受210は、インサート成形によりばね軸受支持部211を形成して後幕駆動レバー200の基板201に垂直に取り付けられている。鉄片ホルダ221はインサート成形により鉄片ホルダ支持部222を形成して基板201に垂直に取り付けられている。図示しない駆動ピンも同様である。なお、
図7は実施形態1の
図6(b)に示す断面図と同じ断面位置の断面図である。
【0054】
図7に示すように、後幕駆動レバー200の鉄片ホルダ221の基板201に垂直な方向の高さH5は、後幕駆動レバー100の鉄片ホルダ121の高さH4よりも小さい。これは、鉄片220の高さh4が鉄片120の高さh3よりも小さいためである。一方、鉄片220の基板201に平行な方向の幅W2は、後幕駆動レバー100の鉄片120の幅W1よりも大きい。
【0055】
電磁石との吸着力を保つため、鉄片220の高さh4を鉄片120の高さh3よりも小さくした分、鉄片220の幅W2を鉄片120の幅W1よりも大きくする必要がある。そのため寸法的には、鉄片220の基板201に平行な方向の幅W2が、基板201に垂直な方向の高さh4よりも大きい。
【0056】
鉄片220の寸法をこのように構成することで、後幕駆動レバー200の鉄片ホルダ221の高さH5を後幕駆動レバー100の鉄片ホルダ121の高さH4よりも低くすることができる。これにより、フォーカルプレーンシャッタ2の厚さをフォーカルプレーンシャッタ1の厚さに比べてさらに薄くすることができる。
【0057】
(実施形態3)
実施形態3のフォーカルプレーンシャッタ3の全体的な構造は実施形態1と同じである。実施形態1と異なる部分は、駆動レバー300の構造であるので、以下、実施形態3に係る駆動レバー300の構造について説明する。
【0058】
後幕駆動レバー300は、
図8に示すように、チタン製の基板301、合成樹脂製のばね軸受310、図示しない駆動ピン(駆動ピン105と同じ構造)、合成樹脂製の鉄片ホルダ321に保持された鉄片320を備える。鉄片ホルダ321はインサート成形により鉄片ホルダ支持部322を形成して基板301に垂直に取り付けられている。図示しない駆動ピンも同様である。鉄片ホルダ321と鉄片320の構成は実施形態2の鉄片ホルダ221と鉄片220の構成と同じである。なお、
図8は実施形態1の
図6(b)に示す断面図と同じ断面位置の断面図である。
【0059】
後幕駆動レバー300の基板301は、基板301から部分的に陥凹した、即ち基板301より低い位置に形成された段差部(陥凹部)302を有している。段差部302には、インサート成形により形成したばね軸受支持部311によって、ばね軸受310が段差部302に垂直な方向に延在するように取り付けられている。
図8に示すように、基板301と段差部302とは高低差H7を有して形成されている。ばね軸受310の長さH3は変わらないが、ばね軸受310の基板301からの高さH6は、ばね軸受310の長さH3に比べて段差部302の高低差H7だけ小さくなる。
【0060】
基板301に段差部302を設けることにより、ばね軸受310の長さH3をばね軸受210の長さと同じにしつつ(即ち駆動ばねの長さを変えずに)、ばね軸受310の基板301からの高さH6をばね軸受310の長さH3より小さくすることができる。これにより、フォーカルプレーンシャッタ3の厚さをフォーカルプレーンシャッタ2の厚さに比べてさらに薄くすることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態1乃至3について説明した。しかし本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、先幕10と後幕20の各駆動レバー50、100を保持する方式としてダイレクト方式を用いた。しかし係止タイプでもよい。また、実施形態ではノーマリークローズのフォーカルプレーンシャッタとして説明したが、それに限定されず、ノーマリーオープンタイプのフォーカルプレーンシャッタでもよい。また先幕機械シャッタ方式でも先幕電子シャッタ方式でもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では2幕(先幕と後幕)形式としたが単幕でもよい。2幕の場合、実施形態1のように両方に本発明を適用してもよいし、どちらか片方に適用してもよい。このように本発明は、駆動ばねの駆動力を複数の羽根を連結したアームに伝える駆動レバーを有するフォーカルプレーンシャッタ全般に実施可能である。
【0064】
上記の実施形態では、基板101、201、301はチタン製とした。しかし材料強度や成形性が十分であれば材質はこれに限られない。例えば金属全般を用いることができる。金属は、電磁石によって磁化されたときの磁束密度が十分小さい金属、例えば非磁性の金属が好ましい。これは電磁石による鉄片の吸着に影響を与えないようにするためである。例えば、電磁石によって磁化されたときの磁束密度が磁化された鉄片の磁束密度の10分の1以下である金属が好ましい。そのような金属として例えばチタン、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等やそれらの合金を用いることができる。またばね軸受110、210、310等の材質として合成樹脂のポリカーボネートを用いた。それは樹脂(合成樹脂又は天然樹脂)は流動性があり成形が容易で、かつ材料強度も大きく有利だからである。しかし材質はこれに限られず、材料強度、熱耐久性、成形性が十分であれば任意である。例えば、ばね軸受110、210、310等も上記例示の金属で形成してもよい。
【0065】
上記の実施形態では、チタンの基板101、201、301と合成樹脂のばね軸受110、210、310等との接合はインサート成形を用いたが、接合方法はこれに限られず、例えば熱カシメ等を用いてもよい。
【0066】
基板の材質を金属とすること、鉄片の形状を変えること、基板に段差部を設けることはそれぞれ単独で実施可能であり、また組み合わせて実施することも可能である。
【0067】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。