特許第6578240号(P6578240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

特許6578240鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法
<>
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000004
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000005
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000006
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000007
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000008
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000009
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000010
  • 特許6578240-鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578240
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20190909BHJP
   C22B 1/216 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C22B1/20 N
   C22B1/216
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-91358(P2016-91358)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-197835(P2017-197835A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】山下 岳史
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−060762(JP,A)
【文献】 特開昭57−200531(JP,A)
【文献】 特開昭50−051903(JP,A)
【文献】 特開昭62−020832(JP,A)
【文献】 特開2009−235507(JP,A)
【文献】 特開平02−197530(JP,A)
【文献】 米国特許第05980606(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/20
C22B 1/216
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラベリンググレート炉、ロータリーキルン炉、クーラーを有し、且つ各設備の排熱を回収して再利用するグレートキルン方式の鉄鉱石ペレット製造設備にて、CaOを含有する微粉を造粒して鉄鉱石ペレットを焼成する過程において、前記鉄鉱石ペレット製造設備から排出される排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を低減する方法であって、
前記クーラーから冷却されて排出される前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)を測定するとともに、前記鉄鉱石ペレット製造設備から排出される前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)を測定して、
前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)と、前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)との関係(1)を求め、
前記ロータリーキルン炉から前記クーラーに供給される前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)を測定するとともに、前記クーラーから排出される前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)を測定して、
前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と、前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)との関係(2)を求め、
求めた前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)と前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)との関係(1)、及び、前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)との関係(2)を用いて、さらに、前記ロータリーキルン炉から前記クーラーに供給される前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と、前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)の関係(3)を求め、
求めた前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)との関係(3)を用いて、前記ロータリーキルン炉から前記クーラーに供給される、前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)を低減制御して、前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)を低減する
ことを特徴とする鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石ペレットを製造する鉄鉱石ペレット製造設備から排出される、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造の高炉用原料である鉄鉱石ペレットの製造設備には、グレートキルン方式、ストレートグレート方式、シャフト炉方式等がある。グレートキルン方式の場合、鉄鉱石ペレットは、鉄鉱石、石灰石や珪石等の副原料、粉コークス、ペレット鉱のスクリーン篩下粉(返鉱)などに水分を添加して造粒機で転動することで、直径13mm程度の球(生ペレット)を得る。得られた生ペレットは、トラベリンググレート上に均一な厚さに積層され、トラベリンググレート炉内で順次乾燥、結晶水の脱離、予備焼成された後に、ロータリーキルン炉にて高温焼成されて、製品の鉄鉱石ペレットとなる。
【0003】
ところで、上記のような鉄鋼製造の高炉用原料製造設備でその製造段階で放出される排出ガスには、硫黄酸化物が含まれている。排出ガス中に硫黄酸化物が多く含まれていると、大気環境への悪影響が懸念される。
上記した環境影響の観点から、大気への悪影響を抑えるため、鉄鋼製造用の原料製造設備における排出ガス中の硫黄酸化物の量を低減することが必要である。排出ガス中硫黄酸化物の量を低減させる技術としては、特許文献1、2に開示されているものがある。
【0004】
特許文献1は、焼結鉱の顕熱を回収するに際し、焼結機の排出ガスを冷却用ガスとして用い、排出ガス中の硫黄酸化物処理設備を必要とせず、さらに冷却設備の出口ガス温度を高くして利用することを目的としている。
具体的には、同文献に開示の焼結機における顕熱回収並びに排ガス処理方法は、焼結機ウインドボックス後半の排出ガスを、焼結帯上部にフードを介して循環させながら、その一部を乾式冷却設備に他の冷却ガスとともに供給して、出口温度を更に高温にして回収すると共に、ウインドボックスよりの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物を(CaO+SO2+1/2O2→CaSO4)の反応により、焼結鉱に捕捉固定させることを目的としている。
【0005】
また、特許文献2は、マンガン鉱石の焼結鉱を製造する際し、排出ガス中の硫黄酸化物を抑制することを目的としている。
具体的には、同文献に開示のマンガン焼結鉱製造における排ガス硫黄酸化物抑制方法は、マンガン鉱石の焼結鉱を製造する際に、マンガン鉱石にドロマイトなどを焼結原料の0.5〜10(%)配合し、硫黄酸化物をMgSO4(硫酸塩)として、焼結鉱中に捕捉固定することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−200531号公報
【特許文献2】特公昭59−035973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1における焼結鉱への硫黄酸化物の捕捉固定は、(CaO+SO2+1/2O2→CaSO4)の反応により生じ、硫黄酸化物の捕捉量は、焼結鉱中のCaO含有量にのみ影響を受ける。
しかし、焼結鉱中のCaO含有量には製品規格があるので、そのCaO含有量の増減を自由に調整できない。そのため、排出ガス中の硫黄酸化物の量が増加した場合、その排出ガス中の硫黄酸化物の量を調整することができない。
【0008】
特許文献2に関しては、マンガン焼結鉱への硫黄酸化物の捕捉固定は、(MgO+SO2+1/2O2→MgSO4)の反応により生じる。また、硫黄酸化物の捕捉量は、マンガン焼結鉱中のMgO含有量にのみ影響を受ける。
しかし、マンガン焼結鉱中のMgO含有量には製品規格があるので、そのMgO含有量の増減を自由に調整することができない。そのため、排出ガス中の硫黄酸化物の量が増加した場合、その排出ガス中の硫黄酸化物の量を調整することができない。また、鉄鉱石ペレット中のMgO含有量は、マンガン焼結鉱に比べて少ないため、この硫黄酸化物の捕捉固定方法では排出ガスから十分に硫黄酸化物を除去することができない。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、CaOを含有する鉄鉱石ペレットを製造するグレートキルン方式の製造設備において、排出ガス脱硫設備等を設置せずに、鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法は、トラベリンググレート炉、ロータリーキルン炉、クーラーを有し、且つ各設備の排熱を回収して再利用するグレートキルン方式の鉄鉱石ペレット製造設備にて、CaOを含有する微粉を造粒して鉄鉱石ペレットを焼成する過程において、前記鉄鉱石ペレット製造設備から排出される排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を低減する方法であって、前記クーラーから冷却されて排出される前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)を測定するとともに、前記鉄鉱石ペレット製造設備から排出される前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)を測定して、前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)と、前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)との関係(1)を求め、前記ロータリーキルン炉から前記クーラーに供給される前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)を測定するとともに、前記クーラーから排出される前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)を測定して、前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と、前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)との関係(2)を求め、求めた前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)と前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)との関係(1)、及び、前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と前記鉄鉱石ペレット中のS含有量(質量%)との関係(2)を用いて、さらに、前記ロータリーキルン炉から前記クーラーに供給される前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と、前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)の関係(3)を求め、求めた前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)と前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)との関係(3)を用いて、前記ロータリーキルン炉から前記クーラーに供給される、前記鉄鉱石ペレット中のFeO含有量(質量%)を低減制御して、前記排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)を低減することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、CaOを含有する鉄鉱石ペレットを製造するグレートキルン方式の製造設備において、排出ガス脱硫設備等を設置せずに、効果的に排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかる鉄鉱石ペレット製造設備からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法の概略を示す模式図である。
図2】クーラー出口における鉄鉱石ペレット中のSの含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の関係を模式的に示した図である。
図3】クーラー入口における鉄鉱石ペレット中のFeOの含有量と、クーラー出口における鉄鉱石ペレット中のSの含有量の関係を模式的に示した図である。
図4】クーラー入口における鉄鉱石ペレット中のFeOの含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の関係を模式的に示した図である。
図5】クーラー出口における鉄鉱石ペレット中のS量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の関係を示した図である。
図6】クーラー入口における鉄鉱石ペレット中のFeOの含有量と、クーラー出口における鉄鉱石ペレット中のSの含有量の関係を示した図である。
図7】クーラー入口における鉄鉱石ペレット中のFeOの含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の関係を示した図である。
図8】本発明を適用した場合における排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量と、本発明を適用しなかった場合の排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を示す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる鉄鉱石ペレットを製造する過程で発生する、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法の実施の形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
【0014】
また、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰返さない。
本発明の鉄鉱石ペレットを製造する過程で発生する、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法について詳しく説明する前に、まず、本発明の適用対象となる鉄鉱石ペレット製造設備1(ペレットプラント)の構成について説明する。
【0015】
図1は、鉄鉱石ペレット製造設備1の概略を示す模式図である。
鉄鉱石ペレット製造設備1は、微粉の鉄鉱石を直径13mm程度の大きさの球状に造粒して焼成し、直径11mm程度の大きさの球状の鉄鉱石ペレット(以下において、ペレット鉱と呼ぶこともある)を製造する設備である。
さて、鉄鉱石ペレットを製造するには、まず、原料として用意された鉄鉱石の一部、石灰石、珪石、ドロマイトを乾燥させて微粉砕し、粉砕された原料に適度の水分を均一に添加して混合して湿潤原料とし、粉砕せずに直接使用する微粉の鉄鉱石を加え、調湿処理された湿潤微粉の原料を造粒機に装入し、その造粒機を転動して生ペレットを造粒する。この造粒された生ペレットを鉄鉱石ペレット製造設備1に搬送し、焼成し、製品としての鉄鉱石ペレットを製造する。
【0016】
この鉄鉱石ペレット製造設備1には、シャフト炉方式、ストレートグレート方式、グレートキルン方式等がある。なお、以降に述べる本発明の実施の形態においては、トラベリンググレート炉2、ロータリーキルン炉3、クーラー4を有し、且つ各設備2,3,4の排熱を回収して再利用するグレートキルン方式の鉄鉱石ペレット製造設備1を対象としている。
【0017】
図1に示すように、グレートキルン式の鉄鉱石ペレット製造設備1は、主にトラベリンググレート炉2(移動格子型予熱機)、それに続くロータリーキルン炉3(回転型焼成炉)、及び、その下流側に設けられるクーラー4(環状回転格子型冷却機)の3つの主要設備により構成される。
トラベリンググレート炉2(以降、単にグレート炉2と呼ぶこともある)は、造粒された生ペレットを受け取って、乾燥(DDD)、結晶水の脱離(DHZ)、及び予備焼成(PH)する設備である。生ペレットは、グレート炉2上に均一な厚さに層積みされ、乾燥室5、離水室6、予熱室7の各工程を順次通過し、続くキルン炉3内での転動加熱に耐え得る強度にまで予熱硬化される。
【0018】
ロータリーキルン炉3(以降、単にキルン炉3と呼ぶこともある)は、グレート炉2で予備焼成されたペレットを焼成する全長数十メートルほどの円筒状の焼成炉である。円筒状のキルン炉3の一端はグレート炉2に接続され、他端はクーラー4に接続されている。このときキルン炉3は、キルン炉3出口(他端側)であるクーラー4側が、キルン炉3入口(一端側)であるグレート炉2側よりも下がった位置となるように設置されて、円筒形の中心軸まわりに低速で回転する。
【0019】
キルン炉3内にグレート炉2側より供給されたペレットは、キルン炉3の回転に合わせてキルン炉3の側壁を周方向に沿って転動しながら所定の温度で加熱され、キルン炉3の傾斜によってキルン炉3出口であるクーラー4側へ徐々に移動する。この転動によって、キルン炉3内の全てのペレットは、ペレット層PL内において下層や上層のみに留まることなくあらゆる位置へ広範に移動して加熱される。従って、キルン炉3内の全てのペレットは均一に焼成され、安定した品質のペレット鉱が得られる。
【0020】
キルン炉3出口には、キルン炉3内の温度を所定温度に維持しペレットを焼成するために、グレート炉2側に向かって火炎を放射するキルンバーナー8が設けられている。
クーラー4は、キルン炉3から排出された焼成ペレットを、下側に配備されたクーラーファン9で大気を強制的に吹き込んで対流させる、強制対流冷却方法によって冷却する設備である。焼成ペレットは、クーラー4によって、後の搬送に支障のない温度にまで冷却され、製品(鉄鉱石ペレット)として搬出される。
【0021】
ところで、鉄鉱石ペレットを製造する過程では、その製造段階で排出ガスが生じており、大気へ放出されている。この排出ガスには、硫黄酸化物が含まれている。排出ガス中に硫黄酸化物が多く含まれていると、大気環境への悪影響が懸念される。このような環境影響の観点から、大気への悪影響を抑えるため、排出ガス中の硫黄酸化物の量を低減することが必要不可欠である。
【0022】
本発明の鉄鉱石ペレットを製造する過程で発生する、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量の低減方法(以降、単に「排出ガス中の硫黄酸化物量の低減方法」と呼ぶこととする)は、CaOを含有する微粉な鉄鉱石を造粒し、鉄鉱石ペレットを焼成する過程において、鉄鉱石ペレット製造設備1から排出される、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を低減する方法であり、キルン炉3からクーラー4に供給される段階における、鉄鉱石ペレット(ペレット鉱)の成分に着目し、その鉄鉱石ペレットの成分のうち、マグネタイト系鉄鉱石由来のFeOの含有量を調整することで、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を低減することとしている。
【0023】
まず、本実施形態の排出ガス中の硫黄酸化物量の低減方法の概略について述べる。
本実施形態の排出ガス中の硫黄酸化物の量の低減は、以下に示す4つの手順((i)〜(iv))に従って、鉄鉱石ペレット中のFeO含有量を低減制御することで行う。
(i) クーラー4から排出される、鉄鉱石ペレット中のS含有量を測定するとともに、鉄鉱石ペレット製造設備1からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を測定し、測定した鉄鉱石ペレット中のS含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量との関係を求める(図2参照)。
【0024】
(ii) キルン炉3からクーラー4に供給される、鉄鉱石ペレット中のFeO含有量を測定するとともに、クーラー4から排出された鉄鉱石ペレット中のS含有量を測定し、測定したペレット中のFeO含有量と、鉄鉱石ペレット中のS含有量の関係を求める(図3参照)。
(iii) 上記の(i)で求めた鉄鉱石ペレット中のS含有量と排出ガス中の硫黄酸化物の量の関係、及び、(ii)で求めた鉄鉱石ペレット中のFeO含有量と鉄鉱石ペレット中のS含有量の関係を用いて、鉄鉱石ペレット中のFeO含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量との関係を求める (図4参照) 。
【0025】
(iv) 上記の(iii)で求めた鉄鉱石ペレット中のFeO含有量と排出ガス中の硫黄酸化物の量の関係を用いて、キルン炉3からクーラー4に供給される鉄鉱石ペレット中のFeO含有量を制御して、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を低減させる。
次に、本実施形態の排出ガス中の硫黄酸化物の量の低減方法を、具体的に説明する。
まず始めに、グレートキルン方式の鉄鉱石ペレット製造設備1における、各設備2,3,4の排熱を回収して再利用する方式について、本実施形態では、クーラー4からの排熱を回収してキルン炉3に再利用する方式であり、且つCaOを含有する鉄鉱石ペレットを製造する設備の場合を例に挙げて説明している。
【0026】
ところで、CaOを含有する鉄鉱石ペレットとは、高炉スラグの塩基度CaO/SiO2調整のために、石灰石等を添加することにより、CaO含有量を調整した鉄鉱石ペレットのことである。なお以降において、鉄鉱石ペレットをペレット鉱と呼ぶこともある。
鉄鉱石ペレット製造での、通常input-S量は、そのうちの約70%が鉄鉱石由来(FeS2等の形態で存在)であり、残りの約30%が石炭などの燃料由来である。また、通常output-S量は、そのうち約50%が排出ガス中に硫黄酸化物として含まれ、鉄鉱石ペレット製造設備1の煙突10より放出され、残りの約50%がほぼCaSO4として、ペレット鉱中に残留することとなる。
【0027】
なお、input-S量及びoutput-S量については、下式のとおりである。
input-S量(kg/h)=output-S量(kg/h)=排出ガス中のS量(kg/h)+ペレット鉱中のS量(kg/h)
また、input-S量については、下式より計算する。
input-S量(kg/h)=input鉱石のS量(kg/h)+input燃料のS量(kg/h)
ただし、input鉱石のS量は、下式より求められる。
【0028】
input鉱石のS量(kg/h)=鉱石Aの供給量(t/h)×鉱石A中のS含有量(質量%)+鉱石Bの供給量(t/h)×鉱石B中のS含有量(質量%)+鉱石Cの供給量(t/h)×鉱石C中のS含有量(質量%)+…
なお、上記の各供給量については、ベルトコンベア秤量器にて測定し、S含有量については、各鉱石・各石炭を、例えば燃焼−赤外線吸収法により測定するとよい。
また、input燃料S量は、下式より求められる。
【0029】
input燃料のS量(kg/h)=キルン炉用バーナーへの石炭の供給量(t/h)×石炭中のS含有量(質量%)+キルン炉用バーナーへの重油の供給量(L/h)×重油中のS含有量(体積%)+キルン炉用バーナーへのCOGの供給量(Nm3/h)×COG中のS含有量(体積%)+グレート炉用バーナーへの石炭の供給量(t/h)×石炭中のS含有量(質量%)+グレート炉用バーナーへのCOGの供給量(Nm3/h)×COG中のS含有量(体積%)
なお、上記の各供給量に関し、石炭については、例えばベルトコンベア秤量器にて測定し、重油については、例えばオーバル式流量計にて測定し、COG(コークス炉ガス:Coke Oven Gas) については、例えばオリフィス式流量計にて測定するとよい。また、各鉱石、各石炭、重油、COGのそれぞれのS含有量については、例えば燃焼−赤外線吸収法により測定するとよい。
【0030】
また、output-S量については、下式により計算する。
output-S量(kg/h)=outputペレット鉱のS量(kg/h)+排出ガス中のSO2量(Nm3/h)/22.4×SO2分子量64
ただし、outputペレット鉱のS量は、下式で計算する。
outputペレット鉱のS量(t/h)=ペレット鉱の製造量(t/h)×ペレット鉱中のS含有量(質量%)
また、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物量の低減のメカニズムにおいては、ペレット鉱が含有するCaOによる、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の吸着反応(CaO+SO2+1/2O2→CaSO4)が重要である。なお、ペレット鉱中のCaO含有量については、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定するとよい。
【0031】
(i) まず、クーラー4から冷却されて排出される、すなわちクーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量(質量%)を測定するとともに、鉄鉱石ペレット製造設備1から排出される排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)を測定する。測定対象となるクーラー4出口におけるペレット鉱については、SをCaSO4の形態でペレット鉱表面に保有している。
【0032】
ところで、Sの排出先としては、排出ガス中に含まれるS量、ペレット鉱中のS量などが挙げられる。このSの排出先に関し、ペレット鉱中のS量を増加すれば、排出ガス中に含まれるS量、すなわち硫黄酸化物の量が低下することとなる。
以上に基づき、測定したクーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量との関係を求める。そのペレット鉱中のS含有量(質量%)と、排出ガス中の硫黄酸化物の量(Nm3/h)の関係の概略を、図2に示す。
【0033】
図2に示すように、クーラー4出口でのペレット鉱中のS含有量(質量%)が増加すると、排出ガス中の硫黄酸化物の量(Nm3/h)が低下する関係、すなわちマイナスの相関関係となる。
(ii) 次いで、キルン炉3からクーラー4に供給される、すなわちクーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量(質量%)を測定するとともに、クーラー4から排出された、すなわちクーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量(質量%)を測定する。
【0034】
クーラー4には、通常1100℃〜1300℃のペレット鉱が、キルン炉3から供給されている。
クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量は通常約7(質量%)である。このペレット鉱中に含有しているFeOは、クーラー4で全て酸化(2FeO・Fe2O3+1/2O2→3Fe2O3)することとなり、クーラー4出口におけるペレット鉱中のFeO含有量は、通常ほぼ0となる。
【0035】
また、クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeOは、クーラー4内で酸化発熱反応(2FeO・Fe2O3+1/2O2→3Fe2O3)を起こし加熱されるため、図1の(A)に示すように、クーラー4内のペレット鉱温度は、クーラー4供給時より上昇することとなる。
ここで、FeO酸化発熱反応による温度上昇幅は、(4FeO・Fe2O3+O2=6Fe2O3+388(kcal/kg)-FeO)により、発熱した熱量をペレット鉱比熱で除した値で求められる(388cak/kg:化学便覧 基礎編II-日本化学会編1966年発行-P823-表7より抜粋) 。なお、ペレット鉱の比熱に関しては、カロリーメーターにより、測定した。このクーラー4内におけるペレット鉱の最高温度(Tmax)は、下式に示すように、クーラー4入口におけるペレット鉱温度と、そのペレット鉱中のFeO含有量、すなわちクーラー4内での酸化発熱反応の状況とにより決定される。
【0036】
Tmax=Tp(クーラー4入口におけるペレット鉱の温度)+ΔT(酸化発熱反応による温度上昇)
なお、クーラー4入口におけるペレット鉱の温度に関しては、キルン炉3からクーラー4へ供給されるペレットを、例えば放射温度計にて測定するとよい。
ところで、測定対象となるクーラー4に供給されるペレット鉱は、SをCaSO4の形態でペレット鉱表面に保有している。
【0037】
また、クーラー4からの排熱を回収してキルン炉3に再利用する方式の鉄鉱石ペレット製造プロセスにおける、Sのフローについては、クーラー4内におけるペレット鉱のSの分解量(CaSO4→CaO+SO2+1/2O2)により、排出ガス中の硫黄酸化物の量が決定される。
このペレット鉱のS分解反応は、吸熱反応であるため、クーラー4内でペレット鉱温度が最高温度に上昇すると、S脱離反応(CaSO4→CaO+SO2+1/2O2(吸熱反応))が進行し、Sがペレット鉱から排出ガスへ放出される(移行する)こととなる。
【0038】
この吸熱反応(分解反応)の結果、脱離後の残留S量はクーラー4内におけるペレット鉱の最高温度に反比例することから、クーラー4内のペレット鉱温度により、クーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量が決定されることとなる。
以上に基づき、測定したクーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量と、クーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量との関係を求める。そのペレット鉱中のFeO含有量(質量%)と、ペレット鉱中のS含有量(質量%)との関係の概略を図3に示す。
【0039】
図3に示すように、クーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量(質量%)低下がすると、クーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量(質量%)が増加する関係、すなわちマイナスの相関関係となる。
(iii) さらに、(i)で求めたクーラー4出口でのペレット鉱中のS含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量との関係、及び、(ii)で求めたクーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量と、クーラー4出口でのペレット鉱中のS含有量との関係を用いて、クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量(質量%)と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)の関係を求める。
【0040】
図4に示すように、(i)と(ii)で求めた関係を整理すると、クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量(質量%)が低下すると、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)が低下する関係、すなわちプラスの相関関係となる。
(iv) 上記の(iii)で整理して求めたクーラー4入口におけるペレット鉱石中のFeO含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量との関係を用いて、キルン炉3からクーラー4に供給される、ペレット鉱中のFeO含有量(質量%)を制御して、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量(Nm3/h)を低減する。
【0041】
さて、低減するための排出ガスに含まれる硫黄酸化物の量の管理値は、大気汚染防止法や、自主管理値などに基づいて、プラント毎に決定される。例えば、自主管理値以下となるように、排出ガスに含まれる硫黄酸化物の量をプラント毎に管理するとよい。
但し、このクーラー4入口におけるペレット鉱石中のFeO含有量と、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量との関係は、input-S量が一定、鉄鉱石ペレット製造量も一定ということが前提である。
【0042】
さて、ペレット原料には、マグネタイト系鉄鉱石、ヘマタイト系鉄鉱石、副原料、粉コークスが配合されている。マグネタイト系鉄鉱石の配合率により変化するが、ペレット原料中のFeO含有量は通常約17(質量%)である。
なお、マグネタイト系鉄鉱石とは、マグネタイト(FeO・Fe2O3など)を多量に含有する鉄鉱石の総称である。また一般には、FeOを20(質量%)以上含有する鉄鉱石をマグネタイト系鉄鉱石と定義している。また、ヘマタイト系鉄鉱石とは、ヘマタイトFe2O3を多量に含有する鉄鉱石の総称である。
【0043】
また、副原料とは、珪石、石灰石、ドロマイトの総称である。鉄鉱石ペレットの成分規格を確保するために、所定のCaO、SiO2、MgOの含有量になるように、副原料を配合し、調整している。また、粉コークスは、石炭を蒸し焼きにしたコークスのスクリーン下粉であり、鉄鉱石ペレット製造における燃料として、ペレット原料に配合している。
ところで、マグネタイト系鉄鉱石を含む原料を用いてペレット鉱を製造するにあたっては、クーラー4に供給されるペレット鉱にFeOが多量に含有されていると、クーラー4出口において、ペレット鉱中のS含有量が減少し、一方で硫黄酸化物の量が多くなる。したがって、鉄鉱石ペレット製造設備1の煙突10から外部に放出される排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量も多くなってしまう虞がある。
【0044】
そこで、本願発明者は、クーラー4に供給されるペレット鉱に含有されるFeO量を制御することで、クーラー4出口における硫黄酸化物の量を低減して、排出ガス中の硫黄酸化物の量を低く抑えるようにしている。
ペレット鉱中のFeO含有量は、トラベリンググレート炉2〜ロータリーキルン炉3〜クーラー4の工程を進むにつれて、酸化反応(2FeO・Fe2O3+1/2O2→3Fe2O3)により、低下する。
【0045】
例えば、生ペレット(焼成前のペレット)原料中のFeO含有量が約17(質量%)である場合、グレート炉2、及びキルン炉3でFeO酸化反応が進行するため、クーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量は、約7(質量%)にまで低下することとなる。
さらに、クーラー4内でFeO酸化反応が進行するため、クーラー4出口でのペレット鉱中のFeO含有量は1(質量%)以下にまで低下することとなる。
【0046】
ここで、クーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量を制御する方法を、以下に例示する。
・マグネタイト系鉄鉱石の配合率を調整することで、ペレット原料中のFeO含有量を制御する方法。
・粉コークスの配合率を調整することで、ペレット原料中のFree-C含有量を調整し、グレート炉2、及びキルン炉3におけるC燃焼反応量(C+O2→CO2)を調整することで、FeO酸化反応量を制御する方法。例えば、ペレット原料中のFree-C含有量を0.3%以上から0.1%以下に調整する。なお、Free-C含有量は、例えば燃焼−赤外線分析法により測定するとよい。
【0047】
・グレート炉2、又はキルン炉3における炉内酸素濃度を制御することで、FeO酸化反応量を制御する方法。
このように、(i)〜(iv)に沿って、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量が所定値を下回るように、クーラー4入口におけるペレット鉱石中のFeO含有量を制御する。
[実施例]
以下に、本発明の排出ガス中の硫黄酸化物の量の低減方法の実施例について、図を基に説明する。
【0048】
まず、実施条件を以下に示す。
本実施例においては、グレートキルン式の鉄鉱石ペレット製造設備1でおこなった。
グレート炉2については、幅:4.716m×有効焼成長さ:63.3m(20.75WB)=有効焼成面積:298m2であり、3室に分割されており、低温側から、乾燥室(5)6.75WB−離水室(6)5WB−予熱室(7)9WB、また3室ともに下方吸引方式である。
【0049】
キルン炉3については、内径:6.0m×長さ:46.0m、据付け勾配:0.05°である。
クーラー4については、円形ドーナツ状であって、平均直径:17.0m×パレット幅:2.5mであり、有効冷却面積:119m2、高温側面積の85m2分は冷却後の排熱をキルン炉3に導入して再利用し、低温側面積34m2分は冷却後の排熱を粉砕設備に導入し再利用している。クーラー4の回転数は、通常1.8〜2.3(rph)である。
【0050】
ペレット原料には、鉄鉱石、副原料、粉コークスが含まれ、鉱石原料中のS含有量は0.02〜0.08(質量%)で評価した。石炭は、キルン炉用石炭、グレート炉用石炭が含まれ、石炭中のS含有量は0.4〜0.6(質量%)で石炭銘柄ごとに評価した。ペレット製造量は400〜510(t/h)の範囲で評価した。ペレット鉱の塩基度CaO/SiO2=1.10〜1.30の範囲で評価した。原料供給量は520〜580(t/h)であった。
【0051】
また、離水室6の排出ガス量は、1.1〜1.3(Nm3/kg-pellet)であり、予熱室7の排出ガス量は、0.8〜1.0(Nm3/kg-pellet)である。クーラー4の冷却空気量は、0.55〜0.70(Nm3/kg-pellet)である。煙突10における排出ガス量は、1.8〜2.1(Nm3/kg-pellet)であった。
まず、クーラー4出口から排出されるペレット鉱を採取し、そのペレット鉱中のS含有量(質量%)を測定した。
【0052】
このとき、クーラー4出口でのペレット鉱を採取すると同時に、ペレット鉱の製造量を測定した。なお、ペレット鉱の製造量は、鉄鉱石ペレット製造設備1の出口側に設置されているコンベア秤量器にて測定した。
ペレット鉱中のS含有量とペレット鉱の製造量より、outputペレット鉱のS量を計算した。
【0053】
また、ペレット鉱を採取すると同時に、鉄鉱石ペレット製造設備1からの排出ガス中に含まれるSO2量を測定した。なお、排出ガス中に含まれるSO2量は、煙突10に送風される前で測定した。また、排出ガス中に含まれるSO2量については、下式で計算した。
排出ガス中のSO2量(Nm3/h)=排出ガス量(Nm3/h)×排出ガス中のSO2濃度(ppm)
ただし、排出ガス量については、排出ガスダクトにて、オリフィス流量計を用いて風量を測定した。また、排出ガス中のSO2濃度については、排出ガスダストに設置している連続式SO2分析計(赤外線吸収法)により測定した。
【0054】
得られたoutputペレット鉱のS量と、排出ガス中のSO2量をX-Yグラフにプロットし、最小2乗法により1次関数近似を行い、その関係を求めた。outputペレット鉱のS量(kg/h)と、排出ガス中のSO2量(Nm3/h)の関係を、図5に示す。
図5に示すように、outputペレット鉱のS量が増加すると、排出ガス中のSO2量が低下することとなる。
【0055】
次に、キルン炉3からクーラー4入口に供給される高温のペレット鉱を採取し、その後、採取後の空気中での酸化反応によるFeO含有量低下を防止するために、高温ペレット鉱をすぐに水冷した。
その水冷したペレット鉱中のFeO含有量を測定する。なお、ペレット鉱中のFeO含有量については、滴定法により測定した。
【0056】
先ほど採取してから所定の滞留時間後に、クーラー4から排出されたペレット鉱を採取し、クーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量を測定した。
測定したクーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量と、クーラー4出口でのペレット鉱中のS含有量をX-Yグラフにプロットし、最小2乗法により1次関数近似を行い、その関係を求めた。クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量(質量%)と、クーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量(質量%)の関係を、図6に示す。
【0057】
図6に示すように、クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量(質量%)が低下すると、クーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量(質量%)が増加することとなる。
最後に、得られたoutputペレット鉱のS量、排出ガス中のSO2量、クーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量と、クーラー4出口でのペレット鉱中のS含有量を整理した上で、クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量と、排出ガス中に含まれるSO2量をX-Yグラフにプロットし、最小2乗法により1次関数近似を行い、その関係を求めた。
【0058】
クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量(質量%)と、排出ガス中に含まれるSO2量(Nm3/h)の関係を、図7に示す。
図7に示すように、クーラー4入口におけるペレット鉱中のFeO含有量(質量%)が低下すると、排出ガス中のSO2量(Nm3/h)が低下することとなる。
以上より、例えばペレット原料中のFree-C含有量を通常0.3(質量%)以上から0.1(質量%)以下に低減させると、図1に示すように、グレート炉2、及びキルン炉3における、FeOの酸化反応を促進させて、そのキルン炉3からクーラー4に供給されるペレット鉱中のFeO含有量を低減し、クーラー4内のペレット鉱の温度を下げ(図1の(A))、(CaSO4→CaO+SO2+1/2O2)の反応を減らして、クーラー4出口におけるペレット鉱中のS含有量を増加させることで、排出ガス中のSO2量を低減することができる。
【0059】
表1に、本発明の適用有無の実施データを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1のデータNo.5(比較例)に示すように、クーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量が8.1(質量%)と分析されると、クーラー4出口でのペレット鉱中のS含有量は0.029(質量%)と測定され、排出ガス中のSO2量が110(Nm3/h)と計算される。
対して、表1のデータNo.24(実施例)を参照すると、クーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量が2.5(質量%)と分析されると、クーラー4出口でのペレット鉱中のS含有量は0.068(質量%)と測定され、排出ガス中のSO2量が42(Nm3/h)と計算される。
【0062】
このように、クーラー4入口でのペレット鉱中のFeO含有量を低下するように制御(調整)しておくと、排出ガス中のSO2量を低減することが可能となる。
表2に、本発明の適用有無の操業データを示す。図8に、本発明の適用有無での排出ガス中のSO2量の変化を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2、図8に示すように、本発明を適用することで、input-S量がほぼ同じ380(kg/h)でも、排出ガスSO2量を104(Nm3/h)から、排出ガス脱硫設備の設置などの鉄鉱石ペレット製造設備1の改造工事なしに、22(Nm3/h)に79%低減することができる。
以上に述べた鉄鉱石ペレット製造設備1からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物量の低減方法を用いることで、CaOを含有する鉄鉱石ペレットを製造するグレートキルン方式の製造設備1において、その製造設備1に排出ガス脱硫設備等を設置することなく、製造設備1からの排出ガス中に含まれる硫黄酸化物を効果的に低減することができる。また、input-S量が増加した場合でも、排出ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を上昇させることなく、操業することができる。
【0065】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0066】
1 鉄鉱石ペレット製造設備(ペレットプラント)
2 グレート炉(トラベリンググレート炉)
3 キルン炉(ロータリーキルン炉)
4 クーラー
5 乾燥室
6 離水室
7 予熱室
8 キルンバーナー
9 クーラーファン
10 煙突
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8