【文献】
Mol. Cancer Ther.,2010年,Vol.9(10),pp.2700-2713
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記がんが、消化管間質腫瘍(GIST)、小細胞肺がん(SCLC)、急性骨髄性白血病(AML)、メラノーマ、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞症、神経線維腫症、乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
前記抗体薬物コンジュゲートが、イマチニブ、スニチニブ、エベロリムス、NVP−LCL161、NVP−BEZ235、NVP−BKM120、NVP−BYL719、NVP−CCG168、NVP−HSP990およびNVP−BVB808からなる群から選択される治療剤と組み合わせて投与される、請求項3に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0114】
本開示は、cKITに結合する抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、および抗
体薬物コンジュゲートを提供する。特に、本開示は、cKITに結合し、そのような結合
の際に内在化する抗体および抗体断片(例えば、抗原結合性断片)に関する。本開示の抗
体および抗体断片(例えば、抗原結合性断片)を、抗体薬物コンジュゲートを生成するた
めに使用することができる。さらに、本開示は、望ましい薬物動態特性および他の望まし
い属性を有し、従って、限定されるものではないが、例えば、消化管間質腫瘍(GIST
)、小細胞肺がん(SCLC)、急性骨髄性白血病(AML)、メラノーマ、肥満細胞白
血病(MCL)、肥満細胞症、神経線維腫症、乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)お
よび膵臓がんなどの、cKITを発現するがんを処置するために使用することができる抗
体薬物コンジュゲートを提供する。本開示はさらに、抗体薬物コンジュゲートを含む医薬
組成物、ならびにがんの処置のためにそのような医薬組成物を作製し、使用する方法を提
供する。
【0115】
抗体薬物コンジュゲート
本開示は、cKITに特異的に結合する抗体、抗原結合性断片またはその機能的等価物
が薬物部分に連結された、抗体薬物コンジュゲートを提供する。一態様では、抗体、抗原
結合性断片またはその機能的等価物は、リンカーによる共有結合を介して、抗がん剤であ
る薬物部分に連結される。抗体薬物コンジュゲートは、有効用量の抗がん剤(例えば、細
胞毒性剤)を、cKITを発現する腫瘍組織に選択的に送達し、それによって、より高い
選択性(およびより低い有効用量)を達成することができる。
【0116】
一態様では、本開示は、式(I):
Ab−(L−(D)
m)
n
(式中、Abは、本明細書に記載のcKIT結合抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)を表し;
Lはリンカーであり;
Dは薬物部分であり;
mは1〜8の整数であり;および
nは1〜20の整数である)
のイムノコンジュゲートを提供する。一態様では、nは1〜10、2〜8、または2〜5
の整数である。特定の態様では、nは3〜4である。いくつかの態様では、mは1である
。いくつかの態様では、mは2、3または4である。
【0117】
薬物と抗体の比率は特定のコンジュゲート分子については正確な整数値を有するが(例
えば、式(I)中でmを掛けたn)、その値は、典型的には、コンジュゲーションステッ
プと関連する、ある程度の不均等性のため、多くの分子を含有する試料を記述するために
使用される場合には平均値であることが多いことを理解されたい。イムノコンジュゲート
の試料に関する平均充填量を、本明細書では薬物と抗体の比率、または「DAR」と呼ぶ
。メイタンシノイドの態様では、これをメイタンシノイドと抗体の比率または「MAR」
と呼ぶことができる。いくつかの態様では、DARは約1〜約5であり、典型的には、約
3、3.5、4、4.5または5である。いくつかの態様では、試料の少なくとも50重
量%は、平均DAR±2を有する化合物であり、好ましくは、試料の少なくとも50%は
、平均DAR±1を含有するコンジュゲートである。他の態様は、DARが約3.5であ
るイムノコンジュゲートを含む。いくつかの態様では、「約n」のDARは、DARの測
定値がnの20%以内にあることを意味する。
【0118】
本開示は、薬物部分に連結またはコンジュゲートされた、本明細書に開示される抗体、
抗体断片(例えば、抗原結合性断片)およびその機能的等価物を含むイムノコンジュゲー
トを提供する。一態様では、薬物部分Dは、構造:
【0119】
【化2】
(式中、波線は抗体薬物コンジュゲートのリンカーへのメイタンシノイドの硫黄原子の共
有結合を示す)
を有するものなどの、メイタンシノイド薬物部分である。Rは、出現する毎に、独立にH
またはC
1〜C
6アルキルである。アミド基を硫黄原子に結合させるアルキレン鎖は、メ
タニル、エタニル、またはプロパニルであってよい、すなわち、mは1、2または3であ
る(米国特許第633,410号、米国特許第5,208,020号、Chari et al. (19
92) Cancer Res. 52; 127-131、Lui et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:8618-86
23)。
【0120】
メイタンシノイド薬物部分の全ての立体異性体、すなわち、メイタンシノイドのキラル
炭素でのRおよびS配置の任意の組合せが、開示されるイムノコンジュゲートについて企
図される。一態様では、メイタンシノイド薬物部分は、以下の立体化学を有する。
【0122】
一態様では、メイタンシノイド薬物部分は、N
2’−デアセチル−N
2’−(3−メル
カプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1としても知られる)である。DM
1は、以下の構造式により表される。
【0124】
別の態様では、メイタンシノイド薬物部分は、N
2’−デアセチル−N
2’−(4−メ
ルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM3としても知られる)である。D
M3は、以下の構造式により表される。
【0126】
別の態様では、メイタンシノイド薬物部分は、N
2’−デアセチル−N
2’−(4−メ
チル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM4としても知られる
)である。DM4は、以下の構造式により表される。
【0128】
薬物部分Dを、リンカーLを介して抗体に連結することができる。Lは、抗体Abを薬
物部分Dに連結することができる任意の化学部分である。リンカーLは、抗体Abを、共
有結合(複数可)を介して薬物Dに結合させる。リンカー試薬は、薬物部分Dと抗体Ab
とを連結して抗体薬物コンジュゲートを形成するために使用することができる二官能性ま
たは多官能性部分である。抗体薬物コンジュゲートを、薬物部分Dおよび抗体Abへの結
合のための反応性官能基を有するリンカーを使用して調製することができる。システイン
、チオールまたはアミン、例えば、抗体のリシンなどのN末端またはアミノ酸側鎖は、リ
ンカー試薬の官能基との結合を形成することができる。
【0129】
一態様では、Lは切断性リンカーである。別の態様では、Lは非切断性リンカーである
。いくつかの態様では、Lは酸不安定リンカー、光不安定リンカー、ペプチダーゼ切断性
リンカー、エステラーゼ切断性リンカー、ジスルフィド結合還元性リンカー、親水性リン
カー、プロチャージリンカー、またはジカルボン酸に基づくリンカーである。
【0130】
薬物部分D、例えば、メイタンシノイドと、抗体Abとの間で非切断性リンカーを形成
する好適な架橋試薬は当業界で周知であり、硫黄原子(SMCCなど)を含む非切断性リ
ンカーまたは硫黄原子を含まないものを形成することができる。薬物部分D、例えば、メ
イタンシノイドと、抗体Abとの間で非切断性リンカーを形成する好ましい架橋試薬は、
マレイミドまたはハロアセチルに基づく部分を含む。本開示によれば、そのような非切断
性リンカーは、マレイミドまたはハロアセチルに基づく部分から誘導されると言われる。
【0131】
マレイミドに基づく部分を含む架橋試薬としては、限定されるものではないが、N−ス
クシンイミジル−4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC
)、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボ
キシレート(スルホ−SMCC)、SMCCの「長鎖」類似体(LC−SMCC)である
N−スクシンイミジル−4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシ−(
6−アミドカプロエート)、κ−マレイミドウンデカン酸(undeconoic acid)N−スク
シンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル
(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−スクシンイミジルエステル(EMCS)、
m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(
α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMSA)、スクシンイミジル
−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシン
イミジル−4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、N−(−p−マ
レオミドフェニル)イソシアネート(PMIP)およびMAL−PEG−NHSなどのポ
リエチレングリコールスペーサを含有するマレイミドに基づく架橋試薬が挙げられる。こ
れらの架橋試薬は、マレイミドに基づく部分から誘導される非切断性リンカーを形成する
。マレイミドに基づく架橋試薬の代表的な構造は、以下に示される。
【0133】
別の態様では、リンカーLは、N−スクシンイミジル−4−(マレイミドメチル)シク
ロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミ
ドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)またはMAL−
PEG−NHSから誘導される。
【0134】
ハロアセチルに基づく部分を含む架橋試薬としては、N−スクシンイミジルヨードアセ
テート(SIA)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(
SIAB)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)およびN−スクシンイミ
ジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。これらの架
橋試薬は、ハロアセチルに基づく部分から誘導される非切断性リンカーを形成する。ハロ
アセチルに基づく架橋試薬の代表的な構造は、以下に示される。
【0136】
一態様では、リンカーLは、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)または
N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)から誘導
される。
【0137】
薬物部分D、例えば、メイタンシノイドと、抗体Abとの間で切断性リンカーを形成す
る好適な架橋試薬は、当業界で周知である。ジスルフィド含有リンカーは、生理的条件下
で起こり得るジスルフィド交換を介して切断可能であるリンカーである。本開示によれば
、そのような切断性リンカーは、ジスルフィドに基づく部分から誘導されると言われる。
好適なジスルフィド架橋試薬としては、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチ
オ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)
ペンタノエート(SPP)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノ
エート(SPDB)およびN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)2−スル
ホ−ブタノエート(スルホ−SPDB)が挙げられ、その構造は以下に示される。これら
のジスルフィド架橋試薬は、ジスルフィドに基づく部分から誘導される切断性リンカーを
形成する。
【0138】
【化9】
N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、
【0139】
【化10】
N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)、
【0140】
【化11】
N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)および
【0141】
【化12】
N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)2−スルホ−ブタノエート(スルホ
−SPDB)。
【0142】
一態様では、リンカーLは、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタ
ノエート(SPDB)から誘導される。
【0143】
薬物部分D、例えば、メイタンシノイドと、抗体Abとの間で荷電リンカーを形成する
好適な架橋試薬は、プロチャージ架橋試薬として知られる。一態様では、リンカーLは、
プロチャージ架橋試薬CX1−1から誘導される。CX1−1の構造は、以下の通りであ
る。
【0144】
【化13】
2,5−ジオキソピロリジン−1−イル17−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−
1H−ピロール−1−イル)−5,8,11,14−テトラオキソ−4,7,10,13
−テトラアザヘプタデカン−1−オエート(CX1−1)。
【0145】
本開示により提供される一態様では、コンジュゲートは、以下の構造式のいずれか1つ
により表される。
【0146】
【化14】
式中、
AbはヒトcKITに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり;
アミド結合とAbの第1級アミンとの形成を介してAbに結合したD−L基の数を示す
nは、1〜20の整数である。一態様において、nは1〜10、2〜8または2〜5の整
数である。特定の態様において、nは3または4である。
【0147】
一態様では、コンジュゲート中の薬物(例えば、DM1またはDM4)と抗体との平均
モル比(すなわち、メイタンシノイド抗体比(MAR)としても知られる、平均w値)は
、約1〜約10、約2〜約8(例えば、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.
4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.
4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.
4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.
4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.
4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.
4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0または8.1)、約2.5〜約7
、約3〜約5、約2.5〜約4.5(例えば、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8
、約2.9、約3.0、約3.1、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7
、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5
)、約3.0〜約4.0、約3.2〜約4.2、または約4.5〜5.5(例えば、約4
.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5
.3、約5.4または約5.5)である。
【0148】
本開示により提供される一態様では、コンジュゲートは実質的に高い純度を有し、以下
の特徴:(a)約90%より多い(例えば、約91%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%、または100%より多いか、またはそれと等しい)
、好ましくは、約95%より多いコンジュゲート種が単量体である、(b)コンジュゲー
ト調製物中の非コンジュゲート化リンカーレベルが約10%未満(例えば、約9%、8%
、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%未満であるか、またはそれと
等しい)である(全リンカーと比較する)、(c)10%未満(例えば、約9%、8%、
7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%未満またはそれと等しい)のコ
ンジュゲート種が架橋している、(d)コンジュゲート調製物中の遊離薬物(例えば、D
M1またはDM4)レベルが約2%未満(例えば、約1.5%、1.4%、1.3%、1
.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0
.4%、0.3%、0.2%、0.1%または0%未満またはそれと等しい)である(全
細胞毒性剤と比較したmol/mol)、のうちの1または複数を有する。
【0149】
本明細書で使用される用語「非コンジュゲート化リンカー」とは、抗体がリンカーを介
して薬物(例えば、DM1またはDM4)に共有的にカップリングしていない、架橋試薬
(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1
)から誘導されるリンカーと共有的に連結された抗体を指す(すなわち、「非コンジュゲ
ート化リンカー」はAb−SMCC、Ab−SPDB、またはAb−CX1−1で表すこ
とができる)。
【0150】
1.薬物部分
本開示は、cKITに特異的に結合するイムノコンジュゲートを提供する。本開示のイ
ムノコンジュゲートは、薬物部分、例えば、抗がん剤、抗血液障害剤、自己免疫処置剤、
抗炎症剤、抗真菌剤、抗細菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、または麻酔剤にコンジュゲ
ートされた抗cKIT抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を
含む。抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を、当業界で公知
の任意の方法を使用して、いくつかの同一の、または異なる薬物部分にコンジュゲートす
ることができる。
【0151】
ある特定の態様では、本開示のイムノコンジュゲートの薬物部分は、V−ATPase
阻害剤、プロアポトーシス剤、Bcl2阻害剤、MCL1阻害剤、HSP90阻害剤、I
AP阻害剤、mTor阻害剤、微小管安定化剤、微小管脱安定化剤、オーリスタチン、ド
ラスタチン、メイタンシノイド、MetAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)、タンパ
ク質CRM1の核輸送の阻害剤、DPPIV阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ミトコンド
リアにおけるホスホリル転移反応の阻害剤、タンパク質合成阻害剤、キナーゼ阻害剤、C
DK2阻害剤、CDK9阻害剤、キネシン阻害剤、HDAC阻害剤、DNA損傷剤、DN
Aアルキル化剤、DNA挿入剤、DNA副溝結合剤およびDHFR阻害剤からなる群から
選択される。
【0152】
一態様では、本開示のイムノコンジュゲートの薬物部分は、限定されるものではないが
、DM1、DM3またはDM4などのメイタンシノイド薬物部分である。
【0153】
さらに、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を、
所与の生物学的応答を改変する薬物部分にコンジュゲートすることができる。薬物部分は
、古典的な化学療法剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所
望の生物活性を有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドであってもよい。その
ようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、コレラ毒素
、もしくはジフテリア毒素などの毒素、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−イン
ターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、
サイトカイン、アポトーシス剤、抗血管新生剤などのタンパク質、または例えば、リンホ
カインなどの生物応答改変剤を含んでもよい。
【0154】
一態様では、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物
は、細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒素などの薬物部分にコンジュ
ゲートされる。細胞毒素の例としては、限定されるものではないが、タキサン(例えば、
国際特許出願(PCT)WO01/38318およびPCT/US03/02675を参
照されたい)、DNAアルキル化剤(例えば、CC−1065類似体)、アントラサイク
リン、ツブリシン(tubulysin)類似体、デュオカルマイシン類似体、オーリスタチンE
、オーリスタチンF、メイタンシノイド、ならびに反応性ポリエチレングリコール部分(
例えば、Sasse et al., J. Antibiot. (Tokyo), 53, 879-85 (2000)、Suzawa et al., Bi
oorg. Med. Chem., 8, 2175-84 (2000)、Ichimura et al., J. Antibiot. (Tokyo), 44,
1045-53 (1991)、Francisco et al., Blood 2003 15;102(4):1458-65、米国特許第5,4
75,092号、第6,340,701号、第6,372,738号、および第6,43
6,931号、米国特許出願公開第2001/0036923A1号、係属中米国特許出
願第10/024,290号および第10/116,053号、ならびに国際特許出願(
PCT)WO01/49698を参照されたい)を含む細胞毒性剤、タキソン、サイトカ
ラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、
テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、t.コルヒチン、ドキソルビシン、ダウ
ノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ア
クチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テト
ラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにその類似体
または相同体が挙げられる。また、治療剤としては、例えば、代謝拮抗剤(例えば、メト
トレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウ
ラシルデカルバジン)、削摩剤(ablating agent)(例えば、メクロレタミン、チオテパ
クロラムブシル、メイファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU
)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、
マイトマイシンC、およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチ
ン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキ
ソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレ
オマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分
裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)も挙げられる(例えば、Seattle
GeneticsのUS20090304721を参照されたい)。
【0155】
本開示の抗体、抗体断片(抗原結合性断片)または機能的等価物にコンジュゲートする
ことができる細胞毒素の他の例としては、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイ
タンシンおよびオーリスタチン、ならびにその誘導体が挙げられる。
【0156】
治療剤を抗体にコンジュゲートするための様々な型の細胞毒素、リンカーおよび方法は
、当業界で公知であり、例えば、Saito et al., (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-
215; Trail et al., (2003) Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337; Payne, (2003)
Cancer Cell 3:207-212; Allen, (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763; Pastan and Krei
tman, (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091; Senter and Springer, (2001
) Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264を参照されたい。
【0157】
本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を、放射性ア
イソトープにコンジュゲートして、放射性イムノコンジュゲートと呼ばれる、細胞毒性放
射性薬剤を作成することもできる。診断的または治療的に使用するために抗体にコンジュ
ゲートすることができる放射性アイソトープの例としては、限定されるものではないが、
ヨウ素−131、インジウム−111、イットリウム−90、およびルテチウム−177
が挙げられる。放射性イムノコンジュゲートを調製するための方法は、当業界で確立され
ている。放射性イムノコンジュゲートの例は、Zevalin(商標)(IDEC Ph
armaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa Pharm
aceuticals)など、商業的に入手可能であり、同様の方法を使用して、本明細
書に開示される抗体を使用して放射性イムノコンジュゲートを調製することができる。あ
る特定の態様では、大環状キレート剤は、リンカー分子を介して抗体に結合させることが
できる1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四
酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分子は、当業界で一般に公知であり、それ
ぞれ全体が参照により組み込まれる、Denardo et al., (1998) Clin Cancer Res. 4(10):
2483-90; Peterson et al., (1999) Bioconjug. Chem. 10(4):553-7; およびZimmerman e
t al., (1999) Nucl. Med. Biol. 26(8):943-50に記載されている。
【0158】
本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を、異種タン
パク質またはポリペプチド(またはその断片、好ましくは、少なくとも10、少なくとも
20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも
70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸のポリペプチド
)にコンジュゲートして、融合タンパク質を作成することもできる。特に、本開示は、本
明細書に記載の抗体断片(例えば、抗原結合性断片)(例えば、Fab断片、Fd断片、
Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメインまたはVL
CDR)と、異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドとを含む融合タンパク質を
提供する。
【0159】
さらなる融合タンパク質を、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソ
ンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(集合的に、「DNAシャッフ
リング」と呼ばれる)の技術により作成することができる。DNAシャッフリングを使用
して、本開示の抗体またはその断片の活性(例えば、より高い親和性およびより低い解離
速度を有する抗体またはその断片)を変化させることができる。一般に、米国特許第5,
605,793号、第5,811,238号、第5,830,721号、第5,834,
252号、および第5,837,458号; Patten et al., (1997) Curr. Opinion Biot
echnol. 8:724-33; Harayama, (1998) Trends Biotechnol. 16(2):76-82; Hansson et al
., (1999) J. Mol. Biol. 287:265-76; およびLorenzo and Blasco, (1998) Biotechniqu
es 24(2):308-313(これらの特許および刊行物の各々は、その全体が参照により本明細書
に組み込まれる)を参照されたい。抗体もしくはその断片、またはコードされた抗体もし
くはその断片は、組換え前に変異性PCR、無作為ヌクレオチド挿入または他の方法によ
り無作為突然変異誘発にかけることにより変化させることができる。抗原に特異的に結合
する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを、1または複数の異種分子の、
1または複数の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などと組み換えるこ
とができる。
【0160】
さらに、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を、
ペプチドなどのマーカー配列にコンジュゲートして、精製を容易にすることができる。好
ましい態様では、マーカーアミノ酸配列は、特に、pQEベクター(QIAGEN,In
c.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,CA,91311)
に提供されるタグなどのヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、その多くが商業的に入手可
能である。Gentz et al., (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載のよう
に、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の好都合の精製を提供する。精製に
とって有用な他のペプチドタグとしては、限定されるものではないが、インフルエンザヘ
マグルチニンタンパク質から誘導されるエピトープに対応するヘマグルチニン(「HA」
)タグ(Wilson et al., (1984) Cell 37:767)、および「FLAG」タグ(A. Einhauer
et al., J. Biochem. Biophys. Methods 49: 455-465, 2001)が挙げられる。本開示に
記載されるように、抗体または抗原結合性断片を、腫瘍浸透ペプチドにコンジュゲートし
て、その効果を増強することもできる。
【0161】
他の態様では、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価
物は、診断剤または検出剤にコンジュゲートされる。そのようなイムノコンジュゲートは
、特定の療法の効果の決定などの、臨床試験手順の一部として疾患または障害の開始、発
生、進行および/または重症度をモニタリングまたは予後診断するのに有用であり得る。
そのような診断および検出を、限定されるものではないが、西洋わさびペルオキシダーゼ
、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラ
ーゼなどの様々な酵素;限定されるものではないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよ
びアビジン/ビオチンなどの補欠分子族;限定されるものではないが、Alexa Fl
uor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、
Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fl
uor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、
Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fl
uor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、
Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fl
uor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、
ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、
ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリン
などの蛍光材料;限定されるものではないが、ルミノールなどの発光材料;限定されるも
のではないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどの生物発光材料;
限定されるものではないが、ヨウ素(
131I、
125I、
123I、および
121I)
、炭素(
14C)、硫黄(
35S)、トリチウム(
3H)、インジウム(
115In、
1
13In、
112In、および
111In)、テクネチウム(
99Tc)、タリウム(
2
01Ti)、ガリウム(
68Ga、
67Ga)、パラジウム(
103Pd)、モリブデン
(
99Mo)、キセノン(
133Xe)、フッ素(
18F)、
153Sm、
177Lu、
159Gd、
149Pm、
140La、
175Yb、
166Ho、
90Y、
47Sc、
1
86Re、
188Re、
142Pr、
105Rh、
97Ru、
68Ge、
57Co、
65
Zn、
85Sr、
32P、
153Gd、
169Yb、
51Cr、
54Mn、
75Se、
6
4Cu、
113Sn、および
117Snなどの放射性材料;ならびに様々なポジトロン放
出断層撮影を使用するポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンなどの、検
出可能物質に抗体をカップリングさせることにより達成することができる。
【0162】
本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を、標的抗原
のイムノアッセイまたは精製にとって特に有用である固相支持体に結合することもできる
。そのような固相支持体としては、限定されるものではないが、ガラス、セルロース、ポ
リアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが挙
げられる。
【0163】
2.リンカー
本明細書で使用される場合、「リンカー」は、薬物部分などの別の部分に、抗体、抗体
断片(例えば、抗原結合性断片)または機能的等価物を連結することができる任意の化学
部分である。リンカーは、化合物または抗体が活性を保持する条件下で、酸誘導性切断、
光誘導性切断、ペプチダーゼ誘導性切断、エステラーゼ誘導性切断、およびジスルフィド
結合切断などの切断の影響を受けやすいものであってもよい(切断性リンカー)。あるい
は、リンカーは、切断に対して実質的に耐性であってもよい(例えば、安定性リンカーま
たは非切断性リンカー)。いくつかの態様では、リンカーは、プロチャージリンカー、親
水性リンカー、またはジカルボン酸に基づくリンカーである。
【0164】
一態様では、使用されるリンカーは、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチ
オ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)
ペンタノエート(SPP)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノ
エート(SPDB)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)−2−スルホ
−ブタノエート(スルホ−SPDB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA
)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、マ
レイミドPEG NHS、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサ
ンカルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル4−(マレイミドメチル
)シクロヘキサンカルボキシレート(スルホ−SMCC)または2,5−ジオキソピロリ
ジン−1−イル17−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イ
ル)−5,8,11,14−テトラオキソ−4,7,10,13−テトラアザヘプタデカ
ン−1−オエート(CX1−1)などの架橋試薬から誘導される。別の態様では、使用さ
れるリンカーは、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(
SPDP)、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシ
レート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキ
サンカルボキシレート(スルホ−SMCC)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジ
ルジチオ)−2−スルホ−ブタノエート(スルホ−SPDB)または2,5−ジオキソピ
ロリジン−1−イル17−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1
−イル)−5,8,11,14−テトラオキソ−4,7,10,13−テトラアザヘプタ
デカン−1−オエート(CX1−1)などの架橋剤から誘導される。
【0165】
非切断性リンカーは、安定な、共有的な様式でメイタンシノイドなどの薬物を、抗体に
連結することができ、切断性リンカーについて上記に列挙されたカテゴリーの下から外れ
ない任意の化学部分である。かくして、非切断性リンカーは、酸誘導性切断、光誘導性切
断、ペプチダーゼ誘導性切断、エステラーゼ誘導性切断およびジスルフィド結合切断に対
して実質的に耐性である。さらに、非切断性とは、メイタンシノイドなどの薬物または抗
体がその活性を喪失しない条件下で、酸、光不安定性切断剤、ペプチダーゼ、エステラー
ゼ、またはジスルフィド結合を切断する化学的もしくは生理的化合物により誘導される切
断に耐える、リンカー中の、またはリンカーに隣接する化学的結合の能力を指す。
【0166】
酸不安定リンカーは、酸性pHで切断可能なリンカーである。例えば、エンドソームお
よびリソソームなどの特定の細胞内区画は、酸性pH(pH4〜5)を有し、酸不安定リ
ンカーを切断するのに好適な条件を提供する。
【0167】
光不安定リンカーは、光に接近可能である体表面で、および多くの体腔において有用で
あるリンカーである。さらに、赤外線は組織に浸透することができる。
【0168】
いくつかのリンカーは、ペプチダーゼ、すなわち、ペプチダーゼ切断性リンカーにより
切断することができる。特定のペプチドのみが、細胞の内部または外部で容易に切断され
る。例えば、Trout et al., 79 Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 626-629 (1982)およびUmem
oto et al. 43 Int. J. Cancer, 677-684 (1989)を参照されたい。さらに、ペプチドは、
α−アミノ酸と、化学的には、あるアミノ酸のカルボキシレート基と、第2のアミノ酸の
アミノ基との間のアミド結合であるペプチド結合とから構成される。リシンのカルボキシ
レート基およびε−アミノ基との間の結合などの他のアミド結合は、ペプチド結合ではな
いと理解され、非切断性であると考えられる。
【0169】
いくつかのリンカーは、エステラーゼにより切断することができる、すなわち、エステ
ラーゼ切断性リンカーである。再度、特定のエステルのみを、細胞の内部または外部に存
在するエステラーゼにより切断することができる。エステルは、カルボン酸とアルコール
との縮合により形成される。単純エステルは、脂肪族アルコール、ならびに小環状および
低分子芳香族アルコールなどの、単純アルコールを使用して生成されるエステルである。
【0170】
プロチャージリンカーは、抗体薬物コンジュゲートへの組込み後にその電荷を保持する
荷電した架橋試薬から誘導される。プロチャージリンカーの例を、US2009/027
4713に見出すことができる。
【0171】
3.ADCのコンジュゲーションおよび調製
本開示のコンジュゲートを、米国特許第7,811,572号、第6,411,163
号、第7,368,565号、および第8,163,888号、ならびに米国特許出願公
開第2011/0003969号、第2011/0166319号、第2012/025
3021号および第2012/0259100号に記載のものなどの当業界で公知の任意
の方法により調製することができる。これらの特許および特許出願公開の全教示は、参照
により本明細書に組み込まれる。
【0172】
1ステッププロセス
一態様では、本開示のコンジュゲートを、1ステッププロセスによって調製することが
できる。このプロセスは、実質的に水性の媒体中で抗体、薬物および架橋剤を混合するこ
と、任意選択で、好適なpHで1または複数の共溶媒を含有させることを含む。一態様で
は、プロセスは、本開示の抗体を、薬物(例えば、DM1またはDM4)と接触させて、
抗体と薬物とを含む第1の混合物を形成させるステップ、次いで、約4〜約9のpHを有
する溶液中で、抗体と薬物とを含む第1の混合物を、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ
−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させて、(i)コン
ジュゲート(例えば、Ab−MCC−DM1、Ab−SPDB−DM4、またはAb−C
X1−1−DM1)、(ii)遊離薬物(例えば、DM1またはDM4)、および(ii
i)反応副生成物を含む混合物を提供するステップを含む。
【0173】
一態様では、1ステッププロセスは、約6以上(例えば、約6〜約9、約6〜約7、約
7〜約9、約7〜約8.5、約7.5〜約8.5、約7.5〜約8.0、約8.0〜約9
.0、または約8.5〜約9.0)のpHを有する溶液中で、抗体を、薬物(例えば、D
M1またはDM4)、次いで、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB
、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させることを含む。例えば、プロセスは、
約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、
約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、
約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、
約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9または約9.0のpHを
有する溶液中で、細胞結合剤を、薬物(DM1またはDM4)、次いで、架橋剤(例えば
、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触
させることを含む。別の態様では、プロセスは、約7.8のpH(例えば、7.6〜8.
0のpHまたは7.7〜7.9のpH)を有する溶液中で、細胞結合剤を、薬物(例えば
、DM1またはDM4)、次いで、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SP
DB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させることを含む。
【0174】
1ステッププロセス(すなわち、抗体を薬物(例えば、DM1またはDM4)、次いで
、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはC
X1−1)と接触させること)を、当業界で公知の任意の好適な温度で実行することがで
きる。例えば、1ステッププロセスは、約20℃以下(例えば、約−10℃(例えば、細
胞毒性剤および二官能性架橋試薬を溶解するために使用される有機溶媒の存在によって、
溶液の凍結が防止されるという条件で)〜約20℃、約0℃〜約18℃、約4℃〜約16
℃)、または室温(例えば、約20℃〜約30℃もしくは約20℃〜約25℃)、または
高温(例えば、約30℃〜約37℃)で行ってもよい。一態様では、1ステッププロセス
は、約16℃〜約24℃(例えば、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃
、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、または約25℃)の温度で行う。別の態様
では、1ステッププロセスは、約15℃以下(例えば、約−10℃〜約15℃、または約
0℃〜約15℃)の温度で実行される。例えば、プロセスは、例えば、架橋剤(例えば、
SMCC、スルホ−SMCC、スルホ−SPDB、SPDB、またはCX1−1)を溶解
するために使用される有機溶媒(複数可)の存在によって、溶液の凍結が防止されるとい
う条件で、約15℃、約14℃、約13℃、約12℃、約11℃、約10℃、約9℃、約
8℃、約7℃、約6℃、約5℃、約4℃、約3℃、約2℃、約1℃、約0℃、約−1℃、
約−2℃、約−3℃、約−4℃、約−5℃、約−6℃、約−7℃、約−8℃、約−9℃、
または約−10℃の温度で、抗体を、薬物(例えば、DM1またはDM4)、次いで、架
橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDB、またはCX
1−1)と接触させることを含む。一態様では、プロセスは、約−10℃〜約15℃、約
0℃〜約15℃、約0℃〜約10℃、約0℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約10℃〜約
15℃、または約5℃〜約10℃の温度で、抗体を、薬物(例えば、DM1またはDM4
)、次いで、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPD
BまたはCX1−1)と接触させることを含む。別の態様では、プロセスは、約10℃の
温度(例えば、8℃〜12℃の温度または9℃〜11℃の温度)で、抗体を、薬物(例え
ば、DM1またはDM4)、次いで、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、S
PDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させることを含む。
【0175】
一態様では、上記の接触は、抗体を提供した後、該抗体を薬物(例えば、DM1または
DM4)と接触させて、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む第1の混合
物を形成させ、次いで、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む第1の混合
物を、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまた
はCX1−1)と接触させることにより行われる。例えば、一態様では、抗体を反応容器
中に提供し、薬物(例えば、DM1またはDM4)を反応容器に添加し(それによって、
抗体を接触させる)、次いで、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB
、スルホ−SPDBまたはCX1−1)を、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)
とを含む混合物に添加する(それによって、抗体と薬物とを含む混合物を接触させる)。
一態様では、抗体を反応容器中に提供し、抗体を容器に提供する直後に、薬物(例えば、
DM1またはDM4)を反応容器に添加する。別の態様では、抗体を反応容器中に提供し
、抗体を容器に提供した後の時間間隔後(例えば、細胞結合剤を空間に提供した後約5分
、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約1日以上後)に、
薬物(例えば、DM1またはDM4)を反応容器に添加する。薬物(例えば、DM1また
はDM4)を、迅速に(すなわち、約5分、約10分などの短い時間間隔以内に)または
ゆっくりと(ポンプを使用するなど)添加することができる。
【0176】
次いで、抗体を薬物(例えば、DM1もしくはDM4)と接触させた直後に、または抗
体を薬物(例えば、DM1もしくはDM4)と接触させた後のいくらか後の時点で(例え
ば、約5分〜約8時間以上)、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)を含む混合物
を、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたは
CX1−1)と接触させることができる。例えば、一態様では、抗体を含む反応容器への
薬物(例えば、DM1またはDM4)の添加の直後に、架橋剤(例えば、SMCC、スル
ホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)を、抗体と薬物(例えば
、DM1またはDM4)とを含む混合物に添加する。あるいは、抗体を薬物(例えば、D
M1またはDM4)と接触させた後、約5分、約10分、約20分、約30分、約1時間
、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間以上で、抗
体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む混合物を、架橋剤(例えば、SMCC
、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させること
ができる。
【0177】
抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む混合物を架橋剤(例えば、SMC
C、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させた後
、反応を約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約
8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約
15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間
、約22時間、約23時間、約24時間以上(例えば、約30時間、約35時間、約40
時間、約45時間、または約48時間)進行させる。
【0178】
一態様では、1ステッププロセスは、未反応の薬物(例えば、DM1もしくはDM4)
および/または未反応の架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スル
ホ−SPDBもしくはCX1−1)をクエンチするためのクエンチングステップをさらに
含む。クエンチングステップは、典型的には、コンジュゲートの精製前に行われる。一態
様では、混合物をクエンチング試薬と接触させることにより、混合物をクエンチする。本
明細書で使用される場合、「クエンチング試薬」とは、遊離薬物(例えば、DM1もしく
はDM4)および/または架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、ス
ルホ−SPDBまたはCX1−1)と反応する試薬を指す。一態様では、4−マレイミド
酪酸、3−マレイミドプロピオン酸、N−エチルマレイミド、ヨードアセトアミド、また
はヨードアセトアミドプロピオン酸などのマレイミドまたはハロアセトアミドクエンチン
グ試薬を使用して、薬物(例えば、DM1またはDM4)中の任意の未反応の基(チオー
ルなど)がクエンチされたことを確保することができる。クエンチングステップは、薬物
(例えば、DM1)の二量体化を防止するのに役立ち得る。二量体化したDM1は、除去
するのが困難であり得る。極性の荷電したチオールクエンチング試薬(4−マレイミド酪
酸または3−マレイミドプロピオン酸など)を使用するクエンチングの際に、過剰の未反
応のDM1は、精製ステップの間に共有的に連結したコンジュゲートから容易に分離する
ことができる極性の荷電した水溶性付加物に変換される。非極性および中性チオールクエ
ンチング試薬を使用するクエンチングを使用することもできる。一態様では、混合物を、
未反応の架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBま
たはCX1−1)と反応するクエンチング試薬と接触させることにより、混合物をクエン
チする。例えば、求核試薬を混合物に添加して、任意の未反応のSMCCをクエンチする
ことができる。好ましくは、求核試薬は、リシン、タウリンおよびヒドロキシルアミンな
どの、アミノ基含有求核試薬である。
【0179】
別の態様では、反応(すなわち、抗体を、薬物(例えば、DM1またはDM4)、次い
で、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたは
CX1−1)と接触させること)を、混合物をクエンチング試薬と接触させた後、完了ま
で進行させる。これに関して、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む混合
物を架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたは
CX1−1)と接触させた後、クエンチング試薬を約1時間〜約48時間(例えば、約1
時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9
時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約
16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間
、約23時間、約24時間または約25時間〜約48時間)混合物に添加する。
【0180】
あるいは、混合物のpHを約5.0(例えば、4.8、4.9、5.0、5.1または
5.2)に低下させることにより、混合物をクエンチする。別の態様では、pHを6.0
未満、5.5未満、5.0未満、4.8未満、4.6未満、4.4未満、4.2未満、4
.0未満に低下させることにより、混合物をクエンチする。あるいは、pHを、約4.0
(例えば、3.8、3.9、4.0、4.1または4.2)〜約6.0(例えば、5.8
、5.9、6.0、6.1または6.2)、約4.0〜約5.0、約4.5(例えば、4
.3、4.4、4.5、4.6または4.7)〜約5.0に低下させる。一態様では、混
合物のpHを4.8に低下させることにより、混合物をクエンチする。別の態様では、混
合物のpHを5.5に低下させることにより、混合物をクエンチする。
【0181】
一態様では、1ステッププロセスは、不安定に結合したリンカーを抗体から遊離させる
ための保持ステップをさらに含む。保持ステップは、コンジュゲートの精製前(例えば、
反応ステップの後、反応ステップとクエンチングステップの間、またはクエンチングステ
ップの後)に混合物を保持することを含む。例えば、プロセスは、(a)抗体を薬物(例
えば、DM1またはDM4)と接触させて、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)
とを含む混合物を形成させるステップ;次いで、約4〜約9のpHを有する溶液中で、抗
体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む混合物を、架橋剤(例えば、SMCC
、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させて、(
i)コンジュゲート(例えば、Ab−MCC−DM1、Ab−SPDB−DM4またはA
b−CX1−1−DM1)、(ii)遊離薬物(例えば、DM1またはDM4)、および
(iii)反応副生成物を含む混合物を提供するステップ、(b)ステップ(a)で調製
された混合物を保持して、不安定に結合したリンカーを細胞結合剤から遊離させるステッ
プ、ならびに(c)混合物を精製して、精製されたコンジュゲートを提供するステップを
含む。
【0182】
別の態様では、プロセスは、(a)抗体を薬物(例えば、DM1またはDM4)と接触
させて、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む混合物を形成させるステッ
プ;次いで、約4〜約9のpHを有する溶液中で、抗体と薬物(例えば、DM1またはD
M4)とを含む混合物を、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、ス
ルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させて、(i)コンジュゲート、(ii)遊離
薬物(例えば、DM1またはDM4)、および(iii)反応副生成物を含む混合物を提
供するステップ、(b)ステップ(a)で調製された混合物をクエンチして、任意の未反
応の薬物(例えば、DM1もしくはDM4)および/または未反応の架橋剤(例えば、S
MCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)をクエンチ
するステップ、(c)ステップ(b)で調製された混合物を保持して、不安定に結合した
リンカーを細胞結合剤から遊離させるステップ、ならびに(d)混合物を精製して、精製
されたコンジュゲート(例えば、Ab−MCC−DM1、Ab−SPDB−DM4または
Ab−CX1−1−DM1)を提供するステップを含む。
【0183】
あるいは、保持ステップを、コンジュゲートの精製後に実施した後、さらなる精製ステ
ップを行うことができる。
【0184】
別の態様では、保持ステップの前に反応を完了まで進行させる。これに関して、保持ス
テップを、抗体と薬物(例えば、DM1またはDM4)とを含む混合物を架橋剤(例えば
、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触
させた後、約1時間〜約48時間(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、
約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12
時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約
19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間または約24
時間〜約48時間)実施することができる。
【0185】
保持ステップは、好適な期間(例えば、約1時間〜約1週間、約1時間〜約24時間、
約1時間〜約8時間、または約1時間〜約4時間)にわたって好適な温度(例えば、約0
℃〜約37℃)で溶液を維持して、安定に結合したリンカーを抗体から実質的に遊離させ
ないが、不安定に結合したリンカーを抗体から遊離させることを含む。一態様では、保持
ステップは、約20℃以下(例えば、約0℃〜約18℃、約4℃〜約16℃)、室温(例
えば、約20℃〜約30℃もしくは約20℃〜約25℃)、または高温(例えば、約30
℃〜約37℃)で溶液を維持することを含む。一態様では、保持ステップは、約16℃〜
約24℃(例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約
21℃、約22℃、約23℃、約24℃、または約25℃)の温度で溶液を維持すること
を含む。別の態様では、保持ステップは、約2℃〜約8℃(例えば、約0℃、約1℃、約
2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、または約10℃)の
温度で溶液を維持することを含む。別の態様では、保持ステップは、約37℃(例えば、
約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、または約40℃)の温
度で溶液を維持することを含む。
【0186】
保持ステップの持続期間は、保持ステップが行われる温度およびpHに依存する。例え
ば、保持ステップの持続期間は、高温で保持ステップを行うことにより実質的に減少させ
ることができ、その最大温度は細胞結合剤−細胞毒性剤コンジュゲートの安定性によって
制限される。保持ステップは、約1時間〜約1日(例えば、約1時間、約2時間、約3時
間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約1
2時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、または約24
時間)、約10時間〜約24時間、約12時間〜約24時間、約14時間〜約24時間、
約16時間〜約24時間、約18時間〜約24時間、約20時間〜約24時間、約5時間
〜約1週間、約20時間〜約1週間、約12時間〜約1週間(例えば、約12時間、約1
6時間、約20時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、または約
7日)または約1日〜約1週間にわたって溶液を維持することを含んでもよい。
【0187】
一態様では、保持ステップは、少なくとも約12時間から最大で1週間までの期間にわ
たって約2℃〜約8℃の温度で溶液を維持することを含む。別の態様では、保持ステップ
は、一晩(例えば、約12〜約24時間、好ましくは、約20時間)、約2℃〜約8℃の
温度で溶液を維持することを含む。
【0188】
保持ステップのためのpH値は、好ましくは、約4〜約10である。一態様では、保持
ステップのためのpH値は、約4以上であるが、約6未満である(例えば、4〜5.9)
か、または約5以上であるが、約6未満である(例えば、5〜5.9)。別の態様では、
保持ステップのためのpH値は、約6〜約10の範囲(例えば、約6.5〜約9、約6〜
約8)である。例えば、保持ステップのためのpH値は、約6、約6.5、約7、約7.
5、約8、約8.5、約9、約9.5、または約10であってもよい。
【0189】
他の態様では、保持ステップは、約12時間〜約1週間にわたって、約6〜7.5のp
Hで25℃で混合物をインキュベートすること、約5時間〜約5日間にわたって、約4.
5〜5.9のpHで4℃で混合物をインキュベートすること、または約5時間〜約1日間
にわたって、約4.5〜5.9のpHで25℃で混合物をインキュベートすることを含ん
でもよい。
【0190】
1ステッププロセスは、任意選択で、コンジュゲートの可溶性および回収を増加させる
ための反応ステップへのスクロースの添加を含んでもよい。望ましくは、約0.1%(w
/v)〜約20%(w/v)(例えば、約0.1%(w/v)、1%(w/v)、5%(
w/v)、10%(w/v)、15%(w/v)、または20%(w/v))の濃度でス
クロースを添加する。好ましくは、約1%(w/v)〜約10%(w/v)(例えば、約
0.5%(w/v)、約1%(w/v)、約1.5%(w/v)、約2%(w/v)、約
3%(w/v)、約4%(w/v)、約5%(w/v)、約6%(w/v)、約7%(w
/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、約10%(w/v)、または約11%(
w/v))の濃度でスクロースを添加する。さらに、反応ステップはまた、緩衝剤の添加
をも含んでもよい。当業界で公知の任意の好適な緩衝剤を使用することができる。好適な
緩衝剤としては、例えば、クエン酸バッファー、酢酸バッファー、コハク酸バッファー、
およびリン酸バッファーが挙げられる。一態様では、緩衝剤は、HEPPSO(N−(2
−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸))、P
OPSO(ピペラジン−1,4−ビス−(2−ヒドロキシ−プロパン−スルホン酸)無水
物)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)
、HEPPS(EPPS)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンス
ルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンス
ルホン酸)、およびその組合せからなる群から選択される。
【0191】
1ステッププロセスは、混合物を精製して、精製されたコンジュゲート(例えば、Ab
−MCC−DM1、Ab−SPDB−DM4またはAb−CX1−1−DM1)を提供す
るステップをさらに含んでもよい。当業界で公知の任意の精製方法を使用して、本開示の
コンジュゲートを精製することができる。一態様では、本開示のコンジュゲートは、タン
ジェンシャルフロー濾過(TFF)、非吸着クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィ
ー、吸着濾過、選択的沈降、または任意の他の好適な精製プロセス、ならびにその組合せ
を使用する。別の態様では、コンジュゲートを上記の精製プロセスにかける前に、1また
は複数のPVDF膜を通してコンジュゲートを最初に濾過する。あるいは、コンジュゲー
トを上記の精製プロセスにかけた後に、1または複数のPVDF膜を通してコンジュゲー
トを濾過する。例えば、一態様では、コンジュゲートを1または複数のPVDF膜を通し
て濾過した後、タンジェンシャルフロー濾過を使用して精製する。あるいは、コンジュゲ
ートをタンジェンシャルフロー濾過を使用して精製した後、1または複数のPVDF膜を
通して濾過する。
【0192】
Pellicon(登録商標)型システム(Millipore、Billerica
、MA)、Sartocon(登録商標)Cassetteシステム(Sartoriu
s AG、Edgewood、NY)、およびCentrasette(登録商標)型シ
ステム(Pall Corp.、East Hills、NY)などの、任意の好適なT
FFシステムを精製のために使用することができる。
【0193】
任意の好適な吸着クロマトグラフィー樹脂を、精製のために使用することができる。好
ましい吸着クロマトグラフィー樹脂としては、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー
(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー、混合様式イオン交換クロマトグラフィー、
固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)、染料リガンドクロマトグラフィー、
親和性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、およびその組合せが挙げられる。
好適なヒドロキシアパタイト樹脂の例としては、セラミックヒドロキシアパタイト(CH
T Type IおよびType II、Bio−Rad Laboratories、
Hercules、CA)、HA Ultrogel(登録商標)ヒドロキシアパタイト
(Pall Corp.、East Hills、NY)、およびセラミックフルオロア
パタイト(CFT Type IおよびType II、Bio−Rad Labora
tories、Hercules、CA)が挙げられる。好適なHCIC樹脂の例は、M
EP Hypercel(登録商標)樹脂(Pall Corp.、East Hill
s、NY)である。好適なHIC樹脂の例としては、ブチル−セファロース、ヘキシル−
セファロース、フェニル−セファロース、およびオクチルセファロース樹脂(全てGE
Healthcare、Piscataway、NJから)、ならびにMacro−pr
ep(登録商標)メチルおよびMacro−Prep(登録商標)t−ブチル樹脂(Bi
orad Laboratories、Hercules、CA)が挙げられる。好適な
イオン交換樹脂の例としては、SP−Sepharose(登録商標)、CM−Seph
arose(登録商標)、およびQ−Sepharose(登録商標)樹脂(全てGE
Healthcare、Piscataway、NJから)、ならびにUnospher
e(登録商標)S樹脂(Bio−Rad Laboratories、Hercules
、CA)が挙げられる。好適な混合様式イオン交換体の例としては、Bakerbond
(登録商標)ABx樹脂(JT Baker、Phillipsburg、NJ)が挙げ
られる。好適なIMAC樹脂の例としては、Chelating Sepharose(
登録商標)樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ)およびP
rofinity(登録商標)IMAC樹脂(Bio−Rad Laboratorie
s、Hercules、CA)が挙げられる。好適な染料リガンド樹脂の例としては、ブ
ルーセファロース樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ)お
よびAffi−gelブルー樹脂(Bio−Rad Laboratories、Her
cules、CA)が挙げられる。好適な親和性樹脂の例としては、プロテインAセファ
ロース樹脂(例えば、MabSelect、GE Healthcare、Piscat
away、NJ)および抗体が適切なレクチン結合部位を担持する、レクチン親和性樹脂
、例えば、Lentil Lectin Sepharose(登録商標)樹脂(GE
Healthcare、Piscataway、NJ)が挙げられる。好適な逆相樹脂の
例としては、C4、C8、およびC18樹脂(Grace Vydac、Hesperi
a、CA)が挙げられる。
【0194】
任意の好適な非吸着クロマトグラフィー樹脂を、精製のために使用することができる。
好適な非吸着クロマトグラフィー樹脂の例としては、限定されるものではないが、SEP
HADEX(商標)G−25、G−50、G−100、SEPHACRYL(商標)樹脂
(例えば、S−200およびS−300)、SUPERDEX(商標)樹脂(例えば、S
UPERDEX(商標)75およびSUPERDEX(商標)200)、BIO−GEL
(登録商標)樹脂(例えば、P−6、P−10、P−30、P−60、およびP−100
)、ならびに当業者には公知の他のものが挙げられる。
【0195】
2ステッププロセスおよび1ポットプロセス
一態様では、本開示のコンジュゲートを、米国特許第7,811,572号および米国
特許出願公開第2006/0182750号に記載のように調製することができる。この
プロセスは、(a)本開示の抗体を、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、S
PDB、スルホ−SPDBまたはCX1−1)と接触させて、リンカー(すなわち、Ab
−SMCC、Ab−SPDBまたはAb−CX1−1)を抗体に共有結合させることによ
って、リンカーが結合した抗体を含む第1の混合物を調製するステップ;(b)任意選択
で、第1の混合物を精製プロセスにかけて、リンカーが結合した抗体の精製された第1の
混合物を調製するステップ;(c)約4〜約9のpHを有する溶液中で、リンカーが結合
した抗体を薬物(例えば、DM1またはDM4)と反応させることにより、薬物(例えば
、DM1またはDM4)を、第1の混合物中のリンカーが結合した抗体にコンジュゲート
して、(i)コンジュゲート(例えば、Ab−MCC−DM1、Ab−SPDB−DM4
またはAb−CX1−1−DM1)、(ii)遊離薬物(例えば、DM1またはDM4)
;および(iii)反応副生成物を含む第2の混合物を調製するステップ;ならびに(d
)第2の混合物を精製プロセスにかけて、第2の混合物の他の成分からコンジュゲートを
精製するステップを含む。あるいは、精製ステップ(b)を省略してもよい。本明細書に
記載の任意の精製方法を、ステップ(b)および(d)のために使用することができる。
一実施形態では、TFFをステップ(b)と(d)の両方のために使用する。別の実施形
態では、TFFをステップ(b)のために使用し、吸着クロマトグラフィー(例えば、C
HT)をステップ(d)のために使用する。
【0196】
1ステップ試薬およびin situプロセス
一態様では、米国特許第6,441,163号および米国特許出願公開第2011/0
003969号および第2008/0145374号に記載のように、予め形成された薬
物−リンカー化合物(例えば、SMCC−DM1、スルホ−SMCC−DM1、SPDB
−DM4またはCX1−1−DM1)を、本開示の抗体にコンジュゲートした後、精製ス
テップを行うことにより、本開示のコンジュゲートを調製することができる。本明細書に
記載の任意の精製方法を使用することができる。薬物(例えば、DM1またはDM4)を
、架橋剤(例えば、SMCC、スルホ−SMCC、SPDB、スルホ−SPDBまたはC
X1−1)と反応させることにより、薬物−リンカー化合物を調製する。任意選択で、薬
物−リンカー化合物(例えば、SMCC−DM1、スルホ−SMCC−DM1、SPDB
−DM4またはCX1−1−DM1)を精製にかけた後、抗体にコンジュゲートする。
【0197】
4.望ましい抗体および抗体薬物コンジュゲートの特性評価および選択
本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)または抗体薬物コンジュゲートを
、当業界で公知の様々なアッセイにより、その物理的/化学的特性および/または生物学
的活性について特性評価し、選択することができる。
【0198】
例えば、本開示の抗体を、ELISA、FACS、Biacoreまたはウェスタンブ
ロットなどの公知の方法により、その抗原結合活性について試験することができる。
【0199】
トランスジェニック動物および細胞系は、腫瘍関連抗原および細胞表面受容体のがん過
剰発現の予防的または治療的処置としての潜在能力を有する抗体薬物コンジュゲート(A
DC)をスクリーニングするのに特に有用である。有用なADCのスクリーニングは、ト
ランスジェニック動物に、一定範囲の用量にわたって候補ADCを投与すること、および
評価される疾患または障害に対するADCの効果(複数可)について、様々な時点でアッ
セイすることを含んでもよい。あるいは、またはさらに、該当する場合、疾患の誘導因子
への曝露の前に、またはそれと同時に、薬物を投与することができる。候補ADCを、中
効率または高効率スクリーニング形式の下で、連続的および個々に、または同時にスクリ
ーニングすることができる。
【0200】
一態様は、(a)cKITを発現する安定ながん細胞系またはヒト患者腫瘍(例えば、
GIST細胞系または腫瘍断片、メラノーマ細胞系または腫瘍断片、AML一次細胞)を
、非ヒト動物に移植すること、(b)ADC薬物候補を非ヒト動物に投与すること、およ
び(c)移植された細胞系からの腫瘍の成長を阻害する候補の能力を決定することを含む
スクリーニング方法である。本開示はまた、(a)cKITを発現する安定ながん細胞系
に由来する細胞を、薬物候補と接触させること、および(b)安定な細胞系の成長を阻害
するADC候補の能力を評価することを含む、cKITの過剰発現を特徴とする疾患また
は障害の処置のためのADC候補をスクリーニングする方法も包含する。
【0201】
別の態様は、(a)cKITを発現する安定ながん細胞系に由来する細胞を、ADC薬
物候補と接触させること、および(b)cKITのリガンド活性化を遮断するADC候補
の能力を評価することを含むスクリーニング方法である。別の態様では、リガンドにより
刺激されたチロシンリン酸化を遮断するADC候補の能力を評価する。
【0202】
さらなる態様は、(a)cKITを発現する安定ながん細胞系に由来する細胞を、AD
C薬物候補と接触させること、および(b)細胞死を誘導するADC候補の能力を評価す
ることを含むスクリーニング方法である。一態様では、アポトーシスを誘導するADC候
補の能力を評価する。
【0203】
一定範囲の用量にわたってトランスジェニック動物に投与し、化合物に対する動物の生
理学的応答を経時的に評価することにより、候補ADCをスクリーニングすることができ
る。いくつかの場合、化合物を、化合物の効果を増強するコファクターと共に投与するこ
とが適切であり得る。対象トランスジェニック動物から誘導される細胞系を使用して、c
KITの過剰発現と関連する様々な障害を処置するのに有用なADCについてスクリーニ
ングする場合、適切な時間に試験ADCを細胞培養培地に添加し、ADCに対する細胞応
答を、適切な生化学的および/または組織学的アッセイを使用して経時的に評価する。
【0204】
かくして、本開示は、腫瘍細胞上のcKIT、およびcKIT過剰発現を特異的に標的
化し、これに結合するADCを同定するためのアッセイを提供する。
【0205】
cKIT抗体
本開示は、ヒトcKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性
断片)を提供する。本開示の抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断片)としては、
限定されるものではないが、以下の実施例に記載のように単離された、ヒトモノクローナ
ル抗体またはその断片が挙げられる。
【0206】
ある特定の態様では、本開示は、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例
えば、抗原結合性断片)であって、配列番号9、28、46、64、82、100、11
8または136に記載のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、前記抗体または抗体
断片(例えば、抗原結合性断片)(表1)を提供する。本開示はまた、cKITに特異的
に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断片)であって、表1に列挙される
VH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む、前記抗体また
は抗体断片(例えば、抗原結合性断片)も提供する。特定の態様では、本開示は、cKI
Tに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断片)であって、以下の
表1に列挙されるVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3、4、5以
上のVH CDRを含む(またはあるいは、からなる)前記抗体を提供する。
【0207】
本開示は、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断片
)であって、配列番号18、37、55、73、91、109、127または145のア
ミノ酸配列を有するVLドメインを含む前記抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断
片)(表1)を提供する。本開示はまた、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断
片(例えば、抗原結合性断片)であって、以下の表1に列挙されるVL CDRのいずれ
か1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む、前記抗体または抗体断片(例えば、
抗原結合性断片)も提供する。特に、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(
例えば、抗原結合性断片)であって、表1に列挙されるVL CDRのいずれかのアミノ
酸配列を有する1、2、3以上のVL CDRを含む(またはあるいは、からなる)前記
抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断片)を提供する。
【0208】
本開示の他の抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断片)は、変異しているが、表
1に記載の配列に記載のCDR領域と、CDR領域において少なくとも60、70、80
、90または95パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。いくつかの態様では、そ
れは、表1に記載の配列に記載のCDR領域と比較した場合、1、2、3、4または5個
以下のアミノ酸がCDR領域中で変異しているアミノ酸配列変異体を含む。
【0209】
本開示はまた、cKITに特異的に結合する抗体のVH、VL、完全長重鎖、および完
全長軽鎖をコードする核酸配列も提供する。そのような核酸配列を、哺乳動物細胞中での
発現のために最適化することができる。
【0211】
本開示の他の抗体としては、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸が変異している
が、表1に記載の配列に対する少なくとも60、70、80、90または95パーセント
の同一性を有するものが挙げられる。いくつかの態様では、それは、表1に記載の配列に
記載の可変領域と比較した場合、1、2、3、4または5個以下のアミノ酸が可変領域中
で変異しているが、実質的に同じ治療活性を保持するアミノ酸配列変異体を含む。
【0212】
これらの抗体はそれぞれcKITに結合することができるため、VH、VL、完全長軽
鎖、および完全長重鎖配列(アミノ酸配列およびアミノ酸配列をコードするヌクレオチド
配列)を「混合および一致」させて、他のcKIT結合抗体を作出することができる。そ
のような「混合および一致」したcKIT結合抗体を、当業界で公知の結合アッセイ(例
えば、ELISA、および実施例のセクションに記載の他のアッセイ)を使用して試験す
ることができる。これらの鎖を混合および一致させる場合、特定のVH/VL対に由来す
るVH配列を、構造的に類似するVH配列と置き換えるべきである。同様に、特定の完全
長重鎖/完全長軽鎖対に由来する完全長重鎖配列を、構造的に類似する完全長重鎖配列と
置き換えるべきである。同様に、特定のVH/VL対に由来するVL配列を、構造的に類
似するVL配列と置き換えるべきである。同様に、特定の完全長重鎖/完全長軽鎖対に由
来する完全長軽鎖配列を、構造的に類似する完全長軽鎖配列と置き換えるべきである。従
って、一態様では、本開示は、抗体がcKITに特異的に結合する、配列番号9、28、
46、64、82、100、118または136(表1)からなる群から選択されるアミ
ノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号18、37、55、73、91、109、
127または145(表1)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を有する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合領域を提供する。
【0213】
別の態様では、本開示は、(i)配列番号11、29、47、65、83、101、1
19、もしくは137からなる群から選択される哺乳動物細胞中での発現のために最適化
されたアミノ酸配列を含む完全長重鎖;および配列番号20、21、38、56、74、
92、110、128もしくは146からなる群から選択される哺乳動物細胞中での発現
のために最適化されたアミノ酸配列を含む完全長軽鎖を有する単離されたモノクローナル
抗体;または(ii)その抗原結合ポーションを含む機能的タンパク質を提供する。
【0214】
別の態様では、本開示は、表1に記載の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCD
R3、またはその組合せを含むcKIT結合抗体を提供する。抗体のVH CDR1のア
ミノ酸配列を、配列番号3、22、40、58、76、94、112および130に示す
。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列を、配列番号4、23、41、59、77、95
、113および131に示す。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列を、配列番号5、2
4、42、60、78、96、114および132に示す。抗体のVL CDR1のアミ
ノ酸配列を、配列番号12、31、49、67、85、103、121および139に示
す。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列を、配列番号13、32、50、68、86、
104、122および140に示す。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列を、配列番号
14、33、51、69、87、105、123および141に示す。
【0215】
これらの抗体がそれぞれcKITに結合することができ、抗原結合特異性が主にCDR
1、2および3領域によって提供されることを考慮して、VH CDR1、2および3配
列と、VL CDR1、2および3配列とを、「混合および一致」させることができる(
すなわち、異なる抗体に由来するCDRを混合および一致させることができるが、それぞ
れの抗体はVH CDR1、2および3と、VL CDR1、2および3とを含有し、他
のC5結合結合分子を作出しなければならない)。そのような「混合および一致」したc
KIT結合抗体を、当業界で公知の結合アッセイおよび実施例に記載のアッセイ(例えば
、ELISA)を使用して試験することができる。VH CDR配列を混合および一致さ
せる場合、特定のVH配列に由来するCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を
、構造的に類似するCDR配列(複数可)と置き換えるべきである。同様に、VL CD
R配列を混合および一致させる場合、特定のVL配列に由来するCDR1、CDR2およ
び/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列(複数可)と置き換えるべきで
ある。新規VHおよびVL配列を、1または複数のVHおよび/またはVL CDR領域
配列を、本開示のモノクローナル抗体について本明細書に示されるCDR配列に由来する
構造的に類似する配列と置換することにより、新しいVHおよびVL配列を作出すること
ができることが当業者には容易に明らかである。
【0216】
従って、本開示は、抗体がcKITに特異的に結合する、配列番号3、22、40、5
8、76、94、112および130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖
CDR1;配列番号4、23、41、59、77、95、113および131からなる群
から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;配列番号5、24、42、60、78
、96、114および132からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
;配列番号12、31、49、67、85、103、121および139からなる群から
選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;配列番号13、32、50、68、86、
104、122および140からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2
;ならびに配列番号14、33、51、69、87、105、123および141からな
る群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、単離されたモノクローナル
抗体またはその抗原結合領域を提供する。
【0217】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号3の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、配列番号5の重鎖
CDR3、配列番号12の軽鎖CDR1、配列番号13の軽鎖CDR2、および配列番号
14の軽鎖CDR3を含む。
【0218】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号22の重鎖CDR1、配列番号23の重鎖CDR2、配列番号24
の重鎖CDR3、配列番号31の軽鎖CDR1、配列番号32の軽鎖CDR2、および配
列番号33の軽鎖CDR3を含む。
【0219】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号40の重鎖CDR1、配列番号41の重鎖CDR2、配列番号42
の重鎖CDR3、配列番号49の軽鎖CDR1、配列番号50の軽鎖CDR2、および配
列番号51の軽鎖CDR3を含む。
【0220】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号58の重鎖CDR1、配列番号59の重鎖CDR2、配列番号60
の重鎖CDR3、配列番号67の軽鎖CDR1、配列番号68の軽鎖CDR2、および配
列番号69の軽鎖CDR3を含む。
【0221】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号76の重鎖CDR1、配列番号77の重鎖CDR2、配列番号78
の重鎖CDR3、配列番号85の軽鎖CDR1、配列番号86の軽鎖CDR2、および配
列番号87の軽鎖CDR3を含む。
【0222】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号94の重鎖CDR1、配列番号95の重鎖CDR2、配列番号96
の重鎖CDR3、配列番号103の軽鎖CDR1、配列番号104の軽鎖CDR2、およ
び配列番号105の軽鎖CDR3を含む。
【0223】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号112の重鎖CDR1、配列番号113の重鎖CDR2、配列番号
114の重鎖CDR3、配列番号121の軽鎖CDR1、配列番号122の軽鎖CDR2
、および配列番号123の軽鎖CDR3を含む。
【0224】
特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体または抗体断片(例えば、抗原結合
性断片)は、配列番号130の重鎖CDR1、配列番号131の重鎖CDR2、配列番号
132の重鎖CDR3、配列番号139の軽鎖CDR1、配列番号140の軽鎖CDR2
、および配列番号141の軽鎖CDR3を含む。
【0225】
ある特定の態様では、cKITに特異的に結合する抗体は、表1に記載される抗体また
は抗体断片(例えば、抗原結合性断片)である。
【0226】
1.エピトープおよび同エピトープに結合する抗体の同定
本開示は、cKIT受容体の細胞外ドメイン内のエピトープに結合する抗体および抗体
断片(例えば、抗原結合性断片)を提供する。ある特定の態様では、抗体および抗体断片
は、cKIT細胞外ドメインのドメイン1〜3を含むエピトープに結合することができる
。
【0227】
本開示はまた、表1に記載の抗cKIT抗体と同じエピトープに結合する抗体および抗
体断片(例えば、抗原結合性断片)も提供する。従って、さらなる抗体および抗体断片(
例えば、抗原結合性断片)を、cKIT結合アッセイにおいて他の抗体と交差競合する(
例えば、統計的に有意な様式で、その結合を競合的に阻害する)その能力に基づいて同定
することができる。cKITタンパク質(例えば、ヒトcKIT)への本開示の抗体およ
び抗体断片(例えば、抗原結合性断片)の結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体が
cKITへの結合について抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断片)と競合するこ
とができることを示す;そのような抗体は、非限定的理論によれば、それが競合する抗体
または抗体断片(例えば、抗原結合性断片)と、cKITタンパク質上の同じか、または
関連する(例えば、構造的に類似するか、または空間的に近い)エピトープに結合するこ
とができる。ある特定の態様では、本開示の抗体または抗体断片(例えば、抗原結合性断
片)と同じcKIT上のエピトープに結合する抗体は、ヒトまたはヒト化モノクローナル
抗体である。そのようなヒトまたはヒト化モノクローナル抗体を、本明細書に記載のよう
に調製および単離することができる。
【0228】
2.Fc領域のフレームワークのさらなる変化
本開示は、部位特異的標識イムノコンジュゲートを提供する。これらのイムノコンジュ
ゲートは、例えば、抗体の特性を改善するための、VHおよび/またはVL内のフレーム
ワーク残基に対する改変をさらに含む改変された抗体またはその抗原結合性断片を含んで
もよい。典型的には、そのようなフレームワーク改変を行って、抗体の免疫原性を低下さ
せる。例えば、1つの手法は、1または複数のフレームワーク残基を、対応する生殖系列
配列に「復帰変異」させることである。より特には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が
誘導される生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有してもよい。抗体フレーム
ワーク配列を、抗体が誘導される生殖系列配列と比較することにより、そのような残基を
同定することができる。フレームワーク領域配列をその生殖系列構成に戻すために、例え
ば、部位特異的突然変異誘発により、体細胞変異を生殖系列配列に「復帰変異」させるこ
とができる。そのような「復帰変異」した抗体もまた、包含されることが意図される。
【0229】
別の型のフレームワーク改変は、フレームワーク領域内、またはさらには、1もしくは
複数のCDR領域内の1または複数の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去するこ
とによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。この手法はまた、「脱免
疫化」とも呼ばれ、Carr et al.による米国特許出願公開第2003/0153043号
にさらに詳細に記載されている。
【0230】
フレームワークまたはCDR領域内で作製される改変に加えて、またはその代わりに、
Fc領域内に改変を含む、典型的には、血清半減期、補体固定化、Fc受容体結合、およ
び/または抗原依存的細胞性細胞毒性などの、抗体の1または複数の機能的特性を変化さ
せるように、抗体を操作することができる。さらに、抗体を化学的に改変する(例えば、
1もしくは複数の化学的部分を抗体に結合することができる)か、または改変してそのグ
リコシル化を変化させ、再度、抗体の1または複数の機能的特性を変化させることができ
る。これらの態様はそれぞれ、以下にさらに詳細に記載される。
【0231】
一態様では、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変化する、例えば、増加するか、ま
たは減少するように、CH1のヒンジ領域を改変する。この手法は、Bodmer et al.によ
る米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシ
ステイン残基の数を変化させて、例えば、軽鎖および重鎖の集合を容易にするか、または
抗体の安定性を増加もしくは減少させる。
【0232】
別の態様では、抗体のFcヒンジ領域を変異させて、抗体の生物学的半減期を減少させ
る。より特には、抗体が天然のFc−ヒンジドメインSpA結合と比較して弱いスタフィ
ロコッカス(Staphylococcyl)タンパク質A(SpA)結合を有するように、1または複
数のアミノ酸変異をFc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン境界領域中に導入する。
この手法は、Ward et al.による米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載さ
れている。
【0233】
さらに他の態様では、少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基と置き換
えて、抗体のエフェクター機能を変化させることにより、Fc領域を変化させる。例えば
、抗体がエフェクターリガンドに対する変化した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能
力を保持するように、1または複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基と置き換えること
ができる。親和性を変化させるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体
のC1成分であってもよい。この手法は、例えば、両方ともWinter et al.による米国特
許第5,624,821号および第5,648,260号に記載されている。
【0234】
別の態様では、抗体が変化したC1q結合および/または低下した、もしくは無効化さ
れる補体依存的細胞毒性(CDC)を有するように、アミノ酸残基から選択される1また
は複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基と置き換えることができる。
【0235】
別の態様では、1または複数のアミノ酸残基を変化させることによって、補体を固定す
る抗体の能力を変化させる。この手法は、例えば、Bodmer et al.によるPCT公開第W
O94/29351号に記載されている。特定の態様では、本開示の抗体またはその抗原
結合性断片の1または複数のアミノ酸を、1または複数のアロタイプアミノ酸残基により
、IgG1サブクラスおよびカッパアイソタイプに置き換える。アロタイプアミノ酸残基
としては、限定されるものではないが、IgG1、IgG2およびIgG3サブクラスの
重鎖の定常領域、ならびにJefferis et al., MAbs. 1:332-338 (2009)により記載された
ようなカッパアイソタイプの軽鎖の定常領域も挙げられる。
【0236】
さらに別の態様では、Fc領域を改変して、抗体依存的細胞性細胞毒性(ADCC)を
媒介する抗体の能力を増加させる、および/または1もしくは複数のアミノ酸を改変する
ことによりFcγ受容体に対する抗体の親和性を増加させる。この手法は、例えば、Pres
taによるPCT公開第WO00/42072号に記載されている。さらに、FcγRI、
FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッ
ピングされており、結合が改善されたバリアントが記載されている(Shields et al., J.
Biol. Chem. 276:6591-6604, 2001を参照されたい)。
【0237】
さらに別の態様では、抗体のグリコシル化を改変する。例えば、無グリコシル化抗体を
作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を変化さ
せて、例えば、「抗原」に対する抗体の親和性を増加させることができる。そのような炭
水化物改変を、例えば、抗体配列内の1または複数のグリコシル化部位を変化させること
により達成することができる。例えば、1または複数の可変領域フレームワークグリコシ
ル化部位の除去をもたらす1または複数のアミノ酸置換を作製することによって、その部
位でのグリコシル化を除去することができる。そのような無グリコシル化は、抗原に対す
る抗体の親和性を増加させることができる。そのような手法は、例えば、Co et al.によ
る米国特許第5,714,350号および第6,350,861号に記載されている。
【0238】
さらに、またはあるいは、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体またはバイセ
クテイングGlcNac構造が増加した抗体などの、変化した型のグリコシル化を有する
抗体を作製することができる。そのような変化したグリコシル化パターンは、抗体のAD
CC能力を増加させることが証明されている。そのような炭水化物改変を、例えば、グリ
コシル化機構が変化した宿主細胞中で抗体を発現させることにより達成することができる
。グリコシル化機構が変化した細胞は当業界で記載されており、組換え抗体を発現させる
ことによって、グリコシル化が変化した抗体を生成する宿主細胞として使用することがで
きる。例えば、Hang et al.によるEP1,176,195は、フコシルトランスフェラ
ーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞系を記載し、そのような細胞
系中で発現された抗体は低グリコシル化を示す。PrestaによるPCT公開第WO03/0
35835号は、フコースをAsn(297)に連結された炭水化物に結合させる能力が
低下し、その宿主細胞中で発現される抗体の低フコシル化をももたらす、バリアントCH
O細胞系、Lecl3細胞を記載している(Shields et al., (2002) J. Biol. Chem. 27
7:26733-26740も参照されたい)。Umama et al.によるPCT公開第WO99/5434
2号は、操作された細胞系中で発現される抗体が、抗体のADCC活性の増加をもたらす
バイセクテイングGlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質改変グリコシルト
ランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−Nアセチルグルコサミニルトランスフェ
ラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞系を記載している(Um
ana et al., Nat. Biotech. 17:176-180, 1999も参照されたい)。
【0239】
別の態様では、抗体をその生物学的半減期を増加させるように改変する。様々な手法が
可能である。例えば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載のような、1または
複数の以下の変異を導入することができる:T252L、T254S、T256F。ある
いは、生物学的半減期を増加させるために、Presta et al.による米国特許第5,869
,046号および第6,121,022号に記載のように、IgGのFc領域のCH2ド
メインの2つのループから取られたサルベージ受容体結合エピトープを含有するように、
抗体をCH1またはCL領域内で変化させることができる。
【0240】
抗体のADCC活性を最小化するために、Fc領域中の特異的変異は、エフェクター細
胞との最小の相互作用を有する「Fcサイレント」抗体をもたらす。一般に、「IgG
Fc領域」を使用して、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域などの、免疫グロブ
リン重鎖のC末端領域を定義する。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、IgG抗体の位置
C226から、または位置P230からカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むと定
義される。Fc領域中の残基の番号は、KabatのEUインデックスのものである。F
c領域のC末端リシン(残基K447)を、例えば、抗体の生成または精製の間に除去す
ることができる。
【0241】
サイレント化されたエフェクター機能は、抗体のFc領域中の変異により取得すること
ができ、当業界で記載されている:LALAおよびN297A(Strohl, W., 2009, Curr
. Opin. Biotechnol. vol. 20(6):685-691);ならびにD265A(Baudino et al., 200
8, J. Immunol. 181 : 6664-69)、Heusser et al., WO2012065950も参照さ
れたい。サイレントFc IgG1抗体の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列中にL23
4AおよびL235A変異を含むLALA変異体である。サイレントIgG1抗体の別の
例は、DAPA(D265A、P329A)変異(米国特許第6,737,056号)で
ある。別のサイレントIgG1抗体は、N297A変異を含み、無グリコシル化/非グリ
コシル化抗体をもたらす。
【0242】
Fcサイレント抗体は、ADCC活性がないか、または低く、これは、Fcサイレント
抗体が特異的細胞溶解が50%未満であるADCC活性を示すことを意味し、ADCC活
性がないことは、Fcサイレント抗体が1%未満であるADCC活性(特異的細胞溶解)
を示すことを意味する。
【0243】
3.cKIT抗体の生成
限定されるものではないが、組換え発現、化学的合成、および抗体四量体の酵素的消化
などの、当業界で公知の任意の手段によって抗cKIT抗体およびその抗体断片(例えば
、抗原結合性断片)を生成することができるが、完全長モノクローナル抗体を、例えば、
ハイブリドーマまたは組換え生成によって取得することができる。組換え発現は、当業界
で公知の任意の適切な宿主細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細
胞、昆虫宿主細胞などに由来するものであってよい。
【0244】
本開示は、本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド、例えば、本明細書に
記載のような重鎖もしくは軽鎖可変領域または相補性決定領域を含むセグメントをコード
するポリヌクレオチドをさらに提供する。いくつかの態様では、重鎖可変領域をコードす
るポリヌクレオチドは、配列番号30、48、66、84、102、120および137
からなる群から選択されるポリヌクレオチドとの少なくとも85%、89%、90%、9
1%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または10
0%の核酸配列同一性を有する。いくつかの態様では、軽鎖可変領域をコードするポリヌ
クレオチドは、配列番号39、57、75、93、111、129および147からなる
群から選択されるポリヌクレオチドとの少なくとも85%、89%、90%、91%、9
2%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の核
酸配列同一性を有する。
【0245】
いくつかの態様では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号30、48、6
6、84、102、120のポリヌクレオチドとの少なくとも85%、89%、90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または1
00%の核酸配列同一性を有する。いくつかの態様では、軽鎖をコードするポリヌクレオ
チドは、配列番号39、57、75、93、111、129および147のポリヌクレオ
チドとの少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%、または100%の核酸配列同一性を有する。
【0246】
本開示のポリヌクレオチドは、抗cKIT抗体の可変領域配列のみをコードしてもよい
。それらはまた、抗体の可変領域と定常領域との両方をコードしてもよい。いくつかのポ
リヌクレオチド配列は、例示的抗cKIT抗体の1つの重鎖と軽鎖の両方の可変領域を含
むポリペプチドをコードする。いくつかの他のポリヌクレオチドは、マウス抗体の1つの
重鎖と軽鎖の可変領域とそれぞれ実質的に同一である2つのポリペプチドセグメントをコ
ードする。
【0247】
ポリヌクレオチド配列を、抗cKIT抗体またはその結合断片をコードする存在する配
列(例えば、以下の実施例に記載の配列)のde novo固相DNA合成によるか、ま
たはPCR突然変異誘発により生成することができる。Narang et al., Meth. Enzymol.
68:90, 1979のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979のホ
スホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981のジエチルホスホロ
アミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固相支持体法などの、当業界で
公知の方法により、核酸の直接化学合成を達成することができる。PCRによるポリヌク
レオチド配列への変異の導入を、例えば、PCR Technology: Principles and Application
s for DNA Amplification, H.A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, NY, 1992; PCR Pro
tocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press,
San Diego, CA, 1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991; およびEck
ert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載のように実施することが
できる。
【0248】
また、上記の抗cKIT抗体を生成するための発現ベクターおよび宿主細胞も、本開示
において提供される。様々な発現ベクターを使用して、抗cKIT抗体鎖または結合断片
をコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルスに基づく発現ベクタ
ーと非ウイルス発現ベクターの両方を使用して、哺乳動物宿主細胞中で抗体を生成するこ
とができる。非ウイルスベクターおよび系としては、典型的には、タンパク質またはRN
Aを発現させるための発現カセットを含む、プラスミド、エピソームベクター、およびヒ
ト人工染色体(例えば、Harrington et al., Nat Genet 15:345, 1997を参照されたい)
が挙げられる。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞中での抗cKITポリヌクレオチ
ドおよびポリペプチドの発現にとって有用な非ウイルスベクターとしては、pThioH
is A、BおよびC、pcDNA3.1/His、pEBVHisA、BおよびC(I
nvitrogen、San Diego、CA)、MPSVベクター、ならびに他のタ
ンパク質を発現させるための当業界で公知のいくつかの他のベクターが挙げられる。有用
なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、
ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40に基づくベクター、パピローマウイルス、
HBPエプスタイン・バーウイルス、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ森林熱
ウイルス(SFV)が挙げられる。Brent et al., supra; Smith, Annu. Rev. Microbiol
. 49:807, 1995; およびRosenfeld et al., Cell 68:143, 1992を参照されたい。
【0249】
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させる意図される宿主細胞に依存する。典型的
には、発現ベクターは、抗cKIT抗体鎖または断片をコードするポリヌクレオチドに作
動可能に連結されるプロモーターおよび他の調節配列(例えば、エンハンサー)を含有す
る。いくつかの態様では、誘導性プロモーターを使用して、誘導条件下以外では挿入され
た配列の発現を防止する。誘導性プロモーターとしては、例えば、アラビノース、lac
Z、メタロチオネインプロモーターまたは熱ショックプロモーターが挙げられる。形質転
換された生物の培養物を、発現生成物が宿主細胞によってより良好に許容されるコード配
列について集団を偏らせることなく、非誘導条件下で拡張することができる。プロモータ
ーに加えて、他の調節エレメントも、抗cKIT抗体鎖または断片の効率的発現にとって
必要とされるか、または望まれる。これらのエレメントは、典型的には、ATG開始コド
ンおよび隣接するリボソーム結合部位または他の配列を含む。さらに、発現の効率を、使
用において細胞系にとって適切なエンハンサーの含有により増強することができる(例え
ば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125, 1994;およびBittner et al
., Meth. Enzymol., 153:516, 1987を参照されたい)。例えば、SV40エンハンサーま
たはCMVエンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞中での発現を増加させることがで
きる。
【0250】
発現ベクターはまた、挿入される抗cKIT抗体配列によりコードされるポリペプチド
との融合タンパク質を形成するための分泌シグナル配列位置も提供することができる。よ
り頻繁には、挿入される抗cKIT抗体配列を、ベクター中に含有させる前にシグナル配
列に連結する。抗cKIT抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをコードする配列を受容する
ために使用されるベクターは、その定常領域または部分もコードすることがある。そのよ
うなベクターにより、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の発現が可能になり
、それにより、無傷抗体またはその断片の生成がもたらされる。典型的には、そのような
定常領域はヒトである。
【0251】
抗cKIT抗体鎖を担持および発現させるための宿主細胞は、原核または真核であって
もよい。大腸菌(E.coli)は、本開示のポリヌクレオチドをクローニングし、発現させる
のに有用な1つの原核宿主である。使用にとって好適な他の微生物宿主としては、バチル
ス・サブチリス(Bacillus subtilis)などの桿菌、ならびにサルモネラ(Salmonella)
、セラチア(Serratia)、および様々なシュードモナス(Pseudomonas)種などの他の腸
内細菌科が挙げられる。これらの原核宿主においては、当業者であれば、典型的には宿主
細胞と適合する発現制御配列(例えば、複製起点)を含有する発現ベクターを作製するこ
ともできる。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモータ
ー系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、またはラムダファージに由来するプロモー
ター系などの、任意数の様々な周知のプロモーターが存在する。プロモーターは、典型的
には、任意選択でオペレーター配列と共に発現を制御し、転写および翻訳を開始および完
了させるためのリボソーム結合部位配列などを有する。酵母などの他の微生物を使用して
、抗cKITポリペプチドを発現させることもできる。バキュロウイルスベクターと組み
合わせた昆虫細胞を使用することもできる。
【0252】
他の態様では、哺乳動物宿主細胞を使用して、本開示の抗cKITポリペプチドを発現
および生成させる。例えば、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリ
ドーマ細胞系(例えば、実施例に記載のミエローマハイブリドーマクローン)または外因
性発現ベクターを担持する哺乳動物細胞系(例えば、以下に例示されるSP2/0ミエロ
ーマ細胞)であってもよい。これらのものは、任意の正常な死滅する、または正常もしく
は異常な不死の動物もしくはヒト細胞を含む。例えば、CHO細胞系、様々なCOS細胞
系、HeLa細胞、ミエローマ細胞系、形質転換されたB細胞およびハイブリドーマなど
の、無傷の免疫グロブリンを分泌することができるいくつかの好適な宿主細胞系が開発さ
れている。ポリペプチドを発現させるための哺乳動物組織細胞培養の使用は、例えば、Wi
nnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987で一般的に考察さ
れている。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、および
エンハンサーなどの発現制御配列(例えば、Queen et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 19
86を参照されたい)、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニ
ル化部位、および転写ターミネーター配列などの必要なプロセッシング情報部位を含んで
もよい。これらの発現ベクターは通常、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルスから誘導
されるプロモーターを含有する。好適なプロモーターは、構成的である、細胞型特異的で
ある、段階特異的である、および/またはモジュレート可能もしくは調節可能であっても
よい。有用なプロモーターとしては、限定されるものではないが、メタロチオネインプロ
モーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTV
プロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MP
SVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト極初期CMVプロ
モーターなど)、構成的CMVプロモーター、および当業界で公知のプロモーター−エン
ハンサーの組合せが挙げられる。
【0253】
対象のポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入するための方法は、細胞宿
主の型に応じて変化する。例えば、原核細胞のためには塩化カルシウムトランスフェクシ
ョンが一般的に使用されるが、他の細胞宿主のためにはリン酸カルシウム処理またはエレ
クトロポレーションを使用してもよい(一般的には、Sambrook et al., supraを参照され
たい)。他の方法としては、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、
リポソーム媒介性形質転換、インジェクションおよびマイクロインジェクション、弾道法
、ビロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、ネイキッドDN
A、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22との融合(Elliot and O'H
are, Cell 88:223, 1997)、DNAの薬剤増強性取込み、およびex vivoでの形質
導入が挙げられる。組換えタンパク質の長期的な、高収率の生成のためには、安定な発現
が望ましいことが多い。例えば、抗cKIT抗体鎖または結合断片を安定に発現する細胞
系を、ウイルスの複製起点または内因性発現エレメントと、選択マーカー遺伝子とを含有
する発現ベクターを使用して調製することができる。ベクターの導入後、細胞を富化培地
中で1〜2日間成長させた後、選択培地に切替えることができる。選択マーカーの目的は
、選択に対する耐性を付与することであり、その存在により、選択培地中で導入された配
列を上手く発現する細胞の成長が可能となる。耐性の安定にトランスフェクトされた細胞
を、細胞型にとって適切な組織培養技術を使用して増殖させることができる。
【0254】
治療的および診断的使用
本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、および抗体薬物コンジュゲート
は、限定されるものではないが、固形がんなどのがんの処置などの様々な適用において有
用である。ある特定の態様では、抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、および抗
体薬物コンジュゲートは、腫瘍成長の阻害、分化の誘導、腫瘍体積の減少、および/また
は腫瘍の発がん性の低下にとって有用である。使用方法は、in vitro、ex v
ivo、またはin vivoでの方法であってもよい。
【0255】
一態様では、抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、および抗体薬物コンジュゲ
ートは、生物試料中のcKITの存在を検出するのに有用である。本明細書で使用される
用語「検出すること」は、定量的または定性的検出を包含する。ある特定の態様では、生
物試料は細胞または組織を含む。ある特定の態様では、そのような組織は、他の組織と比
較してより高いレベルでcKITを発現する正常および/またはがん性組織を含む。
【0256】
一態様では、本開示は、生物試料中のcKITの存在を検出する方法を提供する。ある
特定の態様では、この方法は、抗体の抗原への結合を可能にする条件下で、生物試料を抗
cKIT抗体と接触させること、および抗体と抗原との間で複合体が形成されるかどうか
を検出することを含む。
【0257】
また、cKITの発現の増加と関連する障害を診断する方法も含まれる。ある特定の態
様では、この方法は、試験細胞を抗cKIT抗体と接触させること;抗cKIT抗体のc
KIT抗原への結合を検出することにより試験細胞上でのcKITの発現レベルを決定す
ること(定量的または定性的に);および試験細胞中でのcKITの発現レベルを、対照
細胞(例えば、試験細胞と同じ組織起源の正常細胞またはそのような正常細胞と同等のレ
ベルでcKITを発現する細胞)中でのcKITの発現レベルと比較することを含み、対
照細胞と比較して、試験細胞上でのcKITの発現レベルが高い場合、cKITの発現の
増加と関連する障害の存在を示す。ある特定の態様では、試験細胞は、cKITの発現の
増加と関連する障害を有することが疑われる個体から得られる。ある特定の態様では、障
害は、がんまたは腫瘍などの細胞増殖性障害である。
【0258】
ある特定の態様では、上記のものなどの診断または検出の方法は、細胞表面上で、また
は表面上にcKITを発現する細胞から得られる膜調製物中で発現されるcKITへの抗
cKIT抗体の結合を検出することを含む。細胞表面上に発現されるcKITへの抗cK
IT抗体の結合を検出するための例示的アッセイは、「FACS」アッセイである。
【0259】
ある特定の他の方法を使用して、cKITへの抗cKIT抗体の結合を検出することが
できる。そのような方法としては、限定されるものではないが、ウェスタンブロット、ラ
ジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イム
ノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、お
よび免疫組織化学(IHC)などの、当業界で周知である抗原結合アッセイが挙げられる
。
【0260】
ある特定の態様では、抗cKIT抗体を標識する。標識としては、限定されるものでは
ないが、直接検出される標識または部分(蛍光、発色、高電子密度、化学発光、および放
射性標識など)、ならびに例えば、酵素反応または分子相互作用を介して間接的に検出さ
れる、酵素またはリガンドなどの部分が挙げられる。
【0261】
ある特定の態様では、抗cKIT抗体を、不溶性マトリックス上に固定する。固定は、
溶液中で遊離したままである任意のcKITタンパク質から抗cKIT抗体を分離するこ
とを必要とする。これは、水に不溶性のマトリックスもしくは表面への吸着(Bennich et
al, 米国特許第3,720,760号)により、もしくは共有カップリング(例えば、
グルタルアルデヒド架橋を使用する)により、アッセイ手順の前に抗cKIT抗体を不溶
化することによって、または例えば、免疫沈降により、抗cKIT抗体とcKITタンパ
ク質との複合体の形成後に抗cKIT抗体を不溶化することによって、都合良く達成され
る。
【0262】
診断または検出の上記態様のいずれかを、抗cKIT抗体の代わりに、またはそれに加
えて、本開示のイムノコンジュゲートを使用して実行することができる。
【0263】
一態様では、本開示は、抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、および抗体薬物
コンジュゲートを患者に投与することによって、疾患を処置することを含む、疾患を処置
、防止または改善する方法を提供する。ある特定の態様では、抗体、抗体断片(例えば、
抗原結合性断片)、および抗体薬物コンジュゲートを使用して処置される疾患は、がんで
ある。処置および/または防止することができる疾患の例としては、限定されるものでは
ないが、消化管間質腫瘍(GIST)、小細胞肺がん(SCLC)、急性骨髄性白血病(
AML)、メラノーマ、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞症、神経線維腫症、乳がん
、非小細胞肺がん(NSCLC)、および膵臓がんが挙げられる。ある特定の態様では、
がんは、抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、および抗体薬物コンジュゲートが
特異的に結合することができる、cKIT発現細胞を特徴とする。
【0264】
本開示は、治療有効量の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、または抗体薬物
コンジュゲートを投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。ある特定の態様
では、がんは固形がんである。ある特定の態様では、対象はヒトである。
【0265】
ある特定の態様では、腫瘍成長を阻害する方法は、対象に、治療有効量の抗体、抗体断
片(例えば、抗原結合性断片)、または抗体薬物コンジュゲートを投与することを含む。
ある特定の態様では、対象はヒトである。ある特定の態様では、対象は腫瘍を有するか、
または腫瘍が除去されている。
【0266】
ある特定の態様では、腫瘍は、抗cKIT抗体が結合するcKITを発現する。ある特
定の態様では、腫瘍はヒトcKITを過剰発現する。
【0267】
疾患の処置のために、抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、または抗体薬物コ
ンジュゲートの適切な用量は、処置しようとする疾患の種類、疾患の重症度および経過、
疾患の応答性、以前の療法、患者の病歴などの様々な因子に依存する。抗体または薬剤を
1回で、または数日から数カ月継続する一連の処置にわたって、または治癒が行われるか
、もしくは疾患状態の縮小(例えば、腫瘍サイズの減少)が達成されるまで投与すること
ができる。最適な投薬スケジュールは、患者の体内での薬物蓄積の測定値から算出するこ
とができ、個々の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、または抗体薬物コンジュ
ゲートの相対的効力に応じて変化する。ある特定の態様では、用量は0.01mg〜10
mg(例えば、0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1mg、2mg
、3mg、4mg、5mg、7mg、8mg、9mg、または10mg)/kg体重であ
り、1日、1週間、1カ月または1年に1回またはそれ以上投与することができる。ある
特定の態様では、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、または抗体薬物
コンジュゲートは、2週間毎に1回または3週間毎に1回投与される。処置する医師であ
れば、体液または組織中での測定された滞留時間および薬物濃度に基づいて、投与のため
の反復速度を見積もることができる。
【0268】
組合せ療法
ある特定の例では、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、または抗体
薬物コンジュゲートを、他の抗がん剤、抗アレルギー剤、抗嘔吐剤(または制吐剤)、疼
痛緩和剤、細胞保護剤、およびその組合せなどの他の治療剤と組み合わせる。
【0269】
組合せ療法における使用のために考えられる一般的な化学療法剤としては、アナストロ
ゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標)
)、硫酸ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myle
ran(登録商標))、ブスルファン注射液(Busulfex(登録商標))、カペシ
タビン(Xeloda(登録商標))、N4−ペントキシカルボニル−5−デオキシ−5
−フルオロシチジン、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムス
チン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、
シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(
登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)またはNeosar(
登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar−U(登録商標))
、シタラビンリポソーム注射液(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTI
C−Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(Actinomycin D、Cos
megan)、塩酸ダウノルビシン(Cerubidine(登録商標))、クエン酸ダ
ウノルビシンリポソーム注射液(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、
ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、塩酸ドキソルビシン(Adriamy
cin(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商
標))、リン酸フルダラビン(Fludara(登録商標))、5−フルオロウラシル(
Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexi
n(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒド
ロキシウレア(Hydrea(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商
標))、イフォスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosa
r(登録商標))、L−アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリン
カルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6−メルカプトプリン(P
urinethol(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミ
トキサントロン(Novantrone(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル
(Taxol(登録商標))、フェニックス(イットリウム90/MX−DTPA)、ペ
ントスタチン、カルムスチンインプラントを含むポリフェプロサン20(Gliadel
(登録商標))、クエン酸タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))、テニポシ
ド(Vumon(登録商標))、6−チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tira
zone(登録商標))、注射用塩酸トポテカン(Hycamptin(登録商標))、
ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録
商標))、およびビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。
【0270】
一態様では、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗原結合性断片)、または抗体薬物コ
ンジュゲートを、抗がん特性を有する第2の化合物との組合せ療法として組合せ医薬製剤
、または用量レジメン中で組み合わせる。組合せ医薬製剤または用量レジメンの第2の化
合物は、それらが互いに有害に作用しないような、抗体または組合せのイムノコンジュゲ
ートに対する相補的活性を有してもよい。例えば、本開示の抗体、抗体断片(例えば、抗
原結合性断片)、または抗体薬物コンジュゲートを、限定されるものではないが、化学療
法剤、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブ、および他のcKIT経路阻害剤と
組み合わせて投与することができる。
【0271】
本明細書で使用される用語「組合せ医薬」とは、1つの単位剤形中の固定的組合せ、ま
たは2つ以上の治療剤を同時に独立に、もしくは特に、組合せパートナーが協調的な、例
えば、相乗効果を示すことができる時間間隔内で別々に投与することができる非固定的組
合せもしくは組み合わせ投与のための部分のキットを指す。
【0272】
用語「組合せ療法」とは、本開示に記載の治療状態または障害を処置するための2つ以
上の治療剤の投与を指す。そのような投与は、固定比の活性成分を有する単一のカプセル
などの、実質的に同時的な様式でのこれらの治療剤の同時投与を包含する。あるいは、そ
のような投与は、それぞれの活性成分について、複数の、または別々の容器(例えば、カ
プセル、粉末、および液体)中での同時投与を包含する。粉末および/または液体を、投
与前に所望の用量に再構成または希釈することができる。さらに、そのような投与はまた
、ほぼ同時に、または異なる時間に、連続的様式でのそれぞれの種類の治療剤の使用も包
含する。いずれかの場合、処置レジメンは、本明細書に記載の状態または障害の処置にお
いて組合せ薬物の有益な効果を提供する。
【0273】
組合せ療法は、「相乗作用」を提供し、「相乗的」であることがわかってもよい、すな
わち、活性成分を一緒に使用した場合に達成される効果は、化合物を別々に使用すること
から得られる効果の合計よりも大きい。活性成分が(1)組み合わせた単位用量製剤中で
同時製剤化および投与されるか、もしくは同時に送達される;(2)別々の製剤として交
互に、もしくは同時に送達される;または(3)いくつかの他のレジメンによるものであ
る場合、相乗効果を達成することができる。交互療法において送達される場合、化合物が
例えば、別々の注射筒中の異なる注射液により連続的に投与または送達される場合、相乗
効果を達成することができる。一般に、交互療法中では、有効用量の各活性成分は連続的
に、すなわち、順次投与されるが、組合せ療法においては、有効用量の2つ以上の活性成
分は一緒に投与される。
【0274】
一態様では、本開示は、限定されるものではないが、EGFR阻害剤、Her2阻害剤
、Her3阻害剤、IGFR阻害剤、およびMet阻害剤などの1または複数のチロシン
キナーゼ阻害剤と組み合わせた抗体薬物コンジュゲートを、それを必要とする対象に投与
することにより、がんを処置する方法を提供する。
【0275】
例えば、チロシンキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、塩酸エルロチ
ニブ(Tarceva(登録商標));リニファニブ(Genentechから入手可能
なABT869としても知られる、N−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−
イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)ウレア);リンゴ酸ス
ニチニブ(Sutent(登録商標));ボスチニブ(SKI−606としても知られ、
米国特許第6,780,996号に記載された、4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキ
シフェニル)アミノ]−6−メトキシ−7−「3−(4−メチルピペラジン−1−イル)
プロポキシ]キノリン−3−カルボニトリル);ダサチニブ(Sprycel(登録商標
));パゾパニブ(Votrient(登録商標));ソラフェニブ(Nexavar(
登録商標));ザクチマ(ZD6474);ニロチニブ(Tasigna(登録商標))
;レゴラフェニブ(Stivarga(登録商標))およびイマチニブまたはメシル酸イ
マチニブ(Gilvec(登録商標)およびGleevec(登録商標))が挙げられる
。
【0276】
上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤としては、限定されるものではないが、塩酸エ
ルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標)
);N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[[(3’’S
’’)−テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]−6−キナゾリニル]−4(ジメチルアミ
ノ)−2−ブテナミド、Tovok(登録商標));バンデタニブ(Caprelsa(
登録商標));ラパチニブ(Tykerb(登録商標));(3R,4R)−4−アミノ
−1−((4−((3−メトキシフェニル)アミノ)ピロロ[2,1−f][1,2,4
]トリアジン−5−イル)メチル)ピペリジン−3−オール(BMS690514);カ
ネルチニブ二塩酸塩(CI−1033);6−[4−[(4−エチル−1−ピペラジニル
)メチル]フェニル]−N−[(1R)−1−フェニルエチル]−7H−ピロロ[2,3
−d]ピリミジン−4−アミン(AEE788、CAS497839−62−0);ムブ
リチニブ(TAK165);ペリチニブ(EKB569);アファチニブ(BIBW29
92);ネラチニブ(HKI−272);N−[4−[[1−[(3−フルオロフェニル
)メチル]−1H−インダゾール−5−イル]アミノ]−5−メチルピロロ[2,1−f
][1,2,4]トリアジン−6−イル]−カルバミン酸、(3S)−3−モルホリニル
メチルエステル(BMS599626);N−(3,4−ジクロロ−2−フルオロフェニ
ル)−6−メトキシ−7−[[(3aα,5β,6aα)−オクタヒドロ−2−メチルシ
クロペンタ[c]ピロール−5−イル]メトキシ]−4−キナゾリナミン(XL647、
CAS781613−23−8);および4−[4−[[(1R)−1−フェニルエチル
]アミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−6−yl]−フェノール(PKI
166、CAS187724−61−4)が挙げられる。
【0277】
EGFR抗体としては、限定されるものではないが、セツキシマブ(Erbitux(
登録商標));パニツムマブ(Vectibix(登録商標));マツズマブ(EMD−
72000);ニモツズマブ(hR3);ザルツムマブ;TheraCIM h−R3;
MDX0447(CAS339151−96−1);およびch806(mAb−806
、CAS946414−09−1)が挙げられる。
【0278】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2受容体)(Neu、ErbB−2、CD340、
またはp185としても知られる)阻害剤としては、限定されるものではないが、トラス
ツズマブ(Herceptin(登録商標));ペルツズマブ(Omnitarg(登録
商標));ネラチニブ(HKI−272、(2E)−N−[4−[[3−クロロ−4−[
(ピリジン−2−イル)メトキシ]フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシキノ
リン−6−イル]−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エンアミド、PCT公開第WO0
5/028443号に記載);ラパチニブまたはラパチニブジトシレート(ditosylate)
(Tykerb(登録商標));(3R,4R)−4−アミノ−1−((4−((3−メ
トキシフェニル)アミノ)ピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−5−イル)
メチル)ピペリジン−3−オール(BMS690514);(2E)−N−[4−[(3
−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[[(3S)−テトラヒドロ−3−フ
ラニル]オキシ]−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(B
IBW−2992、CAS850140−72−6);N−[4−[[1−[(3−フル
オロフェニル)メチル]−1H−インダゾール−5−イル]アミノ]−5−メチルピロロ
[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イル]−カルバミン酸、(3S)−3−
モルホリニルメチルエステル(BMS599626、CAS714971−09−02)
;カネルチニブ二塩酸塩(PD183805またはCI−1033);およびN−(3,
4−ジクロロ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[[(3aα,5β,6a
α)−オクタヒドロ−2−メチルシクロペンタ[c]ピロール−5−イル]メトキシ]−
4−キナゾリナミン(XL647、CAS781613−23−8)が挙げられる。
【0279】
HER3阻害剤としては、限定されるものではないが、LJM716、MM−121、
AMG−888、RG7116、REGN−1400、AV−203、MP−RM−1、
MM−111、およびMEHD−7945Aが挙げられる。
【0280】
MET阻害剤としては、限定されるものではないが、カボザンチニブ(XL184、C
AS849217−68−1);フォレチニブ(GSK1363089、以前はXL88
0、CAS849217−64−7);チバンチニブ(ARQ197、CAS10008
73−98−2);1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−N−(5−(7−メ
トキシキノリン−4−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−5−メチル−3−オキソ−2
−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド(AMG458
);クリゾチニブ(Xalkori(登録商標)、PF−02341066);(3Z)
−5−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イルスルホニル)−3−({3,5
−ジメチル−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル]−1H−ピロール
−2−イル}メチレン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(SU112
71);(3Z)−N−(3−クロロフェニル)−3−({3,5−ジメチル−4−[(
4−メチルピペラジン−1−yl)カルボニル]−1H−ピロール−2−イル}メチレン
)−N−メチル−2−オキソインドリン−5−スルホンアミド(SU11274);(3
Z)−N−(3−クロロフェニル)−3−{[3,5−ジメチル−4−(3−モルホリン
−4−イルプロピル)−1H−ピロール−2−イル]メチレン}−N−メチル−2−オキ
ソインドリン−5−スルホンアミド(SU11606);6−[ジフルオロ[6−(1−
メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダ
ジン−3−イル]メチル]−キノリン(JNJ38877605、CAS943540−
75−8);2−[4−[1−(キノリン−6−イルメチル)−1H−[1,2,3]ト
リアゾロ[4,5−b]ピラジン−6−イル]−1H−ピラゾール−1−イル]エタノー
ル(PF04217903、CAS956905−27−4);N−((2R)−1,4
−ジオキサン−2−イルメチル)−N−メチル−N’−[3−(1−メチル−1H−ピラ
ゾール−4−イル)−5−オキソ−5H−ベンゾ[4,5]シクロヘプタ[1,2−b]
ピリジン−7−イル]スルファミド(MK2461、CAS917879−39−1);
6−[[6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−1,2,4−トリアゾロ[
4,3−b]ピリダジン−3−イル]チオ]−キノリン(SGX523、CAS1022
150−57−7);および(3Z)−5−[[(2,6−ジクロロフェニル)メチル]
スルホニル]−3−[[3,5−ジメチル−4−[[(2R)−2−(1−ピロリジニル
メチル)−1−ピロリジニル]カルボニル]−1H−ピロール−2−イル]メチレン]−
1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(PHA665752、CAS4775
75−56−7)が挙げられる。
【0281】
IGF1R阻害剤としては、限定されるものではないが、BMS−754807、XL
−228、OSI−906、GSK0904529A、A−928605、AXL171
7、KW−2450、MK0646、AMG479、IMCA12、MEDI−573、
およびBI836845が挙げられる。概説については、例えば、Yee, JNCI, 104; 975
(2012)を参照されたい。
【0282】
別の態様では、本開示は、限定されるものではないが、MEK阻害剤、Braf阻害剤
、PI3K/Akt阻害剤、SHP2阻害剤、およびまたmTor阻害剤などの、1また
は複数のFGF下流シグナリング経路阻害剤と組み合わせた抗体薬物コンジュゲートを、
それを必要とする対象に投与することにより、がんを処置する方法を提供する。
【0283】
例えば、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤としては、限定され
るものではないが、XL−518(ACC Corp.から入手可能な、GDC−097
3、Cas No.1029872−29−4としても知られる);2−[(2−クロロ
−4−ヨードフェニル)アミノ]−N−(シクロプロピルメトキシ)−3,4−ジフルオ
ロ−ベンザミド(CI−1040またはPD184352としても知られ、PCT公開第
WO2000035436号に記載されている);N−[(2R)−2,3−ジヒドロキ
シプロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)ア
ミノ]−ベンザミド(PD0325901としても知られ、PCT公開第WO20020
06213号に記載されている);2,3−ビス[アミノ[(2−アミノフェニル)チオ
]メチレン]−ブタンジニトリル(U0126としても知られ、米国特許第2,779,
780号に記載されている);N−[3,4−ジフルオロ−2−[(2−フルオロ−4−
ヨードフェニル)アミノ]−6−メトキシフェニル]−1−[(2R)−2,3−ジヒド
ロキシプロピル]−シクロプロパンスルホンアミド(RDEA119またはBAY869
766としても知られ、PCT公開第WO2007014011号に記載されている);
(3S,4R,5Z,8S,9S,11E)−14−(エチルアミノ)−8,9,16−
トリヒドロキシ−3,4−ジメチル−3,4,9,19−テトラヒドロ−1H−2−ベン
ゾオキサシクロテトラデシン−1,7(8H)−ジオン](E6201としても知られ、
PCT公開第WO2003076424号に記載されている);2’−アミノ−3’−メ
トキシフラボン(Biaffin GmbH & Co.,KG,Germanyから入
手可能なPD98059としても知られる);ベムラフェニブ(PLX−4032、CA
S918504−65−1);(R)−3−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フ
ルオロ−5−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−8−メチルピリド[2,3
−d]ピリミジン−4,7(3H,8H)−ジオン(TAK−733、CAS10355
55−63−5);ピマセルチブ(AS−703026、CAS1204531−26−
9);およびトラメチニブジメチルスルホキシド(GSK−1120212、CAS12
04531−25−80)が挙げられる。
【0284】
ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)阻害剤としては、限定されるものではない
が、4−[2−(1H−インダゾール−4−イル)−6−[[4−(メチルスルホニル)
ピペラジン−1−イル]メチル]チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル]モルホリ
ン(GDC0941としても知られ、PCT公開第WO09/036082号および第W
O09/055730号に記載されている);2−メチル−2−[4−[3−メチル−2
−オキソ−8−(キノリン−3−イル)−2,3−ジヒドロイミダゾ[4,5−c]キノ
リン−1−イル]フェニル]プロピオニトリル(BEZ235またはNVP−BEZ23
5としても知られ、PCT公開第WO06/122806号に記載されている);4−(
トリフルオロメチル)−5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)ピリジン−
2−アミン(BKM120またはNVP−BKM120としても知られ、PCT公開第W
O2007/084786号に記載されている);トザセルチブ(VX680またはMK
−0457、CAS639089−54−6);(5Z)−5−[[4−(4−ピリジニ
ル)−6−キノリニル]メチレン]−2,4−チアゾリジンジオン(GSK105961
5、CAS958852−01−2);(1E,4S,4aR,5R,6aS,9aR)
−5−(アセチルオキシ)−1−[(ジ−2−プロペニルアミノ)メチレン]−4,4a
,5,6,6a,8,9,9a−オクタヒドロ−11−ヒドロキシ−4−(メトキシメチ
ル)−4a,6a−ジメチル−シクロペンタ[5,6]ナフト[1,2−c]ピラン−2
,7,10(1H)−トリオン(PX866,CAS502632−66−8);および
8−フェニル−2−(モルホリン−4−イル)−クロメン−4−オン(LY294002
、CAS154447−36−6)が挙げられる。
【0285】
mTor阻害剤としては、限定されるものではないが、テムシロリムス(Torise
l(登録商標));リダホロリムス(以前はデフェロリムス、(1R,2R,4S)−4
−[(2R)−2[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,
23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)−1,18−ジヒドロキシ
−19,30−ジメトキシ−15,17,21,23,29,35−ヘキサメチル−2,
3,10,14,20−ペンタオキソ−11,36−ジオキサ−4−アザトリシクロ[3
0.3.1.0
4,9]ヘキサトリアコンタ−16,24,26,28−テトラエン−1
2−イル]プロピル]−2−メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネートとして知ら
れ、AP23573およびMK8669としても知られ、PCT公開第WO03/064
383号に記載されている);エベロリムス(Afinitor(登録商標)またはRA
D001);ラパマイシン(AY22989、Sirolimus(登録商標));シマ
ピモッド(CAS164301−51−3);(5−{2,4−ビス[(3S)−3−メ
チルモルホリン−4−イル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル}−2−メトキ
シフェニル)メタノール(AZD8055);2−アミノ−8−[trans−4−(2
−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]−6−(6−メトキシ−3−ピリジニル)−4
−メチル−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PF04691502
、CAS1013101−36−4);およびN
2−[1,4−ジオキソ−4−[[4−
(4−オキソ−8−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−2−イル)モルホリニウム−4
−イル]メトキシ]ブチル]−L−アルギニルグリシル−L−α−アスパルチルL−セリ
ン−、内塩(SF1126、CAS936487−67−1)が挙げられる。
【0286】
さらに別の態様において、本開示は、限定されるものではないが、IAP阻害剤、Bc
l2阻害剤、MCl1阻害剤、Trail剤、Chk阻害剤などの1または複数のプロア
ポトーシス剤と組み合わせた抗体薬物コンジュゲートを、それを必要とする対象に投与す
ることによりがんを処置する方法を提供する。
【0287】
例えば、IAP阻害剤としては、限定されるものではないが、NVP−LCL161、
GDC−0917、AEG−35156、AT406、およびTL32711が挙げられ
る。IAP阻害剤の他の例としては、限定されるものではないが、WO04/00528
4、WO04/007529、WO05/097791、WO05/069894、WO
05/069888、WO05/094818、US2006/0014700、US2
006/0025347、WO06/069063、WO06/010118、WO06
/017295、およびWO08/134679(これらは全て参照により本明細書に組
み込まれる)に開示されたものが挙げられる。
【0288】
BCL−2阻害剤としては、限定されるものではないが、4−[4−[[2−(4−ク
ロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル]メチル]−1−ピ
ペラジニル]−N−[[4−[[(1R)−3−(4−モルホリニル)−1−[(フェニ
ルチオ)メチル]プロピル]アミノ]−3−[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェ
ニル]スルホニル]ベンザミド(ABT−263としても知られ、PCT公開第WO09
/155386号に記載されている);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール
((−)BL−193);オバトクラックス;エチル−2−アミノ−6−シクロペンチル
−4−(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチル)−4Hクロモン−3−カルボキ
シレート(HA14−1);オブリメルセン(G3139、Genasense(登録商
標));Bak BH3ペプチド;(−)−ゴシポール酢酸(AT−101);4−[4
−[(4’−クロロ[1,1’−ビフェニル]−2−イル)メチル]−1−ピペラジニル
]−N−[[4−[[(1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−[(フェニルチオ)メチ
ル]プロピル]アミノ]−3−ニトロフェニル]スルホニル]−ベンザミド(ABT−7
37、CAS852808−04−9);およびナビトクラックス(ABT−263、C
AS923564−51−6)が挙げられる。
【0289】
DR4(TRAILR1)およびDR5(TRAILR2)などのプロアポトーシス受
容体アゴニスト(PARA)としては、限定されるものではないが、デュラネルミン(A
MG−951、RhApo2L/TRAIL);マパツムマブ(HRS−ETR1、CA
S 658052−09−6);レキサツムマブ(HGS−ETR2、CAS84581
6−02−6);アポマブ(Apomab(登録商標));コナツムマブ(AMG655
、CAS896731−82−1);およびチガツズマブ(CS1008、CAS946
415−34−5、Daiichi Sankyoから入手可能)が挙げられる。
【0290】
チェックポイントキナーゼ(CHK)阻害剤としては、限定されるものではないが、7
−ヒドロキシスタウロスポリン(UCN−01);6−ブロモ−3−(1−メチル−1H
−ピラゾール−4−イル)−5−(3R)−3−ピペリジニル−ピラゾロ[1,5−a]
ピリミジン−7−アミン(SCH900776、CAS891494−63−6);5−
(3−フルオロフェニル)−3−ウレイドチオフェン−2−カルボン酸N−[(S)−ピ
ペリジン−3−イル]アミド(AZD7762、CAS860352−01−8);4−
[((3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタ−3−イル)アミノ]−3−(1
H−ベンズイミダゾール−2−イル)−6−クロロキノリン−2(1H)−オン(CHI
R124、CAS405168−58−3);7−アミノダクチノマイシン(7−AAD
)、イソグラヌラチミド、デブロモヒメニアルジシン;N−[5−ブロモ−4−メチル−
2−[(2S)−2−モルホリニルメトキシ]−フェニル]−N’−(5−メチル−2−
ピラジニル)ウレア(LY2603618、CAS911222−45−2);スルホラ
ファン(CAS4478−93−7、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート
);9,10,11,12−テトラヒドロ−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1
,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジア
ゾシン−1,3(2H)−ジオン(SB−218078、CAS135897−06−2
);およびTAT−S216A(Sha et al., Mol. Cancer. Ther 2007; 6(1):147-153)
、およびCBP501((d−Bpa)sws(d−Phe−F5)(d−Cha)rr
rqrr)が挙げられる。
【0291】
一態様では、本開示は、1または複数のFGFR阻害剤と組み合わせた抗体薬物コンジ
ュゲートを、それを必要とする対象に投与することにより、がんを処置する方法を提供す
る。例えば、FGFR阻害剤としては、限定されるものではないが、アラニン酸ブリバニ
ブ(BMS−582664、(S)−((R)−1−(4−(4−フルオロ−2−メチル
−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4
」トリアジン−6−イルオキシ)プロパン−2−イル)2−アミノプロパノエート);バ
ルガテフ(BIBF1120、CAS928326−83−4);二酪酸ドビチニブ(T
KI258、CAS852433−84−2);3−(2,6−ジクロロ−3,5−ジメ
トキシ−フェニル)−1−{6−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−フェニ
ルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1−メチル−ウレア(BGJ398、CAS87
2511−34−7);ダヌセルチブ(PHA−739358);および(PD1730
74、CAS219580−11−7)が挙げられる。特定の態様において、本開示は、
3−(2,6−ジクロロ−3,5−ジメトキシフェニル)−1−(6((4−(4−エチ
ルピペラジン−1−イル)フェニル)アミノ)ピリミジン−4−イル)−1−メチルウレ
ア(BGJ−398としても知られる);または4−アミノ−5−フルオロ−3−(5−
(4−メチルピペラジン1−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)キノ
リン−2(1H)−オン(ドビチニブもしくはTKI−258としても知られる)、AZ
D4547(Gavine et al., 2012, Cancer Research 72, 2045-56、N−[5−[2−(
3,5−ジメトキシフェニル)エチル]−2H−ピラゾール−3−イル]−4−(3R,
5S)−ジメチルピペラジン−1−イル)ベンザミド)、ポナチニブ(AP24534;
Gozgit et al., 2012, Mol Cancer Ther., 11; 690-99;3−[2−(イミダゾ[1,2
−b]ピリダジン−3−イル)エチニル]−4−メチル−N−{4−[(4−メチルピペ
ラジン−1−イル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニル}ベンザミド、CA
S943319−70−8)などのFGFR2阻害剤と組み合わせた抗体薬物コンジュゲ
ートを、それを必要とする対象に投与することにより、がんを処置する方法を提供する。
【0292】
医薬組成物
イムノコンジュゲートを含む医薬組成物または滅菌組成物を調製するために、本開示の
イムノコンジュゲートを、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合する。組成物は、
消化管間質腫瘍(GIST)、小細胞肺がん(SCLC)、急性骨髄性白血病(AML)
、メラノーマ、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞症、神経線維腫症、乳がん、非小細
胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんなどのがんを処置または防止するのに好適である
1または複数の他の治療剤をさらに含有してもよい。
【0293】
治療剤および診断剤の製剤を、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水性溶液、ローショ
ン、または懸濁液の形態で生理的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤と混合する
ことにより調製することができる(例えば、Hardman et al., Goodman and Gilman's The
Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, N.Y., 2001; Genna
ro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and W
ilkins, New York, N.Y., 2000; Avis, et al. (eds.), Pharmaceutical Dosage Forms:
Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY, 1993; Lieberman, et al. (eds.), Pharm
aceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY, 1990; Lieberman, et al. (eds
.) Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY, 1990; Weine
r and Kotkoskie, Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, N
.Y., 2000を参照されたい)。
【0294】
特定の態様では、本開示の抗体薬物コンジュゲートの臨床サービス形態(CSF)は、
ADC、コハク酸ナトリウム、およびポリソルベ−ト20を含有するバイアル中の凍結乾
燥物である。凍結乾燥物を注射用水で再構成させることができ、その溶液はADC、コハ
ク酸ナトリウム、スクロース、およびポリソルベート20、pH約5.0を含む。その後
の静脈内投与のために、得られる溶液は通常、担体溶液中にさらに希釈される。
【0295】
治療剤のための投与レジメンの選択は、実体の血清または組織代謝回転率、症状のレベ
ル、実体の免疫原性および生物学的マトリックス中の標的細胞の接近可能性などのいくつ
かの因子に依存する。ある特定の態様において、投与レジメンは、許容される副作用レベ
ルと一致する患者に送達される治療剤の量を最大化する。従って、送達される生物製剤の
量は、特定の実体および処置される状態の重症度に一部依存する。適切な用量の抗体、サ
イトカイン、および小分子を選択する際の指針が利用可能である(例えば、Wawrzynczak,
Antibody Therapy, Bios Scientific Pub. Ltd, Oxfordshire, UK, 1996; Kresina (ed.
), Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis, Marcel Dekker, New York, N.Y.
, 1991; Bach (ed.), Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Dise
ases, Marcel Dekker, New York, N.Y., 1993; Baert et al., New Engl. J. Med. 348:6
01-608, 2003; Milgrom et al., New Engl. J. Med. 341:1966-1973, 1999; Slamon et a
l., New Engl. J. Med. 344:783-792, 2001; Beniaminovitz et al., New Engl. J. Med.
342:613-619, 2000; Ghosh et al., New Engl. J. Med. 348:24-32, 2003; Lipsky et a
l., New Engl. J. Med. 343:1594-1602, 2000を参照されたい)。
【0296】
適切な用量の決定は、例えば、処置に影響するか、または処置に影響すると予測される
ことが当業界で公知の、または疑われるパラメータまたは因子を使用して、医師によって
行われる。一般に、用量は最適用量よりもいくらか低い量から開始し、その後、任意の負
の副作用と比較して所望の、または最適な効果が達成されるまで少しずつ増加させる。重
要な診断尺度は、例えば、生成される炎症性サイトカインの炎症またはレベルの症状のも
のを含む。
【0297】
医薬組成物抗体薬物コンジュゲート中の活性成分の急性用量レベルを、患者にとって毒
性とならないように、特定の患者、組成物、および投与様式に対する所望の治療応答を達
成するのに有効である活性成分の量を得るために変化させることができる。選択される用
量レベルは、使用される本開示の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミド
の活性、投与経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、
使用される特定の組成物と共に使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置さ
れる患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および以前の病歴、ならびに医学界で公
知の同様の因子を含む様々な薬物動態因子に依存する。
【0298】
抗体またはその断片を含む組成物を、連続輸注により、または例えば、1日、1週間、
もしくは週に1〜7回の間隔での用量により提供することができる。用量を、静脈内、皮
下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、大脳内で、または吸入により提供することができ
る。特定の用量プロトコールは、有意な望ましくない副作用を回避する最大用量または用
量頻度を含むものである。
【0299】
本開示のイムノコンジュゲートに関して、患者に投与される用量は、0.0001mg
/kg〜100mg/kg患者体重であってもよい。用量は、0.0001mg/kg〜
20mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜
5mg/kg、0.0001〜2mg/kg、0.0001〜1mg/kg、0.000
1mg/kg〜0.75mg/kg、0.0001mg/kg〜0.5mg/kg、0.
0001mg/kg〜0.25mg/kg、0.0001〜0.15mg/kg、0.0
001〜0.10mg/kg、0.001〜0.5mg/kg、0.01〜0.25mg
/kgまたは0.01〜0.10mg/kg患者体重であってもよい。抗体またはその断
片の用量を、キログラム患者体重(kg)に、mg/kgで投与される用量を掛けたもの
を使用して算出することができる。
【0300】
イムノコンジュゲートの用量を反復し、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、1
0日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、または少なくとも6カ月空け
てもよい。特定の態様においては、本開示のイムノコンジュゲートの用量を、3週間毎に
反復する。
【0301】
特定の患者のための有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康、投与の方法、経
路および用量ならびに副作用の重症度などの因子に応じて変化してもよい(例えば、Mayn
ard et al., A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice, Interpharm Press, Boc
a Raton, Fla., 1996; Dent, Good Laboratory and Good Clinical Practice, Urch Publ
., London, UK, 2001を参照されたい)。
【0302】
投与経路は、例えば、局所もしくは皮膚適用、静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内
、動脈内、脳脊髄内、病変内による注射もしくは輸注、または持続放出系もしくは埋込み
体によるものであってもよい(例えば、Sidman et al., Biopolymers 22:547-556, 1983;
Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277, 1981; Langer, Chem. Tech. 12:
98-105, 1982; Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688-3692, 1985; Hwa
ng et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030-4034, 1980; 米国特許第6,350,
466号および第6,316,024号を参照されたい)。必要に応じて、組成物はまた
、可溶化剤または注射部位での疼痛を軽減するためのリドカインなどの局所麻酔剤、また
はその両方を含んでもよい。さらに、例えば、吸入器または噴霧器、およびエアゾール化
剤を含む製剤の使用により、肺投与を使用することもできる。例えば、米国特許第6,0
19,968号、第5,985,320号、第5,985,309号、第5,934,2
72号、第5,874,064号、第5,855,913号、第5,290,540号、
および第4,880,078;ならびにPCT公開第WO92/19244号、第WO9
7/32572号、第WO97/44013号、第WO98/31346号、および第W
O99/66903号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参
照されたい。
【0303】
本開示の組成物を、1または複数の当業界で公知の様々な方法を使用して、1または複
数の投与経路により投与することもできる。当業者であれば理解できるように、投与の経
路および/または様式は、所望の結果に応じて変化する。イムノコンジュゲートのために
選択される投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または例えば
、注射もしくは輸注による他の非経口投与経路が挙げられる。非経口投与は、通常は注射
による、腸内投与および局所投与以外の投与様式であってよく、限定されるものではない
が、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮
下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および輸注が
挙げられる。あるいは、本開示の組成物を、局所、表皮または粘膜投与経路などの非経口
経路により、例えば、鼻内的、経口的、経膣的、直腸的、舌下的または局所的に投与する
ことができる。一態様において、本開示のイムノコンジュゲートは、輸注により投与され
る。別の態様において、イムノコンジュゲートは皮下投与される。
【0304】
本開示のイムノコンジュゲートを制御放出系または持続放出系において投与する場合、
ポンプを使用して制御放出または持続放出を達成することができる(Langer, supra; Sef
ton, CRC Crit. Ref Biomed. Eng. 14:20, 1987; Buchwald et al., Surgery 88:507, 19
80; Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574, 1989を参照されたい)。ポリマー材料
を使用して、イムノコンジュゲートの療法の制御放出または持続放出を達成することがで
きる(例えば、Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.)
, CRC Pres., Boca Raton, Fla., 1974; Controlled Drug Bioavailability, Drug Produ
ct Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York, 1984; Ranger
and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61, 1983を参照されたい;
また、Levy et al., Science 228:190, 1985; During et al., Ann. Neurol. 25:351, 19
89; Howard et al., J. Neurosurg. 7 1:105, 1989; 米国特許第5,679,377号;
米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,9
89,463号;米国特許第5,128,326号;PCT公開第WO99/15154
号;およびPCT公開第WO99/20253号も参照されたい)。持続放出製剤におい
て使用されるポリマーの例としては、限定されるものではないが、ポリ(2−ヒドロキシ
エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(
エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)
、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリ
ルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ
−グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられる。一態様において
、持続放出製剤において使用されるポリマーは、不活性であり、浸出性不純物を含まず、
保存時に安定であり、無菌であり、および生分解性である。制御放出系または持続放出系
を、予防または治療標的の近くに置き、かくして、全身用量のほんの一部のみを要するよ
うにすることができる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Rel
ease, supra, vol. 2, pp. 115-138, 1984を参照されたい)。
【0305】
制御放出系は、Langer, Science 249:1527-1533, 1990による概説で考察されている。
当業者には公知の任意の技術を使用して、本開示の1または複数のイムノコンジュゲート
を含む持続放出製剤を生成することができる。例えば、米国特許第4,526,938号
、PCT公開第WO91/05548号、PCT公開第WO96/20698号、Ning e
t al., Radiotherapy & Oncology 39:179-189, 1996;Song et al., PDA Journal of Pha
rmaceutical Science & Technology 50:372-397, 1995;Cleek et al., Pro. Int'l. Sym
p. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854, 1997;およびLam et al., Proc. Int'l.
Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760, 1997(それぞれ、その全体が参照に
より本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0306】
本開示のイムノコンジュゲートを局所投与する場合、それらを軟膏、クリーム、経皮パ
ッチ、ローション、ゲル、シャンプー、スプレー、エアゾール、溶液、乳濁液の形態、ま
たは当業者には周知の他の形態で製剤化することができる。例えば、Remington's Pharma
ceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 19th ed., Mac
k Pub. Co., Easton, Pa. (1995)を参照されたい。非スプレー可能局所剤形については、
局所適用と適合する担体または1もしくは複数の賦形剤を含み、いくつかの場合、水より
も高い動的粘度を有する粘性から半固体または固体の形態が典型的に使用される。好適な
製剤としては、限定されるものではないが、必要に応じて、滅菌されるか、または例えば
、浸透圧などの様々な特性に影響を及ぼすための補助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿
潤剤、バッファー、もしくは塩)と混合される、溶液剤、懸濁液剤、乳濁液剤、クリーム
剤、軟膏剤、散剤、リミネント剤、蝋膏剤(salve)などが挙げられる。他の好適な局所
剤形としては、いくつかの場合、固体または液体の不活性担体と組み合わせた活性成分が
、加圧された揮発性物質(例えば、フレオンなどの気体噴射剤)との混合物中、またはス
クイーズボトル中に充填される、スプレー可能なエアゾール調製物が挙げられる。必要に
応じて、モイスチャライザーまたは保湿剤(humectant)を医薬組成物および剤形に添加
することもできる。そのような追加の成分の例は、当業界で周知である。
【0307】
イムノコンジュゲートを含む組成物を鼻内投与する場合、それをエアゾール形態、スプ
レー、ミストまたは液滴の形態で製剤化することができる。特に、本開示による使用のた
めの予防剤または治療剤を、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリク
ロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体
)の使用と共に、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー提示物の形態で都合
良く送達することができる。加圧エアゾールの場合、一定量を送達するためのバルブを提
供することにより、用量単位を決定することができる。化合物と、ラクトースまたはデン
プンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器または散布器における使用
のためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンから構成される)を製剤化する
ことができる。
【0308】
第2の治療剤、例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放
射線療法との同時投与または処置のための方法は、当業界で公知である(例えば、Hardma
n et al., (eds.) (2001) Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therap
eutics, 10.sup.th ed., McGraw-Hill, New York, N.Y.; Poole and Peterson (eds.) (2
001) Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach, Lippincott
, Williams & Wilkins, Phila., Pa.; Chabner and Longo (eds.) (2001) Cancer Chemot
herapy and Biotherapy, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., Pa.を参照されたい
)。治療剤の有効量は、症状を少なくとも10%;少なくとも20%;少なくとも約30
%;少なくとも40%、または少なくとも50%減少させることができる。
【0309】
イムノコンジュゲートと共に投与することができるさらなる療法(例えば、予防剤また
は治療剤)を、本開示のイムノコンジュゲートから5分未満空けて、30分未満空けて、
1時間空けて、約1時間空けて、約1〜約2時間空けて、約2時間〜約3時間空けて、約
3時間〜約4時間空けて、約4時間〜約5時間空けて、約5時間〜約6時間空けて、約6
時間〜約7時間空けて、約7時間〜約8時間空けて、約8時間〜約9時間空けて、約9時
間〜約10時間空けて、約10時間〜約11時間空けて、約11時間〜約12時間空けて
、約12時間〜約18時間空けて、18時間〜24時間空けて、24時間〜36時間空け
て、36時間〜48時間空けて、48時間〜52時間空けて、52時間〜60時間空けて
、60時間〜72時間空けて、72時間〜84時間空けて、84時間〜96時間空けて、
または96時間〜120時間空けて投与することができる。2つ以上の療法を、1回の同
じ患者訪問のうちに投与してもよい。
【0310】
ある特定の態様では、イムノコンジュゲートを、in vivoでの適切な分布を確保
するように製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は多くの高親水性化
合物を排除する。本開示の治療化合物がBBBを通過することを確保するために(必要に
応じて)、それらを、例えば、リポソーム中で製剤化することができる。リポソームを製
造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;第5,374,54
8号;および第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または
臓器中に選択的に輸送される1または複数の部分を含み、かくして、標的化薬物送達を増
強してもよい(例えば、Ranade, (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照されたい)
。標的化部分の例としては、葉酸またはビオチン(例えば、Low et al.の米国特許第5,
416,016号を参照されたい);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Bi
ophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(Bloeman et al., (1995) FEBS Lett. 357:140;
Owais et al., (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性プロテイン
A受容体(Briscoe et al., (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier
et al, (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられ、K. Keinanen; M. L. Laukkanen
(1994) FEBS Lett. 346:123; J. J. Killion; I. J. Fidler (1994) Immunomethods 4:27
3も参照されたい。
【0311】
本開示は、単独で、または他の療法と組み合わせたイムノコンジュゲートを含む医薬組
成物を、それを必要とする対象に投与するためのプロトコールを提供する。組合せ療法(
例えば、予防剤または治療剤)を、同時的または連続的に対象に投与することができる。
組合せ療法の療法(例えば、予防剤または治療剤)を、周期的に投与することもできる。
周期的療法は、療法(例えば、薬剤)の1つに対する耐性の発生を軽減するため、療法(
例えば、薬剤)の1つの副作用を回避もしくは軽減する、および/または療法の効果を改
善するための、一定期間、第1の療法(例えば、第1の予防剤または治療剤)の投与、次
いで、一定期間、第2の療法(例えば、第2の予防剤または治療剤)の投与、およびこの
連続的投与の反復、すなわち、周期を含む。
【0312】
本開示の組合せ療法の療法(例えば、予防剤または治療剤)を、対象に同時に投与する
ことができる。
【0313】
用語「同時に」は、正確に同時の療法(例えば、予防剤または治療剤)の投与に限定さ
れないが、むしろ、抗体またはその断片を含む医薬組成物が対象に連続して、およびイム
ノコンジュゲートが他の療法(複数可)と一緒に作用して、それらを別途投与した場合よ
りも増大した利益を提供し得るような時間間隔で投与されることを意味する。例えば、そ
れぞれの療法を同時に、または異なる時点で任意の順序で連続的に投与することができる
;しかしながら、同時に投与しない場合、それらを十分に近い時間で投与して、所望の治
療または予防効果を提供するべきである。それぞれの療法を、任意の適切な形態で、およ
び任意の好適な経路により、別々に対象に投与することができる。様々な態様において、
療法(例えば、予防剤または治療剤)を、15分未満空けて、30分未満空けて、1時間
未満空けて、約1時間空けて、約1〜約2時間空けて、約2時間〜約3時間空けて、約3
時間〜約4時間空けて、約4時間〜約5時間空けて、約5時間〜約6時間空けて、約6時
間〜約7時間空けて、約7時間〜約8時間空けて、約8時間〜約9時間空けて、約9時間
〜約10時間空けて、約10時間〜約11時間空けて、約11時間〜約12時間空けて、
24時間空けて、48時間空けて、72時間空けて、または1週間空けて対象に投与する
。他の態様において、2以上の療法(例えば、予防剤または治療剤)を、同じ患者訪問の
うちに投与する。
【0314】
組合せ療法の予防剤または治療剤を、同じ医薬組成物中で対象に投与することができる
。あるいは、組合せ療法の予防剤または治療剤を、別々の医薬組成物中、対象に同時に投
与することができる。予防剤または治療剤を、同じか、または異なる投与経路により対象
に投与してもよい。
実施例
【実施例1】
【0315】
ハイブリドーマ技術によるcKIT Abの作成
抗原および他のタンパク質
ヒトcKITタンパク質を分泌する一過的発現細胞系を、293Freestyle(
商標)細胞(Invitrogen、Carlsbad、Ca)のトランスフェクション
により作成した。簡単に述べると、Freestyle(商標)培地(Invitrog
en)中で培養した細胞を、293Fectin(商標)トランスフェクション試薬およ
びヒトcKIT cDNAのECDと、配列のC末端のHis6タグ、またはマウスFc
(pFUSE、Invitrogen、San Diego、CA)とを含有する組換え
プラスミドを使用してトランスフェクトした。48〜72時間後、培地を遠心分離して細
胞を除去し、滅菌濾過し、透明化された溶解物をタンパク質精製のために使用する。
【0316】
His6タグ付cKITについて、得られる濃縮液を0.5mL/minでNiNTA
His−Bind Superflowカラムに印加した。PBSを使用するベースラ
イン洗浄の後、結合した材料を、イミダゾールの段階的勾配(10〜500mM)を含む
PBSで溶出させた。得られる溶出液をPBS、pH7.3に対して透析し、滅菌濾過し
、アリコートした。Fc−cKit融合物について、Protein G fastFl
owカラムを上記に概略されたように使用し(NiNTAの代わりに)、pH3グリシン
バッファーを使用して溶出し、Tris、pH8で中和した。
【0317】
ハイブリドーマの作成
マウスの免疫化およびハイブリドーマの生成
精製されたcKITを、Freund Complete Adjuvantで1:1
に希釈した後、Bcl−2トランスジェニックマウス(C57BL/6−Tgn(bcl
−2)22 Wehi株)を免疫した。マウスを、Repetitive Immuni
zation at Multiple Sites(RIMMS)(McIntyre GD., Hy
bridoma, 1997)をコールする手順を使用して免疫した。簡単に述べると、末梢リンパ節
(PLN)に近い8つの特定部位で1〜3μgの抗原をマウスに注射した。この手順を、
12日間にわたって8回繰り返した。12日目に、試験血液を採取し、血清抗体力価をE
LISAにより分析した。プールしたPLNを15日目に高力価マウスから取り出した。
リンパ球を収獲するために、PLNをプレーンDMEMで2回洗浄した後、0.22ミク
ロンのスクリーン(Falcon#352350、BD Bioscience、San
Jose、CA)を通す濾過により分離させた。得られるリンパ球をさらに2回洗浄し
た後、融合した。F0ミエローマ細胞を、2.5のリンパ球と1のF0細胞との比でリン
パ球と混合した。細胞混合物を遠心分離した後、1mLのPEG1500を1min、滴
下しながら細胞ペレットに添加した。30秒後、1mLのDMEMをゆっくり添加し、1
min後、19mLのDMEMを5min添加した。融合した細胞を沈降させ、2x10
5細胞/mLの密度でHAT培地(DMEM+20%FBS、Pen/Strep/Gl
u、1xNEAA、1xHAT、0.5xHFCS)中に懸濁し、1h、37℃に入れた
。次いで、細胞を、60μL/ウェルで384ウェルプレート中に播種した。
【0318】
cKITに対する抗体を分泌するハイブリドーマのスクリーニング
融合の10日後に、ハイブリドーマプレートを、cKIT特異的抗体の存在についてス
クリーニングした。ELISAスクリーンのために、Maxisorp 384ウェルプ
レート(Nunc#464718)を、50μLのcKIT(PBS中で15ng/ウェ
ルに希釈)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。残存するタンパク質を吸引し、ウ
ェルをPBS中の1%BSAで遮断した。室温で30minインキュベートした後、PB
S+0.05%Tween(PBST)で4回、ウェルを洗浄した。15μLのハイブリ
ドーマ上清をELISAプレートに移した。PLN除去の時点で取った15μLのマウス
血清を、PBS中で1:1000に希釈し、陽性対照として添加した。50μLの二次抗
体(ヤギ抗マウスIgG−HRP(Jackson Immuno Research#
115−035−071、West Grove、PA)、PBS中で1:5000に希
釈)を、ELISAプレート上の全ウェルに添加した。室温で1hのインキュベーション
後、プレートをPBSTで8回洗浄した。25μLのTMB(KPL#50−76−05
)を添加し、室温で30minのインキュベーション後、プレートを605nmの吸光度
で読取った。陽性ウェルからの細胞を、HT培地(DMEM+20%FBS、Pen/S
trep/Glu、1xNEAA、1xHT、0.5xHFCS)中、24ウェルプレー
ト中で増殖させた。
【0319】
抗体の精製
cKIT抗体を含有する上清を、プロテインG(Upstate#16−266(Bi
llerica、MA))を使用して精製した。上清を充填する前に、樹脂を10倍カラ
ム容量のPBSで平衡化させた。試料の結合後、カラムを10倍カラム容量のPBSで洗
浄した後、抗体を5倍カラム容量の0.1Mグリシン、pH2.0で溶出させた。カラム
画分を1/10倍容量のTris HCl、pH9.0ですぐに中和した。画分のOD2
80を測定し、陽性画分をプールし、PBS、pH7.2に対して一晩透析した。
【実施例2】
【0320】
抗cKIT抗体のヒト化および親和性成熟
ヒト化の設計
ハイブリドーマ由来抗cKIT抗体9P3のVHおよびVL配列は、それぞれ、配列番
号9および配列番号18である。完全なIgG1を作成するために使用されるヒトIgG
1定常ドメインのアミノ酸配列は、重鎖については配列番号10、軽鎖については配列番
号19である。抗cKIT抗体9P3に由来する3つのCDR領域(GFTFSDYYM
A(配列番号148))、(NINYDGSSTYYLDS(配列番号149))および
(GDYYGTTYWYFDV(配列番号150))を、ヒト生殖系列アクセプターフレ
ームワークVH3_3−07(vBASEデータベース)上に移植することにより、重鎖
のヒト化を達成した。抗cKIT抗体9P3に由来する3つのCDR領域(RASQDI
SNYLN(配列番号151))、(YTSRLQS(配列番号152))および(QQ
GKKLWS(配列番号153))を、ヒト生殖系列アクセプターフレームワークVK3
−L25(vBASEデータベース)上に移植するか、または2つのCDR領域(配列番
号152および配列番号153)をヒト生殖系列アクセプターフレームワークVK1−O
12(vBASEデータベース)上に移植することにより、軽鎖のヒト化を達成した。C
DR領域に加えて、可変軽鎖ドメインの1つのフレームワーク残基、すなわち、VL#7
1およびVK3−L25の場合、VL#79(配列番号21に基づく残基番号)を、9P
3配列から保持した。さらに、ヒトJエレメントJH4およびJK4を、それぞれ、重鎖
および軽鎖のために使用した。ヒト化抗体重鎖の得られるアミノ酸配列は配列番号11で
あり、2つの軽鎖については配列番号20(VK1−O12)および配列番号21(VK
3−L6)である。
【0321】
本発明者らは、アミノ酸モチーフ、アスパラギン酸、次いで、グリシン(DG)は、翻
訳後改変(イソ−アスパラギン酸形成)を受けやすく、CDR内のリシンは抗体−薬物コ
ンジュゲーション後に活性抗体の画分を減少させ得ると仮定した。無作為突然変異誘発(
すなわち、変異性PCR)と定方向突然変異誘発との組合せを適用して、ヒト化抗体を最
適化した。
【0322】
ヒト化配列の作成
ホモ・サピエンス(homo sapiens)のためのコドン最適化を含む、ヒト化VLおよびV
HドメインをコードするDNA配列を、GeneArt(Life Technokog
ies Inc.Regensburg、Germany)に注文した。VLおよびVH
ドメインをコードする配列を、哺乳動物細胞中での分泌にとって好適な発現ベクター中に
GeneArt由来ベクターからの切断および貼付によりサブクリーニングした。重鎖お
よび軽鎖を個々の発現ベクター中にクローニングして、同時トランスフェクションを可能
にした。発現ベクターのエレメントとしては、プロモーター(サイトメガロウイルス(C
MV)エンハンサー−プロモーター)、分泌を容易にするためのシグナル配列、ポリアデ
ニル化シグナルおよび転写ターミネーター(ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子)、エピ
ソーム複製および原核生物中での複製を可能にするエレメント(例えば、SV40起源お
よびColE1または当業界で公知の他のもの)ならびに選択を可能にするエレメント(
アンピシリン耐性遺伝子およびゼオシンマーカー)が挙げられる。
【0323】
ヒト化抗体の発現および精製
SV40ラージT抗原を構成的に発現するヒト胚性腎細胞(HEK293−T ATC
C11268)は、ヒト化および/または最適化されたIgGタンパク質の一過的発現の
ための好ましい宿主細胞系の1つである。トランスフェクションを、トランスフェクショ
ン試薬としてPEI(ポリエチレンイミン、MW25.000線状、Polyscien
ces、USAカタログ番号23966)を使用して実施する。900mlの細胞培養等
級の水に室温(RT)で1gのPEIを注意深く溶解することにより、PEIストック溶
液を調製する。PEIの溶解を容易にするために、HClをpH3〜5となるように添加
することにより溶液を酸性化した後、NaOHで7.05の最終pHとなるように中和し
た。最後に、容量を1Lに調整し、溶液を0.22μmフィルターを通して濾過し、アリ
コートし、さらなる使用まで−80℃で凍結した。一度解凍したら、アリコートを−20
℃で3回まで再凍結してもよいが、−20℃では長期保存すべきではない。HEK293
T細胞を、細胞のトランスフェクションおよび増殖のためのNovartisに特許のあ
る無血清培養培地、および生成/供給培地としてのExCell VPRO無血清培養培
地(SAFC Biosciences、USA、カタログ番号24561C)を使用し
て培養する。一過的トランスフェクションのために調製された細胞を、懸濁培養で培養す
る。小規模(<5L)トランスフェクションのためには、細胞を、5%CO2で加湿され
たインキュベータ中、オービタルシェーカー(100〜120rpm)上のCornin
g振とうフラスコ(Corning、Tewksbury、MA)中で成長させる(種フ
ラスコ)。種培養中の細胞を、指数増殖期(5x10
5〜3x10
6/mLの細胞密度)
に維持すべきであり、トランスフェクションのためには90%を超える生存能力を示すべ
きである。この範囲の外側の細胞密度は、希釈後に遅滞期またはトランスフェクション効
率の低下をもたらす。小規模(<5L)トランスフェクションのために、細胞のアリコー
トを種培養から取り、Novartis無血清培養培地を使用して最終容量の36%中、
1.4x10
6細胞/mLに調整する。最終培養容量の7%中にDNAを1mg/L(最
終容量)に希釈した後、穏やかに混合することにより、DNA溶液(溶液1:1Lのトラ
ンスフェクションのために0.5mgの重鎖および0.5mgの軽鎖発現プラスミド)を
調製する。細菌汚染を防止するために、この溶液を0.22μmフィルター(例えば、M
illipore Stericup)を使用して濾過する。次いで、3mg/L(最終
容量)のPEI溶液も、最終培養容量の7%中に希釈し、穏やかに混合した(溶液2)。
両溶液を、室温(RT)で5〜10minインキュベートする。その後、溶液2を、穏や
かに混合しながら溶液1に添加し、室温でさらに5〜15分間インキュベートする。次い
で、トランスフェクション混合物を細胞に添加し、細胞の培養を4〜6時間継続する。最
後に、残りの50%の全生成容量を、ExCell(登録商標)VPRO無血清培養培地
の添加により達成する。細胞培養を、トランスフェクション後11日間継続する。培養物
を4℃で20分間、4500rpmでの遠心分離により収獲する(Heraeus(登録
商標)、Multifuge 3 S−R、Thermo Scientific、Ro
ckford、IL)。回収された細胞上清を、stericupフィルター(0.22
μm)を通して滅菌濾過し、さらなるプロセッシングまで4℃で保存する。
【0324】
新鮮に消毒された(0.25M NaOH)HiTrap ProtA MabSel
ect(登録商標)SuRe、5mlカラムを使用して、冷却キャビネット中、4℃で「
AKTA 100 explorer Air」クロマトグラフィーシステム上で、精製
を実施した。カラムを5倍カラム容量(CV)のPBS(Gibco、Life Tec
hnologies、Carlsbad、CA)で平衡化した後、滅菌濾過された上清(
2L)を4.0ml/minで充填した。カラムを8CVのPBSで洗浄して、未結合の
試料を溶出させ、5CVのPBSで再度洗浄した。抗体を、5CVの50mMクエン酸、
70mM NaCl pH3.2で溶出させた。溶出液を3ml画分で収集し、画分をプ
ールし、1M Tris HCl pH10でpH7に調整した。プールをプールし、滅
菌濾過(Millipore Steriflip、0.22um)し、OD280nm
をSpectrophotometer ND−1000(NanoDrop)中で測定
し、タンパク質濃度を配列データに基づいて算出した。溶出液を、凝集(SEC−MAL
S)および純度(SDS−PAGE、LALおよびMS)について試験した。2回目の精
製ステップのために、必要に応じて、1回目の精製からのプールを、新鮮に消毒された(
0.5M NaOH)SPX(Hi Load 16/60 Superdex 200
グレード120mL(GE−Healthcare)中に充填した。カラムをPBSで平
衡化し、1ml/minでPBSバッファーを使用して泳動を行い、溶出液を1.2ml
画分中に収集し、1回目の精製ステップについて記載されたように分析した。
【実施例3】
【0325】
抗cKIT抗体のスクリーニング
HuCAL PLATINUM(登録商標)パンニング
ヒトcKITを認識する抗体の選択のために、複数のパンニング戦略を使用した。抗体
バリアントタンパク質の供給源として商業的に入手可能なファージディスプレイライブラ
リー、Morphosys HuCAL PLATINUM(登録商標)ライブラリー(
Morphosys、Munich DE)を使用して、高い親和性結合親和性を有する
クローンの選択により、ヒトcKITタンパク質に対する治療抗体を作成した。このファ
ージミドライブラリーは、HuCAL(登録商標)コンセプト(Knappik et al., (2000)
J Mol Biol 296: 57-86)に基づくものであり、ファージ表面上にFabを展示するため
にCysDisplay(登録商標)技術を使用する(Lohning、WO01/05950
)。抗cKIT抗体の単離のために、標準的なパンニング戦略を、固相、溶液、全細胞お
よび示差的全細胞パンニング手法を使用して実施した。
【0326】
cKITに対する固相パンニング
96ウェルMaxiSorp(商標)プレートを、4℃でo/n、ヒトまたはマウスc
KIT Fc融合タンパク質で被覆した。それぞれのパンニングのために、約4x10
1
3のHuCAL PLATINUM(登録商標)ファージ抗体を、被覆された各抗原に添
加し、マイクロタイタープレート振とう器上、RTで2hインキュベートした。その後、
非特異的に結合したファージを数回の洗浄ステップにより洗浄除去し、特異的に結合した
ファージを10mM Tris/HCl pH8中の25mM DTTを使用して溶出さ
せた。
【0327】
溶出液を14mlの大腸菌(E.coli)細菌中に移し、ファージ感染のためにインキュベ
ートした。感染した細菌を2xYT培地中に再懸濁し、LB/Cam寒天プレート上に塗
布し、o/nインキュベートした。コロニーをプレートから擦り取り、ファージレスキュ
ー、選択されたクローンのポリクローナル増幅、およびファージ生成のために使用した。
精製されたファージについて、次のパンニングラウンドを開始した。
【0328】
2回目および3回目のラウンドの固相パンニングを、抗原量の減少およびよりストリン
ジェントな洗浄条件以外は1回目のラウンドのプロトコールに従って実施した。
【0329】
cKITに対する捕捉パンニング
捕捉パンニングのために、抗原cKIT/マウスFc融合タンパク質を、ヤギ抗マウス
Fc捕捉抗体により96ウェルMaxisorp(商標)プレート上に固定した。ファー
ジ遮断の間に、ヒトおよびマウスγグロブリンを遮断バッファーに添加して、捕捉抗体お
よび抗原のマウスFc部分に対する抗体の選択を回避した。捕捉パンニングにおける抗原
被覆およびファージ遮断手順を、固相パンニングプロトコール(上記参照)に記載のよう
に実施した。
【0330】
ストレプトアビジン結合磁気ビーズを有する溶液パンニングプロトコール
溶液パンニングを、2つの異なる様式(「古典的」および「代替的」)で実施した。そ
れぞれのパンニングについて、約4x10
13のHuCAL PLATINUM(登録商
標)ファージ抗体を、等量の2x Chemiblocker/0.1%Tween20
で遮断した。ストレプトアビジン−またはビーズ−結合ファージの除去のために、遮断し
たファージ粒子の予備吸着を、それぞれ1mgの遮断したストレプトアビジンビーズを使
用して2回実施した。
【0331】
a)「古典的」様式:ビオチン化16P23 mAbをヒトcKIT ECD−His
タンパク質と共にインキュベートし、遮断したファージ粒子に添加した。16P23抗体
は、内部的に作成されたハイブリドーマであり、cKITのECD上に異なるドメインを
露出させるための捕捉抗体として様々なスクリーニングプロトコールにおいて使用された
。16P23抗体を、抗体ビニング(binning)目的のためにも使用した。インキュベー
ション後、ファージ−抗原複合体を、ストレプトアビジンビーズを使用して捕捉し、スト
レプトアビジンビーズに結合したファージ粒子を、磁気分離装置を使用して収集した。
【0332】
b)「代替的」様式:ビオチン化された16P23 mAbをストレプトアビジンビー
ズに添加し、抗体−ビーズ混合物をRTで30min、回転装置上でインキュベートした
。ビーズを洗浄し、ヒトcKIT ECD−Hisタンパク質を含有するPBS中に再懸
濁した。続いて、ファージを添加し、抗体−ビーズ−抗原−ファージ複合体を、回転装置
上、RTでさらに1h、回転させた。この最後のインキュベーションステップの後、ビー
ズを磁気分離装置を使用して捕捉し、上清を廃棄した。
【0333】
両方のディスプレイ方法を使用して、非特異的に結合したファージをPBS/0.05
% Tween20およびPBSを使用する数回の洗浄ステップにより洗浄除去した。1
0mM Tris/HCl pH8中の25mM DTTを使用することにより、ストレ
プトアビジンビーズから特異的に結合したファージを溶出させた。次いで、ファージ感染
およびファージ生成を、固相パンニングプロトコールに従って実施した。
【0334】
2回目および3回目のラウンドの溶液パンニングを、抗原量の減少およびよりストリン
ジェントな洗浄条件以外は1回目のラウンドのプロトコールに従って実施した。
【0335】
cKITに対する全細胞パンニング
ヒト、マウスまたはラットcKIT抗原を発現する標的細胞を抗原として使用し、パン
ニングのためにHuCAL PLATINUM(登録商標)ファージ−抗体と接触させた
。ファージ−細胞複合体を、PBS/5%FCS中で3回洗浄した。標的細胞からの特異
的に結合したファージの溶出を、0.1Mグリシン−HCl/0.5M NaCl、pH
2.2を使用して実施した。次いで、ファージ感染およびファージ生成を、固相パンニン
グプロトコールに従って実施した。2回目および3回目のラウンドの全細胞パンニングを
、1回目のラウンドのプロトコールに従って実施した。
【0336】
cKITに対する示差的全細胞パンニング
示差的全細胞パンニングでは、細胞および精製されたタンパク質上で交互に選択を行っ
た。精製された抗原上での選択ラウンドを、固相パンニングプロトコールに記載のように
実施した。細胞上での選択ラウンドについては、cKITに対する全細胞パンニングのセ
クション中の手順を参照されたい。
【0337】
成熟パンニング
親和性が増大した特異的抗体を取得するために、成熟パンニングを実施した(Prassler
et al., Future Med. Immuno. 2009 1(4):571-583)。この目的のために、cKIT特異
的結合について既に試験された配列決定されたクローンを、LCDR3またはHCDR2
カセット交換のために使用した。その後、2ラウンドの固相パンニングを、固相パンニン
グプロトコールに記載のようにヒトおよび/またはマウスcKIT Fc融合タンパク質
を使用して実施した。
【0338】
a)LCDR3 RapMAT(登録商標):ファージ由来pMORPH30(登録商
標)ベクターDNA(Morphosys、Munich DE)のFabコード断片を
酵素的に消化し、挿入物をTRIM(商標)LCDR3成熟カセット(Virnekaes et al.
, NAR 1994 22(25):5600-5607)と置き換えた。続いて、1.25μgのpMORPH3
0(登録商標)ディスプレイベクターを、多様化されたLCDR3を担持する挿入物断片
とライゲーションした。
【0339】
b)HCDR2 RapMAT(登録商標):2回目のラウンドのパンニングの後、フ
ァージ由来pMORPH30(登録商標)ベクターDNAのFabコード断片を酵素的に
消化し、挿入物をTRIM(商標)HCDR2成熟カセット(Virnekas et al., supra)
と置き換えた。続いて、1.25μgのpMORPH30(登録商標)ディスプレイベク
ターを、多様化されたHCDR2を担持する挿入物断片とライゲーションした。
【0340】
作成されたライブラリーを増幅し、ストリンジェンシーを増大させ、抗原濃度を減少さ
せるか、またはヒトおよびマウスcKIT抗原を変化させて2ラウンドのパンニングにか
けて、親和性が改善されたクローンを同定した。
【0341】
ELISAスクリーニングのためのFab含有細菌溶解物の調製
初期スクリーニングおよび特性評価のために、個々のFabを発現する大腸菌(E.coli
)クローンのo/n培養物を、リゾチーム、4mM EDTAおよび10U/μlベンゾ
ナーゼを使用して溶解した。Fab含有大腸菌(E.coli)溶解物を、ELISA、FAC
SおよびSETスクリーニングのために使用した。
【0342】
Fab含有生細菌溶解物のスクリーニング
ELISAスクリーニング
ELISAスクリーニングを使用して、単一のFabクローンを、標的抗原への結合に
ついてパンニングアウトプットから同定する。Fabを、Fabを含有する粗大腸菌(E.
coli)溶解物を使用して試験する。
【0343】
Fab発現チェックELISA
調製された大腸菌(E.coli)溶解物中でのFab発現の検証のために、Maxisor
p(商標)384ウェルプレート(Nunc、Sigma−Aldrich、St.Lo
uis MO)を、PBS中で1:1000に希釈したFd断片特異的ヒツジ抗ヒトIg
Gで被覆した。0.05%Tween20を含有するPBS中の5%スキムミルク粉末で
遮断した後、Fab含有大腸菌(E.coli)溶解物を添加した。続いて、結合したHuCA
L(登録商標)−Fab断片を、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされたF(a
b)
2特異的ヤギ抗ヒトIgG(1:5000希釈)と共にインキュベーション後、At
toPhos(登録商標)蛍光基質(Roche、#11681982001、Mann
heim、DE)を添加することにより検出した。535nmでの蛍光放出を、430n
mで励起して記録した。
【0344】
直接被覆された抗原に対するELISAスクリーニング
Maxisorp(商標)384ウェルプレートを、PBS中の10μg/mlの濃度
のmFcタグ付ヒトcKIT ECDタンパク質で被覆した。PBS中の5%スキムミル
ク粉末でプレートを遮断した後、Fab含有大腸菌(E.coli)溶解物を添加した。Fab
の結合を、Attophos(登録商標)蛍光基質(Roche、#116819820
01、Mannheim、DE)を使用してアルカリホスファターゼにコンジュゲートさ
れたF(ab)
2特異的ヤギ抗ヒトIgG(1:5000希釈)により検出した。535
nmでの蛍光放出を、430nmで励起して記録した。
【0345】
Fab BEL溶解物を使用するエピトープビニング
親和性成熟の前に潜在的なリガンド結合競合因子を同定するために、Fab大腸菌(E.
coli)溶解物と、公知のリガンド結合競合因子である16P23抗体とを使用する競合E
LISAスクリーニングを実施した。この目的のために、Maxisorp(商標)38
4ウェルプレートを、mFcタグ付ヒトcKIT ECDタンパク質で被覆し、上記(直
接被覆された抗原に対するELISAスクリーニング)のように遮断した。
【0346】
16P23 mAbを、5μg/mlの最終濃度で添加した後、Fab含有大腸菌(E.
coli)溶解物と共にインキュベーションした。最後に、Fabの結合を、Attopho
s(登録商標)蛍光基質(Roche、#11681982001)を使用して抗FLA
Gアルカリホスファターゼコンジュゲート抗体(Sigma A−9469、1:100
00に希釈)を使用して検出した。535nmでの蛍光放出を、430nmで励起して記
録した。
【0347】
FACSスクリーニング
FACSスクリーニングでは、細胞表面に発現された抗原を結合する単一のFabクロ
ーンを、パンニングアウトプットから同定する。Fabを、Fabを含有する粗大腸菌(
E.coli)溶解物を使用して試験する。
【0348】
FACSスクリーニングを、96または384ウェルプレート形式で実施した。
【0349】
a)BD FACSアレイ装置を使用する96ウェルプレート形式では、100μlの
細胞懸濁液を新鮮な96ウェルプレート中に移した(1x10
5細胞/ウェルが得られる
)。標的細胞懸濁液を含有するプレートを遠心分離し、上清を廃棄した。残りの細胞ペレ
ットを再懸濁し、50μlのFab含有BEL抽出物を対応するウェルに添加した。プレ
ートを氷上で1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を沈降させ、20
0μlのFACSバッファー(PBS、3%FCS)で3回洗浄した。各洗浄ステップの
後、細胞を遠心分離し、注意深く再懸濁した。二次検出抗体(PEコンジュゲートヤギ抗
ヒトIgG;Dianova、Hamburg、DE)を添加し、試料を氷上でインキュ
ベートした後、Fabインキュベーションに従って洗浄した。最後に、細胞ペレットを、
ウェルあたり150μlのFACSバッファーに再懸濁し、試料をBD FACSアレイ
において分析した。
【0350】
b)BD Calibur(登録商標)HTS装置(BD Biosciences、
San Jose、CA)を使用する384ウェルプレート形式では、20μlの細胞懸
濁液を、新鮮な384ラウンドウェルプレートに移した(4x10
4細胞/ウェルが得ら
れる)。標的細胞懸濁液を含有するプレートを遠心分離し、上清を廃棄した。残りの細胞
ペレットを再懸濁し、20μlのFab含有抽出物を対応するウェルに添加した。プレー
トを4℃で1時間振とうしながらインキュベートした。インキュベーション後、細胞を沈
降させ、40μlのFACSバッファー(PBS、3%FCS)で3回洗浄した。各洗浄
ステップの後に、細胞を遠心分離し、注意深く再懸濁した。40μlのPEコンジュゲー
トヤギ抗ヒト検出抗体を添加し、試料を氷上でインキュベートした後、Fabインキュベ
ーションに従って洗浄した。最後に、細胞ペレットをウェルあたり35μlのFACSバ
ッファー中に再懸濁し、試料をBD FACS Calibur/HTS装置を使用して
測定した。
【0351】
親和性の決定
K
Dの決定のために、抗体タンパク質の単量体画分を使用した(少なくとも90%の単
量体含量であり、それぞれ、Fabについては、分析的SEC;Superdex75
PC3.2/30(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)、また
はIgGについてはTosoh TSKgel G3000 SW
XL(7.8mm/3
0.0cm)(Tosoh Bioscience GmbH、Stuttgart、D
E)により分析される)。
【0352】
Sector Imager 6000(MSD)を使用するKD決定のための溶液平
衡滴定(SET)法
溶液中での親和性決定を、基本的には文献(Friquet et al., J. Immuno. Meth. 1985;
77:305-319)に記載のように実施した。SET法の感度および精度を改善するために、
それを古典的ELISAからECLに基づく技術に移行させた(Haenel et al., Anal. B
iochem. 2005 339(1):182-4)。1mg/mlのヤギ抗ヒト(Fab)
2断片特異的抗体
(Dianova)を、製造業者の説明書に従ってMSD Sulfo−TAG(商標)
NHS−Ester(Meso Scale Discovery、Gaithersb
urg、MD、USA)で標識した。MSDプレートを抗原で被覆し、平衡化された試料
をこれらのプレートに移した。洗浄後、ウェルあたり30μlのMSD−Sulfo−タ
グ標識された検出抗体(抗ヒト(Fab)
2)をMSDプレートに添加し、振とう器上で
インキュベートした。MSDプレートを洗浄し、30μl/ウェルのMSD Read
Buffer Tを界面活性剤と共に添加した後、電気化学発光シグナルをSector
Imager 6000(Meso Scale Discovery、Gaithe
rsburg、MD、USA)を使用して検出した。
【0353】
データを、カスタマイズされた適合モデルを適用するXLfit(IDBS)ソフトウ
ェアを使用して評価した。Fab分子のK
D決定のために、以下の適合モデルを使用した
((Abraham et al., J. Mol. Recogn 1996; 9:456-461)に従って改変された、(Haenel
et al., Anal. Biochem 2005;339(1):182-184)に従う):
【0354】
【数1】
([Fab]
t:適用される全Fab濃度
x:適用される全可溶性抗原濃度(結合部位)
B
max:抗原を含まないFabの最大シグナル
K
D:親和性
である)。
【0355】
IgG分子のK
D決定のために、IgGのための以下の適合モデルを使用した((Pieh
ler et al., 1997)に従って改変される):
【0356】
【数2】
([IgG]:適用される全IgG濃度
x:適用される全可溶性抗原濃度(結合部位)
B
max:抗原を含まないIgGの最大シグナル
K
D:親和性
である)。
【0357】
実験設定:
HuCAL(登録商標)抗cKIT IgGのK
D決定を、基本的には以下のように実
施した:ヒトcKIT−Fcを、標準MSDプレート上、4℃でo/n、PBS/ストレ
プトアビジンMSDプレート上、RTで1h、アッセイバッファー中、0.1μg/ml
で被覆した。続いて、MSDプレートをRTで1h、3%BSAを含むPBSで遮断した
。ストレプトアビジンプレートを、5%BSAを含むPBSで4℃でo/n遮断した後、
抗原被覆を行った。抗原の滴定のために、ヒトcKIT−Hisを適用した。
【0358】
続いて、未結合のFabの濃度を、Sector Imager 6000(Meso
Scale Discovery、Gaithersburg、MD、USA)を使用
するECL検出により定量した。親和性を見積もり、かくして、成熟によって最も改善さ
れたクローンを同定するために対応する適合モデルを適用するXLfit(IDBS)ソ
フトウェアを使用して、結果をプロセッシングした。
【0359】
in vitro生化学アッセイ(交差反応性およびドメイン結合分析)
精製されたIgGを、ヒト、カニクイザルおよびマウスcKIT完全長ECDタンパク
質ならびにヒトcKIT ECDドメイン構築物D1−3およびD4−5への結合につい
て、ELISAにおいて試験した。この目的のために、プレートを、4℃で一晩、PBS
中の5μg/mlの濃度の抗原で被覆した。IgGの結合を、基質としてAttopho
s(登録商標)を使用するアルカリホスファターゼにコンジュゲートした抗ヒトまたは抗
マウスF(ab)
2(1%MPBS中で1:5000に希釈)により検出した。蛍光放出
を、430nmの励起および535nmの放出で測定した。
【0360】
精製されたIgGのエピトープビニング
精製されたIgG候補を、cKITの細胞外ドメイン上の個々のビンを規定することが
以前に示された、内部的に作成されたツール抗体との競合について試験した。この目的の
ために、IgGをMaxisorp(商標)プレート上で一定量で被覆し、溶液中の増加
量の競合因子IgGとの競合について試験した。陽性対照として、被覆されたIgGを、
溶液中のそれ自身との競合について分析した。全ての試験したIgGを、溶液中、RTで
1h、50倍過剰量のグリコビオチン化ヒトcKIT−Fc融合物と共に予備インキュベ
ートした。次いで、抗原/抗体複合体を、被覆された抗体に添加し、結合した複合体の検
出をビオチン化抗原により行った。一般に、高いIgG濃度でのシグナルは、被覆された
IgGが、溶液中の試験したIgGと異なる抗原上の接近可能なエピトープに結合するこ
とができた場合にのみ得ることができる(すなわち、非競合抗体)。対照的に、競合抗体
、部分的に重複するエピトープを有する抗体または立体障害によりエピトープを遮断する
抗体については、高いIgG濃度での結合シグナルは、対照とは反対に有意に低下した。
【0361】
Maxisorp(商標)プレートのそれぞれのウェルを、PBS中の1.2μg/m
lの濃度の20μl/ウェルのIgG希釈液で被覆し、4℃で一晩インキュベートした後
、PBSTで3回洗浄した。プレートを、RTで1h、90μlの3%BSA/PBSで
よく遮断し、PBSTで3回洗浄した。
【0362】
FACSによる細胞上でのEC50の決定
精製されたIgGを、単一の濃度で試験するか、またはFACSにおいて滴定して、細
胞表面に発現されたヒト、マウスまたはラットcKITへの結合についてEC50値を決
定した。この目的のために、Mo7e、P815またはRBL−2H3細胞を、Accu
tase(登録商標)(Life Technologies、Carlsbad、CA
)を使用して収獲し、FACSバッファー中で1x10
6/mlに希釈した。その後の全
てのステップは氷上で行って、受容体の内在化を防止した。細胞懸濁液を96ウェルU底
プレート中に100μl/ウェルで充填した。4℃で5min、210gで遠心分離した
後、バッファーを廃棄した。次いで、ウェルあたり、FACSバッファー中に希釈された
100μlの特異的mAbを、15μg/mlの濃度で、または抗体濃度の連続希釈液(
15μg/mlの濃度から出発する1:3希釈段階)での滴定実験において添加した。氷
上で1hインキュベーション後、細胞を150μlのFACSバッファーで3回洗浄した
。二次PEコンジュゲートヤギ抗ヒト検出抗体(FACSバッファー中で1:200に希
釈)を、100μl/ウェルで細胞に添加し、氷上で1hインキュベートした。細胞を1
50μlのFACSバッファーで3回洗浄した。最後に、細胞ペレットを、ウェルあたり
200μlのFACSバッファー中に再懸濁し、試料をBD FACSアレイ中で分析し
た。
【0363】
in vitroバイオアッセイ
SCF依存的増殖アッセイ
増殖アッセイを、安定グルタミン(PAN#P04−18500)、10%FCSおよ
び10ng/ml SCF(R&D CAT#255−SC;Lot#CM281006
1、R&D Corp、Berkeley CA)を含むRPMI1640中で培養され
たMo7e細胞系(ヒト急性巨核芽球性白血病、DSMZ番号ACC104)上で実施し
た。
【0364】
SCF依存的増殖アッセイでは、精製されたIgGまたはIgGを含有する細胞培養上
清を試験した。両実験設定では、細胞を収獲し、0.5x10
6細胞/mlの濃度で50
mlの飢餓培地(SCFを含まない培養培地)中に再懸濁し、37℃で18hインキュベ
ートした。次いで、60ng/mlのSCFを含む飢餓培地中に1x10
6細胞/mlの
濃度で細胞を再懸濁した(2倍濃縮、抗体の添加後の最終濃度は30ng/mlである)
。透明な底部の白い96ウェルのプレートのウェルあたり、50μlの細胞(5x10
4
細胞/ウェル)および50μlの2倍濃縮された精製された抗体または希釈されていない
細胞培養上清を添加した。陰性および陽性対照のために、SCFを含まない細胞および抗
体を含まない細胞またはSCFを含む細胞および抗体を含まない細胞を含有させた。プレ
ートを37℃で48hインキュベートし、最後に製造業者の説明書に従ってCellTi
ter−Glo(登録商標)(Promega #G7571、Promega、Mad
ison、WI)を使用して細胞数を決定した。
【0365】
Fab−ZAP Piggybackアッセイ
受容体結合後に抗体が内在化する能力を試験するために、Fab−ZAP試薬(ヤギ抗
hu−mAb−サポリン結合;ATS Biotechnology、Cat#IT−5
1−250、ATS Bio、San Diego、CA)を、精製されたIgGまたは
IgGを含有する細胞培養上清と混合するADCアッセイを実施した。がん細胞系CMK
−11−5(RPMI1640+10%FCS中で培養された、急性巨核芽球性白血病細
胞)はcKITの高い発現を示すため、これらの細胞に関して細胞毒性能力を試験した。
【0366】
培養物中の細胞を計数し、1x10
5細胞/mlの濃度となるように培地中に希釈した
。50μlの細胞懸濁液(5000細胞/ウェル)を、96ウェルプレート(Flat
Clear Bottom White Plate TC−Treated、Corn
ing Cat#3903、Corning、Tewksbury、MA)に移した。別
のプレート(96ウェルV底、Nunc、Cat#249946、Nunc Sigma
−Aldrich、St.Louis、MO)中で、IgGを培地中に希釈した。IgG
を含有する細胞培養上清を1:125に希釈し、0.4nMの濃度にIgGを精製し、6
0μl/ウェルの全量を得た。5nmの濃度で等量のFabZAP溶液を添加し、プレー
トを37℃で60minインキュベートした。50μlの抗体/Fab−ZAPコンジュ
ゲートをCMK−11−5細胞に移した(全量100μl)。対照のために、細胞のみを
含むウェル(=100%生存能力対照)およびFab−ZAPと共にインキュベートした
だけの細胞(二次試薬の非特異的殺傷についてチェックするため)を調製した。Fab−
ZAPの最終濃度は1.25nMであった。プレートを37℃および5%CO
2で72h
インキュベートした。製造業者の説明書に従ってCellTiter−Glo(登録商標
)(Promega #G7571)を使用して、細胞数を決定した。生存能力を、細胞
のみの対照に対して正規化した。
【0367】
まとめ
cKIT抗体に関するスクリーニングでは、2つの異なる戦略を実施した:
【0368】
戦略1:
ヒト/カニクイザルx反応性を有する候補(217のHCDR3ファミリー)を高親和
性に関して選択し、IgG変換後、クローンをCMK−11−5 FabZAP ADC
アッセイおよびMo7e増殖アッセイにおいて機能についてスクリーニングした。機能的
活性および多様性に基づいて、候補を診査規模での発現について選択した。
【0369】
戦略2:
ヒト/カニクイザル/マウスx反応性を有する候補(5のHCDR3ファミリー)を親
和性成熟させ、IgG変換後、候補を発現について選択した。
【0370】
まとめると、戦略1および2からの82の精製されたIgG候補を、徹底的な特性評価
にかけた。82のこのプールから、26のIgG候補を、大規模生成、毒素コンジュゲー
ションならびにin vitroおよびin vivoでの実験における抗体薬物コンジ
ュゲートとしてのその後の試験のために選択した。
【0371】
徹底的特性評価の際に、16の異なるHCDR3ファミリーに属する26の抗体(戦略
1に由来する14の候補および戦略2に由来する12の候補)を、大規模生成および抗体
−DM1コンジュゲートとしての試験のために選択した。候補を、以下の基準に従って選
択した:1)ナノモル濃度以下から低ナノモル濃度の範囲のEC50でのFab−DM1
piggybackアッセイにおける野生型および変異型cKITを発現する細胞の強
力な殺傷、2)カニクイザルcKITに関する24/26のIgGのKD値がヒトcKI
Tについて決定されたものの3倍の範囲内にあること。さらに、12/26のIgGが、
細胞上に発現されたマウスおよびラットcKITと交差反応した。
【0372】
このスクリーニングから選択された候補を、異なるエピトープビンに割り当てることが
できる:1)19/26のIgGはビン1またはビン6に属する(cKIT D1−3、
リガンド結合ドメインに結合する)、2)6/26のIgGはビン8に属する(cKIT
D4−5、二量体化ドメインに結合する)、3)1/26のIgGは、ヒトcKITに
対する高い親和性を有するが、カニクイザルcKITに対しては弱い親和性しか有さない
、ビン2に属する。この型のスクリーニングプロトコールから来る抗体の例は、抗体20
376である。
【実施例4】
【0373】
ヒト、カニクイザル、マウスおよびラットcKIT ECDタンパク質のための構築物
ヒト、マウスおよびラットcKIT細胞外ドメインを、GenBankまたはUnip
rotデータベースからのアミノ酸配列に基づいて遺伝子合成した(以下の表2を参照さ
れたい)。カニクイザルcKITおよび1つのECD cDNA鋳型を、様々なカニクイ
ザル組織からのmRNAを使用して作成されたアミノ酸配列情報に基づいて遺伝子合成し
た(例えば、Zyagen Laboratories;以下の表2)。全ての合成され
たDNA断片を、適切な発現ベクター、例えば、精製を可能にするためのC末端タグを有
するhEF1−HTLVに基づくベクター(pFUSE−mIgG2A−Fc2)中にク
ローニングした。
【0374】
【表2】
【0375】
【表3】
【0376】
組換えcKITタンパク質の発現
所望のcKIT組換えタンパク質を、懸濁培養に予め適合させたHEK293由来細胞
系(293FS)中で発現させ、無血清培地FreeStyle−293(Gibco、
カタログ番号12338018)中で成長させた。小規模および大規模の両方のタンパク
質生成は一過的トランスフェクションによるものであり、プラスミド担体として293F
ectin(Life Technologies、カタログ番号12347019)を
使用して、それぞれ1Lまで、複数の振とうフラスコ(Nalgene)中で行った。全
DNAおよび293Fectinを、1:1.5(w:v)の比で使用した。DNAと培
養物の比は、1mg/Lであった。細胞培養上清を、トランスフェクションの3〜4日後
に収獲し、遠心分離し、精製前に滅菌濾過した。
【実施例5】
【0377】
ヒト、カニクイザル、マウスおよびラットcKIT ECDタンパク質、ならびにcK
ITサブドメイン1〜3、および4〜5の精製
タグ付タンパク質精製
組換えFcタグ付cKIT細胞外ドメインタンパク質(例えば、ヒトcKIT ECD
−Fc、ヒトcKIT(ECDサブドメイン1〜3、4〜5)−Fc、カニクイザルcK
IT−mFc、ラットcKIT−mFc、マウスcKIT−mFc)を、細胞培養上清か
ら精製した。清澄化された上清を、PBSで平衡化させたプロテインAセファロースカラ
ム上に通過させた。ベースラインまで洗浄した後、結合した材料を、Pierce Im
munopure low pH Elution Buffer、または100mMグ
リシン(pH2.7)で溶出し、1/8溶出容量の1M Tris pH9を使用してす
ぐに中和した。必要に応じて、10kDまたは30kDの名目分子量カットオフを有する
Amicon Ultra 15mL遠心分離濃縮装置を使用して、プールされたタンパ
ク質を濃縮した。次いで、プールを、Superdex 200 26/60カラムを使
用するSECにより精製し、凝集体を除去した。次いで、精製されたタンパク質をSDS
−PAGEおよびSEC−MALLS(多角度レーザー光散乱)により特性評価した。V
ector NTIにより配列から算出された理論吸光係数を使用して、280nMでの
吸光度により、濃度を決定した。
【実施例6】
【0378】
cKIT ECDサブドメインへのcKIT Abの結合
cKIT Abの結合部位を規定するのを助けるために、ヒトcKIT ECDをサブ
ドメイン1〜3(リガンド結合ドメイン)およびサブドメイン4〜5(二量体化ドメイン
)に分割した。どのサブドメインが結合したかを決定するために、サンドイッチELIS
Aアッセイを使用した。cKITサブドメイン1〜3、サブドメイン4〜5または完全長
cKIT ECDに対応する1Xリン酸緩衝生理食塩水中に希釈した1μg/mlのEC
Dを、96ウェルImmulon 4−HBXプレート(Thermo Scienti
fic Cat#3855、Rockford、IL)上に被覆し、4℃で一晩インキュ
ベートした。プレートを洗浄バッファー(0.01%Tween−20(Bio−Rad
101−0781)を含む1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS))で3回洗浄した。プ
レートを、室温で2h、1XPBS中に希釈した280μl/ウェルの3%ウシ血清アル
ブミンで遮断した。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。抗体を、8点について5
倍希釈で洗浄バッファー中2μg/mlで調製し、3組の100μl/ウェルでELIS
Aプレートに添加した。プレートを室温で1h、200rpmで振とうしながらオービタ
ルシェーカー上でインキュベートした。アッセイプレートを洗浄バッファーで3回洗浄し
た。二次抗体F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Imm
unorearch Cat#109−036−088、West Grove、PA)
を、洗浄バッファー中で1:10,000で調製し、100μl/ウェルでELISAプ
レートに添加した。プレートを、オービタルシェーカー上で200rpmで振とうしなが
ら室温で1h、二次抗体と共にインキュベートした。アッセイプレートを洗浄バッファー
で3回洗浄した。ELISAシグナルを生じさせるために、100μl/ウェルのSur
e blue(登録商標)TMB基質(KPL Cat#52−00−03、Gaith
ersburg、MD)をプレートに添加し、室温で10minインキュベートした。反
応を停止させるために、50μlの1N塩酸を各ウェルに添加した。Molecular
Devices SpectraMax M5プレートリーダーを使用して、450n
Mで吸光度を測定した。それぞれの抗体の結合応答を決定するために、光密度測定値を平
均し、標準偏差値を作成し、Excelを使用してグラフ化した。それぞれ個々の抗cK
IT抗体の結合ドメインは、以下の表5に見出される。
【実施例7】
【0379】
cKIT Abの親和性測定
cKIT種オーソログおよびまたcKITに対する抗体の親和性を、Biacore(
登録商標)2000装置(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)
およびCM5センサーチップを使用するSPR技術を使用して決定した。
【0380】
簡単に述べると、2%Odyssey(登録商標)遮断バッファー(Li−Cor B
iosciences、Lincoln、NE)を添加したHBS−P(0.01M H
EPES、pH7.4、0.15M NaCl、0.005%SurfactantP2
0)を、全ての実験について泳動バッファーとして使用した。固定化レベルおよび分析物
の相互作用を、応答単位(RU)により測定した。パイロット実験を行って、抗ヒトFc
抗体(カタログ番号BR100839、GE Healthcare、Pittsbur
gh、PA)の固定化および試験抗体の捕捉の実現可能性を試験および確認した。
【0381】
動的測定のために、抗体を固定された抗ヒトFc抗体によりセンサーチップ表面に捕捉
する実験を行い、遊離溶液中で結合するcKITタンパク質の能力を決定した。簡単に述
べると、25μg/mlの抗ヒトfFc抗体を、pH5で、2つ全部のフローセル上、5μ
l/分の流速でのアミンカップリングによりCM5センサーチップ上に固定し、10,5
00RUを達成した。次いで、0.1〜1μg/mlの試験抗体を10μl/minで1
分間注入した。抗体の捕捉されるレベルを、一般には200RUより下に保持した。続い
て、3.125〜50nMのcKIT受容体細胞外ドメイン(ECD)を、2倍系列で希
釈し、参照および試験フローセルの両方上に40μl/minの流速で3min注入した
。試験したECDの表を以下に列挙する。結合の解離を、10min行った。それぞれの
注入サイクルの後、チップ表面を10μl/minの3M MgCl
2で30s再生した
。全ての実験を25℃で行い、応答データを、単純な1:1相互作用モデルを使用して全
体的に適合させた(結合速度(k
a)、解離速度(k
d)および親和性(K
D)の見積も
りを得るためにScrubber2(登録商標)ソフトウェアバージョン2.0b(Bi
oLogic Software)を使用する)。
【0382】
【表4】
【0383】
表5は、ドメイン結合および親和性を列挙する。この表に示されるように、抗体9p3
、NEG024、NEG027、NEG085、NEG086、NEG087および20
376は全て、ナノモル濃度レベルでヒトcKITと反応し、カニクイザルECDに対し
て試験されたものに対して同様の親和性を有する。しかしながら、20376のみが、マ
ウスと交差反応した。試験した抗体はいずれも、ラットcKITと交差反応しなかった。
【0384】
【表5】
【実施例8】
【0385】
ADCの調製
1ステッププロセルによるDM1コンジュゲートの調製
個々のcKIT抗体を、コンジュゲーション反応を開始する前にタンジェンシャルフロ
ー濾過(TFF#1)により反応バッファー(15mMリン酸カリウム、2mM EDT
A、pH7.6)中で透析濾過した。続いて、cKIT抗体(約5.0mg/mL)をD
M1(抗体量に対して5.6倍モル過剰)、次いで、SMCC(抗体量に対して約5.0
倍過剰)と混合した。反応を、2mM EDTAおよび10%DMAを含有する15mM
リン酸カリウムバッファー(pH7.6)中、20℃で約16時間行った。1M酢酸を添
加してpHを5.0に調整することにより反応をクエンチした。pH調整後、反応混合物
を多層(0.45/0.22μm)PVDFフィルターを通して濾過し、精製し、タンジ
ェンシャルフロー濾過(TFF#2)を使用して8.22%スクロースを含有する20m
Mコハク酸バッファー(pH5.0)中で透析濾過した。タンジェンシャルフロー濾過の
ための装置パラメータの例を、以下の表6に列挙する。
【0386】
【表6】
【0387】
上記のプロセスから得られたコンジュゲートを、細胞毒性剤ローディング(メイタンシ
ノイドと抗体の比、MAR)についてはUV分光法;コンジュゲート単量体の決定につい
てはSEC−HPLC;および遊離メイタンシノイドパーセンテージについては逆相HP
LCまたは疎水性保護相(Hisep)−HPLCにより分析した。
【0388】
in situプロセスによるDM1コンジュゲートの調製
以下の手順によるin situプロセスによって、抗cKIT抗体をコンジュゲート
することもできる。cKIT抗体を、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチ
ル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)リンカーを使用して、
DM1にコンジュゲートした。DM1およびスルホ−SMCCヘテロ二官能性リンカーの
ストック溶液を、DMA中で調製した。スルホ−SMCCとDM1チオールとを一緒に混
合して、40%v/vの水性50mMコハク酸バッファー、2mM EDTA、pH5.
0を含有するDMA中で、DM1とリンカーとの比1.3:1モル当量およびDM1の最
終濃度1.95mMで、25℃で10分間反応させた。次いで、抗体を反応のアリコート
と反応させて、50mM EPPS、pH8.0および10%DMA(v/v)中、2.
5mg/mLのAbの最終コンジュゲーション条件下で、約6.5:1のSMCCとAb
とのモル当量比を得た。25℃で約18時間後、コンジュゲーション反応混合物を、10
mMコハク酸塩、250mMグリシン、0.5%スクロース、0.01%Tween20
、pH5.5で平衡化させたSEPHADEX(商標)G25カラムを使用して精製した
。
【0389】
いずれかの方法は、抗体のコンジュゲーションにおいて有用である。以下の表は、cK
IT ADCの例を提供する。
【0390】
【表7】
【0391】
SPDBリンカーを使用するADCの調製
抗cKIT抗体、例えば、抗体9P3(8mg/ml)を、50mM NaCl、2m
M EDTA、および5%DMAを含有する50mMリン酸カリウムバッファー(pH7
.5)中、25℃で120分間、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタ
ノエート(SPDB、それぞれ、5.0、5.5および4.9倍モル過剰)を使用して改
変した。次いで、精製されていない改変Abを、50mM NaCl、2mM EDTA
、および5%DMAを含有する50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)中、4
mg/mLの最終改変抗体濃度で、25℃で18時間、DM4(未結合のリンカーに対し
て1.7倍モル過剰)にコンジュゲートした。コンジュゲーション反応混合物を、10m
Mコハク酸塩、250mMグリシン、0.5%スクロース、0.01%Tween20、
pH5.5で平衡化および溶出させるSEPHADEX(商標)G25カラムを使用して
精製した。
【0392】
CX1−1リンカーを使用するADCの調製
抗cKIT抗体、例えば、抗体9P3(5.0mg/mL)を、DM1(抗体量に対し
て7.15倍モル過剰)、次いで、CX1−1(抗体量に対して5.5倍過剰)と混合し
た。反応を、2mM EDTAおよび5%DMAを含有する60mM EPPS[4−(
2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸]バッファー(pH8.5
)中、25℃で約16時間行った。次いで、反応混合物を、10mMコハク酸塩、250
mMグリシン、0.5%スクロース、0.01%Tween20、pH5.5中で平衡化
および溶出させるSEPHADEX(商標)G25カラムを使用して精製した。
【0393】
抗体−MCC−DM1、抗体−SPDB−DM4および抗体−CX1−1−DM1のi
n vitroでの効果を比較する例を、
図2に示す。
【実施例9】
【0394】
親抗体と比較したADCの親和性
SMCC−DM1にコンジュゲーション後のcKITに対する抗体の親和性を、上記の
実施例7に記載のものと同様の方法を使用して、Biacore(登録商標)T100装
置(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)およびCM5センサー
チップを使用するBiacore技術を使用して決定した。
【0395】
評価した抗体に関して、親非コンジュゲート化抗体と比較してSMCC−DM1コンジ
ュゲート化抗体について、ヒトcKITへの結合に関して類似する親和性見積もり値が得
られたが、これはコンジュゲーションが抗体結合に感知できるほど影響しないことを示唆
している(表8)。
【0396】
【表8】
【実施例10】
【0397】
細胞系のパネルに対する9P3−MCC−DM1、9P3−SPDB−DM4および9
P3−CX1−1−DM1の活性
MCC−DM1リンカー−ペイロードへのコンジュゲーション後、AML、SCLC、
GIST、およびメラノーマ細胞系の増殖を阻害する抗体薬物コンジュゲート(ADC)
の能力を決定した。GIST−T1細胞系は、Dr.Takahiro Taguchi
、Kochi U.、Japanにより提供していただいたものであった。GIST43
0およびGIST882細胞系は、Dr.Jonathan Fletcher、Bri
ghamおよびWomen’s Hospital、Boston、MAにより提供して
いただいたものであった。
【0398】
小細胞肺がん(SCLC)については、NCI−H526およびNCI−H1048細
胞系を使用した。NCI−H526は、cKITを高く発現し、ATCC(CRL−58
11、ATCC Manassas、VA)から得られた。NCI−H1048は、低レ
ベルでcKITを発現し、これもATCC(CRL−5853)から得られた。CMK−
11−5は、高レベルのcKITを発現するAML系((JCRB Cat#IFO50
430、Japan)、Nagano et al., Int. J. Hematol. 1992; 56:67-78も参照された
い))である。UKE−1もまたAML細胞系であり、少量のcKITを発現する。UK
E−1細胞系は、Professor Walter Fiedler、Univers
ity Hospital Eppendorf、Hamburg、Germanyによ
り提供していただいたものであった。Kasumi 1は、ATCC(CRL−2724
)から得られたものであった。Kasumi−6はATCC(CRL−2775)から得
られたものであった。MDA−MB−453は、ATCC(HTB−131)から得られ
たものであった。NCI−H889およびNCI−H1930系は、ATCC(それぞれ
、CRL−5817およびCRL−5906)から購入したものであった。Hel92.
1.7細胞は、Sigma−Aldrich(Cat#92111706−IVL、Si
gma Aldrich、St.Louis、MO)から得られたものであった。M−0
7eおよびSKNO1細胞は、それぞれ、DSMZ、ACC−104およびACC−69
0(DSMZ、Braunschweig、DE)から購入したものであった。OCI−
M1細胞系もDSMZ(ACC−529)からのものである。
【0399】
簡単に述べると、細胞を、供給業者により推奨される培養培地中、5%CO
2と共に3
7℃で組織培養インキュベータ中で培養した。アッセイの当日に、細胞をPBS(Cel
lgro、Corning、Tewksbury MA(カタログ番号21−031−C
V))で2回洗浄した後、5min、0.1%トリプシン−EDTA(社内技術サービス
)で処理し、推奨される培養培地中に再懸濁した。次いで、細胞を計数し、100μlの
細胞培養培地中、2,000〜10,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(
Costarカタログ番号3603、Corning、Tewksbury、MA)中に
播種した。2組のプレートを0日目の測定のために作成し、すべてのプレートを5%CO
2と共に37℃で一晩、組織培養インキュベータ中でインキュベートした。また、培地の
みのウェルを作成して陰性対照として作用させた。このインキュベーションの後、100
μl/ウェルのCell titer Glo(登録商標)試薬(Promegaカタロ
グ番号G7573、Madison、WI)を0日目のプレートに添加した後、2min
穏やかに振とうし、10minインキュベートし、得られた発光強度をPerkin E
lmer Wallac Microbeta Trilux(登録商標)プレートリー
ダー(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用して測定した。試験A
DCを、適切な細胞培養培地中で3Xストック溶液に連続希釈し、50μlの3X連続希
釈されたADCを添加(最終アッセイ濃度0.0002〜68nM DM1等価物)した
後、5%CO
2と共に37℃で5日間、組織培養インキュベータ中でインキュベーション
した。このインキュベーション期間の後、相対細胞生存能力を、上記のようなCell
titer Glo(登録商標)試薬の添加により決定した。細胞増殖に対するADCの
効果を、以下のように2組の平均を使用して算出した:(阻害率%=(ADC処理−未処
理)/(未処理−0日目)
*100)。阻害率%のデータを、4パラメータロジスティッ
ク式に適合させ、GI
50値を決定した。
【0400】
図1に示されるように、cKIT ADCを、GIST(GIST T−1、GIST
882、GIST430)、SCLC(NCI−H526、NCI−H1048)および
AML(Kasumi−6、Kasumi−1)細胞系のパネル上での増殖アッセイにお
いて試験した。IC50および最大殺傷値を、表に列挙する。MDA−MB453(乳が
ん細胞系)はcKITを発現しない。IgG−MCC−DM1は、アイソタイプ対照であ
る。
図1により示されるように、cKIT ADCは全て、使用した7つの系においてナ
ノモル濃度からナノモル濃度以下のIC50を有していた。これは、cKIT ADCは
広範囲の適応症を有し、腫瘍が適切なレベルのcKITを発現している場合はどこでも使
用することができることを示している。
【0401】
SPDB−DM4およびCX1−1−DM1リンカー−ペイロードによりコンジュゲー
トした抗cKIT抗体(9P3)の能力も評価し、
図2に示す。上記のように行われたこ
れらの試験により、評価した抗cKIT ADCがSPDB−DM4またはCX1−1−
DM1を使用する細胞増殖の強力な阻害剤でもあることが示されたが、これは、細胞を殺
傷する毒素を上手く送達するその能力がMCC−DM1に限定されないことを示唆してい
る。
図1および
図2は共に、ナノモル濃度からナノモル濃度以下の範囲で有効であるcK
IT ADCを提供する。
【0402】
さらに、
図3は、cKIT受容体レベル、および適応症(AML、GIST、メラノー
マおよびSCLC)に対する抗cKIT ADC GI50のプロットである。
図3に示
されるように、抗cKIT ADCは、全ての列挙された適応症にわたって有効である。
【実施例11】
【0403】
GIST、SCLCおよびAML細胞系に対するcKIT−MCC−DM1 ADCの
in vitroでの活性
MCC−DM1リンカー−ペイロードへのコンジュゲーション後、AML、SCLCお
よびGIST細胞系の増殖を阻害する抗体薬物コンジュゲート(ADC)の能力を決定し
た。供給業者によりこれらの実験において使用された細胞の一覧については、上記の実施
例10を参照されたい。
【0404】
簡単に述べると、細胞を、供給業者により推奨されるように培養培地中、5%CO
2と
共に37℃で組織培養インキュベータ中で培養した。アッセイの当日、細胞をPBS(C
ellgro、Cat#21−031−CV、Corning Tewksbury、M
A)で2回洗浄した後、0.1%トリプシン−EDTA(社内技術サービス)で5min
処理し、推奨される培養培地中に再懸濁した。次いで、細胞を計数し、100μlの細胞
培養培地中、AMLおよびSCLC細胞については5,000細胞/ウェルならびにGI
ST細胞については10,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(Costa
rカタログ番号3603、Corning、Tewksbury、MA)に播種した。2
組のプレートを0日目の測定のために作成し、全てのプレートを、5%CO
2と共に37
℃で一晩、組織培養インキュベータ中でインキュベートした。このインキュベーションの
後、100μl/ウェルのCell titer Glo(登録商標)試薬(Prome
gaカタログ番号G7573、Promega、Madison、WI)を0日目のプレ
ートに添加した後、2min穏やかに振とうし、10minインキュベートし、得られた
発光強度を、Perkin Elmer Wallac Microbeta(登録商標
)Triluxプレートリーダー(Perkin Elmer、Waltham、MA)
を使用して測定した。試験ADCを、適切な細胞培養培地中、3Xストック溶液に連続希
釈し、50μlの3X連続希釈されたADCを添加(0.0002〜68nM DM1等
価物の最終アッセイ濃度)した後、5%CO
2と共に37℃で5〜8日間、組織培養イン
キュベータ中でインキュベーションした。このインキュベーション期間の後、相対細胞生
存能力を、上記のようなCell titer Glo(登録商標)試薬の添加により決
定した。細胞増殖に対するADCの効果を、以下のように2組の平均を使用して算出した
:(最大作用率%(A
MAX)=(未処理−処理された最も高いADC濃度)
*100)
。
【0405】
阻害率%のデータを、4パラメータロジスティック式に適合させ、GI
50値を決定し
た。このデータを
図4〜9に示す。グラフに示されるように、IgG−MCC−DM1コ
ンジュゲートを対照として使用する。試験したADCは全て、対照抗体よりも高い活性を
有する。
図4〜9中の曲線により示されるように、抗cKIT ADC、例えば、NEG
085、NEG024および20736抗体は、細胞増殖の減少において非常に有効であ
り、かくして、GIST、AMLおよびSCLCの処置において有効である。
【実施例12】
【0406】
FACS(蛍光活性化細胞選別)による細胞系上でのcKIT表面受容体密度の定量
Quantum Simply Cellular Beads(Bangs Lab
oratories、Inc.カタログ番号815、Fishers、IN)を、標準と
して使用した。ビーズ標準の抗体結合能力は、0〜約310,000の範囲である。ビー
ズまたは500000個の細胞を遠心分離し、100μl/試料のFACSバッファー(
PBS、0.2%BSA、0.1%NaAz)で2回洗浄した。それぞれの洗浄ステップ
の後、ビーズまたは細胞を遠心分離し、注意深く再懸濁した。洗浄後、FACSバッファ
ーを添加し、10μg/mlのAPC−マウス抗ヒトCD117(BD Pharmin
genカタログ番号550412、BD Biosciences、San Jose、
CA)または10μg/mlのAPC−マウスIgGκアイソタイプ対照(BD Pha
rmingenカタログ番号554681)を対応するウェルに、100μl/試料の最
終容量のために添加した。
【0407】
次いで、細胞−抗体懸濁液を氷上で1時間インキュベートした。インキュベーション後
、細胞を沈降させ、100μlのFACSバッファーで2回洗浄した。それぞれの洗浄ス
テップの後、ビーズまたは細胞を遠心分離し、注意深く再懸濁した。
【0408】
非生細胞を、100μl/試料の7−AAD(BD Pharmingenカタログ番
号559925)を含有するFACSバッファー中での再懸濁により排除した。試料を氷
上で10分間インキュベートし、BD FACS CantoII(登録商標)(BD
Biosciences、San Jose、CA)中で分析した。試料あたりのシグナ
ルの幾何平均を、FlowJo(登録商標)ソフトウェアを使用して決定し、抗原密度を
Quantum Simply Cellularマニュアルに記載のように決定した。
ADCに対する細胞系の感度および細胞系の受容体密度のin vitroでの分析を、
TIBCO Spotfire 4.0において行った。
【0409】
この受容体密度を、
図3のY軸上に示す。受容体密度分析は、患者層別化のための初期
バイオマーカーとして本態様において有用である。例えば、
図3において、高い受容体密
度は、X軸上に示される抗cKIT ADC GI50の効果と相関している。受容体密
度の分析は、どの患者が抗cKIT ADC治療剤を受けるべきかを決定するための、臨
床設定において有用である。
【実施例13】
【0410】
重水素交換質量分析(HDx−MS)による9P3抗体へのcKITのエピトープマッ
ピング
重水素交換質量分析(HDx−MS)は、タンパク質のアミド骨格への重水素取込みを
測定するものである。これらの測定値は、アミドの溶媒接近性および骨格アミドの水素結
合ネットワークの変化に対して高感度である。HDx−MSは、アポおよびリガンド結合
などの2つの異なる状態のタンパク質を比較するために使用されることが多く、ペプシン
による迅速な消化とカップリングする。そのような実験において、当業者であれば、2つ
の異なる状態間で異なる重水素取込みを示す領域、典型的には、10〜15アミノ酸を見
つけることができる。保護される領域は、リガンド結合に直接関与するか、またはリガン
ドへの抗体の結合によりアロステリックに影響される。
【0411】
これらの実験では、cKIT細胞外ドメイン(配列番号160、下記参照)の重水素取
込みを、治療的mAb、9P3の非存在下および存在下で測定した。抗体の結合時に重水
素取込みの低下を示すcKIT中の領域はエピトープ中に含まれる可能性が高いが、測定
の性質のため、直接的な結合部位から遠い変化を検出することも可能である(アロステリ
ック効果)。通常、最も多い量の保護を有する領域は、直接結合に関与するが、これは常
に当てはまるわけではない。アロステリック効果に由来する直接結合事象を解明するため
には、直交測定(例えば、X線結晶分析、アラニン突然変異誘発)が必要である。
【0412】
【表9】
【0413】
cKITエピトープマッピング実験を、LEAP(登録商標)ロボットシステム、na
noACQUITY(登録商標)UPLC System、およびSynapt(登録商
標)G2質量分析計を含む、Waters Synapt(登録商標)G2 HDx−M
Sプラットフォーム上で行う。この方法においては、3組の対照実験を以下のように実行
する。300pmol(1.4mg/ml)のcKIT抗原を、110μlの95%重水
素化PBSバッファー(pH7.4)中に希釈し、ベンチローテータ上、室温で25分間
インキュベートする(%D=85.5%)。重水素交換を、氷上で5min、冷クエンチ
バッファー(6M尿素および1M TCEP pH=2.5)で1:1希釈することによ
りクエンチする。クエンチした後、チューブをLEAPシステム(サーモボックスは2℃
に設定する)上に移し、クエンチした試料を、分析のためにLEAPシステムによりUP
LCシステム上に注入する。UPLCシステムは、12℃に維持された固定化ペプシンカ
ラム2.1mm x 30mm(Life Technologies 2−3131−
00)を組み込む。8分で2〜35%のアセトニトリル勾配およびWaters UPL
C CSH C18 1.0x100mmカラムを分離のために使用する。次に、3組の
実験を、抗体を使用して実行する。300pmolの9P3抗体を、標準的な技術を使用
してプロテインGアガロースビーズ(Thermo Scientific Cat#2
2851)上に固定する。簡単に述べると、抗体を遠心分離して、保存バッファーを除去
する。次いで、200μlのPBSバッファー(pH7.4)および300pmolのc
KITを、固定されたAbに添加し、室温で30minインキュベートする。インキュベ
ーション後、複合体を遠心分離し、200μlのPBSバッファーで洗浄し、再度遠心分
離する。重水素交換のために、200μlの重水素化PBSを、室温で25分間のインキ
ュベーションのために抗原−抗体複合体に添加する(%D=85.5%)。次いで、重水
素バッファーを除去し、すぐに、125μlの氷冷クエンチバッファーを添加する。5分
間クエンチした後、カラムを遠心分離し、流出液を、予め冷却したHPLCバイアルに移
す。対照実験として同じオンラインペプシン消化/LC−MS設定を使用して、試料を分
析する。
【0414】
これらの測定の結果を、
図10および
図11にまとめる。
図10は、対照と9P3抗体
に結合した試料との間のベースライン補正された差異を、測定の標準誤差で除算したもの
を示す。このプロットにおいて、負の値が大きいほど、cKIT抗原への9P3抗体の結
合時に所与の領域における保護の量が大きいことを示す。cKITへの9P3の結合時に
、本発明者らは、以下の2つのcKITの領域:VFVRDPAKLFL((領域1、1
09〜119(配列番号161))およびHCSVDQEGKSVLSE((領域2、1
85〜198(配列番号162))において最も有意な量の保護を観察する。領域1は、
残基109〜119を含み、D1およびD2ドメインの一部である。領域2は、残基18
5〜198を含み、D2ドメインの一部である。
図11において、本発明者らは、cKI
T細胞外ドメインの結晶構造上に2つの最も保護された領域(
図10を参照されたい)(
PDB ID 2e9w)をマッピングした。さらに、本発明者らはまた、文献の値を使
用して部位I、IIおよびIIIとしてcKIT上のSCF結合部位を標識した(Yuzawa
et al., Cell 2007;130: 323-334)。
図11から2つの重要な知見が存在する。第1に
、領域1および2は、それらが一次配列空間において遠く離れていたとしても、結晶構造
中では非常に近接している。この観察は、その両方がエピトープの一部である可能性があ
り、そうだとすれば、9P3のエピトープは非連続的であることを示唆する。第2に、領
域1および2は、文献中で報告されたSCF結合部位からは離れている。9P3抗体はリ
ガンド結合を直接阻害しないことを示唆するため、これは重要な観察である。その代わり
に、抗体は、リガンド結合および/またはリガンド結合の際の受容体の二量体化を立体的
に阻害し得る。ELISAおよびFACSを使用する別々の競合アッセイにおいて、本発
明者らは、9P3によるcKITへのSCF結合の部分的遮断を観察したが、それは部分
的な立体干渉であると考えられる。結論として、HDx−MSデータは、9P3抗体のエ
ピトープは、SCF結合部位から遠い不連続なエピトープからなることを示している。N
EG024、NEG085、NEG086、NEG027およびNEG087は、同じ作
用機構を有すると期待される。
【実施例14】
【0415】
アゴニストとして作用するcKIT ADCの能力を、cKIT野生型細胞系Mo7e
およびcKIT変異細胞系GIST T−1を使用して評価した
cKIT ADCの潜在的なアゴニスト特性を評価するために、2x10
6個のGIS
T T−1(Dr.Takahiro Taguchi、Kochi U.、Japan
により提供していただいた)またはMo7e(DSMZ、ACC−104)細胞を、6ウ
ェルプレート(NUNCカタログ番号14067)中、5%CO
2と共に37℃で一晩血
清飢餓させた(0.1%FBSを添加した、GIST T−1についてはDMEMおよび
Mo7eについてはRPMI)。細胞を、37℃で15分間、10ng/mlのrh−S
CF(R&D、Cat#255−SC、R&D、Berkeley、CA)、5μg/m
lのNEG085−MCC−DM1、NEG024−MCC−DM1、および20376
−MCC−DM1で処理した。1個のウェルを未処理(UT)と指定した。細胞を1ml
のPBS中に収獲した。細胞ペレットを氷上で60min、30μlの溶解バッファー:
20mM Tris−HCl;pH7.5、137mM NaCl、1%Triton
X−100、15%グリセロール、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤中で溶解さ
せた。次いで、溶解物を、4℃、12,000rpmで40min、沈降させた。20μ
gの各試料を75℃で10min沸騰させ、12ウェルNuPAGE(登録商標)4〜1
2%Bis−Trisゲル(Life Technologies、NP0322BOX
、Carlsbad、CA)上に充填した。タンパク質を膜ブロットに転移させた後、膜
を室温で1時間、TBST−5%ミルク中で遮断した後、4℃で一晩、一次抗体を使用し
てプローブ化した。ブロットを、次の日、TBST(4x5min)中で洗浄した。ブロ
ットを二次抗体(ヤギ抗ウサギHRP 1:30,000、Santa Cruz)中、
室温で1hインキュベートした。ブロットをTBST(4x5min)中で洗浄し、現像
した。
【0416】
ウェスタンブロッティングに使用した一次抗体は、α−cKIT、Tyr703(Ce
ll Signaling Technology Cat#3073、Beverly
、MA)、α−cKIT Tyr721(NOVUS、Cat#NBP1−51412、
Novus、Littleton、CO)、AKT Ser473(Cell Sign
aling Technology Cat#9271)、AKT(Cell Sign
aling Technology Cat#4691)、ERK Thr202/Ty
r204(Cell Signaling Technology Cat#9101)
、ERK(Cell Signaling Technology Cat#9102)
、およびGAPDH(Cell Signaling Technology Cat#
3683)であった。
【0417】
図12に示されるように、cKIT抗体NEG085、NEG024および20376
は、リガンド(SCF)の非存在下でcKITのリン酸化を媒介することができる。しか
しながら、シグナルはホスホERKまたはホスホロAKTに伝達しないため、下流のシグ
ナリング経路は影響されない。
【実施例15】
【0418】
フローサイトメトリーにより決定されるGIST−T1細胞上での表面cKITのcK
IT Ab媒介性内在化
cKIT抗体により媒介される内在化の動力学を、温度シフト法およびフローサイトメ
トリー読出しを使用して、細胞単層中の抗体で処理することにより評価した。GIST−
T1(Dr.Takahiro Taguchi、Kochi U.、Japanにより
提供していただいた)細胞を、5つの12ウェル組織培養処理プレート(BD Falc
on 353043)中に2.5x10E5細胞/ウェルで播種した。細胞を、5%CO
2と共に37℃で一晩、組織培養インキュベータ中でインキュベートした。次の日、培地
を除去し、450μlの新鮮な培地と置き換えた。cKIT抗体NEG085、2037
6およびアイソタイプ対照を、適切な細胞培養培地中10X 10μg/ml濃度で調製
し、ウェルあたり50μlの試験cKIT抗体またはアイソタイプを、10μg/mlの
最終濃度で添加した。全ての細胞を氷上で1hインキュベートした後、1mLの1Xリン
酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、500μlの細胞培養培地中に再懸濁した。
プレート#2〜5を37℃に移し、5%CO
2と共に37℃で、30min、2h、4h
および24hの時点で収獲した。100μlの細胞解離バッファー(Gibco Cat
#13150−016、Life Technologies、Carlsbad、CA
)をプレート#1(4℃結合対照)に添加し、細胞が剥離するまで37℃でインキュベー
トした。細胞を100μlの培地で中和し、96ウェルV底組織培養処理プレート(Co
star 3894)に移した。細胞を遠心分離し、FACSバッファー(1Xリン酸緩
衝生理食塩水、2%ウシ胎仔血清、0.1%ナトリウムアジド)で2回洗浄した。フィコ
エリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次Ab(Invitrogen H101
04、Life Technologies、Carlsbad、CA)を、FACSバ
ッファー中で1〜100の比で調製した。二次抗体を100μl/ウェルで細胞に添加し
、氷上で45min、細胞と共にインキュベートした。インキュベーション期間の終わり
に、細胞を遠心分離し、FACSバッファーで3回洗浄した。細胞を100μl/ウェル
の1%パラホルムアルデヒドで固定し、暗室中、4℃で保存した。様々な時点で37℃で
インキュベートされた細胞について、細胞解離、二次抗体インキュベーションおよび固定
化ステップを反復する。次の日、全試料を、HTSシステム(BD Bioscienc
es、San Jose、CA)を使用するBD FACSCantoII(登録商標)
装置を使用して分析した。試料をFlowJoソフトウェアを使用して分析して、フィコ
エリトリンチャネルについて蛍光の幾何平均値を得た。
図13Aは、初期細胞表面結合の
%と幾何平均−PE4℃結合/幾何平均−PE37℃の時点x100のプロットである。
図13Aに示されるように、NEG085抗体と20376抗体は両方とも、細胞表面上
のcKITに結合し、細胞中に迅速に内在化される。これは、開示されるcKIT AD
Cは迅速に内在化され、かくして、毒素を細胞中に効率的に送達することを示している。
【0419】
別の内在化実験では、cKIT受容体レベルに対するNEG085の影響を、ヒト骨髄
細胞上で評価した。正常ヒトCD34+骨髄細胞(All Cells、Cat#ABM
022F、Emeryville、CA)を解凍し、10mLのStemPro(登録商
標)−34 SFM培地(Gibco、Life Technologies、Carl
sbad、CA)で洗浄した。細胞を1.25mLのStemPro−34 SFM培地
中に4x10
5細胞/mLで再懸濁し、2本のチューブに等量に分割した。一方のチュー
ブは未処理とし、他方のチューブは10μg/mlのNEG085で処理し、両方を37
℃、5%CO2でインキュベートした。100μLの細胞懸濁液を、それぞれの条件から
それぞれの時点(0、15、30、60、120、および240min)で採取し、氷冷
採取チューブ中に入れて、内在化を停止させた。細胞を、3mLの氷冷FBS染色バッフ
ァーで洗浄し、100μLのFBS染色バッファー中に再懸濁した。5mLの104D2
−BV421(マウス抗ヒトIgG1κ、Biolegend、San Diego、C
A)をそれぞれのチューブに添加し、氷上で1時間インキュベートした。FBS染色バッ
ファーでもう1回洗浄した後、FACS CantoII(登録商標)(BD Bios
ciences、San Jose、CA)上でBV421の平均蛍光強度を評価するこ
とによるフローサイトメトリーによって、全cKIT受容体を測定した。
【0420】
図13Bに示されるように、cKITは、NEG085の結合の際に迅速に内在化され
、大量の内在化が迅速に(15分)起こった後、4時間の終点まで表面上のcKITの量
は一定的に減少し続ける。
【実施例16】
【0421】
野生型cKIT細胞系(NCI−H526)または変異型cKIT細胞系(GIST−
T1)におけるcKIT分解をモジュレートするNEG085−MCC−DM1の能力の
決定
5x10
6個のGIST−T1(Dr.Takahiro Taguchi、Koch
i U.、Japanにより提供していただいた)またはNCI−H526(ATCC
CRL−5811)細胞を、5%CO
2と共に37℃の前の夜に、成長培地(GIST
T−1についてはDMEM、10%FBSおよびNCI−H526についてはRPMI、
10%FBS)中に播種した。次いで、細胞を、メチオニン非含有培地(GIBCO:D
MEM、21013−024;RPMI、A14517−01、Life Techno
logies、Carlsbad、CA)中の100mMシクロヘキシミド(CHX)(
Cat#090M4009、Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で
処理した。細胞を、5%CO
2と共に37℃で1、4または6時間、5μg/mlのAD
C(NEG085−MCC−DM1)、10ng/mlのrh−SCF(R&D、255
−SC)、またはADCとrh−SCFの両方で処理した。処理後1時間、4時間、およ
び6時間で、1mlのPBS中に細胞を収獲した。細胞ペレットを氷上で60min、5
0μlの溶解バッファー(20mM Tris−HCl;pH7.5、137mM Na
Cl、1%Triton X−100、15%グリセロール、プロテアーゼおよびホスフ
ァターゼ阻害剤)中で溶解させた。次いで、溶解物を4℃、12000rpmで40mi
n、沈降させた。5μgの各試料を、75℃で10min沸騰させ、15ウェルNuPA
GE(登録商標)4〜12%Bis−Trisゲル(NP0323BOX Life T
echnologies、Carlsbad、CA)上に充填した。膜ブロットにタンパ
ク質を転移した後、膜を室温で1時間、TBST−5%ミルク中で遮断した後、4℃で一
晩、抗cKIT抗体(Cell Signaling Technology Cat#
3074、Beverly、MA)を使用してプローブ化した。次の日、ブロットをTB
ST(4x5min)で洗浄した。プロットを二次抗体(ヤギ抗ウサギHRP 1:30
,000、Santa Cruz Biotechnologies、Dallas、T
X)中、室温で1時間インキュベートした。ブロットをTBST(4x5min)中で洗
浄し、現像した。ウェスタンブロッティングのために使用された一次抗体は、抗cKIT
(Cell Signaling Technology Cat#3074)およびG
APDH(Cell Signaling Technology Cat#3683)
であった。
図14A/Bは、NEG085−MCC−DM1により媒介されるcKIT受
容体分解の時間経過を示す。分解は迅速で、レベルは6時間後には非常に低い/検知不能
になった。cKIT受容体の分解は変異型cKIT受容体を発現するGIST T1細胞
中ではNEG085−MCC−DM1を含むSCFよりも速く起こることに留意されたい
(パネル14A)。また、NEG085−MCC−DM1およびSCFの添加は、
図14
Bに見られるように、より速い分解を提供するため、NEG085−MCC−DM1は、
SCFの結合からcKIT受容体を遮断しない。NEG085−MCC−DM1がリガン
ド遮断剤であった場合、NEG085−MCC−DM1と、SCFを含むNEG085−
MCC−DM1との間に差異はなかった。
【実施例17】
【0422】
非コンジュゲート化NEG085および20376は、Mo7e、SCF依存的細胞系
の増殖を阻害しない
ネイキッド抗体の潜在的なアンタゴニスト特性およびcKIT発現細胞系の増殖を阻害
する抗体薬物コンジュゲート(ADC)の能力を評価するために、Mo7e(DSMZ、
カタログ番号ACC−104、Braunschweig、DE)を、生存のために、c
KITリガンド、幹細胞因子(SCF)の存在下または非存在下で成長させた。MO7e
細胞を、10ng/mlのヒト顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子GM−CSF(
R&D Systems Cat#215−GM、Minneapolis、MN)また
は10ng/mlのヒト幹細胞因子SCF(R&D Systems Cat#255−
SC)中で成長させた後、96ウェルプレート(Costar Cat#3904、Co
rning、Tewksbury、MA)中に、100μlの希釈媒体中5000細胞/
ウェルで播種した。2組のプレートを0日目の測定のために作成し、全てのプレートを5
%CO
2と共に37℃で一晩、組織培養インキュベータ中でインキュベートした。このイ
ンキュベーションの後、さらに50μlの希釈媒体を添加し、次いで、90μl/ウェル
のCell titer Glo(登録商標)試薬(Promega Cat#G757
3、Madison、WI)を、指定の「0日目」のプレートの各ウェルに添加した。ア
ッセイプレートを20min穏やかに振とうし、得られた発光強度を、Perkin E
lmer 1450 Microbeta TriLux(登録商標)プレートリーダー
(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用して測定した。試験ネイキ
ッドAbおよびADCを、適切な細胞培養培地中、3X濃度;30μg/mlで調製し、
8点について5倍連続希釈した。培地のみのウェルも作成して、陰性対照として作用させ
た。50μlの3X連続希釈された抗体またはADCを添加(最終アッセイ濃度0.00
09〜68nM)した後、5%CO
2と共に37℃で5日間、組織培養インキュベータ中
でインキュベーションした。このインキュベーション期間の後、相対細胞生存能力を、上
記のCell titer Glo試薬の添加により決定した。細胞増殖に対するADC
の効果を、以下のように2組の平均を使用して算出した:(阻害率%=(処理されたAD
CまたはAb)/(未処理)
*100)。阻害率%のデータを4パラメータロジスティッ
ク式に適合させ、IC
50値を決定した。
【0423】
図15および
図16に示されるように、ネイキッド抗cKIT抗体は、細胞増殖を阻害
しない。
図15では、NEG085−MCC−DM1を、非コンジュゲート化NEG08
5、NEG024および20376と比較する。グラフに明確に示されるように、NEG
085−MCC−DM1は、低濃度でM07e細胞の細胞増殖を阻害するが、非コンジュ
ゲート化抗体はこの効果を有さない。IgG−MCC−DM1対照は、非コンジュゲート
化NEG085、NEG024または20376よりも高い抗増殖効果を有する。
【0424】
実験が、SCFリガンドが有するcKIt受容体に対する内在化効果を否定するために
SCFよりもむしろGM−CSFを使用する場合、これも
図16中に見られる。
図16中
の結果は、
図15のものと一致し、非コンジュゲート化NEG085抗体は、非コンジュ
ゲート化IgG対照と同様、細胞増殖に対する有害な効果を有さない。まとめると、
図1
5および
図16に示される結果は、細胞増殖の低下が抗CKIT抗体と毒素とのコンジュ
ゲーションに起因することを示す。
【実施例18】
【0425】
in vitroでのADCC活性の評価
抗体依存的細胞性細胞毒性を媒介する非コンジュゲート化抗cKIT抗体(NEG08
5、20376)の能力を、NK3.3細胞(キラー細胞またはエフェクター細胞;Sa
int Louis UniversityのJacky Kornbluth氏により
提供していただいた)との同時インキュベーションにおいてUke−1細胞(標的細胞;
Professor Walter Fiedler、University Hosp
ital Eppendorf、Hamburg、Germanyにより提供していただ
いた)に対して決定した。簡単に述べると、カルセインアセトキシ−メチルエステル(カ
ルセイン−AM;Sigma−Aldrichカタログ番号17783−5MG、St.
Louis、MO)でUke−1細胞を染色し、2回洗浄し、ウェルあたり5000個の
細胞の濃度で96ウェルマイクロタイタープレート(96ウェル、U底、透明プラスチッ
ク製;Corning Costar、カタログ番号650160、Tewksbury
、MA)中にピペットで取り、上記の抗体およびタンパク質の連続希釈液(1mlあたり
50,000〜0.003μg)と共に10min予備インキュベートした後、エフェク
ターと標的の比20:1で1時間、エフェクターNK3.3細胞を添加した。標的細胞の
抗体特異的溶解を算出するために、抗体またはエフェクター細胞を含まない標的細胞のみ
の同時的インキュベーションは、ベースラインおよび陰性対照として役立つが、陽性対照
または最大溶解または100%の特異的溶解を、1%Triton−X100溶液を含む
標的細胞のみの溶解により決定した。さらなる陽性対照として、Uke−1細胞上のCD
52を認識するMabCampath(登録商標)(Sanofi、Paris、FR)
を使用した。標的とエフェクター細胞との同時インキュベーション後に、マイクロタイタ
ープレートを遠心分離し、上清液体のアリコートを別のマイクロタイタープレート(96
ウェル、平底、黒色、透明の底部;(Corning Costar、カタログ番号39
04、Tewksbury、MA))に移し、溶液中の遊離カルセインの濃度を、蛍光計
数器(Victor3(登録商標)マルチラベル計数器、Perkin Elmer、W
altham、MA)を使用して決定した。
【0426】
結果を、
図17に提示する。抗体依存的細胞媒介性細胞毒性(ADCC)は、細胞媒介
性免疫の機構であり、それによりエフェクター細胞は特異的抗体により結合した標的細胞
を溶解する。この実験では、MabCampath(登録商標)ならびに抗cKIT抗体
20376およびNEG085は、非コンジュゲート化ヒトIgG1抗体である。
図17
に示されるように、MabCampath抗体だけが、標的細胞のADCC殺傷を媒介し
た。20376とNEG085は両方とも、高濃度でもADCCを誘導することができな
かった。そのようなものとして、ADCの1つ、例えば、NEG085−MCC−DM1
を使用する場合に見られる任意の細胞殺傷は、ADCC作用機構に起因しない。
【実施例19】
【0427】
肥満細胞アポトーシスを引き起こすNEG085および20376の能力を、一次ヒト
肥満細胞を用いて調査した。
一次ヒト肥満細胞を、Saito et al., Nature Protocols 2006;1(4):2178-2183により記
載された方法に従ってヒト末梢血から培養した。最小で1週間、液体培養にあった肥満細
胞を、37℃で48h、1.6nM rhSCF(Genscript、Cat#Z00
400、Piscataway、NJ)の存在下で、増加する濃度(0.05〜100n
M)の抗ヒトcKIT Ab、NEG085および20376、またはアイソタイプ対照
IgGと共にインキュベートした後、Caspase−Glo(登録商標)3/7試薬(
Promega、Cat#G8093、Madison、WI)を添加してアポトーシス
を測定した。RTで30minインキュベーション後、BioTek(登録商標)Syn
ergyプレートリーダー(BioTek、Winooski、VT)上で発光を記録し
た。
【0428】
cKITは肥満細胞上で発現されるため、治療的抗cKIT抗体は、肥満細胞の枯渇を
引き起こすべきではない。
図18は、1.6nMのrhSCFの存在下での、抗ヒトcK
IT Abまたはアイソタイプ対照Abを使用する処理後の一次ヒト肥満細胞を使用する
アポトーシスアッセイを示す。一次ヒト肥満細胞を、増加する濃度の抗cKIT抗体、N
EG085および20376、またはアイソタイプ対照IgGと共にインキュベートした
。
図18に見られるように、NEG085と20376非コンジュゲート化抗体は両方と
も、ex vivoでヒト一次肥満細胞のアポトーシスを誘導しない。
【実施例20】
【0429】
肥満細胞脱顆粒化を媒介するNEG085および20376の能力を一次ヒト肥満細胞
を使用して決定した。
一次ヒト肥満細胞を、Saito et al.,(supra)により記載された方法に従ってヒト末梢血
から培養した。最小で1週間、液体培養中にあった肥満細胞を、37℃で5日間、5%A
g特異的IgE JW8(社内バッチACE27283)、95%非特異的モノクローナ
ルヒトIgE(Abbiotec、Cat#12030635、San Diego、C
A)および10ng/mLのrhIL−4(R&D Systems Cat#204−
IL、Minneapolis、MN)で予備処理した。次いで、細胞を、37℃で90
min、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)Fc特異的Ab(Jackson ImmunoR
esearch、Cat#109−005−008−JIR、West Grove、P
A)の存在下で、増加する濃度(0.05〜100nM)のアイソタイプ対照IgG抗体
、抗ヒトcKIT Ab、20376およびNEG085、抗IgE Ab、LE27、
またはNIP(5)BSA抗原と共にインキュベートした。次いで、細胞を遠心分離し、
上清を96ウェル黒壁プレート中に移した後、β−ヘキソサミニダーゼ基質を添加した。
37℃で90minインキュベーション後、トリス塩基(Sigma、Cat#T150
3−500G、pH12、St.Louis、MO)の添加により反応を停止させ、En
vision(登録商標)プレートリーダー上で蛍光強度を記録した。
【0430】
実施例19中の以前の実験と同様、肥満細胞に対する抗cKIT抗体の任意の有害な効
果を評価することが重要である。以前の実験が肥満細胞のアポトーシスを検査した場合、
ここでの実験は肥満細胞脱顆粒化に関するものである。
図19に示されるように、陽性対
照NIP(5)およびLE27は、高レベルの肥満細胞脱顆粒化を示す。対照的に、抗c
KIT抗体NEG085および20376は、ex vivoでヒト一次肥満細胞の肥満
細胞脱顆粒化を誘導しない。
【実施例21】
【0431】
cKIT ADCによるin vivoでの的確な薬力学的マーカーモジュレーション
変異型cKITを発現するGIST T1腫瘍異種移植片における細胞分裂停止の薬力
学(PD)事象に対するNEG027抗体の同時局在化の検査を含む、in vivoで
薬力学的マーカーをモジュレートするcKIT ADC NEG027−MCC−DM1
の能力を評価するための研究を行った。これらの研究の目的は、G2/M細胞周期停止の
程度および持続期間を評価することであった。
【0432】
免疫組織化学的手法を使用して、腫瘍中でヒトIgG抗体(マウスにおいてはNEG0
27である)を検出することにより、ADCの存在を間接的に見積もった。親和性精製さ
れたウサギ抗ヒトIgG(H+L)を、Jackson ImmunoResearch
Laboratories(Cat#309−005−082、West Grove
、PA)から入手した。この抗体は、全分子ヒトIgGおよび他のヒト免疫グロブリンの
軽鎖と反応し、マウス血清タンパク質との交差反応は最小限である。簡単に述べると、I
HCプロトコールは、Ventana Cell Conditioning #1抗原
回収試薬(Ventana、Tucson、AZ)への熱曝露および標準曝露を含んでい
た。一次抗体を、2μg/mlの作用濃度に希釈し、室温で32分間インキュベートした
。続いて、Ventana UltraMap予備希釈HRPコンジュゲート化抗ウサギ
抗体(Cat#760−4315、Ventana、Tucson、AZ)とのインキュ
ベーションを32分間行った。
【0433】
免疫組織化学により評価される、pHH3陽性核の蓄積を、G2/M停止のマーカーと
して使用した。ヒトヒストンH3(pHH3)のSer10の周囲の残基に対応する合成
ホスホペプチドで動物を免疫することにより生成されるウサギポリクローナル抗体を、C
ell Signaling Technology(Danvers、MA、Cat#
9701)から入手した。簡単に述べると、IHCプロトコールは、Ventana C
ell Conditioning #1抗原回収試薬への熱曝露および標準曝露を含ん
でいた。一次抗体を1:50に希釈し、室温で60分間インキュベートした。続いて、J
ackson ImmunoResearch Laboratoriesのヤギ抗ウサ
ギビオチン化二次抗体(Cat#111−065−144、West Grove、PA
)とのインキュベーションを32分間行った。
【0434】
GIST T1皮下腫瘍異種移植片モデルにおける抗cKIT ADC誘導性PDマー
カー変化を評価するために、メスのSCID−ベージュマウスに、ハンクス平衡化塩溶液
中に50%Matrigel(商標)(BD Biosciences)を含有する懸濁
液中の10x10
6個の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有する全注入容
量は、200μlであった。腫瘍が300〜500mm
3に到達したら、単回i.v.用
量のNEG027−MCC−DM1(2.5mg/kg)、非特異的IgG1−MCC−
DM1アイソタイプ対照(2.5mg/kg)またはトリス緩衝生理食塩水(TBS;5
ml/kg)を受容するように、マウスを無作為に割当てた(n=3匹/群)。ヒトIg
Gに関する免疫染色は、NEG027が位置することを示し、これは、より高い密度のp
HH3免疫染色の領域と相関する(代表的な画像を
図20に示し、薬力学的効果を有する
抗体の同時局在化のための支援を提供する)。メイタンシノイドペイロードの予想される
作用機構と一致して、NEG027−MCC−DM1は、pHH3陽性性について陽性で
ある細胞のパーセンテージの顕著な時間依存的増加をもたらし、非特異的アイソタイプI
gG1−MCC−DM1またはPBS処理された対照と比較して投与後33および48h
でピークに達し、シグナルは約1週間でベースラインまで戻った(代表的な画像を
図21
に示し、グラフを
図22に示す)。切断されたキャスパーゼ3における時間依存的変化も
評価した。これらの研究において、ヒトキャスパーゼ−3中の(Asp175)に隣接す
るアミノ末端残基に対応する合成ペプチドで動物を免疫することにより生成されるウサギ
ポリクローナル抗体を、EMD Millipore(Cat#PC679)から入手し
た。IHCプロトコールは、Ventana Cell Conditioning #
1抗原回収試薬への熱曝露および標準曝露を含んでいた。一次抗体を20μg/mlに希
釈し、室温で32分間インキュベートした。続いて、Jackson ImmunoRe
search Laboratoriesのヤギ抗ウサギビオチン化二次抗体(Cat#
111−065−144、West Grove、PA)とのインキュベーションを32
分間行った。
【0435】
pHH3と同様、切断されたキャスパーゼ3の時間依存的変化も観察した(代表的な画
像を
図21に示し、グラフを
図22に示す)。これらのデータは、cKIT ADC N
EG027−MCC−DM1が、メイタンシノイドペイロードの作用機構と一致して強固
なin vivoでの細胞性PD効果を惹起することができることを示している。
【0436】
GIST T1腫瘍に関するcKIT免疫染色の代表的な写真を、この異種移植片モデ
ル中での染色パターンを可視化するために示す(
図21)。cKITの細胞質c末端部分
のアミノ酸963〜976に対応する合成ペプチドで動物を免疫することにより生成され
るウサギポリクローナル抗体を、Dako(Cat#A4502)から入手した。簡単に
述べると、IHCプロトコールは、Ventana Cell Conditionin
g #1抗原回収試薬への熱曝露および標準曝露を含んでいた。一次抗体を14μg/m
lの作用濃度に希釈し、室温で60分間インキュベートした。続いて、Ventana
UltraMap予備希釈HRPコンジュゲート化抗ウサギ抗体(Cat#760−43
15)を用いるインキュベーションを、16分間行った。
【実施例22】
【0437】
マウスにおける消化管間質腫瘍(GIST)に対する抗cKIT ADCのin vi
voでの効果
抗cKIT ADCの抗腫瘍活性を、いくつかの腫瘍異種移植片モデルにおいて評価し
た。非マウスcKIT交差反応性抗ヒトcKIT ADC NEG027−MCC−DM
1の用量依存的抗腫瘍活性および薬物動態(PK)を、変異型cKITを発現するGIS
T T1皮下腫瘍異種移植片モデルにおいて評価した。メスのSCID−ベージュマウス
に、ハンクス平衡化塩溶液中に50%Matrigel(商標)(BD Bioscie
nces)を含有する10x10
6個の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含
有する全注入容量は200μlであった。
【0438】
マウスを、207mm
3の平均腫瘍体積を埋め込んだ10日後に研究に登録した。5群
(n=9匹/群)の1つに無作為に割り当てた後、マウスに単回i.v.用量のTBS、
ADCビヒクル(5ml/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1
(2.5mg/kg)、またはNEG027−MCC−DM1(0.625、1.25も
しくは2.5mg/kg)を投与した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した。対照I
gG1−MCC−DM1は、2.5mg/kgでは有意な活性を示さなかった。0.62
5でのNEG027−MCC−DM1は、TBS処置群と比較して統計的に有意な効果を
示したが、1.25および2.5mg/kgはさらにより高い効果を誘導し、両方ともカ
リパス測定により類似する腫瘍体積静止状態を誘導したが、組織学的評価は腫瘍細胞の存
在を示さなかった。その代わり、結合組織、脂肪組織ならびに末梢神経および横紋筋のセ
グメントの混合物が、これらの切片における主要な組織成分であった。これは、腫瘍の組
織学的退縮を支持する(
図23〜26)。
【0439】
この研究から、投与後1時間、24時間ならびに4、7、11および21日で血清も採
取して、それぞれ、抗ヒトIgG1ELISAおよび抗DMELISAを使用して経時的
に抗体/ADC濃度を測定した。PKパラメータを評価するために、血清を後眼窩採血に
より採取し、ELISAにより分析した。全抗体PKアッセイは、比色ELISAにより
DM1を含む/含まない全抗体濃度を測定する。プレートを抗ヒトIgG(Fc特異的)
で被覆し、抗ヒトIgG−HRPで検出した後、適切なプレートリーダー上で読み取る。
コンジュゲートPKアッセイは、比色ELISAにより少なくとも1つのDM1分子に結
合する抗体を測定する。この形式では、プレートを抗メイタンシン抗体で被覆し、抗ヒト
IgG−HRPで検出する。PKは、およそ7日間の血清半減期で用量に比例する(
図2
3〜24)。
【0440】
0.625mg/kgの単回用量のNEG027−MCC−DM1のみがGIST T
1腫瘍成長遅延を引き起こし、かくして、異なるADC活性を評価するための動的範囲を
提供したため、密接に関連し、また、元のマウス9P3−MCC−DM1 ADCから誘
導されるADCのセットの効果を評価するために、この用量レベルを選択した。メスのS
CID−ベージュマウスに、ハンクス平衡化塩溶液中に50%Matrigel(商標)
(BD Biosciences、San Jose、CA)を含有する10x10
6個
の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有する全注入容量は200μlであっ
た。マウスを、195mm
3の平均腫瘍体積を埋め込んだ10日後に研究に登録した。群
(n=8匹/群)に無作為に割り当てた後、マウスに単回i.v.用量のTBS(8ml
/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(10mg/kg)、N
EG085−MCC−DM1(0.625mg/kg)、NEG086−MCC−DM1
(0.625mg/kg)、NEG087−MCC−DM1(0.625mg/kg)、
NEG024−MCC−DM1(0.625mg/kg)、またはNEG026−MCC
−DM1(0.625mg/kg)を投与した。腫瘍体積および体重は週に2回測定した
(
図27〜29)。対照IgG1−MCC−DM1は、10mg/kgの高用量でも活性
ではなかった。0.625mg/kgで投与した抗cKIT ADCは、互いに統計的に
異ならなかった。NEG085−MCC−DM1およびNEG024−MCC−DM1処
置群は、狭い範囲で最も小さい腫瘍体積を有していた。この研究から、投与後1時間、2
4時間ならびに3、7、10、14および21日で血清も採取して、それぞれ、抗ヒトI
gG1ELISAおよび抗DMELISAを使用して経時的に抗体/ADC濃度を測定し
た。PKパラメータを評価するために、後眼窩採血により血清を採取し、ELISAによ
り分析した。全抗体PKアッセイは、比色ELISAによりDM1を含む/含まない全抗
体濃度を測定する。プレートを抗ヒトIgG(Fc特異的)で被覆し、抗ヒトIgG−H
RPで検出した後、適切なプレートリーダー上で読み取る。コンジュゲートPKアッセイ
は、比色ELISAにより少なくとも1つのDM1分子に結合する抗体を測定する。この
形式では、プレートを抗メイタンシン抗体で被覆し、抗ヒトIgG−HRPで検出する。
これらのADCは、類似する血清曝露を示した(
図30)。
【実施例23】
【0441】
マウスにおける小細胞肺がんに対する抗cKIT ADCのin vivoでの効果
ADCのセットの抗腫瘍活性を、GIST T1腫瘍異種移植片と比較してより高い異
種性を示す中程度のcKIT免疫染色を使用してNCI−H1048小細胞肺がん異種移
植片モデルにおいて評価した(
図21〜
図30)。NEG085−MCC−DM1を、c
KITシグナリングの強力なアンタゴニストであるcKIT ADCのセットと比較した
ところ、いずれもマウスcKITに結合しない。メスのSCID−ベージュマウスに、ハ
ンクス平衡化塩溶液中に50%Matrigel(商標)(BD Bioscience
s)を含有する10x10
6個の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有する
全注入容量は200μlであった。マウスを、約120mm
3の平均腫瘍体積を埋め込ん
だ15日後に研究に登録した。全ての処置群は、2mg/kgの単回静脈内用量を受けた
。群(n=8匹/群)に無作為に割り当てた後、マウスに単回i.v.用量のTBS(5
ml/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(2mg/kg)、
NEG024−MCC−DM1、NEG085−MCC−DM1およびNEG086−M
CC−DM1を投与した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した(
図31、32)。対
照IgG1−MCC−DM1は活性ではなかった。NEG085−MCC−DM1は9%
の低いΔT/ΔCの効果に向かう傾向があったが、この2mg/kg用量ではビヒクルと
統計的に異ならなかった。NEG024−MCC−DM1およびNEG026−MCC−
DM1は有意に有効であった。
【0442】
cKIT ADCの抗腫瘍効果もNCI−H1048小細胞肺がん異種移植片モデルに
おいて評価し、NEG085−MCC−DM1の用量依存的抗腫瘍活性を評価した。メス
のSCID−ベージュマウスに、ハンクス平衡化塩溶液中に50%Matrigel(商
標)(BD Biosciences)を含有する10x10
6個の細胞を皮下的に埋め
込んだ。懸濁液中に細胞を含有する全注入容量は200μlであった。マウスを、約15
0〜200mm
3の平均腫瘍体積を埋め込んだ11日後に研究に登録した。群(n=8匹
/群)に無作為に割り当てた後、マウスに単回i.v.用量のTBS(5ml/kg)、
非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(10mg/kg)、またはNEG
085−MCC−DM1(2.5、5および10mg/kg)を投与した。腫瘍体積およ
び体重を週に2回測定した(
図33、34)。対照IgG1−MCC−DM1は活性では
なく、2.5mg/kgの用量のNEG085−MCC−DM1も活性ではなかった。し
かしながら、5および10mg/kgの用量は、有意に有効であった。
【0443】
2つの抗cKIT ADCの抗腫瘍活性を、GIST T1腫瘍異種移植片と同様、よ
り高いcKITレベルを有する第2の小細胞肺がん異種移植片モデルにおいて評価した(
図21上に代表的な写真および
図35中にグラフを示す)。メスのSCID−ベージュマ
ウスに、ハンクス平衡化塩溶液中に50%Matrigel(商標)(BD Biosc
iences)を含有する6x10
6個の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を
含有する全注入容量は200μlであった。マウスを、約150mm
3の平均腫瘍体積を
埋め込んだ6日後に研究に登録した。群(n=9匹/群)に無作為に割り当てた後、マウ
スに単回i.v.用量のTBS(8ml/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−
MCC−DM1(10mg/kg)、NEG024−MCC−DM1(2.5、5および
10mg/kg)およびマウス交差反応性ADC 20376−MCC−DM1(10m
g/kg)を投与した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した(
図35および
図36)
。対照IgG1−MCC−DM1は活性ではなかった。10mg/kgの20376−M
CC−DM1は最初は腫瘍を退縮させたが、初期の退縮の後、腫瘍の再発が見られた。3
つの用量のNEG024−MCC−DM1に関して有意な用量依存的効果が観察され、1
0mg/kgでは長期的退縮が持続し、60日後には腫瘍が再成長を開始したが、これは
、20376−MCC−DM1がこの研究で投与された単回用量よりも多くを必要とし得
ることを示唆している。10mg/kg用量の20376−MCC−DM1およびNEG
024−MCC−DM1の血清曝露はほぼ同等であった。
【実施例24】
【0444】
マウスにおける急性骨髄性白血病に対する抗cKIT ADCのin vivoでの効
果
抗cKIT ADCマウス9P3−MCC−DM1および9P3−SPDB−DM4の
用量依存的抗腫瘍活性を、変異型cKITを発現する急性骨髄性白血病Kasumi−1
皮下腫瘍異種移植片モデルにおいて評価した。メスのSCID−ベージュマウスに、Ma
trigel(商標)(BD Biosciences)を含有する2〜3片の1mm
3
に断片化されたKasumi−1腫瘍組織を右脇腹に皮下的に埋め込んだ。Kasumi
−1腫瘍を有するマウスを、150mm
3の平均腫瘍体積を埋め込んだ21日後に研究に
登録した。8群の1つ(n=8匹/群)に無作為に割り当てた後、マウスに単回i.v.
用量のPBS(200μl)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−SPDB−DM4(
10mg/kg)、9P3−MCC−DM1(10mg/kg)および9P3−SPDB
−DM4(1または5mg/kg)を投与した。腫瘍体積および体重を週に3回測定した
(
図37)。対照IgG1−SPDB−DM4は、10mg/kgでは有意に活性ではな
かった。腫瘍成長の退縮は5mg/kgおよび10mg/kgの用量で9P3−SPDB
−DM4に関して観察された。
【0445】
【表10】
【実施例25】
【0446】
マウスにおける肥満細胞症に対する抗cKIT ADCのin vivoでの効果
抗cKIT ADCマウス9P3−MCC−DM1および9P3−SPDB−DM4の
抗腫瘍活性を、変異型cKITを発現するHMC−1.2皮下腫瘍異種移植片モデルにお
いて評価した。HMC−1.2細胞系は、Dr.Joseph Butterfield
、Mayo Clinic、Rochester、MNにより提供していただいた。メス
のFoxn−1ヌードマウスに、FBS非含有DMEM培地中に50%Matrigel
(商標)(BD Biosciences)を含有する3、5および10x10
6個の細
胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有する全注入容量は100μlであった。
【0447】
この研究におけるHMC−1.2腫瘍担持マウスを、100mm
3の平均腫瘍体積を埋
め込んだ33日後に登録した。3群(n=4匹/群)の1つに無作為に割り当てた後、マ
ウスに、単回i.v.用量のPBS(200μl)、9P3−MCC−DM1(10mg
/kg)または9P3−SPDB−DM4(10mg/kg)を投与した。腫瘍体積およ
び体重を週に3回測定した(
図38)。腫瘍退縮は10mg/kgで9P3−SPDB−
DM4および9P3−MCC−DM1に関して観察された。
【0448】
【表11】
【実施例26】
【0449】
マウス交差反応性cKIT ADC20376−MCC−DM1のin vivoでの
効果
マウスcKIT交差反応性抗ヒトcKIT ADC20376−MCC−DM1の容量
依存的抗腫瘍活性および薬物動態(PK)を、変異型cKITを発現するGIST T1
皮下腫瘍異種移植片モデルにおいて評価した。メスのSCID−ベージュマウスを、約2
00mm
3の平均腫瘍体積を埋め込んだ10日後に研究に登録した。5群(n=9匹/群
)の1つに無作為に割り当てた後、マウスに、単回i.v.用量のTBS(5ml/kg
)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(10mg/kg)、NEG0
85−MCC−DM1(0.625mg/kg)または20376−MCC−DM1(0
.625、2.5、5または10mg/kg)を投与した。腫瘍体積および体重を週に2
回測定した(
図39〜41)。対照IgG1−MCC−DM1は、10mg/kgでは有
意に活性ではなかった。203786−MCC−DM1も有効ではなかったが、0.62
5でのNEG085−MCC−DM1は低い効果を示したが、統計的に有意なものではな
かった。2.5、5および10mg/kgでの20376−MCC−DM1は全て有意に
有効であった。
【0450】
この研究から、投与後1時間、24時間ならびに4、7、11および21日で血清も採
取し、それぞれ、抗ヒトIgG1 ELISAおよび抗DM ELISAを使用して経時
的に抗体/ADC濃度を測定した。PKパラメータを評価するために、後眼窩採血により
血清を採取し、ELISAにより分析した。全抗体PKアッセイは、比色ELISAによ
りDM1を含む/含まない全抗体濃度を測定する。プレートを抗ヒトIgG(Fc特異的
)で被覆し、抗ヒトIgG−HRPで検出した後、適切なプレートリーダー上で読み取る
。コンジュゲートPKアッセイは、比色ELISAにより少なくとも1つのDM1分子に
結合する抗体を測定する。この形式では、プレートを抗メイタンシン抗体で被覆し、抗ヒ
トIgG−HRPで検出する。マウスcKIT交差反応性ADC 20376−MCC−
DM1に関して、曝露(組織媒介性薬物体内動態)に影響する正常組織中でのADC結合
マウスcKITのため、PKは用量比例的ではなく、かくして、20376−MCC−D
M1と、非マウスcKIT交差反応性ADC NEG085−MCC−DM1との間に血
清濃度の明確な差異がある(
図40)。これは、0.625mg/kgの低用量で2つの
ADCの間での効果差の原因となる。より高い用量では、組織媒介性薬物体内動態効果は
あまり顕著ではなく、効果はマウスにおけるGIST T1腫瘍異種移植片モデルにおい
て明らかとなる。
[実施例28]
【0451】
消化管間質腫瘍に対するSPDB−DM4リンカー/ペイロードを含むcKIT AD
Cのin vivoでの効果
MCC−DM1(非切断性)およびSPDB−DM4(切断性)リンカー/ペイロード
を含むマウス9P3 ADC(NEG024およびNEG085が誘導される)の用量依
存的抗腫瘍活性を、変異型cKITを発現するGIST T1皮下腫瘍異種移植片モデル
において比較した。メスのSCID−ベージュマウスを、約170mm
3の平均腫瘍体積
を埋め込んだ18日後に研究に登録した。群(n=8匹/群)に無作為に割り当てた後、
マウスに、単回i.v.用量のTBS(5ml/kg)、非コンジュゲート化マウス9P
3抗体(10mg/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(5m
g/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(5mg/kg)、非
特異的アイソタイプ対照IgG1−SPDB−DM4(10mg/kg)、9P3−MC
C−DM1(5および10mg/kg)または9P3−SPDB−DM4(2.5および
5mg/kg)を投与した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した(
図42、43)。
対照非特異的IgG1 ADCも、非コンジュゲート化9P3も有効ではなかった。9P
3 ADCは全て、試験した用量レベルで有効であったが、2.5mg/kgの9P3−
SPDB−DM4で処置した群に由来する腫瘍は、他の群よりもわずかに有効性が低いと
考えられた。
【0452】
MCC−DM1(非切断性)およびSPDB−DM4(切断性)リンカー/ペイロード
を含むマウス9P3 ADC(NEG024およびNEG085が誘導される)の用量依
存的抗腫瘍活性を、変異型cKITを発現する消化管間質腫瘍の第2の腫瘍異種移植片モ
デル、GIST430において比較した。メスのSCID−ベージュマウスを、約200
mm
3の平均腫瘍体積を埋め込んだ11日後に研究に登録した。群(n=9匹/群)に無
作為に割り当てた後、マウスに、単回i.v.用量のTBS(5ml/kg)、非コンジ
ュゲート化マウス9P3抗体(10mg/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−
MCC−DM1(5mg/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1
(10mg/kg)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−SPDB−DM4(5mg/
kg)、9P3−MCC−DM1(10mg/kg)または9P3−SPDB−DM4(
5mg/kg)を投与した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した(
図44、45)。
いずれの対照非特異的IgG1 ADCも、有効ではなかった。しかしながら、両方の9
P3 ADCが、試験した用量レベルで同様に有効であった。
[実施例29]
【0453】
製剤
ADCの臨床サービス形態(CSF)は、50mgの抗cKIT−MCC−DM1、1
6.2mgのコハク酸ナトリウム、410.8mgのスクロースおよび1mgのポリソル
ベート20を含有するバイアル中の凍結乾燥物(宣言された含量の離脱を可能にするため
に10%の過充填を考慮しない)である。5mLの注射用水で凍結乾燥物を再構成させた
後、10mg/mLの抗cKIT−MCC−DM1、20mMのコハク酸ナトリウム、2
40mMのスクロースおよび0.02%のポリソルベート20、pH5.0を含有する溶
液が得られる。
【0454】
その後の静脈内投与のために、得られた溶液を、通常、担体溶液中にさらに希釈して、
輸注用のすぐに使えるADC溶液にする。
【0455】
CSFについては、予備安定性試験に基づいて、10mg/mLのADC濃度を選択し
た。等張性製剤を作出し、不定形の凍結乾燥ケーキ構造を維持し、タンパク質安定化を得
るために、240mMのスクロース濃度を選択した。
【0456】
最も安定な製剤を選択するための重要な安定性指示分析方法は、特に、凝集レベルを決
定するためのサイズ排除クロマトグラフィー、肉眼では見ることができない粒子状物質の
試験、遊離毒素の決定および効力試験を包含していた。
【0457】
予備スクリーニング研究により、0.02%の濃度のポリソルベート20が機械的スト
レスに対する十分な安定を提供することが示された。リアルタイムおよび加速安定性条件
(25℃および40℃)での液体および凍結乾燥安定性研究により、pH5.0のコハク
酸製剤が全体として最良の保存安定性を提供することが示された。最も顕著には、この製
剤において、凝集と遊離毒素の放出との間の試験した全ての製剤の最良のバランスが満た
される。40℃で3カ月後、分解生成物の特筆すべき増加を決定することはできなかった
。
[実施例30]
【0458】
cKIT ADCによるin vivoでの的確な薬力学的マーカーモジュレーション
変異型cKITを発現するGIST T1腫瘍異種移植片における細胞分裂停止の薬力
学(PD)事象に対するNEG085抗体の同時局在化の検査を含む、in vivoで
薬力学的マーカーをモジュレートするcKIT ADC NEG085−MCC−DM1
の能力を評価するための研究を行った。これらの試験の目的は、G2/M細胞周期停止の
程度および持続期間を評価することであった。
【0459】
免疫組織化学により評価される、ホスホ−ヒストンH3(pHH3)陽性核の蓄積を、
G2/M停止のマーカーとして使用した。ヒトヒストンH3(pHH3)のSer10の
周囲の残基に対応する合成ホスホペプチドで動物を免疫することにより生成されるウサギ
ポリクローナル抗体を、Cell Signaling Technology(Dan
vers、MA、Cat#9701)から入手した。簡単に述べると、IHCプロトコー
ルは、Ventana Cell Conditioning #1抗原回収試薬(Ve
ntana、Tucson、AZ)への熱曝露および標準曝露を含んでいた。一次抗体を
1:50に希釈し、室温で60分間インキュベートした。続いて、Jackson Im
munoResearch Laboratoriesのヤギ抗ウサギビオチン化二次抗
体(Cat#111−065−144、West Grove、PA)とのインキュベー
ションを32分間行った。
【0460】
GIST T1皮下腫瘍異種移植片モデルにおける抗cKIT ADC誘導性PDマー
カー変化を評価するために、メスのSCID−ベージュマウスに、ハンクス平衡化塩溶液
中に50%Matrigel(商標)(BD Biosciences)を含有する懸濁
液中の10x10
6個の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有する全注入容
量は、200μlであった。腫瘍が200〜300mm
3に到達したら、単回i.v.用
量のNEG085−MCC−DM1(5mg/kg)、非特異的IgG1−MCC−DM
1アイソタイプ対照(5mg/kg)またはトリスバッファー(10mM Tris−H
Cl、80mM NaCl、3.5%スクロース、0.01%Tween20 pH7.
5)を受容するように、マウスを無作為に割り当てた(n=3匹/群)。
【0461】
メイタンシノイドペイロードの予想される作用機構と一致して、NEG085−MCC
−DM1は、pHH3陽性性について陽性である細胞のパーセンテージの顕著な時間依存
的増加、かくして、細胞周期停止をもたらした。pHH3陽性性は、非特異的アイソタイ
プIgG1−MCC−DM1またはTrisバッファーで処理された対照と比較して投与
後1〜2日でピークに達し、処理の4日後にシグナルは低下した(代表的な画像を
図46
に示し、グラフを
図47に示す)。
[実施例31]
【0462】
マウスにおける消化管間質腫瘍(GIST)に対する抗cKIT ADCのin vi
voでの効果
抗cKIT ADC NEG085−MCC−DM1の抗腫瘍活性を、2つのGIST
腫瘍異種移植片モデルにおいて評価した。メスのSCID−ベージュマウスに、ハンクス
平衡化塩溶液中に50%Matrigel(商標)(BD Biosciences)を
含有する10x10
6個の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有する全注入
容量は200μlであった。
【0463】
GIST T1およびGIST430腫瘍に関するcKIT免疫染色の代表的な写真を
、これらの異種移植片モデルにおける染色パターンを可視化するために示す(それぞれ、
図48Aおよび49A)。cKITの細胞質c末端部分のアミノ酸963〜976に対応
する合成ペプチドで動物を免疫することにより生成されるウサギポリクローナル抗体を、
Dako(Cat#A4502)から入手した。簡単に述べると、IHCプロトコールは
、Ventana Cell Conditioning #1抗原回収試薬(Vent
ana、Tucson、AZ)への熱曝露および標準曝露を含んでいた。一次抗体を14
μg/mlの作用濃度に希釈し、室温で60分間インキュベートした。続いて、Vent
ana UltraMap予備希釈HRPコンジュゲート化抗ウサギ抗体(Cat#76
0−4315)とのインキュベーションを、16分間行った。
【0464】
GIST T1効果研究のために、約118mm
3〜234mm
3の平均腫瘍体積を埋
め込んだ18日後にマウスを研究に登録した。5群(n=9匹/群)の1つに無作為に割
り当てた後、マウスに、単回i.v.用量のTrisバッファー(ADCビヒクル)、非
特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(5mg/kg)、またはNEG08
5−MCC−DM1(1.25、2.5もしくは5mg/kg)を投与した。腫瘍体積お
よび体重を週に2回測定した(
図48Bおよび
図48C)。対照IgG1−MCC−DM
1は、5mg/kgでは有意に活性ではなかった。1.25、2.5および5mg/kg
のNEG085−MCC−DM1で処置したマウスは、それぞれ、63、11および12
%のトリスバッファーで処置された対照(ΔT/ΔC)と比較した腫瘍体積の平均変化率
(%)を示す腫瘍を有していたが、このデータの概要を表12に示す。NEG085−M
CC−DM1処置は、全用量レベルで良好に許容された。
【0465】
【表12】
【0466】
GIST430の効果研究のために、125mm
3〜200mm
3の平均腫瘍体積を埋
め込んだ12日後にマウスを研究に登録した。群(n=8匹/群)に無作為に割り当てた
後、マウスに、単回i.v.用量のトリスバッファー(ADCビヒクル)、非特異的アイ
ソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(10mg/kg)、非コンジュゲート化NEG
085抗体またはNEG085−MCC−DM1(2.5、5もしくは10mg/kg)
を投与した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した(
図49Bおよび
図49C)。対照
IgG1−MCC−DM1および非コンジュゲート化NEG085は、10mg/kgで
は活性ではなかった。2.5および5mg/kgのNEG085−MCC−DM1で処置
したマウスは、有意に活性ではなく(それぞれ、78%および56%のΔT/ΔC)、S
CID−ベージュマウスにおいて100mg/kg用量レベルでは許容性が低いため、最
初は100mg/kgで投与し、80mg/kgまで用量を低下させた比較剤イマチニブ
(47%のΔT/ΔC)も有意に活性ではなかった。
図49Bにグラフとして示され、表
13にまとめられるように、10mg/kgは有意に有効であった(19%のΔT/ΔC
)。NEG085−MCC−DM1処置は、全用量レベルで良好に許容された。
【0467】
【表13】
[実施例32]
【0468】
マウスにおける小細胞肺がんに対する抗cKIT ADCのin vivoでの効果
抗cKIT ADC NEG085−MCC−DM1の抗腫瘍活性を、NCI−H52
6小細胞肺がん異種移植片モデルにおいて評価した。メスのSCID−ベージュマウスに
、ハンクス平衡化塩溶液中に50%Matrigel(商標)(BD Bioscien
ces)を含有する10x10
6個の細胞を皮下的に埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有
する全注入容量は200μlであった。
【0469】
NCI−H526腫瘍に関するcKIT免疫染色の代表的写真を、この異種移植片モデ
ルにおける染色パターンを可視化するために示す(
図50A)。cKITの細胞質c末端
部分のアミノ酸963〜976に対応する合成ペプチドで動物を免疫することにより生成
されるウサギポリクローナル抗体を、Dako(Cat#A4502)から入手した。簡
単に述べると、IHCプロトコールは、Ventana Cell Condition
ing #1抗原回収試薬(Ventana、Tucson、AZ)への熱曝露および標
準曝露を含んでいた。一次抗体を14μg/mlの作用濃度に希釈し、室温で60分間イ
ンキュベートした。続いて、Ventana UltraMap予備希釈HRPコンジュ
ゲート化抗ウサギ抗体(Cat#760−4315)とのインキュベーションを、16分
間行った。
【0470】
マウスを、約180mm
3の平均腫瘍体積を埋め込んだ6日後に研究に登録した。群(
n=9匹/群)に無作為に割り当てた後、マウスに単回i.v.用量のTrisバッファ
ー(ADCビヒクル)、非特異的アイソタイプ対照IgG1−MCC−DM1(5mg/
kg)、またはNEG085−MCC−DM1(1.25、2.5および5mg/kg)
を投与した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した(
図50Bおよび
図50C)。対照
IgG1−MCC−DM1は活性ではなかった。1.25mg/kgのNEG085−M
CC−DM1は、最初は腫瘍体積の静止状態を誘導した後、腫瘍の再成長を誘導した。2
.5および5mg/kgの処置は、有意に有効であり、腫瘍退縮(それぞれ、74%およ
び96%の退縮)を誘導したが、これを
図50Bに示し、表14にまとめる。これらの用
量での処置は、単回処置後約3週間で腫瘍再成長を示した。全てのNEG085−MCC
−DM1処置は良好に許容された。
【0471】
【表14】
【0472】
この研究から、投与後1時間、24時間ならびに5、7、9、14、21および28日
で血清も採取して、それぞれ、抗ヒトIgG1 ELISAおよび抗DM ELISAを
使用して経時的に抗体/ADC濃度を測定した。PKパラメータを評価するために、血清
を後眼窩採血により採取し、ELISAにより分析した。全抗体PKアッセイは、比色E
LISAによりDM1を含む/含まない全抗体濃度を測定する。プレートを抗ヒトIgG
(Fc特異的)で被覆し、抗ヒトIgG−HRPで検出した後、適切なプレートリーダー
上で読み取る。コンジュゲートPKアッセイは、比色ELISAにより少なくとも1つの
DM1分子に結合する抗体を測定する。この形式では、プレートを抗メイタンシン抗体で
被覆し、抗ヒトIgG−HRPで検出する。NEG085−MCC−DM1に関して、こ
の研究における用量依存的効果は、抗全抗体および抗メイタンシンELISAにより測定
されるように、全抗体およびADCの用量依存的血清曝露と相関していた(それぞれ、図
51Aおよび
図51B)。
[実施例33]
【0473】
マウスにおける急性骨髄性白血病に対する抗cKIT ADCのin vivoでの効
果
抗cKIT ADC NEG085−MCC−DM1の抗腫瘍活性を、Novarti
sで確立されたHAMLX5343全身性原発性AML(急性骨髄性白血病)異種移植片
モデルにおいて評価した。メスのNSGマウスに、リン酸緩衝生理食塩水中の5x10
6
個の細胞を全身的に(尾静脈注射による)埋め込んだ。懸濁液中に細胞を含有する全注入
容量は200μlであった。
【0474】
マウスを、約14.8%のCD45陽性末梢血単核細胞(PBMC)の平均白血性組織
量(burden)を埋め込んだ43日後に研究に登録した。群(n=6匹/群)に無作為に割
り当てた後、マウスを未処置のままにするか、またはARA−C(シタラビン)を6日間
にわたって毎日腹腔内投与するか、もしくはNEG085−MCC−DM1(10mg/
kg)を2週間毎に1回静脈内投与した。白血性組織量をフローサイトメトリーにより測
定した。毎週、血液を、尾を介して全研究動物から採取した。赤血球を溶解し、残存する
PMBCを抗hCD45抗体(eBioscience、San Diego CA、C
at#P/N17−9459−42)で染色した。染色された細胞を、FACS Can
toフローサイトメーター(BD Biosciences)上で分析した(
図52A)
。体重を週に2回測定した(
図52B)。ARA−Cは、3匹の動物中では有効であった
が、他の3匹の動物中では毒性が高く、20%を超える体重低下を引き起こした。10m
g/kgでのNEG085−MCC−DM1処置は、2回目の投与後の短時間の退縮を含
む、腫瘍進行の遅延をもたらした(
図52A)。NEG085−MCC−DM1処置は、
図52および表15に示されるように、未処置の対照と比較して有意に有効であった。N
EG085−MCC−DM1の処置は良好に許容された(
図52B)。
【0475】
【表15】
[実施例34]
【0476】
組合せ療法におけるNEG085−MCC−DM1
異なる用量マトリックスを使用して、NEG085−MCC−DM1を低分子阻害剤と
組み合わせて試験した。用量の組合せ毎に、細胞生存能力の相対的阻害を算出した。Ch
aliceソフトウェア(Zalicus、Cambridge MA)またはComb
oExplorerアプリケーション(Novartis、Basel CH)のいずれ
かを使用して、薬物自体の用量加算性に関して広く使用されているLoeweのモデル(
Lehar et al. Nat. Biotechnol. (2009) 27: 659-666; Zimmermann et al., Drug Discov
. Today (2007) 12: 34-42)に対する、組合せの応答を、その単剤と比較した。加算性と
比較した過剰の阻害を、完全用量マトリックスチャートとしてプロットして、相乗作用が
生じる薬物濃度を可視化することができる。相乗的組合せは、用量マトリックス内で過剰
の阻害の領域をもたらした。表16は、いくつかのNEG085−MCC−DM1/組合
せのデータを示す。組合せが、単剤自体による応答と比較した場合に細胞生存能力応答の
同じ阻害をもたらした場合、「加算性」が認められた。細胞生存能力の阻害が自身と比較
して単剤の応答よりも高い場合、「相乗作用」が示された。あるいは、5未満のLoew
eスコアについて「加算性」が示され、5より高いLoeweスコアにより「相乗作用」
が示された。
【0477】
CellTiter Glo発光アッセイ(Promega、Madison、WI)
を使用して、細胞ATP含量を測定することにより、細胞生存能力を決定した。薬物添加
の1日前に、2つの異なる細胞系に由来する250〜500個のGIST細胞を、20μ
lの成長培地中、384ウェルプレート(Greiner、Monroe、NC)に播種
した。GIST430細胞は、Glivec(登録商標)(イマチニブ)に対して部分的
に耐性にするcKIT中の二重変異を含有する。GIST882細胞は、cKIT中に単
一の変異を有し、Glivec(登録商標(イマチニブ)に対して感受性である。次いで
、様々な濃度の、単剤としてのNEG085−MCC−DM1、単剤化合物またはNEG
085−MCC−DM1/化合物組合せと共に細胞を120hインキュベートした後、C
ellTiter Glo試薬を各ウェルに添加し、Envisionプレートリーダー
(Perkin Elmer、Waltham MA)上で発光を記録した。発光値を使
用して、DMSO処理された細胞(0%阻害)と比較した細胞生存能力の阻害を算出した
。
【0478】
【表16】
【0479】
まとめると、本明細書に開示される抗cKIT抗体は、処置のためのより多くの選択肢
をもたらす他の分子と組み合わせて使用した場合、相乗効果を有する。例えば、NEG0
85−MCC−DM1を、相乗効果を得るための療法としてIAP阻害剤(例えば、NV
P−LCL161)と同時に投与することができる。
[実施例35]
【0480】
NEG085のエピトープマッピング
in situ限定的タンパク質分解
ヒトcKIT(受託コードNM_000222ドメイン1(D1)−ドメイン3(D3
)細胞外ドメイン(ECD)タンパク質を、残基Q26−G311(N130S、N14
5S−これらの変化は、タンパク質を無グリカン形態で発現させるためのグリコシル化欠
損をもたらす)と共に作製した。等モル比のヒトcKIT D1−D3 ECDおよびN
EG085 Fabを混合し、20mM Tris−HCl pH7.5および100m
M NaClで平衡化された最終ゲル濾過ステップにかけ、20mg/mlに濃縮した。
トリプシンをタンパク質複合体結晶化試料に添加して、1:100w/w希釈液を作出し
た。プロテアーゼ/試料混合物を室温で30分間インキュベートした後、結晶化実験を設
定した。
【0481】
結晶化
cKIT ECD/NEG085 Fab複合体の回折結晶を、4℃で、Protei
n Complex Suite F5(0.1M NaCl、0.1M Tris p
H8.0、8%PEG20k;Qiagen)から直接取得し、小規模最適化後、社内で
5Åに回折する結晶を誘導した。データ収集のために使用された結晶を、シッティングド
ロップ蒸気拡散法により、等量のタンパク質(20mg/mL)およびリザーバ溶液(0
.1M NaCl、0.1M Tris pH8.0、10%PEG20k)を平衡化す
ることにより4℃で成長させた。データ収集の前に、結晶を、30%グリセロールを含有
するリザーバ溶液中で凍結防止し、液体窒素中で急速冷却した。
【0482】
データ収集
データを、ADSC QUANTUM 315検出器(ADSC、Poway CA)
およびAdvanced Light Sourceの5.0.2のビーム線でシンクロ
トロン放射(λ=1.0000Å)を使用して100Kに冷却した単結晶上で収集した。
cKIT ECD/NEG085 Fabの結晶は、3.1Å解像度に回折し、ユニット
セルパラメータa=213.76Å、b=117.48Å、c=171.92Å、α=9
0°、β=118.47°、γ=90°を有する空間群C2に属していた。結晶は、非対
称ユニット中に4コピーのcKIT ECD/NEG085 Fab複合体を含有し、溶
媒含量は66%と算出された。データを、autoPROC(Global Phasi
ng Ltd、Cambridge UK)を使用してプロセッシングした。
【0483】
構造決定および改良
cKIT ECD/NEG085 Fab複合体の構造を、出発モデルとしてcKIT
ECDの公開された結晶構造(PDB IDコード:2EC8)(Yuzawa et al., Cel
l 2007; 130 (2):323-34)および抗α1β1インテグリンI Fab(PDB IDコー
ド:1MHP)(Karpusas et al., J. Mol. Biol. 2003; 327 (5):1031-41)を使用して
、PHASER(McCoy et al., J. Appl. Crystallogr. 2007; 40(4): 658-74)との分
子置き換えにより3.1Å解像度で分解した。NEG085 Fab断片のCDRループ
を、Phenix(Adams et al., Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr. 2010; 66
(2): 213-21)に実装されたシミュレート化アニーリングコンポジットオミットマップを
使用してCOOT(Emsley and Cowtan, Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr. 200
4; 60 (12): 2126-32)中で手動で再構築した。Phenix.refineプログラム
を使用するモデル構築および改良のその後のラウンドを、収束まで実行した。
【0484】
結果:NEG085のFab断片との複合体中のヒトcKIT D1−D2の構造
cKIT D1−D3/NEG085 Fab共構造は、NEG085が、ドメイン1
、2およびそれらの間のリンカー残基内に含まれる多数の残基と特異的に相互作用するこ
とにより、cKITの細胞外膜遠位ドメインを認識し、これに結合することを示している
。従って、NEG085により認識されるcKITエピトープを、
cKITドメイン1残基:R49、V50
cKITドメイン2残基:Q152、G153、H185およびループQ190−E1
98
ドメイン1と2の間のリンカー:D113〜L117
と定義することができる。NEG085は、全てのCDR(H1〜H3およびL1〜L3
)を使用してcKIT D1−D2に結合する(
図53)。
図53は、Fab重鎖(暗灰
色)、Fab軽鎖(白色)、およびKit D1−D2(明灰色)ドメインを示すKit
D1−D2/NEG085 Fab複合体の3.1Å結晶構造を示す。エピトープおよ
びパラトープは黒色である。NEG085/cKIT境界面は、合計約1890Å2の溶
媒接近可能表面積を埋める(それぞれ、H鎖およびL鎖からの1211Å2および679
Å2)。エピトープは、cKIT D1−D2リンカー領域D113−L117(配列番
号163)とループQ190−E198(配列番号164)の中心にあり、これらの残基
は表2、配列番号155中で太字および下線付きで示される。これらのエピトープは一次
配列中では不連続であるが、結晶構造中では非常に近接していることに留意されたい。こ
れらのエピトープ相互作用は、R49、V50、Q152、G153、およびH185と
の末梢相互作用により補完される(
図53)。cKIT D1−D2とNEG085 F
abとの分子間相互作用を、PISA(Protein Interfaces、Sur
face and Assemblies)(Krissinel and Henrick, J. Mol. Biol. 2
007, 372(3):774-97)を使用して検査した。このデータを、表17に示す。
【0485】
二量体cKIT/SCFシグナリング複合体(Yuzawa et al. Cell 2007; 130 (2);323
-34)およびcKIT/NEG085複合体中のcKITの重ね合わせは、NEG085
およびSCFがcKITへの結合について互いに競合しないと考えられることを示してい
る。NEG085は、SCF結合を担う結合エピトープとは異なるエピトープに結合する
。従って、cKITへのNEG085の結合は、SCFとの会合について直接競合しない
。
【0486】
【表17】
【0487】
NEG085 Fab VHおよびVL残基は、その線状アミノ酸配列に基づいて番号
付けられる。cKIT残基は、受託コードNM_000222に基づいて番号付けられる
。分子間相互作用を、PISA(Protein Interfaces、Surfac
e and Assemblies)(Krissinel and Henrick, J. Mol. Biol. 2007, 3
72(3):774-97)を使用して検査した。
【0488】
本明細書に記載の実施例および態様は例示目的に過ぎず、それに照らして様々な改変ま
たは変更が当業者に対して示唆され、本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範
囲の中に含まれることが理解される。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
式:
Ab−(L−(D)m)n
(式中、
AbはヒトcKITのエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片で
あり;
Lはリンカーであり;
Dは薬物部分であり;
mは1〜8の整数であり;および
nは1〜10の整数である)
の抗体薬物コンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩。
[2]
前記nが3または4である、請求項1に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[3]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、cKITの細胞外ドメイン(配列番号160)
に特異的に結合する、請求項1または2に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[4]
前記抗体または抗原結合性断片が、ドメイン1〜3でヒトcKITのエピトープ(配列
番号155)に特異的に結合する、請求項1または2に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[5]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号161および配列番号162でヒトc
KITに特異的に結合する、請求項1または2に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[6]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、
(i)(a)配列番号76のHCDR1(CDR相補性決定領域)、(b)配列番号7
7のHCDR2、(c)配列番号78のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番
号85のLCDR1、(e)配列番号86のLCDR2、および(f)配列番号87のL
CDR3を含む軽鎖可変領域;
(ii)(a)配列番号22のHCDR1、(b)配列番号23のHCDR2、(c)
配列番号24のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号31のLCDR1、(
e)配列番号32のLCDR2、および(f)配列番号33のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(iii)(a)配列番号130のHCDR1、(b)配列番号131のHCDR2、
(c)配列番号132のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号139のLC
DR1、(e)配列番号140のLCDR2、および(f)配列番号141のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;
(iv)(a)配列番号58のHCDR1、(b)配列番号59のHCDR2、(c)
配列番号60のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号67のLCDR1、(
e)配列番号68のLCDR2、および(f)配列番号69のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(v)(a)配列番号40のHCDR1、(b)配列番号41のHCDR2、(c)配
列番号42のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号49のLCDR1、(e
)配列番号50のLCDR2、および(f)配列番号51のLCDR3を含む軽鎖可変領
域;
(vi)(a)配列番号94のHCDR1、(b)配列番号95のHCDR2、(c)
配列番号96のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号103のLCDR1、
(e)配列番号104のLCDR2、および(f)配列番号105のLCDR3を含む軽
鎖可変領域;
(vii)(a)配列番号112のHCDR1、(b)配列番号113のHCDR2、
(c)配列番号114のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号121のLC
DR1、(e)配列番号122のLCDR2、および(f)配列番号123のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;または
(viii)(a)配列番号3のHCDR1、(b)配列番号4のHCDR2、(c)
配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号12のLCDR1、(e
)配列番号13のLCDR2、および(f)配列番号14のLCDR3を含む軽鎖可変領
域
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[7]
CDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、表1中の別の抗cKIT抗体の対応するCD
Rの対応する残基により置換される、先行請求項のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジ
ュゲート。
[8]
CDR内の1または2つのアミノ酸が改変、欠失または置換されている、先行請求項の
いずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[9]
可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにわたって少なくとも90、91、92、93
、94、95、96、97、98または99%の同一性を保持する、先行請求項のいずれ
か1項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[10]
前記抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト操作抗体、ヒト抗体、
一本鎖抗体(scFv)または抗体断片である、先行請求項のいずれか1項に記載の抗体
薬物コンジュゲート。
[11]
前記リンカー(L)が、切断性リンカー、非切断性リンカー、親水性リンカー、プロチ
ャージリンカーおよびジカルボン酸に基づくリンカーからなる群から選択される、請求項
1〜10のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[12]
前記リンカーが、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート
(SPDP)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SP
P)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)、N
−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)2−スルホ−ブタノエート(スルホ−
SPDB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジル
(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、マレイミドPEG NHS、
N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SM
CC)、N−スルホスクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキ
シレート(スルホ−SMCC)または2,5−ジオキソピロリジン−1−イル17−(2
,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−5,8,11,14
−テトラオキソ−4,7,10,13−テトラアザヘプタデカン−1−オエート(CX1
−1)からなる群から選択される架橋試薬から誘導される、請求項11に記載の抗体薬物
コンジュゲート。
[13]
前記リンカーが、架橋試薬N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキ
サンカルボキシレート(SMCC)から誘導される、請求項12に記載の抗体薬物コンジ
ュゲート。
[14]
前記薬物部分(D)が、V−ATPase阻害剤、プロアポトーシス剤、Bcl2阻害
剤、MCL1阻害剤、HSP90阻害剤、IAP阻害剤、mTor阻害剤、微小管安定化
剤、微小管脱安定化剤、オーリスタチン、ドラスタチン、メイタンシノイド、MetAP
(メチオニンアミノペプチダーゼ)、タンパク質CRM1の核輸送の阻害剤、DPPIV
阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ミトコンドリアにおけるホスホリル転移反応の阻害剤、
タンパク質合成阻害剤、キナーゼ阻害剤、CDK2阻害剤、CDK9阻害剤、キネシン阻
害剤、HDAC阻害剤、DNA損傷剤、DNAアルキル化剤、DNA挿入剤、DNA副溝
結合剤およびDHFR阻害剤からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項
に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[15]
前記薬物部分がメイタンシノイドである、請求項14に記載の抗体薬物コンジュゲート
。
[16]
前記メイタンシノイドが、N(2’)−デアセチル−N(2’)−(3−メルカプト−
1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)またはN(2’)−デアセチル−N2−
(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM4)である
、請求項15に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[17]
別の治療剤と組み合わせた、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲー
ト。
[18]
表16に列挙される治療剤と組み合わせた、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体薬
物コンジュゲート。
[19]
式:
【化15】
(式中、
AbはヒトcKIT、および少なくともn個の第1級アミンに特異的に結合する抗体ま
たはその抗原結合性断片であり;nは1〜10の整数である)
の抗体薬物コンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩。
[20]
前記抗体または抗原結合性断片が、ドメイン1〜3でヒトcKITのエピトープ(配列
番号155)に特異的に結合する、請求項19に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[21]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号161および配列番号162でヒトc
KITに特異的に結合する、請求項19に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[22]
前記Abが、
(i)(a)配列番号76のHCDR1(CDR−相補性決定領域)、(b)配列番号
77のHCDR2、(c)配列番号78のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列
番号85のLCDR1、(e)配列番号86のLCDR2、および(f)配列番号87の
LCDR3を含む軽鎖可変領域;
(ii)(a)配列番号22のHCDR1、(b)配列番号23のHCDR2、(c)
配列番号24のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号31のLCDR1、(
e)配列番号32のLCDR2、および(f)配列番号33のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(iii)(a)配列番号130のHCDR1、(b)配列番号131のHCDR2、
(c)配列番号132のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号139のLC
DR1、(e)配列番号140のLCDR2、および(f)配列番号141のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;
(iv)(a)配列番号58のHCDR1、(b)配列番号59のHCDR2、(c)
配列番号60のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号67のLCDR1、(
e)配列番号68のLCDR2、および(f)配列番号69のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(v)(a)配列番号40のHCDR1、(b)配列番号41のHCDR2、(c)配
列番号42のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号49のLCDR1、(e
)配列番号50のLCDR2、および(f)配列番号51のLCDR3を含む軽鎖可変領
域;
(vi)(a)配列番号94のHCDR1、(b)配列番号95のHCDR2、(c)
配列番号96のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号103のLCDR1、
(d)配列番号104のLCDR2、および(f)配列番号105のLCDR3を含む軽
鎖可変領域;
(vii)(a)配列番号112のHCDR1、(b)配列番号113のHCDR2、
(c)配列番号114のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号121のLC
DR1、(e)配列番号122のLCDR2、および(f)配列番号123のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;または
(viii)(a)配列番号3のHCDR1、(b)配列番号4のHCDR2、(c)
配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号12のLCDR1、(e
)配列番号13のLCDR2、および(f)配列番号14のLCDR3を含む軽鎖可変領
域
を含む抗体またはその抗原結合性断片である、請求項19に記載の抗体薬物コンジュゲー
ト。
[23]
CDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、表1の別の抗cKIT抗体の対応するCDR
の対応する残基により置換される、先行請求項のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュ
ゲート。
[24]
CDR内の1または2つのアミノ酸が改変、欠失または置換されている、先行請求項の
いずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[25]
可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにわたって少なくとも90、91、92、93
、94、95、96、97、98または99%の同一性を保持する、先行請求項のいずれ
か1項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[26]
抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト操作抗体、ヒト抗体、一本
鎖抗体(scFv)または抗体断片である、請求項19〜25のいずれか1項に記載の抗
体薬物コンジュゲート。
[27]
前記nが2〜8の整数である、請求項19〜25のいずれか1項に記載の抗体薬物コン
ジュゲート。
[28]
前記nが3〜4の整数である、請求項19〜25のいずれか1項に記載の抗体薬物コン
ジュゲート。
[29]
別の治療剤と組み合わせた、請求項19〜28のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジ
ュゲート。
[30]
表16に列挙される治療剤と組み合わせた、請求項19〜28のいずれか1項に記載の
抗体薬物コンジュゲート。
[31]
請求項1〜28のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲートと、薬学的に許容され
る担体とを含む医薬組成物。
[32]
凍結乾燥物として調製される、請求項31に記載の医薬組成物。
[33]
前記凍結乾燥物が、請求項1〜28のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲート、
コハク酸ナトリウム、およびポリソルベート20を含む、請求項32に記載の医薬組成物
。
[34]
それを必要とする患者におけるcKIT陽性がんを処置する方法であって、請求項1〜
28のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲート、または請求項31〜33に記載の
医薬組成物を、前記患者に投与することを含む、方法。
[35]
前記がんが、消化管間質腫瘍(GIST)、小細胞肺がん(SCLC)、急性骨髄性白
血病(AML)、メラノーマ、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞症、神経線維腫症、
乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんからなる群から選択される、請求
項34に記載の方法。
[36]
前記抗体薬物コンジュゲートまたは前記医薬組成物が、別の治療剤と組み合わせて投与
される、請求項35に記載の方法。
[37]
前記抗体薬物コンジュゲートまたは前記医薬組成物が、表16に列挙される治療剤と組
み合わせて投与される、請求項36に記載の方法。
[38]
医薬としての使用のための請求項1〜28のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲ
ート。
[39]
cKIT陽性がんの処置における使用のための、請求項1〜28のいずれか1項に記載
の抗体薬物コンジュゲート、または請求項31〜33のいずれか1項に記載の医薬組成物
。
[40]
別の治療剤と組み合わせて投与される、請求項39に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[41]
表16に列挙される治療剤と組み合わせて投与される、請求項40に記載の抗体薬物コ
ンジュゲート。
[42]
請求項1〜28のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片をコードする核酸。
[43]
請求項42に記載の核酸を含むベクター。
[44]
請求項43に記載のベクターを含む宿主細胞。
[45]
請求項44に記載の宿主細胞を培養すること、および培養物から抗体を回収することを
含む、抗体または抗原結合性断片を生成するための方法。
[46]
(a)SMCCを薬物部分DM−1に化学的に連結すること;
(b)前記リンカー−薬物を、請求項45に記載の細胞培養物から回収された抗体にコ
ンジュゲートすること;および
(c)抗体薬物コンジュゲートを精製すること
を含む、抗cKIT抗体薬物コンジュゲートを生成するための方法。
[47]
UV分光光度計を使用して測定される、約3.5の平均メイタンシノイドと抗体との比
(MAR)を有する、請求項46に従って作製される抗体薬物コンジュゲート。
[48]
(i)(a)配列番号76のHCDR1(CDR−相補性決定領域)、(b)配列番号
77のHCDR2、(c)配列番号78のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列
番号85のLCDR1、(e)配列番号86のLCDR2、および(f)配列番号87の
LCDR3を含む軽鎖可変領域;
(ii)(a)配列番号22のHCDR1、(b)配列番号23のHCDR2、(c)
配列番号24のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号31のLCDR1、(
e)配列番号32のLCDR2、および(f)配列番号33のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(iii)(a)配列番号130のHCDR1、(b)配列番号131のHCDR2、
(c)配列番号132のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号139のLC
DR1、(e)配列番号140のLCDR2、および(f)配列番号141のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;
(iv)(a)配列番号58のHCDR1、(b)配列番号59のHCDR2、(c)
配列番号60のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号67のLCDR1、(
e)配列番号68のLCDR2、および(f)配列番号69のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(v)(a)配列番号40のHCDR1、(b)配列番号41のHCDR2、(c)配
列番号42のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号49のLCDR1、(e
)配列番号50のLCDR2、および(f)配列番号51のLCDR3を含む軽鎖可変領
域;
(vi)(a)配列番号94のHCDR1、(b)配列番号95のHCDR2、(c)
配列番号96のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号103のLCDR1、
(d)配列番号104のLCDR2、および(f)配列番号105のLCDR3を含む軽
鎖可変領域;
(vii)(a)配列番号112のHCDR1、(b)配列番号113のHCDR2、
(c)配列番号114のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号121のLC
DR1、(e)配列番号122のLCDR2、および(f)配列番号123のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;または
(viii)(a)配列番号3のHCDR1、(b)配列番号4のHCDR2、(c)
配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域と、(d)配列番号12のLCDR1、(e
)配列番号13のLCDR2、および(f)配列番号14のLCDR3を含む軽鎖可変領
域
を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
[49]
標識された請求項48に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む診断剤。
[50]
標識が、放射性標識、フルオロフォア、発色団、画像化剤、および金属イオンからなる
群から選択される、請求項49に記載の診断剤。