特許第6578560号(P6578560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578560
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20190912BHJP
   E06B 3/70 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   E06B5/00 Z
   E06B3/70 E
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-212879(P2015-212879)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-82509(P2017-82509A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 純一
(72)【発明者】
【氏名】有村 友孝
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録実用新案第20−0361551(KR,Y1)
【文献】 特開2003−120070(JP,A)
【文献】 特開2007−218060(JP,A)
【文献】 特開2001−182451(JP,A)
【文献】 特開2001−140235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 − 5/20
E06B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方から他方への水の浸入を阻止する止水装置であって、
設置面に対して略鉛直方向に立設される縦止水面材と、設置面に対して略水平方向に配置される横止水面材とを備え、
上記縦止水面材と上記横止水面材が、止水面材を挿入して保持可能な挿入保持部を有する連結部材によって保持されて連結され
上記連結部材が、略水平方向に開口した横止水面材挿入保持部を有することを特徴とする止水装置。
【請求項2】
上記連結部材が、略鉛直方向に開口した縦止水面材挿入保持部を有することを特徴とする請求項に記載の止水装置。
【請求項3】
上記連結部材が、横止水面材挿入保持部と縦止水面材挿入保持部を有したものであり、縦止水面材挿入保持部の下端部が、横止水面材挿入保持部の後方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水装置に関し、更に詳しくは、簡易な連結構造を採用した、止水性及び耐久性に優れる止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化が要因の一つとされる異常気象に伴い、各地で短時間の記録的なゲリラ豪雨が頻発している。周知のように、都市部では道路の舗装化が進んでおり、降雨した雨水は殆ど地中に浸透することなく、下水道施設から河川へと一気に流入するため、短時間で河川が氾濫したり下水道施設から雨水が噴き出したりして、各地で床下浸水や床上浸水などの甚大な被害を出している。
【0003】
従来、このような水害時には、土嚢を建物や地下の出入口等に積み上げて遮水壁を作り、建物等の内部への浸水を防いでいた。しかしながら、土嚢は非常に重いため、積み上げ作業には大変な労力を要し、また、嵩張るため保管場所の確保も容易ではなかった。しかも、上記のように、昨今の水害は短時間の内に被害が出ることが多く、土嚢を保管場所から運び出して積み上げる作業に時間を要すると、遮水壁を構築するまでに浸水してしまうことも珍しくなかった。
【0004】
かかる事情に鑑みて、略鉛直方向に立設される立壁と、略水平方向に配置される支持板とを、フレキシブルシート及び略L字型のサポートブラケットによって挟持してなる略L字型のポータブル防水壁(特許文献1)や、方形の平板と平板とを、蝶番により略L字型に連結した遮水装置などが提案されている(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7121764号明細書
【特許文献2】特願2001−140235号公報
【0006】
上記特許文献1や特許文献2の装置は、土嚢と比較すると軽量なため、従来のように、多数の土嚢を保管場所から運び出して遮水壁を構築するという重労働から解放されるものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のポータブル防水壁においては、立壁と支持板とを、単にフレキシブルシートとサポートブラケットにより挟持しているだけなので、連結強度が非常に弱く、この防水壁を水圧に耐え得るようにするためには、立壁と支持板とをつっかえ棒により連結したり、地面にアンカーを設けたりするなどの対策が必要となって、部品点数が多くなることからコストが増加し、設置作業も煩雑になるという問題があった。
また、上記特許文献2の遮水装置においては、平板と平板との連結箇所の隙間から浸水する恐れがあるため、別途止水性を確保する必要が生じ、その上、蝶番が水に浸かると錆びてしまうという問題もあった。さらに、平板と平板とは、蝶番のみにより連結されているため、連結強度が十分なものとはいえないものであった。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、設置作業が容易で、簡易でありながらも強固な連結構造を採用した、止水性及び耐久性に優れる止水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る止水装置は、一方から他方への水の浸入を阻止する止水装置であって、設置面に対して略鉛直方向に立設される縦止水面材と、設置面に対して略水平方向に配置される横止水面材とを備え、上記縦止水面材と上記横止水面材のいずれか一方又は双方が、止水面材を挿入して保持可能な挿入保持部によって保持されて、縦止水面材と横止水面材が連結されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の止水装置においては、上記縦止水面材と上記横止水面材とが、挿入保持部を有する連結部材によって連結されていることが好ましい。また、上記連結部材が、略水平方向に開口した横止水面材挿入保持部を有することが好ましく、上記連結部材が、略鉛直方向に開口した縦止水面材挿入保持部を有することがより好ましい。特に、上記連結部材が、横止水面材挿入保持部と縦止水面材挿入保持部を有したものであり、縦止水面材挿入保持部の下端部が、横止水面材挿入保持部の後方に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の止水装置を構成する縦止水面材と横止水面材とは、従来の土嚢等と比較すると、遥かに体積が小さくて軽量であるため、従来のように、多数の土嚢を保管場所から運び出して遮水壁を構築するという重労働から解放される。そして、それら縦止水面材と横止水面材のいずれか一方又は双方が、止水面材を挿入して保持可能な挿入保持部により確実に保持されて、縦止水面材と横止水面材とが強固に連結されているため、別途止水部材や補強部材等を用いなくとも、浸水したり水圧によって連結が解除されたりする心配がない。また、縦止水面材と横止水面材の連結は、いずれか一方又は双方を挿入保持部に挿入するという簡易な作業で完結するため、水害時には迅速に設置することができ、平常時は、縦止水面材と横止水面材の連結を解除して保管することができるため、保管場所の確保も容易となる。
【0012】
特に、上記縦止水面材と上記横止水面材とが、挿入保持部を有する連結部材によって連結されている止水装置は、例えば、縦止水面材と横止水面材を軽量な材料により形成し、最も強度が必要となる連結部材を高強度な材料で形成するなどして、軽量且つ高強度な止水装置を容易に構築することができる。
【0013】
また、上記連結部材が、略水平方向に開口した横止水面材挿入保持部を有する止水装置は、略水平方向に開口した横止水面材挿入保持部に横止水面材を挿入するだけの簡易な作業で、横止水面材を確実に保持することができ、
さらに、上記連結部材が、略鉛直方向に開口した縦止水面材挿入保持部を有する止水装置は、略鉛直方向に開口した縦止水面材挿入保持部に縦止水面材を挿入するだけの簡易な作業で、縦止水面材を確実に保持することができる。
【0014】
本発明の請求項2又は請求項3に係る止水装置のように、縦止水面材と横止水面材とを連結部材により連結一体化した装置においては、連結部材の奥行き寸法(前後寸法)が長くなるほど、縦止水面材が撓みにくくなって、止水装置全体の強度が向上し、浸水や破損などのリスクが軽減する。従って、上記連結部材が、横止水面材挿入保持部と縦止水面材挿入保持部を有したものであり、縦止水面材挿入保持部の下端部が、横止水面材挿入保持部の後方に位置する止水装置のように、縦止水面材挿入保持部の下端部が横止水面材挿入保持部の後方に位置すると、連結部材の奥行き寸法が必然的に長くなるため、縦止水面材が撓みにくくなって、止水装置の強度と安定感がより一層向上する。それに加えて、縦止水面材の下端が低い箇所に位置するため、止水装置の全高を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る止水装置を示す斜視図である。
図2】同止水装置の分解斜視図である。
図3】同止水装置の概略断面図である。
図4】同止水装置の連結態様を示す部分拡大断面図である。
図5図4の分解した状態を示す部分拡大断面図である。
図6】同止水装置の他の連結態様を示す概略側面図である。
図7】同止水装置の更に他の連結態様を示す概略側面図である。
図8】同止水装置の更に他の連結態様を示す部分拡大断面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る止水装置を示す分解斜視図である。
図10】本発明の更に他の実施形態に係る止水装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0017】
図1に示す本発明の止水装置10は、設置面に対して略鉛直方向に立設される縦止水面材1と、設置面に対して略水平方向に配置される横止水面材2と、縦止水面材1と横止水面材2とを連結する連結部材3を備えたものであって、一方(例えば屋外側)から他方(例えば屋内側)への水の浸入を阻止するためのものである。
【0018】
上記縦止水面材1は、本実施形態では、淡く着色した透光性樹脂を押出成形した透光パネルが用いられており、図3に示すように、一対の表面材1a,1aの間に、複数の隔壁部(横の隔壁部1b、縦の隔壁部1c、斜めの隔壁部1d)を形成することにより、縦止水面材1の幅方向に貫通する多数の中空部1eが形成されている。このように、横、縦、斜めの隔壁部1b,1c,1dによって多数の中空部1eを形成することにより、縦止水面材1が高強度且つ軽量なハニカム構造(中空構造)となることから、保管場所からの持ち運びや設置作業に要する労力が大幅に軽減される。また、縦止水面材1を透光性を有するものとすることにより、設置した際の閉塞感から解放され、水の浸入側と反対側(例えば屋内側)から、水位を容易に確認することができるようにもなる。
【0019】
上記構成の縦止水面材1の下端には、図2図3に示すように、後述する連結部材3の縦止水面材挿入保持部3bに挿入する連結凸部1fが設けられている。この連結凸部1fは、図4図5に示すように、縦止水面材1と一体に成形された略楕円環状の横断面を有する凸状に形成されたものであり、縦止水面材1の下端の全幅に亘って連続して形成されている。
【0020】
次に、設置面に対して略水平方向に配置される横止水面材2は、上記縦止水面材1と同様のものであり、それを90°回転させて用いている。即ち、図3に示すように、一対の表面材2a,2aの間に形成された複数の隔壁部(縦の隔壁部2b、横の隔壁部2c、斜めの隔壁部2d)によって、幅方向に貫通する多数の中空部2eが形成されたもので、これにより高強度且つ軽量な中空構造を実現している。また、この横止水面材2の後端には、横止水面材2と一体に成形された略楕円環状の横断面を有する凸状の連結凸部2fが、横止水面材2の後端の全幅に亘って連続して形成されている。
【0021】
上記縦止水面材1及び横止水面材2の材料樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性の各種の樹脂を使用できるが、その中でもポリエステルの一種であるポリカーボネート樹脂が特に好ましく使用される。ポリカーボネート樹脂は強度、成形性、価格などのバランスが良く、高品質の縦止水面材1及び横止水面材2を比較的安価に製造できるからである。このようなポリカーボネート製の縦止水面材1又は/及び横止水面材2に、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させて耐候性を高めることもできる。
なお、縦止水面材1や横止水面材2の材料樹脂は、上記のような合成樹脂の他にも、FRPや金属などでも形成することができ、その材質は特に限定されるものではない。また、本実施形態では、縦止水面材1と横止水面材2は全く同じものを用いているが、縦止水面材1と横止水面材2が同じである必要はないものであり、特に、縦止水面材1ほど強度が必要とされない横止水面材2は、例えば厚みの薄い平板又はスロープ等を用いてもよい。
【0022】
上記縦止水面材1と横止水面材2は、図1に示すように、連結部材3により略L字型に連結されている。図3に示すように、この連結部材3は、その前面側に、上記横止水面材2の連結凸部2fを挿入して保持可能な略水平方向に開口した横止水面材挿入保持部3aが形成されており、その上面側には、上記縦止水面材1の連結凸部1fを挿入して保持可能な略鉛直方向に開口した縦止水面材挿入保持部3bが形成されている。この連結部材3の縦止水面材挿入保持部3bの下端部は、横止水面材挿入保持部3aの後方に位置するように形成されている。
【0023】
上記横止水面材挿入保持部3a及び縦止水面材挿入保持部3b(以降、特段の事情がない限りこれらを合わせて挿入保持部3a,3bという。)は、上記横止水面材2の連結凸部2f及び縦止水面材1の連結凸部1f(以降、特段の事情がない限りこれらを合わせて連結凸部1f,2fという。)の凸状を嵌合させる略楕円開環状の凹状に形成されたものであり、この横止水面材挿入保持部3a及び縦止水面材挿入保持部3bが連結部材3と一体に形成されている。
なお、上記連結凸部1f,2f及び挿入保持部3a,3bは、縦止水面材1、横止水面材2(以降、特段の事情がない限りこれらを合わせて止水面材1,2という。)及び連結部材3と一体成形されたものであるが、別体の連結凸部1f,2f及び挿入保持部3a,3bを止水面材1,2及び連結部材3に、後から取付けてもよい。
【0024】
上記連結凸部1f,2fの厚みtは、図5に示すように、挿入保持部3a,3bの開口間口の寸法wよりも大きくなるように形成されている。従って、通常であれば、該連結凸部1f,2fを、連結部材3の挿入保持部3a,3bに、単に押圧するだけでは、連結凸部1f,2fの厚みtが挿入保持部3a,3bの開口間口よりも大きいことから、連結凸部1f,2fと挿入保持部3a,3bは連結されず(側方からスライド挿入させて連結することはできる)、施工性に優れるとは言い難い。そこで、本実施形態では、連結凸部1f,2f及び挿入保持部3a,3bを弾性変形可能とし、且つ、復元可能なものとすることにより、単に縦止水面材1(横止水面材2)を、上方から下方(前方から後方)の縦止水面材挿入保持部3b(横止水面材挿入保持部3a)に向けて押圧するだけで、連結凸部1f,2fと挿入保持部3a,3bが連結されるようになっている。
【0025】
即ち、連結凸部1f,2fは、上記のように、ポリカーボネート等を材料樹脂とする止水面材1,2と一体成形されたものであることから、連結凸部1f,2fも同種の材料樹脂から形成されている。このような材料樹脂は、周知のように、弾性変形・復元可能なものであり、それに加えて、本実施形態の連結凸部1f,2fは、図4図5に示すように、中空状に形成されており、その肉厚は、弾性変形を起こり易くするため0.3mm〜1.5mm程度に形成されているため、より一層弾性変形が起こり易くなっている。また、連結凸部1f,2fと同様に、挿入保持部3a,3bも中空状に形成されている。従って、縦止水面材1(横止水面材2)の連結凸部1f(連結凸部2f)を、下方(後方)に位置する連結部材3の縦止水面材挿入保持部3b(横止水面材挿入保持部3a)に押圧すると、連結凸部1f,2fだけでなく挿入保持部3a,3bも変形を始め、連結凸部1f,2fの厚みtが挿入保持部3a,3bの開口間口の寸法wよりも大きくても、連結凸部1f,2fの厚みtが狭まると共に挿入保持部3a,3bの開口間口の寸法wが広がって、連結凸部1f,2fと挿入保持部3a,3bを連結することができるようになっている。そして、連結凸部1f,2fと挿入保持部3a,3bが連結されると、連結凸部1f,2fと被連結部3は復元して元の形状に戻ることから、連結凸部1f,2fと挿入保持部3a,3bの隙間は完全に無くなって、連結箇所からの水の浸入を確実に防止することができる。
なお、挿入保持部3a,3bが中空状に形成されているとは、挿入保持部3a,3bの周囲を構成する連結部材3が中空状に形成されていることをいう。
【0026】
上記のように、連結部材3の縦止水面材挿入保持部3bの下端部は、横止水面材挿入保持部3aの後方に位置するように形成されている。本発明のように、縦止水面材1と横止水面材2とを連結部材3により連結一体化した装置においては、連結部材3の奥行き寸法(前後の寸法)が長くなるほど、縦止水面材1が撓みにくくなって、止水装置10全体の強度が向上し、浸水や破損などのリスクが軽減する。従って、このような位置関係に縦止水面材挿入保持部3bと横止水面材挿入保持部3aを形成すると、連結部材3の奥行き寸法が必然的に長くなるため、縦止水面材1が撓みにくくなって、止水装置10の強度と安定感がより一層向上する。それに加えて、縦止水面材1の下端が低い箇所に位置するため、止水装置10の全高を抑えることもできるようになる。
【0027】
ただし、本発明の止水装置10の連結部材3は、上記のように、縦止水面材挿入保持部3bの下端部が横止水面材挿入保持部3aの後方に位置するものに限定されるものではなく、例えば図6図7に示すような連結部材3によって、縦止水面材1と横止水面材2とを連結してもよい。
【0028】
即ち、図6に示す連結部材3は、略L字型の断面形状をしたものであり、その前面側下部に、横止水面材2を挿入・保持可能とする横止水面材挿入保持部3aが形成されていると共に、その上面側に、縦止水面材1を挿入して保持可能な縦止水面材挿入保持部3bが形成されたものである。このような連結部材3を用いて縦止水面材1と横止水面材2を連結すると、横止水面材2の後端部の多くが横止水面材挿入保持部3aに挿入されて保持されることから、横止水面材2の上面に水の重量が加わることによって、止水装置10をより安定して設置することができるようになる。
【0029】
また、図7に示す連結部材3も、横止水面材2の後端部の上方に縦止水面材1の下端部が位置するように、縦止水面材挿入保持部3b及び横止水面材挿入保持部3aを形成したものであるが、図6に示す実施形態とは異なり、連結部材3の奥行き寸法が短い。このような連結部材3は、止水面材1,2と連結部材3との連結強度が若干劣ることになるが、止水装置10をコンパクト(特に前後方向の長さが抑えられる)にすることが可能となる。このような連結部材3を用いた止水装置10においては、連結部材3を高強度且つ重量の重い材質で形成することにより、その強度不足を補うことができる。
【0030】
また、連結凸部1f,2fの形状が、本実施形態のように、略楕円環状の横断面を有する凸状に形成されたものであると、上記のように、押圧するだけで止水面材1,2と連結部材3の連結が完了するため、連結作業が非常に容易となるメリットがある。しかしながら、止水面材1,2と連結部材3とを確実・強固に連結できるのであれば、連結凸部1f,2fの形状は上記略楕円環状に限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、連結凸部1f,2fを凸型に形成すると共に、挿入保持部3a,3bを凹型に形成し、該凹型の挿入保持部3a,3bに、該凸型の連結凸部1f,2fを側方からスライド挿入させて、縦止水面材1、横止水面材2と連結部材3を連結してもよい。
【0031】
以上のような構成の止水装置10は、中空構造の高強度且つ軽量な止水面材1,2を用いているため、様々な場所に持ち運んで設置することができるものである。従って、その寸法は、設置箇所に合致するものを適宜選択すればよいが、運搬性や設置作業性を考慮すると、概ねその幅が50〜250cm程度、高さが20〜150cm程度(水位が上昇しても越流することがない高さ)のものが好適に用いられる。勿論、一方から他方への水の浸入を阻止する範囲が上記幅寸法よりも広い場合なども多々考えられるが、そのような場合には、上記寸法の止水装置10を左右に複数個連結することにより、対応すればよい。止水装置10同士の左右の連結は、どのような方法を採用しても構わないものであり、特に限定されるものではない。また、水圧、水流による止水装置10の移動をより確実に防止するために、止水装置10(特に横止水面材2)を下方に押圧する押圧部材(不図示)を載置したり、この押圧部材を嵌合固定したりする箇所を、止水装置10(横止水面材2)の上面に設けてもよい。
【0032】
図9は本発明の参考例に係る止水装置を示す分解斜視図である。
【0033】
図9に示す参考例の止水装置10は、前述した図1図8に示す止水装置10とは異なり、連結部材3を用いずに、縦止水面材1と横止水面材2とを連結したものである。
【0034】
即ち、本参考例の横止水面材2は、前下りの傾斜面を有するスロープを用いたものであり、その後端部の全幅に亘って、縦止水面材1の連結凸部1fを挿入して保持可能にする縦止水面材挿入保持部3bが形成されている。このように、横止水面材2に縦止水面材挿入保持部3bを形成した止水装置10は、前述した図1図8に示す止水装置10よりも、連結強度は若干劣ることになるが、別途連結部材3を用いなくとも、横止水面材2の縦止水面材挿入保持部3bの上方より、縦止水面材1の連結凸部1fを下方に押圧するという1つの簡易な作業だけで、縦止水面材1と横止水面材2とを連結することができる。また、横止水面材2を据え付けておくと、スロープとして利用することもでき、水害時にのみ、保管場所より縦止水面材1を持ち運んで、縦止水面材1と横止水面材2とを連結することができるようになる。さらに、横止水面材2にスロープを用いると、水位が低いときから横止水面材2に水圧が加わるようになる。このように横止水面材2に水圧が加わると、横止水面材2を下方に押圧する力が作用することから、より安定的に止水装置10を設置することができるなどのメリットもある。
図9に示す参考例の止水装置10のその他の構成は、前述した図1図8に示す止水装置10と同様であるため、同一部材に同一符号を附して、その説明を省略する。
【0035】
図10は本発明の更に他の参考例に係る止水装置を示す分解斜視図である。
【0036】
参考例の止水装置10は、前述した図9に示す参考例と同様に、連結部材3を用いずに縦止水面材1と横止水面材2を連結するものである。即ち、図10に示すように、スロープ状の横止水面材2を用いたものであって、その後端部の全幅に亘って、連結凸部2fが形成されている。そして、この連結凸部2fを挿入する横止水面材挿入保持部3aが、縦止水面材1の前面側の下端部に形成されている。
図10に示す参考例の止水装置10のその他の構成は、前述した図1図9に示す止水装置10と同様であるため、同一部材に同一符号を附して、その説明を省略する。
【0038】
以上、本発明の止水装置10の代表的な実施形態を詳述したが、本発明の止水装置10はこれに限定されるものではなく、種々の設計変更を許容し得るものである。例えば、図1図8に示す連結部材3より縦止水面材1と横止水面材2を連結する態様において、図10に示すスロープ状の横止水面材2を用いてもよい。また、縦止水面材1は、前述したパネル状のものに限定されるものではなく、金属製、プラスチック製等の平板などでもよい。縦止水面材1と横止水面材2のいずれか一方又は双方が、止水面材1,2を挿入して保持可能な挿入保持部3a,3bによって保持されて、縦止水面材1と横止水面材2とが連結されていれば、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
10 止水装置
1 縦止水面材
1a 表面材
1b 横の隔壁部
1c 縦の隔壁部
1d 斜めの隔壁部
1e 中空部
1f 連結凸部
2 横止水面材
2a 表面材
2b 縦の隔壁部
2c 横の隔壁部
2d 斜めの隔壁部
2e 中空部
2f 連結凸部
3 連結部材
3a 横止水面材挿入保持部
3b 縦止水面材挿入保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10