(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、アラミド層に結合した雲母−アラミド層を含み、32パーセントより大きい限界酸素指数を有する積層構造体に関する。実施形態によっては、限界酸素指数は35パーセントより大きい。限界酸素指数(LOI)とは、一定の標準化された方法において試験片の燃焼を持続させる最低酸素濃度(パーセントで表わされる)のことである。これは、酸素と窒素の混合物を試験片上に流し、試験片の燃焼がぎりぎり持続する酸素レベルに調整することで測定される。本明細書で使用されるLOIは、ISO 4589−2に従って測定される。
【0010】
積層品中の雲母−アラミド層は、単独で測定した場合、LOIが、37パーセント以上、より好ましくは40パーセント以上、もっとも好ましくは42パーセント以上である。積層品中のアラミド層は、単独で測定した場合、LOIが30パーセント以下である。
【0011】
本発明者らは、LOIの大きい雲母−アラミド層の面をLOIの小さいアラミド層の面に均質かつ連続的に結合させて積層構造体を作り、その後、積層構造体のLOIを測定するために積層構造体を酸素環境で炎にさらすと、積層構造体が一体物のように燃えることを見出した。すなわち、積層構造体は、積層品全体が単一物質でできているかのように燃える。これは驚くべき結果である。というのは、LOIの小さい層が、その低いLOIレベルで燃焼を助けて、LOIの大きい層を焼き尽くすであろうことが予期されるからである。それゆえに、2つの層が共に相乗的に働いて、雲母−アラミド層が炎のエネルギーを吸収してLOIの小さい層を実質上保護するか、またはその燃焼性を抑制すると考えられる。
【0012】
雲母−アラミド層は、雲母−アラミド層中の雲母と第1結合剤とアラミドフロックの量を基準にして、35〜55重量パーセントの雲母、20〜60重量パーセントの第1結合剤、および5〜25重量パーセントの第1アラミドフロックを含む。幾つかの好ましい実施形態では、雲母−アラミド層は、雲母−アラミド層中の雲母と第1結合剤とアラミドフロックの量を基準にして、45〜50重量パーセントの雲母、35〜45重量パーセントの第1結合剤、および10〜15重量パーセントの第1アラミドフロックを含む。実施形態によっては、雲母−アラミド層中の結合剤およびアラミドフロックの全重量は、雲母の重量より大きい。雲母は、雲母−アラミド層の平面に均一に分散している。雲母−アラミド層は必然的に第1面と第2面を有し、どちらの面もアラミド層の面に結合しうる。雲母粒子(通常、白雲母または金雲母あるいはこれらのブレンドなどの様々な型の薄片の形)を、雲母−アラミド層で使用できるが、白雲母型の雲母が好ましい。
【0013】
雲母−アラミド層が55重量パーセントを超える雲母を有する場合、最終積層構造体の特性は悪影響を受けるであろうと考えられる。まず第1に、恒量では、雲母−アラミド層の引張り強さは、その層中の雲母の量が増大するにつれて減少し、55重量パーセントを超える雲母を有する層は、特許請求の範囲に記載された量の雲母を有する層よりも強さが弱い。第2に、LOIを向上させるために、雲母−アラミド層の平面に雲母を均質に分散させるのが好ましい。雲母−アラミド層中の雲母が55重量パーセント以下であれば、雲母−アラミド層中の雲母が不連続的に分散されて、この均質分散が促進されると考えられる。言い換えれば、雲母の含有量が少なくなると、雲母層の含有量が高い場合に形成されるような雲母の連続バリア層の形成が抑制される。さらに、雲母−アラミド層の雲母が35重量パーセント未満である場合、LOI試験時に十分なエネルギーを吸収するだけの十分な雲母がその層に存在せず、32パーセントを超えるLOIを有する積層構造体ができると考えられる。
【0014】
アラミド層は、アラミド層中の第2結合剤および第2フロックの量を基準にして、35〜75重量パーセントの第2結合剤および25〜65重量パーセントの第2アラミドフロックを含む。幾つかの好ましい実施形態では、アラミド層は、アラミド層中の第2結合剤および第2フロックの量を基準にして、40〜60重量パーセントの第2結合剤および40〜60重量パーセントの第2アラミドフロックを含む。幾つかの好ましい実施形態では、アラミド層は、フロックより多くの結合剤を有する。アラミド層は、それ自体の機械的性質(引張り強さおよび破壊時の伸び率)が雲母−アラミド層より大きくなるようなものを選択する。そのようなアラミド層を使用すると、積層構造体にいっそう大きな機械的強度が付与され、そのことは、変圧器、モーター、および他の装置において電気絶縁にそれを使用する場合に望ましい。同じ重さで比べると、アラミド層を含んでいる特許請求されている多層積層構造体は、1つの雲母−アラミド層のみを有する構造体と比較して機械的強度が優れている。好ましくは、アラミド層は、まったく雲母を含まないか、あるいは基本的に雲母を含まない。本明細書で使用される「基本的に含まない」とは、たとえいくらかの極微量の雲母がアラミド層に混入しているとしても、そのアラミド層は、熱的にも機械的にも、雲母が層中に存在しないかのように作用することを意味する。
【0015】
雲母−アラミド層およびアラミド層の第1および第2結合剤は、同じであっても異なっていても構わない。好ましい実施形態では、両方の層で同じ結合剤を使用する。結合剤は、フロックまたは繊維材料を結合させて紙を生じさせる、当該技術分野において知られているどんな化学物質でも処理剤でも添加剤でも構わないが、1つの好ましい実施形態では、結合剤は、結合剤粒子、好ましくは、フィルム構造を有する粒子である。好ましい結合剤粒子はフィブリドであり、好ましいフィブリドはアラミドフィブリドである。雲母−アラミド層およびアラミド層の第1および第2アラミドフロックも、同じであっても異なっていても構わない。好ましい実施形態では、両方の層で同じアラミドフロックを使用する。
【0016】
本明細書で使用される「フロック」という用語は、通例は、湿式のシートおよび/または紙の製造に使用される、短く切断された繊維を意味する。典型的には、フロックの長さは、約3ミリメートル〜約20ミリメートルである。好ましい長さは、約3ミリメートル〜約7ミリメートルである。フロックは、通常、当該技術分野において周知の方法を用いて、長繊維を所望の長さに切断して製造される。
【0017】
本明細書で使用される「アラミド」という用語は、少なくとも85%のアミド(−CONH−)結合が、2つの芳香環に直接結びついている芳香族ポリアミドを意味する。添加剤はアラミドと一緒に使用されていてもよく、添加剤はポリマー構造体全体に分散されていてもよい。最高で約10重量パーセントもの他の高分子物質をアラミドとブレンドできることが見出された。また、アラミドのジアミンの代わりに他のジアミンを約10パーセントも有するか、あるいはアラミドの二酸塩化物の代わりに他の二酸塩化物を約10パーセントも有するコポリマーを使用できることも見出された。
【0018】
好ましいアラミドはメタ−アラミドである。アラミドポリマーは、2つの環または基が分子鎖に沿って互いに対してメタ配置であるとき、メタ−アラミドと見なされる。好ましいメタ−アラミドは、ポリ(メタ−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)である。米国特許第3,063,966号明細書、米国特許第3,227,793号明細書、米国特許第3,287,324号明細書、米国特許第3,414,645号明細書、および米国特許第5,667,743号明細書は、アラミドフロックを作るのに使用できるであろうアラミド繊維の有用な製造方法の例を示すものである。
【0019】
あるいはまた、アラミドフロックは、パラ系アラミドまたはアラミドコポリマーであってもよい。アラミドポリマーは、2つの環または基が分子鎖に沿って互いに対してパラ配置であるとき、パラ−アラミドと見なされる。パラ−アラミド繊維の製造方法は、例えば、米国特許第3,869,430号明細書、米国特許第3,869,429号明細書、および米国特許第3,767,756号明細書に概要が開示されている。1つの好ましいパラ−アラミドは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)であり、1つの好ましいパラ−アラミドコポリマーはコポリ(p−フェニレン/3,4’ジフェニルエステルテレフタルアミド)である。
【0020】
好ましいアラミドフロックは、メタ−アラミドフロックであり、特に好ましいのは、メタ−アラミドのポリ(メタ−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)から作られたフロックである。
【0021】
本明細書で使用される「フィブリド」という用語は、立体の少なくとも1つの寸法が、最大寸法に対して小さくなっている、非常に小さい、非粒状、繊維状または薄膜状の粒子を意味する。こうした粒子は、高剪断下において非溶媒を用いて高分子物質の溶液を沈降させて製造される。アラミドフィブリドは、融点または分解点が320℃より上である芳香族ポリアミドの非粒状の薄膜状粒子である。好ましいアラミドフィブリドは、メタ−アラミドフィブリドであり、特に好ましいのは、メタ−アラミドのポリ(メタ−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)から作られたフィブリドである。
【0022】
フィブリドは、一般に、最大寸法が約0.1mm〜約1mmの範囲であり、縦横のアスペクト比が約5:1〜約10:1である。厚さの寸法は、1ミクロン以内のオーダー、例えば、約0.1ミクロン〜約1.0ミクロンである。必要というわけではないが、フィブリドが非乾燥状態にある間に、アラミドフィブリドを層に含ませるのが好ましい。
【0023】
「層」という用語は、好ましくは、特定の組成を有する薄い平面物質(「紙」と呼ばれることがある)を表す。「層」という用語はまた、複数の薄い平面ウェブ(平面ウェブすべてが同じ組成を有する)を付着させて作られる紙も表す。あるいはまた、「層」は、多層紙において、特定組成の薄い平面物質を、別の「層」(これも薄い平面物質であるが、別の組成のもの)と組み合わせたものであってもよい。本明細書で使用される「面」という用語は、層または紙の2つの主要表面のいずれか(すなわち、層または紙の一方側または他方の側)を表す。
【0024】
実施形態によっては、個々の雲母−アラミド層は、厚さが0.5ミリメートル以下である。幾つかの他の実施形態では、個々の雲母−アラミド層は、厚さが0.25ミリメートル以下である。個々の雲母−アラミド層の厚さが0.13ミリメートル以下である好ましい実施形態もあれば、個々の雲母−アラミド層の厚さが0.1ミリメートル以下である好ましい実施形態もある。さらに、積層品に十分な雲母を含ませるには、個々の雲母−アラミド層は、厚さが少なくとも0.06ミリメートルでなければならないと考えられる。
【0025】
他の幾つかの実施形態では、個々のアラミド層は、厚さが0.15ミリメートル以下である。個々のアラミド層の厚さが0.1ミリメートル以下である好ましい実施形態もあれば、個々のアラミド層の厚さが0.05ミリメートル以下である好ましい実施形態もある。積層品に十分な引張り強さを付与するには、個々のアラミド層は、厚さが少なくとも0.03ミリメートルでなければならないと考えられる。
【0026】
さらに、1つの好ましい実施形態では、積層構造体を作るのに用いられ、かつ/または最終積層構造体の検査で測定されるアラミド層は、雲母−アラミド層よりも薄い。実施形態によっては、構造体を作るのに使用され、かつ/または最終積層構造体の検査で測定される雲母−アラミド層は、アラミド層の厚さの少なくとも1.5倍である。
【0027】
雲母−アラミド層の第1面または第2面は、均質かつ連続的にアラミド層の第1面に結合されて、積層構造体が形成され、積層構造体は、LOIの測定のために酸素環境で炎にさらされたときに、一体物のように燃える。均質に結合するとは、雲母層の1面の全表面がアラミド層の1面の全表面に均一に付着することを意味し、連続的に結合するとは、目に見えるような付着のすき間も、目に見えるような付着していない不連続部分もない状態で、各層の各面全体にわたって連続的に付着することを意味する。言い換えれば、最終積層品において、雲母−アラミド層の面が、連続的かつ均一に接触しており、層の一方または両方に連続的に塗布された接着剤によるか、または層中に均一に分散された結合剤のいずれかによって、アラミド層の面に結合している。
【0028】
一実施形態では、雲母−アラミド層は、接着剤の層によってアラミド層に結合される。この実施形態の一例では、雲母−アラミド層およびアラミド層は別個に作られ、その後、それらの間に施される接着剤の層で合体される。雲母−アラミド層およびアラミド層のそれぞれは、所望の量および割合の固体の雲母および/またはアラミドをヘッドボックスに供給し、その後、製紙用ワイヤー上にウェブとして湿式載置する(wet−laying)ことにより、製紙機で別個に作ることができる。その後、湿紙を乾燥ドラムで乾燥させて紙を生じさせることができる。好ましくはその後、紙を、加圧・加熱下において熱間圧延カレンダーのニップで(あるいは別の手段で)カレンダー加工して合体させ、その紙を高密度化して、所望の厚さを有する層にする。所望される場合には、基本重量がもっと軽いかまたは薄い2つ以上の湿紙または紙(同じ組成のもの)を、別個に作り、その後、カレンダー加工し合体させて単一の雲母−アラミド層または単一のアラミド層にすることができる。接着剤を使用する場合、好ましい実施形態では、接着剤で合体させる前に、雲母−アラミド層およびアラミド層のそれぞれを別個にカレンダー加工する。
【0029】
有用な接着剤としては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル、ポリエステルイミド、ベンズオキサジン、シリコーンおよびこれらの組合せなどをベースにした接着剤があるが、これらに限定されない。この実施形態では、雲母−アラミド層の面をアラミド層の面に均質かつ連続的に結合させるために、接着剤を層の少なくとも1つの面に比較的均一になるように施す。接着剤は、雲母−アラミド層またはアラミド層のいずれかに、すき間を残さずに接着剤を層の片側に均一かつ連続的に施す任意の方法を用いて施すことができる。そのような方法としては、ロールコーティングまたはブレード塗工または吹付け塗りが関係する方法がある。好ましくは、接着剤は、均一な厚さになるように塗布する。好ましくは、接着剤は連続的であり、積層品において厚さが均一である。あるいはまた、接着剤は、雲母−アラミド層とアラミド層との間に挿入されるシートの形で用意することができる。その後、層を一緒に加圧するかまたは合体させる任意の方法を用いて、雲母−アラミド層、接着剤、およびアラミド層を、一緒に加圧するが、その際に、接着剤を他の2つの層の間に置く。そうした方法には、一式のカレンダーロールのニップで2つの層(それらの間に接着剤がある)を挟む方法が含まれるであろう。これにより、層は所望の厚さを有する積層構造体に合体され、雲母−アラミド層とアラミド層は一緒に完全に結合される。必要に応じて、層に圧力を加える前、その後、またはその間に熱を加えて、接着剤をさらに硬化させることができる。
【0030】
あるいはまた、雲母−アラミド層の第1面または第2面は、それぞれの層にある第1および/または第2結合剤によって(言い換えれば、層と層との間に追加的に接着剤を施さなくても)アラミド層の第1面に均質かつ連続的に結合されて積層構造体が形成される。これは、少なくとも2つの方法で実現できると考えられるが、これらの方法に限定することを意図するものではない。
【0031】
第1の方法は、積層紙を形成させるための2つのヘッドボックスを備えた製紙機を用いて実施できる。所望の割合の固体の雲母および/またはアラミドを有する2種類のスラリーを、2つのヘッドボックスに供給し、その後その2種類のスラリーを多層ウェブとして製紙用ワイヤー上に湿った状態で置く。その際に、例えば、アラミド層は製紙用ワイヤー上に形成され、雲母−アラミド層はアラミド層の上に形成される。こうして、雲母−アラミド層とアラミド層とを有する1枚の弱い湿紙が作られる。その後、湿紙を乾燥ドラムで乾燥させて紙を生じさせる。その後、好ましくは、紙を、加圧・加熱下において熱間圧延カレンダーのニップで(あるいは別の手段で)カレンダー加工して合体させ、その構造体を高密度化して、所望の厚さを有する積層構造体にし、2層を一緒に完全に結合させる。付加的な接着剤を使用しないので、雲母−アラミド層の面にさらされるかまたはその面に存在する第1結合剤、および/または雲母−アラミド層の面に接触するアラミド層の面にさらされるかまたはその面に存在する第2結合剤は、2つの層を均質かつ連続的に結合させるのに役立つ。
【0032】
雲母−アラミド層の第1面または第2面をアラミド層の第1面に、これらの層の第1および/または第2結合剤によって、均質かつ連続的に結合させて積層構造体を形成させる第2の方法は、以下の実施形態によって実現できる。雲母−アラミド層およびアラミド層のそれぞれは、所望の量および割合の固体の雲母および/またはアラミドをヘッドボックスに供給し、その後、製紙用ワイヤー上にウェブとして湿式載置することにより、製紙機で別個に作ることができる。次いで、湿紙を乾燥ドラムで乾燥させて、雲母−アラミド層およびアラミド層を別々に形成させることができる。付加的な接着剤を使用しないので、好ましい実施形態では、雲母−アラミド層およびアラミド層は、一緒にする前にそれぞれを別個に合体させたり、カレンダー加工したりしない。その後、雲母−アラミドの面をアラミド層の面に隣り合わせにして接触させ、その複合層を、層を加圧または合体させることができる任意の方法で加圧して一緒にする。そのような方法としては、加圧・加熱下において熱間圧延カレンダーのニップで(あるいは別の手段で)層を一緒に加圧して、その構造体を所望の厚さを有する積層構造体に合体させて、2層を一緒に完全に結合させる方法を挙げることができる。付加的な接着剤を使用しないので、雲母−アラミド層の面にさらされるかまたはその面に存在する第1結合剤、および/または雲母−アラミド層の面に接触するアラミド層の面にさらされるかまたはその面に存在する第2結合剤は、2つの層を均質かつ連続的に結合させるのに役立つ。
【0033】
積層構造体は、雲母−アラミド層およびアラミド層を含み、さらにこれらの層の間に配置される接着剤層を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、最終積層構造体は、これらの3つの層から本質的になるか、あるいはこれらの3つの層のみからなる。最も好ましい実施形態では、最終積層構造体は、雲母−アラミド層およびアラミド層から本質的になるか、あるいはこれらの層のみからなる。
【0034】
他の実施形態では、積層構造体は、雲母−アラミド層、アラミド層、および別の雲母−アラミド層を含む。積層品は、付加的な2つの接着剤層を有していてもよく、その1つ1つがそれぞれの雲母−アラミド層とアラミド層との間に配置されていてもよい。これらの接着剤層は同じであっても異なっていても構わないが、同じであるなら有利である。この実施形態の好ましい例では、積層構造体は、これらの5つの層から本質的になるか、あるいはこれらの5つの層のみからなる。もっとも好ましい実施形態では、最終積層構造体は、雲母−アラミド層、アラミド層、雲母−アラミド層の順序でこれらの層から本質的になるか、あるいはこれらの層のみからなる。2つの雲母−アラミド層のそれぞれが、本明細書の前の方で述べた組成(雲母−アラミド層中の雲母と第1結合剤とアラミドフロックの量を基準にして、35〜55重量パーセントの雲母、20〜60重量パーセントの第1結合剤、および5〜25重量パーセントの第1アラミドフロックを含む)またはその好ましい組成を有している限り、2つの雲母−アラミド層は、同じであっても異なっていても(厚さ、結合剤、および/またはアラミドフロックが異なっている)構わない。
【0035】
この代替的実施形態では、雲母−アラミド層の第1または第2面はアラミド層の第1面に均質かつ連続的に結合し、他方の雲母−アラミド層は、アラミド層の第2面に均質かつ連続的に結合する。一実施形態では、層は、本明細書の前の方で述べたようにして施す接着剤によって結合される。別の実施形態では、層は、それらの層の第1および/または第2結合剤によって結合され、本明細書の前の方で述べた仕方と似たようにして作られる。別の実施形態では、層は、接着剤および/または(こうした層の)第1および/または第2結合剤を組み合わせて結合させることができる。様々な層を一度に結合させることもできるし、個々の層を順次加えてゆくこともできる。
【0036】
最終積層構造体は、層の数にかかわらず、厚さが少なくとも0.1mmである。実施形態によっては、最終積層構造体は、厚さが約0.1mm〜約1.5mmである。幾つかの好ましい実施形態では、雲母−アラミド層およびアラミド層のそれぞれを1つ含む最終積層構造体の厚さは、約0.75mm以下である。幾つかの好ましい実施形態では、2つの雲母−アラミド層と1つのアラミド層を含む最終積層構造体の厚さは、約1.35mm以下である。実施形態によっては、最終積層構造体の雲母−アラミド層の厚さは、最終積層構造体の全厚さの3分の2以下である。実施形態によっては、最終積層構造体のアラミド層の厚さは、最終積層構造体の全厚さの3分の1以下である。
【0037】
最終積層構造体は、少なくとも38N/mm
2、好ましくは少なくとも40N/mm
2の引張り強さを有し、少なくとも4パーセント、好ましくは少なくとも4.5パーセントの破壊時の伸び率を有する。80N/mm
2という高い引張り強さおよび15パーセントという高い伸び率は、電気絶縁に役立つと考えられる。
【0038】
積層構造体で使用される雲母−アラミド層およびアラミド層は、雲母および/またはアラミド材料のみから構成されることが有利であるが、所望される場合には、他の材料を含めることもできる。こうした材料は耐熱性であることが有利である。耐熱性であるとは、所与の材料が、所期の高い最終使用温度に長くさらされても、重大な劣化を起こすことなく耐えることができることを意味する(通常は、100,000時間の間、高温にさらした後でも初期機械的強度の特性の少なくとも50%を保持)。
【0039】
使用時に、幾つかの可能な方法で、積層構造体に樹脂を含浸させることができる。ある一般的な方法は、積層構造体を、絶縁する品物に挿入するか品物に巻き付けた後に、樹脂で含浸させることを含む。その後、樹脂を硬化させる。別の一般的な方法は、積層構造体を、絶縁する品物に挿入するか巻き付ける前に樹脂で含浸させ、その後、樹脂を硬化させることを含む。
【0040】
積層構造体は、鉄道産業における変圧器および他の装置で直接使用されると考えられるが、産業用モーター、風力発電装置、および産業用電力インバーターなど(これらに限定されない)の用途も可能である。
【0041】
試験方法
引張特性。層および積層構造体の引張特性は、ISO 1924−2「Paper and board − Determination of tensile properties;Part 2:Constant rate of elongation method」に従って測定できる。20±0.1mm×290mmの大きさに切断した試料を用い、機械的測定にZwickの装置を使用した。試料の把持距離(clamping distance)は、180±1mmであり、使用した把持速度は20mm/分であった。すべての試料の引張り強さおよび伸び率を、室温で試験した。
【0042】
限界酸素指数。試験手順および試料調製は、規格ISO 4589−2に従ったものにすることができる。この規格は、材料の形態に応じて(剛性、厚さ)、試験材料の試料のいろいろな形態および形について記述している。形状No.Vの試験片を選択し、寸法が140×52mmの試料を、試験用ガラス煙突の中心部のステンレス鋼フォークの間に垂直に保持した。煙突の寸法は450×80mmであった。煙突へのガスの供給は、徹底的に混合した酸素および窒素を用いて煙突の基部から行った。ガス混合物中の酸素濃度の変動は0.2%(V/V)未満であった。プロパン炎点火器は、下側に向かって垂直に炎を16±4mm吹き出し、発火伝達手順(propagation ignition procedure)が使用された。すなわち、点火器により、試験片の上部全体およびその垂直面の一部下方まで(垂直面のおよそ6mm)燃焼が起きた。試料が安定して燃えるまで、点火器を最大30秒間使用した。
【0043】
厚さ。層および積層構造体の厚さは、ASTM D 645/D 645−M−96に従って試料の厚さを測定することにより、求めることができる。
【実施例】
【0044】
実施例1
接着剤を用いた積層構造体を、以下のようにして作る。約48重量%の雲母、約37重量%の結合剤、および約15重量%のアラミドフロックを有する雲母−アラミド層「A」を、白雲母とMPD−IフロックとMPD−Iフィブリドの所望の割合の混合物を含む水性分散液を形成させることにより作る。MPD−Iフィブリドは、米国特許第3,756,908号明細書の一般的な記載にしたがって作る。MPD−Iフロックは、0.22texの線密度と0.64cmの長さを有するものであり、NOMEX(登録商標)という商品名でE.I.du Pont de Nemours and Companyが販売している繊維から作る。
【0045】
分散液を、長網抄紙機(製紙機)のヘッドボックスを通して送り込み、湿式ウェブを形成させる。ウェブを乾燥させて、合体していない(unconsolidated)雲母−アラミド層を形成させる。次いで、合体していない雲母−アラミド層を、カレンダーの高温加圧ニップに通して雲母−アラミド層を合体させて0.08mmの厚さにする。対照として、厚さを0.13mmにする以外は同様にして、雲母−アラミド層「AC」を作る。
【0046】
約55重量%の結合剤および約45重量%アラミドフロックを有するアラミド層「B」(雲母を含まない)を、同様にして作る。その際に、結合剤はここでもMPD−Iフィブリドであり、フロックも前の場合と同様にMPD−Iフロックとする。合体していないアラミド層を製紙機で作り、その後、カレンダーの高温加圧ニップに通して、アラミド層を合体させて0.04mmの厚さにする。対照として、厚さを0.13mmにする以外は同様にしてアラミド層「BC」を作る。
【0047】
アラミド層を平面に置き、溶剤系の二成分ポリウレタン架橋接着剤(10%の硬化剤Zを有するHerberts−EPS 7146)を、アラミド層の面に均一に塗布する。その後、雲母−アラミド層を接着剤の上に置き、丸い金属棒を用いて、接着剤の塗布をさらに均一化する。その後、アラミド層、接着剤、および雲母−アラミド層を一緒にしたものを、100℃で操作される電気加熱プレスに10分間送り込んで硬化させ、最終厚さが0.13mmである積層構造体を形成させる。接着剤はおおよそ0.01mmの厚さである。その後、積層構造体を、試験の前に24時間の間空気中で状態調整する。その後、雲母−アラミド層「A」、対照「AC」、アラミド層「B」および対照「BC」と一緒に、その積層構造体のLOIおよび機械的性質を試験する。結果を表に示す。積層構造体は一体物のように燃える。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例2
実施例1と同じ大きな典型的LOIを有する積層構造体を、付加的な接着剤を利用せずに以下の方法で作る。実施例1の雲母−アラミド層およびアラミド層用の水性分散液を、長網抄紙機の第1および第2ヘッドボックスを通して送り込み、雲母−アラミド層が最上部にきて、アラミド層がワイヤーに隣接して最下部にくるように、多層湿式ウェブを形成させる。湿式多層ウェブを乾燥させて、合体していない積層構造体を形成させる。次いで、合体していない積層構造体をカレンダーの高温加圧ニップに通して、積層構造体を合体させて0.12mmの厚さにする。
【0050】
実施例3
実施例1と同じ高い典型的LOIを有する積層構造体を、付加的な接着剤を利用せずに以下の方法で作る。実施例1における合体していない雲母−アラミド層および合体していないアラミド層を作り、一方を他方の上部に置く。その後、一緒にした層のスタックをカレンダーの高温加圧ニップに通して層を合体させて、0.12mmの厚さの積層構造体にする。
【0051】
実施例4
5層積層構造体(接着剤を利用)と3層積層品(接着剤なし)(どちらも、実施例1と同じ高いLOIを有する)を、実施例1および実施例3の一般手順を用いて作るが、ここでは、さらに0.08mmの厚さの薄い雲母−アラミド層「A」をアラミド層の隣に配置する。言い換えれば、アラミド層が、2つの雲母−アラミド層の間に挟まれたもの(接着剤を用いた場合と接着剤を用いない場合)である。得られた5層積層品は厚さが0.22mm(接着剤はおおよそ0.02mmの厚さまで加える)であり、得られた3層積層品は厚さが0.20mmである。
次に、本発明の態様を示す。
1. 鉄道車両または鉄道において、車両搭載機器の電気絶縁に用いるのに適した、a)雲母−アラミド層とb)アラミド層とを含む積層構造体であって、
a)前記雲母−アラミド層は、前記雲母−アラミド層中の雲母と第1結合剤とアラミドフロックの量を基準にして、35〜55重量パーセントの雲母と、20〜60重量パーセントの第1結合剤と、5〜25重量パーセントの第1アラミドフロックとを含み、前記雲母は前記雲母−アラミド層中に均一に分散しており、前記雲母−アラミド層は第1面と第2面とを有し;
b)前記アラミド層は、前記アラミド層中の第2結合剤および第2フロックの量を基準にして、35〜75重量パーセントの第2結合剤と25〜65重量パーセントの第2アラミドフロックとを含み、前記アラミド層は基本的に雲母を含まず、前記アラミド層は第1面と第2面とを有し;
前記雲母−アラミド層自体は37パーセント以上の限界酸素指数(LOI)を有し、かつ前記アラミド層自体は30パーセント以下のLOIを有し、前記アラミド層は、引張り強さおよび伸び率が前記雲母−アラミド層より大きく;
前記雲母−アラミド層の前記第1面または第2面が均質かつ連続的に前記アラミド層の前記第1面に結合しており;前記積層構造体はさらに、
i)少なくとも0.10mmの厚さと、
ii)32パーセントより大きいLOIを有し、
iii)LOIを測定するために酸素環境で炎にさらすと、前記積層構造体が一体物のように燃える、
積層構造体。
2. 35パーセントより大きいLOIを有する、上記1に記載の積層構造体。
3. 前記雲母−アラミド層が接着剤によって前記アラミド層に結合している、上記1に記載の積層構造体。
4. 前記雲母−アラミド層が、前記アラミド層に、それらの層中の第1および/または第2結合剤によって結合している、上記1に記載の積層構造体。
5. 前記第1または第2結合剤がアラミドフィブリドである、上記1に記載の積層構造体。
6. 前記第1および第2結合剤が同じ結合剤である、上記1に記載の積層構造体。
7. 前記第1および第2アラミドフロックが同じアラミドフロックである、上記1に記載の積層構造体。
8. 前記アラミド層の前記第2面に均質かつ連続的に接着剤によって結合された別の雲母−アラミド層a)をさらに含む、上記1に記載の積層構造体。
9. 前記第1および/または第2結合剤がアラミドフィブリドである、上記8に記載の積層構造体。
10. 前記第1および第2結合剤が同じ結合剤である、上記8に記載の積層構造体。
11. 前記第1および第2アラミドフロックが同じアラミドフロックである、上記8に記載の積層構造体。
12. 別の雲母−アラミド層a)であって、前記アラミド層の前記第2面に、それらの層中の第1および/または第2結合剤によって均質かつ連続的に結合された別の雲母−アラミド層a)をさらに含む、上記1に記載の積層構造体。
13. 前記第1または第2結合剤がアラミドフィブリドである、上記12に記載の積層構造体。
14. 前記第1および第2結合剤が同じ結合剤である、上記12に記載の積層構造体。
15. 前記第1および第2アラミドフロックが同じアラミドフロックである、上記12に記載の積層構造体。