特許第6578360号(P6578360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578360
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】一軸型構造体のための流入輪郭
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/06 20060101AFI20190909BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20190909BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   F01D9/06
   F01D25/24 G
   F01D25/00 H
   F01D25/24 T
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-527240(P2017-527240)
(86)(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公表番号】特表2017-536499(P2017-536499A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015076312
(87)【国際公開番号】WO2016078984
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年9月22日
(31)【優先権主張番号】14194077.5
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・ヘッカー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・キューン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ケストナー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・トドロフ
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−216313(JP,A)
【文献】 特開2007−113572(JP,A)
【文献】 特開2007−009820(JP,A)
【文献】 特開2012−122407(JP,A)
【文献】 特開2010−209857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/06
F01D 25/00
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線(2)周りに回転可能に支承されたロータと、当該ロータの周囲に設けられたハウジングと、前記ロータと前記ハウジングとの間に形成された流路と、を含み、さらに流入領域(1)を含む蒸気タービンであって、前記流入領域は単独の流入接続部(9)を有するとともに流入環状ダクト(3)内に出口を有し、
当該流入環状ダクト(3)は概ね環状ダクト断面(A3)を有するとともに、流体力学的に前記流路と接続されており、
前記流入環状ダクト(3)は前記回転軸線(2)周りに形成されており、
前記流入接続部(9)は流入断面(A1)を有し、当該流入断面を通じて、作動中に流れ媒体が流れ方向において流れ、
前記流入断面(A1)は流れ方向において最大断面(A2)に拡大し、続いて前記環状ダクト断面(A3)に縮小しており、
以下の式
1.1<A2/A1<1.7
が成立する蒸気タービン。
【請求項2】
前記流入環状ダクト(3)は、概ね前記回転軸線(2)周りに回転対称に形成されている請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記流れ方向(16)は、前記流入接続部(9)の領域内で、前記流入環状ダクト(3)に対して概ね接線方向に形成されている請求項1または2に記載の蒸気タービン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸気タービンであって、以下の式
0.7<A3/A1<1.0
が成立する蒸気タービン。
【請求項5】
蒸気タービンの流入領域(1)内の流れ状況を最適化するための方法であって、
前記蒸気タービンは、回転軸線(2)周りに回転可能に支承されたロータと、当該ロータの周囲に設けられたハウジングと、形成された流路と、を含み、さらに流入領域(1)を含み、前記流入領域は単独の流入接続部(9)を有するとともに流入環状ダクト(3)内に出口を有し、
当該流入環状ダクト(3)は概ね環状ダクト断面(A3)を有するとともに、流体力学的に前記流路と接続されており、
前記流入接続部(9)は流入断面(A1)を有し、当該流入断面を介して作動中に、流れ媒体が流れ方向において流れ、
前記流入断面(A1)は流れ方向において最大断面(A2)に拡大され、続いて前記環状ダクト断面(A3)に縮小され
以下の式
1.1<A2/A1<1.7
が成立する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸線周りに回転可能に支承されたロータと、当該ロータの周囲に設けられたハウジングと、前記ロータと前記ハウジングとの間に形成された流路と、を含み、さらに流入領域を含む流体機関に関し、前記流入領域は流入接続部を有するとともに流入環状ダクト内に出口を有し、当該流入環状ダクトは概ね環状ダクト断面を有するとともに、流体力学的に前記流路と接続されており、前記流入環状ダクトは回転軸線周りに形成されており、前記流入接続部は流入断面を有し、当該流入断面を介して作動中に、流れ媒体が流れ方向において流れる。
【0002】
本発明はまた、流入接続部を流入環状ダクトに結合するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
蒸気タービンは概ね、回転軸線周りに回転可能に支承されるとともに動翼を含むロータと、案内翼を備えて形成されたハウジングと、を含み、ロータとハウジングとの間に流路が形成されており、当該流路は案内翼と動翼とを包囲する。蒸気の熱エネルギーは、ロータの機械エネルギーに変換される。様々な部分タービンが知られており、それらは例えば高圧部分タービン、中圧部分タービン、および/または低圧部分タービンに分類される。部分タービンを高圧部分、中圧部分、および低圧部分に分類することは、専門家の間で統一的に定義されていないが、当該分類はいずれにせよ必然的に、流入および流出する蒸気の圧力と温度とに依存する。
【0004】
さらに、高圧部分と中圧部分とが共通の外部ハウジング内に設けられている実施の形態が知られている。このような実施の形態は、密に隣接して設けられている二つの流入領域を必要とする。このときロータ力学的観点から、高圧流入と中圧流入とは密接して設けられることが必要である。軸方向の空間が限定されているためである。さらに高圧流入領域と中圧流入領域とが、密に隣接して設けられていると、より経済的である。
【0005】
さらに、弁を介して蒸気を流路に供給することが知られている。このとき蒸気は、緊急遮断弁および制御弁を介して流れ、続いて流入領域内に流れ、流入領域から環状ダクト内に流れる。環状ダクトは概ね、回転軸線周りに回転対称に形成されている。環状ダクト内の蒸気の速度は、できる限り均一かつ小さくあるべきである。二弁式構造体において、すなわち蒸気が二つの弁を介し、それにより二つの流入領域を介して流入路内に流れるとき、環状ダクト内の流れ状況は単弁式構造体における場合とは異なる。単弁式構造体において蒸気は、単独の流入領域を介して、環状ダクト内に流れる。単弁式構造体において環状ダクトの断面は通常、二弁式構造体における環状ダクトの断面よりも大きい。これは概ね、流れ速度が低い水準に保たれるように行われる。
【0006】
環状ダクトを径方向において拡大することは可能であると思われるが、これは内部ハウジング内で内圧により生じる応力を増大させる。壁厚を増大させれば応力は低減されると思われるが、これも温度によって生じる応力を増大させるであろう。これら二つの設計コンセプトは、最適化すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、流れ状況を改善させる流入領域を記載することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、回転軸線周りに回転可能に支承されたロータと、当該ロータの周囲に設けられたハウジングと、前記ロータと前記ハウジングとの間に形成された流路と、を含み、さらに流入領域を含む蒸気タービンによって解決され、前記流入領域は流入接続部を有するとともに流入環状ダクト内に出口を有し、当該流入環状ダクトは概ね環状ダクト断面を有するとともに、流体力学的に前記流路と接続されており、前記流入環状ダクトは回転軸線周りに形成されており、前記流入接続部は流入断面を有し、当該流入断面を介して作動中に、流れ媒体が流れ方向において流れ、前記断面は流れ方向において最大断面に拡大し、続いて環状ダクト断面に縮小する。
【0009】
従って本発明により、流入領域内の流れ速度を変更するというアプローチが追求され、これは流入領域の幾何形状の変更によって行われる。このとき流入接続部と環状ダクトとの間の断面の結合が概ね変更され、前記断面は環状ダクト断面を超えて拡大され、流れが減速された後、新たな加速が、他の方向においてではあるが、行われる。
【0010】
従属請求項には有利な発展的構成が記載されている。従って、一の有利な発展的構成において、最大断面A2と流入断面A1との比は以下の通りである。
【0011】
1.1<A2/A1<1.7
【0012】
最適化実験と流れモデルとにより、上記の関係式が最適な流れを生じさせることが特定され得た。
さらに一の有利な発展的構成において、以下の関係が示されている。
【0013】
0.7<A3/A1<1.0
上記の式において、A3は環状ダクト断面を表す。
【0014】
ここでもモデルと計算とにより、上記の値を備える最適な流入が特定された。
【0015】
本発明の上記の特性、特徴、および有利点と、これらが実現されるやり方とは、以下の実施の形態の詳細な説明に関連してより明瞭に理解され、実施の形態は図面に関連してより詳しく説明される。
【0016】
以下において本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図面は、実施の形態を実体的に表示すべきものではなく、むしろ説明に役立つように、概略的および/またはやや歪めた形で実施されている。図面において直接的に認識可能な理論の補足に関しては、関連する従来技術を参照することが求められる。
図面に示すのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】流入領域の断面を概略的に示す図である。
図2図1の断面B−Bを示す図である。
図3図1の断面A−Aを示す図である。
図4】代替的な実施の形態における、図1の断面A−Aを示す図である。
図5】代替的な実施の形態における、図1の断面A−Aを示す図である。
図6】従来技術による流れ状況を概略的に示す図である。
図7】本発明による流れ状況を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は蒸気タービンの流入領域1の断面を示している。図1において蒸気タービンは詳しく表示されていない。蒸気タービンは概ね、回転可能に支承されているロータを含み、当該ロータは、回転軸線2周りに回転可能に支承されている。ロータの周囲にはハウジング、例えば内部ハウジングが設けられている。
【0019】
内部ハウジングの周囲にさらなるハウジング、例えば外部ハウジングが設けられ得る。ロータとハウジングとの間に、流路(図示略)が形成されている。ロータは当該ロータの表面に、複数の動翼を含む。内部ハウジングは当該内部ハウジングの内部表面に、複数の案内翼を有している。従って、流路は案内翼と動翼とによって形成され、作動中に蒸気の熱エネルギーは、ロータの回転エネルギーに変換される。ここで図1は蒸気タービンの流入領域を示し、流路は回転軸線方向に向けられている。流入領域1は流入環状ダクト3を含む。当該流入環状ダクトは、概ね回転軸線2に対して回転対称に形成されているとともに、外部画定部4を有している。当該外部画定部4は少なくとも、6時の位置5以降3時の位置7まで、回転対称に形成されている。これはハウジング半径8が、6時の位置5から3時の位置7まで一定であることを意味する。
【0020】
流入領域はさらに、流入接続部9を有している。流入接続部9は概ね管状の結合部であり、図示されていない蒸気導管を流入環状ダクト3に接続する。流入接続部9は個々の幾何学的形状を有している。ここで、当該形状をより詳しく説明する。開始部輪郭10は、管状蒸気導管(図示略)への接続部を形成する。従って開始部輪郭10の断面は円形であってよい。しかしながら他の幾何学的管状輪郭も可能である。当該開始部輪郭10は接続部下方画定部11を含み、当該接続部下方画定部の形成は、当該接続部下方画定部が6時の位置5において接続するように行われている。これは、接続部下方画定部11が回転軸線2に対して接線方向に、外部画定部4へと向けられていることを意味する。このとき接続部下方画定部11は、当該接続部下方画定部が開始部輪郭10の近傍で、6時の位置5における外部画定部4の下方に設けられているように配置されていて全く構わない。すなわち開始部輪郭10における接続部下方画定部11は、高さ距離12の分だけ6時の位置5における外部画定部4よりも低い。
【0021】
流入接続部9はさらに、接続部上方画定部13を含む。接続部上方画定部13は開始部輪郭10を起点として、3時の位置7へと上方に半円形の曲線を描く。3時の位置7において接続部上方画定部13は、外部画定部4に対して接線方向に接する。流入接続部9はこれにより流入環状ダクト3内に出口を有する。流入環状ダクト3は、概ね環状ダクト断面A3を有し(詳しく示されていない)、流体力学的に流路(図示略)と接続されている。見やすくするために、図1において環状ダクト断面A3は、9時の位置14、12時の位置15、および3時の位置7において描き込まれている。
【0022】
流入接続部9は開始部輪郭10において、流入断面A1を有している。流入断面A1は円形であってよく、または楕円形であってよい。作動中に流れ媒体、特に蒸気が蒸気タービンを通過し、流れ方向16において流入環状ダクト3に流入する。流入環状ダクトに入る蒸気の流れは複雑であり、後に図6および図7においてより詳しく説明される。図1に示す輪郭を理解するにあたり、明瞭にするために、流れは流線17によって表示される。流線17は、概ね流入環状ダクト内の流れ媒体の動きを表示すべきである。すなわち、流れは開始部輪郭10を起点とし、およそ5時の位置18において、開始方向に偏向される。流線17に沿って、流入断面A1は一定の値を有し、最大断面A2に拡大する。最大断面は図1において一の線で示され、当該線はまた、図3図4、および図5においてより詳しく説明される断面A−Aを表している。すなわち本発明によれば、断面は流れ方向16において流入断面A1に、続いて環状ダクト断面A3に縮小される。これにより、流れは減速され、改めて加速されるが、他の方向に加速されることになる。言い換えれば流れ速度は、断面流入部が環状ダクトへの入口に向かう過程で減速され、続いて再び加速され、接線方向における速度の一部は、径方向における速度成分に変換される。この径方向の流れ速度成分は、周回する接線方向流れの進路を妨げ、それにより蒸気を軸方向に流路内に押し込める。これにより流入損失が最小化される。
【0023】
このとき以下の式が成り立つ。
1.1<A2/A1<1.7および0.7<A3/A1<1.0
【0024】
図2は、図1の線II−IIに沿った断面を示す。本図で線19は流入断面A1を示し、線20,21および22は三つの異なる実施の形態を示し、当該実施の形態は以下のように説明可能である。線20は、比A2/A1=1であるときの輪郭を表す。線21は、比A2/A1=1.25であるときの輪郭を表す。線22は、比A2/A1=1.55であるときの輪郭を表す。
【0025】
図3図1の線A−Aに沿った断面を示す。図4および図5は、図1の切断箇所A−Aに沿った、異なる比に対するさらなる断面を示す。すなわち図3は比A2/A1=1.55を示し、図4は比A2/A1=1.25を示し、図5は比A2/A1=1を示す。
【0026】
図6は損失を伴う流れにおいて、流入領域1内の流れ状況を概略的に示す。部分図23には、流入領域1の流入接続部の斜視的な表示が示される。このとき図6が示す実施の形態では、断面が流れ方向において拡大されない。図6にはさらに、流入領域1内の流れが、臨界領域24において大きな周方向成分を有することが示されている。これに対して図7は、本発明に係る流入接続部9の実施の形態を示す。さらなる部分24は、流入領域1の流入接続部9の斜視的な表示を示す。開始部輪郭10において、開始部における断面A1は流れ方向において最大断面A2に拡大され、続いて一定の環状ダクト断面A3に縮小される。図1に示す実施の形態は、単弁式構造体を示している。明瞭にするために、可能な第二の弁ガイド25が示されていた。
【0027】
本発明は細部において、好適な実施の形態に基づいて詳しく図示かつ説明されたが、本発明は開示された実施の形態によって限定されておらず、当業者により、本発明の保護範囲を離れることなく、開示された実施の形態から他の変化形態が導き出され得る。
【符号の説明】
【0028】
1 流入領域
2 回転軸線
3 流入環状ダクト
4 外部画定部
5 6時の位置
7 3時の位置
8 ハウジング直径
9 流入接続部
10 開始部輪郭
11 接続部下方画定部
12 高さ距離
13 接続部上方画定部
14 9時の位置
15 12時の位置
16 流れ方向
17 流線
18 5時の位置
19 流入断面A1
20 比A2/A1=1であるときの輪郭
21 比A2/A1=1.25であるときの輪郭
22 比A2/A1=1.55であるときの輪郭
23 部分
24 部分
25 第二の弁ガイド
A1 流入断面
A2 最大断面
A3 環状ダクト断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7