(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について説明する。
図1は、生活見守りシステムの一実施形態を示すハードウェアブロック図である。このシステムは、高齢者等の見守りに適用されることが好適なものである。見守り対象者の体調の変化は、その生活パターンが徐々に変化することや生活量が徐々に減少することによって生じていくために、俄かには、分からないことが多いし、個人差も大きい。
【0010】
対象者の生活を見守るためのネットワークシステムは、見守り対象者の生活空間における生活資源(電力、水)の使用情報、即ち、生活情報に基づいて、見守り対象者の体調が徐々に変化していることを捉え、見守り対象者の疾病の発症を未然に防止できるようにする。なお、「見守り」を「観察」、又は、「監視」と言い換えてもよい。
【0011】
ネットワークシステムは、データセンタとしての見守りセンター1と、見守り対象者の生活空間(居住空間(居宅、或いは、居室等))2に設置されているホームサーバ3と、サービス提供事業者用集中監視端末4と、居住者用表示装置5と、これらを相互に通信可能に接続するネットワーク網6とを備えている。見守りセンター1はサービス事業者によって運営されればよい。
【0012】
ホームサーバ3、居住者用表示装置5は、生活空間毎に設けられている。複数の生活空間を統合するように、ホームサーバ3を配置してもよい。見守り対象者の生活空間として、二つの部屋2a,2bが例示されている。なお、同一若しくは同一と見做すことができる複数の構成要素には、共通の参照番号を付し、複数の構成要素を互いに区別しようとする場合には、a,bの添え字を付すこととする。
【0013】
生活空間(居室2a、居室2b)は、居間7a,7bと寝室9a,9bに大別され、前者には照明8a,8bが設置されており、後者には、空調機器10a,10b、テレビ11a,11b、照明器具12a,12bが備えられ、これらは夫々、商用電源13a,13bに接続されている。
【0014】
商用電源13a,13bの直近には、電力センサ14a,14bが設置され、この電力センサによって商用電源13から各号室(居室2a、居室2b)に供給される各室の電力が計測される。電力センサ14a,14bの電力センサの検出信号(電力量信号)15a,15bは、ホームサーバ3a,3bに入力される。
【0015】
見守りセンター1(計算機システム)は、ホームサーバ3a,3bにネットワーク網6を介して接続し、ホームサーバ3a,3bからデータ入出力制御部16を介して電力量検出信号15a,15bを受信する。見守りセンター1は、既述のデータ入出力制御部16と、ホストコンピュータ17と、さらに、データベース18を備える。
【0016】
ホストコンピュータ17は、データの管理と見守りの運用を行うために入力部19と表示部20を備えている。入力部19は例えばキーボード、タッチパネルなどの公知の入力装置を備え、表示部20は液晶ディスプレイなどの公知の表示装置を備える。ネットワーク網6は、例えばインターネットあるいは公衆電話通信網などの通信網から構成される。
【0017】
ホストコンピュータ17は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only
Memory)、そして、RAM(Random Access Memory)を備え、ROM、HDD(Hard Disc Drive)、あるいは、ネットワーク網6を介してダウンロードされたプログラムをRAMあるいはHDDに展開し、これら記憶デバイスをバッファとして使用しながらプログラムで定義された処理を実行する。
【0018】
ホストコンピュータ17は、電力量検出信号15a,15bに基づいて、各部屋2a,2bの一時間当たりの消費電力量(生活情報)を計算する。データベース18には、見守り対象者に係る特定データ(氏名、年齢、住所、独居或いは同居等の生活環境、病歴等)と、見守り対象者の生活情報の時系列データ、そして、見守り対象者の生活情報の分析結果が見守り対象者毎に記録される。
【0019】
ホストコンピュータ17は、所定時間毎、例えば、一時間毎の消費電力量を、見守り対象者別にデータベース18に記録する。これら情報は、管理端末4、又は、ホストコンピュータ17によって容易に検索され、サービス事業者は、所望の情報をユーザに提供できるようになっている。
【0020】
図2に、ホストコンピュータ17によって実行される、見守り処理の機能ブロック図を示す。ホストコンピュータ17は、生活情報(1時間毎の消費電力量)に対して見守り処理を適応し、得られた情報をデータベース18に記録する。
【0021】
ホストコンピュータ17は、所定タイミング、例えば、毎月末日の24:00に、データベース18に記録された生活情報について、例えば、当月を含む過去3か月分の毎時の消費電力量に基づいて、見守り対象者のための見守り処理を適用する。
【0022】
ホストコンピュータ17は、見守り処理のために、見守り対象者が生活空間内に所在しているか否かを判定する所在判定モジュール200と、最頻値決定モジュール202と、見守り対象者の起床時間、就寝時間、及び、活動時間からなる生活時間を算出する生活時間算出モジュール204と、見守り対象者の夜間(就寝時間から起床時間迄)における活動回数を算出する夜間活動回数算出モジュール206と、算出値記録モジュール208と、算出値分析モジュール210と、を備える。各モジュールは、ソフトウェア、又は、ソフトウェア及びハードウェアによって実現される。ホストコンピュータ17は、算出データの分析結果を、ネットワーク網6を経由してサービス事業者用集中監視端末4、居住者用表示装置5a、5bに出力する。
【0023】
次に、機能ブロック図の動作を
図3に基づいて説明する。所在判定モジュール200は、毎時、データベース18から、例えば、一月分の同一生活空間(同一居室)と同じ時間帯の一時間当たりの消費電力量の平均値を算出する(S(ステップ)1)。
【0024】
そして、所在判定モジュール200は、平均値と電力検出値とを比較し、後者が前者の30パーセント以下の場合には、電力が検出された1時間の間、見守り対象者が生活空間に不在であったとして、検出値に「不在フラグ」を設定して、見守り処理にこの検出値を含ませないようにしている(S2)。
【0025】
次いで、最頻値決定モジュールは、同一生活空間(同一居室)における同一時間帯での当月、前月、前々月の3ヶ月分の一時間当たりの消費電力量をデータベース18から参照して、その最頻値を算出する。この結果、同一生活空間(同一居室)における、24時間の一時間毎の最頻値が得られる。最頻値決定モジュールは、これを当月データとする(S3)。ここで、最頻値を採用する理由は次のとおりである。
【0026】
既述のとおり、高齢者では生活パターンや生活量が個人毎に異なることと、同じ人物であっても体調、気分などによっても生活の態様が異なり、それらによって生活資源の使用量も違ってくる。平均値を使用すると、生活パターンや生活量の変化が相殺されてしまうのに対して、最頻値ではこの問題がないか、少ないと言える。本実施形態では、消費電力量を複数の階級に分け、最も消費電力量の分布度数が多い階級の複数の消費電力量の平均を「最頻値」とするなど、「最頻値」に幅を持たせるようにしてもよい。
【0027】
生活時間算出モジュール204は、24時間の一時間毎の最頻値に基づいて、例えば、消費電力量(最頻値)の時間毎の変化から、各居室の生活態様を特定するため、起床時間と就寝時間を決定して、一日の活動時間を算出し、これを当月のものとしてデータベース18に記録する。
【0028】
そして、夜間活動回数算出モジュール206は、見守り対象者の夜間(就寝時間から起床時間迄)における活動回数を算出、ないしは決定して、これを当月のものとしてデータベースに記録する(以上,S4)。生活時間算出モジュール204は、最頻値の24時間推移のための表示データを作成し、そして、夜間活動回数算出モジュール206は、夜間活動回数の推移のための表示データを作成して、グラフにしてサービス提供事業者用集中監視装置4に表示する(S5)。
【0029】
次に、算出値分析モジュール210は、月毎の最頻値の24時間推移、そして、月毎の夜間活動回数の推移を評価或いは分析(S6)、例えば、これら推移の変化と所定条件とを比較して、比較結果に基づいた情報を出力する。より具体的には、算出値分析モジュール210は、複数月(二月)連続して、同−又は類似の傾向を持って「推移」が変化するか否かを判断する。この判断が否定される場合には、算出値分析モジュール210は、
図3のフローチャートを終了し、この判断を肯定する場合には、所定の警告、或いは、注意を出力する(S7−S14)。
【0030】
算出値分析モジュール210は、二月連続で起床時間が早くなっている場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末(入居者用表示装置)5a,5bに表示させる(S7)。
【0031】
算出値分析モジュール210は、二月連続で起床時間が遅くなっている場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末5a,5bに表示させる(S8)。
【0032】
算出値分析モジュール210は、二月連続で就寝時間が早くなっている場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末5a,5bに表示させる(S9)。
【0033】
算出値分析モジュール210は、二月連続で就寝時間が遅くなっている場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末5a,5bに表示させる(S10)。
【0034】
算出値分析モジュール210は、二月連続で夜間活動回数が増えている場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末5a,5bに表示させる(S11)。
【0035】
算出値分析モジュール210は、二月連続で夜間活動回数が減少している場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末5a,5bに表示させる(S12)。
【0036】
算出値分析モジュール210は、二月連続で一日の活動時間が増加している場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末5a,5bに表示させる(S13)。
【0037】
算出値分析モジュール210は、二月連続で一日の活動時間が減少している場合は、これをサービス提供事業者用集中監視端末4、及び/又は、見守り対象者側端末5a,5bに表示させる(S14)。
【0038】
図4は、生活時間算出モジュール204によって作成された、三か月における消費電力量の時間別最頻値21の一日の推移を示すグラフ(
図3のS5)の一例である。算出値分析モジュール210は、低レベルの夜間電力から増加した時点を起床時間23と判定し、夜間に低レベルの値に達した時点を就寝時間24と判定する。就寝時間24と起床時間との間が夜間に相当する。
【0039】
そして、算出値分析モジュール210は、起床時間23から、就寝時間24の間で消費電力量が低レベルの外出時間を除いた時間を活動時間25と判定する。さらに、算出値分析モジュール210は、最頻値21の夜間における頂点に夜間活動22が発生したと判定し、頂点の数を夜間活動回数とする。
【0040】
本発明者は、高齢者、特に一人暮らしの生活パターンを子細に分析した結果、高齢者の体調の変化の始まりは、日中の生活態様には変化がなく、夜間の生活態様の変化となって現れ易いことを見出した。夜間の生活態様の僅かな変化を客観的に検知できれば、高齢者の体調の変化を最初の段階で捉え、将来の疾病を予測し、これに対処することができる。夜間の生活態様の変化とは、例えば、
図3のS7−S14の状態である。夜間の生活態様の客観的な変化とは、一時的ではなく、夜間の生活態様に以前とは異なる傾向が現われることである。
【0041】
生活情報(消費電力量)の短期間の最頻値を基準にして最頻値を比較すると、生活態様の一時的な変化が体調の変化と判断されてしまうし、一方、長期間の最頻値を基準にすると、生活態様の一時的でない変化を捉えられないとう課題がある。そこで、高齢者の体調の変化の兆しを検出するのには、妥当な期間があることになり、発明者が検討したところ、その一例として、生活情報(消費電力量)の三カ月の最頻値を基準にするのが好適であることが判った。
【0042】
このことを、体調変化(認知症)を発症した高齢者(80歳女性)を例にして説明する。
図5は、消費電力量の一カ月の最頻値を基準とし、発症六カ月前の消費電力量(実線)の一日の最頻値と発症前七カ月の消費電力量の最頻値の変化を示すグラフである。1ヶ月の最頻値を基準にすると、一日の多くの時間帯において、両者間で、消費電力量に差が生じ、高齢者の生活態様の一時的でない変化を検出できない。
【0043】
図6は、消費電力量の六カ月の最頻値を基準とし、発症の六カ月前の消費電力量(実線)と七カ月前の消費電力量(点線)の一日の変化を示すグラフである。六ヶ月の最頻値を基準にすると、両者の消費電力量の傾向が夜間でも差がでず、生活態様の変化を検出できない。
【0044】
これに対して
図7は、消費電力量の三カ月の最頻値を基準とし、発症の六カ月前の消費電力量(実線)と七カ月前の消費電力量(点線)の一日の電力量の変化を示すグラフである。最頻値の基準を、一か月を越え6か月未満、好ましくは、二か月以上5月以下、さらに好ましくは、三か月以上4か月以下、さらに好ましくは、ほぼ三か月にすると、両者間で、夜間の消費電力量において差分が現われるようになった。
【0045】
高齢者の体調変化は、その初期の段階で、夜間の生活態様の変化になって現れることを述べたが、特に、不眠等の安眠障害が原因になって夜間の活動回数において顕著に表れる。
図8は、消費電力量の三か月の最頻値に基づき、夜間活動回数の月毎の推移の一例を示すグラフである。図において、高齢者のうち生活異常発生者80では、夜間活動回数が変化しない安定した生活期間26を経てその翌月27において夜間活動回数が増加し始め、さらに翌月も増加した場合に発報28を行う。
図8において、生活安定者82では、夜間活動の変化は検出されない。なお、翌々月も増加した場合に発報を行うようにしてもよい。既述の実施形態では、消費電力量の三カ月の最頻値を利用したが、消費電力量の三カ月の最頻値の移動平均を利用してもよい。
【0046】
次に、第2の実施形態について説明する。
図9は、第2の実施形態に係るネットワークシステムのハードウェアブロック図である。この実施形態が第1の実施形態と異なる点は、空調機器10a,10bの電力センサ21a,21bと温熱機器20a,20bの電力センサ22a,22bを備え、ホームサーバ3a,3bはこれらの消費電力を知ることが出来る点である。
【0047】
空調機器10a,10bと温熱機器20a,20bの消費電力は、季節によって変動が大きく、ホストコンピュータ17は、消費電力量(主幹電力量)から、空調機器(エアコン)、及び、温熱機器(給湯機器・ヒータ)の消費電力量を除くことによって、季節変動要因を除くことによって、高齢者の体調変動によって変化する生活情報(生活電力)の実質変動分、例えば、照明機器、テレビ・ラジオ等の情報機器の消費電力量を特定することができる。
【0048】
図10はネットワークシステムのさらに他の実施形態を示すハードウェアブロック図である。本実施形態が既述の実施形態と異なる点は、消費電力量に加えて水使用量を検出できるようにした点である。居間7a,7bには、浴室の水栓29a,29bとお手洗いの水栓30a,30bとキッチンの水栓31a,31bがあり、それらの水使用量を計測する水使用量センサ32a,32bが設置され、この水使用量センサ32の水使用量センサ信号33a,33bが各居室2a,2bのホームサーバ3a,3bに入力される。本実施形態では、ホストコンピュータ17は在室時の過去の任意の期間の水使用量データから計測時間毎の水使用量の最頻値を求め当月のデータとして保存する。
【0049】
図11は
図10のネットワークシステムにおいて、ホストコンピュータ17による、消費電力量と水消費量に基づく見守り処理のフローチャートである。既述のフローチャート(
図3)に以下に説明するステップが追加されている。ステップ15において、各居室の当月、前月、前々月の3ヶ月の水使用量データから、各居室の時間毎の最頻値(水消費量)を求め当月データとする。ステップ16において、水消費量の最頻値の変化から、夜間水使用回数を当月のデータとして算出する。ステップ17において、夜間水使用回数が増加している場合に、夜間水使用回数が増加していることを通知し、ステップ18において、夜間水使用回数が減少している場合に、夜間水使用回数が減少していることを通知する。
【0050】
図12は三カ月の消費水量の時間別の最頻値33の変化を示すグラフである。最頻値33の夜間の頂点が夜間活動回数34に相当する。高齢者の体調の変化は、夜間の生活態様の変化して現われるが、夜間の電気の使用に加えて夜間の水の使用から、ネットワークシステムは高齢者の夜間の生活の変化をさらに詳細に検出することができる。夜間の水の消費量、使用回数の増加の原因として、例えば、水分代謝の変調(頻尿)がある。消費電力量に基づく夜間での活動回数の増加だけではなく、夜間の水の消費量、使用回数の増加は、見守り対象者について、将来の体調の変化に繋がる生活の変化の度合いがより大きいことが予測される。
【0051】
既述の実施形態は、本発明を限定するものではなく、適宜、既述の実施形態を変更することも可能である。例えば、生活空間に複数の人物が存在する場合にも、本発明を適用することが可能である。