(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578384
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】シートアジャスタ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20190909BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
B60N2/16
A47C7/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-567168(P2017-567168)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-522772(P2018-522772A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016062628
(87)【国際公開番号】WO2016206951
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年12月25日
(31)【優先権主張番号】202015103313.3
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516067391
【氏名又は名称】シュヴァルツビッチ,ヨルグ
【氏名又は名称原語表記】SCHWARZBICH, Jorg
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツビッチ,ヨルグ
【審査官】
森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−534018(JP,A)
【文献】
特開2013−224692(JP,A)
【文献】
実開昭54−013507(JP,U)
【文献】
特表2001−520605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
A47C 7/00 − 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部(10)と調整可能部(12)との間に作用するブレーキ(16)であって、前記調整可能部は、当該ブレーキにより前記固定部の上の異なる位置においてその動きが阻止され、解除要素(28)により解除され得るブレーキと、
異なる2つの方向に前記調整可能部(12)を選択的に調整するために前記解除要素に作用する調整要素(22)と、
前記調整要素(22)が作動しない場合には前記調整可能部を前記固定部に自動的に連結するとともに連動してロックし、前記調整要素が作動している場合には自動的に非連結とするロック要素(14)と、を備え、
前記ロック要素の解除と前記調整可能部の調整は、前記調整要素を2つの方向のうちの一方の中立位置から外すことによって達成することができ、
前記ロック要素(14)は、前記調整可能部(12)に連結された歯付きリング(46)と噛み合うための歯付きセグメント(48)を有し、前記固定部(10)の上を案内されて、前記ロック要素が前記歯付きリングと噛み合うロック位置と、前記ロック要素が前記歯付きリングから離れるように動く解除位置との間で、前記歯付きリング(46)の半径方向に移動するシートアジャスタ。
【請求項2】
前記調整要素(22)および前記ロック要素(24)は、前記調整要素(22)の回転運動を、中立位置から離して、ロック要素(14)の解除位置への移動に変換する相補的なカム(60)およびノッチ(58)を有する請求項1に記載のシートアジャスタ。
【請求項3】
前記ロック要素(14)は、ロック位置に弾性付勢されている請求項1又は2に記載のシートアジャスタ。
【請求項4】
前記ブレーキ(16)は、クランプロール式フリーホイールブレーキであり、前記解除要素(28)は前記歯付きリング(46)を形成し、前記解除要素(28)と前記調整可能部(12)との相対回転が、限られた遊びの中でのみ可能であるように前記調整可能部(12)と連結されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のシートアジャスタ。
【請求項5】
前記調整要素(22)には、前記歯付きリング(46)と係合する別の歯付きセグメント(62)を有する、半径方向に移動可能なスライド(20)が設けられている請求項4に記載のシートアジャスタ。
【請求項6】
前記調整要素(22)と前記スライド(20)は、前記調整要素(22)から前記スライドに伝達されるトルクにより、スライド(20)が歯付きリング(46)との係合を確立するべく半径方向移動するように、相補的なカム(60)とノッチ(66)を介して、互いに係合している請求項5に記載のシートアジャスタ。
【請求項7】
前記スライド(20)は、前記調整要素(22)とは独立して同じ回転軸(A)を中心に回転可能な、中立位置に弾性付勢されている解除レバー(18)の上を案内される請求項6に記載のシートアジャスタ。
【請求項8】
前記調整要素(22)は、歯付きリング(76)の軸方向であって、前記解除要素(28)と摩擦係合する位置に弾性付勢されている請求項4〜7のいずれか一項に記載のシートアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部と調整可能部との間に作用するブレーキであって、前記調整可能部は、当該ブレーキにより前記固定部の上の異なる位置においてその動きが阻止され、解除要素により解除され得るブレーキと、異なる2つの方向に前記調整可能部を選択的に調整するために前記解除要素に作用する調整要素と、前記調整要素が作動しない場合には前記調整可能部を前記固定部に自動的に連結するとともに連動してロックし、前記調整要素が作動している場合には自動的に非連結とするロック要素と、を備え、前記ロック要素の解除と前記調整可能部の調整は、前記調整要素を2つの方向のうちの一方の中立位置から外すことによって達成することができるシートアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
EP0979179B2には、この種のシートアジャスタが記載され、このシートアジャスタは、例えばシートバックの傾きや車両シートの高さを調整するために使用される。固定部は、車両シートまたは車体に堅固に取り付けられ、調整可能部は、車両シートの所望の調整を行う。調整要素は、シートを一方向または他方の方向のいずれかに調整するために、2つの反対方向に中立位置から枢動可能なレバーを有する。調整要素で「ポンピング」を繰り返すことにより、より大きな調整範囲にわたって段階的に車両シートを調整することが可能である。調整要素が中立位置から変位すると、ブレーキが調整可能部を連れ回す。使用者が調整要素を解除すると、調整可能部は、その時点で到達した位置においてブレーキによってロックされ、調整要素は、戻りばねの作用によって中立位置に戻され、必要であれば別の調整ストロークが実行され得る。
【0003】
ブレーキは、好ましくは、固定部上の調整可能部の締め付けがクランプローラおよび関連するクランプ輪郭によって行われる、いわゆるフリーホイールブレーキによって形成される。これには、実質的に連続的な調整が可能であるという利点がある。例えばラチェット機構の場合を除き、騒音はほとんど発生しない。しかしながら、調整可能部が、例えば座席高さ調整装置の場合に、車両座席の適切な重量または座っている人の重さのために、より長い時間にわたって永久的に作用するトルクを受ける場合、車両が動いているときに生じる振動は、ブレーキのレースにおけるクランプローラの緩やかなロールオフをもたらし、それにより車両シートの望ましくない漸進的な調整につながる可能性がある。公知の座席調整装置では、調整可能部を連動係合状態で固定部に追加的に固定することによって、この効果は回避される。
【0004】
公知のシートアジャスタにおいて、ロック要素は、枢動可能な爪によって形成される。この爪は、ロック位置において、調整可能部に堅固に結合されたギアリングと係合し、調整操作の初期段階において、ロック位置から傾く。この構成のため、ロック要素は限られたトルクしか耐えられない。
【0005】
安全上の理由から、車両のシートアジャスタは、事故の場合には、衝突時に発生する慣性力によってシートアジャスタに非常に大きなトルクが作用しても、座席を調整位置に安全に保持することができるように設計されなければならない。このため、公知のシートアジャスタのフリーホイールブレーキは、非常に高いトルクの場合であっても、調整可能部が固定部に安全にロックされるように設計されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、よりコンパクトで、低コストで製造することができる上述のタイプのシートアジャスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ロック要素は、調整可能部に連結された歯付きリングと噛み合うための歯付きセグメントを有し、固定部の上を案内されて、前記ロック要素が前記歯付きリングと噛み合うロック位置と、前記ロック要素が前記歯付きリングから離れるように動く解除位置との間で、前記歯付きリングの半径方向に移動する構成により上記目的を達成する。
【0008】
本発明によれば、ロック要素は、歯付きセグメントが歯付きリングと係合し且つ係合しなくなる直線的な並進運動を行うように、固定部の上を案内される。歯付きセグメントは、歯付きリングに比較的大きな周角にわたって延在してもよく、その結果、高トルクが歯付きセグメントに伝達され得る。これにより、ロック要素に伝達される力は調整方向に対して横方向に作用し、リニアガイドのために固定部に直接吸収することができる。このようにして、機械的インターロックによって必要な衝突安全性を達成することができるので、クランプローラを有するブレーキは、たとえば、調整可能部を一時的にのみ、すなわち調整要素を中立位置に復帰移動させる間に保持する必要がある。したがって、ブレーキは、実質的により低いトルクのためにのみ設計される必要があり、コンパクトな設計および低コストの材料の使用および/またはクランプローラの数の低減を可能にする。このようにして、製造コストが低減され、これと同時にシートアジャスタのよりコンパクトな設計が達成され得る。
【0009】
本発明の有用な詳細およびさらなる改良は、従属請求項に示されている。
【0010】
好ましい実施形態において、歯付きリングは、非常に限定された角度範囲内でのみ調整可能部に対して移動可能な解除部材に形成される。したがって、調整可能部の形態嵌合ロックは、解除要素の形態嵌合ロックによっても達成される。
【0011】
解除要素の歯付きリングは、例えば、中立位置から離れた調整部材の移動中にのみ歯付きリングに係合するさらなる歯付きセグメントを介して、解除部材と調整部材との間に解除可能な結合を提供するために使用されてもよい。これにより、調整部材の戻し運動中に歯付きリングから解除され、調整要素がスムーズかつ低騒音で中立位置に戻ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、様々な構成要素が軸方向断面で示されている座席調整装置の分解図である。
【
図2】
図2は、
図1のシートアジャスタのクランプローラ式フリーホイールブレーキの断面図である。
【
図3】
図3は、フリーホイール・ブレーキの軸方向断面内および組立状態における構成要素を示す図である。
【
図4】
図4は、ロック部材及びベースプレートの平面図及び調整部材の中立位置における一部断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に対応する、調整要素が中立位置から回転されている図である。
【
図6】
図6は、ロック要素と歯付きリングとの歯係合の拡大詳細図である。
【
図7】
図7は、ロック要素と歯付きリングとの歯係合の拡大詳細図である。
【
図8】
図8は、シートアジャスタの組立状態における軸方向断面図である。
【
図9】
図9は、リターンレバーとスライドとを調整要素の一部とともに部分的に切断した平面図である。
【
図12】
図12は、シートアジャスタのリターンレバー、スライド、カバーを下面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すシートアジャスタは、固定部として、パンチングメタル製のベースプレート10と、軸線Aを中心に回転可能なピニオン12とを備える。シートアジャスタの他の主な構成要素は、ベースプレート10と共に、他の構成要素を収容する本質的に閉じたケーシングを形成する、プラスチック製のロック要素14と、ブレーキ16と、スライド20を有する戻しレバー18と、調整要素22と、カバー24とを含む。
【0014】
ブレーキ16は、金属製のアウタリング26と、プラスチック製の解除要素28と、アウタリング26の内周面に係合する3対のクランプローラ30と、を有するクランプローラ型のフリーホイールブレーキである。ピニオン12の一部の外周面によってクランプローラ30が形成されている。
【0015】
図2に示すように、インナレース32とアウタリング26の内周面とは、クランプローラ30を収容する隙間を形成する。解除要素28は、3つの爪34を形成し、当該3つの爪34は、各対のクランプローラ30の間の空隙に接続されている。弾性部材36は、これらのクランプローラ30を離間させるために、クランプローラ30の各対の間に配置されている。
【0016】
インナレース32は、完全な円筒形ではなく、各クランプローラ30から隣接する爪34に向かう方向にクランプローラ30の隙間が狭くなるように設計されたクランプ輪郭を形成する。
【0017】
図3に示すように、アウタリング26は、ボルト38によってベースプレート10の上に回転不能に保持されている。ピニオン12のインナレース32に隣接する部分は、解除要素28のボアに受容され、その周囲に溝40が分布している。解除要素28のボアの内面には、遊びをもって溝40に係合する突出リブ42が形成されているので、ピニオン12は解除要素28に対して小さな角度だけ回転可能となる。
【0018】
その結果、2つの回転方向の一方の方向に向かってピニオン12にトルクが作用すると、ピニオン12は、クランプローラ30がアウタリング26に沿って摺動しながら、解除要素28に対して回転する傾向がある。しかしその場合、各対のクランプローラ30のうちの1つが間隙の狭小部分により深く入り込み、アウタリング26とインナレース32との間にクランプ作用を生じさせ、これにより、ピニオン12は、回転不能なアウタリング26に対してその動きが阻止される。
【0019】
これに対して、解除要素28が回転すると、爪34は、隣り合うクランプローラ30の一方を弾性部材36に押し付けて弾性的に付勢することにより、クランプローラ30は、隙間の拡幅部分内に押し込まれ、動かなくなることが防止される。同時に、溝40に係合する突出リブ42がピニオン12を巻き込み、解除要素28とピニオン12とが一緒に回転する。解除要素28が再びトルクから解放されるとすぐに、クランプローラ30は、弾性部材36によってクランプ位置に再び付勢され、ピニオンは、その後に達した位置で再び動かなくなる。
【0020】
図1に示すように、解除要素28は、アウタリング26に跨る部分に、解除要素28の全周囲に形成された歯付きリング46を有する。ロック要素14は、歯付きリング46の周辺部分と係合することができる歯付きセグメント48を有する。ロック要素14は、ベースプレート10の突起50間の摺動のために案内される平板の一般的な形状を有する。
図4に示すように、ロック要素14は実質的に遊びなしに案内され、ベースプレート10から打ち抜かれた突起50は、ベースプレート10とロック要素14との間の安定した形態嵌合が達成され、摺動運動の方向に対して直角な方向に移動するように設計されている。
【0021】
スプリング52は、ロック要素14の凹部54内に受容され、一方ではこの凹部54の壁に支持され、他方ではベースプレート10から曲げられたラグ56に支持され、これにより、ロック要素14は、
図1および
図4の右側に付勢され、歯付きセグメント48が歯付きリング46と係合する位置に移動する。
【0022】
図1及び
図4の右端において、ロック要素14の縁部は、台形状の輪郭を有するノッチ58を形成する。調整要素22は、
図1の右端において、ノッチ58と相補的な台形状の輪郭を有し、
図4に示す中立位置にこのノッチ58に係合する下方に突出するカム60を有する。しかしながら、調整要素22が中立位置から、例えば
図5に示される位置へと回転されると、カム60はノッチ58の側面に乗り上げ、それによってロック要素14のスプリング52の力に打ち勝ち、歯付きセグメント48が歯付きリング46を解除する。両側のノッチ58に隣接するロック要素14の縁部は、調整要素22の回転軸を形成する軸線Aを中心とする円弧に沿って延びる。その結果、カム60は、ノッチ58を残し、歯付きセグメント48が歯付きリング46から離れている位置にロック要素14を保持する。
【0023】
図6は、歯付きリング46と係合する位置にある歯付きセグメント48を示している。
図7は、歯付きリング46から離れた位置にある歯付きセグメント48を示している。歯付きリング46との係合および係合解除の際に、歯付きリング46の歯46aは、ロック要素14の摺動変位方向Xにアンダーカットを形成してはならない。示された例では、
図7の歯付きセグメント48の上端および下端の歯46aの側面が変位の方向と平行であるため、この条件が満たされる。歯46aの側面がより浅いほど、歯付きセグメント48が上記の条件に違反することなく延び得る歯付きリング46の周辺角度範囲が大きくなる。しかしながら、いずれの場合にも、歯の側面は、歯付きリング46の歯と歯付きセグメント48との間でセルフロック動作が達成されるように急峻でなければならないので、これにより、歯付きリング46にトルクが作用するとき、歯付きセグメント48は係合位置から押し出されない。
【0024】
図1に示されているように、戻しレバー18の上を案内されるスライド20は、解除要素28の歯付きリング46と係合することができる歯付きセグメント62も有する。スプリング64は、戻しレバー18を押圧して、歯付きセグメント62が歯付きリング46から離れた位置にスライド20を付勢する。
図1の右側の最外端において、スライド20は台形状の輪郭を有するノッチ66を有する。カム60にも相補的であるが、ロック要素14のノッチ58よりも深い。
【0025】
図8は、解除要素28、スライド20を有する戻しレバー18、調整要素22およびカバー24を、組み立てた状態にて示す。スライド20は、その歯付きセグメント48が解除要素28の歯付きリング46を解除し、調整要素22のカム60がスライド20のノッチ66内に嵌合する位置に示されている。
【0026】
調整要素22は、調整要素22とカバー24との間に設けられた軸受リング70にも係合するピニオン12(
図1)の円筒形延長部68の上で回転するように支持されている。調整要素22の3つの装着アーム72は、カバー24の上壁の円弧状のスロットを通って120°の角度間隔で配置され、これにより、図示されていない作動レバーをカバー24の外側に取り付けることができる。
【0027】
図9は、部分的に断面図で、部分的に平面図で、戻しレバー18およびスライド20ならびにカム60の断面図を示し、
図8と同じ状態を示す。戻しレバー18は、解除要素28に形成されたハブの上で回転可能であり、調整要素22とは独立して軸線Aの周りを回転可能である。
【0028】
軸受リング70は、ピニオン12の円筒形延長部68に圧入され、わずかに円錐形であるので、調整要素22を皿ばねの様式で押圧し、同時にピニオン12のカラー73を引くベースプレート10のボス10aの下縁に当接する(
図1)。このようにして、ピニオン12によって貫通された構成要素が一緒に保持され、さらに、
図8に示すように、作動要素22が解除要素28の上端面に対して付勢される。
【0029】
調整要素22が
図8に示される中立位置から外に回転されると、摩擦接触により解除要素28にトルクを及ぼし、同時にカム60はスライド20のノッチ66の側面に乗り、これによりスライド22は、スプリング64の力に抗して内側にシフトし、
図10および
図11に示す位置に移動する。次に、スライドの歯付きセグメント62が歯付きリング46と係合する。調整要素20の回転が継続されると、スライド22および戻しレバー18によって形成されるユニットは、ノッチ60に連れ回り、この回転運動は、歯付きセグメント62および歯付きリング46を介して解除要素28に伝達される。
【0030】
スライド20およびロック要素14のノッチ66および58は、カム60を備えた調整要素20が中立位置から離れるように動かされるときに、寸法が決定され、これによって歯付きセグメント62と歯付きリング46との間の係合、ひいては解除要素28への駆動接続が確立されると、ロック要素14が同時にロック解除位置にシフトされる。歯付きセグメント62の歯が歯付きリング46の歯と係合する動きの位相は、時間的に重なるか、またはロック要素14の歯付きセグメント48の歯が解除される位相と一致してもよい。そして、調整要素22の回転運動のさらなる過程において、解除要素28により、ブレーキ16の解除およびピニオン12の調整が行われる。
【0031】
ロック要素14に対するスプリング52のバネ力は、枢動の初期段階において、カム60がロック要素14のロックを解除するとき、ユーザが適切な調整プロセスの間の後とほぼ同じ程度高い抵抗を感じるように、好ましくは寸法決めされている。
【0032】
上記の構成により、ピニオンの調整運動を開始させるために調整要素22を中立位置から動かすときに、ユーザが実際にデッドストロークまたは遊びを経験しないことが達成される。
【0033】
図12は、回転した位置にあるカム60、スライド20および戻しレバー18を示している。
図12はさらにカバー24を底面図で示しており、このカバーは軸線Aの周りに円弧状に延びるスプリングトンネル74を形成し、トンネルの延長に続くスプリング76(圧縮ばね)を収容していることがわかる。カバー24は半径方向の壁78を形成しており、この壁はその断面の一部にその端部でスプリングトンネル74を画定している。
【0034】
また、戻しレバー18は、スプリング76のための2つの半径方向に突出した支持体80を形成する。これらの支持部の各々は、スプリング76の対応する端部に係合する曲げラグ82を有する。戻しレバー18が中立位置にあるとき、カバーの半径方向の壁78と面一になっているので、スプリング76の各端部は、壁78の1つと支持体80の1つによって共通に支持される。しかしながら、戻しレバー18が
図12に示すように、スプリングの一端(
図12の上端)はカバーの壁78に支持され、他端は戻しレバーの支持体80に支持されてスプリング76が圧縮される。
【0035】
ここで、作動レバーが解除され、結果として調整要素22にトルクが作用しないとき、スプリング64の力は、スライド20を再び伸ばすようにし、その結果、歯付きセグメント62と歯付きリング76は解除される。このプロセスでは、調整要素22は、カム60が再びノッチ66の中心にくるまで、戻しレバー18に対して僅かに回転される。ここで、戻しレバー18は、スプリング76の力を受け、ピニオン12がブレーキ16に到達した位置に保持されるのに対して、調整要素22もまた中立位置に戻される。
【0036】
調整要素22が中立位置に戻ったらすぐに、カム60をロック要素のノッチ58に再び受け入れることができ、スプリング52はロック要素14をロック位置に自動的に戻すことを保証する。歯46aの三角形の形状のおかげで、実際には、歯の係合の再確立を損なう歯間位置は存在しない。しかしながら、僅かな振動又はクランプローラのロールオフに起因して、解除要素28とロック要素14との間にわずかな回転が生じるときに、係合が確立される。
【0037】
ニュートラル位置に到達したとき、または必要に応じてより早い時点で、調整要素22を再び回転させることによって、ピニオン12を所望の方向に別のステップで回転させることができる。
【0038】
図13は、調整要素22およびカバー24を下面図で示している。カバー24の隠れた輪郭は、カバーの上壁の凹部を画定し、これにより、装着アーム72の回転運動および想像線で示す組立プロセスにおけるカバーの頂壁を通る装着アームのフィードスルーが可能になる。その周壁の下縁には、カバーは、ベースプレート10(
図1)の対応する挿入開口86に係合する突起84を有する。図示されていないネジレスト等は、カバー24をベースプレート10にしっかりと取り付けることができる。ベースプレート10は、シートフレームまたは車体の一部の適切な位置に取り付けることができるので、ピニオン12は、車両シートが調整される変速機の入力歯車または歯付きラック(図示せず)と噛み合うことが理解され得る。