(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項3に記載のモータと、前記ロータに取り付けられる羽根車と、前記羽根車および前記ロータが配置され流体が通過するポンプ室と、前記ステータと前記ポンプ室との間に配置され前記ステータの配置箇所への前記ポンプ室内の流体の流入を防止する隔壁部材と、前記ステータを覆う樹脂製の樹脂封止部材とを備えることを特徴とするポンプ装置。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータと、ロータの外周側に配置される円筒状のステータとを備えるモータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータでは、ステータは、ステータコアと、ステータコアのティース部にインシュレータを介して巻回される駆動用コイルとを備えている。ステータコアは、ステータの周方向に分割される複数の分割コアを組み合わせることで形成されており、分割コアは、ステータの径方向におけるティース部の外側端に繋がる外ヨーク部を備えている。また、特許文献1には、ステータコアは、外ヨーク部が一体で連なった帯状のコアを円環状に折り曲げてその端部同士を繋ぐことで形成されるいわゆるカーリングコアでも良い旨が記載されている。
【0003】
カーリングコアは、たとえば、
図7に示すように、連結部101を介して繋がる複数の外ヨーク部102によって構成される直線状の帯状部分103と、複数の外ヨーク部102のそれぞれから帯状部分103の長手方向に直交する方向へ突出するティース部(突極部)104とを有するコア原体105を用いて形成される。また、カーリングコアは、帯状部分103が円環状となるようにかつ径方向の内側へ突極部104が突出するように、たとえば、
図8(A)〜(C)に示す順番で、帯状部分103を連結部101で順次、折り曲げて帯状部分103の両端同士を接続することで形成される。
【0004】
なお、特許文献1に記載のモータでは、突極部104の先端面(ステータの径方向における内側面)は、ステータの軸方向から見たときの形状が円弧状となる曲面状に形成されている。突極部104の先端面は、ステータの周方向においてエアギャップ(ロータとステータとの径方向の隙間)が一定になるように、設計上では、ステータの軸方向から見たときに、ステータの軸中心C10を中心とする仮想円VC10上に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8(A)〜(C)に示す順番で、帯状部分103を順次、折り曲げていく場合、
図7に示す状態から
図8(A)に示す状態へ最初に折り曲げられた連結部101には、
図8(A)に示す状態から
図8(B)に示す状態へ2回目に帯状部分103を折り曲げる際、および、
図8(B)に示す状態から
図8(C)に示す状態へ3回目に帯状部分103を折り曲げる際にも、折り曲げ方向への力が作用する。すなわち、最初に折り曲げられた連結部101には、折り曲げ後にも2回、折り曲げ方向への力が作用する。
【0007】
また、2回目に折り曲げられた連結部101には、
図8(B)に示す状態から
図8(C)に示す状態へ3回目に帯状部分103を折り曲げる際にも、折り曲げ方向への力が作用する。すなわち、2回目に折り曲げられた連結部101には、折り曲げ後にも1回、折り曲げ方向への力が作用する。これに対して、3回目に折り曲げられた連結部101には、折り曲げ後に折り曲げ方向への力が作用しない。
【0008】
本願発明者の検討によると、たとえば、突極部104の数が6個である場合のように、突極部104の数が少ない場合に、
図8に示すように帯状部分103を順次、折り曲げると、コア原体105において帯状部分103の両端のそれぞれに配置される2個の外ヨーク部102Aに繋がる突極部104Aの先端面が、ステータの軸方向から見たときに、仮想円VC10上から大きくずれることが明らかになった。
【0009】
すなわち、突極部104の数が少ない場合に、
図8に示すように帯状部分103を順次、折り曲げると、ステータの軸方向から見たときに6個の突極部104の先端面によって形成される円の真円度が突極部104Aにおいて低下することが本願発明者の検討によって明らかになった。具体的には、
図8(C)のG部の拡大図である
図9に示すように、ステータの軸方向から見たときに、突極部104Aの先端面が仮想円VC10から径方向の外側に大きくずれて、6個の突極部104の先端面によって形成される円の真円度が突極部104Aにおいて低下することが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0010】
そこで、本発明の課題は、カーリングコアであるステータコアを有するステータにおいて、ステータコアの突極部の数が比較的少なくても、ステータの軸方向から見たときに複数の突極部の先端面によって形成される円の真円度の低下を抑制することが可能なステータを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるステータを備えるモータを提供することにある。さらに、本発明の課題は、かかるモータを備えるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のステータは、筒状に形成されるとともに、コイルと、絶縁部材と、絶縁部材を介してコイルが巻回される複数の突極部を有するステータコアとを備えるステータであって、ステータコアは、環状に形成される外周環部と、外周環部からステータの径方向の内側に向かって突出するとともにステータの周方向において一定の間隔で配置される複数の突極部とを備え、外周環部は、複数の突極部と同じ数の外周部によって構成され、複数の外周部は、周方向に配列されるとともに、複数の外周部のそれぞれに、1個の突極部が繋がっており、周方向における外周部の境界の1箇所には、つなぎ目が形成され、周方向における外周部の境界のうちのつなぎ目が形成される1箇所を除いた残りの箇所には、径方向における外周部の外側端同士を繋ぐ連結部が形成され、周方向における外周部の両端のそれぞれには、ステータの軸方向から見たときの形状が直線となる平面状の当接面が形成され、周方向で隣り合う外周部の当接面同士が互いに当接しており、つなぎ目で当接する2個の当接面を第1当接面とし、径方向における連結部の内側で当接する当接面を第2当接面とすると、軸方向から見たときに、第1当接面と、第1当接面が形成される外周部に繋がる突極部の周方向の中心線とがなす角度は、第2当接面と、この第2当接面が形成される外周部に繋がる突極部の周方向の中心線とがなす角度よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0012】
本発明のステータでは、外周環部は、ステータの周方向に配列される複数の外周部によって構成されており、周方向における外周部の境界の1箇所に、つなぎ目が形成され、周方向における外周部の境界のうちのつなぎ目が形成される1箇所を除いた残りの箇所には、径方向における外周部の外側端同士を繋ぐ連結部が形成されている。また、本発明では、周方向における外周部の両端のそれぞれに、ステータの軸方向から見たときの形状が直線となる平面状の当接面が形成されるとともに、周方向で隣り合う外周部の当接面同士が互いに当接している。さらに、本発明では、つなぎ目で当接する2個の当接面を第1当接面とし、径方向における連結部の内側で当接する当接面を第2当接面とすると、軸方向から見たときに、第1当接面と、第1当接面が形成される外周部に繋がる突極部の周方向の中心線とがなす角度は、第2当接面と、この第2当接面が形成される外周部に繋がる突極部の周方向の中心線とがなす角度よりも小さくなっている。
【0013】
そのため、本発明では、連結部を介して繋がる複数の外周部によって構成される帯状のコアを連結部で順次、折り曲げ、最終的に2個の第1当接面を当接させてつなぎ目を形成することで製造されるステータコアにおいて、ステータコアの突極部の数が比較的少なくても、ステータの軸方向から見たときに、最後に折り曲げられた外周部に繋がる突極部の先端面を上述の仮想円VC10に近づけることが可能になる。したがって、本発明では、カーリングコアであるステータコアを有するステータにおいて、ステータコアの突極部の数が比較的少なくても、ステータの軸方向から見たときに複数の突極部の先端面によって形成される円の真円度の低下を抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、第1当接面が形成される外周部を第1外周部とすると、第1外周部の第2当接面と、第1外周部に繋がる突極部の周方向の中心線とがなす角度は、第1外周部以外の外周部の第2当接面と、この第2当接面が形成される外周部に繋がる突極部の周方向の中心線とがなす角度よりも大きくなっていることが好ましい。このように構成すると、第1外周部に繋がる突極部の先端面を上述の仮想円VC10により近づけることが可能になる。したがって、カーリングコアであるステータコアの突極部の数が比較的少なくても、ステータの軸方向から見たときに複数の突極部の先端面によって形成される円の真円度の低下を効果的に抑制することが可能になる。
【0015】
本発明のステータは、駆動用磁石を有しステータの内周側に配置されるロータを備えるモータに用いることができる。また、このモータは、ロータに取り付けられる羽根車と、羽根車およびロータが配置され流体が通過するポンプ室と、ステータとポンプ室との間に配置されステータの配置箇所へのポンプ室内の流体の流入を防止する隔壁部材と、ステータを覆う樹脂製の樹脂封止部材とを備えるポンプ装置に用いることができる。このモータおよびポンプ装置では、カーリングコアであるステータコアの突極部の数が比較的少なくても、ステータの軸方向から見たときに複数の突極部の先端面によって形成される円の真円度の低下を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、カーリングコアであるステータコアを有するステータにおいて、ステータコアの突極部の数が比較的少なくても、ステータの軸方向から見たときに複数の突極部の先端面によって形成される円の真円度の低下を抑制することが可能になる。また、本発明のモータおよびポンプ装置では、カーリングコアであるステータコアの突極部の数が比較的少なくても、ステータの軸方向から見たときに複数の突極部の先端面によって形成される円の真円度の低下を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(ポンプ装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるポンプ装置1の断面図である。なお、以下の説明では、
図1の上側(Z1方向側)を「上」側とし、
図1の下側(Z2方向側)を「下」側とする。
【0020】
本形態のポンプ装置1は、キャンドポンプ(キャンドモータポンプ)と呼ばれるタイプのポンプであり、羽根車2と、羽根車2を回転させるモータ3と、モータ3を制御するための回路基板4とを備えている。モータ3は、ロータ5とステータ6とによって構成されている。羽根車2、モータ3および回路基板4は、ハウジング7と、ハウジング7の上部を覆う上ケース8とによって構成されるケース体の内部に配置されている。ハウジング7と上ケース8とは、図示を省略するネジによって互いに固定されている。
【0021】
上ケース8には、流体の吸入部8aと、流体の吐出部8bとが形成されている。ハウジング7と上ケース8との間には、吸入部8aから吸入された流体が吐出部8bに向かって通過するポンプ室9が形成されている。また、ハウジング7と上ケース8との接合部分には、ポンプ室9の密閉性を確保するためのシール部材(Oリング)10が配置されている。ハウジング7は、ポンプ室9とステータ6とを隔てるようにポンプ室9とステータ6との間に配置される隔壁部材11と、隔壁部材11の下面および側面を覆う樹脂製の樹脂封止部材12とを備えている。
【0022】
ロータ5は、駆動用磁石14と、円筒状のスリーブ15と、駆動用磁石14およびスリーブ15を保持する保持部材16とを備えている。保持部材16は、鍔付きの略円筒状に形成されている。駆動用磁石14は、保持部材16の外周側に固定され、スリーブ15は、保持部材16の内周側に固定されている。上側に配置される保持部材16の鍔部16aには、羽根車2が固定されている。羽根車2およびロータ5は、ポンプ室9の内部に配置されている。
【0023】
ロータ5は、固定軸17に回転可能に支持されている。固定軸17は、固定軸17の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、ロータ5の軸方向である。固定軸17の上端は、上ケース8に保持され、固定軸17の下端は、ハウジング7に保持されている。固定軸17は、スリーブ15の内周側に挿通されている。また、固定軸17には、スリーブ15の上端面に当接するスラスト軸受部材18が取り付けられている。本形態では、スリーブ15がロータ5のラジアル軸受として機能し、スリーブ15およびスラスト軸受部材18がロータ5のスラスト軸受として機能している。
【0024】
ステータ6は、コイルとしての駆動用コイル23と、ステータコア24と、絶縁部材としてのインシュレータ25とを備えており、全体として筒状に形成されている。具体的には、ステータ6は、略円筒状に形成されている。ステータ6は、隔壁部材11を介して、ロータ5の外周側に配置されている。すなわち、ロータ5は、ステータ6の内周側に配置されている。また、ステータ6は、ステータ6の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、ステータ6の軸方向である。また、ステータ6は、駆動用コイル23の端部が絡げられて電気的に接続される端子ピン26を備えている。ステータ6の具体的な構成については後述する。なお、以下の説明では、ロータ5およびステータ6の径方向を「径方向」とし、ロータ5およびステータ6の周方向(円周方向)を「周方向」とする。
【0025】
隔壁部材11は、鍔付きの略有底円筒状に形成されており、円筒部11bと底部11cと鍔部11dとを備えている。円筒部11bは、円筒状に形成されており、駆動用磁石14の外周面を覆うように配置されている。また、円筒部11bは、円筒部11bの軸方向と上下方向とが略一致するように配置されている。底部11cは、円筒部11bの下端を塞ぐ略円板状に形成されている。鍔部11dは、円筒部11bの上端から径方向の外側へ広がるように形成されている。
【0026】
底部11cの上面には、固定軸17の下端側を保持する軸保持部11hが上側へ突出するように形成されている。底部11cの下面には、回路基板4を隔壁部材11に固定するための固定用突起11jと、回路基板4を位置決めするための位置決め用突起11kとが下側へ突出するように形成されている。
図1に示すように、隔壁部材11の内側および上側がポンプ室9となっており、羽根車2およびロータ5は、隔壁部材11の内側および上側に配置されている。隔壁部材11は、ステータ6の配置箇所へのポンプ室9内の流体の流入を防止する機能を果たしている。
【0027】
回路基板4は、回路基板4の厚さ方向と上下方向とが一致するように、底部11cの下面側に固定されている。具体的には、回路基板4は、固定用突起11jと位置決め用突起11kとによって位置決めされた状態で、固定用突起11jにねじ込まれるネジ34によって、底部11cの下面側に固定されている。また、回路基板4には、端子ピン26の下端側部分が半田付けされて固定されている。
【0028】
樹脂封止部材12は、回路基板4および駆動用コイル23等を完全に覆って、回路基板4および駆動用コイル23等を流体から保護するために設けられている。この樹脂封止部材12は、回路基板4およびステータ6が取り付けられた状態の隔壁部材11に対して、樹脂材料を射出することで形成されている。具体的には、回路基板4およびステータ6が取り付けられた隔壁部材11を金型内に配置し、この金型内に樹脂材料を注入して硬化させることで樹脂封止部材12が形成されている。樹脂封止部材12は、全体として略有底円筒状に形成されており、回路基板4、ステータ6、円筒部11bおよび底部11cを完全に覆っている。また、樹脂封止部材12は、鍔部11dの下面を覆っている。
【0029】
(ステータの構成)
図2は、
図1に示すステータ6の斜視図である。
図3は、
図2に示すステータコア24の平面図である。
図4は、
図3に示す外周部24eの具体的な構成を説明するための拡大図である。
【0030】
ステータ6は、上述のように、駆動用コイル23とステータコア24とインシュレータ25と端子ピン26とを備えている。ステータコア24は、磁性材料からなる薄い磁性板が積層されて形成された積層コアである。このステータコア24は、
図3に示すように、環状に形成される外周環部24aと、外周環部24aから径方向の内側に向かって突出する複数の突極部24bとを備えている。本形態のステータコア24は、6個の突極部24bを備えている。6個の突極部24bは、等角度ピッチで形成されており、周方向において一定の間隔で配置されている。なお、ステータコア24が有する突極部24bの数は、6個以外の数であっても良い。
【0031】
外周環部24aは、上下方向から見たときの外周面の形状が略円形状となり、上下方向から見たときの内周面の形状が略六角形状となる環状に形成されている。外周環部24aの外周面は、ステータコア24の外周面を構成している。上下方向から見たときの外周環部24aの軸中心は、ステータコア24の軸中心となっている。また、上下方向から見たときのステータコア24の軸中心は、ステータ6の軸中心C1と一致している。
【0032】
外周環部24aは、周方向に配列される6個の外周部24eによって構成されている。すなわち、外周環部24aは、突極部24bと同じ数の外周部24eによって構成されている。周方向における外周環部24aの一部分であって、上下方向から見たときに略六角形状をなす外周環部24aの内周面の1つの頂点とその頂点に隣り合う頂点との間の部分が1つの外周部24eとなっている。すなわち、周方向における外周環部24aの一部分であって、上下方向から見たときに略六角形状をなす外周環部24aの内周面の一辺に対応する部分が1つの外周部24eとなっている。
【0033】
径方向における外周部24eの外側面(外周面)は、上下方向から見たときの形状が略円弧状となる凸曲面状に形成されている。径方向における外周部24eの内側面は、上下方向から見たときの形状が直線状となる平面状に形成されている。外周部24eの外周面には、径方向の内側に向かって窪む凹部24fが形成されている。凹部24fは、上下方向から見たときの形状が円弧状となるように形成されている。また、凹部24fは、上下方向における外周部24eの全域に形成されている。さらに、凹部24fは、上下方向から見たときに、外周部24eの外周面の中心に形成されている。
【0034】
突極部24bは、周方向における外周部24eの中心に形成されている。すなわち、6個の外周部24eのそれぞれには、1個の突極部24bが繋がっている。また、突極部24bは、突極部24bの先端部である突極先端部24cと、突極先端部24cと外周環部24aとを繋ぐ連結部24dとから構成されている。連結部24dは、径方向における外周部24eの内側面に直交する直線状に形成されている。突極先端部24cは、上下方向から見たときに、直線状に形成される連結部24dの先端(径方向内側端)から周方向の両側に向かって伸びる略円弧状に形成されている。
【0035】
突極部24bの先端面(すなわち、径方向における突極先端部24cの内側面)24gは、上下方向から見たときの形状が円弧状となる曲面状に形成されている。6個の突極部24bの先端面24gは、設計上、上下方向から見たときに、ステータ6の軸中心C1を中心とする仮想円VC1上に配置されている。また、6個の先端面24gは、円筒部11bを介して駆動用磁石14の外周面と対向している。
【0036】
また、ステータコア24は、直線状に繋がっていた6個の外周部24e(
図5参照)を、外周部24eと外周部24eとの境界で折り曲げてその端部同士を繋ぐことで形成されるカーリングコアである。すなわち、ステータコア24は、外周環部24aとなる帯状のコアと、この帯状のコアの一方の面から立ち上がる6個の突極部24bとから構成されるコアの端部同士を繋ぐことで、環状に形成されている。そのため、
図3に示すように、周方向における6箇所の外周部24eの境界のうちの1箇所にはつなぎ目24hが形成されている。本形態では、つなぎ目24hにおいて、帯状のコアの端部同士が溶接されて互いに固定されており、つなぎ目24hには、溶接跡が形成されている。
【0037】
また、周方向における6箇所の外周部24eの境界のうちのつなぎ目24hが形成された1箇所を除いた残りの5箇所の外周部24eの境界には、径方向における外周部24eの外側端同士を繋ぐ連結部24jが形成されている。また、周方向における外周部24eの両端のそれぞれには、上下方向から見たときの形状が直線となる平面状の当接面24kが形成されており、周方向で隣り合う外周部24eの当接面24k同士が互いに当接している。連結部24jが形成される外周部24eの境界では、径方向における連結部24jの内側に当接面24kが配置されており、径方向における連結部24jの内側で当接面24kが当接している。また、つなぎ目24hが形成される外周部24eの境界では、径方向の全域が当接面24kとなっている。
【0038】
以下では、つなぎ目24hの両側に配置される2個の外周部24eを残りの4個の外周部24eと区別して表す場合には、この2個の外周部24eのうちの一方の外周部24eを「外周部24e1」とし、他方の外周部24eを「外周部24e2」とする。また、つなぎ目24hで当接する2個の当接面24kとそれ以外の当接面24kとを区別して表す場合には、この2個の当接面24kのうちの外周部24e1に形成される当接面24kを「第1当接面24k1」とし、外周部24e2に形成される当接面24kを「第1当接面24k2」とし、径方向における連結部24jの内側で当接する残りの当接面24kを「第2当接面24k」とする。なお、第1当接面24k1には、位置決め用の凸部が周方向に突出するように形成され、この凸部が係合する凹部が第1当接面24k2に形成されている。
【0039】
上下方向から見たときに、第1当接面24k1と、外周部24e1に繋がる突極部24bの周方向における中心線CLとがなす角度θ1(
図4参照)、および、第1当接面24k2と、外周部24e2に繋がる突極部24bの周方向における中心線CLとがなす角度θ2(
図4参照)は、第2当接面24kと、この第2当接面24kが形成される外周部24eに繋がる突極部24bの周方向における中心線CLとがなす角度θ3(
図4参照)よりも小さくなっている。
【0040】
すなわち、角度θ1、θ2は、外周部24e1、24e2以外の外周部24eの両端に形成される第2当接面24kと、この第2当接面24kが形成される外周部24eに繋がる突極部24bの周方向における中心線CLとがなす角度θ3よりも小さくなっている。また、角度θ1、θ2は、外周部24e1に形成される第2当接面24kと、外周部24e1に繋がる突極部24bの周方向における中心線CLとがなす角度θ3、および、外周部24e2に形成される第2当接面24kと、外周部24e2に繋がる突極部24bの周方向における中心線CLとがなす角度θ3よりも小さくなっている。
【0041】
角度θ1、θ2は、角度θ3よりもわずかに小さくなっている。また、角度θ1と角度θ2とは、等しくなっている。また、角度θ3は、30°となっており、角度θ1、θ2は、30°未満となっている。なお、角度θ1と角度θ2とは等しくなくても良い。また、上下方向から見たときに、第1当接面24k1、24k2を通過するとともに第1当接面24k1、24k2から径方向の内側へ伸びる仮想線VL1、VL2、および、第2当接面24kを通過するとともに第2当接面24kから径方向の内側へ伸びる仮想線VL3は、ステータ6の軸中心C1を通過する。
【0042】
インシュレータ25は、樹脂等の絶縁性材料で形成されている。このインシュレータ25は、突極部24bごとに取り付けられており、ステータ6は、6個のインシュレータ25を備えている。すなわち、ステータ6は、突極部24bと同じ数のインシュレータ25を備えている。また、インシュレータ25は、両端に鍔部を有する鍔付きの筒状に形成されており、インシュレータ25の軸方向とステータ6の径方向とが一致するように突極部24bに取り付けられている。インシュレータ25は、上下方向に分割可能な第1インシュレータ30と第2インシュレータ31とによって構成されており、下側に配置される第1インシュレータ30と上側に配置される第2インシュレータ31とを組み合わせることでインシュレータ25が形成される。
【0043】
端子ピン26の上端側部分は、第1インシュレータ30に圧入されて固定されており、端子ピン26の下端側部分は、第1インシュレータ30から下側へ突出している。駆動用コイル23は、アルミニウム合金または銅合金からなる導線によって構成されている。この駆動用コイル23は、インシュレータ25を介して突極部24bに巻回されている。駆動用コイル23の一端部は、第1インシュレータ30に固定される2本の端子ピン26の一方に絡げられて固定され、駆動用コイル23の他端部は、2本の端子ピン26の他方に絡げられて固定されている。
【0044】
(ステータの製造方法)
図5は、加工後に
図3に示すステータコア24となるコア原体54の平面図である。
図6は、
図3に示すステータコア24の形成方法を説明するための図である。
【0045】
ステータ6は、以下のように製造される。まず、加工後にステータコア24となるコア原体54(
図5参照)に、インシュレータ25を取り付ける。コア原体54は、
図5に示すように、連結部24jを介して繋がる6個の外周部24eによって構成される直線状の帯状部54aと、6個の外周部24eのそれぞれから帯状部54aの長手方向に直交する方向へ突出する6個の突極部24bとを備えている。コア原体54では、外周部24eに凹部24fおよび当接面24kが形成されている。また、コア原体54の一端に配置される外周部24eは、外周部24e1となっており、コア原体54の他端に配置される外周部24eは、外周部24e2となっている。
【0046】
その後、インシュレータ25に端子ピン26を圧入して固定し、インシュレータ25を介して突極部24bに駆動用コイル23を巻回するとともに、駆動用コイル23を端子ピン26に半田付けして固定する。
【0047】
その後、直線状の帯状部54aが環状をなす外周環部24aとなるように、かつ、径方向における外周環部24aの内側へ突極部24bが突出するように、帯状部54aを連結部24jで順次、折り曲げる。具体的には、
図6(A)〜(C)に示す順番で、帯状部54aの中心から両端側に向かって帯状部54aを順次、折り曲げる。帯状部54aを折り曲げるときには、
図6の矢印で示す方向から折り曲げ用の治具(図示省略)を凹部24fに押し当てて帯状部54aを折り曲げる。また、帯状部54aを折り曲げるときには、突極部24bの先端面24gが当接する円柱状の治具60を用いる。なお、
図6では、駆動用コイル23、インシュレータ25および端子ピン26の図示を省略している。
【0048】
その後、帯状部54aの端部同士を溶接等によって繋いで、つなぎ目24hを形成する。すなわち、当接面24k1と当接面24k2とを溶接等で接合する。帯状部54aの端部同士が繋がれるとステータ6が完成する。なお、ステータ6が完成すると、ステータ6の内周側に隔壁部材11の円筒部11bを挿入する。その後、回路基板4を隔壁部材11に固定するとともに、端子ピン26を回路基板4に半田付けして固定する。また、その後、ステータ6および回路基板4を覆うように樹脂封止部材12を形成する。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、外周環部24aのつなぎ目24hで第1当接面24k2と当接する第1当接面24k1と、外周部24e1に繋がる突極部24bの中心線CLとがなす角度θ1、および、第1当接面24k1と当接する第1当接面24k2と、外周部24e2に繋がる突極部24bの中心線CLとがなす角度θ2が、第2当接面24kと、この第2当接面24kが形成される外周部24eに繋がる突極部24bの中心線CLとがなす角度θ3よりも小さくなっている。
【0050】
そのため、本形態では、連結部24jを介して繋がる6個の外周部24eによって構成される帯状部54aを
図6に示すように連結部24jで順次、折り曲げ、最終的に第1当接面24k1と第1当接面24k2とを当接させてつなぎ目24hを形成することで製造されるステータコア24において、突極部24bの数が比較的少なくても、上下方向から見たときに、外周部24e1、24e2に繋がる突極部24bの先端面24gを仮想円VC1に近づけることが可能になる。したがって、本形態では、カーリングコアであるステータコア24の突極部24bの数が比較的少なくても、上下方向から見たときに6個の先端面24gによって形成される円の真円度の低下を抑制することが可能になる。
【0051】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0052】
上述した形態において、外周部24e1に形成される第2当接面24kと、外周部24e1に繋がる突極部24bの中心線CLとがなす角度θ3(以下、この角度をθ31とする、
図4参照)、および、外周部24e2に形成される第2当接面24kと、外周部24e2に繋がる突極部24bの中心線CLとがなす角度θ3(以下、この角度をθ32とする、
図4参照)は、外周部24e1、24e2以外の外周部24eの両端に形成される第2当接面24kと、この第2当接面24kが形成される外周部24eに繋がる突極部24bの中心線CLとがなす角度θ3(以下、この角度をθ33とする、
図4参照)より大きくなっていても良い。たとえば、θ31、θ32は、θ33よりもわずかに大きくなっていても良い。
【0053】
この場合には、外周部24e1、24e2に繋がる突極部24bの先端面24gを仮想円VC1により近づけることが可能になる。したがって、カーリングコアであるステータコア24の突極部24bの数が比較的少なくても、上下方向から見たときに6個の先端面24gによって形成される円の真円度の低下を効果的に抑制することが可能になる。なお、この場合の外周部24e1、24e2は、第1外周部である。また、この場合には、角度θ31と角度θ32とが等しくても良いし、等しくなくても良い。
【0054】
上述した形態では、ステータコア24は、積層コアであるが、ステータコア24がカーリングコアであるのであれば、ステータコア24は、積層コアでなくても良い。また、上述した形態では、モータ3は、ポンプ装置1で使用されているが、モータ3は、ポンプ装置1以外の装置で使用されても良い。また、上述した形態では、ステータ6は、モータ3で使用されているが、ステータ6は、発電機で使用されても良い。