特許第6578412号(P6578412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6578412
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】環状帯鋸刃の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 63/12 20060101AFI20190909BHJP
   B23D 65/00 20060101ALI20190909BHJP
   B23D 61/12 20060101ALI20190909BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B23D63/12 A
   B23D65/00
   B23D61/12 B
   B23P15/28 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-110240(P2018-110240)
(22)【出願日】2018年6月8日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(73)【特許権者】
【識別番号】504279326
【氏名又は名称】株式会社アマダマシンツール
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 健作
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−20822(JP,U)
【文献】 特開平11−188527(JP,A)
【文献】 特開昭60−62409(JP,A)
【文献】 実開昭48−94490(JP,U)
【文献】 実開昭58−150453(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第0326325(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 63/12
B23D 61/12
B23D 65/00
B23P 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の胴部と、前記胴部の一方の側部に形成された複数の歯を含む歯部と、を有する帯鋸刃の両端を溶接して環状化する環状化工程と、
前記環状化した前記帯鋸刃における、内表面,外表面,及び前記歯部とは反対側の端面を研磨する研磨工程と、
前記研磨工程の後に、前記環状化した前記帯鋸刃を、前記内表面及び外表面のいずれか一方と前記端面とを基準にして位置出しし、前記複数の歯の歯先に切削チップを溶接により接合し、接合した前記切削チップを研磨して歯先形状を形成するチップ歯先形成工程と、
を含む環状帯鋸刃の製造方法。
【請求項2】
前記研磨工程は、前記環状化した前記帯鋸刃を循環移動させながら、前記内表面及び前記外表面を、それぞれに対して円形砥石を回転させつつ付勢して研磨することを特徴とする請求項1記載の環状帯鋸刃の製造方法。
【請求項3】
前記端面を研磨する砥石を、前記円形砥石に対し、前記胴部が循環移動する方向における前方及び後方の一方側に配置し、
前記円形砥石の回転軸線を、前記胴部の幅方向中央において前記一方側に傾斜させ、
前記円形砥石の回転方向を、研磨方向が前記胴部の幅方向の前記歯部から前記端面に向かうように設定することを特徴とする請求項2記載の環状帯鋸刃の製造方法。
【請求項4】
歯先に接合された硬質の切削チップを有する環状帯鋸刃を製造する環状帯鋸刃の製造装置であって、
帯状の胴部及び前記胴部の一方の側部に形成された複数の歯を含む歯部を有する環状帯鋸刃を循環移動させる循環移動部と、
前記循環移動部によって循環移動する前記環状帯鋸刃における前記胴部の内表面及び外表面を研磨する表面研磨部と、
前記循環移動部により循環移動する前記環状帯鋸刃における前記胴部の前記歯部とは反対側の端面を研磨する端面研磨部と、
を備えていることを特徴とする環状帯鋸刃の製造装置。
【請求項5】
前記表面研磨部は、前記内表面及び前記外表面それぞれに対応して配置された回転可能な一対の円形砥石を有し、
前記一対の円形砥石それぞれは、循環移動する前記環状帯鋸刃における前記内表面及び前記外表面を、回転しながら当接して研磨することを特徴とする請求項4記載の環状帯鋸刃の製造装置。
【請求項6】
前記端面研磨部は、前記表面研磨部に対し循環移動の前方及び後方の一方側に配置されており、
前記一対の円形砥石それぞれの回転軸線は、前記胴部の幅方向中央において前記一方側に傾斜して設定され、
前記一対の円形砥石それぞれの回転方向は、研磨方向が前記胴部の幅方向の前記歯部から前記端面に向かう方向とされていることを特徴とする請求項5記載の環状帯鋸刃の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状帯鋸刃の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、歯先に硬質の切削チップを備えた帯鋸刃における切削チップの研磨方法が記載されている。
特許文献2に、帯鋸刃の両端を抵抗溶接の一種であるフラッシュバット溶接で接合してエンドレス状(環状)の帯鋸刃を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−035383号公報
【特許文献2】特開2013−010170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯先に硬質の切削チップを備えた帯鋸刃を用いて環状の帯鋸刃を製造する場合、一般に、次の方法を用いる。
まず、環状化する前の所定長さの帯鋸刃の歯先に、溶接等によって切削チップを接合する。次いで、接合した切削チップをダイヤモンド砥石で研磨し所定の歯先形状に成形する。その後、帯鋸刃の両端を、抵抗溶接により接合して環状帯鋸刃にする。
【0005】
この方法において、切削チップの研磨作業は、帯鋸刃を、歯先と、胴部における歯先とは反対側の端部と、を位置決めの基準にし、胴部の一方の面を定盤に押し当て、バイスによりクランプした状態で行う。
しかしながら、胴部には、帯鋸刃の製造時の熱処理による歪みが帯幅方向及び厚さ方向に生じている場合がある。この歪みの程度によっては、研磨作業で形成する複数の歯先の形状の精度が低下する、或いは、複数の歯先間での形状のばらつきが大きくなる、という問題が生じる。
このような環状帯鋸刃を加工に用いた場合には、切断面の品質低下が懸念される。
【0006】
また、環状化による接合部は溶接に伴う盛り上がり生じ易く、盛り上がりが生じた場合にはグラインダなどで削って平坦化することも行われている。しかしながら、削り量のばらつきなどによって胴部の表面にわずかな凹凸が残り易く、接合部に凹凸が残存した帯鋸刃を切断加工に用いたときには、製品の切断面に周回ツールマークが生じて切断面の品質低下が懸念される。
これらから、良好な切断面品質が得られる環状帯鋸刃が求められている。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、良好な切断面品質が得られる環状帯鋸刃の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は次の手順、構成を有する。
1) 帯状の胴部と、前記胴部の一方の側部に形成された複数の歯を含む歯部と、を有する帯鋸刃の両端を溶接して環状化する環状化工程と、
前記環状化した前記帯鋸刃における、内表面,外表面,及び前記歯部とは反対側の端面を研磨する研磨工程と、
前記研磨工程の後に、前記環状化した前記帯鋸刃を、前記内表面及び外表面のいずれか一方と前記端面とを基準にして位置出しし、前記複数の歯の歯先に切削チップを溶接により接合し、接合した前記切削チップを研磨して歯先形状を形成するチップ歯先形成工程と、
を含む環状帯鋸刃の製造方法である。
2) 前記研磨工程は、前記環状化した前記帯鋸刃を循環移動させながら、前記内表面及び前記外表面を、それぞれに対して円形砥石を回転させつつ付勢して研磨することを特徴とする1)に記載の環状帯鋸刃の製造方法である。
3) 前記端面を研磨する砥石を、前記円形砥石に対し、前記胴部が循環移動する方向における前方及び後方の一方側に配置し、
前記円形砥石の回転軸線を、前記胴部の幅方向中央において前記一方側に傾斜させ、
前記円形砥石の回転方向を、研磨方向が前記胴部の幅方向の前記歯部から前記端面に向かうように設定することを特徴とする2)に記載の環状帯鋸刃の製造方法である。
4) 歯先に接合された硬質の切削チップを有する環状帯鋸刃を製造する環状帯鋸刃の製造装置であって、
帯状の胴部及び前記胴部の一方の側部に形成された複数の歯を含む歯部を有する環状帯鋸刃を循環移動させる循環移動部と、
前記循環移動部によって循環移動する前記環状帯鋸刃における前記胴部の内表面及び外表面を研磨する表面研磨部と、
前記循環移動部により循環移動する前記環状帯鋸刃における前記胴部の前記歯部とは反対側の端面を研磨する端面研磨部と、
を備えていることを特徴とする環状帯鋸刃の製造装置である。
5) 前記表面研磨部は、前記内表面及び前記外表面それぞれに対応して配置された回転可能な一対の円形砥石を有し、
前記一対の円形砥石それぞれは、循環移動する前記環状帯鋸刃における前記内表面及び前記外表面を、回転しながら当接して研磨することを特徴とする4)に記載の環状帯鋸刃の製造装置である。
6) 前記端面研磨部は、前記表面研磨部に対し循環移動の前方及び後方の一方側に配置されており、
前記一対の円形砥石それぞれの回転軸線は、前記胴部の幅方向中央において前記一方側に傾斜して設定され、
前記一対の円形砥石それぞれの回転方向は、研磨方向が前記胴部の幅方向の前記歯部から前記端面に向かう方向とされていることを特徴とする5)に記載の環状帯鋸刃の製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な切断面品質が得られる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る環状帯鋸刃の製造方法の実施例における環状帯鋸刃1Eの製造手順を説明するための第1の図である。
図2図2は、環状帯鋸刃1Eの製造手順を説明するための第2の図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る環状帯鋸刃の製造装置の実施例である研磨装置81を示す平面図である。
図4図4は、図3におけるS4−S4位置での断面図である。
図5】研磨装置81における表面研磨部2及び端面研磨部3を説明するための図4におけるS5−S5位置での断面図に相当する図である。
図6】研磨工程の初期での環状帯鋸刃1Eにおける研磨領域FA1,FB1を説明するための図であり、(a)が内表面14A、(b)が外表面14Bである
図7】研磨工程実施後の環状帯鋸刃1Eにおける研磨領域FA2,FB2の状態例を説明するための図であり、(a)が内表面14A、(b)が外表面14Bである。
図8】研磨工程実施後に行う、チップ接合装置91による切削チップ15の歯部1bへの接合作業状態を説明するための機能構成図である。
図9】実施例及び比較例の切断面粗さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る環状の帯鋸刃の製造方法の実施例を、環状帯鋸刃1Eの製造手順により説明する。
この製造手順では、本発明の実施の形態に係る環状帯鋸刃の製造装置の実施例である図3に示される研磨装置81を用いている。
環状帯鋸刃1Eは、環状に形成され、一般的な帯鋸盤により連続的に循環移動可能な帯鋸刃である。
【0012】
環状化する前の帯鋸刃1は、帯状の胴部1aと、胴部1aの一方の側部に形成された複数の歯を含む歯部1bと、を有する(図1)。
まず、図1に示されるように、胴部1a及び歯部1bを有する帯状の帯鋸刃1を輪状にして一方の端部11と他方の端部12とを対向配置させる。
この状態で、胴部1aにおいて、輪の内側となる表面を内表面14Aとし、外側となる表面を外表面14Bとする。また、胴部1aにおける歯部1bとは反対側の端面を、端面13とする。
帯鋸刃1は、まだ切削チップ15(図8参照)が接合されていない。
【0013】
(環状化工程)
次に、図2に示されるように、端部11と端部12とを溶接により接合し環状化する。すなわち、帯鋸刃1を環状帯鋸刃1Eにする。溶接の方法は、帯鋸刃の環状化で用いる抵抗溶接などの周知の方法を用いる。
環状帯鋸刃1Eにおいて、端部11と端部12とを接合した部位を接合部1Eaと称する。接合部1Eaの近傍には、斜線を付して示されているように、溶接に伴う加熱の影響で歪みが生じ得る熱影響領域Fが形成されている。
【0014】
環状帯鋸刃1Eは、図3に示される、環状帯鋸刃の製造装置としての研磨装置81に掛け渡され、所定部分の研磨が行われる。
所定部分は、胴部1aの端面13、並びに、内表面14A及び外表面14Bである。
【0015】
図3図5を参照して、研磨装置81を説明する。
研磨装置81は、駆動輪6及び従動輪7を有する。駆動輪6及び従動輪7には、研磨する環状帯鋸刃1Eが作業者によって掛け渡される
駆動輪6は、モータ61を有する。モータ61は、図3における矢印DR61に回転して、掛け渡された環状帯鋸刃1Eを図3の時計回り方向(矢印DR1)に循環移動させる。
従動輪7は、バックテンション付与部71を有する。バックテンション付与部71は、図3の破線矢印DR71方向への回転駆動力を出力する。これにより、循環移動する環状帯鋸刃1Eに所定のバックテンションが付与される。
このように、駆動輪6と従動輪7とを含み、環状帯鋸刃1Eを循環移動させる循環移動部67が構成される。
【0016】
研磨装置81は、環状帯鋸刃1Eの循環移動経路において、上流側から、上流ガイド部5,表面研磨部2,下流ガイド部4,及び端面研磨部3を有する。
上流ガイド部5及び下流ガイド部4は、同じ構造を有し、それぞれ表面研磨部2の上流側及び下流側の近傍に配置されている。
上流ガイド部5は、循環移動する環状帯鋸刃1Eを厚さ方向に挟むように、その内表面14Aをガイドする内ガイド部5A及び外表面14Bをガイドする外ガイド部5Bを有する。
下流ガイド部4は、循環移動する環状帯鋸刃1Eを厚さ方向に挟むように、その内表面14Aをガイドする内ガイド部4A及び外表面14Bをガイドする外ガイド部4Bを有する。
これらにより、環状帯鋸刃1Eが循環移動で表面研磨部2を通過する際の厚さ方向の振れは、実質的に無視できる程度に抑制される。
【0017】
表面研磨部2は、環状帯鋸刃1Eの内表面14Aに対応して配置され内表面14Aを研磨するための内研磨部2Aと、外表面14Bに対応して配置され外表面14Bを研磨するための外研磨部2Bと、を有する。
内研磨部2Aは、砥石盤21A,シャフト23A,及びモータ22Aを有する。
外研磨部2Bは、砥石盤21B,シャフト23B,及びモータ22Bを有する。
すなわち、表面研磨部2は、一対の砥石盤21A,21Bを有する。
【0018】
砥石盤21Aは、皿状のベース21A1とその周縁に取り付けられた円形砥石21A2とを有する。円形砥石21A2は、例えばリング状を呈する。
砥石盤21Aの回転軸線CL2Aは、環状帯鋸刃1Eの内表面14Aに対し、循環移動方向の前方側(下流側)に傾斜角度θAだけ傾斜し、幅方向に対しては直交している(図5参照)。
【0019】
砥石盤21Aは、回転軸線CL2Aに沿って延びるシャフト23Aの先端に、回転軸線CL2Aに直交する姿勢で固定されている。シャフト23Aは、押圧部24Aを介してモータ22Aの出力軸に接続され回転可能となっている。押圧部24Aは、圧縮ばねなどの作用により、シャフト23Aを、砥石盤21Aが内表面14Aを付勢力fAで押し付けて当接するように加圧する。
モータ22Aの駆動によって、砥石盤21Aは円形砥石21A2が内表面14Aに接触しながら回転する。モータ22Aの回転方向は、砥石盤21Aの循環移動方向の前方側が、下向き(図4における反時計まわり方向:矢印DR2参照)、すなわち歯部1bから端面13へ向かう方向とされる。この方向が研磨方向となる。
これにより、円形砥石21A2は、環状帯鋸刃1Eの循環移動方向の前方側の先端部分が、内表面14Aを所定の付勢力fAで押し付けながら研磨する。
【0020】
砥石盤21Bは、皿状のベース21B1とその周縁に取り付けられた円形砥石21B2とを有する。円形砥石21B2は、例えばリング状を呈する。
砥石盤21Bの回転軸線CL2Bは、環状帯鋸刃1Eの外表面14Bに対し、帯方向である移動方向の前方(下流側)に傾斜角度θBだけ傾斜し幅方向には直交している(図5参照)。
【0021】
砥石盤21Bは、回転軸線CL2Bに沿って延びるシャフト23Bの先端に、回転軸線CL2Bに直交する姿勢で固定されている。シャフト23Bは、押圧部24Bを介してモータ22Bの出力軸に接続され回転可能となっている。押圧部24Bは、シャフト23Bを、砥石盤21Bが外表面14Bを付勢力fBで押し付けて当接するように加圧する。
モータ22Bの駆動によって、砥石盤21Bは円形砥石21B2が外表面14Bに接触しながら回転する。モータ22Bの回転方向は、砥石盤21Bを、循環移動方向の前方側が、下向き(砥石盤21Aと同期した向き)、すなわち歯部1bから端面13へ向かう方向とされる。この方向が研磨方向となる。
これにより、円形砥石21B2は、環状帯鋸刃1Eの循環移動方向の前方側の先端部分が、外表面14Bを所定の付勢力fBで押し付けながら研磨する。
【0022】
回転軸線CL2A及び回転軸線CL2Bは、図5に示されるように、環状帯鋸刃1Eの幅方向(図5の上下方向)において同じ位置にあって、環状帯鋸刃1Eの胴部1aと歯部1bとを加えた全幅Waの中央位置に設定される。
【0023】
端面研磨部3は、表面研磨部2に対し、環状帯鋸刃1Eの循環移動方向の前方及び後方の一方側に配置される。
この例では、端面研磨部3は、下流ガイド部4の下流側(前方側)において、環状帯鋸刃1Eの歯部1bとは反対側の端面13と対向するように配置されている。
端面研磨部3は、カップ状のカップ砥石31とモータ32とを有する。
モータ32は、カップ砥石31を、回転軸線CL3まわりに任意の方向で回転させる。回転軸線CL3は、環状帯鋸刃1Eの端面13に対し直交方向に延びている。
【0024】
上述の構成を有する研磨装置81は、表面研磨部2によって環状帯鋸刃1Eの内表面14A及び外表面14Bを研磨し、端面研磨部3によって環状帯鋸刃1Eの端面13を研磨する。
それぞれの研磨について具体的に説明する。
【0025】
作業者は、帯鋸刃1の両端を接合して環状にした環状帯鋸刃1Eを、駆動輪6と従動輪7とに掛け渡す。その際に、環状帯鋸刃1Eを、上流ガイド部5の内ガイド部5Aと外ガイド部5Bとの間と、表面研磨部2の砥石盤21Aと砥石盤21Bとの間と、下流ガイド部4の内ガイド部4Aと外ガイド部4Bとの間に通す。
研磨装置81は、環状帯鋸刃1Eを駆動輪6及び従動輪7に掛け渡した状態で、環状帯鋸刃1Eの端面13が、カップ砥石31の環状の先端面31aに接触するようになっている。
【0026】
作業者は、モータ61を駆動して駆動輪6を回転させ、環状帯鋸刃1Eを図3の矢印DR1方向に循環移動させる。モータ61の駆動と共にバックテンション付与部71も動作し、環状帯鋸刃1Eに所定のバックテンションが付与される。これにより、環状帯鋸刃1Eは、適度に張った状態で安定的に循環移動する。
【0027】
作業者は、モータ22A,22B,32を駆動させる。
これにより、円形砥石21A2,21B2及びカップ砥石31が回転し、それぞれ内表面14A,外表面14B,及び端面13の研磨が実行される。
既述のように、円形砥石21A2,21B2の回転方向は、図4において進行方向先端側が下向き(矢印DR2)となるように設定されている。これにより、環状帯鋸刃1Eには表面研磨部2において下向きの力が付与される。そのため、表面研磨部2の下流側にある端面研磨部3において、端面13は、カップ砥石31を安定的に付勢する。従って、端面13は、カップ砥石31によって確実かつ良好に研磨される。
【0028】
また、カップ砥石31は回転しているので、カップ砥石31の先端面31aは、満遍なく端面13の研磨に利用される。これにより、カップ砥石31の摩耗は、周方向で偏ることなく平均化する。そのため、端面13の研磨量も一周当たりで均一化し、端面13は良好に研磨される。
【0029】
環状帯鋸刃1Eの内表面14A及び外表面14Bにおける、表面研磨部2によって研磨された領域としての研磨領域は、研磨時間と共に変化し、幅方向に拡張する。この変化について図6(a),(b)及び図7(a),(b)を参照して説明する。
また、環状のために接合された接合部1Ea近傍の熱影響領域Fに盛り上がりが生じていた場合も、表面研磨部2によって研磨され、盛り上がりは除去され平坦化される。
【0030】
図6(a),(b)は、内表面14A及び外表面14Bそれぞれにおける研磨開始初期の研磨領域FA1,FA2を斜線範囲で示している。すなわち、研磨領域FA1,FA2は、研磨開始初期において、砥石盤21A,21Bの下流側先端部分のみがそれぞれ当接して研磨する、端面13から歯部1bに向かって全幅Waの半分(Wa/2)の高さ位置P1を中心に形成される。
環状帯鋸刃1Eの循環移動と円形砥石21A2,21B2の付勢当接とによって研磨が進行するに従い、研磨領域FA1,FB1は、歯部1b側とその反対側とにほぼ同じペースで拡張する。
【0031】
研磨深さ(研磨量)は、胴部1aの幅方向中央部位において、0.02〜0.03mmとする。例えば、胴部1aの厚さが、研磨前で1.60mm〜1.61mmの場合、幅方向中央部の厚さを1.58mm程度とする。
幅方向中央部の研磨量が0.02〜0.03mmとなった場合に、内表面14A及び外表面14Bのほぼ全面が少なからず研磨されるように、予め次の項目を設定する。詳しくは、傾斜角度θA,θB、円形砥石21A2,21B2の直径DA,DB(図3)及び回転速度VA,VB、などを、次に例示されるように予め調整設定しておく。
・直径DA:150mm、直径DB:150mm
・回転速度VA:1500回/分、回転速度VB:1500回/分
・傾斜角度θA:0.8°程度(0.5°〜1.0°)、傾斜角度θB:0.8°程度(0.5°〜1.0°)
【0032】
環状帯鋸刃1Eは、全幅Waに対して厚さが比較的小さく、全幅Waに対する厚さは、一般に3〜5%程度である。
そのため、研磨が進行し、円形砥石21A2,21B2が環状帯鋸刃1Eに対し厚さ方向に食い込むに従って、歯部1b側及びその反対側の縁部が一方の円形砥石21A2,21B2に、図5に矢印DR3で示されるように湾曲する場合がある。
この場合の研磨終了時点の研磨領域FA2,FB2は、それぞれ図7(a),(b)に示される。ここでは、環状帯鋸刃1Eが、外表面14Bを研磨する円形砥石21B2側に湾曲して研磨された場合を説明する。
すなわち、湾曲の曲率中心側の円形砥石21B2により、外表面14Bは、歯部1bを含みほぼ全面が研磨される。
【0033】
一方、湾曲の曲率中心とは反対側は、幅方向の歯部1b側領域と端面13側の両縁部領域が円形砥石21A2に接触せず、わずかな研磨残し領域である非研磨領域FA3,FA4となる。
もちろん、湾曲が生じない場合もあり、この場合には、内表面14A及び外表面14Bの両面とも、全面がそれぞれ研磨領域FA2及び研磨領域FB2となる。
【0034】
(チップ歯先形成工程)
研磨装置81によって研磨された環状帯鋸刃1Eに対し、チップ接合装置91によって切削チップ15を接合する。図8は、チップ接合装置91を示す機能構成図である。切削チップ15は、超硬合金などの硬質材料で形成されている。
【0035】
チップ接合装置91は、抵抗溶接装置であって、台座92と胴部電極93とチップ電極94と溶接電源95とアクチュエータ96,97とを有する。
台座92は、環状帯鋸刃1Eを、胴部受け部921及び端面受け部922で位置出しして支持する。
具体的には、作業者は、胴部受け部921には、環状帯鋸刃1Eの胴部1aの内表面14Aの研磨領域FA2、又は外表面14Bにおける研磨領域FB2を付勢当接させる。端面受け部922には、環状帯鋸刃1Eの胴部1aの端面13を付勢当接させる。
【0036】
胴部電極93は、アクチュエータ96によって環状帯鋸刃1Eの胴部1aの内表面14Aに付勢当接し、胴部1aを台座92の胴部受け部921に押し付ける(矢印DR4)。
チップ電極94は、アクチュエータ97によって環状帯鋸刃1Eの歯部1bの先端部に載せられた切削チップ15に付勢当接し、切削チップ15を歯部1bに押し付ける。
【0037】
胴部電極93及びチップ電極94は、溶接電源95に接続されている。
溶接電源は、胴部電極93とチップ電極94との間に所定値の溶接電流を所定時間通電する。すると、チップ電極94と歯部1bの先端との接触部は、抵抗熱によって溶融し、通電停止後に冷却して固化する。これにより、チップ電極94は歯部1bに接合する。
その後、胴部電極93及びチップ電極94を離隔させ、接合した切削チップ15を、ダイヤモンド砥石によって研磨し所定の刃先形状に形成する。
【0038】
この接合作業及び接合された切削チップ15の歯先形状の形成作業において、環状帯鋸刃1Eは、研磨装置81により環状の全周に亘って研磨された端面13及び外表面14Bが位置決めの基準部位とされている。
従って、位置決めされた歯部1bの複数の歯先の位置は、高精度に安定して決められているので、研磨作業で形成された切削チップ15の歯先形状は高精度に形成される。また、環状帯鋸刃1Eにおける全歯先の形状のばらつきは小さく抑制される。
【0039】
また、研磨装置81によって、環状帯鋸刃1Eの胴部1aの内表面14A及び外表面14Bは、一方の全面及び他方のほぼ全面が研磨されている。これにより、環状の全周にわたり、表面の凹凸は、実質的に無視できる程度に抑制された状態となっている。
そのため、研磨装置81を用いて製造した環状帯鋸刃1Eを切断加工に用いた場合に、製品の切断面に周回ツールマークは生じず、切断面の品質低下の虞はない。
【0040】
図9は、上述の実施例の方法で製造した環状帯鋸刃1Eと、比較例として従来方法で製造した環状帯鋸刃1EPと、を用い、一般的な帯鋸盤によって下記2種の材料を切断したときの切断面粗さを示したグラフである。切断面粗さは、Ra(算術平均粗さ)及びRz(最大高さ粗さ)で評価している。
比較例とした従来方法は、切削チップの接合、切削チップの歯先形成、環状化の接合及びその接合部の盛り上がりのグラインダによる除去、をこの順で行うものである。
【0041】
切断した材料は次のA材,B材の2種である。
・A材:S45C(機械構造用炭素鋼) 丸棒材 直径50mm
・B材:SUJ2(高炭素クロム軸受鋼) 丸棒材 直径70mm
切断加工条件は、A材、B材共通であって次の通りである。
・鋸速:200m/min
・切断時間:4秒
切断面粗さは、ミツトヨ製の表面粗さ測定器「SJ−210」を用い、切断面の切断開始近傍位置、切断途中位置(丸棒の中心)、切断終了近傍位置の3点でのRa及びRzそれぞれの平均値を示してある。
【0042】
図9に示されるように、Raに関しては、S45C,SUJ2において、従来それぞれ3.53(μm),3.77(μm)であったものが、実施例では、それぞれ0.64(μm),0.62(μm)と減少している。
Rzに関しては、S45C,SUJ2において、従来それぞれ19.82(μm),19.69(μm)であったものが、実施例では、それぞれ3.53(μm),3.19(μm)と減少している。
また、切断面の目視観察において、比較例では、わずかにツールマークが確認された一方、実施例では、ツールマークは確認できなかった。
すなわち、実施例のエンドレス状の帯鋸刃の製造方法により、切断面の表面粗さを従来よりも低減すると共に、ツールマークの発生を防止して、良好な切断面品質が得られることが明らかである。
【0043】
研磨装置81の表面研磨部2は、環状帯鋸刃1Eの内表面14A及び外表面14Bを、それぞれ円形砥石21A2及び円形砥石21B2で研磨する。
研磨装置81は、研磨動作において、円形砥石21A2及び円形砥石21B2を、内表面14A及び外表面14Bそれぞれに対し非直交に設定された回転軸線CL2A及び回転軸線CL2Bまわりに回転させる。回転方向は、研磨方向が歯部1bから端面13に向かう方向となるように設定する。
これにより、研磨動作の初期には、円形砥石21A2及び円形砥石21B2の周縁のわずかな部位が、それぞれ内表面14A及び外表面14Bを付勢当接する。そのため、環状帯鋸刃1Eの幅方向の一部の領域が研磨領域FA1及びFB1として細帯状に研磨され、研磨動作が進むにつれて、その研磨領域FA1及び研磨領域FB1の幅が広がっていく。そのため、作業者は、研磨の進み度合いを視覚的に把握することができる。
また、回転軸線CL2A及び回転軸線CL2Bを、環状帯鋸刃1Eの幅方向の概ね中央位置に設定することで、研磨領域FA1及び研磨領域FB1は、歯部1b側と端面13側へと偏ることなく均等に広がっていく。そのため、全面を研磨するために研磨当初の研磨領域FA1及び研磨領域FB1を過度に研磨してしまう可能性が小さい。
また、回転方向の上記設定により、端面研磨部3のカップ砥石31に端面13が付勢当接するので、端面13を安定して良好に研磨できる。
【0044】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0045】
帯鋸刃1を環状化する前に、次のように切削チップ15を接合して歯先形成を実施し、その後、環状化してもよい。
この場合の手順例は次の通りである。
まず、環状化する前の、帯状の帯鋸刃1の状態で、その胴部1aの両表面と歯部1bとは反対側の端面13を研磨する(第1回目の研磨)。
次いで、研磨した両表面の一方と端面13とを基準にして切削チップ15を溶接接合すると共に歯先形状を形成する。
次いで、切削チップ15が接合されている帯鋸刃1の一方の端部11と他方の端部12とを溶接接合して環状帯鋸刃1Eとする。
その後、環状の胴部の両表面及び歯部とは反対側の端面13を研磨する(第2回目の研磨)。
【0046】
この場合、2回の研磨工程を要するが、切削チップ15の歯部1bへの接合及び形状形成の前に、第1回目として胴部1aの両表面及び端面13の研磨を行い、環状の後に第2回目として接合部1Eaの凹凸を平坦化する研磨を行っている。これにより、切削チップ15の歯先形状は高精度にばらつきなく形成され、接合部1Eaの凹凸も実質的にない状態となるので、良好な切断面品質が得られる。
【0047】
円形砥石21A2,21B2を環状帯鋸刃1Eに付勢するための押圧部24A,24Bの構造は限定されず、周知の付勢構造を適用できる。
研磨装置81は、モータ制御部を備え、モータ制御部がモータ22Aとモータ22Bとの回転を、方向が逆で速度が同期するように制御してもよい。
モータ22A,22Bを一つのモータを駆動源とし、力の伝達経路において二系統に分離してもよい。
【0048】
砥石盤21A,21Bが備える円形砥石21A2,21B2は、外形が円形であればリング状に限定されるものではない。例えば、円盤状の平形砥石であってもよい。
【0049】
砥石盤21A,21Bの回転軸線CL2A,CL2Bを、環状帯鋸刃1Eの幅方向の必ずしも中央に位置させることなく、歯部1b側、又は端面13側に偏った位置に設定してもよい。
実施例で説明したように、回転軸線CL2A,CL2Bを、幅方向の中央において循環移動方向に傾斜させることで、研磨の進行程度を、研磨領域FA1,FA2の幅方向への拡張程度で把握できる。
【符号の説明】
【0050】
1 帯鋸刃
1a 胴部、 1b 歯部、 1E 環状帯鋸刃、 1Ea 接合部
11,12 端部、 13 端面、 14A 内表面
14B 外表面、 15 切削チップ
2 表面研磨部
2A 内研磨部、 2B 外研磨部
21A,21B 砥石盤、 21A1,21B1 ベース
21A2,21B2 円形砥石、 22A,22B モータ
23A,23B シャフト、 24A,24B 押圧部
3 端面研磨部
31 カップ砥石、 31a 先端面、 32 モータ
4 下流ガイド部
4A 内ガイド部、 4B 外ガイド部
5 上流ガイド部
5A 内ガイド部、 5B 外ガイド部
6 駆動輪
61 モータ、 67 循環移動部
7 従動輪
71 バックテンション付与部
81 研磨装置
91 チップ接合装置
92 台座、 93 胴部電極、 94 チップ電極
95 溶接電源、 96,97 アクチュエータ
CL2A,CL2B,CL3 回転軸線
F 熱影響領域
FA1,FA2,FB1,FB2 研磨領域
FA3,FA4 非研磨領域
fA,fB 付勢力
P1 高さ位置
Wa 全幅
θA,θB 傾斜角度
【要約】
【課題】良好な切断面品質が得られる環状帯鋸刃の製造方法を提供する。
【解決手段】この製造方法は、環状化工程と研磨工程とチップ歯先形成工程とを含む。環状化工程は、帯状の胴部(1a)と胴部(1a)の一方の側部に形成された複数の歯を含む歯部(1b)とを有する帯鋸刃(1)の両端を溶接して環状化する。研磨工程は、環状化した環状帯鋸刃(1E)における内表面(14A),外表面(14B),及び歯部(1b)とは反対側の端面(13)を研磨する。チップ歯先形成工程は、研磨工程の後に、環状化した環状帯鋸刃(1E)を、内表面(14A)及び外表面(14B)の一方と端面(13)とを基準にして位置出しし複数の歯の歯先に切削チップ(15)を溶接により接合し、接合した切削チップ(15)を研磨して歯先形状を形成する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9