(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578339
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20190909BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20190909BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20190909BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20190909BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20190909BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
C08G59/24
C08G59/68
C08L63/00 C
C09J163/00
H05B33/04
C09J11/06
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-236001(P2017-236001)
(22)【出願日】2017年12月8日
(62)【分割の表示】特願2014-526965(P2014-526965)の分割
【原出願日】2013年7月24日
(65)【公開番号】特開2018-90806(P2018-90806A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2017年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-165431(P2012-165431)
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】依田 公彦
【審査官】
尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−063261(JP,A)
【文献】
特開2009−259656(JP,A)
【文献】
特開2006−070221(JP,A)
【文献】
特開2010−126699(JP,A)
【文献】
特開2008−285679(JP,A)
【文献】
特開2008−115338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00− 59/72
C08L 63/00− 63/10
H01L 51/00− 51/56
H05B 33/00− 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子量が300未満の脂環式エポキシ化合物と、
(B)分子量が300から5000のエポキシ樹脂と、
(C)光カチオン重合開始剤と、
(E)環状エーテル化合物からなり、かつ、
水分量が1000ppm以下であり、
塩素量が1000ppm以下であり、
(A)成分の使用量が(A)と(B)の合計100質量部中、50質量部以上95質量部以下であり、
(B)成分の使用量が(A)と(B)の合計100質量部中、50質量部以下5質量部以上である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂環式エポキシ化合物が3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートであり、
前記エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(D)増感剤をさらに含有する請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(F)シランカップリング剤を含有する請求項1〜3のうちの1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの1項に記載の樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項6】
請求項1〜4のうちの1項に記載の樹脂組成物を製造する方法であって、
(1)混合前の各成分毎に水分を低減し、各成分を混合する工程、および/または(2)各成分の混合後に水分を低減する工程、
を含む製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法であって、
(1)または(2)の水分量を低減する工程が、
(a)乾燥剤により水分を除去し、水分を除去した後、乾燥剤をデカンテーション又はろ過により分離する工程、
(b)減圧条件下で加熱し、水分を除去する工程、
(c)減圧条件下で蒸留精製する工程、
(d)乾燥不活性ガスを各成分に吹き込み水分を除去する工程、
(e)凍結乾燥により水分を除去する工程、
からなる群から選ばれる1種または2種類以上の工程を含む製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のうちの1項に記載の樹脂組成物または請求項5に記載の接着剤からなる有機EL素子用封止剤。
【請求項9】
請求項1〜4のうちの1項に記載の樹脂組成物または請求項5に記載の接着剤を硬化してなる硬化体。
【請求項10】
請求項1〜4のうちの1項に記載の樹脂組成物または請求項5に記載の接着剤を用いてなる有機EL装置。
【請求項11】
請求項1〜4のうちの1項に記載の樹脂組成物または請求項5に記載の接着剤を用いてなるディスプレイ。
【請求項12】
請求項1〜4のうちの1項に記載の樹脂組成物または請求項5に記載の接着剤を用いてなるフレキシブル性を有するディスプレイまたは有機EL装置。
【請求項13】
請求項8に記載の有機EL素子用封止剤を基材の全面又は一部に塗布した後、光を照射する工程と、
前記有機EL素子用封止剤が硬化するまでの間に、前記基材と有機EL素子とを貼合して前記有機EL素子を封止する工程と、
を有する有機EL装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。例えば、有機EL素子封止用に用いられる接着剤及び硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は高い輝度発光が可能な素子体として注目を集めている。しかしながら、水分により劣化し発光特性が低下してしまう課題があった。
【0003】
このような課題を解決するために、有機EL素子を封止し、水分による劣化を防止する技術が検討されている。例えば、フリットガラスからなるシール材で封止する方法が挙げられる(特許文献1参照)。
【0004】
また、基材周部を封止するだけでなく、基板の層間を充填し、貼り合わせる封止方法が提案されている。この場合、層間を充填する樹脂組成物が提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
他にも、硬化性、接着性、貯蔵安定性を満足するエネルギー線硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。
【0006】
なお、他の目的に用いられる樹脂組成物ではあるが、特許文献5〜7にも種々の樹脂組成物が記載されている。
【0007】
また、有機ELの封止技術において、有機EL素子封止用の(紫外線照射で硬化しない)熱硬化性樹脂材料からなる充填層の含水率を0.01wt%以下に設定することが記載されている(特許文献8)。また、特許文献8には、有機EL素子封止用の紫外線硬化性樹脂材料からなる周辺シール層の含水率を0.1wt%以下に設定することも記載されている。
【0008】
なお、他の目的に用いられる樹脂組成物ではあるが、特許文献9には加水分解性塩素の含有量が100ppm以下の感光性アディティブ接着剤が記載されている。また、特許文献10には加水分解性塩素量が600ppm以下の液晶シール剤が記載されている。
【0009】
また、有機ELの封止技術において、有機EL素子用の封止剤にクラウンエーテルを添加することが記載されている(特許文献11)。また、他の目的に用いられる樹脂組成物ではあるが、タッチパネル用光硬化性樹脂組成物にクラウンエーテルを添加することが記載されている(特許文献12)。
【特許文献1】特開平10−74583号公報
【特許文献2】特開2005−336314号公報
【特許文献3】特開2008−59945号公報
【特許文献4】特開2010−248500号公報
【特許文献5】特開2009−286954号公報
【特許文献6】特表2010−507696号公報
【特許文献7】特開2001−181221号公報
【特許文献8】特開2008−59868号公報
【特許文献9】特開平10−173336号公報
【特許文献10】特開2004−61925号公報
【特許文献11】特開2012−151109号公報
【特許文献12】特開2011−111598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
特許文献1では、量産化を行う際には、有機EL素子を、水分の透過性が低い基材、例えば、ガラス等で挟み込み、外周部を封止する方法を採用する。この場合、この構造は中空封止構造となっているため、中空封止構造内部へ水分が浸入することを防げず、有機EL素子の劣化につながる課題があった。
【0011】
特許文献2および3では、これらの樹脂組成物は、水分透過性が高いために有機EL素子を劣化させてしまい、かつ、十分な接着力が確保できていないために有機EL素子が剥離してしまう課題があった。また、有機EL素子には金属が蒸着されているため、金属腐食により有機EL素子が劣化してしまう課題があった。
【0012】
特許文献4では、はビス−(4−t−ブチル−フェニル)−ヨードニウム−トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドなどの特定の種類の光重合開始剤を選択することなく、多様な光重合開始剤を用いて幅広く有機EL素子封止用の樹脂組成物の成分組成等を検討することが困難であるという課題があった。
【0013】
特許文献5〜7は、そもそも他の目的に用いられる樹脂組成物であり、水分量を規定することについても記載はない。
【0014】
特許文献8は水分量を規定しているが、炭素と水素を主成分とするオレフィン樹脂または環状オレフィン樹脂を含むオーバーコート層と、(紫外線照射で硬化しない)エポキシ系の熱硬化性樹脂材料を含む充填層と、エポキシ系の紫外線硬化性樹脂材料を含む周辺シール層と、を組合せているため、接着性、接着耐久性などが充分ではなく、有機EL素子の封止工程が複雑であるという課題があった。
【0015】
特許文献9〜10は、塩素量をそれぞれ規定しているが、そもそも他の目的に用いられる樹脂組成物であり、水分量を規定することについても記載はない。
【0016】
特許文献11〜12は、有機EL素子用の封止剤またはタッチパネル用光硬化性樹脂組成物にクラウンエーテルを添加することが記載されているが、水分量を規定することについても記載はない。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、有機EL素子封止用に用いた場合に有機EL素子を劣化させにくい樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、(A)エポキシ化合物と、(B)エポキシ樹脂と、(C)光カチオン重合開始剤と、を含有し、かつ、水分量が1000ppm以下であり、塩素量が1000ppm以下である、樹脂組成物である。この樹脂組成物は、有機EL素子封止用に用いた場合に有機EL素子を劣化させにくい。
【0019】
なお、上記の樹脂組成物は本発明の一態様であり、本発明の接着剤、有機EL素子用封止剤、硬化体、有機EL装置、ディスプレイ、それらの製造方法なども、同様の構成および効果を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、有機EL素子の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<用語の説明>
本明細書において、エネルギー線硬化性樹脂組成物とは、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる樹脂組成物を意味する。ここで、エネルギー線とは、紫外線、可視光線等に代表されるエネルギー線を意味する。
【0022】
本明細書において、「〜」という記号は両端の値「以上」及び「以下」の範囲を意味する。例えば、「A〜B」というのは、A以上でありB以下であるという意味である。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
[実施形態1:樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物としては、エネルギー線硬化性樹脂組成物が好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光カチオン重合開始剤、(D)光増感剤を含有する。
【0025】
次に、本実施形態の樹脂組成物の成分について説明する。
【0026】
((A)エポキシ化合物)
本実施形態の樹脂組成物は、(A)エポキシ化合物を含有する。エポキシ化合物を用いることにより、本実施形態の樹脂組成物は優れた接着性、低透湿性、接着耐久性を示す。
【0027】
(A)エポキシ化合物の脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環、ピネン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物もしくはその誘導体や、ビスフェノールA型エポキシ化合物等の芳香族エポキシ化合物を水素化して得られる水素化エポキシ化合物等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
【0028】
エポキシ化合物の分子量は、透湿性の点で、300未満が好ましく、100〜280がより好ましい。分子量とは、数平均分子量をいう。分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量を使用する。例えば、以下の条件で測定する。
溶媒(移動相):THF
脱気装置:ERMA社製ERC−3310
ポンプ:日本分光社製PU−980
流速1.0ml/min
オートサンプラ:東ソー社製AS−8020
カラムオーブン:日立製作所製L−5030
設定温度40℃
カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumnMP(×L)6.0mmID×4.0cm 2本、及び東ソー社製TSK−GELMULTIPORE HXL−M 7.8mmID×30.0cm 2本、計4本
検出器:RI 日立製作所製L−3350
データ処理:SIC480データステーション
【0029】
これらの中では、接着性、光硬化性に優れる点で、脂環式エポキシ化合物が好ましく、1分子内に1個以上のエポキシ基と1個以上のエステル基を含有する脂環式エポキシ化合物がより好ましい。
【0030】
脂環式エポキシ化合物としては、特に限定されないが、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等といった、1分子内に1個以上のエポキシ基と1個以上のエステル基を有する脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0031】
((B)エポキシ樹脂)
(B)エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ化ポリブタジエン樹脂、シクロヘキシル基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、これらの変性物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、接着性、光硬化性に優れる点で、芳香族基を有しないエポキシ樹脂が好ましい。芳香族基を有しないエポキシ樹脂の中では、接着性、光硬化性に優れる点で、シクロヘキシル基を含有するエポキシ樹脂とエポキシ化ポリブタジエン樹脂からなる群のうちの1種又は2種以上が好ましく、エポキシ化ポリブタジエン樹脂がより好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂の分子量は、透湿性の点で、300〜5000が好ましい。ここで、分子量とは、数平均分子量をいう。分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量を使用した。
【0033】
(B)成分の使用量は、作業性、光硬化性、接着性、透湿性、接着耐久性の点で、(A)と(B)の合計100質量部中、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が尚更好ましく、5質量部以上が最も好ましい。(B)成分の使用量は、作業性、光硬化性、接着性、透湿性、接着耐久性の点で、(A)と(B)の合計100質量部中、50質量部以下が好ましく、30質量部以下が好ましく、25質量部以下が好ましく、20質量部以下が最も好ましい。
【0034】
((C)光カチオン重合開始剤)
本実施形態の樹脂組成物は、(C)光カチオン重合開始剤を含有する。光カチオン重合開始剤を用いる場合、本実施形態の樹脂組成物は、紫外線等のエネルギー線照射により硬化可能となる。
【0035】
(C)光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、アリールスルフォニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S、LW−S1、ダブルボンド社製のチバキュアー1190等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤等が挙げられる。光カチオン重合開始剤のカチオン種としては、下式(1)に示すオニウム塩が好ましい。
【0036】
(C)光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、下式(1)に示すオニウム塩が挙げられる。
(化1)
(AはVIA族〜VIIA族の原子価mの元素。m=1〜2。n=0〜3。m、nは整数が好ましい。RはAに結合している有機基を示す。Dは下式(2)で示す構造であり、
(化2)
式(2)中、Eは2価の基を表し、Gは−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレンまたはフェニレン基(R’は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基)。a=0〜5。a+1個のE及びa個のGはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。aは整数が好ましい。ここでR’は前記のものと同じ。X
−はオニウムの対イオンであり、その個数は1分子当りn+1である。)
【0037】
式(1)の化合物のオニウムイオンは特に限定されないが、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジ−p−トリル)スルホニオ]チオキサントン、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、5−(4−メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5−フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等が挙げられる。
【0038】
RはAに結合している有機基であり、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基または炭素数2〜30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基およびハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。Rの個数はm+n(m−1)+1であり、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。また2個以上のRが互いに直接または−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレンもしくはフェニレン基を介して結合して元素Aを含む環構造を形成してもよい。ここでR’は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。
【0039】
上記において炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル基などの単環式アリール基およびナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノン、アントラキノンなどの縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0040】
炭素数4〜30の複素環基としては、酸素、窒素、硫黄などの複素原子を1〜3個含む環状のものが挙げられ、これらは同一であっても異なっていてもよく、具体例としてはチエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニルなどの単環式複素環基およびインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなどの縮合多環式複素環基が挙げられる。
【0041】
炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクダデシルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、ベンジル、ナフチルメチル、アントラセニルメチル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチルのようなアラルキル基等が挙げられる。また、炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、1−デセニル、2−デセニル、8−デセニル、1−ドデセニル、2−ドデセニル、10−ドデセニルなどの直鎖または分岐状のもの、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニルなどのシクロアルケニル基、あるいはスチリル、シンナミルのようなアリールアルケニル基等が挙げられる。さらに、炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、1,1−ジメチル−2−プロピニル、1−ぺンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−デシニル、2−デシニル、8−デシニル、1−ドデシニル、2−ドデシニル、10−ドデシニルなどの直鎖状または分岐状のもの、あるいはフェニルエチニルなどのアリールアルキニル基等が挙げられる。
【0042】
上記の炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基または炭素数2〜30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクダデシルなど炭素数1〜18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシルなど炭素数1〜18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど炭素数3〜18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2−メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、オクタデカノイルなど炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイルなど炭素数7〜11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、オクタデシロキシカルボニルなど炭素数2〜19の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニルなど炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニルなど炭素数7〜11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシなど炭素数2〜19の直鎖または分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、2−メチルフェニルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、2−クロロフェニルチオ、3−クロロフェニルチオ、4−クロロフェニルチオ、2−ブロモフェニルチオ、3−ブロモフェニルチオ、4−ブロモフェニルチオ、2−フルオロフェニルチオ、3−フルオロフェニルチオ、4−フルオロフェニルチオ、2−ヒドロキシフェニルチオ、4−ヒドロキシフェニルチオ、2−メトキシフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−[4−(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4−(フェニルチオ)フェニルチオ、4−ベンゾイルフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−メチルチオフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−メチルチオフェニルチオ、4−(4−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(2−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−メチルベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−エチルベンゾイル)フェニルチオ4−(p−イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオなど炭素数6〜20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert−ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチルなど炭素数6〜10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなど炭素数4〜20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシなど炭素数6〜10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec−ブチルスルフィニル、tert−ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert−ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニルなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニルなど炭素数6〜10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert−ペンチルスルホニル、オクチルスルホニルなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニルなど炭素数の6〜10のアリールスルホニル基;下式(3)で表されるアルキレンオキシ基(Qは水素原子またはメチル基を表し、kは1〜5の整数);
(化3)
無置換のアミノ基並びに炭素数1〜5のアルキルおよび/または炭素数6〜10のアリールでモノ置換もしくはジ置換されているアミノ基(炭素数1〜5のアルキル基の具体例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルなどの分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなどのシクロアルキル基が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基の具体例としてはフェニル、ナフチルなどが挙げられる);シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンなどが挙げられる。
【0043】
また2個以上のRが互いに直接または−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NH−、−NR’−(R’は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。炭素数1〜5のアルキル基の具体例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルなどの分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなどのシクロアルキル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基の具体例としてはフェニル、ナフチルなどが挙げられる)、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレンもしくはフェニレン基を介して結合して元素Aを含む環構造を形成した例としては下記のものを挙げることができる。
【0044】
[AはVIA族〜VIIA族(CAS表記)の元素、Lは−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、−CONH−、を表す。R’は前記と同じである。]
【0045】
式(1)において、原子価mのVIA族〜VIIA族(CAS表記)の元素Aに結合しているm+n(m−1)+1個のRは、互いに同一であっても異なってもよいが、Rの少なくとも1つ、さらに好ましくはRのすべてが前記置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリールまたは炭素数4〜30の複素環基である。
【0046】
式(1)中のDは下式(2)の構造で表される。
(化2)
【0047】
式(2)中のEはメチレン、エチレン、プロピレンなど炭素数1〜8の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基;フェニレン、キシリレン、ナフチレン、ビフェニレン、アントラセニレンなどの炭素数6〜20のアリーレン基;ジベンゾフランジイル、ジベンゾチオフェンジイル、キサンテンジイル、フェノキサチインジイル、チアンスレンジイル、ビチオフェンジイル、ビフランジイル、チオキサントンジイル、キサントンジイル、カルバゾールジイル、アクリジンジイル、フェノチアジンジイル、フェナジンジイルなどの炭素数8〜20の複素環化合物の2価の基を表す。ここで複素環化合物の2価の基とは複素環化合物の異なる2個の環炭素原子からおのおの1個の水素原子を除いてできる2価の基のことをいう。
【0048】
上記のアルキレン基、アリーレン基または複素環化合物の2価の基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の具体例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチルなどの炭素数1〜8の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜8の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロヘキシルなど炭素数3〜8のシクロアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシなど炭素数は1〜8のアルコキシ基;フェニル、ナフチルなど炭素数6〜10のアリール基;ヒドロキシ基;シアノ基;ニトロ基またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンが挙げられる。
【0049】
式(2)中のGは−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NH−、−NR’−(R’は上記と同じ)、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレンまたはフェニレン基を表す。炭素数1〜3のアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレンなどの直鎖または分岐状のアルキレン基が挙げられる。
【0050】
式(2)中のaは0〜5の整数である。a+1個のEおよびa個のGはそれぞれ互いに同一であっても異なってもよい。
【0051】
式(1)の中で、式(2)で表されるDの代表例を以下に示す。
【0052】
a=0の場合
【0053】
a=1の場合
【0054】
a=2の場合
【0055】
a=3の場合
【0056】
式(1)中のnは[D−A
+R
m−1]結合の繰り返し単位数を表し、0〜3の整数であることが好ましい。
【0057】
式(1)中のオニウムイオン[A
+]として好ましいものはスルホニウム、ヨードニウム、セレニウムであるが、代表例としては以下のものが挙げられる。
【0058】
スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、トリ−o−トリルスルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、1−ナフチルジフェニルスルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、トリ−1−ナフチルスルホニウム、トリ−2−ナフチルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(p−トリルチオ)フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジ−p−トリルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4−[ビス(4−メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4−[ビス(4−メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジ−p−トリル)スルホニオ]チオキサントン、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5−(4−メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5−フェニルチアアンスレニウム、5−トリルチアアンスレニウム、5−(4−エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5−(2,4,6−トリメチルフェニル)チアアンスレニウムなどのトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4−ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウムなどのジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4−メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4−アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2−ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2−ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9−アントラセニルメチルフェナシルスルホニウムなどのモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウムなどのトリアルキルスルホニウムなどが挙げられる。
【0059】
ヨードニウムイオンとしては、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシフェニル)ヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウム等が挙げられる。
【0060】
セレニウムイオンとしてはトリフェニルセレニウム、トリ−p−トリルセレニウム、トリ−o−トリルセレニウム、トリス(4−メトキシフェニル)セレニウム、1−ナフチルジフェニルセレニウム、トリス(4−フルオロフェニル)セレニウム、トリ−1−ナフチルセレニウム、トリ−2−ナフチルセレニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)セレニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルセレニウム、4−(p−トリルチオ)フェニルジ−p−トリルセレニウムなどのトリアリールセレニウム;ジフェニルフェナシルセレニウム、ジフェニルベンジルセレニウム、ジフェニルメチルセレニウムなどのジアリールセレニウム;フェニルメチルベンジルセレニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルセレニウム、フェニルメチルフェナシルセレニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルセレニウム、4−メトキシフェニルメチルフェナシルセレニウムなどのモノアリールセレニウム;ジメチルフェナシルセレニウム、フェナシルテトラヒドロセレノフェニウム、ジメチルベンジルセレニウム、ベンジルテトラヒドロセレノフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルセレニウムなどのトリアルキルセレニウムなどが挙げられる。
【0061】
これらのオニウムのうちで好ましいものはスルホニウムとヨードニウムであり、特に好ましいものは、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジ−p−トリル)スルホニオ]チオキサントン、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5−(4−メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5−フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウムおよびオクタデシルメチルフェナシルスルホニウムなどのスルホニウムイオン並びにジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムおよび4−イソブチルフニル(p−トリル)ヨードニウムなどのヨードニウムイオンからなる群のうちの1種以上が挙げられる。
【0062】
式(1)においてX
−は対イオンである。その個数は1分子当りn+1である。対イオンにおいて、特に限定されないが、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物、メチド化合物等がある。例えば、F
−、Cl
−、Br
−、I
−などのハロゲンイオン;OH
−;ClO
4−;FSO
3−、ClSO
3−、CH
3SO
3−、C
6H
5SO
3−、CF
3SO
3−などのスルホン酸イオン類;HSO
4−、SO
42−などの硫酸イオン類;HCO
3−、CO
32−、などの炭酸イオン類;H
2PO
4−、HPO
42−、PO
43−などのリン酸イオン類;PF
6−、PF
5OH
−、フッ素化アルキルフルオロリン酸イオンなどのフルオロリン酸イオン類;BF
4−、B(C
6F
5)
4−、B(C
6H
4CF
3)
4−などのホウ酸イオン類;AlCl
4−;BiF
6−などが挙げられる。その他にはSbF
6−、SbF
5OH
−などのフルオロアンチモン酸イオン類、あるいはAsF
6−、AsF
5OH
−などのフルオロヒ素酸イオン類等が挙げられる。
【0063】
フッ素化アルキルフルオロリン酸イオンとしては、下式(4)等で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオンが挙げられる。
【0064】
式(4)
【0065】
式(4)において、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rfの個数bは、1〜5であり、整数であることが好ましい。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rfの個数bは、2〜4がより好ましく、2〜3が最も好ましい。
式(4)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオンにおいて、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1〜8、さらに好ましい炭素数は1〜4である。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基などが挙げられる。具体例としては、CF
3、CF
3CF
2、(CF
3)
2CF、CF
3CF
2CF
2、CF
3CF
2CF
2CF
2、(CF
3)
2CFCF
2、CF
3CF
2(CF
3)CF、(CF
3)
3C等が挙げられる。
【0066】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては[(CF
3CF
2)
2PF
4]
−、[(CF
3CF
2)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CF)
2PF
4]
−、[((CF
3)
2CF)
3PF
3]
−、[(CF
3CF
2CF
2)
2PF
4]
−、[(CF
3CF
2CF
2)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CFCF
2)
2PF
4]
−、[((CF
3)
2CFCF
2)
3PF
3]
−、[(CF
3CF
2CF
2CF
2)
2PF
4]
−および[(CF
3CF
2CF
2CF
2)
3PF
3]
−等が挙げられる。
【0067】
光カチオン重合開始剤は、エポキシ化合物、エポキシ樹脂への溶解を容易にするため、あらかじめ溶剤類に溶解したものを用いてもよい。溶剤類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルn−プロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジエチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類;酢酸エチル、乳酸エチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビノールアセテート、β−プロピオラクトン、β―ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールルモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのモノアルキルグリコールエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテルなどのジアルキルグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのモノアルキルグリコールエーテルの脂肪族カルボン酸エステル類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤類;アセトニトリルなどのニトリル類等が挙げられる。
【0068】
これらの光カチオン重合開始剤は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
【0069】
(C)光カチオン重合開始剤のアニオン種としては、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物等が挙げられる。これらのアニオン種は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、光硬化性に優れ、接着性、接着耐久性が向上する点で、フッ化物が好ましい。フッ化物の中では、ヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0070】
(C)光カチオン重合開始剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましい。光カチオン重合開始剤の使用量が0.01質量部以上であれば光硬化性が悪くなることもないし、5質量部以下であれば接着耐久性を低下させることもない。
【0071】
((D)光増感剤)
本実施形態の樹脂組成物は、(D)光増感剤を含有する。光増感剤とは、エネルギー線を吸収して、光カチオン重合開始剤からカチオンを効率よく発生させる化合物をいう。
【0072】
光増感剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン誘導体、フェノチアジン誘導体、フェニルケトン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタセン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサンテン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、トリアリルメタン誘導体、フタロシアニン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、有機ルテニウム錯体等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のフェニルケトン誘導体及び/又は9,10−ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体が好ましく、フェニルケトン誘導体がより好ましく、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが最も好ましい。
【0073】
(D)光増感剤の使用量は、硬化性が悪くならず、貯蔵安定性が低下しない点で、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、1〜3質量部が最も好ましい。
【0074】
((E)安定剤)
本実施形態の樹脂組成物は、(E)安定剤を含有してもよい。安定剤を含有することにより、本実施形態の樹脂組成物は、優れた貯蔵安定性を示す。
【0075】
安定剤としては、特に限定されないが、酸化防止剤、エーテル化合物またはこれらの混合物が挙げられる。これらの中では、エーテル化合物が好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドや環状のクラウンエーテルなどがある。なかでも、クラウンエーテルを用いることが特に好ましい。
【0076】
上記安定剤のなかでも、クラウンエーテルを用いることが特に好ましい。クラウンエーテルを用いることにより、添加量に対して有機EL表示装置の製造に好適な、優れた硬化性を達成することができる。
【0077】
上記安定剤としてポリアルキレンオキサイドを用いる場合、上記ポリアルキレンオキサイドの末端としては特に限定されず、水酸基でもよいし、他の化合物によりエーテル化、エステル化されていてもよいし、エポキシ基等の官能基となっていてもよい。なかでも、水酸基、エポキシ基等は上記光重合性化合物と反応するので好適である。
【0078】
更に、上記ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリアルキレンオキサイド付加ビスフェノール誘導体も好適に用いられ、特に末端が水酸基又はエポキシ基を有する化合物がより好適に用いられる。
【0079】
上記安定剤は、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールを分子内に2つ以上有することが好ましい。
【0080】
上記安定剤のなかでも、ポリエチレングリコールを分子内に2つ以上有する安定剤の市販品としては、例えば、「リカレジンBEO−60E」、「リカレジンEO−20」(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0081】
また、ポリプロピレングリコールを分子内に2つ以上有する安定剤の市販品としては、例えば、「リカレジンBPO−20E」、「リカレジンPO−20」(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0082】
上記クラウンエーテルとしては特に限定されず、例えば、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6等が挙げられる。
【0083】
安定剤を含有することにより、貯蔵安定性を向上させるだけでなく、硬化速度を調整することが可能となり、光照射から一定時間経過後に硬化する光後硬化性樹脂組成物とすることが出来る。
【0084】
安定剤の使用量は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.05〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。0.05質量部以上であれば貯蔵安定性が向上し、20質量部以下であれば硬化性を低下させることもない。
【0085】
((F)シランカップリング剤)
本実施形態の樹脂組成物は、(F)シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有することにより、本実施形態の樹脂組成物は、優れた接着性及び接着耐久性を示す。
【0086】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0087】
シランカップリング剤の使用量は、接着性、接着耐久性を得ることができる点で、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0088】
本実施形態の樹脂組成物は、脂肪族エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等の他のカチオン重合性化合物を含有してもよい。
【0089】
本実施形態の樹脂組成物は、アクリルゴム、ウレタンゴム等の各種エラストマー、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体等のグラフト共重合体、無機充填剤、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、界面活性剤等の添加剤を使用してもよい。
【0090】
((G)微粒子)
本実施形態に係る樹脂組成物は、微粒子を更に含有していてもよい。微粒子は、特に限定されるものではないが、無機系または有機系の透明微粒子等を用いることができる。
【0091】
無機系の微粒子としては、シリカ粒子、ガラスフィラー、球状アルミナ、破砕アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化亜鉛等の酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物類、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類や合金類、ダイヤモンド、カーボン等の炭素系充填材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。これらは脂肪酸やシリコーンカップリング剤、チタネート系カップリング剤等で表面処理が施されたものであってもよい。また、有機系の微粒子としては、架橋スチレン系粒子、架橋アクリル系粒子やフッ素変性した架橋アクリル系粒子や架橋スチレン−アクリル系粒子、架橋シリコーン系粒子等が挙げられる。50%粒子径は、0.001μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。これらの範囲であることにより、粒子径が小さすぎて凝集し易くなってしまうこともないし、粒子径が大きすぎ沈降し易くなってしまうこともない。また、微粒子は、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0092】
ここでいう50%粒子径とは、体積累積頻度50%時の粒子径のこという。
【0093】
粒子径の測定方法としては、特に限定されないが、例えば、レーザー回折粒度分布計、レーザードップラー粒度分布計、動的光散乱粒度分布計、超音波粒度分布計等が挙げられる。
【0094】
微粒子の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0095】
(水分量)
本実施形態の樹脂組成物の水分量は、有機EL素子の劣化を抑制する点で、1000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、100ppm以下が最も好ましい。この水分量が1000ppmを超える場合には、樹脂組成物中に含まれる水分が有機EL素子に接触することを防げず、有機EL素子の劣化につながる。なお、この水分量は、100ppm、200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、1200ppm、1300ppm、1400ppm、1500ppmのいずれかの値以下であってもよい。
【0096】
(塩素量)
本実施形態の樹脂組成物の塩素量は、有機EL素子の劣化を抑制する点で、1000ppm以下が好ましく、800ppm以下がより好ましく、700ppm以下が尚更好ましく、100ppm未満が最も好ましい。この塩素量が1000ppmを超える場合には、樹脂組成物中に含まれる塩素が有機EL素子に接触することを防げず、有機EL素子の劣化につながる。なお、この塩素量は、100ppm、200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、1200ppm、1300ppm、1400ppm、1500ppmのいずれかの値以下であってもよい。
【0097】
(粘度)
本実施形態の樹脂組成物の粘度は、優れた塗布性を得るために、せん断粘度は5mPa・s以上であれば、接着剤が必要以上に濡れ広がってしまうことがないので好ましい。せん断粘度は2000mPa・s以下であれば、ディスペンサー等市販の塗布装置を用い、高精度に塗布することが可能となるので好ましい。せん断粘度は1000mPa・s以下であることがより好ましい。なお、この粘度は、5mPa・s、10mPa・s、25mPa・s、50mPa・s、75mPa・s、100mPa・s、250mPa・s、500mPa・s、750mPa・s、1000mPa・s、2500mPa・s、5000mPa・s、7000mPa・sのうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0098】
[実施形態2:硬化体]
本実施形態の樹脂組成物は、エネルギー線の照射により硬化させ、硬化体としてもよい。その際、本実施形態では、下記の光源を用いたエネルギー線の照射により、樹脂組成物の硬化を行ってもよい。
【0099】
[光源]
本実施形態の樹脂組成物の硬化や接着に用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光重合開始剤の反応波長に対応したエネルギー線の照射を効率よく行える点で、好ましい。
【0100】
上記光源は、各々放射波長やエネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。又、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0101】
上記光源の照射としては、直接照射、反射鏡等による集光照射、ファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0102】
本実施形態の樹脂組成物は、光照射後の硬化速度を促進するために、後加熱処理をしてもよい。後加熱の温度は、有機EL素子の封止に用いる場合には、有機EL素子にダメージを与えない点で、120℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0103】
[実施形態3:接着剤]
本実施形態の樹脂組成物は、接着剤として用いてもよい。本実施形態の接着剤は、有機EL素子等のパッケージ等の接着に、好適に用いることができる。
【0104】
[実施形態4:樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の樹脂組成物の製造方法については、上記の成分を十分に混合できれば特に制限されない。各成分の混合方法としては、特に限定されないが、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌方法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で、好ましい。
【0105】
[水分量低減方法]
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、水分量を低減する工程を含むことが好ましい。水分量の低減方法としては、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
【0106】
(1)乾燥剤により水分を除去する。水分を除去した後、乾燥剤をデカンテーション又はろ過により分離する。乾燥剤としては、樹脂組成物に影響がなければ特に限定されないが、高分子吸着剤(モレキュラーシーブ、合成ゼオライト、アルミナ、シリカゲル等)、無機塩(塩化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、生石灰、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム等)、固体アルカリ類(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等が挙げられる。
(2)減圧条件下で加熱し、水分を除去する。
(3)減圧条件下で蒸留精製する。
(4)乾燥窒素や乾燥アルゴンガス等の不活性ガスを各成分に吹き込み水分を除去する。
(5)凍結乾燥により水分を除去する。
【0107】
水分量の低減は、混合前の各成分毎に水分を低減してもよく、各成分の混合後に水分を低減してもよい。水分量の低減工程は1種又は2種以上を併用してもよい。水分量の低減工程後は水分の再混入を防ぐため、不活性ガス雰囲気下で取り扱うことが好ましい。
【0108】
[塩素量低減方法]
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、塩素量を低減する工程を含むことが好ましい。塩素量の低減方法としては、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
【0109】
エポキシ樹脂は一般的に多価アルコール類とエピクロロヒドリンを反応させることによって得られる。この製造方法において、エピクロロヒドリン起因の不純物塩素が発生する。この不純物塩素を低減する方法としては、特に限定されないが、蒸留等の精製方法等が挙げられる。他にも、この反応の際にアルコール類(特開昭54−13596公報)、ジオキサン等のエーテル化合物(特開昭58−189223号公報)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等(特開昭63−254121号公報)の高沸点非プロトン性極性溶媒を用いて、それぞれ、多価アルコール化合物とエピクロロヒドリンを、高アルカリ存在下で反応させる方法(例えば、アルカリ金属水酸化物存在下で反応させる方法)により、不純物塩素の発生を低減する方法も挙げられる。
【0110】
[実施形態5:有機EL表示装置の製造方法]
本実施形態の硬化性樹脂組成物剤を用いて有機EL表示装置を製造する方法としては、例えば、一方の基板上(背面板)に本実施形態の樹脂組成物を塗布し、該樹脂組成物に光を照射して活性化させた後に、光を遮断し、該組成物を介して背面板とEL素子を形成した基板を貼り合せることにより、有機EL素子を光や熱に晒すことなく封止を行うことができる。
【0111】
また、本樹脂組成物を用いて、一方の基板に本実施形態の樹脂組成物を塗布し、樹脂組成物を介して、他方の基板を貼り合せ、本実施形態の樹脂組成物に光を照射する方法を用いて有機EL表示装置を製造することもできる。
【0112】
すなわち、本実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、上記安定剤を含有する本実施形態の有機EL素子用封止剤を防湿性基材の全面又は一部に塗布した後、光を照射し、前記該樹脂組成物が硬化するまでの間に、前記防湿性基材と有機EL素子とを貼合して封止するものである。
【0113】
本実施形態の有機EL表示装置の製造方法においては、防湿性基材と有機EL素子とを貼合した後に加熱することが好ましい。上記防湿性基材と有機EL素子とを貼合した後に加熱することにより、該樹脂組成物の硬化速度を促進させることができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本願発明を更に詳細に説明する。本実施形態はこれらに限定されるものではない。特記しない限り、23℃、相対湿度50質量%で試験した。
【0115】
実施例及び比較例では、以下の化合物を使用した。
(A)成分のエポキシ化合物として下記を用いた。
(A−1)3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学社製「セロキサイド2021P」)
(A−2)3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(ダイセル社製「サイクロマーM100」)
【0116】
(B)成分のエポキシ樹脂として下記を用いた。
(B−1)エポキシ化ポリブタジエン樹脂(日本曹達社製「JP−200」、分子量2000〜2600)
(B−2)2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル化学社製「セロキサイドEHPE3150」、分子量340〜380)
(B−3)ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物(ADEKA社製「EP−4088S」分子量300〜340)
(B−4)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学社製「jER828」、分子量360〜390)
(B−5)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三井化学社製「jER806」、分子量320〜340)
(B−6)ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (三井化学社製「YL983U」、分子量360〜380)
(B−7)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学社製「YX8000」、分子量380〜430)
(B−8)ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (ADEKA社製「KRM−2490」、分子量340〜380)
【0117】
(C)成分の光カチオン重合開始剤として下記を用いた。
(C−1)トリアリールスルフォニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「アデカオプトマーSP−170」、アニオン種はヘキサフルオロアンチモネート)
(C−2)トリアリールスルフォニウム塩(サンアプロ社製「CPI−200K」、アニオン種はリン化合物)
【0118】
(D)成分の光増感剤として下記を用いた。
(D−1)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製「DAROCUR 1173」)
(D−2)9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業社製「ANTHRACURE
UVS−1331)
【0119】
(E)成分の安定剤として下記を用いた。
(E−1)18−クラウン−6−エーテル(日本曹達社製 「クラウンエーテル O−18」)
(E−2)15−クラウン−5−エーテル(日本曹達社製 「クラウンエーテル O−15」)
(E−3)ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6−エーテル(東京化成工業社製)
【0120】
(F)成分のシランカップリング剤として下記を用いた。
(F−1)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製 「KBM−403」)
(F−2)γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製 「KBE−403」)
(F−3)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ社製 「A−174」)
【0121】
(G)成分の微粒子として下記を用いた。
(G−1)シリカ(電気化学工業社製「SFP−30M」)
(G−2)カップリング剤表面処理シリカ(電気化学工業社製「SFP−30MHE」)
(G−3)疎水性表面処理シリカ(アエロジル社製「R−974」)
(G−4)アルミナ(電気化学工業社製「ASFP−30」)
【0122】
表1〜4に示す種類の原材料を、表1〜4に示す組成割合で混合し、実施例及び比較例の樹脂組成物を調製した。組成割合の単位は質量部である。
【0123】
実施例及び比較例では、必要に応じ、下記の水分除去工程を行った。
各成分を十分に混合した後、不活性ガス(窒素ガス)雰囲気下にて、樹脂組成物100質量部に対し、モレキュラーシーブ3Aを15質量部加え、攪拌速度50〜200rpmの条件下で5〜70時間攪拌した。攪拌後の樹脂組成物を濾過することにより、表1に示す水分量を有する樹脂組成物を得た。モレキュラーシーブは200℃以上で2時間以上加熱し、冷却した後、シリカゲルの入ったデシケータ内にて保管したものを使用した。実施例及び比較例では、必要に応じ、蒸留等といった塩素除去工程を行った。
【0124】
実施例及び比較例の樹脂組成物について、下記の各測定を行った。その結果を表1〜4に示した。
【0125】
〔粘度〕
組成物の粘度(せん断粘度)はE型粘度計を用い、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。
【0126】
〔水分量〕
樹脂組成物の水分量はカールフィッシャー水分計を用いて測定した。
〔塩素量〕
樹脂組成物の塩素量は以下のようにして測定した。燃焼フラスコに試料約30mgと過酸化水素水(濃度0.5%)10mLを秤量し、燃料した後、振とうし、超純水を加え、100mLに調製した。その後、イオンクロマトアナライザー(DIONEX社製)を用いて塩素の定量分析を行い、塩素量を測定した。
【0127】
〔光硬化条件〕
樹脂組成物の硬化物性及び接着性の評価に際し、下記光照射条件により、樹脂組成物を硬化させた。無電極放電メタルハライドランプ搭載UV硬化装置(フュージョン社製)により、365nmの波長の積算光量4,000mJ/cm
2の条件にて、樹脂組成物を光硬化させた後、80℃のオーブン中で、30分間の後加熱処理を実施し、硬化体を得た。
【0128】
〔透湿度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度60℃、相対湿度90%の条件で測定した。透過湿度は120g/(m
2・24hr)以下であることが好ましい。
【0129】
〔引張剪断接着強さ〕
ホウ珪酸ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2.0mm、テンパックス(登録商標)ガラス」を2枚用い、接着面積0.5cm
2、接着厚み80μmで、上記の光硬化条件にて樹脂組成物を硬化させた。硬化後、この樹脂組成物からなる接着剤で接合した試験片を用い、引張剪断接着強さ(単位:MPa)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度10mm/分で測定した。
【0130】
〔接着耐久性(PCT)〕
ホウ珪酸ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2.0mm、テンパックス(登録商標)ガラス」を2枚用い、接着面積0.5cm
2、接着厚み80μmで、上記の光硬化条件にて樹脂組成物を硬化させた。硬化後、この樹脂組成物からなる接着剤で接合した試験片を用い、プレッシャークッカー(以下、PCTという)121℃、相対湿度100質量%、2atmの雰囲気下にて10時間暴露し、暴露後の試験片の引張剪断接着強さ(単位:MPa)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度10mm/分で測定し、接着保持率を下記(式1)にて求めた。接着保持率は、25%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
【0131】
(式1)
接着保持率(%)=(PCT後の引張剪断接着強さ)÷(初期の引張剪断接着強さ)×100
【0132】
〔有機ELの評価〕
〔有機EL素子基板の作製〕
ITO電極付きガラス基板をアセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、有機EL素子基板を得た。
・銅フタロシアニン
・N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン(α−NPD)
・トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム
・フッ化リチウム
・アルミニウム
【0133】
〔有機EL素子の作製〕
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、窒素雰囲気下にて塗工装置にてガラスに塗布し、有機EL素子基板と貼り合わせ、接着厚み10μmで前記光硬化条件にて、この樹脂組成物からなる接着剤を硬化させ、有機EL素子を作製した(有機EL評価)。
【0134】
〔初期〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークススポットの直径を測定した。
【0135】
〔耐久性〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークススポットの直径を測定した。
【0136】
ダークススポットの直径は、300μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、ダークススポットはないことが最も好ましい。
【0137】
[保存安定性試験]
組成物の初期粘度(V0)を測定した後、容器に入れて蓋をした状態(密閉系)で約40℃の高温環境下における促進試験で4週間後の組成物の粘度(V4)を測定した。そして、式:V4/V0にしたがって粘度変化率を求めた。粘度変化率が2以下のものを保存安定性良好と判断した。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
上記実験例から以下のことが判った。
本実施形態は、微量な使用量で、高精度な塗布性、接着性、低透湿性、接着耐久性に優れた樹脂組成物を提供できる。本実施形態の樹脂組成物が低透湿性を有することは、透湿度が小さいことから、裏付けられた。例えば、(D)成分を使用した場合、有機ELの耐久性が向上した(実施例1〜9、実施例14〜18と、実施例10〜13との比較)。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の樹脂組成物は、高い接着性、高い低透湿度性を有し、有機EL素子を劣化させない。本発明の樹脂組成物は、エレクトロニクス製品、特に、有機EL等のディスプレイ部品や、CCD、CMOSといったイメージセンサー等の電子部品、更には半導体部品等で用いられる素子パッケージ等の接着において、好適に適用することができる。特に、有機EL用の封止用の接着において最適であり、有機EL素子等の素子パッケージ用接着剤に要求される特性を満足する。