【実施例】
【0063】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0064】
(評価方法)
(1.略C型断面糸、複合糸、布帛の分析)
本発明の方法によって作成した略C型断面糸、複合糸及び布帛は、以下の方法によって分析した。
【0065】
(1−1.略C型断面糸の評価方法)
(1)厚み(μm)
略C型断面糸の単糸を切断し、走査型顕微鏡を用い、倍率2000倍で糸断面を撮影した。得られた顕微鏡写真を用い、略C型断面糸の壁の厚み(単位:μm)を実測した。1本の糸についてC型断面の任意の10箇所を選んで測定した(n=10)。この測定を10本の糸について行い、測定値を平均した値を中空糸の厚み(μm)とした。厚みが小さいほど、糸は軽く、ソフトである。
【0066】
(2)中空率(%)
上記(1)で得られた顕微鏡写真を拡大し、紙にコピーした。次いで、中空部を含めてC型断面を輪郭部分で切り落とし、質量(S
0;単位g)を測定した。さらに、中空部を輪郭部分で切り落とし、中空部の質量(S
1;単位g)を測定する。10個のC型断面についてS
0、S
1をそれぞれ測定した。以下の式で中空率を求めた。
【0067】
中空率(%)=S
1(g)/S
0(g)×100
(1−2.複合糸の評価方法)
本発明の複合糸を以下の方法によって評価した。
【0068】
(1)外観評価
それぞれの糸について、デジタルマイクロスコープVHX−1000(株式会社キーエンス製)を用い、倍率400倍で拡大した顕微鏡写真を撮影し、糸の外観を評価した。
【0069】
評価項目:糸の巻き付き方、ループの形状、捲縮の有無等
(2)ループ高さ
それぞれの糸を、精密万能試験機オートグラフAG−IS(株式会社島津製作所製)を用い、(a)荷重せずそのまま、又は(b)荷重0.5g、(c)荷重6gで引っ張り、デジタルマイクロスコープVHX−1000(株式会社キーエンス製)を用い、倍率400倍で拡大した画像を得た。中心部にある弾性繊維の位置を0とし、弾性繊維から垂直に各ループの一番大きな部分を測定し、ループ高さHa、Hb、Hcそれぞれについて20点ずつ測定し、その平均値としてループ高さHa、Hb、Hc(単位μm)を得た。
【0070】
ループ高さHa=荷重せずそのままで測定したループ高さ(μm)
ループ高さHb=荷重0.5gで測定したループ高さ(μm)
ループ高さHc=荷重6gで測定したループ高さ(μm)
(3)ループ保持率
上記(2)のループ高さから、Hb/Ha、Hc/Haを算出した(単位%)。Hb/Ha、Hc/Haの値が大きいほど、荷重を加えてもループがつぶれにくいことを示す。
【0071】
(4)糸の伸度、強度:引っ張り試験
2014年版のJIS L1013の8.5「引張強さ及び伸び率」の8.5.1「標準時試験」(JIS法)に従って測定した
それぞれの糸を初荷重0.5gで、引張試験機でつかみ、引張試験を行う。糸が切断するまでに糸に加えた力(cN)と糸のストローク(ひずみ)の関係をグラフにし、糸切断時の強力(cN)と伸度(%)を得た(n=10の平均値)。糸の強度を、1デシテックスあたりの強度(cN/dtex)として表した。
【0072】
(5)糸の強さ(タフネス、強伸度積)
上述の(4)から、強伸度積(%・cN/dtex)=伸度(%)×強度(cN/dtex)を求めた。強伸度積の値が大きいほど、糸が粘り強く、靱性が大きいことを表す。
【0073】
なお、一度布帛にした後に構成糸のループ高さ、ループ伸長率等を測定する場合には、布帛を分解し、得られた糸について上述の評価を行う。
【0074】
(1−3.布帛の評価方法)
作成した布帛を、以下の方法によって評価した。
【0075】
(1)布帛の軽さ:目付(g/m
2)
織物の軽さは、2014年版のJIS L1096の8.3.2に記載のA法(JIS法)に従って測定した織物の目付(g/m
2)によって表した。値が小さいほど、軽い。
【0076】
(2)布帛の厚さ:厚さ(mm)
2014年版のJIS L1096の8.4のA法(JIS法)に従って測定した(一定時間:10秒間、一定圧力:23.5kPa)。
【0077】
(3)布帛の膨らみ感:カサ高度(cm
3/g)
カサ高度(cm
3/g)は、厚さ(mm)を目付(g/m
2)で除し、1000を掛けた値とした。
【0078】
(4)布帛の滑らかさ:表面粗さ SMD値
評価機器:KES−FB4表面試験機(カトーテック(株)製)を用い、織物の裏面の表面粗さSMD値(μm)を測定した。織物の場合、裏面の経糸方向(タテ)と緯糸方向(ヨコ)をそれぞれ3ヶ所測定し、その平均値を求めた。編物の場合、編物のウェール方向とコース方向をそれぞれ5ヶ所測定し、その平均値を求めた。値が小さいほど、布帛に凹凸が少なく、良好である。
【0079】
(5)布帛のソフトさ:曲げ剛性 B値
評価機器:KES−FB2純曲げ試験機(カトーテック(株)製)を用い、織物の場合には、織物裏面の経糸方向と緯糸方向に曲げた時の織物の平均の曲げ剛性B値(gf・cm
2/cm)を測定した(経、緯それぞれN=3)。編物の場合には、編物のウェール方向とコース方向に曲げた時の平均の曲げ剛性B値(gf・cm
2/cm)を測定した(それぞれN=5)。値が小さいほど、剛性は低く、ソフトな風合いである。
【0080】
(6)布帛の伸長率
2014年版のJIS L1096の8.14.1項、A法(ストリップ法)に従って評価した。織物の場合、経方向と緯方向それぞれ3回測定し、平均値を算出した。編物の場合、ウェール方向及びコース方向に5回測定し、平均値を算出した。値が大きいほど、伸びが大きく良好である。
【0081】
(7)布帛の伸長回復率
織物の場合:
2014年版のJIS L1096の8.15.1項、A法のbの「繰り返し定率伸長時伸長弾性率」(5回繰り返し)に従って、織物の緯糸方向又は緯糸方向を測定し評価した。値が高いほど、ストレッチ後の回復性が良好である。
【0082】
編物の場合:
2014年版のJIS L1096の8.16.2項、D法の「繰り返し定伸長法」に従って、編物のウェール方向及びコース方向にそれぞれ5枚測定し、荷重−伸び曲線を描いた。値が高いほど、ストレッチ後の回復性が良好である。
【0083】
(実施例1 複合糸の調製−先混用後溶出法)
(1)溶出型中空糸(未溶出)の調製
芯成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩4.8モル%及びポリエチレングリコール10.6質量%を共重合成分として含むポリエチレンテレフタレートと、鞘成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、芯成分/鞘成分の質量比率が60/40になるように、鞘成分側がC字型となる芯鞘断面用C型口金ノズル(36ホール)から紡糸温度290℃で吐出させ、紡速3000m/分で紡糸し、繊維断面形状が略C字型の部分配向複合繊維糸として、総繊度140デシテックス、36フィラメントの糸条を一旦巻き取った。続いて、得られた部分配向複合繊維糸を、延伸仮撚機を用いて、熱セット温度165℃、延伸倍率1.7倍、加工速度600m/分で仮撚加工をして、芯/鞘質量比率が60/40、総繊度84デシテックス、36フィラメントの溶出型中空糸(未溶出)を得た。
【0084】
(2)溶出型中空糸(未溶出)とポリウレタン弾性繊維の混繊糸の調製
次いで、上述の溶出型中空糸(未溶出)を6本引き揃え(総繊度504デシテックス)、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら、エアーで交絡させ、混繊した。得られたポリエステル/ポリウレタン弾性繊維の混繊糸は、総繊度が548デシテックスであった。
【0085】
(3)中空糸の芯成分の除去
その後、この複合糸を一旦、ソフトなチーズ形状に巻き返した。その後、糸染設備であるチーズ染色機に入れ、2.5%水酸化ナトリウム水溶液を用い、上述のようにして得た溶出型中空糸を100℃で40分間処理し、芯成分を完全に除去し、中空率が60%の溶出型中空糸(溶出済)を含む実施例1の複合糸を得た。総繊度は246デシテックス、単糸繊度が0.93デシテックスであり、中空糸の壁の厚みは1.73μmであった。得られた複合糸は、きわめて軽く、ソフトで布帛に広汎に用いられる好適な複合糸であった。評価結果は、以下の表1に示す。
【0086】
(実施例2 複合糸の調製−先溶出後混用法)
実施例1の(1)で調製した溶出型中空糸(未溶出)の芯成分を実施例1の(3)と同じ方法で溶出させた後、実施例1の(2)に記載するように、溶出型中空糸(溶出後)を6本引き揃え、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら、エアーで交絡させ、混繊し、実施例2の複合糸を得た。得られた中空糸は、きわめて軽く、ソフトで布帛に広汎に用いられる好適な複合糸であった。評価結果は、以下の表1に示す。
【0087】
(比較例1 中空糸の調製)
実施例1の(1)で調製した溶出型中空糸(未溶出)をウレタン弾性繊維と混用することなく、実施例1の(3)と同じ方法で芯成分を溶出させ、比較例1とした。
【0088】
(比較例2 綿コアスパンヤーン)
比較例として、従来の綿コアスパンヤーン(芯44デシテックスのポリウレタン弾性糸を、綿11.8番手でカバリング加工)を用いた。
【0089】
(複合糸の評価)
実施例1及び2で得られた複合糸と、比較例1及び2の糸を用い、上述の「1−2.複合糸の評価方法」に基づき評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
*1 それぞれn=20の平均値
*2 ウレタン弾性繊維と混用していないため、測定せず
表1の結果から、実施例1及び実施例2の複合糸は、比較例の綿コアスパンヤーンと比較して、ループ高さが非常に大きい。また、荷重を加えたときの値(Hb、Hc)及びループ保持率の値から、0.5gまで荷重を加えてもループが保持されており(例えば、荷重0.5gで、実施例1ではループ保持率76.3%、実施例2では87.5%であるのに対し、比較例2では55.8%)、荷重を加えてもループがつぶれにくいことがわかった。また、本発明の複合糸は、糸の強力が比較例よりもかなり大きく、非常に強い糸であった。
【0092】
(実施例3 中空糸の壁の厚みの測定)
実施例1に記載の方法に従って、さまざまな太さの中空糸を用いて複合糸を作成し、溶出後の壁の厚みを測定した。結果を以下の表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
それぞれ特徴のある糸が得られた。例えば、実施例1の糸は、きわめて軽く、ソフトで布帛に広汎に用いられる好適な糸であった。また、実施例3−A、3−Bの糸は、羽根のようにきわめて軽く、薄地布帛として好適な糸であった。実施例3−Fの糸は、従来のモノフィラメントに対し、きわめて軽く、ソフトであり、張り、腰に富む糸であった。
【0095】
(実施例4 デニム地の作成)
(1)製織
経糸にネービー色にインディゴ染色した綿の9番単糸を用い、これを糊付け、整経し、これに実施例1で得られた複合糸を緯糸として打ち込み、生機織物にした。織物の組織は3/1の綾組織であり、また、生機幅175cm、経糸密度:68本/2.54cm、緯糸密度:45本/2.54cmであった。
【0096】
(2)仕上げ加工
次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、サンフォライズ加工し、180℃でセットした。更にこの織物を40℃で10分ワッシャーで洗いを行い(ワンウォッシャー加工)、最終仕上げした。
【0097】
(実施例5 デニム地の作成)
緯糸に実施例2で得られた複合糸を用いた以外は、実施例4と同じ手順でデニム生地を作成した。
【0098】
(比較例3 デニム地の作成)
緯糸に比較例1で得られた中空糸を用いた以外は、実施例4と同じ手順でデニム生地を作成した。得られたデニム地の伸長率は2%であり、伸長回復率は15%であり、身体への追随性はほとんどなかった。
【0099】
(比較例4 デニム生地の作成)
緯糸に比較例2の綿コアスパンヤーンを用いた以外は、実施例4と同じ手順でデニム生地を作成した。
【0100】
以下の表は、本発明の複合糸を用いたデニム地(実施例4)と、綿コアスパンヤーンを用いたデニム地(比較例4)の特性をまとめたものである(評価方法は「1−2.布帛の評価方法」を参照)。
【0101】
【表3】
【0102】
実施例4、比較例4で得た最終仕上げした織物について製品評価を行い、結果を表3に記載した。仕上げ幅:130cm、経糸密度:89本/2.54cm、緯糸密度:51本/2.54cmで、目付は328g/m
2であった。また織物の全体の混率は綿81重量%、ポリエステル17重量%、ポリウレタン弾性繊維2重量%であった。
【0103】
以上のように、本発明の複合糸を用いると、従来技術では得られなかった、きわめて軽く、膨らみがあり、ソフトでドライな風合いで履き心地が良く、また、ストレッチ性、伸長回復性に優れたデニム地が得られた。
【0104】
(実施例6 製編織後溶出法を用いたパンツ地の作成)
(1)芯鞘糸(未溶出)の調製
芯成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩5.2モル%及びポリエチレングリコール10.4質量%を共重合成分として用いたポリエチレンテレフタレートと、鞘成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、芯成分/鞘成分の質量比率が60/40になるように、鞘成分側がC字型となる芯鞘断面用C型口金ノズル(36ホール)から紡糸温度290℃で吐出させ、紡速3000m/分で紡糸し、繊維断面形状が略C字型の部分配向複合繊維糸として、総繊度140デシテックス、36フィラメントの糸条を一旦巻き取った。続いて、得られた部分配向複合繊維糸を、延伸仮撚機を用いて、熱セット温度165℃、延伸倍率1.7倍、加工速度600m/分で仮撚加工をして、芯/鞘質量比率が60/40、総繊度84デシテックス、36フィラメントの芯鞘糸(未溶出)を得た。
【0105】
(2)芯鞘糸(未溶出)とポリウレタン弾性繊維の混繊糸の調製
次いで、上述の芯鞘糸(未溶出)を2本引き揃え(総繊度504デシテックス)、22デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら、エアーで交絡させ、混繊した。
【0106】
(3)製織
経糸に上述の(1)の84デシテックス、36フィラメントの芯鞘糸(未溶出)を用い、緯糸に上述の(2)の混繊複合糸を用い、エアー織機を用いて生機織物にした。織物の組織は2/1の綾組織であり、また、生機幅159cm、経糸密度:178本/2.54cm、緯糸密度:100本/2.54cm、目付が148g/m
2であった。
【0107】
(4)仕上げ加工
次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、180℃でセットした。その後、液流染色機中、2.0%水酸化ナトリウム水溶液を用い、105℃で35分間処理し、中空糸の芯成分を完全に除去した。次いで、この織物を、0.5%owfの青色分散染料を用い、130℃で染色した。次いで、160℃でセットし、最終仕上げした。
【0108】
得られた織物は、幅が153cm、経密度185本/2.54cm、緯密度105本/2.54cm、中空糸部分の減量率は60.2%であった。また、得られた織物は、目付が59.2g/m
2、厚さ0.32mm、カサ高度が5.41cm
3/g、ストレッチ率(ヨコ)が38%、伸長回復率が90.2%であった。風合いはソフトできわめて軽く、また滑らかな高級感溢れる青色のツイル織物であった。
【0109】
(比較例5 パンツ地の作成)
経糸に通常の丸断面のポリエチレンテレフタレートフィラメント(84デシテックス、36フィラメント)を用い、緯糸に通常の丸断面のポリエチレンテレフタレートフィラメント(84デシテックス、36フィラメント)とポリウレタン弾性繊維(44デシテックス)を複合した以外は、実施例6と同様の方法で生機織物にした。生機織物を作成した後に溶出減量加工をせずに、実施例6に従って染色し、最終仕上げした。
【0110】
得られた織物は、幅が153cm、経密度185本/2.54cm、緯密度105本/2.54cmであった。また、得られた織物は、目付が153.9g/m
2、厚さ0.29mm、カサ高度が1.88cm
3/g、ストレッチ率(ヨコ)が26.2%、伸長回復率が81.3%であった。ストレッチ率及び伸長回復率は優れているが、風合いは硬く、軽さや滑らかさ、カサ高度に特徴がなく、平凡な織物であった。
【0111】
(実施例7 ウール混織物)
実施例1に従って、中空率が60%の溶出型中空糸(溶出済)を含む複合糸を得た。溶出後の繊度は、202デシテックス−216フィラメント+ウレタン44デシテックスであった。この中空糸の溶出減量率は60.3%であった。
【0112】
経糸に52番のウールを用い、緯糸に上述の複合糸を用い、平組織の生機織物を得た。次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、180℃でセットした。その後、この織物を、グレーの酸性染料とグレーの分散染料を用い、105℃で染色した。次いで、セミデカ加工(表面の糸を蒸気でプレスする加工)し、仕上げた。
【0113】
得られた織物の風合いはソフトで、膨らみ感があり、滑らかできわめて軽かった。また、ストレッチ(ヨコ)率は28.3%、伸長回復率は88.3%であり、機能性と高級感が溢れるグレーの平織物が得られた。
【0114】
(比較例6 ウール混織物)
実施例7の複合糸の代わりに、実施例1の芯/鞘質量比率が60/40、総繊度85デシテックス、36フィラメントの芯鞘糸(未溶出)を緯糸に用いた以外は実施例7と同じ手順を行い、平組織を有する生機織物を得た。
【0115】
その後、液流染色機を用いて溶出工程を行おうとしたが、アルカリ液によってウールサイドが糸切れを起こし、加工することができなかった。
【0116】
(実施例8 ニット生地の作成)
実施例1の(1)の溶出型中空糸(未溶出)を1本(総繊度84デシテックス、36フィラメント)と、22デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら、合撚した。その後、この原糸を一旦、ソフトなチーズ形状に巻き返した。その後、糸染設備であるチーズ染色機に入れ、2.0%水酸化ナトリウム水溶液を用い、上述のようにして得た溶出型中空糸を100℃で45分間処理し、芯成分を完全に除去し、中空率が60%の略C型断面糸(溶出済)を含む複合糸を得た。
【0117】
この複合糸を用い、釜径34吋(2.54cm)、ゲージ数32ゲージで編成し、天竺組織を得た。編成時には、複合糸に対し、編み張力2.2gをかけて編物を作成した。得られた生成は、幅が154cm、目付は78g/mm
2であった。この生成を常法に従って精練し、180℃でセットし、次いで、青色分散染料を用い、130℃で染色し、仕上げ処理した。仕上げ処理後の編物は、幅が150cm、目付は65g/mm
2、厚さ0.25mmであった。
【0118】
得られた編物は、カサ高度が3.85cm
3/g、ストレッチ率(ヨコ方向)125.4%、伸長回復率(ヨコ方向)が89.3%であった。得られた編物は、軽く(目付は65g/mm
2)、風合いはソフトであり、かつ滑らかな高級感溢れる青色の天竺編物であった。
【0119】
(比較例7 ニット生地の作成)
実施例8の中空率が60%の略C型断面糸(溶出済)を含む複合糸の代わりに、通常の丸断面のポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(84デシテックス、36フィラメント)を、22デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら合撚した。この複合糸を用い、実施例8と同じ手順で青色の天竺編物を得た。得られた生成は、幅が154cm、目付は195g/mm
2であった。この生成を常法に従って精練し、180℃でセットし、次いで、青色分散染料を用い、130℃で染色し、仕上げ処理した。仕上げ処理後の編物は、幅が150cm、目付は162g/mm
2、厚さ0.35mmであった。
【0120】
得られた編物は、カサ高度が2.16cm
3/g、ストレッチ率(ヨコ方向)83.2%、伸長回復率(ヨコ方向)が62.3%であった。得られた編物は、軽量感がなく、風合いは硬く、ザラザラした風合いで平凡な天竺編物であった。
【0121】
(実施例9 起毛加工したデニム地)
実施例4(1)で得られたデニム地の生機織物を、実施例4(2)に従って精練、サンフォライズ、セットした。次いで、この生機織物を起毛加工した。針布起毛機を用い、織物の裏面を3回起毛した。起毛加工後、実施例4(2)に従ってワンウォッシャー加工し、仕上げた。ストレッチ率(ヨコ)31.4%、伸長回復率:89.2%であった。仕上製品は軽く、ソフトな色合いであり、裏面の毛羽は細かく、高密度であり、暖かいものであった。秋冬用途として好適なデニムが得られた。