特許第6578290号(P6578290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578290
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】シート着座部振動装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20190909BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20190909BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60N2/90
   B60R16/02 620A
   H02K5/22
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-550102(P2016-550102)
(86)(22)【出願日】2015年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2015075790
(87)【国際公開番号】WO2016047459
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-194475(P2014-194475)
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-50558(P2015-50558)
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英邦
(72)【発明者】
【氏名】和田 勝
(72)【発明者】
【氏名】室谷 洋志
(72)【発明者】
【氏名】中村 英昭
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−341839(JP,A)
【文献】 特開2009−248678(JP,A)
【文献】 特開平10−134898(JP,A)
【文献】 特許第3251305(JP,B2)
【文献】 特開平10−059035(JP,A)
【文献】 特開2008−252996(JP,A)
【文献】 特開2012−239296(JP,A)
【文献】 実公平02−031893(JP,Y2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0346823(US,A1)
【文献】 実開昭60−114569(JP,U)
【文献】 特開2007−230350(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069129(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
B60R16/02
H05K 5/22
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの着座面に沿って配置される回転軸を備えた電動モータと、前記回転軸に取り付けられる分銅と、前記電動モータ及び分銅を内部に収容するケースとを備え、
前記ケースは、前記電動モータのハーネスが屈折して配線される配線空間を内部に備えると共に、前記ハーネスを前記着座面に交差する下向きに引き出すハーネス引出部を備え
前記電動モータの端子は、前記回転軸に直交する方向において前記回転軸から離れた一方側に配置され、前記ケース内では、前記ハーネス引出部とは異なる側に配置され、
前記ハーネスの端部は、前記端子における前記ハーネス引出部に対面する接続面に固定されることを特徴とするシート着座部振動装置。
【請求項2】
前記電動モータは、モータ本体の外面に弾性部材を備えており、
前記ケースは、内部に前記弾性部材に食い込むリブを備えることを特徴とする請求項記載のシート着座部振動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたシート着座部振動装置を着座面の下方に備えるシート。
【請求項4】
請求項のシートを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの着座部を振動させて着座者(ドライバー)に情報を報知するシート着座部振動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用のシートなどには、振動によって着座した人(ドライバーなど)に各種の情報を報知する振動発生装置を装備することが知られている(下記特許文献1参照)。この従来技術は、シートにおける着座部の内部に振動発生装置を配置したものであり、振動発生装置は、振動体を電磁力によって往復振動させるリニアモータ方式のものと、先端に分銅が装着された回転軸を駆動する回転モータ方式のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−341839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来技術において、回転軸の先端に分銅を取り付けて振動させる回転モータ方式の振動発生装置を用いる場合には、回転軸をシートの着座面に沿って配置することになり、回転軸を駆動する電動モータのハーネスもシートの着座面に沿って引き出されることになるので、着座面に人が座ったときの荷重がハーネスに曲げ力として加わって、引出部(根元部)でハーネスが折れてしまい、断線が生じ易くなる不具合があった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、シートの着座部を振動させるシート着座部振動装置において、ハーネス引出部の損傷やハーネスの断線を防止すること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明によるシート着座部振動装置は、以下の構成を具備するものである。
シートの着座面に沿って配置される回転軸を備えた電動モータと、前記回転軸に取り付けられる分銅と、前記電動モータ及び分銅を内部に収容するケースとを備え、前記ケースは、前記電動モータのハーネスが屈折して配線される配線空間を内部に備えると共に、前記ハーネスを前記着座面に交差する下向きに引き出すハーネス引出部を備えることを特徴とするシート着座部振動装置。
【発明の効果】
【0007】
このような特徴を有するシート着座部振動装置によると、シートの着座面に人が座ったときの荷重がハーネスに曲げ力として加わることが無いので、ハーネス引出部の損傷やハーネスの断線を防止することができ、信頼性が高く、高耐久性を有するシート着座部振動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置の内部構造を示した部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置の内部構造を示した分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置が装着されるシートを示した説明図(斜視図)である。
図4】本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置のシートへの装着状態を示した説明図(斜視図)である。
図5】本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置における電動モータの他の形態例を示した説明図である。
図6図5に示した電動モータを収容するケースの内部構造を示した説明図である。
図7】本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置が発生させる振動力の時間変化と、弾性部材及びケースのリブを備えない振動装置が発生させる振動力の時間変化とを示す説明図である。
図8】本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置を備えてシートとそのシートを備えた車両を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1及び図2において、本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置1は、回転軸3を備えた電動モータ2と、回転軸3に取り付けられる分銅4と、電動モータ2及び分銅4を内部に収容するケース5を備えている。ここで、電動モータ2によって回転駆動される回転軸3は、後述するシートの着座面に沿った方向(横向き)に配置される。
【0010】
ケース5は、内部に電動モータ2を収容する電動モータ収容部5Aと分銅4を収容する分銅収容部5Bを有する。また、ケース5は、電動モータ2のハーネス6が屈折して配線される配線空間5Cを内部に備え、ハーネス6を引き出すハーネス引出部5Dを備える。更に、ケース5の内面は、内方へ向けて突き出す突状であるリブ5Eを、回転軸3の長さ方向に間隔を空けて複数有する。電動モータ2は、ケース5の中にリブ5Eが設けられた部分に設定される。
【0011】
ここで、電動モータ2の端子2Aは回転軸3の突出方向とは逆側に一対設けられており、この端子2Aにハーネス6の端部が接続されている。ハーネス6は、端子2Aに接続された端部から僅かに回転軸3と平行に延び、その先が屈折して配線空間5C内に配線されている。そして、このハーネス6が引き出されるハーネス引出部5Dは、シートに装着された状態で着座面と交差する下向きに保護チューブ7に囲まれるハーネス6が延びるように設けられている。
【0012】
ハーネス6は、配線空間5C内では、湾曲した状態で余長を持って配線されている。電動モータ2の2つの端子2Aは、回転軸3に直交する方向において回転軸3から離れた一方側で、各端子2Aが同一面上に並設されている。そして、電動モータ2がケース5に収容されたときに、ケース5内では、端子2Aがハーネス引出部5Dとは異なる側に位置するように配置される。これによって、ハーネス引出部5Dと端子2Aとの間に配線空間5Cが確保される。
【0013】
ハーネス6の端部は、端子2Aの回転軸3側の接続面(下面)にハンダ9により固定される。すなわち、端子2Aの接続面がハーネス引出部5Dに対面している。したがって、垂直方向へ大きな力がかかった場合であっても、端子2Aに対してハーネス6が接続面を押す方向へ力がかかるので、端子2Aからハーネス6が外れる方向へ力がかかること無く、これらの剥がれを防止することができる。端子2Aにおけるハーネス引出部5Dとは逆側の面(上面)には、コンデンサ10の端子10Aが接続されている。
【0014】
図2に示すように、ケース5は、分割体5X,5Yをネジ8で結合することで構成される。ケース5の分銅収容部5Bと電動モータ収容部5Aと配線空間5Cは、内部に収容される電動モータ2の回転軸3に沿って配置されており、配線空間5に連通するハーネス引出部5Dは、回転軸3とは略直交する方向に開口している。また、ケース5の分割体5X,5Yを合わせて形成されるハーネス引出部5Dは、保護チューブ7の取り付け部7Aの凹部を挟んで保護チューブ7を抜け止め状態にしている。
【0015】
図3は、シート着座部振動装置1が装備されるシートを示している。シートSは、その着座面Saの下方に装着部S1,S2が設けられている。装着部S1,S2はシート内のスポンジなどに形成された空間であり、着座面Saに沿った長孔状に形成されている。また、装着部S1,S2の下側にはそれぞれハーネス引出穴S10,S20が形成されている。
【0016】
図4は、シート着座部振動装置1のシートへの装着状態を示している。シート着座部振動装置1は、装着部S1(S2)の空間内に回転軸3の方向が着座面Saに沿うように配置され、ハーネス6を囲む保護チューブ7がハーネス引出穴S10(S20)を通って下向きに引き出されている。
【0017】
このようなシート着座部振動装置1によると、ケース5の内部でハーネス6を屈折させて、ケース5の下側から直接下向きにハーネス6を引き出している。これによって、シート着座部振動装置1の回転軸3を着座面Saに沿って配置していても、人が着座面Saに座ることで受ける荷重がハーネス6を曲げる方向には加わらない。着座面Saが受ける下向きの荷重は、ケース5を下向きに押し付けることにはなるが、下向きに開口したハーネス引出穴S10(S20)に沿ってハーネス6が引き出されていることで、ハーネス6自体は大きな荷重を受けること無くハーネス引出穴S10(S20)内を摺動することになる。
【0018】
このように、本発明の実施形態に係るシート着座部振動装置1は、シートSの着座面Saに人が座ったときの荷重がハーネス6に曲げ力として加わることが無いので、ハーネス引出部5Dの損傷やハーネス6の断線を防止することができ、信頼性が高く、高耐久性を有するシート着座部振動装置1を得ることができる。
【0019】
図5は、シート着座部振動装置1における電動モータ2の他の形態例を示している。この電動モータ2は、モータ本体2Sとその外面に取り付けられる弾性部材11とを備えており、電動モータ2の回転軸3に固定された分銅4を回転させることによって振動を発生させる。電動モータ2のモータ本体2Sは、例えば回転軸3を回転させるための磁石及びコイルと、磁石及びコイルを収容するモータケースとを備える。モータケースは、例えば、回転軸3が貫通する孔を有し、回転軸3の長さ方向に沿った中心軸を中心に回転できるように回転軸3を支持する。すなわち、モータケースの外面は、概ね、モータ本体2Sの外面となる。
【0020】
分銅4は、回転軸3の長さ方向から見て、重心が、回転軸3の中心とは異なる位置となる形状を有し、これによって、回転したときに振動を発生させる。分銅4は、上述の通り、シートSのクッション部材(スポンジ)などを介して運転手へ伝わるだけの大きな振動力の振動を発生させる。一般的に、振動力をF、分銅4の重さをm、回転軸3の長さ方向から見て回転軸3の中心と分銅4の重心との距離をr、回転軸3の回転速度をωとすると、F=m×r×ω2で表される。
【0021】
本実施の形態に係る分銅4は、鉄系焼結金属を主たる材料として作られる。鉄系焼結金属は、従来の重りに採用されるタングステンよりも融点が低いため、射出成形によって容易に製造することができる。また、鉄系焼結金属は、タングステンなどに比べれば柔らかいため、カシメやすい。分銅4の表面には、錆を防止するための酸化膜が設けられている。
【0022】
分銅4は、回転軸3が嵌まる半円形の溝部4aが設けられた扇形の本体部40と、溝部4aの各端部に接続する内壁部を形成するように、本体部40がなす扇形の半径部分4b,4bの各々から突き出す一対の突条部4c,4cと、一対の突条部4c,4cの一部がカシメられたカシメ部4dとを有する。
【0023】
一対の突条部4c,4cのそれぞれは、回転軸3の長さ方向から見て、本体部40がなす扇形の半径部分4b,4bに接続する基端と先端との間をステップ状にする段差部を有する。
【0024】
カシメ部4dは、一対の突条部4c,4cのうち、回転軸3の長さ方向の概ね中央の所定の領域を押圧することによって形成された部分である。カシメ部4dは、概ね矩形状の押圧部を有するカシメ矢などで押圧されて形成される。カシメ部4dによって、分銅4は回転軸3に固定される。
【0025】
また、本実施の形態では、回転軸3の先端は、回転軸3の長さ方向において、分銅4の一面と同じ位置に位置付けられており、回転軸3の先端と分銅4の一面とは、溶接によって形成された溶接部4eにより固定されている。これにより、回転軸3と分銅4とをより強固に固定することができる。なお、カシメ部4dは、複数設けられてもよく、回転軸3の長さ方向の全体にわたって設けられてもよい。また、溶接部4eは、回転軸3と分銅4とを接続できる箇所に設けられればよく、複数設けられてもよい。
【0026】
図5に示した電動モータ2を収容するケース5は、図6に示すように、分割体5X,5Yを組み合わせて、ネジなどで締結することで構成される。分割体5X,5Yのそれぞれの内面の構成を図6に示す。分割体5X,5Yには、前述したように、電動モータ収容部5A,分銅収容部5B,配線空間5C,ハーネス引出部5Dを形成するための内部構造を有しており、分割体5X,5Yの各々の内面は、内方へ向けて突き出す突条であるリブ5Eを、回転軸3の長さ方向に間隔を空けて複数有する。電動モータ2は、リブ5Eが設けられた部分に設置される。
【0027】
このような分割体5X,5Yに電動モータ2を設置して、分割体5X,5Yがネジなどで締結されると、分割体5X,5Yの各々の内面に設けられた。リブ5Eが、モータ本体2Sの外面に取り付けられた弾性部材11に食い込み、電動モータ2はケース5の中に強固に固定される。
【0028】
これにより、図7に示すように、シート着座部振動装置1が発生させる振動に、共振などに起因する乱れが生じることを抑制することができる。ここで、図7に示す線aは、本実施形態に係るシート着座部振動装置1が発生させる振動力の時間変化を示す。図7に示す線bは、弾性部材11及びケース5のリブ5Eを備えない振動装置が発生させる振動力の時間変化を示す。
【0029】
従って、シート着座部振動装置1が振動することによる異音の発生を低減することが可能になる。また、ユーザが、シート着座部振動装置1の振動に違和感を抱く可能性を低減することが可能になる。さらに、ユーザは、路面などから伝わる振動と混同することなく、シート着座部振動装置1の振動を確実に認識することが可能になる。
【0030】
図8は、シート着座部振動装置1を備えるシートSとそのシートSを備える車両を示している。シート着座部振動装置1は、信頼性及び耐久性が高いので、これを備えるシートSに座るユーザは、シート着座部振動装置1の振動によるアラーム信号などを確実に感知することができる。車両100のシートSとしては、路面から伝わる振動と混同することなく、シートSに座るユーザに所定の信号を伝達することができる。このようなシートSを備える車両100は、シート着座部振動装置1が発する振動を確実に運転者に伝えることができるので、運転の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0031】
1:シート着座部振動装置,2:電動モータ,2A:端子,2S:モータ本体,
3:回転軸,4:分銅,4a:溝部,4b:半径部分,4c:突条部,
4d:カシメ部,4e:溶接部,40:本体部,
5:ケース, 5X,5Y:分割体,5A:電動モータ収容部,
5B:分銅収容部,5C:配線空間,5D:ハーネス引出部,5E:リブ,
6:ハーネス,7:保護チューブ,7A:取り付け部,8:ネジ,
9:ハンダ,10:コンデンサ,10A:端子,
11:弾性部材,S:シート,Sa:着座面,100:車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8