(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線CTシステム内でのX線CT法において試験片を再構成する方法であって、前記X線CTシステムは、焦点を備えたX線源と、X線検出器と、前記試験片を前記X線CTシステム内で移動させる操作器とを有しており、該方法では、
様々な位置における前記試験片の記録を生成するために、前記操作器が、予め定義可能かつ設定可能な経路曲線を通ると共に、トリガされた位置において記録を行い、
各記録について、前記操作器の位置が決定され、該位置よりそれぞれ関連する投影ジオメトリが計算され、
続いて、前記経路曲線について品質関数の値が計算され、
その後、先の前記経路曲線とは異なるパラメータを有するさらなる経路曲線を前記操作器が通過し、前記操作器が通過している間に前記トリガされた位置において前記試験片のさらなる記録が生成され、該経路曲線について前記品質関数の値が計算され、
前述の、先の前記経路曲線とは異なるパラメータを有するさらなる経路曲線を前記操作器が通過し、前記操作器が通過している間に前記トリガされた位置において前記試験片のさらなる記録が生成され、該経路曲線について前記品質関数の値が計算されるステップが繰り返され、
前記品質関数が最小である値における前記経路曲線は、最適化アルゴリズムを用いて繰り返し決定され、
前記試験片と同等のさらなる試験片の記録が、前記品質関数の最小値が事前に確立された前記経路曲線に沿って生成され、
各試験片について、個々の記録のそれぞれの投影ジオメトリへの割り当てを参照して、CT再構成が適切なアルゴリズムを用いて実行される、方法。
前記方法が、予め定義可能な最大回数の繰り返しステップの後に中断され、最後の繰り返しステップの前記経路曲線を用いて、前記さらなる試験片を試験するための前記方法が実行される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る方法の有利な実施形態の例について説明する。
【0017】
本発明に係る方法は、従来のX線CTシステム(例えば、YXLON International社製「Y.MU56TB」モデル)において実行される。該システムでは、今日まで、産業用ロボット(以下、ロボットと称する)、例えば安川電機社製「MOTOMAN MH5」モデルが使用されている。例えば、X線管としてYXLON International社製「Y.TU−225−D04」モデルが使用され、X線検出器としてPerkinElmer製「XRD 0822 AP18 IND」モデルが使用される。
【0018】
経路曲線の実装は、ロボットの相対運動によって行われる。様々な経路曲線が考えられ、なかでも、LC(直線−円)、CC(交差円)、CLC(円−直線−円)、螺旋、TB(テニスボール。
図1参照)などが考えられる。
【0019】
X線CTシステムは、基本的に3つのユニットにより構成されている。該ユニットのうち1つは、放射線遮蔽鉛小室であり、該放射線遮蔽鉛小室には、X線源(コーンビーム)、X線検出器(以下、検出器と称する)及びロボットが配置されている。ここで、試験片は、ロボットにより保持されて動かされ、X線照射される。検出器は、入射放射線を変換して、対応するX線画像を生成する。該システムの別のユニットは、オペレータコンソールを備えたコンピュータにより構成されている。該コンピュータ上においてシステムのオペレーティングソフトウェアが実行され、該オペレーティングソフトウェアを通じて、ユーザは調整を行ってスキャンプロセスを制御する。検出器によって生成された画像は、コンピュータ上に保存された後、検査され得る。最後のユニットは、システムを制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を包含する制御キャビネットにより構成されている。
【0020】
座標系
座標系を適切に選択することにより、経路曲線をより簡単に記述及び実装することができる。このため、経路曲線を生成する間に、計算された点の座標が関連している座標系をできるだけ早く選択する必要がある。
【0021】
図2の中央の画像は、ロボットの第1軸(S軸)の回転中心を原点とする3次元デカルト座標系を示している。この座標系は空間内にて固定されている。これは、設定角度を有する円形状経路曲線の実装、及びそれによる同時に試験片を傾ける回転(
図3の例として、螺旋状経路曲線について示される)の実装によく適している。所与の設定角度に対して、回転は、ただ1つの座標、すなわちZ軸回りの向きのみが変更されるように実装される。3次元デカルト座標系は、特に、直線に沿った動きの実装にも適している。直線に沿って移動する間、例えば、Z方向の高さを調節する間は、3次元座標系の1つの座標(Z座標)のみを変更すれば十分である。
【0022】
最後に、
図2の右側の画像には、いわゆるツール座標系(ツールフレーム)が示されている。この座標系の原点は、試験片のTCP(ツール中心点)にある。この座標系は試験片と共に移動し、試験片に対して常に同じ位置にあるため、試験片の現在位置に対する動きを特によく記述することができる。これは、1つの主軸(例えば、Z軸)回りの回転ではなく、少なくとも2つの主軸回りの回転によって実現することが必要な経路曲線の実施に特に適している。この座標系は、例えば、TB経路曲線の実施のために使用される。
【0023】
品質関数
品質関数は、それが試験片のX線撮影能に関係し、それによって再構成の品質に関する情報を間接的に提供するように策定されるべきである。ここで、良好な経路曲線は設定された経路曲線であり、これによって品質関数の値が小さくなる。
【0024】
X線源から放出された放射線は、試験片を照射する。該経路に沿った材料の厚さに応じて、個々の光子が吸収される又は該光子の強度が弱められる。放射線の残りの部分は、試験片を通過して検出器に衝突し、該検出器は、対応する明るさ分布(グレースケール値分布)を備えた画像を生成する。試験片の一部の放射線透過率が高いほど、グレースケール値の高い明るい画像が得られる。同様のことは、放射線透過率の低い場所にも当てはまる。したがって、画像のグレースケール値は、試験片の放射線透過率に対応する。記録されたX線画像は、各ピクセルのグレースケール値が格納されるアレイ(1D)によって表される。例えば、14ビットの検出器の場合、1ピクセルあたり2
14の異なる可能な値(0〜16,383)が生じる。
【0025】
この記録された画像におけるグレースケール値の頻度は、X軸にグレースケール値が、Y軸にそれぞれの周波数が示されたヒストグラム中において、グラフィカルに示されている。
図4には、タービンブレードについてのこのようなヒストグラムが示されている。2つの集積点(ピーク)が、左端及び右端に存在する。右側の集積点はグレースケール値が高く、そのため該画像内に明るいピクセルを記述する。この集積点は、明るい背景に割り当てられ得る。左側の集積点はグレースケール値が低く、対照的に、該画像内の比較的暗い場所を記述する。この集積点は、試験片に割り当てられ得る。ここでは、タービンブレードの放射線透過率が比較的低い理由についても明らかになる。左側の集積点は、該分布の左端に比較的近い位置にある。そのため、タービンブレードのいくつかの部分は、非常に小さなグレースケール値を有する。これは、放射線が特定の場所でほぼ完全に吸収/減衰され、ほとんど検出器に到達しないことに起因する。入射する放射線が非常に弱く、その結果得られる信号が検出器のノイズで失われるため、情報の損失が生じる。この場合、得られるX線画像は暗くなり、試験片の密度分布は見えない。したがって、タービンブレードの再構築も損なわれる。
【0026】
したがって、品質関数の基準は、画像のグレースケール値が可能な限り大きくなる場所に、その最適条件を有することである。しかしながら、最小グレースケール値自体は、システムのノイズ処理の対象であり、再度測定した時に変化するため、直接的な尺度としては考慮されない。これらのノイズ処理は、検出器自体のノイズ及び温度に依存する挙動、直接放射線の確率的性質、及び、反射した散乱放射線の影響を含む。したがって、最小グレースケール値の代わりに、順序付けされたグレースケール値セットの選択された分位数が使用される。3%分位点は、ノイズ処理に対して十分に安定であることが証明されている。経路曲線を記録することにより、画像の連続体が提供される。その結果、該基準は、概して、連続する全ての画像からの最小分位Q
minを最大化することを伴う。
【数2】
この状態は、連続する最も劣悪な画像に関する。しかしながら、画像の連続体における分位数の分布については、何ら明かされていない。例えば、2つの画像の連続体がQ
minについて同じ劣悪値を有する場合、それらは同じ品質を有する。しかしながら、一方の画像の連続体における、最も劣悪なものを除く全ての画像は、比較的大きな分位点を有し、他方の画像の連続体における、最も劣悪なものを除く全ての画像は、少しだけ良好であるため、それらの分位点はQ
minに近い。この場合、第1の画像の連続体は、第2の画像の連続体よりも好適である。分位数の分布を決定するために、最小分位Q
minに関する連続体の分位数の散布が考慮される。計算は分散SQ
minを使用して行われ、以下のようにして計算される。
【数3】
ここで、Q
iは、長さnの連続体におけるi番目の画像の分位数を表す。次に、最小分位数に関する分位数のばらつき具合σは、以下により与えられる。
【数4】
したがって、Q
minが比較的劣悪な場合における分散の最大化が、同様に求められる。
【数5】
【0027】
式5.1及び5.2の上述の2つの条件を用いて、品質関数を確立することができ、該品質関数を最適化(最小化)することによる結果として、連続体における全ての画像について、
図4のヒストグラムにおける左側の集積点が可能な限り右へとシフトされる。
【0028】
ここまでは、画像のヒストグラムにおけるグレースケール値の分布については、何ら明かされていない。極端な場合、全てのピクセルは、ほぼ同じグレースケール値を有し得る。その結果、ヒストグラムにおける大きく狭い単一のピークに、周波数が集積する。この場合、画像にはコントラストがなく、そのため情報がない。したがって、情報量が多くなるために、グレースケール値がフラットで広範かつ均一に分布していることが望ましい。情報量の尺度としては、情報理論における画像エントロピーが用いられる。したがって、画像エントロピーは、以下のように規定される。
【数6】
ここで、p
iは、i番目のグレースケール値(0≦p
i≦1)の発生確率を表す。対数の底2は、文献に従って選択されているが、これは、2進数が技術的に特にシンプルであるため、扱いやすいという理由による。該エントロピーが以前に必要とされた条件を尺度として正確に伴うことは明らかである:i番目のグレースケール値(p
i)の相対的割合が小さすぎる又は大きすぎると、i番目の部分和はゼロに近づき、いずれの場合においても、因子p
i又はlog
m(p
i)の一方が非常に小さくなる。分布が一様である場合には、該部分和が最大になるため、エントロピーが最大になる。エントロピーの計算は、試験片に関連するグレースケール値の分布を示す。このために、背景は、精巧な方法によって識別されて取り除かれる。これは、エントロピーの計算において、
図4のヒストグラムにおける右側ピークのグレースケール値が除外されることを意味する(AdvancedMethodsクラスのメソッド)。
【0029】
したがって、画像の連続体のエントロピーを可能な限り大きくすることが求められる。このことを保証するには、連続体の平均エントロピーを最大にする必要がある。
【数7】
ここで、E
iはi番目の画像のエントロピーを表す。この条件だけでは、まだ完全ではない。満足のいく平均値にとって、エントロピーが非常に小さい画像(外れ値)が未だに存在する可能性があるためである。換言すれば、このことは、エントロピーが平均値の周りに分散する可能性があることを意味する。この状態を考慮に入れるため、平均値E
averageに関する分布の標準偏差を最小にすることが望ましい。
【数8】
【0030】
式5.3及び5.4の条件は、以下の式5.5を要約するE=E
average−σ
averageによって記述することができる。
【数9】
さらに、グレースケール値(Gmin、Gmax)の許容値の範囲が規定される。この許容値の範囲には、記録された画像のグレースケール値が存在するべきである。画像のグレースケール値が許容限界Gminよりも小さいと、再構成における誤差の原因となる。グレースケール値が許容限界Gmaxを超えると、検出器の過飽和の原因となる。これらの厳密な境界条件に反すると、経路曲線から即座に排される。したがって、該X線源の電圧及び電流のようなシステムパラメータ、使用されるフィルタの厚さ及び材料、検出器の強度並びに照射の積分時間は、常に、境界条件に合致するように選択すべきである。
【0031】
式5.1、5.2及び5.5の条件は、以下の式5.6により品質関数F(Q
min,σ,E)で定式化される。
【数10】
数値の次元が大きく異なるため、変数は正規化される。これらは、理論上の最適値Q
opt、σ
opt及びE
optによって除算される。品質関数Fの最小値(最適値)は、変数が選択された最適値にできるだけ近づく点を表す。したがって、品質関数Fは、その定式化により、これらの最適値に対する誤差項を表す。これらの値に正確に達すると、F(Q
opt、σ
opt、E
opt)=0となる。実際のところ、通常はこの値には達しない。したがって、品質関数を最小にする経路曲線のパラメータセットを発見することが重要である。Q
opt及びσ
optの値は、測定値から推定され得る。可能な最大エントロピーは、E
max=log
2(N
p)によって計算され得る。ここで、N
pは検出器のピクセル数を示す。重み付け係数α、β及びγは、変数Q
min、σ及びEの優先度を決定する。1つの変数が他の変数よりも強く重み付けされている場合、最適化においてより大きな関連性が認められる。本発明の実施形態の例の枠組み内では、一様な重み付けα=β=γ=1が使用される。
【0032】
特別な特徴は、式5.6の品質関数におけるルート下の第2項により表される。ここで、σの誤差項は、βだけでなく、Q
minの誤差項を表す動的因子(1−Q
min/Q
opt)
2によっても重み付けされる。この理由は、Q
minが劣悪で最適値から遠く離れているのであれば、画像の連続体における分位数の最小分位数Q
minに関する分散が有意により強い重みを有するべきであるためである。最小分位数Q
minが十分に大きく、既に最適に近い場合には、画像の連続体は既に高い分位数及びそれにより満足のいくグレースケール値を有しているため、Q
minに関する分位数の分散は、必ずしも大きくなる必要はない。
【0033】
式5.6の品質関数を通じて、経路曲線の各パラメータセットは、記録された画像を評価することにより品質を割り当てられ得る。タービンブレードを試験片として備えた螺旋状経路曲線の例を用いて、品質関数がパラメータ空間内の離散点にて評価される。品質関数は、完全に連続的で滑らかな分布である。
【0034】
評価基準
アプリケーション及びシステムの最適な経路曲線を選択するために、異なる基準が使用される。上述の最適化された品質に加えて、さらなる見地が評価において役割を果たすが、これは試験片自体の選択にはあまり依存しない。各基準は、異なる重み付けを伴う評価に含まれる。例えば、特定の試験片の再構成の改善のみが最優先である場合には、特に、品質関数を最小化することが求められる。この場合、最適化された品質値の基準は、比較的高い重み付けを有することになる。基準の重み付けは、個々の目的に応じてユーザにより決定される必要がある。この基準は、最適化された品質値、経路曲線の長さ、拡大率、空間要件、複雑さ、産業ロボットが移動する能力についての特性、拡張性、最適化可能性及び冗長性である。以下、これらの基準について説明する。
【0035】
最適化された品質値
1つの基準は、所与の試験片についての最適化プロセスを使用して最適化された品質関数の値(最小値)である。したがって、品質関数は、品質の最適化における枠組み内での経路曲線に対応する誤差項を表すように構成される。この意味における優れた経路曲線は、より良好な再構成結果をもたらす。その結果得られる種々の経路曲線の最小値は、互いに比較することができ、これにより、最も小さい最小値、すなわち最も低い品質値を有する経路曲線が、理論上最も優れている。しかしながら、実際のところ、品質値の正確な比較は該比較を正当にする様々な因子に依存するため、上記比較はある程度までしか可能でない。
【0036】
これらの因子のうち1つは、スキャンプロセス中に経路曲線に沿って作られる画像投影数である。投影数が多いほど、経路曲線が細かく離散化する。投影数が十分に多い場合にのみ、可能な限り完全な再構成を行うのに十分な試験片に関する情報を収集できることは明らかである。投影数が少ないと、試験片は必然的に多方向から画像化されないことになるため、情報量が減少する。
【0037】
例えば、円形状経路曲線もまた無限に大きく離散化される場合には、X線源の2つの記録位置間の距離が無限に小さくなり、限られた解像度を有する検出器の場合には、2つの隣接する記録位置の投影画像は、ほとんど同じ情報を含む。結果的に、投影数が多ければ常に情報量が多くなるとは限らない。画素サイズと検出器の解像度に応じて、離散化は、少なくとも異なる情報を有する画像が記録される程度まで大きく(粗く)あるべきである。このことは、可能な限り最大の情報量が、最小の投影数によって達成され得ることを意味する。多くの投影を実行することはスキャン時間が長くなる(コストが高くなる)ことに結びつくため、実際の投影数は、通常は少ない数に抑えられる。一定の投影数を超えて情報を増やしても、それによるコストが許されるわけではないためである。
【0038】
図5は、種々異なる投影数に対する螺旋状経路曲線の品質を示す。誤解を招くようだが、投影数が少ないほど良い品質(より小さい品質値)が得られることが確認される。投影が増加すると、該品質はまず急速に変化し、そして悪化する。投影が約200以上になると、該品質は、投影数が増加しても該品質はもはや変化しない飽和領域に移行する。こうなる理由は、既に上記にて説明したように、投影数が十分に多い場合にのみ試験片を通過する全てのビーム方向が考慮されるが、このことが品質に決定的に影響を与えるためである。これらの視認方向は、投影が少ないと「見られない」。
【0039】
図6は、画像の連続体における3%分位数(Q
min)の数を表す。この3%分位数の数は、画像の連続体の品質を強く決定し、投影数が多くなるにつれ変化する。その結果、投影数が増加すると、Q
minの値は最大で11%も低下する。
【0040】
そのため、異なる経路曲線を品質に基づいて比較することは、実際には困難である。異なる経路曲線は原則として異なる投影数を有しており、その品質は該投影数に依存するためである。したがって、ある経路曲線の投影数がどの程度の大きさで他の経路曲線の投影数がどの程度の大きさであるかといった事項が必要なのか、その比較に意味があるかについては、疑問が生じる。両方の経路曲線の投影数が非常に多い場合には、品質値が既に飽和領域内にあることになるため、この問題は解決されると思われる。しかしながら、これはスキャン時間が非常に長くなることに関連するため、実際には非現実的である。
【0041】
経路曲線の長さ
2つの経路曲線を比較するための別の基準は、経路曲線自体の長さである。この長さは、拡大率に依存する。2つの円形状経路曲線が異なる半径(拡大率)を有する場合、それらは異なる長さを有する。したがって、意味のある比較の基礎を作るために、経路曲線は、同じ拡大率における長さについて比較される。
【0042】
経路曲線の長さは、経路曲線に沿ったスキャン中に記録される投影数に関する情報を暗黙的に提供する。投影数に関する異なる経路曲線の長さの比較を均一かつ意味のあるものにするため、該曲線は記録位置に対して均等に離散化されて、X線源から対象物までの距離が等しく保たれる。後者は、
図7においてさらに表される。
図7には、離散化(4つの投影点)は同一だが拡大率(円の半径)の異なる2つの円形状経路曲線が示されている。左側の経路曲線は、右側の経路曲線よりも長い経路曲線長を有する。しかしながら、それらの投影数は同一である。このことは、上記の式とは矛盾するように思われる。一方で、拡大率(円の半径)が同一であれば、経路曲線長は、投影数に関する有効な根拠を提供する。この状況は、異なる経路曲線に転用することができる。
【0043】
したがって、経路曲線長が長くなることは、投影数が増加し、それによって記録される画像の数が増加することに対応する。これらの画像は、例えば再構成のような後続の処理にて使用される。画像の数が増えるにつれて、そのことに関連する演算及び記憶の消費量も増加する。このことは、特に、選択された画像フォーマットが比較的大きく(記憶領域)、コンピュータの性能が不十分である場合に該当する。14ビット検出器によって画像がキャプチャされ、ファイルサイズ2MBのTagged Image File Format(TIFF)形式で保存される場合には、仮に円形状経路曲線の再構成に必要な投影が1,500とすると、評価対象となる3GBのファイル容量が既に生じていることになる。
【0044】
投影数が多いほど、スキャンに必要な時間も長くなる。画像の連続体を記録するために必要な時間は、システムのイメージングを如何に素早く連続して行うことができるかに依存する。
【0045】
また、動いている最中に画像が記録されると、画像にブレが生じる可能性があり、そのために最低処理時間も制限されることに留意すべきである。通常のスキャンでは、画像は静止状態で記録される。このために、ロボットは投影点へと移動し、画像の記録が完了するまで待機し、その後にようやく、さらなる移動を開始する。ここでも同様に、このアプローチが続いて行われる。上記の例及び所要期間が1投影当たり1秒であることによれば、単純な円形状経路曲線の場合には、総所要期間は25分となる。
【0046】
スキャン時間を可能な限り短く保つことは、大きな関心事である。このことは、エネルギー(コスト)を節約するという目的だけでなく、例えば温度やそれによる検出器の挙動のような動作パラメータが変化するという理由においても、望ましいことである。スキャンが長く続くほど、これらのパラメータが大きく変化し得るため、記録された画像の連続体の品質が影響を受ける。この理由及び上記の理由により、比較においては、経路曲線長の短い経路曲線ほど良好な経路曲線として評価される。
【0047】
拡大率及び空間要件
経路曲線の拡大率は、検出器上にて投影される試験片の画像が描写される大きさついて記述する。経路曲線の比較基準としての拡大率は、該経路曲線に沿ったスキャンの間に投影される記録が最大でどの程度まで大きくなるかを表す。記録が大きいほど、試験片の表示される解像度が高くなり、内部構造の詳細の視認性が高くなるため、有利である。拡大率は、X線源から試験片のTCPまでの距離によって形式的に規定される。該距離は、焦点対象物間距離(Focus-Object-Distance、FOD)と称される。FODが大きいほど、検出器上にて投影される画像は小さくなる。その結果、経路曲線の拡大率が高いほど、該経路曲線は小さいFODを有する。
【0048】
問題となる経路曲線について認められる拡大率は、主として、TSTに従う完全性条件に違反する最小の許容可能なFODに依存する。完全性試験は、X線の有効円錐角を考慮して行われる。円錐角が比較的大きい場合には、試験片はいくつかの方向から照射されて、FODが比較的小さい場合であっても経路曲線は完全なままであり得る。円錐角が小さすぎると、最小の許容可能なFODに対して悪影響が生じ、そのために最大の許容可能な拡大率に対して悪影響が生じる。したがって、例えば、所定の円錐角についてLC経路曲線の円形経路曲線は構成要素を通して完全に照射しなければならないが、CLC経路曲線の場合には、X線透視が2つの円に分割され得るため、CLC経路曲線については、LC経路曲線よりも高い拡大率が可能になることが理解される。
【0049】
拡大率に関連する別の特性は、経路曲線の三次元空間要件である。経路曲線は、グリッパ内の試験片を保持するロボットの相対的な移動によって実現される。この移動のためには、システム内に空き空間(X線小室)が必要である。通常、この空間は限られているため、高さに沿って十分な空間はあるものの、主としてX線源又は検出器との衝突を防止するために、長手方向(ビーム方向)ではジオメトリ的境界条件が守られるべきである。そのため、このことは、最大の許容可能なFODが制限されることを意味する。この制限により、小さい拡大率(より大きなFOD)のみを許容する経路曲線が主に影響を受ける。その理由は、正にこの場合において、必要なFODがジオメトリ的境界条件と一致しないことが起こり得るからである。
【0050】
要約すると、高い拡大率を可能にする経路曲線は、必要な3次元空間がより少ないといえる。空間をほとんど必要としない経路曲線は、比較においてより優れていると評価される。
【0051】
複雑さ
別の比較基準は、経路曲線の複雑さである。複雑さは、経路曲線の進路がどの程度複雑であるかを記述し、実際に該経路曲線を実現するためにどんな労力が必要であるかについての情報を提供する。
【0052】
経路曲線はロボットにより実現され、それによって該ロボットは一連の座標を移動する。これらの座標は、ロボットの仕事によって該ロボットに引き渡される。これらの点は、経路曲線の数学モデルから予め計算される。しかしながら、経路曲線が複雑になるほど数学的記述は精緻になり、離散化は困難になる。いくつかの状況では、経路曲線における点は、補助モデルによって近似的に計算される必要がある。この事実は、TB経路曲線の例によって示される。TB経路曲線の離散化は、楕円積分の解法に遡って行われ、分析的に解くことができない。複雑さが増すにつれ、実施の際の誤り率も増加する。
【0053】
さらなる点は、経路曲線の正確さの主観的評価である。線や円のような経路曲線要素については、最初の試験ステップにおいて、該経路曲線要素の正確な実施のために、ユーザの肉眼によって予め評価しておくことができる。一方で、より複雑な経路曲線における誤った経路曲線パラメータは、該経路曲線の正確さについての推定の質が劣る可能性があるため、認識が比較的難しい。この場合、代わりに誤りが後の段階で認識可能になり、この誤りが効率に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0054】
複雑さの度合いは、経路曲線がどの程度まで単純な直線及び円の要素により構成されているか(例えば、LC経路曲線)、又は、経路曲線がこれらの他よりも珍しい要素との組み合わせであるかどうか(例えば、TB経路曲線)に表される。経路曲線は、大部分が線及び円の要素により構成されている。本発明の実施形態の例の枠内では、これらの経路曲線を実現する際において、以下の状況が考慮される:ロボットの一部分上にて、経路曲線の線形要素が、3次元座標系の主軸の1つに沿った動きにより実現される。したがって、この動きは座標を変えることによって実施される。経路曲線の円形要素は、主軸の1つを回転させることによって実現される。この回転は、3次元座標系の座標(方向)を変えることによっても同様に実施される。線と円との要素(螺旋及びTBの経路曲線)のみからは構成されない経路曲線は、各ステップにていくつかの座標を変えることによって実現される。したがって、経路曲線の複雑さの度合いは、3次元座標系におけるロボットの座標が、各ステップでの実施の間にいくつ変化するかによって表される。複雑さは、実際に経路曲線を実施することがどの程度容易であるかに関する情報を、暗黙的に提供する。
【0055】
ロボット固有の特徴
さらなる比較基準は、ロボットの特徴に関し、該特徴は、経路曲線の移動される能力又は経路曲線に沿って記録された画像の品質に関する。
【0056】
これらの特徴の1つは、使用されるロボットの最後の回転軸(T軸)の制限である。該軸は基準として設定されており、それによって該軸が2度の完全な旋回を行う、すなわち0°〜720°で回転することができる。それ以上回転すると、使用されるロボットグリッパの電子機器のケーブルを引っ張りすぎて損傷させることになる。この制限は、T軸を720°を超えて回転させることを必要とする経路曲線の能力に影響する。
【0057】
このことは、例えば、直立状態の螺旋状経路曲線に基づいて表され得る。ここで、該螺旋は、高さの変化及びT軸の回転によって実現される。該螺旋が2回転した後には、軸が720°回転している。次の旋回を移動するにはさらなる回転が必要であるが、T軸によって実現することができない。このため、該制限に達すると、経路曲線の実際の移動が中断され、結果としてT軸は360°逆回転させられ得る。この段階では、画像は記録されない。回転の後、ロボットは同じ座標系に対して以前と同じ位置にあり、経路曲線が継続され得る。これらの再配置動作は、実際の経路曲線の一部ではなく、通常は精度に悪影響があるが、その理由は、ロボットの不正確さ及び機械的な遊びのために、再配置段階の後に再配置動作が成される前の位置と正確に同じ位置が、限られた範囲にしか与えられないためである。従って、再配置動作が可能な限り少なく実現可能な経路曲線が望ましい。
【0058】
これらの再配置動作には、例えばCCの経路曲線の場合のような、経路曲線自体の性質に基づく点の開始が含まれる。最初の円を移動した後に、ロボットは2番目の円の開始点から開始する必要がある。ロボット固有の制限による再配置動作は、ハードウェアコンポーネントを改良又は交換することによって防止することができるが、経路曲線の性質による再配置動作は、避けることができない。
【0059】
経路曲線に対する適合性に関して間接的に影響のある別の特徴は、ロボットに属し、記録された画像の品質に影響を及ぼす要素の相互作用の程度である。これらの干渉要素は、試験片に加えて投影された画像にも同様に見られるため、結果に悪影響を及ぼす。この悪影響は、歪んだ画像解析及び欠陥のある再構成につながり得る。経路曲線の完全性のために異なる視認方向からの試験片分の記録が必要とされるため、記録の連続体におけるそのような干渉要素の発生は、避けられないことが多い。該干渉要素は、主として使用されるロボットグリッパ自体を伴う。ロボットグリッパは緻密な材料で構成され、X線画像ではっきりと見られる。
【0060】
記録された画像の連続体におけるロボットグリッパの影響を防止するために、グリッパは可能な限り画像から切り取られ得る。この目的のために、コンピュータグラフィックスにおけるフラッドフィルアルゴリズムに基づくアルゴリズムが開発されている。該アルゴリズムでは、画像の下側3分の1が検査され(このとき、通常は、グリッパが既定のテスト画素に描写されない)、試験片に対応する画素が同定される。識別のために、グレースケール値を試験片に割り当てることができる閾値が定義される。この開始ピクセルから始まって、周囲のピクセルは、それらのグレースケール値を検査され、試験片又は環境のいずれかに割り当てられる。再帰的アプローチでは、各ピクセルについて4つ(又は8つ)の隣接ピクセルが試験される。このアプローチには、再帰回数が多いためにスタックオーバーフロー(メモリのバッファオーバーフロー)を起こすという欠点や、同じピクセルの繰り返し試験による余計な試験のために比較的多くの計算時間が必要となるという欠点がある。このアルゴリズムを50枚の画像の連続体からロボットグリッパを取り除くために使用する場合には、約4分の計算時間が必要になる。
【0061】
このため、(メモリスタックに基づく)反復アプローチが行われる。該反転アプローチでは、画像内のピクセルが直線に沿って試験される。このアプローチは、既にチェックされたピクセルに対する不必要な試験を大幅に減らすので、スタックオーバーフローの意味で安全であるばかりでなく、大幅に高速でもある。
【0062】
上記のアルゴリズムにより、試験片を表す全てのピクセルを決定することができる。したがって、他の全てのピクセルは、グリッパ及び背景のような環境を記述する。それらには中間色のグレースケール値が割り当てられ、それによって、とりわけグリッパは所望の通りに取り除かれる。最後に、中間色の背景を備えた試験片のみが見られる処理された画像が形成される。
【0063】
しかしながら、上記のアルゴリズムの適用は必ずしも可能ではない。それは、干渉要素が試験片と同様のグレースケール値を有しており、投影された記録において、後者の輪郭と重なる場合に、問題となる。この場合、試験片の輪郭は、描写されたグリッパねじ上のグリッパの輪郭とくっつく。その結果、該アルゴリズムは、もはや試験片のグレースケール値とグリッパのグレースケール値とを区別することができなくなる。したがって、試験片はもはや明確に決定され得ない。公差の限界を下げれば、いくつかの状況ではより良い分離が得られるが、そうした場合、通常は試験片自体の一部が「切り取られる」結果になる。
【0064】
拡張性
別の比較基準は、寸法が大きく従来のスキャンが不可能な試験片の完全なスキャンを行うための、経路曲線の適切な拡張を行える可能性である。該基準は、該拡張がどれほど簡単で分かりやすいかに基づく。例えば、そのような試験片は、長い円筒(例えば、管)であり得る。これは、可能な最大の拡大率が原因となって、全体をそのまま完全に描写することはできない。そのような場合、完全なスキャンを行うために試験片の個々の部分が順次スキャンされ得る。この目的のために、経路曲線はさらなる典型的な要素によって補完される。これを表す例は、CLC経路曲線の補完である。CLC経路曲線が細長い該試験片を完全にキャプチャできない場合、該経路曲線は、それを完成させるためにさらなる経路曲線により補完される。この例では、拡張は明らかである。例えばTB経路曲線のような他の経路曲線の場合には、経路曲線の特徴的な進路のために、適切な拡張はほぼ不可能である。
【0065】
最適化可能性及び冗長性
経路曲線のさらなる評価基準は、最適化能力である。全体としての最適化可能性は、多くの因子に依存する。しかしながら、以下の考察では、最適化プロセスの反復ステップの必要数によって主に決定され、該必要数は収束速度に対応している(
図8にでは、位置例として螺旋状経路曲線の収束図が示されている)。また、収束速度は、最適化されるパラメータの数及び経路曲線長に依存する。シンプレックス法が適用される際には、最適化パラメータの数が増加すると、さらなる探査方向がパラメータ空間内に生じる。この場合において、最適化の探査がより高次元のパラメータ空間内で行われると、そのためにより多くの時間が必要となる。さらに、経路曲線長が長いほど、同様にスキャン時間も長くなる。この走査持続時間は、各反復ステップにおいて経路曲線が移動するのに必要とされるため、同様に収束の全体的な速度に影響を及ぼす。
【0066】
これに関連する別の態様は、経路曲線の冗長度である。冗長度は、経路曲線に沿ったスキャンにて、再構成にとって冗長であるため新しい情報を提供しない画像がどこまで記録されたかを記述する。円形状経路曲線に沿った平行ビームについては、試験片を通る放射は、180°回転した後に同じビーム経路を通過することが容易に理解される。両方の位置から得られるX線画像は、品質については同じである。したがって、平行放射により円形状経路曲線を走査する場合には、半円形状経路曲線で十分である。円錐放射についても、同様の考慮が適用される。ここでは、理論的にはX線源の円錐角に半回転(180°)を加えたもので十分である。
【0067】
考慮事項の要約
タービンブレードについての経路曲線の評価を、表1に表形式で記録する。
【0068】
最適化された品質値は、上述の最適化プロセスから得られ、選択された試験片に依存する。ここで、該試験片は、タービンブレードに関する。経路曲線長は、タービンブレードのジオメトリにも依存する。さらなる基準の全ては、経路曲線それぞれの全体的な特性に関する。
【0069】
LC経路曲線は、基準に関して平均すると最高の評価を達成する。LC経路曲線の特徴的な単純進路は、ほとんどの基準での評価に良い影響を与える。LC経路曲線は、特に、最適化された品質値が小さく、経路曲線長が短く、複雑さが低く、ロボット固有の特性の影響が小さいため、際立っている。
【0070】
TB経路曲線は、平均すると、似ているが若干悪い評価を示す。TB経路曲線は、最適化された品質値が小さく、経路曲線長が短く、ロボット固有の特性の影響が少なく、最適化可能性に優れているため、際立っている。TB経路曲線の特徴的な進路によって複雑さが高くなり、この高い複雑さが、とりわけ、評価に悪影響を及ぼす。TB経路曲線の独特な進路のために、TB経路曲線は基本的に他と大きく異なる特殊な経路曲線を示す。
【0071】
螺旋状、CC及びCLCの経路曲線は、平均すると全体的に悪化する。これらは、表1に見られるいくつかの基準に関しては、非常に適している。
【0072】
経路曲線の評価においては、比較基準は通常、等しく重み付けはされない。基準の重み付け分布は、使用されるX線装置の特性及び試験される構成要素を考慮しつつ、個々の目的に関して各ユーザにより規定される必要がある。異なる重み付けについては、表1からの評価が、重み付け係数を用いた評価に含まれる。
【0073】
品質関数についての経路曲線の最適化によって、試験片のX線撮影能が改善される。X線撮影能の改善により、X線画像品質の改善及びX線画像再構成の改善が可能になる。このため、最適化された品質値の基準が注目される。この基準に関しては、表1によればLC及びTB経路曲線が最良の結果を達成する。
【0074】
LC経路曲線は、比較的単純な進路を有するが、最良の品質が得られる。TB経路曲線の場合、結果は予測可能である:TB経路曲線の特徴的な進路は、タービンブレードの細長いジオメトリの場合に、試験片のX線撮影に関して「悪い」方向を避けるのに適している。円形状又は直線状の経路によって満足できる品質が得られない特殊な試験片のジオメトリの場合には、TB経路曲線は、優れた結果が得られる可能性がある。螺旋状、CC及びCLC経路曲線は、最適化プロセス後に得られる品質が並程度であるため、タービンブレードのX線撮影を最適化するにはあまり適していない。
【0075】
経路曲線の最適化されたパラメータセットによれば、結果としてタービンブレードの最適な経路曲線が得られる。最適化された経路曲線に沿ったものであっても、使用されるタービンブレードのX線撮影能は、X線システムで使用される場合において十分ではない。これは、使用されるX線システムにおいて、X線源(225kVのX線管)の出力が、適切なX線撮影には十分でないためである。このことは既に知られており、問題とはならない。本発明の枠内では、使用されるX線システムに基づく普遍性を制限することなく考案された基本的な最適化手法の概念設計に主として関するためである。この最適化手法は、他のシステム及び他の試験片に転用することができる。
【0076】
最後に、割り当てられた投影画像に関する既知の投影ジオメトリに基づき、例えばSiemens Healthcare GmbHのソフトウェア「CERA Xplorer」のような従来技術より既知の方法及びアルゴリズムによって、試験片の非常に良好な3次元再構成を行うことができる。