【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不規則なシワまたは不規則な立体形状を有し、かつ所定サイズの長繊維不織布のフレークである。
【0007】
長繊維不織布フレークの「不規則なシワまたは不規則な立体形状」は、平坦状の長繊維不織布を、その不織布の厚み方向に立体的に嵩高くなるように加工し、裁断することで形成される。また、別製造方法として、平坦状の長繊維不織布を所定サイズに裁断後に、不規則なシワまたは不規則な立体形状に加工することでもよい。詳細は後述する。
【0008】
不規則なシワまたは不規則な立体形状を有するフレークの厚み(t)は、0.01mm〜1.0mmである。嵩高さ性の理由から0.02mm〜0.5mmが好ましく、0.02mm〜0.3mmがより好ましく、0.05mm〜0.2mmまたは0.05mm〜0.15mmがさらに好ましい。なお、本発明において、特に明示しない限り、数値範囲の下限値〜上限値は、それぞれその値を含む、下限値以上〜上限値以下であることを意味する。
【0009】
不規則なシワまたは不規則な立体形状を有するフレークの目付けは、15g/m
2〜300g/m
2であり、好ましくは15g/m
2〜250g/m
2未満であり、より好ましくは15g/m
2〜100g/m
2未満または15g/m
2〜50g/m
2未満である。本発明において目付けの測定方法は、不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成されたフレークにおける目付けを測定したものである。
不規則なシワまたは不規則な立体形状を有する長繊維不織布またはフレークを平面に置き、不規則なシワまたは不規則な立体形状を有する長繊維不織布またはフレークを平面視した時の面積を求め、その面積でフレーク重量を除算することで得られる。
【0010】
不規則なシワまたは不規則な立体形状を有するフレークの長繊維は、その繊維太さ(直径)が1μm〜100μmが好ましく、2μ以上10μm未満がより好ましく、2μm以上8μm未満がさらに好ましい。不規則なシワまたは不規則な立体形状を形成するための加工前の繊維太さと、その加工後の繊維太さは、同じまたはほぼ同じでもよく、繊維太さが異なっていてもよい。
【0011】
不規則なシワまたは不規則な立体形状を有するフレーク(f)は、そのすべてが仮想直方体(VP)(
図2D参照)に収まるサイズである。仮想直方体(VP)は、主面の第一辺(例えば縦)および第二辺(例えば横)のそれぞれが10mmから500mm、好ましくは40mmから400mm、より好ましくは40mmから300mm、衣類などの特定部位の充填空間サイズが小さいほど、フレークも小さいサイズとなることが好ましい。高さが10mm以上100mm以下、好ましくは10mm以上80mm以下である。
主面の上記第一辺の長さが、上記第二辺の長さの40%から160%の範囲、好ましくは50%から150%の範囲である。
本発明において、「所定サイズの長繊維不織布のフレーク」は、例えば、仮想直方体のサイズでフレークを規定してもよい。
【0012】
(製造方法)
フレークを製造する第一方法は、シート状の長繊維不織布に不規則なシワまたは不規則な立体形状を形成する立体加工工程(A)と、不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布を所定形状および所定サイズに切断する切断工程(A)とを含む。第一方法は、さらに、切断された長繊維不織布のフレーク(小片)に、再度、不規則なシワまたは不規則な立体形状を形成する再立体加工工程をさらに含んでいても良い。
また、別の方法としての第二方法は、シート状の長繊維不織布を所定形状および所定サイズに切断する切断工程(B)と、切断された長繊維不織布のフレーク(小片)に不規則なシワまたは不規則な立体形状を形成する立体加工工程(B)とを含む。
【0013】
「立体加工工程(A)」または「立体加工工程(B)」は、例えば、シート状の長繊維不織布またはフレークを袋体に詰めて湿熱を与える工程を含む。これにより、シート状の長繊維不織布またはフレークに不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成される。不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成されるように、それらが形成されていない長繊維不織布またはフレークを無造作に(他の表現で、乱雑に、不規則に、規則正しく折らない状態で、等)袋体にギュウギュウに詰め込むことが好ましい。綺麗に折りたたんで袋体に詰め込むと不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成され難いからである。袋体に長繊維不織布が詰め込まれた状態としては、袋体の内積において、その隙間空間:長繊維不織布の体積との体積比が50:50〜20:80が好ましい。
「再立体加工」は、上記と同様に、フレークを袋体に詰めて湿熱を与える工程を含んでもいてもよい。この場合に、フレークを無造作に袋体にギュウギュウに詰め込むことが好ましい。
【0014】
「切断工程(A)」は、例えば、レーザカット、刃による引き切り、押し切り、打ち抜きのいずれの切断方法でも採用できる。切断工程(A)に際し、不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布を平らにした状態(シワまたは立体形状を伸ばした状態)で切断すること、例えば、少なくとも1枚の長繊維不織布において切断面に対し垂直上下方向で長繊維不織布の重なりがない状態で切断することが好ましいが、これに制限されず、シワなどを伸ばさない状態で切断してもよい。
シワなどを伸ばした状態で切断した場合、フレークが形状回復した後は、切断されたフレーク面積(<仮想矩形枠の面積)が切断面積(例えば、打ち抜き刃の切断面積)よりも小さくなり、例えば、フレーク面積(<仮想矩形枠の面積)は切断面積(例えば、打ち抜き刃の切断面積)の0.7倍から0.99倍、好ましくは0.75倍から0.95倍であってもよい。
シワなどを伸ばさずに切断した場合、切断されたフレーク面積(<仮想矩形枠の面積)が切断面積(例えば、打ち抜き刃の切断面積)と同じまたは略同じ(例えば、フレーク面積(<仮想矩形枠の面積)は切断面積(例えば、打ち抜き刃の切断面積)の0.95倍から1.05倍の範囲)であってもよい。
打ち抜き刃の形状は、例えば、菱形、平行四辺形、正方形、長方形などの矩形、多角形、円形、楕円形、異形などが挙げられる。例えば、菱形のサイズは2つの対角線で表現し、菱形面積は対角線×対角線÷2となる。平行四辺形のサイズは底辺と高さで表現し、平行四辺形面積は底辺×高さとなる。
「切断工程(A)」において、シート状の長繊維不織布を1枚または複数枚重ねた状態で切断してもよい。
本発明において、「所定サイズの長繊維不織布のフレーク」は、例えば、切断されたフレーク面積でフレークのサイズを規定してもよい。
【0015】
不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布のフレークの形状は、例えば、菱型状、四角状、三角状、丸状、雲状、ランダム状が例示される。
「切断加工(A)」は、切断加工性、歩留りの観点から、複数枚重ねた状態でのプレス機による打ち抜きが好ましい。不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布を、シワや立体形状を伸ばした状態で切断しない場合にフレーク(小片)の切断端部(切断面)の形状は、シワなどが形成されているためギザギザ状であってもよい。
「切断加工(B)」は、切断加工性、歩留りの観点から、シート状の長繊維不織布を複数枚重ねた状態でのプレス機による打ち抜きが好ましい。切断後のフレークの形状は、例えば、菱形状、四角状、三角状、丸状、雲状、ランダム状が例示される。ここで「菱形状」は、完全な菱形ではなく、全体の外観が菱形に見える形を含む。他の「〜状」も同様の意味である。
【0016】
立体加工前のシート状の長繊維不織布またはフレークの厚み(t)は、立体加工前と立体加工後とで、同じあるいは略同じであることが好ましい。その厚み(t)は、例えば、0.01mm〜1.0mmである。嵩高さ性の理由から0.02mm〜0.5mmが好ましく、0.02mm〜0.3mmがより好ましく、0.05mm〜0.2mmまたは0.05mm〜0.15mmがさらに好ましい。
立体加工前のシート状の長繊維不織布またはフレークの目付けは、5g/m
2〜60g/m
2であり、好ましくは5g/m
2〜20g/m
2未満であり、より好ましくは6g/m2〜10g/m
2である。目付けが小さいほど加工後の形状維持性が弱く、一方、目付けが大きくなるほど嵩高性が損なわれることから、上記範囲の目付けが好ましい。
立体加工前のシート状の長繊維不織布の繊維長は、下限値としては、100mm以上、好ましくは150mm以上、より好ましくは200mm以上である。繊維長の上限値としては、2000mm以下であり、より好ましくは1000mm以下である。
または、その繊維長の平均が100mm以上500mm以下、より好ましくは150mm以上500mm以下、さらに好ましくは200mm以上500mm以下でもよい。
繊維長が長い方が、切断加工した時の切断断面から生じる繊維屑を押えることができ、また、不規則なシワまたは不規則な立体形状の長時間保持性能が高くなるので好ましい。
フレークの切断面または端面以外に、長繊維の末端が200個以内、好ましくは100個以内、より好ましくは50個以内である、さらに好ましくは30個以内である。
【0017】
立体加工後のフレークの「所定サイズ」は、フレーク(f)を平面(
図2Bのx−y平面を参照)に置き、上から平面視した時に、仮想矩形枠(VF)(
図2Cを参照)の内にフレークのすべてが収まるサイズとして定義してもよい。つまり、本発明において、「所定サイズの長繊維不織布のフレーク」は、例えば、仮想矩形枠(VF)のサイズでフレークを規定してもよい。
より具体的には、
図2Cに示すように、少なくともフレーク(f)の最大対角線(L1)と、それと交差する次に長い対角線(L2)の2つの対角線が、仮想矩形枠(VF)の中に入り、最大対角線(L1)の少なくとも一方端(または一方端から5mm以内の端部)が仮想矩形枠(VF)の線に接する条件のときに、この仮想枠線(VF)が、フレーク(f)のサイズであると定義する。本発明において、特に明示しない限り、フレークのサイズは平面視サイズである。平面視サイズは、上記の仮想直方体の主面のサイズに相当する。
立体加工後のフレークのサイズ(つまり仮想矩形枠(VF)で規定されるサイズ)は、一対の第一辺とそれと直交する一対の第二辺が、それぞれ10mmから500mm、好ましくは40mmから400mm、より好ましくは40mmから300mmである。
上記第一辺の長さが、上記第二辺の長さの40%から160%の範囲、好ましくは50%から150%の範囲である。
立体加工後のフレークから、シワまたは立体形状を伸ばして完全に平らにした状態のフレークの平面サイズは、上記平面視サイズよりも大きくなる。
上述したフレーク面積は、仮想矩形枠の面積よりも小さくなる。
【0018】
また、立体加工後のフレークにおいて、所定サイズ当たり(例えば、シワ形成された状態の菱形状で2つの対角線が(1)10cm×10cm、(2)5cm×12cm、(3)18cm×27cm、(4)4cm×6cm)の最高嵩高さ(hmax:平面に置いたときに平面から最上部までの垂直高さ)は、そのフレークの厚み(t)の100倍以上から500倍であり、好ましくは120倍以上から500倍、より好ましくは150倍以上500倍、特に好ましくは200倍以上から500倍である(
図2B参照)。
また、立体加工後の長繊維不織布(フレークではない)の1m
2当たりの最高嵩高さ(hmax)は、その長繊維不織布の厚み(t)の100倍以上から500倍であり、好ましくは120倍以上から500倍、より好ましくは150倍以上500倍、特に好ましくは200倍以上から500倍である(
図1B参照)。
ここで「所定サイズ」は、平面に置いたフレークを上から投影させた投影面積で、フレークのサイズを規定してもよく、上述の「切断されたフレーク面積」でフレークのサイズを規定してもよい。
【0019】
また、立体加工後のフレークの所定サイズ当たり(例えば、シワ形成された状態の菱形状で2つの対角線が(1)10cm×10cm、(2)5cm×12cm、(3)18cm×27cm、(4)4cm×6cm)の嵩高さ(h)の分布として、平面からの垂直高さが0mm以上10mm未満が5ポイント(箇所)以上、10mm以上20mm未満が5ポイント以上、20mm以上30mm未満が5ポイント以上、30mm以上40mm未満が5ポイント以上、40mm以上50mm未満が2ポイント以上、および50mm以上が1ポイント以上となる構成のうち1種または2種以上が成立することが好ましい。
嵩高さ測定方法としては、測定試料のフレークを平面に置き、縦横格子状(例えば10mm間隔)の交点をポイントとし、そのポイントの垂直高さをゲージなどで測定してもよい。
異なる嵩高さのポイント(箇所)が、所定サイズ当たりに不規則に存在しており、一定間隔に繰り返し配置されていないことが好ましい。規則的に配置されていないことで、小空間あるいは細い空間に充填された時に、フレークが一カ所に集まったり偏ったりした配置とならず、適度にフレーク同士が重なったり、絡み合ったりすることが可能となり、保温性、空間形状維持に優れることになる。通常のシリンダによる連続エンボス加工で形成された凹凸の場合には、シート面に小突起や凹凸が形成されるに過ぎず、本体部(厚み)が不規則に波打つような形状にはならない。
ここで「所定サイズ」は、平面に置いたフレークを上から投影させた「投影フレーク面積」で、フレークのサイズを規定してもよく、上述の「切断されたフレーク面積」でフレークのサイズを規定してもよい。
【0020】
本発明のフレークは、エンボス加工のような生地面に凹凸を形成して生地厚みが変形するのではなく、厚み(t)を一定に維持したままで、多数の不規則なシワが形成されたものであることが好ましい。
本発明のフレークは、シワを伸ばすと面積がシワを伸ばす前の面積よりも1.2倍以上大きくなり、好ましくは1.5倍以上大きくなり、より好ましくは2倍以上大きくなることを特徴とする。
2個以上10個以下のフレークで平均したその面積比の範囲が、1.2倍〜2.5倍の範囲、好ましくは1.5倍から2.5倍の範囲、より好ましくは1.7倍から2.5倍の範囲である。
【0021】
(フレークを充填した衣類、寝具)
充填される衣類の部位の形状およびサイズに基づいて、フレークの形状およびサイズ、詰め込む枚数を設定できる。
例えば、羽毛中綿のダウンジャケットのような保温着の中綿として使用する場合は、矩形状、菱形状あるいは平行四辺形状が好ましい。立体加工した後に切断加工する場合に、シワまたは立体形状を伸ばした状態では、完全な、矩形、菱形あるいは平行四辺形にはならないが特に支障はない。
また、衣類または寝具に詰め込まれた後で取り出したフレークは、シワまたは立体形状の状態が、詰め込む前と変化している可能性があるが、上記の仮想直方体(VP)および/または仮想矩形枠(VF)に収まるサイズであってもよい。
詰め込む前のフレークの仮想直方体(VP)および/または仮想矩形枠(VF)と、取り出したフレークの仮想直方体(VP)および/または仮想矩形枠(VF)とが、同じ(または実質的に同じ)でもよく、取り出したフレークの方が、主面がより小さく、かつ高さ方向がより大きくなっていてもよい。
詰め込む前のフレークの「投影フレーク面積(または投影フレーク形状)」と取り出したフレークの「投影フレーク面積(投影フレーク形状)」とが異なっていてもよい。
また、衣類または寝具に詰め込まれた後で取り出したフレークは、その嵩高さ(h)の分布として、平面からの垂直高さ0mm以上10mm未満が10ポイント(箇所)以上、10mm以上20mm未満が10ポイント以上、20mm以上30mm未満が10ポイント以上、30mm以上40mm未満が5ポイント以上、40mm以上50mm未満が5ポイント以上、および50mm以上が2ポイント以上となる構成のうち、少なくとも1種、少なくとも2種、または3種以上が成立することが好ましい。
また、小さい空間あるいは細長い空間に詰める(充填する)場合は、仮想矩形枠(VF)の一対の第一辺と一対の第二辺のそれぞれが、60mmから400mm、好ましくは60mmから300mm、より好ましくは60mmから200mmである。仮想直方体(VP)としては、主面の縦および横のそれぞれが60mmから400mm、好ましくは60mmから300mm、より好ましくは60mmから200mmである。高さが10mm以上60mm以下である。
ここで、フレークのサイズが小さ過ぎたり、大き過ぎると、不規則なシワまたは不規則な立体形状を有する長繊維不織布の原料シートからフレーク状にカットし、衣類の特定部位(例えば側生地)に詰めるなど一連の作業性が悪くなるため、切断加工および詰め作業も考えたサイズ設定が好ましい。
詰め込むフレークは、1枚よりも2枚以上が好ましく、3枚以上でもよい。充填される空間サイズにより設定できる。
【0022】
他の本発明は、不規則なシワまたは不規則な立体形状を有し、かつ所定サイズの長繊維不織布のフレーク(小片)が特定部位に1または2以上充填されている衣類である。
他の本発明は、不規則なシワまたは不規則な立体形状を有し、かつ所定サイズの長繊維不織布のフレークが特定部位に1または2以上充填されている寝具である。
【0023】
充填されるフレークとしては、異なるサイズのフレークであってもよく、同じ切断工程で得られたフレークであってもよい。
充填された状態においてフレークの移動を規制するために、特定部位の空間サイズを製品仕様に応じて設定してもよい。
また、本発明において、特定部位に充填されたフレークが、特定部位の空間を構成するための生地(側生地)と固定(例えば縫製)されないことが好ましい。フレークは、単に詰められた状態である。単に詰められた状態であっても、使用時、洗濯後の偏りを抑制できる。
【0024】
「特定部位」は、例えば、小空間または細長い空間、首回り、フード、襟などの空間、側生地の収納部位などである。羽毛や綿、短冊状シートなどが充填しにくい部位でも、本発明のフレークは簡単に素早く充填できる。
特定部位が円柱状の場合、断面直径が10mmから60mm、高さが10mmから600mm、楕円柱状の場合、長半径が10mmから60mm、短半径が5mmから50mm、高さが10mmから600mm、直方体状の場合、縦が10mmから60mm、横が5mmから50mm、高さが10mmから600mmなどが例示される。
特定部位の端部は、例えば縫製加工の都合により、上記円柱状、楕円柱状、直方体状でなくともよい。
特定部位に充填されるフレークの充填密度は、30g/m
3〜600g/m
3であり、好ましくは30g/m
3〜500g/m
3未満であり、より好ましくは30g/m
3〜200g/m
3未満または30g/m
3〜100g/m
3未満である。
【0025】
また、他の本発明は、不規則なシワまたは不規則な立体形状を有し、かつ所定サイズの長繊維不織布のフレーク(小片)が全体的に充填されている、衣類である。
他の本発明は、不規則なシワまたは不規則な立体形状を有し、かつ所定サイズの長繊維不織布のフレーク(小片)が全体的に充填されている、寝具である。
「全体的に充填されている」とは、フレークが充填可能な空間を有する充填部位を、1個または2個以上有する衣類において、全ての充填部位にフレークが充填されている、好ましくは80%以上の数の充填部位にフレークが充填されていることを意味する。充填部位には、本発明のフレーク以外の生地(形状は問わない)が充填されていてもよい。フレーク以外の生地としては、長繊維不織布、羽毛、綿などを含んでいてもよい。
フレークが充填される充填部位は、フレークの移動を規制するための仕切り部(縫製加工)を有していてもよい。
充填部位中のフレークは、充填部位を構成するための生地と固定されないことが好ましい。
全体的に充填されるフレークの充填密度は、30g/m
3〜600g/m
3であり、好ましくは30g/m
3〜500g/m
3未満であり、より好ましくは30g/m
3〜200g/m
3未満または30g/m
3〜100g/m
3未満である。
【0026】
上記発明の一実施形態として、前記長繊維不織布およびフレークを構成する長繊維は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ビニロン、アラミド、アクリル、レーヨン、ポリエチレン、ポリウレタンおよび絹のうちの1種の長繊維あるいは2種以上の長繊維である。不規則なシワ形状または不規則な立体形状の形成、長時間形状保持、形状変形させた後の形状回復性の理由から、ポリエステルが好ましい。
ポリエステルとしては、ポリエステル(PET)と例えばイソフタル酸等で融点を変化させた変性PETの芯鞘糸の構成が例示される。
【0027】
また、他の発明の衣類または寝具は、特定部位に充填される上記長繊維不織布のフレークと、特定部位以外の部位の空間に、1枚または2枚以上重ねて設けられる上記不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布とを有する構成である。
第一生地(表生地)と第二生地(裏生地)との間に上記不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布が設けられ、第一、第二生地または他の生地における小空間あるいは細長い空間に上記長繊維不織布フレークが設けられる。これにより、大サイズの上記不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布では充填できない小空間あるいは細長い空間に上記長繊維不織布のフレークを充填でき、小空間あるいは細長い空間における断熱性、保温性も向上させることができる。なお、第一、第二生地および他の生地は、長繊維不織布以外の生地である。
本発明のフレークは、不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成されていない長繊維不織布で構成された衣類(または衣類の一部)、寝具(または寝具の一部)の特定部位に充填されてもよい。
【0028】
衣類は、特に制限されず、例えば、ベストタイプ、半袖タイプ、長袖タイプ、半ズボンタイプ、長ズボンタイプ、カバーオールタイプ、帽子、手袋、靴下、バラクラバ、ショール、腰巻、マフラーなどが挙げられる。
また、寝具は、特に制限されず、例えば、寝袋、掛け布団、敷き布団、枕、クッション、ブランケットなどが挙げられる。
【0029】
上記発明のフレークにおいて、不織布加工される前の長繊維、加工前の長繊維不織布、加工後の長繊維不織布、フレークは、各種加工処理(例えば、透湿防水加工、撥水加工、反発加工、抗菌防臭加工、吸水加工、難燃加工等)が適宜施されていてもよい。
【0030】
上記発明において、フレークが充填される側生地、および/または不規則なシワまたは不規則な立体形状が形成された長繊維不織布(フレークよりも大きいサイズ)を内層(単層、2以上の層でもよい)として収納する、第1、第2生地(大サイズの長繊維不織布を内層としたときに、第1、第2生地は表裏の外層を構成する)は、糸材料、縫製方法は特に制限されない。
また、内層の長繊維不織布、第1、第2生地は、各種加工処理(例えば、透湿防水加工、撥水加工、反発加工、抗菌防臭加工、吸水加工、難燃加工等)も適宜施されていてもよい。
第1、第2生地(第1、第2外層)は、同じ生地でもよく、異なる生地でもよい。
第1、第2生地は、例えば、編み組織、織り組織、不織布、フィルムである。第1、第2生地は、1層構造でも複層構造でもよいが、軽量性の観点から単層の方がより好ましい。第1、第2生地は、例えば、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維でもよく、天然繊維でもよい。第1、第2生地は、1種類の繊維で構成されていてもよく、複数種類の繊維の組み合わせで構成されていてもよい。また、第1、第2生地の原糸(繊維)自体に上記各種加工処理が施されていてもよい。
【0031】
また、上記内層の生地は、第1外層と第2外層(第1生地と第2生地)と間に配置されるが、第1生地と第2生地との間に必ず配置されている必要はなく、衣類(衣類の形状、衣類のパーツ形状、パーツの必要性、目的)、寝具(寝具の形状、寝具のパーツ形状、パーツの必要性、目的)に応じて、内層が省略され、第1外層と第2外層のみ、あるいはその第1外層と第2外層との間に別の生地(あるいは部材)が存在している場合もある。例えば、フィット性あるいは締め付け用にゴム素材や、開閉自在の留め具が設けられていてもよい。留め具としては、例えば、通常のボタン、点ファスナー(例えば、スナップボタン)、線ファスナー(例えば、ジッパー、チャック)または面ファスナー(例えば、マジックテープ(登録商標))が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。また、衣類には、ポケットが設けられていてもよい。
【0032】
また、上記発明において、衣類または寝具の特定部位(パーツ)に応じて、異なる立体形状(あるいは異なる嵩高さシワが形成された)の長繊維不織布を用いてもよい。不規則なシワの形状または不規則な立体形状としては、例えば、波形状、凹凸形状、シボ状、ひだ状等が挙げられる。
【0033】
また、上記発明の一実施形態として、内層として積層されるシート状の長繊維不織布同士は、所定間隔でお互いに縫製されていてもよく、さらに、第一生地側のシート状の長繊維不織布が第一生地と部分的に縫製され、第二生地側の長繊維不織布が第二生地と部分的に縫製されていてもよい。
【0034】
(原料となるシート状の長繊維不織布)
シート状の長繊維不織布(原反シート)は、湿式法(例えば、ウォーターパンチ方式)、乾式法(例えば、トウ開繊法、バーストファイバー法)、スパンボンド法(例えば、ケミカルボンド方式、サーマルボンド方式、ニードルパンチ方式)、メルトブロー法または直交積層結合で製造される。シワ形状の形成、維持の理由から、スパンボンド法、メルトブロー法または直交積層結合の製造方法が好ましい。
図1Bで示すとおり、直交積層結合で製造された直交積層不織布は、整列した縦糸1と整列した横糸2とが重なった一体構造である。これは、厚みを薄くでき、かつ表面が平滑である。そのため、直交積層不織布は、スパンボンド法で製造された不織布よりも、薄肉化が可能であり、寸法安定性があり、引張強度も高い。例えば、目付が5g/m
2〜60g/m
2、厚みが50μm〜130μmである。引張強度は、縦方向が25〜300[N/50mm]、横方向が10〜90[N/50mm]である。また、直交積層結合の製造方法として、特開2003−213560に開示された製造方法が一例として挙げられる。
【0035】
シート状の長繊維不織布(原反シート)の長繊維は、繊維太さ(直径)が1μm〜100μmが好ましく、2μから50μmがより好ましく、5μm〜30μmがさらに好ましい。長繊維の繊維太さは、加工後も維持されることが好ましい。