(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の第2電極のそれぞれは、電極面の法線方向が、鉛直方向に垂直であり、前記1次電解槽の外壁と前記開口部との圧接方向にも垂直である方向となるよう設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電解水の製造装置。
前記1次電解槽の外壁に収容される、前記1次電解水を前記2次電解槽に案内する案内部の前記開口部側の面には、前記複数の第2電極のそれぞれの縁が係合される溝が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電解水の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1Aは、本開示で提案する電解水の製造装置の内部部品の一部を示す分解斜視図である。
図1Bは、本開示で提案する電解水の製造装置の内部部品の残りを示す分解斜視図である。但し、全体構造の理解の容易のため、いずれの図にも後述するガスケット42、陽極室ケース44及び案内板46が表されている。
図2は、外ケース14a,14bを外した状態の電解水の製造装置を示す外観斜視図であり、
図3は、外ケース14a,14bを取り付けた状態の電解水の製造装置を示す外観斜視図である。
図4Aは、外ケース14a,14bを外した状態の電解水の製造装置の縦断面図である。
図4Bは、外ケース14a,14bを外した状態の電解水の製造装置の部分拡大断面図である。
【0016】
なお、以下の説明では、
図1Bにおいて有底箱状に示される電極収容ケース50の開口の向きを右方向(X2方向)とし、その逆向きを左方向(X1方向)する。また、その手前側面の向きを前方(Y1方向)とし、その逆向きを後方(Y2方向)とする。さらに、上面の向きを上方向(Z1方向)とし、その逆向きを下方向(Z2方向)とする。
【0017】
本実施形態に係る製造装置1には、1次電解槽10、2次電解槽12、外ケース14a、及び、外ケース14bが含まれている。外ケース14a及び外ケース14bは樹脂製である。本実施形態に係る1次電解槽10と2次電解槽12とは一体化されており、
図3に示すように、外ケース14a及び外ケース14bに収容されることでまとめて密封されることとなる。
【0018】
以下、1次電解槽10についてさらに説明する。
【0019】
1次電解槽10には、樹脂製である板状の陰極室ケース20が含まれている。陰極室ケース20の左側面の中央には、陰極室102の内壁となる陰極室凹部20aが形成されている。陰極室ケース20の右側面の中央上部には陰極室排液口104が凸設されており、当該陰極室排液口104の内部には陰極室凹部20aの中央上部に至る排出路104aが形成されている。同様に、陰極室ケース20の右側面の中央下部には陰極室給液口100が凸設されており、当該陰極室給液口100の内部には陰極室凹部20aの中央下部に至る流入路100aが形成されている。
【0020】
陰極室ケース20の左側面に形成された陰極室凹部20aの周縁には溝が形成されており、この溝にガスケット22が収容される。陰極室凹部20a及びガスケット22を覆うように、陰極室ケース20の左側面には板状の第1陰極24が配置される。
【0021】
第1陰極24には前方に突出するようタブ状の端子24aが形成されている。また第1陰極24には液体を通すための多数の孔がメッシュ状に形成されている。第1陰極24の材質としては、水素原子よりもイオン化傾向が低い金属であることが好ましく、例えば、白金電極、ダイヤモンド電極が挙げられる。
【0022】
第1陰極24の左側には柔軟性のある薄膜である陽イオン交換膜26が第1陰極24に添うよう配置され、陽イオン交換膜26と陰極室凹部20aとにより陰極室102が液密に区画されている。なお陽イオン交換膜26は薄膜であるため、
図4A及び
図4Bにおいては図示を省略している。陰極室給液口100から後述する原水が流入すると、当該原水は陰極室102で後述する1次電解工程によって後述するアルカリ性電解水となり、陰極室排液口104から排出される。このとき、陽イオン交換膜26は後述するメッシュパーツ30に添うよう設けられており、当該メッシュパーツ30の表面に形成された凹凸に対応して、陽イオン交換膜26は波状となる。これにより、陽イオン交換膜26と第1陰極24との間にも原水が流通するようになっている。
【0023】
また1次電解槽10には、樹脂製で矩形枠状の中間室ケース32が含まれている。中間室ケース32は、その開口33が左右方向を向くよう配置されている。中間室ケース32の上面中央には、円筒状の中間室排液口110が上方に突出するように形成されている。
図4Bに示すように、中間室排液口110の内部には、開口33から当該中間室排液口110の先端に至る排出路110aが形成されている。同様に、中間室ケース32の底面中央には、円筒状の中間室給液口106が下方に突出するように形成されている。中間室給液口106の内部には、その先端から開口33に至る流入路106aが形成されている。
【0024】
中間室ケース32の右側面には内外二重の溝が形成されており、それらの溝に外側ガスケット28及び内側ガスケット29がそれぞれ収容される。中間室ケース32の左側面にも、内外二重の溝が形成されており、それらの溝に外側ガスケット36及び内側ガスケット37がそれぞれ収容される。
【0025】
中間室ケース32の内部には、薄膜である陰イオン交換膜38、板状のメッシュパーツ34、既に説明したメッシュパーツ30及び陽イオン交換膜26がこの順で重ねられて収容されている。なお陰イオン交換膜38も薄膜であるため、
図4A及び
図4Bにおいては図示を省略している。メッシュパーツ30の左側面には、複数の突起部30aが形成されており、同様にメッシュパーツ34の右側面における対応する位置にも、複数の突起部34aが形成されている。そして突起部30aと突起部34aとが当接することにより、メッシュパーツ30とメッシュパーツ34との間の空間が確保される。陽イオン交換膜26と陰イオン交換膜38とにより液密に区画された中間室108には、中間室給液口106から後述する塩素系電解質水溶液が流入し、中間室排液口110から排出される。
【0026】
また1次電解槽10には、樹脂製である板状の陽極室ケース44も含まれている。陽極室ケース44の右側面の中央には、陽極室114の内壁となる陽極室凹部44aが形成されている。陽極室凹部44aの下部中央には孔が開設されている。また陽極室ケース44には、当該孔から陽極室ケース44の下部に形成された陽極室給液口112の先端に至る原水の流入路112aが形成されている。また、陽極室凹部44aの上側中央には左右方向に貫通する孔である陽極室排液口116が形成されている。
【0027】
陽極室ケース44の右側面には、陽極室凹部44aを取り囲むように溝が形成されており、この溝にガスケット42が収容される。陽極室凹部44a及びガスケット42を覆うように、陽極室ケース44の右側面には板状の第1陽極40が収容される。第1陽極40にはタブ状の端子40aが前方に突出するように形成されている。また第1陽極40には液体を通すための多数の孔がメッシュ状に形成されている。第1陽極40の材質としては、例えば、酸化イリジウム、白金が挙げられる。以下、第1陰極24及び第1陽極40を、まとめて第1電極と呼ぶこととする。
【0028】
第1陽極40の右側には板状の陰イオン交換膜38が添うように配置され、陰イオン交換膜38及び陽極室凹部44aにより陽極室114が液密に区画されている。陽極室給液口112から原水が流入すると、当該原水は陽極室114で後述する1次電解工程によって後述する酸性電解水(1次電解水)となって陽極室排液口116から排出される。なお、陰イオン交換膜38はメッシュパーツ34に隣接しており、メッシュパーツ34の表面に形成された凹凸に対応して、陰イオン交換膜38は波状とすることができる。これにより、陰イオン交換膜38と第1陽極40との間にも原水が流通するようになっている。
【0029】
陽極室ケース44の左側面には、案内板収容凹部44bが形成されており、この案内板収容凹部44bに、樹脂製である板状の案内板46が収容される。案内板46の詳細については後述する。
【0030】
本実施形態では、1次電解槽10に含まれる板状の部材は平行に配置される。例えば陰極室ケース20及び中間室ケース32は、その面がX1−X2方向に対して垂直な方向となるよう平行に配置される。また中間室ケース32及び陽極室ケース44は、その面がX1−X2方向に対して垂直な方向となるよう平行に配置される。そして、陰極室ケース20と中間室ケース32とは、X1−X2方向を圧接方向として互いに圧接される。また中間室ケース32と陽極室ケース44とは、X1−X2方向を圧接方向として互いに圧接される。
【0031】
そして陽イオン交換膜26を介して陰極室102と中間室108とは仕切られ、陰イオン交換膜38を介して中間室108と陽極室114とは仕切られる。陽イオン交換膜26よりも右側の空間が陰極室102であり、陽イオン交換膜26と陰イオン交換膜38との間の空間が中間室108であり、陰イオン交換膜38よりも左側の空間が陽極室114である。そして陽イオン交換膜26によって、陰極室102と中間室108との間は陽イオンが通過可能となり、陰イオン交換膜38によって中間室108と陽極室114との間は陰イオンが通過可能となる。
【0032】
そして本実施形態では、第1陰極24の端子24aに形成された孔及び第1陽極40の端子40aに形成された孔に接続される配線を介して、第1陰極24及び第1陽極40は、直流電源(図示せず)と電気的に接続される。そして1次電解槽10では、第1陰極24と第1陽極40との間に電圧が印加されて、原水及び塩素系電解質水溶液を電気分解の対象とする1次電解工程が行われる。
【0033】
本実施形態では、陰極室給液口100から原水が陰極室102に供給され、陽極室給液口112から原水が陽極室114に供給される。本実施形態に係る原水としては、例えば、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水あるいはRO水などを用いることができる。また本実施形態に係る原水は、電解質の合計濃度が15ppm以下の水であってもよい。また例えば、原水における金属イオン濃度(ナトリウムイオン濃度)が例えば、2ppm以下であってもよい。
【0034】
そして本実施形態では、中間室108の下方に形成された中間室給液口106から高濃度の塩素系電解質水溶液が中間室108に供給される。ここで本実施形態に係る塩素系電解質とは、水に溶解すると塩化物イオンを生じる電解質のことをいう。塩素系電解質としては、例えば、アルカリ金属の塩化物(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)の塩化物が挙げられる。
【0035】
本実施形態において中間室給液口106から中間室108に供給される高濃度の塩素系電解質水溶液の濃度は、調製される電解水の質に大きな影響を及ぼさないが、可能な限り高濃度であることが好ましい。なお塩素系電解質水溶液に含まれる塩素系電解質が塩化ナトリウムの場合、当該塩素系電解質水溶液に含まれる塩化ナトリウムの濃度は26質量%以下であることが好ましい。
【0036】
本実施形態では、中間室108の下方に形成された、中間室108に連通する中間室給液口106及び中間室108の上方に形成された、中間室108に連通する中間室排液口110は、閉水路を構成する配管に接続されている。そしてポンプ(図示せず)によって、当該閉水路内を塩素系電解質水溶液が循環する。中間室108は、当該閉水路の一部ということとなる。
【0037】
1次電解工程では中間室108中の塩素イオンが陰イオン交換膜38を通過して陽極室114へと移動し、第1陽極40にて塩素イオンが塩素に変換される。これにより、陽極室114にて酸性電解水(1次電解水)が生じる。一方、中間室108中の陽イオンが陽イオン交換膜26を通過して陰極室102へと移動する。これにより、陰極室102にてアルカリ性電解水が生じる。
【0038】
本実施形態に係る1次電解水を得るためには、電気分解において、第1電極(第1陽極40および第1陰極24)に供給される電流は1.0A〜1.5Aであることが好ましい。
【0039】
陰極室102で生成されたアルカリ性電解水は陰極室102に上方に形成された、陰極室102に連通する陰極室排液口104から排出される。陽極室114で生成された1次電解水は、案内板46によって2次電解槽12に案内される。
【0040】
図5は、案内板46が収容された陽極室ケース44を示す斜視図である。
図6Aは、
図5に示す陽極室ケース44及び案内板46の分解斜視図である。
図6Bは、
図5に示す陽極室ケース44及び案内板46の、
図6Aとは別の方向から見た様子を示す分解斜視図である。
図7は、案内板46によって2次電解槽12に案内される1次電解水の流路を説明する説明図である。
【0041】
図6Bに示すように案内板収容凹部44bの下側面前方及び下側面後方には、1次電解水出口120が下に突出するように形成されている。案内板収容凹部44bに案内板46が収容されても1次電解水出口120は案内板46に覆われることなく露出する。
図6Aに示すように、案内板46の右側面には、逆U字型の案内流路118が形成されている。陽極室排液口116から流入する1次電解水は案内流路118を経由して1次電解水出口120から排出される。1次電解水出口120は後述する2次電解槽12の反応室122と接続されているため、1次電解水出口120から排出された1次電解水は2次電解槽12の下側に供給されることとなる。以上のように、本実施形態に係る案内板46は、1次電解水を1次電解槽10の上側から2次電解槽12の下側に案内する案内部としての役割を果たす。
【0042】
本実施形態では、陰極室102、中間室108、及び、陽極室114の3室が形成された1次電解槽10によって酸性電解水(1次電解水)が生成される。そのため、本実施形態に係る1次電解槽10で生成される酸性電解水(1次電解水)は、隔膜で区画された陰極室及び陽極室の2室が形成された電解槽によって生成される酸性電解水よりも、含まれる電解質の濃度が低くなる。このようにして本実施形態に係る1次電解槽10によれば、純度の高い1次電解水を製造することができる。
【0043】
以下、2次電解槽12について説明する。
【0044】
2次電解槽12には、略直方体形状の電極収容ケース50が含まれている。電極収容ケース50の右側面には開口部50aが形成されている。開口部50aの底には、第2陰極54及び第2陽極56の左側の縁を支持する電極支持部78が収容される。また開口部50aには、複数の板状の第2陰極54、及び、複数の板状の第2陽極56が収容される。また開口部50aには、第2陰極54の間隔を保つための金属製のリング状の第2陰極スペーサ62、第2陽極56の間隔を保つための金属製のリング状の第2陽極スペーサ70も収容される。また電極収容ケース50の右側面に形成された開口部50aの周縁には溝が形成されており、この溝にガスケット52が収容される。以下、第2陰極54及び第2陽極56を、まとめて第2電極と呼ぶこととする。
【0045】
図1Bには、7個の板状の第2陽極56及び6個の板状の第2陰極54が交互に配置されている様子が示されている。第2陰極54の左上、右上、及び、左下には小さな切り欠きが形成されており、右下には大きな切り欠きが形成されている。また第2陰極54の右上には孔54aも形成されている。そして陰極棒58が、第2陰極54に形成された孔54aと第2陰極スペーサ62に形成された孔とを交互に貫通する。また第2陽極56の左上、左下、及び、右下には、小さな切り欠きが形成されており、右上には大きな切り欠きが形成されている。また第2陽極56の右下には孔56aも形成されている。そして陽極棒60が、第2陽極56に形成された孔56aと第2陽極スペーサ70に形成された孔とを交互に貫通する。なお本実施形態では第2陽極56と第2陰極54が第2陽極56を外側にして交互に配置されているが、第2陰極54が外側になっていても良く、第2陰極54と第2陽極56とが交互に配置されていれば両側の極の配置は限定されない。
【0046】
陰極棒58の両端にはねじが形成されており、陰極棒58の後方の端には、内側面にねじが形成されたナット64cが取り付けられる。また陰極棒58の前方の端は、ナット64bの内側面及びガスケット66に形成された孔を貫通して、陰極棒固定部68の後方側の内側面に挿入される。なお、ナット64bの内側面にはねじが形成されている。また陰極棒固定部68には、フランジが形成されており、フランジよりも後方については内側面にねじが形成されている。電極収容ケース50の前面上方には底に孔が形成された凹部が形成されている。この凹部の底面と陰極棒固定部68に形成されたフランジとでガスケット66が挟まれるようにした上で、ナット64bを締めることで、陰極棒固定部68は、電極収容ケース50にしっかりと固定されることとなる。また陰極棒固定部68の、フランジよりも前方については、外側面にねじが形成されている。そして陰極棒固定部68の前方の端には、ナット64aが取り付けられる。
【0047】
陽極棒60の両端にはねじが形成されており、陽極棒60の後方の端には、内側面にねじが形成されたナット72cが取り付けられる。また陽極棒60の前方の端は、ナット72bの内側面及びガスケット74に形成された孔を貫通して、陽極棒固定部76の後方側の内側面に挿入される。なお、ナット72bの内側面にはねじが形成されている。また陽極棒固定部76には、フランジが形成されており、フランジよりも後方については内側面にねじが形成されている。電極収容ケース50の前面下方には底に孔が形成された凹部が形成されている。この凹部と陽極棒固定部76に形成されたフランジとでガスケット74が挟まれるようにした上で、ナット72bを締めることで、陽極棒固定部76は、電極収容ケース50にしっかりと固定されることとなる。また陽極棒固定部76の、フランジよりも前方については、外側面にねじが形成されている。そして陽極棒固定部76の前方の端には、ナット72aが取り付けられる。
【0048】
そして電極収容ケース50の開口部50aは、陽極室ケース44によって左方向に圧接される。また
図5及び
図6Bに示されている陽極室ケース44の左側の圧接面44cは、電極収容ケース50によって、右方向に圧接される。このように本実施形態では、陽極室ケース44は、2次電解槽12の開口部50aと圧接される、1次電解槽10の外壁としての役割を担っていることとなる。また本実施形態では、陽極室ケース44と開口部50aとにより反応室122が液密に区画されている。
【0049】
そして本実施形態では、
図1Bに示すように電極支持部78の右側面の上側及び下側には、上下方向に延伸する複数の溝が一定の間隔で形成されている。また
図5及び
図6Bに示すように、案内板46の開口部50a側の面、すなわち、左側面には、上下方向に延伸する複数の溝46aが一定の間隔で形成されている。そして、案内板46に形成された溝46aには、第2陰極54及び第2陽極56のそれぞれの右側の縁が係合され、電極支持部78に形成された溝には、第2陰極54及び第2陽極56のそれぞれの左上及び左下の端が係合される。
【0050】
電極収容ケース50の上面左側には、反応室122で生成される2次電解水が排出される円筒状の2次電解水排液口124が上方に突出するように形成されている。
図4Aに示すように、2次電解水排液口124の内部には、反応室122から当該2次電解水排液口124の先端に至る排出路124aが形成されている。電極収容ケース50の上面中央には、反応室122で発生する気体を反応室122の外へと排気するための円筒状の通気口126が上方に突出するように形成されている。
図4Aに示すように、通気口126の内部には、反応室122から当該通気口126の先端に至る通気路126aが形成されている。通気口126には、ガスケット82及びフィルタ80が収容されたキャップ84が取り付けられ、フィルタ80によって通気路126aがふさがれる。本実施形態に係るフィルタ80は気液分離フィルタであり、外から反応室122へは空気が流入可能となっており、また反応室122で発生する気体は反応室122の外へと流出可能となっている。
図4Aには、反応室122で発生する気体の外への流出経路が二点鎖線の矢印A1で示されている。本実施形態では、反応室122に供給される液体はフィルタ80を通過しないため、通気口126から液体は漏洩しない。また電極収容ケース50の底面右側には、反応室122から電極収容ケース50の下部に形成されたアルカリ性電解水給液口128の先端に至る、アルカリ性電解水の流入路128aが形成されている。
【0051】
本実施形態では、ナット64a,64b,64c、陰極棒固定部68、陰極棒58、第2陰極スペーサ62、第2陰極54は、互いに電気的に接続されている。また、ナット72a,72b,72c、陽極棒固定部76、陽極棒60、第2陽極スペーサ70、第2陽極56は、互いに電気的に接続されている。そして本実施形態では、陰極棒固定部68とナット64aとの間、及び、陽極棒固定部76とナット72aとの間に挟まれる配線を介して、第2陰極54及び第2陽極56は、直流電源(図示せず)と電気的に接続される。そしてそのため、2次電解槽12では、第2陰極54と第2陽極56との間に電圧が印加されて、1次電解水を電気分解の対象とする2次電解工程が行われる。
【0052】
本実施形態では、2次電解工程での電気分解の対象となる電解水は、例えば、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、所定濃度(例えば、上記有効塩素濃度に対して1.23以上2.54以下(モル当量比)の濃度)の金属イオン(ここで、上記金属イオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンである。)を含む。1次電解槽10で有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、上記所定濃度の金属イオンを含む電解水が1次電解水として生成される場合には、当該1次電解水が2次電解工程での電気分解の対象となる。
【0053】
ここで、1次電解槽10で生成される電解水が、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、上記所定濃度の金属イオンを含む電解水でない場合がある。この場合に、例えば陰極室排液口104と、電極収容ケース50の底面に形成されたアルカリ性電解水給液口128とが配管で接続されるようにしてもよい。そして1次電解槽10で生成される電解水に陰極室排液口104から排出されるアルカリ性電解水が添加されるようにして、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、上記所定濃度の金属イオンを含む電解水が調製されるようにしてもよい。この場合は、アルカリ性電解水が添加された1次電解水が、2次電解工程での電気分解の対象となる。なおこの場合は、2次電解工程での電気分解の対象となる電解水が上記所定の濃度の金属イオンを含む電解水となるよう、アルカリ性電解水給液口128から供給されるアルカリ性電解水の量を調整する必要がある。なお陰極室排液口104とアルカリ性電解水給液口128とが配管で接続されない場合には、栓などによりアルカリ性電解水給液口128をふさぐことで、反応室122内の液体の漏洩が防止されるようにしてもよい。
【0054】
以下、2次電解工程での電気分解の対象となる電解水(1次電解水、又は、アルカリ性電解水が添加された1次電解水)を原料酸性電解水と呼ぶこととする。
【0055】
ここで、最終的に得られる2次電解水における固形分を少なくすることができる点で、アルカリ性電解水に含まれる、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属イオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、または炭酸水素塩に由来する金属イオン(陽イオン)であることが好ましい。
【0056】
この場合、アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられ、アルカリ金属の炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩は例えば、医療、食品、化粧品等の用途に使用される場合、安全性が高いうえに、自然環境への負担が少ない。
【0057】
アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウムが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩は例えば、医療、食品、化粧品等の用途に使用される場合、安全性が高いうえに、自然環境への負担が少ない。
【0058】
そして本実施形態では、2次電解工程によって、反応室122で、例えば、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、上記有効塩素濃度に対して0.46以上1.95以下(モル当量比)の濃度の金属イオンを含む2次電解水が生成される。そして生成された2次電解水は、2次電解水排液口124から排出される。
【0059】
本実施形態に係る2次電解水を得るためには、電気分解において、第2電極(第2陽極56および第2陰極54)に供給される電流は5A〜10Aであることが好ましい。
【0060】
図4Aには、供給される原水がアルカリ性電解水となって排出される流路が二点鎖線の矢印B1で示されている。また、循環する塩素系電解質水溶液の流路が二点鎖線の矢印B2で示されている。そして、
図4A及び
図7には、1次電解槽10に供給される原水が1次電解水となった上で2次電解槽12に案内され、2次電解水となって排出される流路が二点鎖線の矢印B3で示されている。
【0061】
本実施形態に係る2次電解水は、殺菌力を発揮できる観点から、有効塩素濃度が通常10ppm以上であり、20ppm以上であることが好ましく、通常、1,000ppm以下である。なお、本開示において、酸性電解水中の有効塩素濃度は、市販の塩素濃度測定装置を用いて測定することができる。
【0062】
本実施形態に係る2次電解水に含まれる金属イオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンである。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムまたはカリウムであることが好ましい。また、アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウムが挙げられ、カルシウムであることが好ましい。
【0063】
本実施形態において、上述の有効塩素濃度に対する上述の金属イオンのモル当量比濃度とは、例えば、有効塩素濃度が1モル/Lである場合において、(1)当該金属が1価である場合(例えば、アルカリ金属)、当該金属イオンのモル濃度は1モル/Lであり、有効塩素濃度に対する当該金属イオンのモル当量濃度の比は1であり、または、(2)当該金属が2価である場合(例えば、アルカリ土類金属)、当該金属イオンのモル濃度は0.5モル/Lであり、有効塩素濃度に対する当該金属イオンのモル当量濃度の比は1である。
【0064】
本実施形態に係る2次電解水において、有効塩素濃度に対する金属のモル当量比濃度が0.46より小さいと、当該2次電解水のpHが小さくなりすぎることがあり、一方、有効塩素濃度に対する金属のモル当量比濃度が1.95より大きいと、当該2次電解水が塩基性になり、安全性が低下することがあるうえ、当該2次電解水に含まれる固形分が多くなることがある。本実施形態に係る2次電解水のpH値を3.0以上7.0未満にすることができ、かつ、当該2次電解水に含まれる固形分が少ない点で、本実施形態に係る2次電解水では、有効塩素濃度に対して0.46以上1.95以下(モル当量比)の金属イオン濃度であることが好ましい。
【0065】
本実施形態に係る2次電解水では、金属イオン含有量は通常、0.0001ppm以上1,000ppm以下(好ましくは0.001ppm以上500ppm以下)であり、固形分含量がより少なくなる点で、より好ましくは300ppm以下である。
【0066】
金属イオンは例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、または炭化水素塩の形態で1次電解水に添加されているものであってもよい。
【0067】
本実施形態において、水酸化物とは、水酸化物イオン(OH
−)を含む化合物であり、炭酸塩とは、炭酸イオン(CO
32−)を含む化合物であり、炭酸水素塩とは、炭酸水素イオン(HCO
3−)を含む化合物である。
【0068】
すなわち、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、または炭酸水素塩は、水中において、水および二酸化炭素から選ばれる少なくとも1種を生じ得る陰イオンと、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属イオン(陽イオン)とからなる電解質である。塩素イオンと、当該陰イオンおよび当該陽イオンとを含む水溶液を電気分解することにより、本実施形態に係る2次電解水を得ることができる。
【0069】
本実施形態に係る2次電解水のpH値は、2次電解水の安定性を確保でき、かつ、トリハロメタンの発生を抑制できる観点から、7.0未満であることが好ましく、pH3.0以上7.0未満であることがより好ましい。なお、本実施形態に係る2次電解水のpH値は、市販のpH測定器を用いて測定することができる。
【0070】
また本実施形態では上記1次電解工程と上記2次電解工程の両方を行うことが必要である。例えば、上記1次電解工程の時間を長くしても、上記2次電解工程で得られる、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、上記有効塩素濃度に対して0.46以上1.95以下(モル当量比)の濃度の上記金属イオンを含み、かつ、酸性(特にpHが3以上7以下)の2次電解水を得ることは困難である。なぜなら、上記1次電解工程を長時間続けると、電解水中の塩素イオンが塩素として消費されてしまい、有効塩素濃度が低下するからである。
【0071】
これに対して本実施形態では、上記2次電解工程で原料酸性電解水が電気分解される際に、原料酸性電解水に含まれる電解質を利用して電気分解が行われて、2次電解水が得られる。すなわち、上記2次電解工程では、原料酸性電解水に含まれる塩素イオンが電気分解で消費される。このため、2次電解水に含まれる塩素イオン濃度は、原料酸性電解水に含まれる塩素イオン濃度よりも低くなる。一方、上記金属イオンはイオン化傾向が高いため、電解水中で金属イオンとして存在し続けるので、2次電解水に含まれる金属イオン濃度は、原料酸性電解水に含まれる金属イオン濃度とあまり変わらない。その結果、塩素イオン濃度が低くなる一方で、上記金属イオンの濃度がほぼ変化しないことに起因して、固形分含量が少ない2次電解水を得ることができる。
【0072】
図8は、本実施形態に係る製造装置1で生成される2次電解水における化学平衡式を示している。本実施形態に係る2次電解水中では、
図8の式(a)が平衡を保っている。また、塩化水素(HCl)は、
図8の式(a)と
図8の式(b)との間で矢印(1)および(2)にて平衡を保っており、次亜塩素酸(HClO)は、
図8の式(a)と
図8の式(c)との間で矢印(3)および(4)にて平衡を保っている。塩化水素(HCl)は極めて強い酸であるので電離しやすく、矢印(2)が優位である。一方、次亜塩素酸(HClO)は塩化水素の影響を受けてほとんど電離しないため、矢印(3)が優位である。
【0073】
本実施形態に係る2次電解水が、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、有効塩素濃度に対して0.46以上1.95以下(モル当量比)の濃度の金属イオンを含むことにより、電気分解による陰極での副反応を抑制することができる。これにより、HClOの消費を抑えることができるため、当該2次電解水の殺菌効果を維持することができる。
【0074】
このような理由により、本実施形態に係る2次電解水では、HClOの濃度が維持されているため、殺菌力に優れていると推測される。
【0075】
金属の腐食を抑えることができ、かつ、本実施形態に係る2次電解水から塩素ガスが遊離するのを抑えることができる観点から、本実施形態に係る2次電解水は、塩素系電解質の含有量が塩化ナトリウム換算で0.1質量%以下であることが好ましく、塩化ナトリウム換算で0.05質量%以下であることがより好ましく、0.025質量%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
本実施形態に係る2次電解水において、塩素系電解質の含有量(添加量)が塩化ナトリウム換算で0.1質量%を超えると、塩化物イオンと当該2次電解水に含まれる水素イオンとが結合する結果、
図8に示される式(a)と式(b)との平衡が矢印(1)の方向に偏り、そして、
図8に示される式(a)の平衡が左に偏る。その結果、塩化物イオンが塩素として系外に放出されることにより、当該2次電解水の有効塩素濃度が低下して、殺菌効果が低減することがある。
【0077】
本実施形態に係る2次電解水は、医療、獣畜産業、食品加工業、製造業等の各種産業において、殺菌および/または洗浄のために、殺菌剤および/または洗浄剤として用いることができる。医療および獣畜産業では、器具や患部の殺菌および/または洗浄に使用することができる。また、本実施形態に係る2次電解水は、ハロゲン臭等の刺激臭を有さないため、使用時に不快感を催すことがない。
【0078】
また、本実施形態に係る2次電解水は安定性が高いため、容器に収容して、容器入り酸性電解水とすることもできる。
【0079】
また、本実施形態に係る2次電解水を大気中に蒸発させることにより、大気中に含まれる菌を殺菌することができる。より具体的には、本実施形態に係る2次電解水を加湿器の水源として使用することにより、大気中に含まれる菌を効果的に殺菌することができる。
【0080】
本実施形態に係る2次電解水は、上述したように、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、上記有効塩素濃度に対して0.46以上1.95以下(モル当量比)の濃度の金属イオン(ここで、上記金属イオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンである。)を含む。このことにより、電気分解により、2次電解水を酸性(例えば、pH値を3以上7以下)に導くことができるうえ、陰極での副反応を抑制することができるため、HClOの消費を抑えることができる。また、本実施形態に係る2次電解水は酸性(例えばpHが3以上7以下)であることにより、長期間にわたって殺菌力を有するため、長期間の保存が可能であり、かつ、水分を蒸発させた後の固形分の残留が低減されている。
【0081】
すなわち、本実施形態に係る2次電解水では、有効塩素濃度に対応する範囲の金属イオン濃度を有する。このため、例えば、本実施形態に係る2次電解水において、有効塩素濃度が低い場合(例えば、10ppm以上80ppm以下)、相対的に、その金属イオン濃度も当該有効塩素濃度と同様に低い。また、本実施形態に係る2次電解水において、有効塩素濃度が高い場合(例えば、100ppm以上)、その金属イオン濃度も高くなるが、使用時に水で希釈して使用することができる。
【0082】
特に、金属イオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、または炭酸水素塩の陽イオン(金属イオン)に由来するものである場合、当該水酸化物を構成する水酸化物イオン(OH
−)、当該炭酸塩を構成する炭酸イオン(CO
32−)、または当該炭酸水素塩を構成する炭酸水素イオン(HCO
3−)に由来して、本実施形態に係る2次電解水から水分を蒸発させた場合、水および/または気体(例えば二酸化炭素)が生じ得るため、水分を蒸発させた後の固形分の残留が低減されている。
【0083】
このため、本実施形態に係る2次電解水は生体への負担が少なく、安全性が高いうえに、自然環境への負担が少ない。また、直射日光を避ければ遮光下で保存しなくても殺菌力が持続するため、保存が簡便である。
【0084】
本実施形態に係る2次電解水が長期間にわたって殺菌力を有することの指標として、本実施形態に係る2次電解水は、当該2次電解水を温度22℃、湿度40%の大気中に14日間静置した後の残留塩素濃度が10ppm以上であることができ、20ppm以上であることが好ましい。
【0085】
また、本実施形態に係る2次電解水に含まれる固形分が少ないことの指標として、本実施形態に係る2次電解水は、固形分が300ppm以下であることができる。ここで、本実施形態に係る2次電解水における固形分は、当該2次電解水20mlを温度60℃、湿度30%の大気中で48時間静置した後の残留物の質量のことをいう。
【0086】
さらに、一般に、有機酸や有機酸の塩等の有機物が2次電解水中に存在すると、当該有機物が塩素により酸化されて塩素が消費される結果、殺菌力が低下することがある。これに対して、本実施形態に係る2次電解水に含まれる金属イオンは有機物でないため、塩素による酸化を受け難いので、殺菌力を長期間にわたって保持することができる。
【0087】
第1陽極40、第1陰極24、第2陽極56、及び、第2陰極54では、以下の反応が生じている。
[第1陽極40及び第2陽極56における反応]
2Cl
− ⇒ Cl
2+2e
− ・・・(i) (主反応)
4OH
− ⇒ O
2+2H
2O+4e
− ・・・(ii) (副反応)
[第1陰極24及び第2陰極54における反応]
2H
++2e
− ⇒ H
2 ・・・(iii) (主反応)
H
++2e
−+HClO ⇒ 2H
2O+Cl
− ・・・(iv)(副反応)
【0088】
酸性電解水の殺菌力は、次亜塩素酸(HClO)に起因する(
図8の式(a))。一方、次亜塩素酸の素となる塩素は、常温で気体であるので蒸発しやすい。このため、通常、酸性電解水は、塩素の損失によって徐々に殺菌力を失う。
【0089】
本実施形態は、塩素の損失を抑制するために、HClを減らすことにより、
図8の式(a)の平衡を右に偏らせて、次亜塩素酸(HClO)の濃度を増加させるという独創的な着想に基づく。
【0090】
なお、HClが減ることは、酸性電解水のpH上昇の一因である。これに対して、本実
施形態によれば、pHの上昇を抑えつつ、次亜塩素酸(HClO)の濃度を増加させることができる。
【0091】
本実施形態では、2次電解槽12において、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、上記所定濃度の上記金属イオン(陽イオン)を含む原料酸性電解水が電気分解される。このことにより、上記陽イオンの存在により、上記陽イオンよりもイオン化傾向が低い水素イオン(H
+)が水素(H
2)へと変換されやすくなる(上記式(iii)が右に進行する)。これにより、電解効率を向上させることができる。
【0092】
また、上記式(iv)で生成したCl
−がCl
2に変換されるため、Cl
−の減少に伴い、
図8の式(a)から
図8の式(b)へと平衡が移動し、HClからH
+およびCl
−が生成する。これにより、
図8の式(a)の平衡を右に偏らせることができる。その結果、最終的に得られる本実施形態に係る酸性電解水における次亜塩素酸(HClO)の含量を増加させることができる。
【0093】
一方、上記2次電解工程において、有効塩素濃度が10ppm以上であり、かつ、金属イオンの濃度が、有効塩素濃度に対して1.23未満(モル当量比)である酸性電解水を電気分解した場合、金属イオンの濃度が低いため、電気分解が十分に進行しない。
【0094】
本実施形態において、第2電極についても第1電極と同様に、1次電解槽10の外壁である陽極室ケース44と電極収容ケース50の開口部50aとの圧接面(電極収容ケース50の圧接面50b及び陽極室ケース44の圧接面44c)と平行になるよう配置することが考えられる。このようにした上で、隣接するケース部品同士を互いに圧接させて製造装置1を製造するようにすると、1次電解槽10と2次電解槽12とをまとめて容易に密封できる。しかしこのように密封すると、2次電解槽12に収容される第2電極のうち、1次電解槽10に近い電極と1次電解槽10から遠い電極との間で電解条件に偏りが生じてしまい、2次電解水の生産効率が低減してしまう。
【0095】
そこで本実施形態では、
図1B及び
図4Aに示すように、第2電極のそれぞれは、第2電極の縁が1次電解槽10における1次電解水出口120側、すなわち案内板46が収容された陽極室ケース44の左側面を向くよう設けられている。そのため本実施形態では、複数の2次電極につき、電解条件に偏りが生じない。そのため本実施形態では、電解水の生産効率が確保されることとなる。
【0096】
以上のようにして、本実施形態に係る、1次電解槽10と2次電解槽12とが一体化された製造装置1によれば、電解水の生産効率を確保しつつ、1次電解槽10と2次電解槽12とをまとめて容易に密封できることとなる。
【0097】
また本実施形態では、複数の第2電極のそれぞれは、電極面の法線方向が、鉛直方向(Z1−Z2方向)にも、1次電解槽の外壁である陽極室ケース44と電極収容ケース50の開口部50aとの圧接方向(X1−X2方向)にも垂直である方向となるよう設けられている。すなわち本実施形態では、複数の第2電極のそれぞれは、電極面の法線方向がY1−Y2方向となるよう設けられている。そのため、2次電解槽12で発生した気体が、第2電極に邪魔されることなくスムーズに外に排出されることとなる。
【0098】
また本実施形態では、複数の第1電極のなかで最も陽極室ケース44に近い位置に設けられている電極が陽極である。そのため、陽極室114で生成される1次電解水が2次電解槽12に案内されるまでの流路の長さを短くすることができる。
【0099】
また本実施形態では上述したように、案内板46の開口部50a側の面、すなわち、左側面には、複数の第2電極のそれぞれの縁が係合される溝46aが形成されている。そのため案内板46に、1次電解水を2次電解槽12に案内する役割だけでなく、第2電極が配置される間隔を制御する役割も持たせることができることとなる。
【0100】
また本実施形態では溝46aは一定の間隔で形成されているので、案内板46によって第2電極の幅が一定である状態を確保できることとなる。
【0101】
また本実施形態では、ガスケット22、外側ガスケット28、内側ガスケット29、外側ガスケット36、内側ガスケット37、ガスケット42、及び、ガスケット52の反発力を外ケース14a及び外ケース14bが受ける構造となっている。そのためねじ等の共締め部材によって1次電解槽10と2次電解槽12とを共締めするよりもシンプルな構造となり、製造装置1を安価に製造できることとなる。
【0102】
また本実施形態では、
図4A、
図5、及び、
図6Bに示すように、案内板46の、左側から見た際に陽極室排液口116と重なる位置に、孔46bが形成されている。そして
図4Aに示すように、孔46bによって、1次電解水の流路が、液体の流出を抑制しつつ空気の流入が可能な流入部(本実施形態では例えばフィルタ80)と連通することとなる。
【0103】
本実施形態に係る製造装置1が停止しても陽極室114内に液体が滞留した状態が維持されると、陽極室114と中間室108との間の浸透圧によって陽極室114から中間室108に液体が浸透する。すると循環する塩素系電解質水溶液の体積が増えるとともに濃度が下がってしまう。本実施形態に係る製造装置1では、上述したように、1次電解水の流路が、液体の流出を抑制しつつ空気の流入が可能な流入部と連通しているので、停止した際に外から流入する空気の空気圧によって陽極室114から液体が抜ける。
図4Aには、停止した際に外から流入する空気の流入経路が二点鎖線の矢印A2で示されている。そのため本実施形態に係る製造装置1では、利用者の手を煩わせることなく陽極室114内の液体を抜くことができることとなる。
【0104】
なお陰極室102で生成されるアルカリ性電解水の流路が、上記流入部と連通していてもよい。この場合は、製造装置1が停止した際に外から流入する空気の空気圧によって陰極室102から液体が抜けることとなる。この場合は、利用者の手を煩わせることなく陰極室102内の液体を抜くことができることとなる。
【0105】
また本実施形態では、上記流入部は、1次電解水を1次電解槽10から2次電解槽12へと案内する流路と連通している。そのため、本実施形態に係る製造装置1が停止した際に陽極室114内の液体は抜けるが、2次電解槽12内の液体は抜けない。そのため本実施形態に係る製造装置1によれば、停止した際に、2次電解槽12内の液体が、陽極室114内の液体とともに抜けてしまうことを防ぐことができる。
【0106】
また本実施形態では、上記流入部として気液分離フィルタであるフィルタ80を用いている。そのため本実施形態によれば、外から反応室122への空気の流入、及び、反応室122で発生する気体の反応室122の外への排出を可能にしつつ、通気口126からの液体の漏洩を防ぐことができる。
【0107】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0108】
図9は、本開示で提案する別の電解水の製造装置1001の一例を示す斜視図である。
図9に示す製造装置1001は、1次電解槽10と同様の構成である1次電解槽1010を含んでいる。また製造装置1001は、2次電解槽12と同様の構成である2次電解槽1012を含んでいる。
図9に示す製造装置1001では、ねじ等の共締め部材1014によって、1次電解槽1010と2次電解槽1012とが共締めされている。
【0109】
そして共締め部材1014によって、1次電解槽1010に含まれる陰極室ケース1020と中間室ケース1032とは、X1−X2方向を圧接方向として互いに圧接される。また1次電解槽1010に含まれる中間室ケース1032と陽極室ケース1044とは、X1−X2方向を圧接方向として互いに圧接される。そして2次電解槽1012に含まれる、電極収容ケース50と同様の電極収容ケース1050の右側に形成された開口部は、1次電解槽1010に含まれる陽極室ケース1044によって左方向に圧接される。また1次電解槽1010に含まれる陽極室ケース1044は、電極収容ケース1050によって、右方向に圧接される。
【0110】
図9に示す製造装置1001においても、電極収容ケース1050に収容される第2電極のそれぞれは、第2電極の縁が1次電解槽1010における1次電解水出口側、すなわち陽極室ケース1044の左側面を向くよう設けられている。そのため
図9に示す製造装置1001についても、複数の2次電極につき、電解条件に偏りが生じない。そのため
図9に示す製造装置1001についても、電解水の生産効率が確保されることとなる。
【0111】
このように
図9に示す、1次電解槽1010と2次電解槽1012とが一体化された製造装置1001においても、製造装置1と同様、電解水の生産効率を確保しつつ、1次電解槽1010と2次電解槽1012とをまとめて容易に密封できることとなる。
【0112】
図10は、本開示で提案するさらに別の電解水の製造装置2001の一例を示す断面図である。
図10には、Y1−Y2方向に対して垂直な方向に沿って製造装置2001の中央を切断した面を前方(Y1方向)から見た様子が示されている。
【0113】
図10に示す製造装置2001は、陰極室ケース20と同様の構成である陰極室ケース2020、中間室ケース32と同様の構成である中間室ケース2032、及び、陽極室ケース44とほぼ同様の構成である陽極室ケース2044を含む。陰極室ケース2020と中間室ケース2032とは、X1−X2方向を圧接方向として互いに圧接される。また中間室ケース2032と陽極室ケース2044とは、X1−X2方向を圧接方向として互いに圧接される。
【0114】
陽極室ケース2044の右側面の中央には、陽極室2114の内壁となる陽極室凹部2044aが形成されている。陽極室ケース2044の左側面の中央上部には通気口2126及び陽極室排液口2116が左右に並んでこの順に凸設されている。陽極室排液口2116の内部には陽極室凹部2044aの中央上部に至る排出路2116aが形成されている。通気口2126の内部には、排出路2116aから通気口2126の先端に至る通気路2126aが形成されている。
【0115】
そして陽イオン交換膜を介して陰極室2102と中間室2108とは仕切られ、陰イオン交換膜を介して中間室2108と陽極室2114とは仕切られる。陽イオン交換膜よりも右側の空間が陰極室2102であり、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間の空間が中間室2108であり、陰イオン交換膜よりも左側の空間が陽極室2114である。
【0116】
陰極室給液口2100から後述する原水が流入すると、当該原水は陰極室2102で1次電解工程によってアルカリ性電解水となり、陰極室排液口2104から排出される。陽極室給液口2112から原水が流入すると、当該原水は陽極室2114で1次電解工程によって酸性電解水となって陽極室排液口2116から排出される。
【0117】
中間室2108の下方に形成された、中間室2108に連通する中間室給液口2106及び中間室2108の上方に形成された、中間室2108に連通する中間室排液口2110は、閉水路を構成する配管に接続されている。そしてポンプ(図示せず)によって、当該閉水路内を塩素系電解質水溶液が循環する。中間室2108は、当該閉水路の一部ということとなる。
【0118】
中間室2108中の塩素イオンが陰イオン交換膜を通過して陽極室2114へと移動し、陽極室2114に配置された第1陽極にて塩素イオンが塩素に変換される。これにより、陽極室2114にて酸性電解水が生じる。一方、中間室2108中の陽イオンが陽イオン交換膜を通過して陰極室2102へと移動する。これにより、陰極室2102にてアルカリ性電解水が生じる。
【0119】
そして陰極室2102で生成されたアルカリ性電解水は陰極室2102に上方に形成された、陰極室2102に連通する陰極室排液口2104から排出される。陽極室2114で生成された酸性電解水は陽極室2114に上方に形成された、陽極室2114に連通する陽極室排液口2116から排出される。
【0120】
図10には、供給される原水がアルカリ性電解水となって排出される流路が二点鎖線の矢印B2001で示されている。また、循環する塩素系電解質水溶液の流路が二点鎖線の矢印B2002で示されている。また、供給される原水が酸性電解水となって排出される流路が二点鎖線の矢印B2003で示されている。
【0121】
そして
図10に示すように、酸性電解水の流路B2003が、液体の流出を抑制しつつ空気の流入が可能な流入部(
図10の例ではフィルタ2080)と連通していることとなる。
【0122】
図10に示す製造装置2001についても、酸性電解水の流路が、液体の流出を抑制しつつ空気の流入が可能な流入部と連通しているので、停止した際に外から流入する空気の空気圧によって陽極室2114から液体が抜ける。そのため
図10に示す製造装置2001では、利用者の手を煩わせることなく陽極室2114内の液体を抜くことができることとなる。
【0123】
なお陰極室2102で生成されるアルカリ性電解水の流路が、液体の流出を抑制しつつ空気の流入が可能な流入部と連通していてもよい。この場合は、製造装置2001が停止した際に外から流入する空気の空気圧によって陰極室2102から液体が抜けることとなる。この場合は、利用者の手を煩わせることなく陰極室2102内の液体を抜くことができることとなる。
【0124】
なお、上述した、液体の流出を抑制しつつ空気の流入が可能な流入部は気液分離フィルタである必要はない。例えば、上記流入部として、液体及び気体が外から流入可能で、液体及び気体の外への流出が防止される逆止弁が用いられても構わない。