(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学測定装置部と前記熱処理装置部との間に断熱材よりなる隔壁が設けられることによって、前記光学測定装置部と前記熱処理装置部とが熱的に分離されていることを特徴とする請求項1に記載の光学測定器。
前記筺体は、略直方体形の筺体本体を有し、当該筺体本体における手前側の領域に、前記光学測定装置部および前記熱処理装置部が左右方向に離間して設けられると共に、前記筺体本体の上部に、それぞれ前記光学測定装置部の蓋部および前記熱処理装置部の蓋部が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学測定器。
【背景技術】
【0002】
吸光度測定器として、例えば特許文献1には、光源から出射した光を測定試料に照射し、当該測定試料を透過した光を複雑な構成の光学系によって集光、反射させて光検出器に導光し、光の減衰量から測定試料中の目的物質の濃度を測定するものが開示されている。
このような吸光度測定器は、高機能であって高い精度の吸光度を測定することができるという利点を有する。
【0003】
一方、近年、ライフサイエンス分野では、ポイントオブケア検査に用いることなどを目的に、吸光度測定器などの光学測定器について、持ち運びを容易にするために小型化の要請がある。
しかしながら、上記のような吸光度測定器は、凹面鏡や回折格子などを用いた複雑な構成の光学系を有することに起因して、装置自体が一般的に大型のものとなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、ポイントオブケア検査に用いるために、検査時間が短くなるよう簡便に光学測定を行うことができる光学測定器が求められている。具体的には、ある物質(測定対象物質)について検量線を作成するための基準試料の光学測定と当該測定対象物質を含む測定試料の光学測定とを同時に行うことが要請されている。また、基準試料や測定試料に添加する呈色試薬の種類によっては試料の加熱を要することから、試料を加熱することや、試料を加熱した状態において光学測定を行うこと、さらには、試料を異なる温度に加熱することも要請されている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、小型化が図られて容易に持ち運ぶことができ、かつ、2つの測定試料を必要に応じて同時に異なる温度に加熱することができると共に、加熱された試料について光学測定を行うことができる光学測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学測定器は、筺体に
加熱機構および光学測定機構を有する光学測定装置部と、加熱機構を有する熱処理装置部とが設けられ、
前記光学測定機構が、
貫通孔よりなる導光路が内部に形成された弾性体よりなる導光路形成体と、
前記貫通孔の一端に嵌入された光源と、
前記貫通孔の他端に前記光源の光軸と同軸状に嵌入された受光部と、
前記導光路形成体における、前記光源から出射される光の光路上に、前記導光路を交差して貫通するよう形成された、測定試料が装填された試料チューブが挿入される試料チューブ受容穴とを有し、
前記光学測定装置部と前記熱処理装置部とが熱的に分離されていることを特徴とする。
本発明の光学測定器においては、前記光学測定装置部と前記熱処理装置部との間に断熱材よりなる隔壁が設けられることによって、前記光学測定装置部と前記熱処理装置部とが熱的に分離されていることが好ましい。
本発明の光学測定器においては、前記筺体は、略直方体形の筺体本体を有し、当該筺体本体における手前側の領域に、前記光学測定装置部および前記熱処理装置部が左右方向に離間して設けられると共に、前記筺体本体の上部に、それぞれ前記光学測定装置部の蓋部および前記熱処理装置部の蓋部が設けられる構成とすることができる
。
本発明の光学測定器においては、前記光学測定装置部の前記加熱機構が、前記光学測定装置部の前記蓋部内に設けられた上部ヒーター部材と、前記試料チューブ受容穴の下部に設けられた下部ヒーター部材とからなり、当該試料チューブ受容穴に挿入された試料チューブを上下から加熱するものであることが好ましい。
本発明の光学測定器においては、前記熱処理装置部の前記加熱機構が、前記熱処理装置部の前記蓋部内に設けられた上部ヒーター部材と、前記筺体本体内に設けられた、試料チューブを受容する試料チューブ受容穴が形成された下部ヒーター部材とからなることが好ましい。
本発明の光学測定器においては、前記光学測定装置部には、冷却用ファンが設けられていることが好ましい。
本発明の光学測定器においては、前記熱処理装置部には、冷却用ファンが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学測定器は、一つの筺体に、各々加熱機構を有する光学測定装置部および熱処理装置部が設けられた構成を有する。従って、本発明の光学測定器によれば、小型化が図られ、容易に持ち運ぶことができる。
また、本発明の光学測定器によれば、光学測定装置部と熱処理装置部とが熱的に分離されているので、2つの測定試料をそれぞれにおいて必要に応じて同時に異なる温度に加熱することができ、光学測定装置部においては加熱された試料について光学測定を行うことができる。従って、光学測定装置部と熱処理装置部とで2つの測定試料を異なる温度に加熱し、光学測定装置部において光学測定を行うことによって、例えば温度依存的に吸光度などの反応速度が変化する生化学反応において、各温度条件における測定対象物質の反応速度を迅速に取得して比較することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光学測定器の構成の一例を示す平面図、
図2は、
図1の光学測定器の斜視図、
図3は、
図1の光学測定器の正面図、
図4は、
図1の光学測定器の右側面図、
図5は、
図1におけるA−A線断面図、
図6は、
図1におけるB−B線断面図、
図7は、
図1におけるC−C線断面図、
図8は、
図3におけるD−D線断面図である。
この光学測定器10は、測定対象物質の濃度などを吸光度として測定するためなどに用いられるものであり、測定対象物質は、例えば大腸菌、タンパク質、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅されて得られたDNAや、色素などである。
【0011】
光学測定器10は、筺体11に、光学測定機構22を有する光学測定装置部20と、熱処理装置部30とが設けられてなり、これらの光学測定装置部20および熱処理装置部30には、各々、加熱機構が備えられている。
【0012】
筺体11は、略直方体形の筺体本体12を有し、光学測定装置部20および熱処理装置部30は、筺体本体12における手前側(
図1における下部側)の領域に、左右方向(
図1における左右方向)に離間して設けられている。また、筺体本体12の上部(
図3における上部)には、それぞれ光学測定装置部20の蓋部21および熱処理装置部30の蓋部31が設けられている。さらに、筺体本体12の上部における奥側(
図1における上部側)の領域には、光学測定装置部20の蓋部21および熱処理装置部30の蓋部31と離間し、かつ、筺体本体12の左右方向に伸びる状態に、当該筺体本体12から突出して蓋枕15が形成されている。さらに、筺体本体12の下部(
図3における下部)には筺体本体12を水平な支持面上に支持する支持脚17が設けられている。
【0013】
光学測定装置部20は、試料チューブ内の測定試料を、化学的または物理的に加熱処理するため、または、一定の温度条件で光学測定するために加熱する加熱機構26と、筺体本体12内に設けられた、試料チューブ内の測定試料の光学測定を行う光学測定機構22とからなる。
【0014】
光学測定機構22は、略円柱状の貫通孔よりなる導光路25Hが内部に形成された弾性体よりなる導光路形成体25を有し、当該貫通孔の一端に光源23が嵌入されると共に、他端に当該光源23の光軸と同軸状に受光部24が嵌入された状態で保持されている。
光源23が導光路形成体25に嵌入された状態で保持されることによって、光源23の光軸を概ね導光路25Hの軸と並行に設定することが容易となり、従って、受光部24の方向に光束を高い効率で配光することができる。
導光路25Hの直径は、光源23側と受光部24側とで同じであってもよく、異なっていてもよいが、不必要な散乱光、反射光、迷光を低減させる観点から、受光部24側の直径が光源23側よりも小さいことが好ましい。
なお、この例の光学測定器10においては、光源23が、導光路25Hを形成する貫通孔の、隔壁40から離間した一端(
図6において右端)に配置されると共に、受光部24が当該貫通孔の隔壁40に近接した他端(
図6において左端)に配置されているが、逆に配置されていてもよい。
【0015】
光源23としては、例えば白色LEDなどのLEDを用いることができ、受光部24としては、例えばRGBカラーセンサなどのフォトダイオードを用いることができる。受光部24として、RGBカラーセンサを用いることにより、RGBの各波長における吸光度を測定することができる。
例えば波長560nm付近の光の吸光度からBCA法によって、あるいは、波長600〜700nm付近の光の吸光度からブラッドフォード法によって、たんぱく質の濃度を定量することができる。
【0016】
導光路形成体25を形成する弾性体としては、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン樹脂などを好ましく用いることができる。
【0017】
導光路形成体25には、光源23から出射される光の光路上に、導光路25Hを交差して貫通するよう、測定試料が装填された試料チューブが挿入される試料チューブ受容穴29が形成されている。試料チューブ受容穴29は、底部に向かって小径となるテーパ状の穴であって、導光路形成体25を上下(
図5において上下)に貫通している。導光路形成体25の下部に貫通された穴の大きさは、試料チューブ受容穴29に試料チューブが挿入されたときに、当該試料チューブが下方に1.5mm程度突出する状態とされる大きさであることが好ましい。
試料チューブ受容穴29は、PCRチューブ、または、試料チューブ、例えば1.5mLの試料チューブ若しくは2.0mLの試料チューブに対応する形状および大きさとすることができる。
【0018】
導光路形成体25における導光路25Hは、複数、例えば8本形成されており、各々の導光路25Hは、互いに平行に伸びた状態とされている。各々の導光路25Hに対して、光源23および受光部24が配置されると共に試料チューブ受容穴29が形成されている。
従って、本発明の光学測定器10においては、例えば8本の試料チューブを一括して加熱処理および/または光学測定処理することができる。
【0019】
導光路形成体の表面には、導光路形成体と試料チューブとが直接接触しないよう試料ブラケットが設けられることが好ましい。この場合、試料ブラケットには、上記の導光路形成体25における試料チューブ受容穴29と同様の形状および大きさの試料チューブ受容穴が形成されており、導光路形成体には、当該試料チューブ受容穴が形成された試料ブラケットを受容する凹部が形成されている。
試料ブラケットとしては、例えばポリカーボネート樹脂やアルミ等の金属からなるものを用いることができる。
【0020】
光学測定装置部20の加熱機構26は、光学測定装置部20の蓋部21内に設けられた上部ヒーター部材26Aと、光学測定機構22の下部(
図5における下部)に設けられた下部ヒーター部材26Bとからなり、試料チューブを上下から加熱するものとされている。
上部ヒーター部材26Aは、試料チューブの上面に接触するよう蓋部21内に配置されており、蓋部21が閉状態とされることにより、上部ヒーター部材26Aが試料チューブに押圧される。また、下部ヒーター部材26Bは、試料チューブ受容穴29の下部に貫通された穴から突出した試料チューブの下面に接触するよう配置されている。上部ヒーター部材26Aおよび下部ヒーター部材26Bとしては、各々、パターンを有するシートヒーターを用いることができる。
光学測定装置部20の蓋部21は、開状態においては閉状態とされた姿勢と平行な姿勢で蓋枕15上に載置される。
【0021】
上部ヒーター部材26Aおよび下部ヒーター部材26Bは、各々独立して温度状態を制御することができる。各々のヒーターの設定温度は、室温〜150℃とすることができる。
上部ヒーター部材26Aおよび下部ヒーター部材26Bによる加熱温度としては、試料チューブの上面における結露を防止する観点から、上部ヒーター部材26Aによる温度が下部ヒーター部材26Bによる温度よりも高いことが好ましい。
【0022】
光学測定装置部20には、加熱された試料チューブを循環冷却風によって急速に冷却する冷却用ファンが設けられていることが好ましい。
【0023】
熱処理装置部30は、蓋部31内に設けられた上部ヒーター部材32Aと、筺体本体12内に設けられた試料チューブを受容する試料チューブ受容穴39が形成された下部ヒーター部材32Bとからなる加熱機構32を有する。熱処理装置部30の蓋部31は、開状態においては閉状態とされた姿勢と平行な姿勢で蓋枕15上に載置される。
上部ヒーター部材32Aおよび下部ヒーター部材32Bとしては、各々、パターンを有するシートヒーターを用いることができる。
熱処理装置部30の試料チューブ受容穴39は、例えば2.0mLの試料チューブに対応する形状および大きさとすることができる。
【0024】
試料チューブ受容穴39は、複数、例えば4本形成されており、従って、熱処理装置部30においては、例えば4本の試料チューブを一括して加熱処理することができる。
【0025】
熱処理装置部30にも、光学測定装置部20と同様に、加熱された試料チューブを循環冷却風によって急速に冷却する冷却用ファンが設けられていてもよい。この熱処理装置部30の冷却用ファンは、光学測定装置部20の冷却用ファンとは独立して制御することができる。
【0026】
そして、本発明の光学測定器10においては、光学測定装置部20と熱処理装置部30とが熱的に分離されている。
具体的には、光学測定装置部20と熱処理装置部30との間に、筺体本体12において奥行き方向(
図1における上下方向)に伸びるよう隔壁40が形成されることによって、熱的に分離されている。これにより、光学測定装置部20と熱処理装置部30とを、各々独立して温度状態を制御することができる。
隔壁40は、光学測定装置部20と熱処理装置部30との間を隔てる横断熱部41と、当該横断熱部41と連続し、かつ、直交する方向に伸びる縦断熱部42とからなる、平面視で略T字状のものである。
隔壁40は、断熱材よりなり、断熱材としては例えば樹脂、繊維マット、空気層を備えた構造体などを用いることができる。
【0027】
光学測定器10の各部の寸法の一例を挙げると、筺体11は、横幅(
図1における左右方向長さ)が280mm、縦幅(
図1における上下方向長さ)が150mm、高さ(
図1における紙面と垂直な方向の長さ)が115mm、重さが1500gである。また、導光路形成体25は、光軸方向の長さ(
図8において上下方向長さ)が最大40mm、光軸と垂直な方向の長さ(
図8において左右方向長さ)が最大100mm、高さ(
図6において上下方向長さ)が15mm、試料チューブ受容穴29の直径は、最小部がφ1.7mm、最大部がφ3.0mm、光源23と受光部24との距離は30mmである。隔壁40は、縦断熱部42の横の長さ(
図1における左右方向長さ)が270mm、横断熱部41の縦の長さ(
図1における上下方向長さ)が140mm、高さ(
図1における紙面と垂直な方向の長さ)が100mm、厚みが2mmである。試料ブラケットを設ける場合、その寸法は、光軸方向が40mm、幅が100mm、高さが24mm、光路における厚みが8〜9mmである。
【0028】
光学測定器10における光学測定は、以下のように行われる。すなわち、光学測定装置部20の光学測定機構22において、光源23から出射した光が、試料チューブ受容穴29に受容された試料チューブ内の液体状の測定試料を透過し、受光部24に至って光量が測定されて吸光度が取得されて濃度が算出される。具体的には、光が測定試料を透過する際、その透過率が測定対象物質の濃度に応じて光路長に対して指数関数的に減衰する。従って、予め既知の濃度の測定対象物質の標準溶液を基準試料として測定して検量線を作成しておき、その光量と比較することにより、測定試料における測定対象物質の吸光度から濃度を算出することができる。
以上の光学測定器10においては、光学測定機構22の導光路形成体25における異なる試料チューブ受容穴29に、それぞれ、検量線を作成するための標準溶液を入れた試料チューブと、測定試料を入れた試料チューブとをセットし、同時に光学測定を行うことができる。
また、光学測定器10においては、2つの測定試料を光学測定装置部20および熱処理装置部30のそれぞれにおいて同時に異なる温度に加熱することができる。このとき、光学測定装置部20においては、測定試料を加熱しながら上記の光学測定を行うことができる。
【0029】
以上の光学測定器10は、一つの筺体11に、各々加熱機構26,32を有する光学測定装置部20および熱処理装置部30が設けられた構成を有する。従って、この光学測定器10によれば、小型化が図られ、容易に持ち運ぶことができる。
また、以上の光学測定器10によれば、光学測定装置部20と熱処理装置部30とが熱的に分離されているので、2つの測定試料をそれぞれにおいて必要に応じて同時に異なる温度に加熱することができ、光学測定装置部20においては加熱された試料について光学測定を行うことができる。従って、光学測定装置部20と熱処理装置部30とで2つの測定試料を異なる温度に加熱し、光学測定装置部20において光学測定を行うことによって、例えば温度依存的に吸光度などの反応速度が変化する生化学反応において、各温度条件における測定対象物質の反応速度を迅速に取得して比較することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。