特許第6578274号(P6578274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578274
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ヘアオイル
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20190909BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190909BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   A61K8/42
   A61K8/02
   A61Q5/00
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-519232(P2016-519232)
(86)(22)【出願日】2015年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2015063322
(87)【国際公開番号】WO2015174343
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-100390(P2014-100390)
(32)【優先日】2014年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-241794(P2014-241794)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂西 裕一
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−212213(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031496(WO,A1)
【文献】 特開2009−155592(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/040718(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/123110(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/208380(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/083740(WO,A1)
【文献】 各論,新化粧品学,南山堂,第2版
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00− 8/99
A61Q1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤(A)と油剤(B)からなる油組成物を含むヘアオイルであって、増粘剤(A)として下記式(1)
1−(CONH−R2n (1)
式中、R1はベンゼン、ベンゾフェノン、シクロヘキサン、又はブタンの構造式からn個の水素原子を除いた基であり、R2は炭素数4以上の脂肪族炭化水素基である。nは3以上の整数を示す(但し、R1がシクロヘキサンの構造式からn個の水素原子を除いた基である場合、nは4である)。n個のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい
で表される化合物を油組成物全量の0.5〜30.0重量%、油剤(B)を油組成物全量の70.0〜99.5重量%含むヘアオイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘剤と油剤からなる油組成物を含有し、手に取ったときにタレ落ちにくく、毛髪に塗布する際にはなめらかに伸び広がり、しなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を毛髪に付与する効果を有するヘアオイルに関する。本願は、2014年5月14日に日本に出願した特願2014−100390号、及び2014年11月28日に日本に出願した特願2014−241794号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ヘアオイルは、毛髪に油分を補い、しなやかさ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を与えることを目的として使用される毛髪用化粧料の一種である。ヘアオイルとしては、従来、ツバキ油やオリーブ油等の植物油、流動パラフィン等の鉱物油、高級脂肪酸、シリコーン油等が用いられてきた(特許文献1、2、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記油剤は常温では粘性が低く、手に取ったときに指の間からタレ落ち易いことが問題であった。この問題を解決する方法として増粘剤を添加して上記油剤を適度に増粘することが考えられる。しかし、油剤を従来の増粘剤(例えば、特許文献3に記載のポリスチレン−水素化ポリイソプレンブロックコポリマー)で増粘して得られる油組成物は伸び広がりにくく毛髪に薄く均一に塗布することは困難であった。その他、特許文献4には、親水性又は親油性化合物のゲル化剤として、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−183517号公報
【特許文献2】特開平1−175923号公報
【特許文献3】特開平8−59765号公報
【特許文献4】特開2009−155592号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】光井武夫著「新化粧品学」(第1版;1993年1月12日南山堂発行)436〜439頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)は油剤に溶解し難く、これを油剤の増粘剤として使用することは困難であることがわかった。
【0007】
従って、本発明の目的は、毛髪に適用することにより、しなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を付与することができるヘアオイルであって、手に取ったときにタレ落ちにくく、展延性に優れたヘアオイルを提供することにある。
本発明の他の目的は、毛髪に適用することにより、しなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を付与することができるヘアオイルであって、透明で美観に優れ、手に取ったときにタレ落ちにくく、展延性に優れたヘアオイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物は油剤を任意の粘度にまで増粘し、その粘度を安定的に維持することができること、前記化合物によって油剤を増粘して得られる油組成物を含むヘアオイルは適度な粘度を安定的に有するため手に取ったときに指の間等からタレ落ちにくく、且つ展延性に優れ、毛髪に適用することにより、しなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を付与することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、増粘剤(A)と油剤(B)からなる油組成物を含むヘアオイルであって、増粘剤(A)として下記式(1)
1−(CONH−R2n (1)
(式中、R1はベンゼン、ベンゾフェノン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、又はブタンの構造式からn個の水素原子を除いた基であり、R2は炭素数4以上の脂肪族炭化水素基である。nは3以上の整数を示す。n個のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい)
で表される化合物を油組成物全量の0.5〜30.0重量%、油剤(B)を油組成物全量の70.0〜99.5重量%含むヘアオイルを提供する。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] 増粘剤(A)と油剤(B)からなる油組成物を含むヘアオイルであって、増粘剤(A)として下記式(1)
1−(CONH−R2n (1)
(式中、R1はベンゼン、ベンゾフェノン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、又はブタンの構造式からn個の水素原子を除いた基であり、R2は炭素数4以上の脂肪族炭化水素基である。nは3以上の整数を示す。n個のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい)
で表される化合物を油組成物全量の0.5〜30.0重量%、油剤(B)を油組成物全量の70.0〜99.5重量%含むヘアオイル。
[2] 式(1)中のn個のR2が全て同一に炭素数6〜12の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である[1]に記載のヘアオイル。
[3] 式(1)中のn個のR2が2種の異なる基であり、一方の基が炭素数4〜10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、他方の基が炭素数16〜20の直鎖状アルキル基又は直鎖状アルケニル基である[1]に記載のヘアオイル。
[4] 油剤(B)が油脂、ロウ、炭素数8〜25の脂肪酸と炭素数3〜18のアルコールとのエステル、高級脂肪酸、高級アルコール、スクワラン、ワセリン、炭化水素油、及びシリコーン油から選択される少なくとも1種である[1]〜[3]の何れか1つに記載のヘアオイル。
[5] 油剤(B)が、オリーブ油、ラノリン、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オクタン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、ラウリン酸、オレイン酸、セタノール、スクワラン、ワセリン、イソドデカン、流動パラフィン、及び鎖状又は環状のシリコーン油から選択される少なくとも1種である[1]〜[3]の何れか1つに記載のヘアオイル。
[6] 増粘剤(A)と油剤(B)の合計含有量がヘアオイル全量の20重量%以上である[1]〜[5]の何れか1つに記載のヘアオイル。
[7] 粘度[25℃、せん断速度10(1/s)における]が0.1〜10Pa・sである[1]〜[6]の何れか1つに記載のヘアオイル。
[8] 増粘剤(A)と油剤(B)を相溶させる工程を経て、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヘアオイルを製造するヘアオイルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヘアオイルは、油剤の増粘剤として上記式(1)で表される化合物を使用するため適度な粘性を有し、その粘性を安定的に保持することができる。そのため、本発明のヘアオイルは手に取ったときにタレ落ちにくく使用性に優れ、且つ展延性に優れる。また、本発明のヘアオイルは透明性を有し、美観に優れる。そして、本発明のヘアオイルを毛髪に適用すると、毛髪にしなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[増粘剤(A)]
本発明は、下記式(1)で表される化合物を増粘剤として使用することを特徴とする。
1−(CONH−R2n (1)
【0013】
式(1)中、R1はベンゼン、ベンゾフェノン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、又はブタンの構造式からn個の水素原子を除いた基であり、R2は炭素数4以上の脂肪族炭化水素基である。nは3以上の整数(好ましくは3〜4、特に好ましくは4)を示す。n個のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
上記R2は炭素数4以上の脂肪族炭化水素基であり、例えば、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ミリスチル、ステアリル、ノナデシル基等の炭素数4〜20程度(好ましくは4〜18)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;2−ブテニル、2−ペンテニル、イソペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、7−オクテニル、9−デセニル、11−ドデセニル、オレイル基等の炭素数4〜20程度(好ましくは6〜18)の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニル、デシニル、ペンタデシニル、オクタデシニル基等の炭素数4〜20程度(好ましくは6〜18)の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基等を挙げることができる。
【0015】
式(1)で表される化合物としては、なかでも、n個のR2が全て同一の基である化合物、若しくはn個のR2が2種の異なる基である化合物が、油剤(B)の溶解性に優れ、透明性を維持しつつ増粘することができる点で好ましい。
【0016】
式(1)で表される化合物のうち、n個のR2が全て同一の基(R21)である化合物(前記R21は、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基を示す)としては、なかでも、R21が炭素数4〜20程度(好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物が好ましい。
【0017】
式(1)で表される化合物のうち、n個のR2が2種の異なる基(R21、R22)である化合物(前記R21、R22は、互いに異なって炭素数4以上の脂肪族炭化水素基を示す)としては、なかでも、R21、R22の一方が炭素数4〜20程度(好ましくは4〜18、特に好ましくは4〜15、最も好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜10)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、R21、R22の他方が炭素数6〜20程度(好ましくは12〜20、特に好ましくは15〜20、最も好ましくは16〜20)の直鎖状アルキル基又は直鎖状アルケニル基である化合物が好ましい。
【0018】
式(1)で表される化合物のうち、nが4である化合物としては、例えば、下記式で表される化合物等を挙げることができる。下記式中のR21、R22は前記に同じ。一分子中に複数のR21が存在する場合、それらは同一の基である。R22についても同様である。nが4以外の整数(例えば、n=3)である化合物は、下記式で表される化合物に対応する化合物等を挙げることができる。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
本発明においては、式(1)で表される化合物のなかでも、n個のR2が2種の異なる基である化合物が、幅広い溶剤に対して優れた増粘性を有する点で好ましい。
【0026】
また、本発明の式(1)で表される化合物の分子量は、例えば500〜1300程度、好ましくは500〜1200、特に好ましくは550〜1100、最も好ましくは550〜1050である。式(1)で表される化合物の分子量が上記範囲を上回ると、得られるヘアオイルの展延性が低下する傾向がある。一方、式(1)で表される化合物の分子量が上記範囲を下回ると、増粘効果が低減する傾向がある。
【0027】
式(1)で表される化合物は、例えば、下記1又は2の方法等により製造することができる。
1.下記式(2)
1−(COOH)n (2)
(R1、nは前記に同じ)
で表されるカルボン酸を塩化チオニルと反応させてカルボン酸クロライドを得、得られたカルボン酸クロライドにアミン(R2−NH2)(R2は前記に同じ)を反応させる方法
2.前記式(2)で表されるカルボン酸に対応するカルボン酸無水物にアミン(1)(R2−NH2)を反応させてアミック酸を得、更にアミン(2)(R2−NH2、アミン(1)と同一であってもよく、異なっていてもよい)を縮合剤を用いて縮合させる方法
【0028】
上記1の製造方法で使用する式(2)で表されるカルボン酸としては、例えば、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(=ピロメリット酸)、2,4,5−ベンゾフェノントリカルボン酸、3,4,3’−ベンゾフェノントリカルボン酸、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,1’−ビフェニル−2,4,4’−トリカルボン酸、1,1’−ビフェニル−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸、1,6,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,3−ナフタレントリカルボン酸、1,3,8−ナフタレントリカルボン酸、1,4,6−ナフタレントリカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0029】
上記1の製造方法で使用するアミン(R2−NH2)としては、例えば、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、へキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の、前記R2が炭素数4以上(好ましくは、炭素数4〜20)の脂肪族炭化水素基(好ましくは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基)であるアミンを挙げることができる。
【0030】
カルボン酸クロライドとアミンの反応は、例えばアミンを仕込んだ系内にカルボン酸クロライドを滴下することにより行うことができる。
【0031】
アミンの使用量は、カルボン酸クロライド1モルに対して、例えば4〜8モル程度、好ましくは4〜6モルである。ここで、2種以上の異なるアミンを使用すると、式(1)で表される化合物のうちn個のR2が2種以上の異なる基である化合物が得られる。
【0032】
カルボン酸クロライドとアミンの反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。前記溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル等の飽和又は不飽和炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;スルホラン等のスルホラン系溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;シリコーンオイル等の高沸点溶媒等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記溶媒の使用量としては、カルボン酸クロライドとアミンの総量に対して、例えば50〜300重量%程度である。溶媒の使用量が上記範囲を上回ると反応成分の濃度が低くなり、反応速度が低下する傾向がある。
【0034】
カルボン酸クロライドとアミンの反応(=滴下)は、通常、常圧下で行われる。また、上記反応(=滴下時)の雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。反応温度(=滴下時温度)は、例えば30〜60℃程度である。反応時間(=滴下時間)は、例えば0.5〜20時間程度である。反応(=滴下)終了後は、熟成工程を設けてもよい。熟成工程を設ける場合、熟成温度は例えば30〜60℃程度、熟成時間は例えば1〜5時間程度である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0035】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0036】
上記2の製造方法では、例えば、カルボン酸無水物とアミン(1)及び下記溶媒を系内に仕込み、熟成させることによりアミック酸を形成し、その後、アミン(2)と縮合剤(例えば、カルボジイミド又はその塩)を仕込み、熟成させることにより式(1)で表される化合物を製造することができる。ここで、2種以上の異なるアミンを使用すると、本発明の式(1)で表される化合物のうちn個のR2が2種以上の異なる基である化合物が得られる。
【0037】
前記カルボン酸無水物としては、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,1’−ビフェニル−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸−2,3:3’,4’−二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸−1,8:4,5−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物、meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等を好適に使用することができる。
【0038】
前記アミン(1)、(2)としては、上記1の製造方法で使用できるアミンと同様の例を挙げることができる。
【0039】
アミン(1)の使用量としては、カルボン酸無水物1モルに対して、例えば2〜4モル程度、好ましくは2〜3モルである。また、アミン(2)の使用量としては、カルボン酸無水物1モルに対して、例えば2〜4モル程度、好ましくは2〜3モルである。
【0040】
前記カルボジイミドは下記式(3)で表される。
R−N=C=N−R’ (3)
上記式(3)中、R、R’としては、例えば、ヘテロ原子含有置換基を有していてもよい、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、及び3〜8員のシクロアルキル基等を挙げることができる。R、R’は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、RとR’は互いに結合して(−N=C=N−)基と共に環を形成していてもよい。
【0041】
前記炭素数3〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、t−ヘキシル基等を挙げることができる。
【0042】
前記3〜8員のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等を挙げることができる。
【0043】
前記ヘテロ原子含有置換基としては、アミノ基、ジメチルアミノ基等のジ(C1-3)アルキルアミノ基等の窒素原子含有置換基を挙げることができる。
【0044】
カルボジイミドとしては、例えば、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド等を挙げることができる。また、カルボジイミドの塩としては、例えば、塩酸塩(具体的には、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩等)等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
カルボジイミドの使用量としては、カルボン酸無水物1モルに対して、例えば2〜6モル程度、好ましくは2〜4モルである。
【0046】
前記溶媒としては、アミック酸の溶解性に優れるプロトン受容性溶媒(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等)を使用することが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
前記溶媒の使用量としては、アミック酸の総量に対して、例えば50〜300重量%程度、好ましくは100〜250重量%である。溶媒の使用量が上記範囲を上回ると反応成分の濃度が低くなり、反応速度が低下する傾向がある。
【0048】
上記反応は、通常、常圧下で行われる。また、上記反応の雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。熟成温度(反応温度)は、例えば30〜70℃程度である。カルボン酸無水物とアミンの熟成時間は、例えば0.5〜5時間程度であり、アミック酸とアミンの熟成時間は、例えば0.5〜20時間程度である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0049】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0050】
式(1)で表される化合物はアミド結合部位において水素結合により自己会合してファイバー状の自己組織体を形成することができる。更に、R2基が油剤(B)に対して親和性を有する。そのため、油剤(B)と相溶させることにより、透明性を維持しつつ、油剤(B)を適度に、且つ経時安定的に増粘することができる。特に、式(1)中のR2が2種以上の異なる基である場合は適度の結晶性を有するため、油剤(B)の種類に限定されることなく増粘することができ、より広い範囲の油剤(B)に対して増粘作用を発揮することができる。すなわち、幅広い油剤選択性を有する。
【0051】
[油剤(B)]
本発明の油剤(B)としては、毛髪に塗布することにより、しなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、ツヤ感等を付与できる油剤であれば特に制限無く使用することができる。油剤には、極性油、非極性油、及びこれらの混合物が含まれる。油剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
前記極性油としては、例えば、オリーブ油等の油脂類、ラノリン等のロウ類、エステル類[ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オクタン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン等の炭素数8以上(好ましくは、炭素数8〜25)の脂肪酸と炭素数3以上(好ましくは炭素数3〜18、特に好ましくは炭素数10〜16)のアルコールとのエステル]、高級脂肪酸類[ラウリン酸、オレイン酸等の炭素数12以上(好ましくは、炭素数12〜25)の脂肪酸]、常温で固体の高級アルコール類[セタノール等の炭素数12以上(好ましくは、炭素数12〜25)のアルコール]等を挙げることができる。
【0053】
前記非極性油としては、スクワラン、ワセリン、炭化水素油(イソドデカン、流動パラフィン等)、鎖状又は環状のシリコーン油等を挙げることができる。
【0054】
[ヘアオイル]
本発明のヘアオイルは、上記増粘剤(A)と油剤(B)からなる油組成物を含む。
【0055】
上記増粘剤(A)と油剤(B)からなる油組成物は、例えば、上記増粘剤(A)と油剤(B)を相溶させる工程を経て製造することができる。より詳細には、上記増粘剤(A)と油剤(B)の全量を混合して加温し、相溶させた後、冷却することにより製造することができる。また、油剤(B)の一部に上記増粘剤(A)を混合して、加温、相溶させた後、冷却し、その後、残りの油剤(B)を混合する方法でも製造することができる。
【0056】
増粘剤(A)と油剤(B)の組み合わせは、増粘剤(A)と油剤(B)が相溶する組み合わせであれば特に制限されないが、最低ゲル化濃度の観点から、油剤(B)が極性油を主成分とする場合は、増粘剤(A)として、式(1)中のR2の少なくとも1つが、炭素数13〜20(より好ましくは炭素数13〜18)の脂肪族炭化水素基である化合物を使用することが好ましい。また、油剤(B)が非極性油を主成分とする場合は、増粘剤(A)として、式(1)中のR2の少なくとも1つが、炭素数4〜12(より好ましくは炭素数4〜10)の脂肪族炭化水素基である化合物を使用することが好ましい。尚、「主成分とする」とは「80重量%以上含有する」の意味である。
【0057】
相溶の際の温度は増粘剤(A)と油剤(B)の種類によって適宜選択されるものであり特に制限されないが、100℃を越えないことが好ましく、油剤(B)の沸点が100℃以下の場合には沸点程度が好ましい。
【0058】
相溶後の冷却は、室温(例えば、25℃)以下にまで冷却することができればよく、室温で徐々に冷却してもよいし、氷冷等により急速冷却してもよい。
【0059】
増粘剤(A)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、へアオイルに含まれる油組成物全量の0.5〜30.0重量%であり、前記範囲の下限は好ましくは1.0重量%である。また、前記範囲の上限は、好ましくは20.0重量%、特に好ましくは10.0重量%、最も好ましくは5.0重量%である。増粘剤(A)を前記範囲で配合することにより油剤(B)に適度な粘度を付与することができ、手に取ったときにタレ落ちにくく、展延性に優れたヘアオイルを得ることができる。一方、増粘剤(A)の含有量が上記範囲を下回ると、ヘアオイルの粘度を安定的に保持することが困難となる傾向がある。また、増粘剤(A)の含有量が上記範囲を上回っても有利な効果は得られ難く、ヘアオイルの展延性が低下する傾向がある。
【0060】
本発明のヘアオイルには上記増粘剤(A)以外にも他の増粘剤を含有してもよいが、ヘアオイルに含まれる全増粘剤に占める増粘剤(A)の割合は、例えば30重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは85%以上である。増粘剤(A)の割合の上限は100重量%である。他の増粘剤の割合が上記範囲を上回ると、本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。尚、本発明における「増粘剤」は、粘性を付与する増粘剤、ゲル化するゲル化剤、及び組成物の成分を均一に安定化する安定剤を含む概念である。
【0061】
油剤(B)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、へアオイルに含まれる油組成物全量の70.0〜99.5重量%であり、前記範囲の下限は好ましくは80.0重量%、特に好ましくは90.0重量%である。また、前記範囲の上限は、好ましくは99.0重量%である。油剤(B)を上記範囲で含有するヘアオイルは、適度な粘性を安定的に保持しつつ展延性に優れ、しなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を毛髪に付与することができる。
【0062】
本発明のヘアオイルは上記油組成物をヘアオイル全量の、例えば20重量%以上(好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは80重量%以上)含有する。尚、上記油組成物の含有量の上限はヘアオイル全量の100重量%である。また、本発明のヘアオイルにおける水含有量は、例えば1重量%以下、好ましくは0.2重量%以下である。本発明のヘアオイルは、油組成物以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の毛髪化粧料に用いられる成分を1種又は2種以上含有していてもよい。前記成分としては、水性成分、非水性成分の何れであってもよいが、好ましくは非水性成分である。前記成分としては、例えば、油剤(B)以外の油性成分、界面活性剤、多価アルコール、キレート化剤、抗菌剤、酸化防止剤、粘度調整剤、収れん剤、抗フケ剤、育毛剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料や顔料等の色素)、香料、美容成分(ビタミン等)、エアゾール噴射剤等を挙げることができる。
【0063】
本発明のヘアオイルは適度な粘性を有し、その粘度[25℃、せん断速度10(1/s)における]は、例えば0.1〜10Pa・s、好ましくは0.5〜5Pa・sの範囲内において適宜選択することができる。粘度が上記範囲を上回ると、展延性が得られにくくなる傾向がある。一方、粘度が上記範囲を下回ると、ヘアオイルを手に取ったときにタレ落ちることを防止することが困難となる傾向がある。尚、粘度の調整は、増粘剤(A)の含有量を上記範囲内で調整することにより行うことができる。
【0064】
本発明のヘアオイルは、液状、ジェル状、多相状等の何れの状態であってもよい。また容器との組み合わせによりミスト状、エアゾール状等とすることもできる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0066】
調製例1(増粘剤(1):1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸テトラ(ヘキシルアミド)の合成)
ジムロート冷却管、窒素導入口、滴下ロート、及び熱電対を備えた100mL4つ口セパラブルフラスコにクロロホルム20mL、ヘキシルアミン3.6g(0.036mol)を仕込んで、系内温度を40℃に設定した。
その後、ピロメリット酸テトラクロリド3g(0.009mol)の10mLクロロホルム溶液を2時間かけて滴下し、更に2時間熟成を行った。
その後、得られた粗液の低沸分をエバポレータにて除去し、メタノールで洗浄し、白色の湿粉を得た。得られた湿粉についてCHCl3/CH3OH(70/30(v/v))で再結晶を行い、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸テトラ(ヘキシルアミド)(分子量:586)を3.5g得た(収率:67%)。反応生成物の構造は1H−NMRにより確認した。
【0067】
調製例2(増粘剤(2):1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸テトラ(オクチルアミド)の合成)
ヘキシルアミンに代えてオクチルアミン4.8g(0.036mol)を使用した以外は調製例1と同様にして、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸テトラ(オクチルアミド)(分子量:699)を3.7g得た(収率:59%)。
【0068】
調製例3(増粘剤(3):1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジ(2−エチルヘキシルアミド)ジ(オレイルアミド)の合成)
ジムロート冷却管、窒素導入口、滴下ロート、及び熱電対を備えた100mL4つ口セパラブルフラスコにピリジン20mL、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物3.0g(0.014mol)、オレイルアミン7.4g(0.028mol)を仕込んだ。系内温度を50℃に設定し、3時間熟成した。
その後、2−エチルヘキシルアミン3.6g(0.028mol)、ジイソプロピルカルボジイミド7.0g(0.056mol)を仕込み、更に8時間熟成を行った。
その後、得られた粗液の低沸分をエバポレータにて除去し、メタノールで洗浄し、淡黄色の湿粉を得た。得られた湿粉についてCHCl3/CH3OH(70/30(v/v))で再結晶を行い、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジ(2−エチルヘキシルアミド)ジ(オレイルアミド)(分子量:975)[1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸−1,4−ジ(2−エチルヘキシルアミド)−2,5−ジ(オレイルアミド)と1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸−1,5−ジ(2−エチルヘキシルアミド)−2,4−ジ(オレイルアミド)の混合物]を5.9g得た(収率:51%)。
【0069】
調製例4(増粘剤(4):3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラ(ドデシルアミド)の合成)
ジムロート冷却管、窒素導入口、滴下ロート、及び熱電対を備えた100mL4つ口セパラブルフラスコにクロロホルム20mL、ドデシルアミン11.4g(0.062mol)を仕込んだ。系内温度を50℃に設定し、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロリド4.97g(0.011mol)の10mLクロロホルム溶液を0.5時間かけて滴下し、更に4時間熟成を行った。その後、得られた粗液の低沸分をエバポレータにて除去し、メタノールで洗浄し、淡黄色の湿粉を得た。得られた湿粉についてCHCl3/CH3OH(70/30(v/v))で再結晶を行い、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラ(ドデシルアミド)(分子量:923)を2.4g得た(収率:27%)。
【0070】
調製例5(増粘剤(5):1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ジ(2−エチルヘキシルアミド)ジ(オレイルアミド)の合成)
ジムロート冷却管、窒素導入口、滴下ロート、及び熱電対を備えた100mL4つ口セパラブルフラスコにピリジン20mL、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物4.2g(0.021mol)、オレイルアミン11.3g(0.042mol)を仕込んだ。系内温度を50℃に設定し、3時間熟成した。
その後、2−エチルヘキシルアミン5.4g(0.042mol)、ジイソプロピルカルボジイミド5.8g(0.048mol)を仕込み、更に8時間熟成を行った。
その後、得られた粗液の低沸分をエバポレータにて除去し、メタノールで洗浄し、淡黄色の湿粉を得た。得られた湿粉についてCHCl3/CH3OH(70/30(v/v))で再結晶を行い、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ジ(2−エチルヘキシルアミド)ジ(オレイルアミド)(分子量:1024.95)[1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−1,4−ジ(2−エチルヘキシルアミド)−2,3−ジ(オレイルアミド)と1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−1,3−ジ(2−エチルヘキシルアミド)−2,4−ジ(オレイルアミド)の混合物]を16.7g得た(収率:83%)。
【0071】
調製例6(増粘剤(6):1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジ(n−ブチルアミド)ジ(オレイルアミド)の合成)
ジムロート冷却管、窒素導入口、滴下ロート、及び熱電対を備えた100mL4つ口セパラブルフラスコにピリジン20mL、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物4.5g(0.02mol)、オレイルアミン10.7g(0.04mol)を仕込んだ。系内温度を50℃に設定し、3時間熟成した。
その後、n−ブチルアミン2.9g(0.02mol)、ジイソプロピルカルボジイミド5.5g(0.044mol)を仕込み、更に8時間熟成を行った。
その後、得られた粗液の低沸分をエバポレータにて除去し、メタノールで洗浄し、淡黄色の湿粉を得た。得られた湿粉についてCHCl3/CH3OH(70/30(v/v))で再結晶を行い、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジ(n−ブチルアミド)ジ(オレイルアミド)(分子量:869.43)[1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,4−ジ(n−ブチルアミド)−2,5−ジ(オレイルアミド)と1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,5−ジ(n−ブチルアミド)−2,4−ジ(オレイルアミド)の混合物]を11.6g得た(収率:67%)。
【0072】
調製例7(増粘剤(7):1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)の合成)
ジムロート冷却管、窒素導入口、滴下ロート、及び熱電対を備えた100mL4つ口セパラブルフラスコにピリジン20mL、1,2,3−プロパントリカルボン酸2.97g(0.017mol)、ジイソプロピルカルボジイミド7.0g(0.056mol)を仕込み、系内温度を50℃に設定して、3時間熟成した。
更に2−メチルシクロヘキシルアミン5.7g(0.051mol)を仕込み8時間熟成を行った。
その後、得られた粗液の低沸分をエバポレータにて除去し、メタノールで洗浄し、淡黄色の湿粉を得た。得られた湿粉についてアセトンで洗浄し、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)を4.7g得た(収率:61%)。
【0073】
実施例1
調製例1で得られた増粘剤(1)2重量部と、イソドデカン98重量部を混合し、80℃で加熱撹拌してこれらを相溶させ、その後、25℃まで冷却して油組成物(1)(25℃、せん断速度10(1/s)における粘度:2.4Pa・s)を得、前記油組成物(1)からなるヘアオイル(1)を得た。
得られたヘアオイル(1)について下記方法により使用性、展延性、及び透明性について評価を行った。
【0074】
実施例2〜8、比較例1〜6
下記表に示す処方(単位:重量部)に変更した以外は実施例1と同様にしてヘアオイルを得、それらについて実施例1と同様にして評価を行った。
【0075】
<評価方法>
(1)使用性及び展延性の評価
10名の官能検査専門パネラーによって官能評価を行った。
具体的には、シャンプー(商品名「レヴール」、(株)ジャパンゲートウェイ製)を使用して頭髪を洗浄した後、良く濯ぎ、ドライヤーで半乾きにした。その後、実施例及び比較例で得られた各ヘアオイル5gを手に取り、頭髪に馴染ませて、ヘアオイルの使用性(手に取ったときのタレ落ち難さ)、及び展延性(伸び広がりのなめらかさ)について下記評価基準を用いて5段階で評価し評点を得た。
評価基準
非常に良い:5点
良い:4点
普通:3点
悪い:2点
非常に悪い:1点
【0076】
得られた評点の平均値から、下記判定基準を用いて判定した。
判定基準
◎:4点以上
○:3点以上、4点未満
△:2点以上、3点未満
×:2点未満
【0077】
(2)透明性の評価
実施例及び比較例で得られた各ヘアオイルについて、透明度を目視により判断し、下記基準に従って透明性を評価した。
評価基準
◎:透明である
○:半透明である
△:白濁している
×:二相分離している
【0078】
【表1】
イソドデカン:商品名「パーメチル99A」、日本光研工業(株)製
流動パラフィン:商品名「モレスコホワイトP−100」、MORESCO社製
オクタン酸セチル:商品名「CEH」、高級アルコール工業(株)製
【0079】
本発明のヘアオイルは、優れた使用性、展延性、及び透明性を兼ね備えたヘアオイルであった。一方、本発明の増粘剤を使用しなかった場合は指の間からタレ落ち易く、使用性が悪かった。また、従来公知の増粘剤(7)(1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド))を使用したヘアオイルは、前記増粘剤が何れの油剤にも溶解しなかったため、増粘効果が得られなかった、そのため、指の間からタレ落ち易く、使用性が悪かった。また、透明性の点でも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のヘアオイルは適度な粘性を有し、その粘性を安定的に保持することができる。そのため、本発明のヘアオイルは手に取ったときにタレ落ちにくく使用性に優れ、且つ展延性に優れる。また、本発明のヘアオイルは透明性を有し、美観に優れる。そして、本発明のヘアオイルを毛髪に適用すると、毛髪にしなやかさ、軽さ、しっとり感、まとまり易さ、及びツヤ感等を付与することができる。