(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、通常、振動発生器を取り付けたタッチ操作部を電子機器の筐体に対してゴムを用いてフローティング支持し、これによりタッチ操作部で振動を発生させている。ゴムは、例えば一面がタッチ操作部の下面に固着され、他面が筐体の上面に固着される。
【0005】
ところが、このようにゴムを用いたフローティング構造でユーザに十分な振動を与えるためには、ゴムの板厚を例えば1mm程度確保する必要があり、薄型化の障壁となっている。一方、ゴムの板厚を薄くし過ぎると、ユーザが感知できる振動を発生させることが困難になる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、装置の薄型化を図りつつ、タッチ入力操作時にユーザが十分なクリック感を得ることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、電子機器であって、タッチ入力操作可能なタッチ操作部と、前記タッチ操作部が移動可能に載置される載置面が設けられた支持部を有する筐体と、前記タッチ操作部に対して振動を発生する振動発生器と、前記タッチ操作部及び前記支持部のうちの一方に対して固定される固定部と、前記タッチ操作部及び前記支持部のうちの他方に対して少なくとも前記載置面に平行する一方向に沿って移動可能な状態で係止される係止部とを有する連結部材と、を備える。
【0008】
このような構成によれば、タッチ操作部を筐体の支持部に対して連結部材を用いたフローティング構造で支持する。このため、従来技術のようにタッチ操作部と支持部との間にフローティング支持用のゴムの厚み分の隙間を設ける必要がなく、タッチ操作部及び振動発生器を搭載する筐体の薄型化を図ることができる。しかも連結部材を用いたフローティング構造では、ゴムを用いたフローティング構造のように振動発生器で発生した振動がゴムによって大きく減衰されることがない。このため、振動発生器で発生した振動は、タッチ操作部の下面と支持部の載置面との間の摩擦抵抗で減衰される以外、ほとんど減衰されずにタッチ操作部に付与される。その結果、ユーザはタッチ入力操作時に強い振動による十分なクリック感を得ることができる。
【0009】
前記連結部材は、棒状部と、前記棒状部の一端部に設けられた前記固定部と、前記棒状部の他端部に設けられたフランジ状の前記係止部と、で構成され、前記係止部が係止される前記タッチ操作部及び前記支持部のうちの他方は、少なくとも前記一方向に移動可能な状態で前記棒状部が挿通される孔部を有すると共に、該孔部の開口縁部に前記係止部が係止される構成としてもよい。そうすると、連結部材は取り付けや取り外しが容易でありながらもタッチ操作部と支持部との間を確実に連結できる。
【0010】
前記タッチ操作部を前記支持部の載置面に押し付ける方向に付勢する弾性部材を、前記係止部と前記孔部の開口縁部との間に介在させた構成としてもよい。そうすると、弾性部材がタッチ操作部を筐体側に常時付勢するため、タッチ操作部の上面である入力面と、その周囲を囲む筐体の上面との間の面合わせを容易に行うことができる。また、入力面は筐体の上面よりも低いか又は面一となる位置に確実に保持することができるため、当該電子機器の外観品質が向上する。
【0011】
前記連結部材及び前記弾性部材は、導電性材料で形成された構成としてもよい。そうすると、タッチ操作部と筐体との間が、導電性材料で形成された連結部材及び弾性部材を介して電気的に接続される。その結果、連結部材及び弾性部材がタッチ操作装置のESDやEMI対策のグランドとして機能する。
【0012】
前記固定部が固定される前記タッチ操作部及び前記支持部のうちの一方は、前記固定部がスナップ係合するスナップ係合部を有する構成としてもよい。そうすると、固定部の取り付けが一層容易になる。
【0013】
前記連結部材は、複数設けられた構成としてもよい。そうすると、タッチ操作部を支持部の載置面上でより安定して移動可能に支持できる。
【0014】
前記タッチ操作部と前記支持部との間を、前記載置面に平行し且つ前記一方向と直交する他方向に対して移動不能な状態に位置決めする位置決め部を備える構成としてもよい。そうすると、振動発生器で発生した振動をより確実にタッチ操作部に伝達することができる。
【0015】
前記振動発生器は、形状記憶合金を用いたアクチュエータで構成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、装置の薄型化を図りつつ、タッチ入力操作時にユーザが十分なクリック感を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10の斜視図である。電子機器10は、本体筐体12とディスプレイ筐体14とをヒンジ16で回動可能に連結したノート型PCである。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示するが、電子機器10はタブレット型PCやスマートフォン等であってもよい。
【0020】
本体筐体(筐体)12は、樹脂や金属で形成された箱状の筐体であり、内部に図示しない基板、演算処理装置、ハードディスク装置、メモリ等の各種電子部品を収納している。本体筐体12の上面12aには、キーボード装置18及びタッチ操作装置20が設けられている。キーボード装置18の略中央にはポインティングスティック22が設けられている。キーボード装置18とタッチ操作装置20との間には、3個の押しボタン24,25,26が設けられている。
【0021】
タッチ操作装置20及びポインティングスティック22はディスプレイ14aに表示されるカーソル(マウスポインタ)を操作するためのものであり、マウスの代わりとして操作可能な入力操作部である。タッチ操作装置20は、指先等でなぞるなぞり操作と、指先等でクリックするクリック操作(押圧操作)とが可能なクリックパッドとして構成されている。押しボタン24〜26は、タッチ操作装置20又はポインティングスティック22によるカーソル操作と連係して機能する。押しボタン24〜26は、それぞれ一般的なマウスでの左ボタン、中央ボタン、右ボタンに対応するクリック操作ボタンである。
【0022】
ディスプレイ筐体14は、樹脂や金属で形成された箱状の筐体の前面に液晶ディスプレイ等のディスプレイ14aを有する。ディスプレイ筐体14は、ヒンジ16を通過した図示しない配線によって本体筐体12と電気的に接続されている。
【0023】
以下では、タッチ操作装置20について
図1に示す電子機器10に搭載された状態での使用形態を基準とし、手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。
【0024】
図2は、タッチ操作装置20の構成を模式的に示す底面図である。
図3は、
図2中のIII−III線に沿う構成を模式的に示す断面図である。
図2及び
図3は、タッチ操作装置20と共に、このタッチ操作装置20の本体筐体12への取付板となる支持プレート(支持部)28も合わせて図示している。
【0025】
図2及び
図3に示すように、タッチ操作装置20は、タッチ操作部30と、振動発生器31とを備える。タッチ操作装置20は、本体筐体12と固定される支持プレート28の上面上で移動可能に支持される。支持プレート28を取り付けたタッチ操作装置20は、本体筐体12の上面12aに形成された収納凹部12bに収納され、タッチ操作部30が上面12aに露出する(
図1も参照)。
【0026】
タッチ操作部30は、例えば下から上に向かって順に、ベースプレート32と、基板34と、パッドプレート36とを積層した3層構造である。
【0027】
ベースプレート32は、タッチ操作装置20の底板となるプレート状部材である。ベースプレート32は、アルミニウムやステンレス等の金属薄板で形成され、各所に開口や切り起こしが形成されている。
【0028】
基板34は、ベースプレート32の上面に積層され、パッドプレート36の入力面36aに対するなぞり操作やクリック操作等のタッチ入力操作を検出するセンサである。基板34は、ベースプレート32の上面に接着剤や両面テープ等によって固着される。基板34は、ベースプレート32の開口32aと、支持プレート28の開口28aとを通過した配線38によって本体筐体12内の基板に接続される。
【0029】
パッドプレート36は、基板34の上面に積層され、その上面がタッチ入力操作を受け付ける入力面36aとなる。パッドプレート36は、ガラス板や樹脂板で形成されている。パッドプレート36は、基板34の上面に接着剤や両面テープ等によって固着される。
【0030】
振動発生器31は、タッチ操作部30に対してタッチ入力操作が行われた場合に振動を発生してタッチ操作部30を振動させ、これによりユーザにクリック感を付与するものである。本実施形態では、振動発生器31は、タッチ操作部30に対するクリック操作に応じて振動を発生し、なぞり操作に対しては振動を発生しないように制御されるが、なぞり操作時に振動を発生させるように制御されてもよい。本実施形態の振動発生器31は、形状記憶合金40を用いたアクチュエータ(SIA)である。
【0031】
図2及び
図3に示すように、振動発生器31は、形状記憶合金40と、ベース部41と、駆動部42とを有する。振動発生器31は、タッチ操作部30のベースプレート32の下面32bに対して固定ブラケット44を介して固定され、支持プレート28の開口28a内で移動可能に配置されている。振動発生器31は、形状記憶合金40が縮むことでタッチ操作部30が素早く移動して6G程度の加速度を発生させ、これによりユーザに確実なクリック感を付与することができる。
【0032】
ベース部41は、左右方向に延在する波形状の曲面で形成された波形状面41aと、波形状面41aの左右端部からそれぞれ左右に突出したフランジ状の支持片41b,41bとを有したプレートである。各支持片41bの端部は、ねじ46を用いて固定ブラケット44と締結されている。
【0033】
駆動部42は、左右方向に延在する波形状の曲面で形成された波形状面42aを有する波形プレートである。駆動部42の波形状面42aは、ベース部41の波形状面41aと密着可能な形状を有し、その間に形状記憶合金40を挟持している。駆動部42は、その後面42bが支持プレート28の開口28aの後端面28bに対して当接している。後面42bの左右両端には、前側に凹んだ凹状部が形成されると共に、この凹状部に板ばね48の一端がそれぞれ配置されている。板ばね48は、クランク形状を有し、他端がベース部41の支持片41bに対してねじ50を用いて固定されている。各板ばね48は、駆動部42をベース部41に対して保持すると共に、駆動部42をベース部41側へと常時付勢し、波形状面42aを形状記憶合金40を挟んで波形状面41aに圧接している。
【0034】
形状記憶合金40は、所定温度以上に加熱すると元の形状に復帰する性質を有する合金であり、図示しない駆動電源に接続されている。形状記憶合金40は、糸状或いは帯状の薄板であり、ベース部41と駆動部42の波形状面41a,42a間に挟持されている。形状記憶合金40は、波形状面41a,42a間の外側に飛び出した左右端部がベース部41の支持片41bに対してそれぞれねじ52を用いて固定されている。形状記憶合金40は、駆動電源からの通電がない非通電時は、長手方向が波形状に収縮し、波形状面41a,42a間で各波形状面41a,42aに沿った波形状となる(
図2及び
図9A参照)。形状記憶合金40は、駆動電源からの通電時はジュール熱で所定温度以上となり、これにより左右方向に伸びて波の振幅が減少した元の形状に復帰して波形状面41a,42a間を押し開き、ベース部41と駆動部42との間を離間させる(
図9B参照)。
【0035】
振動発生器31の前側には、ブラケット54を介して板ばね56が取り付けられている。ブラケット54は、後側で上下方向に延びた縦板部54aと、縦板部54aの前側で前方に延びた横板部54bとを有するL字形状である。縦板部54aは、左右両端の後面から突出したボス54cの頂面が各支持片41bに当接し、ねじ46を用いてベース部41と締結されている。縦板部54aの中央部の後面54dは、ベース部41の前面41cと当接している。板ばね56は、平面視略V字形状を有し、横板部54bの下面に固定された取付板58の後端から下方に屈曲形成されている。板ばね56は、前側に突出したV字の左右先端部が、それぞれ支持プレート28の開口28aの前端面28cに当接している。本実施形態の場合、前端面28cは、開口28aの前縁部から下方に屈曲させた突出板28dの後面に形成している。
【0036】
このように振動発生器31は、ベース部41がタッチ操作部30と固定された状態で、ベース部41に対して接離方向に進退可能に保持された駆動部42の後面42bが支持プレート28の開口28aの後端面28bと当接している。さらに振動発生器31は、ベース部41に対して固定された板ばね56が支持プレート28の開口28aの前端面28cと当接している。
【0037】
図2及び
図3に示すように、支持プレート28は、タッチ操作装置20を移動可能に支持した状態で本体筐体12に取り付けるブラケットとして機能する。支持プレート28は、アルミニウムやステンレス等の金属薄板で形成され、各所に開口や切り起こしが形成されている。上記した通り、支持プレート28は、後側中央に形成された開口28aに振動発生器31及び板ばね56が配設される。支持プレート28の後端部には、押しボタン24〜26が支持される。支持プレート28は、本体筐体12と一体成形されてもよい。
【0038】
タッチ操作装置20は、タッチ操作部30が支持プレート28の上面である載置面28e上で前後方向に移動可能な状態で載置され、同時に振動発生器31及び板ばね56が開口28aに対して前後方向に移動可能な状態で挿入される。当該電子機器10は、載置面28e上でのタッチ操作部30の移動を許容した状態でタッチ操作部30を支持プレート28に対して連結する連結部材60と、タッチ操作部30の載置面28e上での前後方向の移動をガイドする位置決め部62とを備える。
【0039】
図4Aは、
図2中のIVA−IVA線に沿う構成を模式的に示す断面図である。
図4Bは、
図2中のIVB−IVB線に沿う構成を模式的に示す断面図である。
図4Cは、
図4Bに示す状態からタッチ操作部30が載置面28e上で前側に移動した状態を示す断面図である。
図5は、連結部材60の取付構造を示す分解斜視図である。
図6は、ベースプレート32に形成されたスナップ係合部64及びその周辺部を上側から見た斜視図である。
【0040】
図2に示すように、連結部材60は複数箇所(例えば8か所)に設けられている。
図4A、
図4B及び
図5に示すように、連結部材60は、円筒状の棒状部60aと、棒状部60aの一端部に設けられた固定部60bと、棒状部60aの他端部に設けられた係止部60cとを有したフック状のクリップである。連結部材60は、例えばステンレスや鉄、炭素鋼等の金属或いは樹脂によって形成されるが、導電性材料で形成されていることが好ましく、後述する連結部材70,74についても同様である。
【0041】
棒状部60aは、上下方向に延在しており、支持プレート28に形成された孔部28fを下面28g側から挿通する。本実施形態の場合、孔部28fは、支持プレート28の下面28g側から載置面28e側に向かって内径が小さくなる段付き形状であり、前後方向に延びた長孔である。孔部28fは、下面28g側に開口した大径の第1長孔28faと、第1長孔28faと連通し、載置面28e側に開口した小径の第2長孔28fbとで形成されている。棒状部60aは、前後方向に移動可能な状態で第1長孔28faから第2長孔28fbまでを挿通している。
【0042】
固定部60bは、棒状部60aの上端部に設けられたフランジ状の円板であり、棒状部60aの上端に向かう方向で次第に拡径したテーパ形状の外周面を有する。固定部60bは、タッチ操作部30のベースプレート32に形成されたスナップ係合部64にスナップ係合する。
【0043】
図5及び
図6に示すように、ベースプレート32には、矩形の開口32cが形成されている。スナップ係合部64は、開口32cを形成する前端面と後端面との間に架け渡された左右一対のブリッジ64a,64aを用いて形成されている。スナップ係合部64は、左右のブリッジ64a及びこのブリッジ64a,64a間の隙間に形成された挿入孔64b及び係合孔64cを有する。挿入孔64bは、連結部材60の固定部60bを挿通可能な内径を有する。係合孔64cは、挿入孔64bの前側に一部が挿入孔64bと重複した状態で形成されており、連結部材60の棒状部60aを挿入可能且つ固定部60bよりも小さな内径を有する。
【0044】
スナップ係合部64に連結部材60を係合させる際は、連結部材60の固定部60bを挿入孔64bを通過させる(
図7A参照)。続いて連結部材60を前側に移動させることにより、棒状部60aが左右のブリッジ64a,64a間を押し開きつつ、係合孔64cにスナップ係合し、固定部60bが係合孔64cの上面側に係止される(
図4A及び
図7B参照)。その結果、連結部材60がベースプレート32に対して移動不能な状態で固定される。本実施形態の場合、固定部60bは、外周面に形成されたテーパ面が係合孔64cの内周面に形成されたテーパ面と当接してブリッジ64aの板厚の範囲内に配置される。このため、固定部60bはベースプレート32の上方に突出せず、タッチ操作部30の薄型化を損害しない。
【0045】
係止部60cは、棒状部60aの下端部に設けられ、挿入孔64b、係合孔64c及び固定部60bよりも大径に形成されたフランジ状の円板である。係止部60cは、孔部28fの第1長孔28faの下面28fcに係止されると共に、第1長孔28fa内で前後方向に移動可能に配置される(
図4C参照)。本実施形態の場合、係止部60cと第1長孔28faの開口縁部(下面28fc)との間にはスプリングワッシャ(弾性部材)66が設けられる。スプリングワッシャ66は、棒状部60aに外挿されて係止部60cと第1長孔28faの下面との間に介在し、係止部60cを第1長孔28faの下面28fcから離間する方向(下方)に常時付勢する。これにより連結部材60は、固定部60bを介してベースプレート32(タッチ操作部30)を載置面28eに押し付ける方向に常時付勢する。スプリングワッシャ66は、例えばステンレスやスチール等の導電性材料で形成されている。
【0046】
図8は、
図2中のVIII−VIII線に沿う構成を模式的に示す断面図である。
【0047】
図8に示すように、位置決め部62は、ベースプレート32の下面32bから下方に突出するように形成された円筒形状の突出し加工部である。位置決め部62は、複数箇所(例えば2か所)に設けられている(
図2参照)。支持プレート28は、位置決め部62に対応する位置に位置決め部62が挿入される位置決め孔28hを有する。位置決め孔28hは、支持プレート28の載置面28e上でのタッチ操作部30の移動方向(前後方向)に対して延在し、この移動方向に直交する左右方向に対しては位置決め部62を移動不能に位置決めする長孔である。なお、本実施形態の場合、連結部材60と孔部28fとにより、タッチ操作部30の左右方向への移動がある程度規制されているため、位置決め部62は省略してもよい。
図2では、位置決め部62を左右一対設けた構成を例示しているが、位置決め部62は左右方向に対する位置決めを行うものであるため、例えば下面32bの左右方向中央で前後方向に複数並べて設けることが好ましい。
【0048】
本実施形態の場合、支持プレート28の下面28gには、位置決め孔28hを囲むように浅い凹状部28iが形成されている。凹状部28iには、位置決め孔28hよりも左右方向幅が狭く、位置決め部62の左右方向の移動をより確実に規制可能な位置決め孔68aが形成された位置決めプレート68が収納固定される(
図2も参照)。位置決め孔28hは、製造公差や組付精度を考慮し、位置決め部62よりもある程度左右方向幅が大きく形成される。そこで、本実施形態では、位置決めプレート68の位置決め孔68aを支持プレート28の位置決め孔28hに重ねることにより、位置決め部62の左右方向での位置決め精度をより高めている。位置決めプレート68は省略してもよい。
【0049】
次に、以上のように構成された電子機器10において、タッチ操作装置20にタッチ入力操作を行った際の動作を説明する。
【0050】
先ず、タッチ操作装置20の入力面36aに対してタッチ入力操作が行われていない状態では、形状記憶合金40は非通電状態にある。この状態では、振動発生器31は、
図2、
図9A及び
図10Aに示すように、形状記憶合金40が波形状に収縮し、形状記憶合金40を挟んでベース部41の波形状面41aと駆動部42の波形状面42aとが最も接近した初期位置にある。この初期位置では、板ばね56の付勢力により、ベース部41が支持プレート28(本体筐体12)に対して最も後側に移動した位置にある。このため、ベース部41と固定されたタッチ操作部30についても支持プレート28の載置面28e上で最も後側に移動した位置にある(
図3及び
図10A参照)。
【0051】
この状態から、ユーザが例えば指先で入力面36aに対してクリック操作を行うと、このクリック操作が基板34で検出され、形状記憶合金40に対する通電が行われる。その結果、所定温度以上となった形状記憶合金40が左右方向に延びた元の形状に復帰して波形状面41a,42a間を押し開き、ベース部41と駆動部42との間を離間させる(
図9B参照)。本実施形態の場合、駆動部42は、その後面42bが支持プレート28の開口28aの後端面28bに当接している。このため、駆動部42の前後方向位置は変化せず、相対的にベース部41が板ばね56の付勢力に抗して開口28a内を前方に移動する。この際、振動発生器31では、例えば入力面36aに対するクリック操作の操作時間や操作圧力等に基づき、形状記憶合金40に対して所定周波数で断続的な通電が行われる。その結果、ベース部41が、振動発生器31で発生する振動と、板ばね56及び板ばね48の弾性力とにより、開口28a内で前後方向に振動する。
【0052】
その際、ベース部41と固定されたタッチ操作部30は、連結部材60及び位置決め部62を介して支持プレート28(本体筐体12)に対して前後方向に移動可能に、且つ左右方向及び上下方向には移動不能に連結されている。このため、振動発生器31で発生した前後方向の振動により、タッチ操作部30が載置面28e上で前後方向に円滑に振動し、ユーザに所望のクリック感が付与される。
【0053】
この場合、当該電子機器10は、タッチ操作装置20のタッチ操作部30が少なくとも支持プレート28の載置面28e上で前後方向に沿って移動可能な状態で、タッチ操作部30と支持プレート28との間を連結する連結部材60を備える。そして、連結部材60は、タッチ操作部30に対して固定される固定部60bを一端部に有し、支持プレート28に対して前後方向に沿って移動可能な状態で係止される係止部60cを他端部に有する。
【0054】
このように当該電子機器10は、上記従来技術のようにタッチ操作部30を本体筐体12に対してゴムで固着したフローティング構造ではなく、連結部材60を用いたフローティング構造で支持している。このため、タッチ操作部30(ベースプレート32)と本体筐体12(支持プレート28)との間にゴムの厚み分の隙間を設ける必要がなく、タッチ操作装置20及びこれを搭載する本体筐体12の薄型化を図ることができる。また、ゴムを用いたフローティング構造では、振動発生器31で発生した振動がゴムによって大きく減衰される。これに対し、当該電子機器10の連結部材60を用いたフローティング構造では、振動発生器31で発生した振動の減衰要因がベースプレート32の下面32bと支持プレート28の載置面28eとの間の摩擦抵抗のみとなる。ここで、従来のゴムによる抵抗力は、例えば100gf以上になるが、当該電子機器10の摩擦力による抵抗力は、例えば10gf程度であることが実験的に確認されている。このため、振動発生器31で発生した振動がほとんど減衰せずにタッチ操作部30に付与されるため、ユーザは強い振動による十分なクリック感を得ることができる。
【0055】
連結部材60の取り付けは、一端部の固定部60bをタッチ操作部30に固定し、他端部の係止部60cを支持プレート28に係止させるだけでよい。このため、連結部材60は、従来のゴムを固着するタッチ操作部30の取付構造に比べて取り付けや取り外しが容易である。しかも連結部材60は、金属の機械加工やヘッダー加工ができるため、寸法精度を高め易いという利点もある。
【0056】
連結部材60は、固定部60bがベースプレート32に設けたスナップ係合部64に対してスナップ係合によって係合される。つまり、固定部60bのベースプレート32への固定は、固定部60bを挿入孔64bに挿入した後、前側にスライドさせるだけで係合孔64cにスナップ係合する。このため、連結部材60の取り付け及び取り外しが一層容易である。
【0057】
しかも固定部60bは、係合孔64cにスナップ係合されるため、その外径を係合孔64cの内径よりも十分に大きく形成しても係合孔64cに容易に係合させることができる。このため、固定部60bの外径を十分に確保して連結部材60の係合孔64cからの軸方向の確実な抜け止めを確保しつつ、固定部60bや係合孔64cを可及的に薄型化することができる。換言すれば、連結部材60の固定部60bを例えば挿入孔64bを持たない単独の係合孔64cに対して軸方向に嵌合させる構成とした場合、固定部60bが挿入孔64bを大きく押し開く必要があって取付荷重が増大する。また、この構成で固定部60bを挿入孔64bに嵌合させ易くするためには、固定部60b又は挿入孔64bの挿入時の対向面に面取り形状を形成しておく必要があり、薄型化も難しくなる。勿論、電子機器10の仕様等によっては、固定部60bをスナップ係合ではなく、単独の係合孔64cに対して軸方向に嵌合させる構成を採用してもよい。
【0058】
当該電子機器10では、連結部材60の係止部60cと支持プレート28の孔部28fの開口縁部(下面28fc)との間に、タッチ操作部30を支持プレート28の載置面28eに押し付ける方向に付勢する弾性部材であるスプリングワッシャ66を介在させている。これによりタッチ操作部30は、スプリングワッシャ66から連結部材60を介して本体筐体12内に沈む方向の付勢力を常時受けている。このため、タッチ操作部30の上面である入力面36aと、その周囲に設けられる本体筐体12の上面12aとの高さ位置の調整(面合わせ)が容易である。また、
図3に示すように、入力面36aは、本体筐体12の上面12aよりも低位置又は面一に容易に保持できるため、タッチ操作部30及びその周辺部での電子機器10の外観品質が向上する。
【0059】
当該電子機器10では、連結部材60及びスプリングワッシャ66が導電性材料で形成されている。このため、当該電子機器10では、金属製のベースプレート32と本体筐体12(支持プレート28)との間が、導電性材料で形成された連結部材60及びスプリングワッシャ66を介して電気的に接続される。その結果、連結部材60及びスプリングワッシャ66が、静電気放電・サージ(ESD:Electro−Static Discharge)や電磁波妨害(EMI:Electro Magnetic Interference)の対策のためのグランドとして機能する。つまりタッチ操作部30と本体筐体12とを連結する連結部材60をグランドとして兼用でき、部品点数を削減できる。但し、連結部材60及びスプリングワッシャ66でESDやEMI対策を考慮する必要がない場合、連結部材60は樹脂製でもよく、スプリングワッシャ66はゴムワッシャ等の他の弾性部材で代替してもよい。
【0060】
図11は、第1変形例に係る連結部材70を用いてタッチ操作部30と支持プレート28とを連結した構成を模式的に示す断面図である。
【0061】
図11に示すように、連結部材70は、スナップ係合部64を用いたスナップ係合によってベースプレート32に固定される固定部60b(
図4A参照)に代えて、ベースプレート32に対してねじ止めされる固定部70aを備える。連結部材70は、棒状部60aの上端部に外径を段部70bで一段小さくした雄ねじ構造の固定部70aを備えた段付きねじである。ベースプレート32には、固定部70aを螺合可能な雌ねじ孔72が形成されている。連結部材70は、固定部70aを孔部28fを通して雌ねじ孔72に螺合させ、段部70bをベースプレート32の下面32bに突き当てる。従って、このような連結部材70においても、載置面28e上でのタッチ操作部30の前後方向の移動を許容した状態でタッチ操作部30を支持プレート28に対して連結できる。
【0062】
図12は、第2変形例に係る連結部材74を用いてタッチ操作部30と支持プレート28とを連結した構成を模式的に示す断面図である。
【0063】
上記した連結部材60(70)は、固定部60b(70a)がタッチ操作部30のベースプレート32と固定され、係止部60cが本体筐体12側の支持プレート28に対して前後方向に移動可能に係止された構成である。これに対し、
図12に示す連結部材74は、連結部材60を上下反転させた取付構造である。つまり連結部材74は、固定部60bが本体筐体12側の支持プレート28に対して固定され、係止部60cがタッチ操作部30のベースプレート32に前後方向に移動可能に係止される構成である。そこで、この構成では、支持プレート28には、固定部60bをスナップ係合によって固定するスナップ係合部64が設けられ、ベースプレート32には、係止部60cが前後方向に移動可能に係止される孔部76が設けられている。孔部76は、
図4Aに示す孔部28fと略同様な構成であり、ベースプレート32の上面側に開口した大径の第1長孔76aと、第1長孔76aと連通し、下面32b側に開口した小径の第2長孔76bとで形成されている。従って、このような連結部材74においても、載置面28e上でのタッチ操作部30の前後方向の移動を許容した状態でタッチ操作部30を支持プレート28に対して連結できる。なお、連結部材74は、固定部60bに代えて
図11と同様な雄ねじ構造の固定部70aを用いた構成としてもよい。
【0064】
図13は、変形例に係る振動発生器78の取付構造を模式的に要部拡大底面図である。
【0065】
上記した振動発生器31は、
図2及び
図9Aに示すように、ベース部41をタッチ操作部30のベースプレート32に対して固定し、駆動部42の後面42bを支持プレート28の開口28aの後端面28bに当接した取付構造である。これに対し、
図13に示す振動発生器78は、
図10Aに示す振動発生器31を前後反転し、ベース部41を支持プレート28の後端面28bに固定した構成である。この振動発生器78では、ベース部41の左右両端の支持片41bと支持プレート28の後端面28bとの間に円筒状のスリーブ79を設け、スリーブ79を介してねじ46でベース部41と支持プレート28とを固定している。振動発生器78の駆動部42は、前面42cがブラケット54の後面54dに当接している。ここで、ブラケット54は、例えば横板部54bの左右両端部から突出した取付部80を有し、各取付部80がねじ82を用いてベースプレート32の下面32bに固定されている。従って、このような振動発生器78では、通電時に形状記憶合金40が元の形状に復帰すると、駆動部42が板ばね56の付勢力に抗して前方に移動し、開口28a内で前後方向に振動する。この際、ブラケット54がベースプレート32と固定されているため、タッチ操作部30についても振動発生器78と共に前後方向に振動する。
【0066】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0067】
上記では、タッチ操作装置20としてタッチパッドを例示したが、タッチ操作装置20はタッチパッド以外のタッチ入力操作を行うもの、例えば押しボタン24〜26やキーボード装置18に適用してもよく、ディスプレイ14aのタッチパネルに適用してもよい。
【0068】
上記では振動発生器31(78)は、前後方向の振動を発生し、タッチ操作部30を前後方向に振動させる構成を例示した。しかしながら、振動発生器31(78)は、タッチ操作装置20を左右方向或いは前後左右方向に振動させる構成でもよく、この場合、孔部28fの形状を変更し、位置決め部62の形状を変更し或いは省略すればよい。また、振動発生器31(78)には、形状記憶合金40を用いたアクチュエータ(SIA)以外、例えば、圧電素子(ピエゾ素子)を用いたアクチュエータ(PVA)、偏心モータ(ERM)、リニア・バイブレータ(LRA)を用いてもよい。
【解決手段】電子機器10は、タッチ入力操作可能なタッチ操作部30と、タッチ操作部30が移動可能に載置される載置面28eが設けられた支持プレート28を有する本体筐体12と、タッチ操作部30に対して振動を発生する振動発生器31と、タッチ操作部30及び支持プレート28のうちの一方に対して固定される固定部60bと、タッチ操作部30及び支持プレート28のうちの他方に対して少なくとも載置面28eに平行する一方向に沿って移動可能な状態で係止される係止部60cとを有する連結部材60と、を備える。