特許第6578350号(P6578350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6578350遠心分離機および血液サンプルを遠心分離する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578350
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】遠心分離機および血液サンプルを遠心分離する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20190909BHJP
   G01N 33/86 20060101ALI20190909BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20190909BHJP
   B04B 5/02 20060101ALI20190909BHJP
   B04B 13/00 20060101ALI20190909BHJP
   B04B 15/00 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   A61M1/02 120
   G01N33/86
   A61K35/14 Z
   B04B5/02 D
   B04B13/00
   B04B15/00
   A61P7/00
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-510580(P2017-510580)
(86)(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公表番号】特表2017-537873(P2017-537873A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015069067
(87)【国際公開番号】WO2016026901
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年6月29日
(31)【優先権主張番号】14181377.4
(32)【優先日】2014年8月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517054453
【氏名又は名称】リアプリックス エイピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルンドクイスト、ラスムス
(72)【発明者】
【氏名】ホルム、ニールス、エリク
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−101486(JP,A)
【文献】 特表2003−512908(JP,A)
【文献】 米国特許第03674198(US,A)
【文献】 特表2008−543560(JP,A)
【文献】 特表2010−526640(JP,A)
【文献】 特表2012−500779(JP,A)
【文献】 特開2001−286550(JP,A)
【文献】 特開昭61−132871(JP,A)
【文献】 特開昭58−172537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61K 35/14
A61P 7/00
B04B 5/02,13/00,15/00
G01N 33/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 回転軸を有するロータ、重力軸を有する血液サンプル容器用の少なくとも1つのレセプタクル、前記ロータの回転速度を制御するためのコントローラ手段、光学信号を送信するための光送信機、および前記光学信号の振幅を記録するための光受信機を備える遠心分離機を提供するステップ、
− 前記レセプタクル内に血液サンプル容器を配置するステップであって、前記血液サンプル容器が頂端および底端を備え、かつ中心軸を有し、前記レセプタクルの前記重力軸が、前記血液サンプル容器の前記中心軸に対して実質的に平行である、前記配置するステップ、
− 遠心分離プロセスを開始するステップであって、前記レセプタクルの前記重力軸が、前記遠心分離機の前記回転軸に対してある角度をなし、かつ遠心力が、まず前記血液サンプル容器の前記頂端と交差し、続いて前記底端と交差する方向に伸びる、前記開始するステップ、
− 前記血液サンプル容器に向かって、前記レセプタクルの前記重力軸に対してある角度をなす方向で前記光学信号を送信するステップであって、前記光学信号が、血液サンプルの上相および/または血漿を通って送信される、前記送信するステップ、
− 前記光学信号の振幅を記録するステップ、
− 経時的な前記光学信号の振幅が所定のパターンを満たし、少なくとも前記血漿のフィブリン重合段階が開始されたことを示す場合、前記遠心分離プロセスを中断するステップ、を含む、血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項2】
前記所定のパターンが、少なくとも前記血液サンプルのフィブリン圧縮段階が開始されたことを示す、請求項に記載の血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項3】
前記所定のパターンが、経時的に、実質的に変化しない振幅測定値を含み、これが前記遠心分離プロセスの前記中断を引き起こす、請求項1〜のいずれかに記載の血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項4】
前記所定のパターンが、前記光学信号の振幅における第1の増加を含む、請求項1〜のいずれかに記載の血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項5】
前記所定のパターンが、前記光学信号の振幅における第2の増加をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項6】
前記光学信号の振幅における第2の増加の後に、振幅における減少が続く、請求項1〜のいずれかに記載の血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項7】
前記所定のパターンが、前記光学信号の振幅における第3の増加をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項8】
前記血液サンプルの前記遠心分離が再開され、前記遠心分離が、前記血液サンプル容器内の浮動デバイスが前記光学信号と交差する際に、前記光学信号が振幅における低減を記録するまで継続される、請求項1〜のいずれかに記載の血液サンプルを遠心分離する方法。
【請求項9】
遠心分離機であって、
− 回転軸を有するロータ、
− 重力軸を有する血液サンプル容器用の少なくとも1つのレセプタクルであり、前記レセプタクルが、血液サンプル容器を受容するための頂端と、前記血液サンプル容器を保持するための底端とを備え、前記レセプタクルが、前記遠心分離機の前記回転軸に対して角度をなす位置にあり、遠心力が、前記レセプタクルの前記頂端から前記レセプタクルの前記底端に向かって伸びる、前記レセプタクル、
− 前記ロータの回転速度を制御するためのコントローラ手段、
− 前記レセプタクルの前記重力軸に対してある角度をなし、かつ前記血液サンプル容器内の血液サンプルの上相および/または血漿を通る方向で、光学信号を送信するための少なくとも1つの光送信機、および
− 前記光学信号の振幅を記録するための少なくとも1つの光受信機、を備え、
− 前記光学信号が、前記血液サンプル容器に向かって方向付けられるように構成され、前記光受信機が、前記光学信号の振幅を検出し、前記光学信号の振幅が、前記血液サンプルの前記上相および/または前記血漿の透光性を反映し、
− 前記コントローラ手段が、経時的な前記光学信号の振幅が所定のパターンを満たし、少なくとも前記血漿のフィブリン重合段階が開始されたことを示す場合、前記ロータの回転運動を中断するように構成される、前記遠心分離機。
【請求項10】
前記遠心分離機が、少なくとも2つの光送信機および2つの光受信機を備える、請求項に記載の遠心分離機。
【請求項11】
2つの前記光送信機が、前記レセプタクルおよび/または前記血液サンプル容器の2つの異なる部分に光学信号を送信するように適合される、請求項または1に記載の遠心分離機。
【請求項12】
2つの前記光送信機が、前記レセプタクルおよび/または前記血液サンプル容器の中心長手方向軸に対して角度をなして光学信号を送信するように適合され、第1の光学信号が、前記レセプタクルおよび/または前記血液サンプル容器の第1の部分を通過するように適合され、第2の光学信号が、前記レセプタクルおよび/または前記血液サンプル容器の前記第1の部分に対して遠位の部分を通過するように適合される、請求項11のいずれかに記載の遠心分離機。
【請求項13】
前記レセプタクルが、前記光学信号が前記レセプタクルの半径方向で前記レセプタクルを通過することを可能にする貫通開口部を備える、請求項12のいずれかに記載の遠心分離機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
遠心分離機、および回転軸を有するロータ、血液サンプル容器用の少なくとも1つのレセプタクル、ロータの回転速度を制御するためのコントローラ手段、光学信号を送信するための少なくとも1つの光送信機、光学信号の振幅を記録するための少なくとも1つの光受信機を備える遠心分離機を制御する方法。
【背景技術】
【0002】
近代医学では、血液由来の成分を病気の治療または診断用途において活用する傾向が強まっている。血小板、白血球、または血漿等の血液由来の成分を抽出する1つの方法は、全血の容器を遠心分離機内に入れて、全血を分画することによる方法であり、ここでは、血液はその構成部分へと分離される。
【0003】
これらの構成部分は、人体用の特定の治療または診断目的に活用することができる。患者が出血して十分な血小板を有さない場合、ある投与量の血小板を必要とし得る患者に対してこれらの特定の構成成分を投与することができる。全血の構成部分に関する別の使用法は例えば創傷治療であり得る。ここでは、全血は容器内に導入される場合があり、この容器内で血液の凝固が誘発され、特定の遠心分離レジームの下で全血の構成成分が血液製剤へと濃縮されている。
【0004】
国際公開番号WO2010/020254は、血液の遠心分離によって多層血液製剤を調製する方法について開示している。ここでは、血液は容器内に入れられ、容器内に血液を入れる間または入れた後において、血液の凝固が活性化される。遠心分離中、血液の構成成分は互いに分離され、3つの層の血液製剤ができる。これは順番に、実質的にフィブリンで構成される第1の層、実質的に血小板で構成される第2の中間層、および実質的に白血球で構成される第3の層を含む。
【0005】
国際公開番号WO2012/037942は、遠心分離によって多層血液製剤を調製するために使用される容器について開示している。ここでは、該容器は、充填開口部、ならびに容器内で摺動可能なフィルタデバイスを備える。このフィルタデバイスは、平面的メッシュと支持浮力体とを備え、このフィルタデバイスは、多層血液製剤をメッシュ上またはメッシュの上側で収集するように適合されている。
【0006】
国際公開番号WO2010/020254および国際公開番号WO2012/037942では、容器内での血液製剤の形成を確保するために、ある特定の速度で、ある特定の時間、全血および/または全血を保持する容器を遠心分離しなければならないという要件が存在する。
【0007】
しかしながら、血液製剤の提供に関する重要な因子の1つとして容器内部での全血の凝固があるが、全血の凝固時間は、提供者毎に著しく異なり得ることが観察されている。血液製剤の調製時間は2人の異なる血液提供者に関して相当に異なる場合があるため、凝固時間におけるこのばらつきは全血を保持する容器の遠心分離プロセスに影響を及ぼす。提供者の年齢、薬物、食事、および健康状態等の他の因子が、遠心分離を使用する血液製剤の調製時間に影響を及ぼし得ることもまた認識されるべきである。
【0008】
したがって、国際公開番号WO2010/020254に開示される血液製剤等の血液製剤を調製する医療専門家は、創傷治癒のために使用する血液製剤の準備ができていることを確保するために、ある特定の速度において必要とされる正確な時間を、遠心分離プロセスの前に判定するためのいかなる方法も持ち合わせていない。
【0009】
血液製剤の遠心分離プロセスは多くの場合、鉛直軸の周囲を回転するロータを備え付けられたベンチトップ遠心分離機または卓上遠心分離機を用いて行われる。ここでは、容器は、回転軸から離れる半径方向に配置される。容器は多くの場合、ある特定の角度で固定されるか、またはロータが静止しているときには回転軸に対してある角度をなすように位置付けられ、ロータが回転運動へと加速しているときには回転軸に対して垂直な平面に向かう方向で回転するように配置され得る(すなわち、揺動ヘッド遠心分離機またはスイングアウト(バケット)遠心分離機)。容器のこのような回転運動によって、遠心分離中の遠心力が容器の長手方向軸に沿って方向付けられ得ることが確保され、それにより全血内の粒子の粒子密度が確実に順番通り並ぶ。ここでは、より高い密度を有する粒子が容器の遠位端に存在し、一方で、より小さい密度を有する粒子は容器のより近位で濃縮される。近位および遠位という用語は遠心分離機の回転軸との関係で定義され、容器の遠位端とは、遠心分離中に回転軸から遠く離れて配置される容器の部分のことであり、一方で近位端は、回転軸に近接して配置される。
【0010】
安全上の利用から、動作中にロータの回転運動が遠心分離機付近にいるいかなる人も傷つけたり害したりする可能性が無いように、ベンチトップ遠心分離機または卓上遠心分離機は蓋を備え付けられている。したがって、これは多くの場合、容器の内容物を直接見ることができないため、容器内の血液サンプルまたは全血を遠心分離中に検査することは不可能であることを意味する。さらに、容器の内容物を直接見ることができたとしても、遠心分離機は最大4000RPM、8000RPMまたはそれ以上、すなわち毎秒66〜132回転またはそれ以上であり得る回転速度で動作し得るため、回転中の容器の内容物の状態を肉眼で見ることは困難であるか、または不可能ですらあり得る。
【0011】
さらに、凝固はある特定の期間にわたって起こり、凝固の終結は光学密度における変化が無いことから示されるため、凝固プロセスの最適な結果を得るためには、プロセスの間は継続的にプロセスを観察していなければならない。
【0012】
したがって、血液製剤を調製する医療専門家は、使用に足りる血液製剤を調製するのに十分なほど容器の遠心分離プロセスが行われたときを認識するためのいかなる方法または道具も持ち合わせていない。したがって、医療専門家は、大部分のユーザにとって十分な時間を算出しようと試みており、この条件付きの推測した時間を、遠心分離プロセスに適用している。例として、所定の時間が10分間である場合、この時間は一部の提供者にとっては十分であり得るが、一方で他の提供者の場合には、容器を遠心分離機から取り外し、内容物を視覚的に検査した後に、血液を遠心分離プロセスに再導入する必要がある。一部の提供者については、血液製剤は2〜5分以内に準備ができる場合もあるが、一方で他の提供者の場合、血液製剤は、遠心分離の開始から15〜20分またはそれ以上で準備ができる場合もある。
【0013】
したがって、提供者の創傷治療用に複数の血液製剤を調製する必要がある場合、遠心分離および/または視覚的検査において浪費される毎分毎分が、後続の遠心分離プロセスによって調製される製剤の量に応じて掛け算されることになり得る。したがって、遠心分離プロセスの効率性を上げる必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開番号WO2010/020254
【特許文献2】国際公開番号WO2012/037942
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、遠心分離機が提供され、本遠心分離機は、回転軸を有するロータ、重力軸を有する血液サンプル容器用の少なくとも1つのレセプタクルであって、レセプタクルが、血液サンプル容器を受容するための頂端と、血液サンプル容器を保持するための底端とを備え、レセプタクルが、遠心分離機の回転軸に対してある角度をなす位置にあり、遠心力が、レセプタクルの頂端からレセプタクルの底端に向かって伸びる、レセプタクル、ロータの回転速度を制御するためのコントローラ手段、レセプタクルの重力軸に対してある角度をなし、かつ血液サンプル容器内の血液サンプルの上相および/または血漿を通る方向で、光学信号を送信するための少なくとも1つの光送信機、光学信号の振幅を記録するための少なくとも1つの光受信機を備え、光学信号が、血液サンプル容器に向かって方向付けられるように構成され、光受信機が、光学信号の振幅を検出し、光学信号の振幅が、血液サンプルの上相および/または血漿の透光性を反映し、コントローラ手段が、少なくとも血漿のフィブリン重合段階が開始されたことを示す所定のパターンを経時的な光学信号の振幅が満たした場合、ロータの回転運動を中断するように構成される。
【0016】
血液の透光性の測定値は、光送信機および光受信機の選択、ならびに血液サンプル容器の材料に左右される相対的因子である。したがって、本発明に関して、光学振動の振幅は相対的透光性の表現と見なされ、測定値は血液サンプルの経時的な透光性における変化を検出するように適合されている。光送信機はLEDベースの送信機、レーザダイオードであってもよく、好適な波長の光が光受信機に向かう方向に放射され得る。光受信機は、p−nフォトダイオード、p−i−nフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、または受信した光の振幅を記録および識別することができる任意の種類の光検出器等の光検出器であってもよい。
【0017】
本遠心分離機は、重力軸が遠心分離機の回転軸に対して実質的に平行である位置から、遠心分離機の回転軸に対して実質的に垂直である位置まで移動するようにレセプタクルを適合することができる種類のものである。したがって、本遠心分離機は、揺動バケット(レセプタクル)を有するバケット遠心分離機であってもよく、あるいはバケット(レセプタクル)が遠心分離機の回転軸に対してある特定の角度をなすように固定され得る、固定角度型遠心分離機であってもよい。
【0018】
本遠心分離機の回転軸に対するレセプタクルの角度は、30°〜90°であり得る。好ましい遠心分離方法は、レセプタクルが回転軸に対して90°の角度をなす場合、またはレセプタクルが回転軸に対して実質的に垂直である場合であり得ることが分かった。一部の遠心分離機は固定された角度をなすレセプタクルを有し得、この角度は30°〜90°の間のどこでもよい。
【0019】
本発明による遠心分離機は、全血を含む容器に印加される重力を増加させることによって、全血の遠心沈殿のために遠心力を提供する回転遠心分離機であってもよい。本遠心分離機のロータは、固定軸に対して垂直に遠心力が印加されるように、その固定軸の周りでレセプタクルを回転させるように適合され得る。レセプタクルは、静止した状態ではレセプタクルが実質的な鉛直位置(固定軸に対して平行)に存在し、遠心分離中はレセプタクルが実質的な水平位置(固定軸に対して垂直)に向かって傾くことになるように、本遠心分離機内にヒンジで取り付けられてもよい。したがって、レセプタクルおよび/または血液サンプル容器の長手方向軸は、遠心分離中、固定軸に対して実質的に垂直であり得、それにより、レセプタクルおよび/または血液サンプル容器の長手方向軸に対して平行な方向に遠心力が印加される。あるいは、遠心力は、血液サンプル容器の長手方向軸に対してある角度をなす方向に印加されてもよく、この角度は約1°〜60°度であり得る。
【0020】
したがって、遠心力は、本遠心分離機の回転軸から離れる方向に伸びる方向にあるように映り、それにより、重力はまず血液サンプル容器および/またはレセプタクルの頂部と交差し、続いて血液サンプル容器および/またはレセプタクルの底部と交差する。これは、レセプタクル/容器の頂部が、容器の底部よりも本遠心分離機の遠心軸に対して近くにあることを意味し、これは、遠心力が、容器/レセプタクルの頂部から容器/レセプタクルの底部に向かう方向で血液分離を強いることを意味する。それ故に、本遠心分離機によってレセプタクルおよび/または容器に対して印加される重力場は、容器/レセプタクルの回転軸により近い領域、すなわち容器/レセプタクルの頂端においては、容器/レセプタクルの回転軸から離れた領域、すなわち容器/レセプタクルの底端における重力場よりも低い。重力場は以下の式を用いて計算することができる。
【数1】
【0021】
式中、RCFは回転遠心力(rotational centrifugal force)であり、Rは回転半径(ミリメートルで測定される)であり、RPMは遠心分離機の回転速度である。
【0022】
本発明の意味において、容器の上部とは、遠心分離中、本遠心分離機の固定軸に対して近位である容器の部分のことであり得、一方で容器の下部とは、遠心分離機の固定軸に対して遠位である容器の部分のことである。
【0023】
全血を血液製剤へと遠心分離している間、血液サンプルが遠心分離される場合、血液分画の段階は以下の段階を含み得る。
− 血液の分離。これは、血液のその構成成分への初期の分離として認識することができる。ここでは、全血は、容器の上部における血漿の透明な溶液、白血球および血小板を含むバフィーコートの中間部分、ならびに容器の底部における赤血球へと分離する。これは、赤血球が白血球および血小板よりも高い密度を有するためである。この段階において、血漿はフィブリノーゲンモノマーを含んでいる。この分離は、白血球の分離、血小板の分離として分離を確認することができる、3段階の分離として認識できる。
− フィブリン重合。フィブリノーゲンモノマーが末端から末端に重合してプロトフィブリルを形成し、このプロトフィブリルが横方向に会合してフィブリン線維を形成する。血漿中におけるフィブリン重合段階は、フィブリンの形成により、血漿の透光性の減少を引き起こす。
− フィブリン圧縮(Fibrin compression)。フィブリン重合が完了すると、血漿内のフィブリン線維は遠心分離によって血小板の上に圧縮され始め、血漿の透光性が増加を始める。
【0024】
他の血漿構成成分の除去。この段階では、フィブリン圧縮が完了し、血漿中の他の構成成分が濃縮を始め、血漿の透光性をさらに増加させる。これらの他の構成成分には、脂肪、フィブリン、フィブリノーゲン、または血漿中に存在する任意の他の構成成分等の粒子、細胞、および分子が含まれ、これらが遠心分離中に除去されることになる。この分離は、血液の異なる部分を容器の別個の領域へと分離するための分離が意図されるプロセスとして認識されてもよい。分離は、赤血球の分離、白血球の分離、および血小板の分離であってもよく、このプロセスの3つの分離段階は、全血の一部を通るように方向付けられる光学信号を活用する測定値を用いることで特定できる。
【0025】
血液分画の上記の段階の各々について、血漿の透光性の測定値を用いて認識することができ、実質的に一定の遠心分離プロセス中における透光性パターンのある特定の変化は、1つの段階からその後続の段階への移動を示している。
【0026】
光送信機が、光学信号を送信するように適合され得る一方で、光受信機は、所定の尺度で信号の振幅を測定するように適合される。光学信号は血液サンプル容器を通過するが、光学信号が液体部分内の構成成分と交差する場合、光学信号はこの交差に起因して拡散することになり、容器を通過して光受信機に受信される光学信号は一部のみであり、信号の振幅は所定の尺度において低減されることになる。光学信号は経時的に記録されるため、容器内部の液体の透明度が一定であるか、所定の尺度に対して増加しているか、または減少しているかを監視することが可能となる。
【0027】
コントローラ手段は、光学信号の振幅を活用して本遠心分離機の回転速度を制御することができるよう、光受信機からの入力を受信するように適合され得る。コントローラ手段は、信号のある特定の閾値、パターン、または傾向がコントローラ手段によって観察された場合、本遠心分離機のモータに送られる電気信号の電流または電圧をコントローラ手段が制御することによって本遠心分離機の回転速度を調整するように、信号比較器を備えてもよい。コントローラ手段は、光受信機から送信される電気信号を受信し、受信した信号を処理し、受信した電気信号に基づいて、出力信号を送信して本遠心分離機の回転運動を制御することで、ある特定の動作を実行することができるマイクロプロセッサ、マイクロコントローラの形態であってもよい。
【0028】
本遠心分離機は、光学信号が容器の上部を通過するように方向付けられるように構成してもよく、それにより、血液の初期の分離中、光学信号は血漿を通過することになる。これは、光学信号の振幅が、いつ全血中の構成成分(バフィーコートおよび赤血球)が遠心分離中の遠心力によって容器の底部に追いやられるかを記録することが可能であることを意味する。したがって、容器の上部に光学信号を送信することで、透明な血漿と全血との間の振幅の差異が最大化され、光学信号の振幅における変量を最大とする。容器の下部を通して光学信号を送信した場合、バフィーコートおよび赤血球が容器の底部に向かって移動し、液体をより不透明にしているため、全血を通る透過率は血液サンプルの不透明な部分から始まることになり、透過振幅は初期の血液分離段階中には減少することになる。したがって、振幅の変量が低減されることになり、この測定値の信頼度を、上部を通過する測定値と比較して低くする可能性がある。このような測定は実行されてもよく、分離段階についてのパターンを特定することもできるが、上部における測定の方が、液体の不透明度および/または透明度における変量がより大きいため、信頼度がより高いことが確認されている。
【0029】
あるいは、光学信号は容器を照射する光源であってもよく、光受信機は容器に反射する光の振幅を記録することができるカメラの形態であってもよい。液体が半透明である場合、カメラが受信する光学信号の振幅は低く、血漿の透光性が低減された場合、光学信号は増強される。したがって、このような測定の場合には、光学信号の振幅は、光学信号が容器を通過する実施形態の見地からは逆となり得る。したがって、振幅のパターンは、特徴抽出法等の、カメラが得た信号の画像解析または画像処理によって得ることができる。カメラは連続的画像または不連続画像を獲得し得、これらの画像は、コントローラの一部であってもよく、またはコントローラと共に動作してもよいパターン認識ソフトウェアに供給される。
【0030】
したがって、経時的な光学信号の振幅を連続的に記録することで、時間内の所与の瞬間において血液サンプルがどの状態にあるかを評価するために、遠心分離プロセスを監視することが可能となる。信号が所定のパターンに則る場合、血液サンプルが所望の状態にあると判定することが可能となり、これによって血液製剤を血液サンプル容器から収集することができる。したがって、血液サンプルが血液分画におけるその所望の段階に到達したとき、遠心分離を停止することができ、それにより、遠心分離の所望の段階前での中断、または遠心分離の必要以上の実行が起こらないことを確実にする。
【0031】
所定のパターンは、個々の数人の患者からの信号を解析することで定義することができ、光学検出において、少なくともフィブリン圧縮段階が開始されたことを示す類似のパターンを試行錯誤によって見つけることが可能である。
【0032】
さらに、信号をグラフ上においてライブで監視することが可能であり得、これにより、専門家は信号を解析して、凝固および/または血液分画が血液製剤の形成にとって十分なレベルに到達した正にその時間を見つけることができる。
【0033】
遠心分離は、すべてのフィブリンが容器の下部において圧縮されていることを確保するため、フィブリン圧縮段階の予備的部分を超えて継続されてもよい。重合段階中は、フィブロゲン分子が互いに結合し血漿をより不透明にさせるため、容器の上部における光学信号の振幅は、フィブロゲン重合段階中は減少することになる。続いて、フィブロゲン重合が完了すると、フィブリンの圧縮が容器の下部において始まり、これによって、高分子であるフィブロゲン(フィブリン)が血漿から除去されるため、フィブリン圧縮段階中には、光学信号の振幅における増加がもたらされる。遠心分離はさらに、フィブリン圧縮段階を引き継ぐ血漿構成成分の除去の段階まで継続されてもよい。これは、血漿中の構成成分が遠心力によって容器の底部に向かって移動するため、または例えば脂肪構成成分が血漿の表面に向かって浮動するように、構成成分がその密度に起因して容器の頂部に向かって移動し得るため、光学信号の振幅がなおもさらに増加されるためである。
【0034】
一実施形態において、所定のパターンは、フィブリン重合段階が開始されたことを示し得る。フィブリン重合段階は、血液製剤の組成の準備ができ始める段階として認識することができる。フィブリン重合は、後続の段階におけるフィブリンの圧縮を可能にする。それにより、残りの構成成分、血小板および白血球が、フィブリンに付着され得る。フィブリン重合段階は、血液サンプルにおいて、凝固プロセスが開始されるときに起こり、初期の血液分離が開始されたときに起こる。
【0035】
一実施形態において、所定のパターンは、信号の振幅が経時的に実質的な定常状態に到達したことを示す。本発明による血液分離の一部の場合においては、血液サンプルは、液体または血漿中のフィブリンの量が、血液サンプルにおけるフィブリン圧縮段階の開始にとって十分ではない場合があるような物理的特性を有し得る。患者が血液凝固を低減するような薬物治療を受けている場合、患者がフィブリノーゲンの産生を低減する肝疾患を有する場合、患者がフィブリノーゲンに対する遺伝的異常性または患者が有し得る他の物理的因子を有する場合に、このような事態が起こり得る。したがって、フィブリノーゲンがその重合を完了したとき、光学信号の振幅が経時的に変化しない場合があり、これは、プロセスが完了し、フィブリン圧縮段階が始まらないことを示すものである。したがって、この時点で遠心分離を停止してもよい。
【0036】
一実施形態において、所定のパターンは、少なくとも血液サンプルのフィブリン圧縮段階が開始されたことを示す。フィブリンに基づく血液製剤の製造にとって、血液遠心分離のフィブリン圧縮段階が遠心分離中に開始されることは有利であり得る。フィブリン圧縮段階によって、白血球および血小板等の全血の特定の構成成分がフィブリンに付着するような方式で圧縮されることが確保される。したがって、フィブリン圧縮段階が始まるまで遠心分離プロセスを確実に継続するように、所定のパターンは、圧縮段階がいつ開始されるかを示すべきである。これは、遠心分離プロセスの中断の準備をするために、パターンの特定の部分を認識するようにコントローラを構成できるようにするためである。
【0037】
別の実施形態において、赤血球は血漿から分離されたが、白血球および血小板は血漿からまだ分離されていないときに、遠心力を低減させてもよい。この遠心力の低減によって、フィブリンの重合段階中に白血球および血小板を血漿内に残すことができ、それによって、重合後のフィブリンによってそれらは包囲され得、したがってフィブリンと共に血漿中に包埋され得る。したがって、フィブリンの圧縮が行われるとき、白血球および血小板をフィブリン層と共に絡み合わせることができる。血漿が血漿中に白血球、血小板の両方を含む場合における遠心分離中の血漿の光学指標は、フィブリン重合前の血漿の透光性が低いという違いを除いて、白血球および血小板が分離された場合における光学信号の指標と類似する。フィブリンの重合中、光学指標は、血漿の透光性がフィブリンの重合中徐々に減少するという類似のパターンを辿る。本発明の一実施形態において、本遠心分離機は、少なくとも2つの光送信機および2つの光受信機を備え得る。より多数の光送信機および光受信機を導入することによって、2つ以上の光学信号を、血液サンプル容器を通して送信することが可能となり、第2の信号は振幅測定に対して冗長性を提供し得るため、振幅測定の信頼度を高めることになる。したがって、コントローラは、遠心分離中、経時的に両方の信号の振幅を監視するように構成してもよく、この場合、所定のパターンが両方の信号に対して適用でき、または所定のパターンを各信号について構築してもよく、この場合、パターンは、両方の光学信号に対して適用される技術的実験に基づいて構築することができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、2つの光送信機は、レセプタクルおよび/または血液サンプル容器の2つの異なる部分に光学信号を送信するように適合され得る。容器の異なる部分を通る光学信号を送信するように光送信機を適合させることによって、光学信号は、異なる位置における血液分画の異なる段階を測定するために活用することができる。したがって、光学測定値のうちの1つが、その血液分画がどの段階にあるのかを示すある特定の傾向を示し、一方で他方の測定値がそのような傾向を示さなかった場合、その段階は部分的にしか完了しておらず、容器全体では完了していないことが示され得る。したがって、第2の測定値は、コントローラが2つの振幅測定値のパターンに基づいて所望の段階を認識可能であることを確保するように、第1の測定値を補うために使用することができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、2つの光送信機は、レセプタクルおよび/または血液サンプル容器の中心長手方向軸を通る光学信号を送信するように適合され得、第1の光学信号は、レセプタクルおよび/または血液サンプル容器の第1の部分を通過するように適合され、第2の光学信号は、レセプタクルおよび/または血液サンプル容器の第1の部分に対して遠位の部分を通過するように適合される。したがって、光学信号は、容器の2カ所以上の異なる高さにおいて、容器の内容物の透光性を測定するように適合される。したがって、各光学信号は、異なる状態の複数の段階を記録することが可能であり得る。これは、血液分画の段階が、遠心力の方向、すなわち容器および/またはレセプタクルの名縦方向軸に対して平行に起こるためである。これは、すなわちフィブリン圧縮段階において、血漿中のフィブリンが容器内で下向きに押しやられ、それによって容器の頂部における血漿が、容器のより遠位の部分における血漿よりも早く半透明になり始めるという点において確認することができる。したがって、コントローラが、遠心分離中の任意の特定の時間において血液サンプルがどの段階にあるかをより高い信頼度で記録し得ることを確保するように、2つの光学信号の振幅を活用することができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、レセプタクルは、光学信号が半径方向でレセプタクルを通過することを可能にする貫通開口部を備え得る。多くの遠心分離機において、ロータは、遠心分離されるべき容器を受容するいくつかのレセプタクルを備え付けられる。遠心力は相当な力であるため、容器が遠心分離中にレセプタクルから横向きの運動、または遠心力に対して平行(固定軸に対して垂直)な運動でレセプタクルから外れる可能性がないことを確保するために、容器の少なくとも底部を包囲するようにレセプタクルを適合させることが有利であり得る。したがって、容器または容器の少なくとも一部分を覆うような方式でレセプタクルを形成してもよく、光学信号がそこを通過し得ることが有利である。したがって、レセプタクルは少なくとも1つの貫通開口部を伴って提供されてもよく、この貫通開口部によって、光学信号は容器内へとレセプタクルを通過し、容器の反対側を通過し、それにより光学受信手段によってこの光学信号を測定することができる。貫通開口部は、任意の形状、穴、スリット、または材料の任意の除去の形態であってもよく、唯一の要件は、光学信号がレセプタクルの壁を通過し、レセプタクルおよび/またはレセプタクル内部に配置される容器の内部の液体サンプルを測定することが可能であるという点のみである。あるいは、貫通開口部は透明なカバーで覆われてもよい。これにより、レセプタクル内部で例えば血液サンプル容器からの漏出が起こった場合でも、このカバーによってレセプタクルが流体密封および/または液体密封であることを確保することができ、漏出がレセプタクルから本遠心分離機の内容積へと移動しないことが保証される。
【0041】
あるいは、レセプタクルは、レセプタクルの一方の側面から他方の側面への光学的経路を提供し、それにより光学信号がレセプタクルの内容積を通過できるような方式で形成されてもよい。これは、透明なポリマー、ガラス、または他の種類の好適な材料等の透明な材料でレセプタクルを形成することによって達成できる。
【0042】
本発明はまた、血液サンプルを遠心分離する方法にも関し、本方法は、回転軸を有するロータ、重力軸を有する血液サンプル容器用の少なくとも1つのレセプタクル、ロータの回転速度を制御するためのコントローラ手段、光学信号を送信するための光送信機、光学信号の振幅を記録するための光受信機を備える遠心分離機を提供するステップ;レセプタクル内に血液サンプル容器を配置するステップであって、血液サンプル容器が頂端および底端を備え、かつ中心軸を有し、レセプタクルの重力軸が、血液サンプル容器の中心軸に対して実質的に平行である、配置するステップ;遠心分離プロセスを開始するステップであって、レセプタクルの重力軸が、遠心分離機の回転軸に対してある角度をなし、かつ遠心力が、まず容器の頂端と交差し、続いて底端と交差する方向に伸びる、開始するステップ;血液サンプル容器を通って、レセプタクルの重力軸に対してある角度をなす方向で光学信号を送信するステップであって、光学信号が、血液サンプルの上相および/または血漿を通って送信される、送信するステップ;光学信号の振幅を記録するステップ;経時的な光学信号の振幅が所定のパターンを満たし、少なくとも血漿のフィブリン重合段階が開始されたことを示す場合、遠心分離プロセスを中断するステップを含む。
【0043】
これは、血液サンプルをある期間にわたって遠心分離し、かつ光学信号を血液サンプル中に送信する場合、信号の振幅を測定することが可能であり、この経時的な測定値に基づき、任意の所与の時間において血液分画のどの状態に血液サンプルがあるかを測定値が示すことを意味する。測定値により、血液サンプルの透明性の度合いまたはその欠如が示され、経時的な振幅測定値の比較により、血液サンプルの透明度がより高くもしくは低くなっているのか、または振幅測定値が所与の時間にわたって定常状態にあるのかが示される。
【0044】
したがって、本発明による遠心分離機の開示に関して上で考察されるように、本方法は、血液サンプルがその所望の状態にいつ到達したか、例えば遠心分離中、いつフィブリン圧縮段階に到達するかを予測または認識するために使用することができる。
【0045】
血液サンプル容器の頂端は、閉鎖することができる開口部、または閉鎖するべき蓋を有してもよく、血液サンプルが容器内に導入された後、血液サンプル容器が密閉された状態で環境内に閉鎖されることを確保する。容器の底端は、血液サンプルの濃密な部分、すなわち遠心分離中に底部に向かって沈む血液サンプルの一部を受容するように適合される容器の部分として認識することができる。遠心分離が開始されるとき、赤血球が容器の底部に向かって沈み、バフィーコートが赤血球の上側に集まり、血漿がバフィーコートの上側に位置付けられるような方式で血液サンプルの分画が起こるように、遠心力が容器の頂端から底端に向かって進むようなやり方で、遠心分離中、血液サンプル容器を配向させることが好ましい。したがって、遠心力は、血液サンプル中のより濃密な粒子を底部に向かって押しやる。したがって、血液サンプルが本方法に従って位置付けられるとき、血漿は、血液サンプル容器の、容器の底端よりも上側の部分に常に存在することになり、容器が血液サンプルで充填される場合には容器の上部に存在する可能性が最も高い。
【0046】
したがって、血液サンプル容器の、血漿が分画中に現れることになる部分を通して光学信号を送信することで、遠心分離中の血漿の透光性を測定することが可能となる。
【0047】
本遠心分離機は、重力軸が遠心分離機の回転軸に対して実質的に平行である位置から、遠心分離機の回転軸に対して実質的に垂直である位置まで移動するようにレセプタクルを適合することができる種類のものである。したがって、本遠心分離機は、揺動バケット(レセプタクル)を有するバケット遠心分離機であってもよく、あるいはバケット(レセプタクル)が遠心分離機の回転軸に対してある特定の角度をなすように固定され得る、固定角度型遠心分離機であってもよい。
【0048】
本発明によれば、遠心分離プロセスの中断前において、遠心分離プロセスは相違してもよい。したがって、遠心分離の速度は赤血球が血漿から分離された場合に低減してもよく、この場合、フィブリンの重合が確立されるまで、より低いRPM(速度)でプロセスを継続してもよい。フィブリンが重合したら、フィブリンの圧縮効果をもたらすために、RPM(速度)を増加させてもよい。したがって、光学信号の振幅は、中断の前においては、遠心分離の速度を変更するために活用することができ、フィブリン重合が完了したとき、および/またはフィブリン圧縮が完了したときに、遠心分離プロセスを中断してもよい。本遠心分離機の回転軸に対するレセプタクルの角度は、30°〜90°であり得る。好ましい遠心分離方法は、レセプタクルが回転軸に対して90°の角度をなす場合、またはレセプタクルが回転軸に対して実質的に垂直である場合であり得ることが分かった。一部の遠心分離機は固定された角度をなすレセプタクルを有し得、この角度は30°〜90°の間のどこでもよい。
【0049】
一実施形態において、所定のパターンは、経時的に、実質的に変化しない振幅測定値を含み得、これが遠心分離プロセスの中断を引き起こす。血液サンプルの血液分画中、血液サンプルを無制限の時間、遠心分離するという前提の下においては、血液サンプルは少なくとも4つの段階を経る可能性がある。これらの段階は、血液の分離(血漿、赤血球、白血球、血小板)、フィブリン重合、フィブリン圧縮、および他の血漿構成成分の除去として認識することができる。血液サンプルが他の血漿構成成分の除去の段階にあるのに十分な時間遠心分離された場合、信号の振幅は、血漿中の他の構成成分が血漿から追い出される時点まで増加する。これらの構成成分が血漿中から出ると、光学信号の振幅は実質的に安定し、すなわち、光学信号の振幅における有意な変化が経時的に起こらない(定常状態)。したがって、信号が定常状態に到達した時点までで、フィブリン圧縮および他の血漿構成成分の除去が終了していることが分かる。したがって、少なくともフィブリン圧縮段階の開始にとって十分なほど血液サンプルを遠心分離したことを確保するために、遠心分離は、フィブリン構成成分の除去が完了したとき、すなわち、振幅測定値が定常状態に到達したときに遠心分離を中断することによって停止され得る。
【0050】
一実施形態において、所定のパターンは、光学信号の振幅における第1の増加を含み得る。本発明において定義される、振幅における第1の増加とは、血液分画のフィブリン圧縮段階中における光学信号の振幅の増加に関する。振幅の増加は、重合したフィブリンが容器の底部に向かって血漿から追い出され始め、結果として血漿がより透明になるときに始まる。したがって、振幅における第1の増加は、フィブリン圧縮中、経時的により強くなっていく光学信号の測定値として認識することができる。
【0051】
振幅における第1の増加がコントローラによって記録されるときには、フィブリン圧縮段階が開始されているということが実験から分かっており、フィブリンが血小板および/または白血球に対して圧縮され、それによって血小板および/または白血球をフィブリンと共に付着させるにつれ、血液製剤が形を成し始める。したがって、振幅における第1の増加は、血液サンプルから血液製剤を提供するために、遠心分離を停止することができるという指標であり得る。
【0052】
用語「振幅における第1の増加」の使用は、振幅における第1の増加が必ずしも最初に記録された振幅における経時的な増加である必要はないため、振幅における最初の時間的な増加を示すものではない。第1の増加という用語は、振幅におけるある特定の増加の標識を示すに過ぎず、任意の他の手段で特定されてもよい。
【0053】
一実施形態において、所定のパターンは、光学信号の振幅における第2の増加をさらに含み得る。振幅における第2の増加は、振幅における第1の増加に先んじて起こってもよく、血液サンプルが、初期の血液分離の血液分画段階にあることの指標として認識することができる。この振幅における増加は、血液の構成成分が分離されるとき、および全血が容器の上部において血漿の透明な溶液に分離されるときに起こる。したがって、振幅における増加は、光学信号が相対的に透明である液体の部分を通って移動したことを示す。しかしながら、振幅における第2の増加は、容器内部においてフィブリン圧縮段階が開始されていることを示すために、振幅における増加が時間的に後に続かねばならない。
【0054】
一実施形態において、光学信号の振幅における第2の増加の後に、振幅における第1の減少が続く。振幅における第1の減少は、振幅における第2の増加に続き、透明な血漿中においてフィブリン重合が開始されたことを示す。フィブリン重合は、透明な血漿をより不透明にさせ、これにより、より少ない光学信号しか容器の内容物を通過しなくなるため、光学信号の振幅の減少がもたらされる。振幅における減少は血漿内部でのフィブリン密度に関連し得、振幅が所定のレベルに到達した場合または振幅の変化率(増加または減少)が所定のレベルに到達した場合、2つの信号のうちのどちらを使用しても、遠心分離中に十分なフィブリンが形成されたと結論付けることができるため、プロセスは停止され得る。
【0055】
振幅測定の時間的観点からは、振幅における第1の増加は、重合したフィブリンがフィブリン圧縮段階において圧縮されるため、振幅における第1の減少の後に続く。
【0056】
パターンを無視するようにコントローラをプログラムすることによって、または振幅における第2の増加が終了する時点までは振幅測定を開始しないことによって、コントローラが振幅における第2の増加または振幅における第1の減少に対して反応しないような方式でコントローラを構成できることを理解されたい。コントローラが振幅における第1の増加に対する測定値に対してその最も早い段階で反応するような方式でコントローラをプログラムすることが、本発明の本開示に基づけば明白であり得る。
【0057】
一実施形態において、所定のパターンは、光学信号の振幅における第3の増加をさらに含み得る。振幅における第3の増加は、血液サンプルが血液分画の第4段階、すなわち血漿からの他の構成成分の除去にあることを示すために使用され得る。したがって、血漿中の粒子が容器の底部に向かって追いやられるとき、または血漿の表面に上昇するとき(例えば、脂肪および脂質)、血漿はフィブリン圧縮段階におけるよりもさらに透明となり、これによって振幅が増加する振幅測定値がもたらされる。第3の振幅の増加は第2の振幅の増加の後に続くが、短い中間の測定値が存在し得、ここでは、振幅における第2の減少および/または振幅における相対的に緩徐な増加が振幅における第3の増加に先行する。
【0058】
一実施形態において、本遠心分離機によって血液サンプルに対して印加される遠心力は、少なくとも400G、またはより好ましくは少なくとも600G、またはより好ましくは少なくとも800G、またはより好ましくは少なくとも1000Gである。印加される遠心力はさらに、全血に対して作用する重力、例えばgよりも少なくとも1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、またはさらには20000倍大きくてもよく、あるいは印加される遠心力は、上述の数の組み合わせによって定義することができる任意の間隔内である。遠心力が印加される時間は振幅測定値に左右され得、遠心分離が所望の製剤をもたらしたとき、コントローラが遠心分離を停止する。必要な遠心力についての教示は、国際公開番号WO2010/020254および/または国際公開番号WO2012/037942に見出すことができる。
【0059】
一実施形態において、血液サンプルの遠心分離は再開され得、遠心分離は、血液サンプル容器内の浮動デバイスが光学信号と交差する際に、光学信号が振幅における低減を記録するまで継続され得る。国際公開番号WO2012/037942は、浮動デバイスを有する容器について教示しており、この浮動デバイスは、一表面において血液製剤を収集するように適合されている。本発明によれば、本遠心分離機または本方法は、類似するデバイスと協働で使用することができ、浮動デバイスは、第2の遠心分離中に解放される。容器の下部から浮動デバイスが解放されると、浮動デバイスはデバイスの上部に向かって上向きに、かつデバイスの頂部に向かって前方へ移動する。したがって、光学信号の振幅測定は、振幅測定値が短い期間で急速に減少するため、浮動デバイスが光学信号といつ交差するかを記録することが可能である。したがって、振幅が急速に減少する場合、これは、浮動デバイスが頂部へと向かっている途中であることを示しているため、第2の遠心分離プロセスを停止することができる。
【0060】
本発明の意味において、振幅測定値の定常状態とは、信号の振幅が有意に変化していない経時的な測定値、すなわち振幅における増加率または減少率が比較的低く映る場合として定義することができる。
【0061】
本発明の意味において、本遠心分離機に関する本発明の開示は、本方法に関する開示に対して同等に適用することができ、逆もまた然りである。
【0062】
本発明による本遠心分離機に関して開示される技術的特色は、本発明による本方法において実装することができ、逆もまた然りである。
【0063】
光学信号は任意の様式で得られるが、但し、放射される光学信号および測定される光学信号は血液サンプルの内容物の表現であり、特に特定の領域中の血液サンプルの透光性の表現であることを条件とする。本発明の目的は、遠心分離プロセスを停止するのに最適な時間を得るため、かつ血液製剤の入手を可能にするために、血液分画の状態の測定値を得ることである。
【0064】
本発明の一実施形態において、国際公開番号WO2012/037942に示されるものと類似する血液サンプル容器が使用される場合、本遠心分離機または本方法は、浮力デバイスが容器の頂部に向かって浮動するのを可能にするため、最初の中断の後に再開されるように適合され得る。
【0065】
本発明は、図面を参照しながら下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は、本発明による遠心分離機のロータの上面図である。
図2図2は、図1の軸II−IIに沿って取った、1つの光送信機を用いる遠心分離機の断面図である。
図3図3は、図1の軸II−IIに沿って取った、2つの光送信機を用いる遠心分離機の断面図である。
図4図4は、1つの光送信機および1つの光受信機を備える遠心分離機を用いた、血液サンプルの血液分画の測定データを表す図である。
図5図5は、2つの光送信機および2つの光受信機を備える遠心分離機を用いた、血液サンプルの血液分画の測定データを表す図である。
図6図6は、図4に開示される測定データおよび図5に表される測定データに類似する、フィブリン圧縮段階がまだ開始されていない血液サンプルの血液分画の測定データを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、遠心分離機1のロータ2の上面図であり、ロータは、固定軸Aの周囲を回転可能である。ロータには、ロータ2に取り付けられた4個のレセプタクル、3’、3’’、3’’’、3’’’’(本発明に従ってこれより多くまたは少なくてもよい)が備え付けられる。これらのレセプタクルはヒンジ4を介してロータに取り付けられる。このヒンジによって、レセプタクルはロータ2の放射軸に対して垂直な軸の周囲を回転することができ、それにより、これらのレセプタクルは、ロータが静止している場合のレセプタクルの鉛直位置(3’、3’’’で示される)から、ロータが遠心分離中に矢印Bによって示される方向のうちの1つの方向に固定軸Aの周囲を回転している際のレセプタクルの水平位置(3’’、3’’’’で示される)まで回転することができる。
【0068】
レセプタクル3’’’’の実施形態において、レセプタクル3’’’’には貫通開口部5が備え付けられる。この貫通開口部によって、血液サンプルを保持するために使用され得る容器6を受容するように適合されている、レセプタクル3の内容積へのアクセスが可能となる。貫通開口部5によって、(レセプタクルの長手方向軸に対して垂直な)半径方向における、レセプタクル3’’’’の内容積へのアクセスがもたらされ得る。レセプタクルの反対側には、第2の貫通開口部(図2に示される)を備え付けることができ、これにより、レセプタクル3’’’’の内容積を経由してレセプタクル3’’’’の側壁7を貫通する見通し線がもたらされる。
【0069】
これもまた図1に示されている異なる実施形態のレセプタクル3’’においては、レセプタクル3’’には2つの貫通開口部7’、7’’が備え付けられてもよく、これらの貫通開口部により、2つの別個の光学信号の送信が可能となり、これらの光学信号は、図3に示されるように、レセプタクルの内容積を通り、レセプタクルの反対側の対応する開口部から出る。
【0070】
図2は、図1の軸II−IIに沿って取った、1つの光送信機を用いる遠心分離機の断面図である。ロータ2は、固定軸Aと平行なロータ軸16の周囲を回転する。この回転軸は、ロータ軸16をロータハブ15に取り付けるベアリングに対して、回転可能に取り付けられている。ロータハブは電動モータ等の駆動手段によって駆動されてもよく、この電動モータは、ロータハブ15に対して不定または一定の駆動力を提供するように設置され得る。ロータ2が動作しているとき、レセプタクル3は、図1に示されているその受容位置、鉛直位置から回転軸Aに対して垂直な伸長位置へと動き、それにより、レセプタクルの近位端13は回転軸に向かう方向に面し、一方で遠位端14は回転軸から離れる方向に面することになる。
【0071】
遠心分離機1は光学信号源/送信機11を備え付けられ、この光送信機11は、それに対して鉛直な方向に位置付けられ得る光センサ/受信機12の方向に光学信号を送信する。光学信号は、遠心分離機のある領域に対して送信され、ここでは、レセプタクルが光学信号17を通過させる。先述したように、レセプタクルには、レセプタクル3の側壁に貫通開口部8を備え付けることができ、これによって光学信号はレセプタクルの内容積9に入り、レセプタクル3の側壁の反対側にある貫通開口部5を通ってレセプタクル3から出て、それにより光学信号17がレセプタクル3の内容積9を通過することが可能となる。
【0072】
したがって、容器6が血液サンプル等の液体で充填され、蓋10で閉鎖され、実質的にレセプタクル3の内容積9内に位置付けられている場合、光学信号17は、容器6が位置付けられているレセプタクルの内容積と交差する。容器に、例えば透明にすることで光学信号に対して透過性である側壁を持たせることによって、信号17は、容器6および信号17が通る領域中の容器の内容物を通過することになる。したがって、信号が透明な物体と交差する場合、センサ/受信機12によって測定される信号の振幅は相対的に高く、一方で信号が不透明な物体と交差する場合、信号の振幅は、透明な物体を通る場合の振幅と比較して低減されることになる。
【0073】
遠心分離中のレセプタクル内部の物体の透明度の連続的測定値を提供するために、遠心分離中、光学信号をレセプタクル3および容器6を通して送信することができる。したがって、血液分画中に起こる変化等の、物体の透明度が経時的に変化する場合には、受信される信号は任意の所与の時間における物体の透明度を反映することになる。光学信号の振幅についての連続的な光学測定値を提供することによって、内容物の透明度が高くなっているか、低くなっているか、または定常状態にあるかを検出することが可能となる。
【0074】
光受信機および/または光送信機の位置付けは、本発明に従って変更することができるが、但し、光学信号が、測定されるべき液体または血液サンプルを通過することが確保されていることを条件とする。したがって、送信機または受信機の位置付けは逆であってもよく、あるいは光学信号はある角度をなして液体を通過するか、鏡を用いて反射されるか、または本実施形態に対して別様に変更される。
【0075】
図3は、図1の軸II−IIに沿って取った、2つの光送信機11、11’および2つの光受信機12、12’を用いる遠心分離機の断面図である。この実施形態において、2つの光学信号17、17’は、遠心力の方向沿いの異なる位置において、レセプタクル3および/または容器6を通過するように適合される。したがって、別個のセンサ/受信機12を用いてレセプタクルの異なる領域において光学信号17の振幅を測定することが可能であり、これによって、コントローラは、2つの異なる測定値を活用して、遠心分離中の血液分画が最適な段階にあるかどうかを評価することができる。その他の点では、図3に示される遠心分離機は図2の遠心分離機と同様に動作され、これらの信号の出力は図5に関連して開示されている。
【0076】
図4は、図2に示される遠心分離機と同様の、1つの光送信機および1つの光受信機を備える遠心分離機を用いた、血液サンプルの血液分画の測定データを表す。図4のグラフ表示は、横軸に分単位の時間尺度を、左側の縦軸に透過率%(光学信号の振幅)の尺度を、ならびに右側の縦軸にRPM(毎分回転数)尺度を示す。グラフに表されているデータは、光学信号の振幅の測定値Xおよび遠心分離速度Zである。
【0077】
光学信号は、測定される領域から離れる方向で下向きに全血の構成成分が押しやられる領域にあるように、血液サンプル容器の上部に向かって方向付けられた。測定される領域は、遠心分離中に血漿が現れる領域である。
【0078】
遠心分離速度は、測定の開始(≒0分)から測定の中断(≒19.7分)までおよそ4400RPMに維持した。
【0079】
第1の期間は0分〜7.85分であり期間の最後は線pで示されるが、先に考察したように、この第1の期間において血液サンプルは分画され、血液分離段階にある。データによれば、血小板、赤血球、および白血球が容器の下部に向かって押勢され、それにより全血/血漿の透明度が上昇するにつれ、測定された血液の透明度は上昇し、これはデータの透明度における上昇で表されている。したがって、第1の期間の最後には、信号の透光性はこの期間中で最高になり、ここで第1の段階は、第2の期間として表される第2の段階と置き換わる。
【0080】
7.85〜11.75分である第2の期間においては、血漿中のフィブリノーゲンが重合を始め、血漿の透明度を下げ(より不透明にする)、これによって、信号の振幅がおよそ90%〜20%まで減少されるまで、透過信号の振幅は有意に低減される。フィブリノーゲンがフィブリンに重合すると、血漿中のフィブリンの含量に起因して、血漿の透光性は低減される。血液サンプル中の脂肪が血漿の透光性を低減する可能性があり、また初期のフィブリン濃度が測定値に影響を及ぼす場合があるため、振幅における変化は患者毎に異なり得る。しかしながら、血液サンプルは遠心分離期間中に透光性が上昇または低下し、振幅の増加、振幅の減少、または定常状態の形態での透光性の表示は、血液分画の段階の特定にとって重要であり得る。
【0081】
フィブリン重合のこの段階が開始したときまたは終わるとき、特に血漿中のフィブリン含量が低減されている場合は、遠心分離プロセスを停止してもよい。そのような状況が図6に示されており、ここでは、フィブリン重合の後には次の段階、すなわちフィブリン圧縮段階が続いていない。
【0082】
フィブリンが血漿中で形成されたとき、フィブリンは容器の底部に向かって押しやられ始め、フィブリン圧縮の第3段階が開始される。この第3の段階は、前の段階の終わりであり、線qで示されているおよそ11.75分に始まり、この段階は線rで示されるおよそ12.5分で終了する。この段階では、フィブリンは容器の下部領域において圧縮され、血漿中の透明度は、血漿からフィブリンが除去されるにつれて急速に上昇する。
【0083】
血液分画の第4の段階は、グラフにおいて線rで示されるおよそ12.5分に始まり、線sで示されるおよそ17.5分まで続く。この段階では、遠心力が構成成分を容器の下部に向かって追いやるため、または構成成分が密度差に起因して表面に向かって上昇するため、血漿中の残りの構成成分の一部が血漿から除去されていくにつれて血漿はより透明になる。したがって、この段階は、残りの構成成分が血漿から徐々に移動していくにつれて、送信された信号の振幅が増加していくことで認識することができる。
【0084】
第4段階の後には、振幅の測定値は定常状態に入り、血漿の透光度は実質的に一定のままである。
【0085】
図4に表される測定は、1人の試験対象からの血液サンプルに対して行われている。血液分画の各段階が、血液サンプルの透光度の測定値によって表され得ることが確認できる。しかしながら、血液を分画するのにかかる時間に関しては対象毎にかなり異なるため、信号は個人間で異なる場合がある。このばらつきの原因は、生理学的、薬学的、物理的原因であり得、または他の異なる原因が存在し得る。しかし、抗凝固剤処置していない血液サンプルを分画する場合、および血液が凝固可能である場合、これらの段階は大部分の対象において同様である。血液サンプル中のフィブリン濃度が、フィブリン圧縮段階を開始させるほどには十分に高くないという例外が存在する場合もある。血液サンプルを遠心分離する時間が過剰であること、または代替的に時間が短すぎることを防止するために、本発明に従う光学測定値を用いて、これらの段階を認識することができる。
【0086】
所定のパターン認識アルゴリズムを用いることで、または他の手段を用いることでこれらの段階を認識するようにコントローラを構成することによって、血液サンプルが任意の所与の時間にどの段階にあるかを自動的に評価すること、および血液サンプルが所望の段階にあるときに遠心分離を停止することが可能となる。
【0087】
図5は、図3に示される遠心分離機と同様の、2つの光送信機および2つの光受信機を備える遠心分離機を用いた、血液サンプルの血液分画の測定データを表す。図5のグラフ表示は図4に示されるものと同様であり、Xはレセプタクル/容器の上部に位置付けられている光送信機/センサからのデータを表し、一方でYはレセプタクル/容器の下部から測定を行うように適合されている光センサからのデータを表し、Zは遠心分離速度を表す。
【0088】
図5では、上部での測定Xからのデータが図4に表される信号とまさに同じ傾向を示していることが確認できる。この信号と先の信号との差異は、血液サンプルは図4のサンプルと同じ遠心分離機、同じ速度、および同じ条件下で遠心分離されたことから、両方の測定における遠心力は同じであるにも関わらず、複数の段階が遥かに短い時間で完了しているという点である。線pで示される第1の段階の最後はおよそ4.75分で終了しており、第2の段階は線qで示されるおよそ6.8分で終結し、第3の段階は線rで示される7.2分で終結し、第4の段階は線sで示される7.7分で終了している。
【0089】
したがって、図5の血液サンプルは図4に示される測定よりも早い時間に点sに到達しており、これは、図4の線sによって示される第4段階の終わりに到達するのにかかった時間に相当する期間、遠心分離を継続していたならば、著しく過剰な時間が使われていたことを意味する。
【0090】
レセプタクル/容器のより低い位置に位置付けられている第2の信号Yは、信号Xと実質的に相関関係にあるが、時間的にずれるように現れる。したがって、信号Yは信号Xと同じ傾向を示すが、第1の段階(線pまで)における変化を示すのが遅く、第2の段階では透明度の振幅が第1の信号の場合よりも低い振幅まで下がり続け(q’)、第3段階の終わり(r’)および第4段階の終わり(s’)は、上部での信号Xと比較して時間的に僅かにずれている。
【0091】
しかしながら、第2の信号Yは、第1の信号と同じ振幅における増加および減少を示しており、これは、このような信号をパターン認識の冗長性として活用できること、またはこのパターン認識を、両方の信号が所定のパターンを満たした場合に遠心分離を中断するように構成可能であることを意味する。
【0092】
図6は、図3に示される遠心分離機と同様の、2つの光送信機および2つの光受信機を備える遠心分離機を用いた、血液サンプルの血液分画の測定データを表す。この状況では、光学信号Xの振幅は、線pが信号Xと交差する、信号Xのピークに到達するまで増加する。ここでは、初期の血液分離が起こり、血漿が相対的に透明となる。続いて、点pの後にはフィブリン重合が始まり、信号の振幅は、線qが信号Xと交差する、低点に到達するまで減少する。この状況では、血液サンプルの物理的特性により、後続の段階であるフィブリン圧縮は開始されておらず、遠心分離は、信号が定常状態に到達したときに停止してもよく、ここではフィブリンが血漿中に留まっている。したがって、血液製剤を入手するためには、フィブリン重合段階が開始および/または完了することで十分な場合があり、ここでは、フィブリンが重合したときに遠心分離は停止される。したがって、フィブリンの圧縮を得るために、国際公開番号WO2012/037942に開示されるフィルタデバイスを用いて「手動で」フィブリンを圧縮してもよい。ここでは、フィルタデバイスが血液サンプル中を浮上し、フィブリン、血小板、および白血球を収集し、血液サンプル中をこのフィルタデバイスが上昇する際にフィブリンを圧縮する。代替的に、フィブリンの圧縮を手動で行ってもよい。
測定されるサンプルの透明度における変化を反映するのは、振幅測定値の経時的な変化であるため、図4、5、または6に示される測定値の具体的な振幅または尺度は、本方法とは関連しない。
【実施例】
【0093】
本発明に従って、以下の実施例に従う遠心分離機、およびその遠心分離機を用いる方法が提供されている。
【0094】
Eppendorf遠心分離機を、白色LEDエミッタを遠心分離機コンパートメントの底部領域に配置し、光センサを遠心分離機コンパートメントの上部領域に配置するように改造した。遠心分離カップ(レセプタクル)を、遠心分離カップに開口部を設置して、カップがその伸長状態(水平な位置)にある場合にLEDから光センサまで光がカップを通過することができるように改造した。
【0095】
カップにおける開口部がLEDエミッタと光センサとの間で整列する角度位置にある場合にLEDエミッタが点灯するように、遠心分離機の回転と光を連動させた。これにより、光は、底部の開口部を通過し、カップの内容積を通り、頂部の開口部に向かって出て、光エミッタに向かうことになる。
【0096】
したがって、光センサからの受信した信号は、遠心分離プロセス中にカップを通過する光を表す不連続な信号となる。したがって、光は、カップの開口部を通過可能であるときにのみ放射されたため、信号をトリミングして適切な部分を特定する必要はない。
【0097】
遠心分離機には4つのカップを備え付けた。これら4つのカップは、4つのカップ間での角度が約90°となり、それ故に遠心分離機の回転軸の周囲で平衡が保たれるように、回転軸の周囲において互いに正反対の対として配置した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6