特許第6578273号(P6578273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル)の特許一覧

特許6578273セルエッジ近傍で動作している高優先度ユーザ機器のハンドオーバの制御
<>
  • 特許6578273-セルエッジ近傍で動作している高優先度ユーザ機器のハンドオーバの制御 図000002
  • 特許6578273-セルエッジ近傍で動作している高優先度ユーザ機器のハンドオーバの制御 図000003
  • 特許6578273-セルエッジ近傍で動作している高優先度ユーザ機器のハンドオーバの制御 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578273
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】セルエッジ近傍で動作している高優先度ユーザ機器のハンドオーバの制御
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/26 20090101AFI20190909BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20190909BHJP
   H04W 36/38 20090101ALI20190909BHJP
【FI】
   H04W36/26
   H04W24/10
   H04W36/38
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-516901(P2016-516901)
(86)(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公表番号】特表2016-536831(P2016-536831A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】IB2014064076
(87)【国際公開番号】WO2015044806
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】14/037,911
(32)【優先日】2013年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161470
【弁理士】
【氏名又は名称】冨樫 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 利康
(74)【代理人】
【識別番号】100194320
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 亮
(72)【発明者】
【氏名】バワスカー, ナミータ
【審査官】 桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−259306(JP,A)
【文献】 特開2012−010300(JP,A)
【文献】 特開2013−157974(JP,A)
【文献】 特開2015−041811(JP,A)
【文献】 特開2009−147531(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0065632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービングセルのセルエッジ近傍で動作しているユーザ機器(UE)(11)のハンドオーバを制御するための、セルラ電気通信システムのeNodeB(31)における方法であって、
近隣セルへの前記UEのハンドオーバを開始するのに用いられる信号品質ハンドオーバレベル(a5)を上回るレベルに設定された信号品質しきい値パラメータ(12)を利用するように規定された優先レベルを、前記UEが有するかどうかを判定すること(22)と、
前記信号品質しきい値パラメータ(12)を利用するように規定された優先レベルを前記UEが有すると判定されると、前記サービングセル内における前記UEの信号品質が、記信号品質しきい値パラメータを下回り、かつ前記信号品質ハンドオーバレベルを上回るかを判定するために、UE信号品質レポートを監視すること(24)と、
前記UEの前記信号品質が前記信号品質しきい値パラメータ(12)を下回り、かつ前記信号品質ハンドオーバレベル(a5)を上回っていると判定されたことに応答して、前記サービングセルから前記近隣セルへの前記UEのハンドオーバを強制的に実行すること(25)と
を含む方法。
【請求項2】
前記信号品質しきい値パラメータ(12)が、参照信号受信電力(RSRP)と、参照信号受信品質(RSRQ)と、信号対雑音比(SNR)と、信号対雑音干渉比(SINR)のいずれか1つとして規定され、かつ前記UE信号品質レポートが前記サービングセル内で前記UEによって経験された参照信号受信電力(RSRP)と、参照信号受信品質(RSRQ)と、信号対雑音比(SNR)と、信号対雑音干渉比(SINR)のうち対応するいずれか1つを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記UE信号品質レポートが、前記サービングセル内における前記UEによって経験された、UEチャネル品質指標(CQI)すなわちUEcqiを示す、UE CQIレポートを含み、前記信号品質しきい値パラメータがCQIしきい値パラメータ(12)を含み、前記信号品質ハンドオーバレベルがCQIハンドオーバレベルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルを前記UEが有していないと判定されると、
前記UEcqiが、記CQIハンドオーバレベルを下回るかを判定するために、UE CQIレポートを監視すること(23)と、
前記UEcqiが前記CQIハンドオーバレベルを下回っていると判定されたことに応答して、前記UEを前記近隣セルへハンドオーバすること(23)とをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記UE CQIレポートを監視することが、前記近隣セルのUEcqiが絶対しきい値を超えているかどうかを判定するために前記UE CQIレポートを監視することも含み、前記eNodeBが前記ハンドオーバを強制的に実行するのが
前記サービングセルの前記UEcqiが前記CQIしきい値パラメータよりも低く、
前記サービングセルの前記UEcqiが前記CQIハンドオーバレベルよりも高く、かつ
前記サービングセルの前記UEcqiが前記絶対しきい値未満であり、前記近隣セルの前記UEcqiが前記絶対しきい値を超える場合、
に限られる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定された1つまたは複数の優先レベルを示し、かつ規定された優先レベルごとの前記CQIしきい値パラメータの値を示す情報を、通信事業者システムから受信することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記優先レベルが、前記セルラ電気通信システム内で動作しているUEに割り当てられた、サービス品質(QoS)クラス識別子(QCI)レベルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記セルラ電気通信システムがLong Term Evolution(LTE)アクセスネットワークを備え、前記サービングセルおよび前記近隣セルが異周波数LTE近隣セルまたは同一周波数LTE近隣セルのいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
サービングセルのセルエッジ近傍で動作しているユーザ機器(UE)(11)のハンドオーバを制御するための、セルラ電気通信システムのeNodeB(31)における装置であって、コンピュータプログラム命令を格納するメモリ(33)に接続されたプロセッサ(32)を備え、前記プロセッサが前記コンピュータプログラム命令を実行するとき、前記プロセッサは前記装置に対し、
近隣セルへの前記UEのハンドオーバを開始するのに用いられる信号品質ハンドオーバレベル(a5)を上回るレベルに設定された信号品質しきい値パラメータ(12)を利用するように規定された優先レベルを、前記UEが有するかどうかを判定すること(22)と、
前記信号品質しきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルを前記UEが有すると判定されたことに応答して、前記サービングセル内における前記UEの信号品質が、記信号品質しきい値パラメータを下回り、かつ前記信号品質ハンドオーバレベルを上回るかを判定するために、UE信号品質レポートを監視すること(24、38)と、
前記UEの前記信号品質が前記信号品質しきい値パラメータ(12)を下回り、かつ前記信号品質ハンドオーバレベル(a5)を上回っていると判定されたことに応答して、前記サービングセルから前記近隣セルへの前記UEのハンドオーバを強制的に実行すること(25、41)とを行わせる、装置。
【請求項10】
前記信号品質しきい値パラメータ(12)が、参照信号受信電力(RSRP)と、参照信号受信品質(RSRQ)と、信号対雑音比(SNR)と、信号対雑音干渉比(SINR)のいずれか1つとして規定され、かつ前記UE信号品質レポートが前記サービングセル内で前記UEによって経験された参照信号受信電力(RSRP)と、参照信号受信品質(RSRQ)と、信号対雑音比(SNR)と、信号対雑音干渉比(SINR)
のうち対応するいずれか1つを示す、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記UE信号品質レポートが、前記サービングセル内における前記UEによって経験された、UEチャネル品質指標(CQI)すなわちUEcqiを示す、UE CQIレポートを含み、前記信号品質しきい値パラメータがCQIしきい値パラメータを含み、前記信号品質ハンドオーバレベルがCQIハンドオーバレベルを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルを前記UEが有していないと判定されたことに応答して、前記UEcqiが、記CQIハンドオーバレベルを下回るかを判定するために、UE CQIレポートを監視するようにさらに設定され、
前記UEcqiが前記CQIハンドオーバレベルを下回っていると判定されたことに応答して、前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルを有していない前記UEをハンドオーバするように設定された、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記近隣セルのUEcqiが絶対しきい値を超えているかどうかを判定するために前記UE CQIレポートを監視するようにさらに設定され、前記eNodeBが前記ハンドオーバを強制的に実行するのが
前記サービングセルの前記UEcqiが前記CQIしきい値パラメータよりも低く、
前記サービングセルの前記UEcqiが前記CQIハンドオーバレベルよりも高く、かつ
前記サービングセルの前記UEcqiが前記絶対しきい値未満であり、前記近隣セルの前記UEcqiが前記絶対しきい値を超える場合、
に限られる、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定された1つまたは複数の優先レベルを示し、かつ規定された優先レベルごとの前記CQIしきい値パラメータの値を示す情報を、通信事業者システムから受信するように設定されたインターフェース(40)をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記優先レベルが、前記セルラ電気通信システム内で動作しているUEに割り当てられた、サービス品質(QoS)クラス識別子(QCI)レベルである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
サービングセルのセルエッジ近傍で動作しているユーザ機器(UE)(11)のハンドオーバを制御するための、セルラ電気通信システムのeNodeB(31)における装置であって、
近隣セルへの前記UEのハンドオーバを開始するのに用いられるチャネル品質指標(CQI)ハンドオーバレベル(a5)、および前記CQIハンドオーバレベルを上回るレベルを有するCQIしきい値パラメータ(12)を示すCQIしきい値テーブル(39)を格納するように設定されたメモリと、
前記サービングセル内における前記UEのCQI(UEcqi)を報告するCQIレポートを前記UE(11)から受信するように設定された無線受信部(35)と、
通信事業者システムへのインターフェースを有するスケジューラ(34)であって、
前記通信事業者システムから、前記UEの前記サービス品質(QoS)クラス識別子(QCI)レベルが前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定されていることを示す情報(37)を受信することと、
比較部(38)に対し、前記UEcqiを、前記しきい値テーブル(39)に格納された前記しきい値と比較して、前記UEcqiが、記CQIしきい値パラメータ(12)を下回り、かつ前記CQIハンドオーバレベル(a5)を上回るかを判定するよう命令することと、
強制ハンドオーバ部(41)に対し、前記UEcqiが前記CQIしきい値パラメータ(12)を下回り、かつ前記CQIハンドオーバレベル(a5)を上回っているという前記比較部(38)による判定に応答して、前記近隣セルへの前記UEのハンドオーバを強制的に実行するよう命令することと
を行うように設定されたスケジューラ(34)と
を備える装置。
【請求項17】
前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定されたQCIレベルを前記UEが有していないと判定されたことに応答して、前記UEcqiが、記CQIハンドオーバレベルを下回るかを判定するために、UE CQIレポートを監視するようにさらに設定され、
前記UEcqiが前記CQIハンドオーバレベルを下回っていると判定されたことに応答して、前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルを有していない前記UEをハンドオーバするように設定された、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記近隣セルのUEcqiが絶対しきい値を超えているかどうかを判定するために前記UE CQIレポートを監視するようにさらに設定され、前記eNodeBが前記ハンドオーバを強制的に実行するのが
前記サービングセルの前記UEcqiが前記CQIしきい値パラメータよりも低く、
前記サービングセルの前記UEcqiが前記CQIハンドオーバレベルよりも高く、かつ
前記サービングセルの前記UEcqiが前記絶対しきい値未満であり、前記近隣セルの前記UEcqiが前記絶対しきい値を超える場合、
に限られる、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記CQIしきい値パラメータを利用するように規定された1つまたは複数の優先レベルを示し、かつ規定された優先レベルごとの前記CQIしきい値パラメータの値を示す情報を、通信事業者システムから受信するように設定されたインターフェースをさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記優先レベルが、前記セルラ電気通信システム内で動作しているUEに割り当てられた、サービス品質(QoS)クラス識別子(QCI)レベルである、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記セルラ電気通信システムがLong Term Evolution(LTE)アクセスネットワークを備え、前記サービングセルおよび前記近隣セルが異周波数LTE近隣セルまたは同一周波数LTE近隣セルのいずれかである、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルエッジ近傍で動作しているユーザ機器(UE)のハンドオーバを制御するための、eNodeB(eNB)における方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Long−Term Evolution(LTE)無線アクセスネットワークにおいて、UEは、各自のサービングeNBへチャネル品質指標(CQI)レポートを送信することで、eNBが各UEの経験している物理的な無線環境すなわちチャネル品質を判定して、適用する変調符号化方式を決定しやすいようにする。各送信時間間隔(TTI)の間に、eNBスケジューラは、各UEの物理的な無線環境を考慮して、サービス品質(QoS)のサービス要件についてUE間の優先度付けを行い、無線リソースを割り振り、割り振った無線リソースを各UEに通知する。この解決策は、ソフトコンバイニングを伴うハイブリッド自動再送要求(HARQ)とレートアダプテーションを用いた、チャネル変動へのすばやい適応に依拠している。
【0003】
eNBスケジューラは、各無線ベアラに対し、当該UEに割り当てられているQoSクラス識別子(QCI)に基づいて特定の優先度を割り当てる。通信事業者は、そのUEのタイプとUEが要求するサービスのタイプに基づいて、UEにQCIを割り当てる。音声通話などのサービスを要求しているUEには、より高いQoSを示すQCIが割り当てられるため、スケジューラは、そのUEに対し、より高いQoSの提供に必要なビットレート要件を満たすに十分なリソースブロックを割り振る必要がある。QoSサービス要件についてUE間の優先度付けを行う際に、スケジューラは、遅延感度の高いリアルタイムサービスと、高いピークデータレートを要するデータ通信サービスの両方に対応する。eNBは、ダウンリンク(DL)とアップリンク(UL)の両方に関してUEのスケジューリングを行う。スケジューラは、eNBのカバレッジエリア内に存在するすべてのUEに対してDLおよびULパケットのスケジューリングを行うため、スケジューラは、各UEに割り当てられているQCIおよびそのUEから報告される信号品質に基づいて、あらゆるUEを取り扱う必要がある。スケジューリング優先度が高くなるほど、UEにサーブしている無線ベアラが、示されているQoSレベルでのUEによる送受信を可能とするために必要なリソースを獲得する確率が高くなる。
【0004】
現在、LTEにおいては、サービングセルおよび近隣セルの信号品質に対するUEによる測定に基づき、いくつかのトリガイベントが規定されている。本開示に関連するトリガイベントはa2、a4、およびa5と呼ばれるものである。a2は、サービングセルの信号品質が絶対しきい値よりも悪化する時点である。この時点から、UEは、サービングeNBをリッスンすることおよび近隣のセルの中からハンドオーバに最適の候補を決定することのために割り振るリソースを増加させる。したがって、a2は実質的にセルエッジゾーンの開始端を画定する。a4は、近隣セルの参照信号受信電力(RSRP)がサービングセルのRSRP以上になる時点である。a5は、近隣セルのRSRPがしきい値T1より良好になる一方、サービングセルのRSRPがしきい値T2をより悪化する時点である。しきい値T1およびT2は、ハンドオーバの早発および「ピンポン」現象を防ぐために、規定済みのハンドオーバしきい値レベルに対して加算および減算されるヒステリシス値に関連している。したがって、a5は、実質的にセルエッジゾーンの終端およびセル境界を画定する。UEの報告するCQI(UEcqi)がa5まで下がると、UEは近隣セルにハンドオーバされる。
【0005】
セルエッジに位置している(すなわち、イベントa4がトリガされているが、イベントa5はトリガされていない)高優先度加入者(規定された保証ビットレート(GBR)有りまたは無しにかかわらず)は、セルエッジにおいて低いRSRPによる低い信号対雑音比(SNR)および高い干渉の悪影響を受ける。しかしながら、このような加入者に対しては高いスケジューリング優先度が設定されるため、eNBは、低いRSRPにもかかわらず、そのUEに対して継続的にリソースを割り振り、メッセージおよびデータを送信する。UEが自らに割り当てられたQCIに必要なビットレートでデータまたはメッセージを受信しなかった場合、UEはサービングeNBに信号を送り、サービングeNBはUEに追加のリソースを割り当てる。UEがメッセージを復号できない場合、UEは応答せず、タイムアウト期間後に、サービングeNBは肯定応答が返されなかったデータを再送する。このような仕組みはネットワークリソースを浪費する上、データ通信または音声通話の場合にはユーザ体感の低下を招く。
【発明の概要】
【0006】
既存の実施態様では、高優先度UEが劣悪な信号品質を経験していたとしても、eNBスケジューラは、高優先度UEに対し、そのUEに割り当てられたQCIのQoS要件に見合う無線リソースを割り振らざるを得ない。これはいくつかの問題を引き起こす。
【0007】
第一に、eNBおよびUEにかかるシグナリング負荷が再送によって増加する。UEが受信したTBを復号できない場合、UEはeNBにこの復号の失敗を通知する。これに応答して、eNBはそのTBを再送する。さらに、UEがそのTBをまったく受信できないほど信号品質が悪い場合、UEは肯定応答を送信しない。指定時間内に肯定応答を受信できないと、eNBはまたTBを再送することになる。このような再送による無線リソースの過剰使用は第二の問題を引き起こす。つまり、より低い優先度をもつ他のUEにサーブするリソースが不十分なままになることである。本開示により、この「UEスタベーション(starvation)」の問題、および再送に起因するeNBへのシグナリング負荷の増加が解決される。
【0008】
本開示においては、既存の実施態様のもとで、セルエッジに位置する高優先度加入者は、ハンドオーバの決定に際して各自に割り当てられたQCIが考慮されないために、QOS優先度にかかわらず低品質のサービスに甘んじるのを余儀なくされている、と認識するものである。現行のハンドオーバの決定は、a2、a4、およびa5しきい値しか考慮していない。
【0009】
本開示の様々な態様に従い、セルエッジにおいて低い信号品質および頻繁な再送を経験している高QCI/優先度UEに対し、スケジューラの帯域を節約すると共に、UEにおける再送の負担を軽減することでユーザ体感を向上させるために、信号品質の良好な隣接セルへ通常よりも早く移るよう、eNBが命令できるようにするための方法および装置が提供される。
【0010】
一実施形態に従い、セルラ電気通信システムのeNBにおいて実行される方法が開示される。本方法は、サービングセルのセルエッジ近傍で動作しているUEのハンドオーバを制御する。本方法は、近隣セルへのUEのハンドオーバを開始するのに用いられる信号品質ハンドオーバレベルを上回るレベルに設定された信号品質しきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルを、UEが有するかどうかを判定することと、信号品質しきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルをUEが有すると判定されると、サービングセル内におけるUEの信号品質が、いつ信号品質しきい値パラメータを下回り、かつ信号品質ハンドオーバレベルを上回るかを判定するために、UE信号品質レポートを監視することと、UEの信号品質が信号品質しきい値パラメータを下回り、かつ信号品質ハンドオーバレベルを上回っていると判定されたことに応答して、サービングセルから近隣セルへのUEのハンドオーバを強制的に実行することとを含む。
【0011】
別の実施形態において、セルラ電気通信システムのeNBにおける装置が開示される。本装置は、サービングセルのセルエッジ近傍で動作しているUEのハンドオーバを制御する。本装置は、コンピュータプログラム命令を格納するメモリに接続されたプロセッサを備える。このプロセッサがコンピュータプログラム命令を実行するとき、プロセッサは本装置に対し、近隣セルへのUEのハンドオーバを開始するのに用いられる信号品質ハンドオーバレベルを上回るレベルに設定された信号品質しきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルを、UEが有するかどうかを判定することと、信号品質しきい値パラメータを利用するように規定された優先レベルをUEが有すると判定されたことに応答して、サービングセル内におけるUEの信号品質が、いつ信号品質しきい値パラメータを下回り、かつ信号品質ハンドオーバレベルを上回るかを判定するために、UE信号品質レポートを監視することと、UEの信号品質が信号品質しきい値パラメータを下回り、かつ信号品質ハンドオーバレベルを上回っていると判定されたことに応答して、サービングセルから近隣セルへのUEのハンドオーバを強制的に実行することとを行わせる。
【0012】
別の実施形態において、セルラ電気通信システムのeNBにおける装置が開示される。本装置は、サービングセルのセルエッジ近傍で動作しているUEのハンドオーバを制御する。本装置は、近隣セルへのUEのハンドオーバを開始するのに用いられるCQIハンドオーバレベル、およびCQIハンドオーバレベルを上回るレベルを有するCQIしきい値パラメータを示すCQIしきい値テーブルを格納するように設定されたメモリと、サービングセル内におけるUEのCQI(UEcqi)を報告するCQIレポートをUEから受信するように設定された無線受信部と、通信事業者システムへのインターフェースを有するスケジューラとを備える。このスケジューラは、通信事業者システムから、UEのQoSクラス識別子(QCI)レベルがCQIしきい値パラメータを利用するように規定されていることを示す情報を受信することと、比較部に対し、UEcqiを、しきい値テーブルに格納されたしきい値と比較して、UEcqiが、いつCQIしきい値パラメータを下回り、かつCQIハンドオーバレベルを上回るかを判定するよう命令することと、強制ハンドオーバ部に対し、UEcqiがCQIしきい値パラメータを下回り、かつCQIハンドオーバレベルを上回っているという比較部による判定に応答して、近隣セルへのUEのハンドオーバを強制的に実行するよう命令することとを行うように設定されている。
【0013】
説明する解決策の特定の実施形態は、セルエッジ近傍で動作している高優先度UEにおけるユーザ体感を向上させる。ネットワークでは、割り当てられたQCIおよび報告されたUEcqiの両方に基づいてハンドオーバの決定を下すことができる。このようにすることで、再送におけるスケジューラの帯域を節約できる。また通信事業者は、セル境界における諸条件を制御しやすくなる。
【0014】
本開示の実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明により明らかになろう。
【0015】
次節では、以下の図に示す例示的実施形態を参照しながら、本開示について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】セルエッジ近傍で高優先度UEが動作している、セルラ無線ネットワーク内の隣接する2つのセルを示す図である。
図2】本開示による方法の例示的実施形態における各ステップを示す流れ図である。
図3】本開示による装置の例示的実施形態を示す簡略化されたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以降に、好ましい実施形態が示されている添付図面を参照しながら、本開示について詳しく説明する。しかしながら、開示される解決策は多くの異なる形態による実施が可能であり、本明細書に記載した実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。これらの実施形態はむしろ、本開示が完璧かつ完全なものとなり、また本解決策の範囲を当業者に余すところなく伝えるものとなるよう意図して提供されるものである。図面中で同様の参照番号は同様の要素を指す。さらに、開示される解決策が、非一過性のメモリ上に格納されたソフトウェアを実行する、汎用コンピュータまたはマイクロプロセッサなどのハードウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの組合せにおいて実施され得るということを理解すべきである。
【0018】
図1は、高優先度UE11がそのサービングセルであるセルAのセルエッジの近傍で動作している、セルラ無線ネットワーク内の隣接する2つのセル、すなわちセルAおよびセルBを示す図である。簡単にするため、セルBではa2しきい値のみを示すが、セルBにはさらに別のしきい値レベルも規定することができる。
【0019】
UEは、セルAのエッジゾーンを画定する様々なしきい値(a2〜a5)に関連して3つの異なる位置(位置1〜3)に図示されている。位置1において、UEは、報告するCQIがa2しきい値を下回り、かつ、セルBのRSRPがセルAのRSRP以上になるa4しきい値を上回る環境で動作している。位置2において、UEは、報告するCQIがa4しきい値を下回り、かつ、本明細書ではCQIしきい値12と称される新たに規定されたしきい値を上回る環境で動作している。CQIしきい値12は、a4しきい値とa5しきい値との間のレベルに設定される、設定変更可能なしきい値である。
【0020】
位置3において、UEは、報告するCQIがCQIしきい値12を下回り、かつa5しきい値を上回る環境で動作している。このように、位置3において、UEの信号品質は非常に劣悪であり得るが、通常であればUEがセルBへハンドオーバされる、a5しきい値にはまだ達していない。
【0021】
本開示により、通信事業者は、特定のQoSまたはQCI優先レベルを有するUEを早期にハンドオーバさせるように規定された、設定変更可能な新しい信号品質しきい値に基づいて、セルエッジを画定できるようになる。一実施形態において、a1〜a5の様々なしきい値および設定変更可能な新しい信号品質しきい値をCQIとして規定することができる。したがって、設定変更可能な新しい信号品質しきい値はCQIしきい値パラメータである。他の実施形態において、a1〜a5のしきい値および設定変更可能な新しい信号品質しきい値は、RSRP、参照信号受信品質(RSRQ)、SNR、信号対干渉雑音比(SINR)などの他の信号品質測定値として規定することができる。以下の説明では、CQIとして規定されたしきい値に準ずる用語を用いるが、開示される解決策は、この実施態様に限定されない。
【0022】
開示される解決策により、通信事業者は、CQIしきい値パラメータの影響を受けるQCI範囲と受けないQCI範囲とを規定できるようになる。さらに、通信事業者は、所望であれば、CQIしきい値パラメータの影響を受けるものとして規定されたQCIレベルごとに異なるCQIしきい値パラメータを規定することができる。例えば、LTEでは、1から9までの番号が付けられた9つのQCIレベルが存在し、レベル1〜4はGBR UE用、レベル5〜9は非GBR UE用である。通信事業者は、例えば、QCIレベル1〜4については、a4しきい値を下回りかつ標準的なa5ハンドオーバしきい値を上回るハンドオーバのCQIしきい値パラメータに影響されるように決定してもよい。さらに、通信事業者は、GBR UE(QCIレベル1〜4)に対して、非GBR UE(QCIレベル5〜9)に規定したCQIしきい値パラメータとは異なるCQIしきい値パラメータを規定してもよい。
【0023】
a4を下回りかつa5を上回るレベルにCQIしきい値パラメータを規定することにより、通信事業者は、eNBに、(a5でハンドオーバされる)より低い優先度をもつUEよりも高いCQIしきい値で、高優先度UEのハンドオーバを強制的に実行させることになる。より高いCQIしきい値で高優先度UEのハンドオーバを強制的に実行することにより、再送によるeNBへの負荷が減少し、高優先度UEがRSRPの良好な隣接セルへより迅速に移されるため、高優先度UEの受信状況が改善され、これまで再送に使われていたリソースをより低い優先度をもつUEに充当できるようになることで「スタベーション」現象が緩和される。
【0024】
図2は、本開示による方法の例示的実施形態における各ステップを示す流れ図である。本方法は、ステップ20で開始され、ステップ21へ進み、このステップで、規定済みQCI優先レベルに対して、CQIしきい値パラメータ12が、a4しきい値を下回りかつa5しきい値を上回るレベルに設定される。ステップ22で、eNBが、UEはCQIしきい値パラメータを利用するように規定されたQCI優先レベルを割り当てられているか(つまり、当該UEは高優先度UEであるか)どうかを判定する。この判定条件を満たさない場合、UEはより低い優先度をもつUEであるため、本方法はステップ23へ進み、このステップで通常のハンドオーバの決定にa5しきい値が用いられる。一方、eNBが、UEはCQIしきい値パラメータを利用するように規定されたQCIレベルを割り当てられていると判定した場合、本方法はステップ24へ進み、このステップで、eNBは、UEの報告したCQI(UEcqi)がCQIしきい値パラメータを下回り、かつa5しきい値を上回るかどうかを判定する。この判定条件を満たさない場合、UEはまだCQIしきい値パラメータを上回るCQIで動作しているため、何の動作も発生しない。本方法はステップ24に戻り、このステップで、eNBは、UEcqiがCQIしきい値パラメータを超えるかどうかを判定するためにUEcqiを監視し続ける。
【0025】
UEcqiがCQIしきい値パラメータを下回りかつa5しきい値を上回っている、とeNBが判定すると、本方法はステップ25へ進む。この時点で、UEにおける信号品質はセルAよりもセルBの方が良いが、セルAの信号品質はa5しきい値のレベルにまでは悪化していない。UEは高優先度UEであるため、eNBはセルBへのUEのハンドオーバを強制的に実行する。本方法は次に26で終了する。
【0026】
図3は、本開示に従いeNB31において実施される装置の例示的実施形態を示す、簡略化されたブロック図である。eNBの動作は、例えば、プロセッサ32がメモリ33に格納されたコンピュータプログラム命令を実行することにより制御され得る。スケジューラ34は、いくつかの内部および外部のソースからのeNBに対する入力を使用して、UE11などのUEに対するネットワークリソースの割振りを制御する。受信部35は、UE識別子および報告されたUEcqiを含むCQIレポートをUEから受信する。受信部は、この情報を直接または間接的にスケジューラへ提供する。
【0027】
スケジューラ34はまた、QCIテーブル36にアクセスし、例えば、UE識別子を使用してUEのQCIレベルを取得してもよい。通信事業者システムへのインターフェース40は、新しいCQIしきい値パラメータを利用すべく特定された、通信事業者の規定によるQCIレベル37をスケジューラに提供する。
【0028】
スケジューラ34はまた、報告されたUEcqiを相異なるa2〜a5しきい値と比較する比較部38を備えていてもよいし、比較部38にアクセスしてもよい。比較部は、例えば、メモリ33に格納された設定変更可能なしきい値のテーブル39から、または通信事業者の規定によるこのようなしきい値レベルを示す別の情報源から、しきい値を取得してもよい。比較部は、UEcqiを様々なしきい値と比較したら、UEcqiがCQIしきい値パラメータ12を下回りかつa5しきい値を上回っている、と判定してもよい。この条件が満たされたとき、スケジューラ34は、強制ハンドオーバ部41に対し、直接またはプロセッサ32を介して、セルBへのUE11のハンドオーバを開始するよう命令してもよい。送信部42はハンドオーバ(HO)コマンドをUEへ送信してもよい。
【0029】
本開示は、ハンドオーバがいつ開始されるかを決定し、次いでハンドオーバを開始することを対象とする、eNBにおける手順のみを扱っていると理解すべきである。ハンドオーバ手順そのものの詳細は、開示されていないが、当業者には周知である。例えば、LTEにおいて、サービング(ソース)eNBはまた、ハンドオーバの決定と同時にターゲットeNBにおけるハンドオーバへの準備態勢を整える(すなわち、UEがターゲットeNBにアクセスしたときに、UEのコンテキストが利用できるようになり、ターゲットセル内でリソースが予約される)。あるいは、UEがアイドル状態に遷移し、接続状態に再び遷移することによってハンドオーバを完了しようとする。このような手順は本開示の範囲外である。
【0030】
したがって、本開示の様々な態様に従い、eNBが、セルエッジにおいて低い信号品質および頻繁な再送を経験している高QCI/優先度UEに対し、スケジューラの帯域を節約すると共に、UEにおける再送の負担を軽減することでユーザ体感を向上させるために、RSRPの良好な隣接セルへ移るよう命令できるようにするための方法および装置の実施形態が提供される。
【0031】
図面と明細書において、開示された解決策の典型的な好ましい実施形態を開示したが、特定の用語を使用したにもかかわらず、これらの用語は総称的または記述的意味で使用したに過ぎず、限定を意図したものではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲において示される。
図1
図2
図3